(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015449
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】マグネシウム空気電池
(51)【国際特許分類】
H01M 12/06 20060101AFI20220114BHJP
H01M 50/172 20210101ALI20220114BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20220114BHJP
【FI】
H01M12/06 D
H01M2/06 Z
H01M2/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118294
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】515203860
【氏名又は名称】株式会社ドリームエンジン
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】田所 和弘
【テーマコード(参考)】
5H011
5H032
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011BB03
5H011EE04
5H032AA01
5H032AS01
5H032CC01
5H032CC09
5H032HH05
5H043AA19
5H043BA23
5H043CA04
5H043CB02
5H043CB07
5H043DA02
5H043DA22
5H043GA26
5H043GA29
5H043JA01D
5H043JA03D
5H043JA06D
5H043LA21D
(57)【要約】
【課題】負極、正極ともにタブと端子を効率よく配置したマグネシウム空気電池を提供する。
【解決手段】マグネシウムを含むシート状の負極活物質51と、セパレータ52、正極53、及び正極集電体54が順に積層される活物質積層体50と、負極タブ42及び負極端子40と、前記活物質積層体の面から見て前記負極タブ及び前記負極端子とは異なる位置に設けられる正極タブ43a,43b及び正極端子41a,41bと、前記活物質積層体を収納するためのケース10と、前記ケースのうち前記活物質積層体の側方に対応する面に設けられる端子取出口30a,30b,30cと、前記端子取出口にて前記負極タブ及び前記正極タブの位置に対応する貫通スリットs1,s2,s3を構成するとともに、前記貫通スリットに前記負極端子及び前記正極端子を貫通させ、その外面に前記負極端子及び前記正極端子を沿わせる端子支持部32a,32b,32c,32dとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムを含むシート状の負極活物質と、セパレータ、正極、及び正極集電体が順に積層される活物質積層体と、
前記負極活物質に接続される負極タブ及び負極端子と、
前記正極集電体に接続されるとともに、前記活物質積層体の面から見て前記負極タブ及び前記負極端子とは異なる位置に設けられる正極タブ及び正極端子と、
前記活物質積層体を収納するためのケースと、
前記ケースのうち前記活物質積層体の側方に対応する面に設けられる端子取出口と、
前記端子取出口にて前記負極タブ及び前記正極タブの位置に対応する貫通スリットを構成するとともに、前記貫通スリットに前記負極端子及び前記正極端子を貫通させ、その外面に前記負極端子及び前記正極端子を沿わせる端子支持部と、
を備えることを特徴とするマグネシウム空気電池。
【請求項2】
前記負極端子と前記正極端子の少なくとも一方が、前記貫通スリットから前記端子支持部の外面に沿って前記端子取出口の端まで折曲げられる第1折曲げ部、及び前記端子取出口の端から更に反転して反対側の端まで折曲げられられる第2折曲げ部を備えることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム空気電池。
【請求項3】
前記第1折曲げ部と前記第2折曲げ部との間に隙間を備えることを特徴とする請求項2に記載のマグネシウム空気電池。
【請求項4】
前記負極端子が、前記貫通スリットから前記端子支持部の外面に沿って前記端子取出口の端まで折曲げられる第1折曲げ部、及び前記端子取出口の端から更に反転して反対側の端まで折曲げられられる第2折曲げ部を備え、
前記正極端子が、前記貫通スリットから前記端子支持部の外面に沿って前記端子取出口の端まで折曲げられる第3折曲げ部を備えることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム空気電池。
【請求項5】
前記負極端子が、前記第1折曲げ部と前記第2折曲げ部との間に隙間を備え、
前記正極端子が、前記第3折曲げ部と前記端子支持部の外面との間に隙間を備えるとともに前記第3折曲げ部が断面弧状に構成されていることを特徴とする請求項4に記載のマグネシウム空気電池。
【請求項6】
前記端子取出口と同じ面に設けられ、前記端子取出口を負極端子用と正極端子用とに分割する分割壁と、
前記分割壁の裏面に該裏面に直交する方向に設けられ、前記負極タブと前記正極タブとを隔てる隔壁と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のマグネシウム空気電池。
【請求項7】
前記端子支持部の外面が、前記ケースの外面に対して凹状となっていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のマグネシウム空気電池。
【請求項8】
前記活物質積層体が、前記負極活物質の両面に前記セパレータ、前記正極、前記正極集電体が積層され、
前記正極タブ及び前記正極端子が2つ設けられ、それぞれの正極集電体に接続されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のマグネシウム空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質にマグネシウムを用い、正極に活物質として酸素を用いるマグネシウム空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2009-146601号公報に、正極板および負極板をセパレータを介して積層してなる電極巻回素子が電解液と共に電池外装缶に収納され電池蓋により封止された角形密閉電池において、前記電極巻回素子と前記電池蓋の間に設けられた中間絶縁高分子板と、前記負極板より導出され、前記中間絶縁高分子板を貫通して、前記電池蓋側の主面に沿うように折り曲げられた端部を有する負極タブと、前記電池蓋に絶縁部を介して形成され、前記電池蓋の内外を導通するように設けられた外部負極端子と、を備える角形密閉電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電池の種類によっては正極タブ及び正極端子の取り回しも必要になるところ、特許文献1に開示されている技術では、負極タブ及び負極端子の構成のみしか開示されていない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、負極、正極ともにタブと端子を効率よく配置したマグネシウム空気電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマグネシウム空気電池は、
マグネシウムを含むシート状の負極活物質と、セパレータ、正極、及び正極集電体が順に積層される活物質積層体と、
前記負極活物質に接続される負極タブ及び負極端子と、
前記正極集電体に接続されるとともに、前記活物質積層体の面から見て前記負極タブ及び前記負極端子とは異なる位置に設けられる正極タブ及び正極端子と、
前記活物質積層体を収納するためのケースと、
前記ケースのうち前記活物質積層体の側方に対応する面に設けられる端子取出口と、
前記端子取出口にて前記負極タブ及び前記正極タブの位置に対応する貫通スリットを構成するとともに、前記貫通スリットに前記負極端子及び前記正極端子を貫通させ、その外面に前記負極端子及び前記正極端子を沿わせる端子支持部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のマグネシウム空気電池によれば、負極タブ及び負極端子と、正極タブ及び正極端子とが、活物質積層体の面方向から見て異なる位置に設けられている。また、端子取出口の貫通スリットが、負極タブ及び正極タブの位置にそれぞれ対応している。ここで、負極タブ及び正極タブの位置とは、積層される活物質積層体の厚さ方向において、負極タブが接続される負極活物質、及び正極タブが接続される正極集電体が設けられる位置を意図する。これらにより、負極タブと正極タブの位置が、ケースの広い面からみて異なる位置に配置されるとともに、ケースの厚さ方向からみても異なる位置に配置され、負極タブと正極タブとの物理的な距離を離しながらこれらをコンパクトに配置させることが可能となる。さらに、負極タブ及び正極タブを、活物質積層体から直線的に貫通スリットを貫通させることができる。
【0008】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例は、
前記負極端子と前記正極端子の少なくとも一方が、前記貫通スリットから前記端子支持部の外面に沿って前記端子取出口の端まで折曲げられる第1折曲げ部、及び前記端子取出口の端から更に反転して反対側の端まで折曲げられられる第2折曲げ部を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例によれば、負極端子と正極端子の少なくとも一方が、第1折曲げ部と第2折曲げ部とを備えるため、貫通スリットがケースの厚さ方向において中央近傍にあっても、端子をケースの厚さ方向に渡って沿わせることができる。
【0010】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例は、
前記第1折曲げ部と前記第2折曲げ部との間に隙間を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例によれば、第1折曲げ部と第2折曲げ部との間に隙間を備えるため、端子をバネのように撓ませることができ、弾力性に優れた端子とすることができ、外部機器との接続の安定性が高まる。
【0012】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例は、
前記負極端子が、前記貫通スリットから前記端子支持部の外面に沿って前記端子取出口の端まで折曲げられる第1折曲げ部、及び前記端子取出口の端から更に反転して反対側の端まで折曲げられられる第2折曲げ部を備え、
前記正極端子が、前記貫通スリットから前記端子支持部の外面に沿って前記端子取出口の端まで折曲げられる第3折曲げ部を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例によれば、正極端子の構成をシンプルなものとすることができる。
【0014】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例は、
前記負極端子が、前記第1折曲げ部と前記第2折曲げ部との間に隙間を備え、
前記正極端子が、前記第3折曲げ部と前記端子支持部の外面との間に隙間を備えるとともに前記第3折曲げ部が断面弧状に構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例によれば、正極端子が断面弧状に構成され凸状となるため、正極端子と負極端子とを見分けることが容易である。
【0016】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例は、
前記端子取出口と同じ面に設けられ、前記端子取出口を負極端子用と正極端子用とに分割する分割壁と、
前記分割壁の裏面に該裏面に直交する方向に設けられ、前記負極タブと前記正極タブとを隔てる隔壁と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例によれば、分割壁と隔壁とで端子取出口近傍を補強することができる。これにより、ケースに何らかの外力が加わったときに、隣接する負極端子と正極端子、又は負極タブと正極タブが短絡することを防止できる。
【0018】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例は
前記端子支持部の外面が、前記ケースの外面に対して凹状となっていることを特徴とする。
【0019】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例によれば、端子支持部の外面が、前記ケースの外面に対して凹状となっているため、端子取出口が凹状となる。これにより、負極端子及び正極端子を端子取出口の中に配置して納めることができ、負極端子及び正極端子の安定性が増す。
【0020】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例は
前記活物質積層体が、前記負極活物質の両面に前記セパレータ、前記正極、前記正極集電体が積層され、
前記正極タブ及び前記正極端子が2つ設けられ、それぞれの正極集電体に接続されていることを特徴とする。
【0021】
本発明のマグネシウム空気電池の好ましい例によれば、活物質積層体が負極活物質の両面を用いて発電され、正極端子が2つ設けられており、発電効率に優れたマグネシウム空気電池とすることができる。また、このような実施形態であっても、負極タブ及び正極タブを、活物質積層体から貫通スリットまで直線的に配置させることができる。
【発明の効果】
【0022】
上述したように、本発明のマグネシウム空気電池によれば、負極、正極ともにタブと端子を効率よく配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマグネシウム空気電池の分解図である。
【
図2】マグネシウム空気電池の正面図でありケースの第1面を表す図である。
【
図3】マグネシウム空気電池の背面図でありケースの第1面を表す図である。
【
図4】マグネシウム空気電池の側面図でありケースの第2面を表す図である。
【
図5】マグネシウム空気電池の平面図及び底面図でありケースの第3面を表す図である。
【
図6】ケース本体部の第1面の内面を表す図である。
【
図9】
図6のD-D線断面図及びE-E線断面図である。
【
図10】
図6のF-F線断面図及びG-G線断面図である。
【
図11】ケース蓋部の第1面の内面を表す図である。
【
図14】負極タブ及び負極端子を説明する拡大図である。
【
図15】正極タブ及び正極端子を説明する拡大図である。
【
図16】負極タブ、負極端子、正極タブ、及び正極端子の配置を説明する図である。
【
図17】内部構造を省略した
図2のA-A線断面拡大図である。
【
図18】内部構造を省略した
図2のB-B線断面拡大図である。
【
図19】内部構造を省略した
図2のC-C線断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のマグネシウム空気電池1の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1~
図5に示すように、本実施形態のマグネシウム空気電池1は、活物質積層体50と、負極タブ42と、負極端子40と、正極タブ43a,43bと、正極端子41a,41bと、ケース10と、水注入口20と、吸排気口21,22,23と、第1突起部24と、第2突起部25と、端子取出口30a,30b,30cと、端子支持部32a,32b,32c,32dと、を備える。なお、
図5(A)はケース10の平面図、
図5(B)はケース10の底面図である。また、
図2~
図5においては、活物質積層体50、負極タブ42、負極端子40、正極タブ43a,43b、及び正極端子41a,41bの記載を省略している。
【0025】
活物質積層体50は、マグネシウムを含むシート状の負極活物質51、シート状のセパレータ52、シート状の正極53、及び正極集電体54が順に積層されるものである。本実施形態では、負極活物質51の両面にセパレータ52、正極53、及び正極集電体54を順に配置しており、負極活物質51の両面を用いて発電させる構成となっている。すなわち、負極活物質51が1枚に対して、セパレータ52、正極53、及び正極集電体54は各2枚設けられている。
【0026】
この活物質積層体50の、負極活物質51に負極タブ42と負極端子40が接続され、2つの正極集電体54,54に、それぞれ正極タブ43a,43bと正極端子41a,41bが接続される。これらの、負極タブ42、負極端子40、正極タブ43a,43b、及び正極端子41a,41bの詳細は後述する。なお、セパレータ52、正極53、及び正極集電体54は、それぞれの役目を果たすことができれば良く、
図1に示すようなシート状でなくとも構わない。例えば、正極集電体54には導電性の網等を用いることができる。
【0027】
ケース10は、略直方体をなし、ケース本体部14とケース蓋部15とで構成される。そして、ケース10の内面も略直方体をなし、ケース10の内部に活物質積層体50が収納される。また、ケース10は、活物質積層体50の面wsに対応する一組の第1面11a,11b、活物質積層体50の一方の対向する側方に対応する一組の第2面12a,12b、及び活物質積層体50の他方の対向する側方に対応する一組の第3面13a,13bを備える。詳しくは、第1面11a,11bは、
図2及び
図3に示すようにケース10の正面と背面を構成する。第2面12a,12bは、
図4に示すように、ケース10の右側面と左側面を構成する。なお、右側面と左側面とは同じ又は対称であるため、
図4及び
図7では一つに表している。第3面13a,13bは、
図5(A)(B)に示すように、ケース10の上面と底面とを構成する。
【0028】
水注入口20は、ケース10の第2面12a,12b又は第3面13a,13bに1以上設けられるものである。本実施形態では、水注入口20を第3面13a,13bのうち底面(13b)に3つ設けている。また、水注入口20は、少なくとも1以上の水注入口20が第1面11a,11bをも切り欠く様にケース10の厚さ方向に渡って設けられている。この水注入口20が設けられている箇所は、ケース10を正面視及び背面視で見たときに、第1面11a,11bが略コ字状に切欠きされている。この水注入口20からスポイト等を用いて、水をケース10内部の活物質積層体50に注入させることができる。水が注入されることによって、活物質積層体50でマグネシウムと酸素を用いた化学反応が起き、電力が発生する。なお、水注入口20は、水を注入したあとは空気を吸排気するための吸排気口としての役割も果たすことができる。
【0029】
吸排気口21,22は、ケース10の第2面12a,12b又は第3面13a,13bに1以上設けられるものである。本実施形態では吸排気口21,22を第2面12a,12bの上部に1つずつと、第3面13a,13bのうち上面(13a)に2つ設けている。吸排気口21,22は、少なくとも1以上の吸排気口21が第1面11a,11bをも切り欠く様にケース10の厚さ方向に渡って設けられている。本実施形態では、第2面12a,12bに設けられた吸排気口21がケース10の厚さ方向に渡って設けられている。この吸排気口21が設けられている箇所は、ケース10を正面視及び背面視で見たときに、第1面11a,11bが略コ字状に切欠きされている。
【0030】
また、本実施形態のマグネシウム空気電池1では、別の吸排気口23が、第1面11a,11b同士の対向する同じ場所にさらに設けられている。これにより、マグネシウム空気電池1を単体で使用したときは当該吸排気口23からの吸排気が期待でき、マグネシウム空気電池1を複数積層させたときも、当該吸排気口23によって隣接するマグネシウム空気電池1同士の間で空気を流通させることができる。なお、第2面12a,12b又は第3面13aに設けられた吸排気口21,22からも水を注入させて、水注入口の代わりに用いることも可能である。
【0031】
第1突起部24は、第1面11a,11bの内面に設けられ、活物質積層体50と該内面との間に間隙を構成するための独立した複数の突起である。この第1突起部24により、活物質積層体50の両面とケース10の内面との間の間隙が上下左右方向(
図6において)の複数方向に連通されることになり、新鮮な空気をケース10内に流通させることができる。また、本実施形態では、略円筒形状の突起を千鳥状に配置しており、上下左右方向への空気の流通がより滑らかになる。これにより、例えば、底面の水注入口20から入った新鮮な空気を
図6矢印の様にケース10内を流通させ、上部の吸排気口21,22,23から排出させることができる。
【0032】
第2突起部25は、第2面12a,12bの内面に設けられ、活物質積層体50と該内面との間に間隙を構成するための独立した複数の突起である。この第2突起部25によって、活物質積層体50の側方とケース10内面との間に間隙が設けられ、新鮮な空気をケース10内に流通させることができる。また、第2突起部25は、断面が略円弧状の膨出部とされるとともに、活物質積層体50の厚さ方向に渡って設けられている。これにより、活物質積層体50の側面の厚さ方向を支えることができ、活物質積層体50の構成要素が分離することなく、安定して支持することができる。なお、この第2突起部25は、ケース10の第3面13a,13bの内面にも設けることができる。
【0033】
端子取出口30a,30b,30cは、ケース10のうち、活物質積層体50の面wsと直交する面、すなわち活物質積層体50の側面に対応する面に設けられる。本実施形態では、第3面13a,13bのうち上面(13a)に設けられ、この端子取出口30a,30b,30cから負極端子40と正極端子41a,41bとを露出させるのである。本実施形態では端子取出口30a,30b,30cは2つの分割壁31によって3つに分割され、中央の端子取出口30bが負極端子40用、両端の端子取出口30a,30cが正極端子41a,41b用となっている。
【0034】
また、端子取出口30a,30b,30cよりケース10の内側に入ったところに、端子支持部32a,32b,32c,32dが設けられ、この端子支持部32a,32b,32c,32dによって貫通スリットs1,s2,s3が構成される。この貫通スリットs1,s2,s3は、ケース10と活物質積層体50の厚さ方向において、負極活物質50、及び2つの正極集電体54,54に対応した位置となっている。すなわち、端子取出口30a,30b,30cのうち中央の負極端子40用の端子取出口30bに設けられた貫通スリットは、ケース10の厚さ方向の略中央に配置される。また、両端の正極端子41a,41b用の端子取出口30a,30cは、ケース10の厚さ方向の両端近傍に配置される。これらの端子取出口30a,30b,30c及び端子支持部32a,32b,32c,32dの詳細な構成は後述する。
【0035】
次に、
図6~
図13を参照して、ケース10を構成するケース本体部14とケース蓋部15とを説明する。本実施形態のマグネシウム空気電池1は、ケース本体部14の内部に活物質積層体50が収納され、その上からケース蓋部15が被せられる。このケース本体部14とケース蓋部15とは、接着、溶着等の公知の方法で接合される(
図1参照)。なお、
図8(A)はケース本体部14の平面図、
図8(B)はケース本体部14の底面図、
図9(A)は
図6のD-D線断面図、
図9(B)は
図6のE-E線断面図、
図10(A)は
図6のF-F線断面図、
図10(B)は
図6のG-G線断面図である。また、
図12(A)はケース蓋部15の左側面図、
図12(B)はケース蓋部15の右側面図、
図13(A)はケース蓋部15の平面図、
図13(B)はケース蓋部15の底面図である。
【0036】
ケース本体部14は、
図6~
図10に示すように、面の一つが開放された略直方体をなしている。そして、第1面11bの内面に複数の独立した第1突起部24が設けられている。第2面12a,12bの上部には、一対の吸排気口21が設けられる。第3面13a,13bの上面(13a)にも一対の吸排気口22が設けられる。また、第3面13a,13bの底面(13b)には、3つの水注入口20が設けられ、上面(13a)には3つに分割された端子取出口30a,30b,30cが設けられる。これらの吸排気口21,22の一部及び水注入口20は、第1面11a,11bを貫通するように、ケース本体部14の厚さ方向に渡って設けられる。さらに、第1面11bを貫通するように別の吸排気口23が設けられる。
【0037】
また、端子取出口30a,30b,30cの近傍には、端子支持部32a,32bが設けられる。この端子支持部32a,32bは、ケース本体部14の第1面11bの内面から、第3面13aと平行に突出した板状部材である。
図6において左側の端子取出口30aに対応する端子支持部32aが高く構成され、ケース10の厚さ方向の内部の高さに近い高さとなっている。また、中央の端子取出口30bに対応する端子支持部32bは、その高さがケース10の厚さ方向の内部の高さの約半分とされる。右側の端子取出口30cに対応する端子支持部は、ケース本体部14には設けられない。
【0038】
また、ケース本体部14の第3面13a,13bの上面(13a)の一部が、端子取出口30a,30b,30cを3つに分割するための分割壁31となっている。この分割壁31の内面から上記端子支持部32a,32bにかけて、隣接する負極端子40と正極端子41a,41bとを隔てる隔壁33が設けられる。この隔壁33は、分割壁31と同じ高さに構成され、ケース10の厚さ方向の内部の高さと同じに構成される。また、隔壁33は分割壁31と直交する方向、すなわち第2面12a,12bに平行して設けられる。この隔壁33によって、ケース10に外部から強い力が加えられてケース10が変形したとき、又は活物質積層体50に過度の水が注入されたとき等の短絡を防止することができる。また、隔壁33によって分割壁31の強度向上も図ることができる。
【0039】
ケース蓋部15は、
図11~
図13に示すように、略長方形の板状をなしている。そして、第1面11aの内面には第1突起部24が設けられている。また、第1面11aを貫通するように、吸排気口23が設けられる。この吸排気口23の位置は、ケース本体部14の第1面11bに設けられる吸排気口23に対応する位置となる。すなわち、ケース本体部14とケース蓋部15とを組み合わせた状態で、ケース10の第1面11a,11bの両面に設けられた吸排気口23は、正面視と背面視で同じ位置にある。
【0040】
また、ケース蓋部15のうち、ケース本体部14の端子取出口30a,30b,30cに対応する箇所近傍には、端子支持部32c,32dが設けられる。この端子支持部32c,32dは、ケース蓋部15の第1面11aの内面から、ケース10の第3面13aと平行に突出した板状部材である。
図11において、端子取出口30cに対応する左側の端子支持部32cが高く構成され、ケース10の厚さ方向の内部の高さに近い高さとなっている。この端子支持部32cとケース本体部14の内面とで正極端子42b用の貫通スリットs3が構成される(
図5(A)参照)。
【0041】
また、中央の端子取出口30bに対応する端子支持部32dは、その高さがケース10の厚さ方向の内部の高さの約半分とされる。この端子支持部32dと、ケース本体部14側の端子支持部32bとで、負極端子40用の貫通スリットs2が構成される。端子取出口30aに対応する端子支持部は、ケース蓋部15には設けられないが、ケース本体部14側の端子支持部32aとケース蓋部15の内面とで、正極端子42a用の貫通スリットs1が構成される。
【0042】
次に、
図14~
図19を参照して、負極タブ42、負極端子40、正極タブ43a,43b、正極端子41a,41b、及び端子取出口30a,30b,30c周辺の詳細な構成を説明する。
図14(A)は負極タブ42と負極端子40の斜視図、
図14(B)は負極タブ42と負極端子40の側面図、
図15(A)は正極タブ43a,43bと正極端子41a,41bの斜視図、
図15(B)は正極タブ43a,43bと正極端子41a,41bの側面図である。
図16は活物質積層体50をその広い面wsから見たときの負極タブ42、負極端子40、正極タブ43a,43b、及び正極端子41a,41bの配置を説明する図である。
図17~
図19は、それぞれ
図2のA-A線、B-B線、C-C線の内部構造を省略した断面拡大図である。
【0043】
なお、本実施形態のマグネシウム空気電池1には、正極タブ43a,43bと正極端子41a,41bが2つ設けられるが、
図1に示すように、2つの正極タブ43a,43b及び正極端子41a,41bは、その向きを上下反転させて向かい合うように取付けられる。また、これらの2つの正極タブ43a,43b又は正極端子41a,41bを、ケース10の内部で導通させることもできる。
【0044】
負極タブ42及び負極端子40は、
図14(A)(B)に示すように、銅板等の導電板を折曲げて構成されるものである。本実施形態では、負極タブ42と負極端子40とが1枚の板で連続的に構成され、導電板の直線部分が主に負極タブ42であり、先端の折曲げられた部分が負極端子40である。これらのうち負極タブ42が、負極活物質51にカシメ、溶接、圧着、はんだ付け等の公知の方法で接続される。そして、負極タブ42から続く負極端子40が、活物質積層体50の厚さ方向のうち、負極活物質51の位置に対応した貫通スリットs2を貫通する。
【0045】
また、負極端子40は、第1折曲げ部44と第2折曲げ部45とを備える。本実施形態では、負極端子40が貫通スリットs2を貫通した後、第1折曲げ部44が端子支持部32bの外面に沿って端子取出口30bの端まで折曲げられる。そして、第2折曲げ部45が、端子取出口30bの端から更に反転して、第1折曲げ部44及び端子支持部32dの外面に沿って端子取出口30bの反対側の端まで折曲げられる。この第1折曲げ部44と第2折曲げ部45との間には隙間g1が設けられ、その隙間g1の分だけ、負極端子40が撓むようになって弾力性を有している。本実施形態ではこの隙間g1を0.2~0.4mmとしている。
【0046】
正極タブ43a,43b及び正極端子41a,41bは、
図15(A)(B)に示すように、銅板等の導電板を折曲げて構成されるものである。本実施形態では、正極タブ43a,43bと正極端子41a,41bとが1枚の板で連続的に構成され、導電板の直線部分が主に正極タブ43a,43bであり、先端の折曲げられた部分が正極端子41a,41bである。これらのうち正極タブ43a,43bが、正極集電体54,54にカシメ、溶接、圧着、はんだ付け等の公知の方法で接続される。そして、正極タブ43a,43bから続く正極端子41a,41bが、活物質積層体50の厚さ方向のうち、正極集電体54,54の位置に対応した貫通スリットs1,s3を貫通する。なお、正極タブ43a,43bは、正極集電体54と正極53との間に挟むこともできる。
【0047】
また、正極端子41a,41bは、第3折曲げ部46a,46bを備える。本実施形態では、正極端子41a,41bが貫通スリットs1,s3を貫通した後、第3折曲げ部46a,46bが端子支持部32a,32cの外面に沿って端子取出口30a,30cの端から反対側の端まで折曲げられる。この第3折曲げ部46a,46bは、断面弧状に曲げられ、外側に凸状となるように構成されることで端子支持部32a,32cとの間に隙間g2を備える。この隙間g2によって、正極端子41a,41bが撓むようになり弾力性を有する。本実施形態では、この隙間g2を0.6~1.2mmとしている。
【0048】
また、
図16に示すように、負極タブ42、負極端子40、正極タブ43a,43b、正極端子41a,41bは、活物質積層体50の広い面wsから見て、活物質積層体50の一辺に並列させながらも異なる位置に配置されている。また、負極タブ42と正極タブ43a,43bの活物質積層体50の厚さ方向における位置は、
図1にも示すように、また
図5(A)に示す貫通スリットs1,s2,s3の位置からも、負極活物質51及び正極集電体54の位置に対応した位置となることは明らかである。これらにより、第3面13aの同じ面に負極端子40と正極端子41a,41bを集中させながら、負極タブ42と正極タブ43a,43bとは、ケース10の第3面13aの方向から見て、ケース10の厚さ方向と左右方向の双方が離れた位置にある。
【0049】
次に、貫通スリットs1,s2,s3と負極タブ42、負極端子40、正極タブ43a,43b、正極端子41a,41bの配置の詳細を説明する。
図17では、活物質積層体50(図示せず)の両面に設けられる2枚の正極集電体54のうち、ケース蓋部15側の正極集電体54に設けられた正極タブ43a及び正極端子41aの配置を説明している。
図17の位置では、端子支持部32aはケース10本体側のみに設けられ、正極タブ43aから続く正極端子41aは、この端子支持部32aとケース蓋部15の内面との間にある貫通スリットs1を通されて配置される。そして、正極端子41aの先端側の第3折曲げ部46aが、端子支持部32aの外に露出される。
【0050】
図18では、負極タブ42及び負極端子40の配置を説明している。負極タブ42及び負極端子40は、1枚の負極活物質51、その両面に配置されるセパレータ52、正極53、正極集電体54の7枚で構成される活物質積層体50(図示せず)の中央に挟まれる負極活物質51に接続される。
図18の位置では、端子支持部32b,32dがケース10本体側とケース蓋部15との両方に設けられ、双方の端子支持部32b,32d同士の間にある貫通スリットs2は、ケース10の内部の厚さ方向の高さの中程に設けられる。負極タブ42から続く負極端子40は、この貫通スリットs2を通されて配置される。そして、負極端子40の第1折曲げ部44と第2折曲げ部45とが、端子支持部32b,32dの外に露出される。
【0051】
図19では、活物質積層体50(図示せず)の両面に設けられる2枚の正極集電体54のうち、ケース本体部14側の正極集電体54に設けられた正極タブ43b及び正極端子41bの配置を説明している。
図19の位置では、端子支持部32cはケース蓋部15のみに設けられ、正極タブ43bから続く正極端子41bは、この端子支持部32cとケース本体部14の内面との間にある貫通スリットs3を通されて配置される。そして、正極端子41bの第3折曲げ部46bが、端子支持部32cの外に露出される。
【0052】
以上、説明したように、本実施形態のマグネシウム空気電池によれば、端子取出口がケースの同じ面に並列して複数あるとともに、ケースの厚さ方向における貫通スリットの位置がそれぞれに変えてある。このため、活物質積層体のうちタブが接続された負極活物質及び両面の正極集電体に応じた位置に、貫通スリットを配置することができる。これらにより、負極端子と正極端子とをケースの同じ面に並列して効率よく配置させることができる。また、負極タブと正極タブもあわせて並列されるが、ケースの厚さ方向における貫通スリットの高さが異なるため、負極タブと正極タブとの距離を離すことができ、内部での短絡を防止することができる。
【0053】
また、タブ及び端子が、貫通スリットによって保持されるとともに、端子支持部の外面に端子が折曲げられて配置される。また、負極端子では、第1折曲げ部と第2折曲げ部を備え、これらの間に隙間を備えることで弾力性を有し、外部機器との接続の安定性を増すことができる。さらに、第1折曲げ部と第2折曲げ部を備えることで、ケースの厚さ方向の略中央に貫通スリットs2を設けながら、ケースの厚さ方向の両方向に端子を配置させることができる。また、正極端子においても、第3折曲げ部によって弾力性を有することができる。さらに、この第3折曲げ部によって、ケースの厚さ方向において端子取出口の端にある貫通スリットs1,s3から反対側の端まで端子を配置させることができる。また、負極端子と正極端子の裏側に端子支持部があり、この端子支持部が端子取出口より凹状となっている。これにより、端子取出口の端で負極端子と正極端子の横方向の動きを支えることができるとともに、端子支持部で負極端子と正極端子が負荷側の端子から押される力を支えることができる。
【0054】
また、隣接するタブ及び端子の間に分割壁と直交する方向に隔壁が設けられており、この隔壁で分割壁の補強がなされるとともに、ケースの変形や注入水の過多等の事態においてのの短絡を防止することができる。
【0055】
また、ケースの第1面の内面に、独立した複数の第1突起部を備えるため、活物質積層体とケースの内面との間に間隙が構成され、当該間隙で空気を流通させることができる。また、マグネシウム空気電池の発電時には多少なりとも熱が発生するが、第1突起部が千鳥状に配置されていること、ケースの第3面のうち底面に設けられた水注入口が吸排気口としても利用可能であること、吸排気口がケースの上部に設けられていることにより、底面の水注入口から導入された新鮮な空気がケース内面と活物質積層体との間隙を効率よく流れ、上部の吸排気口から排気される。これらにより、安定した電力を得ることができる。なお、この新鮮な空気がケース内部に導入し、排気させるという作用は、ケースの第1面、第2面、第3面の全てに水注入口又は吸排気口を設けているため、マグネシウム空気電池をどの様な向きに載置させても発揮することができる。
【0056】
また、第1面に設けられた吸排気口が、複数のマグネシウム空気電池を隣接させたときに互いに連通し、例えば中央にあるマグネシウム空気電池にも新鮮な空気を供給させることができる。また、ケースの第2面の内面にも第2突起部を備えるため、ここでもケースの内面と活物質積層体との間に間隙を設けることができ、空気の流通を助けることができる。また、水注入口及び吸排気口の少なくとも一部が、ケースの第1面を切り欠く様に、ケースの厚さ方向に渡って設けられているため、第2面又は底面を塞がれても空気をケース内に流通させることができる。
【0057】
なお、上述したマグネシウム空気電池の実施形態は、本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更することができる。例えば、貫通スリットの幅の大きさであるが、本実施形態では負極端子と正極端子の厚さより大きく構成して、負極端子と正極端子が貫通スリットに遊嵌されている。これを、負極端子と正極端子の厚さと略同じにして、端子支持部で負極端子と正極端子を押圧しながら挟み込んでもよい。係る場合、正極端子を両面から挟み込む端子支持部とすることもできる。
【0058】
また、活物質積層体が、負極活物質の片面のみにセパレータ、正極、及び正極集電体が積層されている場合、負極端子と正極端子ともに第3折曲げ部のみを備える構成としても良い。さらに、活物質積層体が複数組積層されている場合、負極タブと正極タブの位置によっては、負極端子と正極端子ともに第1折曲げ部と第2折曲げ部を備える構成としても良いし、負極端子が第3折曲げ部を備え正極端子が第1折曲げ部と第2折曲げ部を備える構成としても良い。
【符号の説明】
【0059】
1・・マグネシウム空気電池、
10・・ケース、11a,11b・・第1面、12a,12b・・第2面、13a,13b・・第3面、14・・ケース本体部、15・・ケース蓋部、
20・・水注入口、21,22,23・・吸排気口、24・・第1突起部、25・・第2突起部、
30a,30b,30c・・端子取出口、31・・分割壁、32a,32b,32c,32d・・端子支持部、33・・隔壁、s1,s2,s3・・貫通スリット、
40・・負極端子、41a,41b・・正極端子、42・・負極タブ、43a,43b・・正極タブ、44・・第1折曲げ部、45・・第2折曲げ部、46a,46b・・第3折曲げ部、g1,g2・・隙間
50・・活物質積層体、51・・負極活物質、52・・セパレータ、53・・正極、54・・正極集電体、ws・・面、