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特開2022-154492情報処理装置及び方法、コンピュータプログラム並びに記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154492
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】情報処理装置及び方法、コンピュータプログラム並びに記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20221005BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20221005BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G06N20/00
A61B5/08
A61B5/02 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057556
(22)【出願日】2021-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「先進的医療機器・システム等技術開発事業 術中の迅速な判断・決定を支援するための診断支援機器・システム開発」「術中の迅速な呼吸異常評価のための連続呼吸音モニタリングシステムの研究開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317007266
【氏名又は名称】エア・ウォーター・バイオデザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕哉
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA04
4C017BC11
4C017BD06
4C038SV05
4C038SX07
(57)【要約】
【課題】学習モデルの汎化性能を向上させる。
【解決手段】情報処理装置(1)は、一の症状に関する特徴を含む生体音データから生成された学習データを用いて機械学習を行う。当該情報処理装置は、所定の周波数帯域を分割することにより規定されるn(nは、3以上の自然数)個の周波数帯域ごとに、学習データに、一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、学習データの第1の特性を取得するとともに、上記所定の周波数帯域を分割することにより規定されるm(mは、2以上の自然数であり、且つ、nより小さい)個の周波数帯域ごとに、学習データに、一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、学習データの第2の特性を取得する取得手段(12)と、第1の特性及び第2の特性に基づいて、一の症状に係る学習モデルを生成する生成手段(13)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の症状に関する特徴を含む生体音データから生成された学習データを用いて機械学習を行う情報処理装置であって、
所定の周波数帯域を分割することにより規定されるn(前記nは、3以上の自然数)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第1の特性を取得するとともに、前記所定の周波数帯域を分割することにより規定されるm(前記mは、2以上の自然数であり、且つ、前記nより小さい)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第2の特性を取得する取得手段と、
前記第1の特性及び前記第2の特性に基づいて、前記一の症状に係る学習モデルを生成する生成手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記第1の特性に基づいて、前記n個の周波数帯域各々の重み係数を特定するとともに、前記第2の特性に基づいて、前記m個の周波数帯域各々の重み係数を特定して、前記学習モデルを生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記生体音データは、前記一の症状が現れている被検体から取得したデータと、前記一の症状を模して人工的に作成したデータと、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
一の症状に関する特徴を含む生体音データから生成された学習データを用いて機械学習を行う情報処理方法であって、
所定の周波数帯域を分割することにより規定されるn(前記nは、3以上の自然数)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第1の特性を取得する第1取得工程と、
前記所定の周波数帯域を分割することにより規定されるm(前記mは、2以上の自然数であり、且つ、前記nより小さい)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第2の特性を取得する第2取得工程と、
前記第1の特性及び前記第2の特性に基づいて、前記一の症状に係る学習モデルを生成する生成工程と、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項5】
一の症状に関する特徴を含む生体音データから生成された学習データを用いて機械学習を行う情報処理装置のコンピュータを、
所定の周波数帯域を分割することにより規定されるn(前記nは、3以上の自然数)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第1の特性を取得するとともに、前記所定の周波数帯域を分割することにより規定されるm(前記mは、2以上の自然数であり、且つ、前記nより小さい)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第2の特性を取得する取得手段と、
前記第1の特性及び前記第2の特性に基づいて、前記一の症状に係る学習モデルを生成する生成手段と、
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば入力データの識別等を行う情報処理装置及び方法、コンピュータプログラム並びに記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、送信装置から送信された高周波信号を、機械学習の手法により分析して、上記送信装置を識別等する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-158209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械学習の手法による入力データ(上述の高周波信号に相当)の分析は、入力データに係る特徴と学習モデルとが比較されることにより行われることが多い。機械学習の手法による分析精度は、学習モデルの良し悪しによる。例えば、生体音データを分析するための学習モデルの構築には、生体音データに基づく学習データが用いられる。
【0005】
ところで、生体の体格等は個々に異なっているため、一の種別に分類される生体音であっても、その特徴は広範にわたっていることがある。一方で、学習モデルを構築する段階で入手可能な生体音データには限りがある。このため、限られた生体音データに基づく学習データを用いて学習モデルを構築すると、該学習モデルの汎化性能が比較的低くなる可能性があるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、学習モデルの汎化性能を向上させることができる情報処理装置及び方法、コンピュータプログラム並びに記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る情報処理装置は、上記課題を解決するために、一の症状に関する特徴を含む生体音データから生成された学習データを用いて機械学習を行う情報処理装置であって、所定の周波数帯域を分割することにより規定されるn(前記nは、3以上の自然数)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第1の特性を取得するとともに、前記所定の周波数帯域を分割することにより規定されるm(前記mは、2以上の自然数であり、且つ、前記nより小さい)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第2の特性を取得する取得手段と、前記第1の特性及び前記第2の特性に基づいて、前記一の症状に係る学習モデルを生成する生成手段と、を備える。
【0008】
本発明に係る情報処理方法は、上記課題を解決するために、一の症状に関する特徴を含む生体音データから生成された学習データを用いて機械学習を行う情報処理方法であって、所定の周波数帯域を分割することにより規定されるn(前記nは、3以上の自然数)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第1の特性を取得する第1取得工程と、前記所定の周波数帯域を分割することにより規定されるm(前記mは、2以上の自然数であり、且つ、前記nより小さい)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第2の特性を取得する第2取得工程と、前記第1の特性及び前記第2の特性に基づいて、前記一の症状に係る学習モデルを生成する生成工程と、を含む。
【0009】
本発明に係るコンピュータプログラムは、上記課題を解決するために、一の症状に関する特徴を含む生体音データから生成された学習データを用いて機械学習を行う情報処理装置のコンピュータを、所定の周波数帯域を分割することにより規定されるn(前記nは、3以上の自然数)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第1の特性を取得するとともに、前記所定の周波数帯域を分割することにより規定されるm(前記mは、2以上の自然数であり、且つ、前記nより小さい)個の周波数帯域ごとに、前記学習データに、前記一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、前記学習データの第2の特性を取得する取得手段と、前記第1の特性及び前記第2の特性に基づいて、前記一の症状に係る学習モデルを生成する生成手段と、として機能させる。
【0010】
本発明に係る記録媒体は、上記課題を解決するために、上述した本発明に係るコンピュータプログラムが記録されている。
【0011】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施例に係る機械学習の概念を示す概念図である。
図3】実施例に係る分類の一具体例を示す図である。
図4】実施例に係る学習モデルの概念を示す概念図である。
図5】実施例に係る情報処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<情報処理装置>
情報処理装置に係る実施形態について説明する。実施形態に係る情報処理装置は、一の症状に関する特徴を含む生体音データから生成された学習データを用いて機械学習を行う情報処理装置である。生体音は、例えば呼吸音、心音、シャント音等であってよい。症状は、疾病等により生体の機能等が正常な範囲を外れて異常な状態となったときに表れる状態を意味する。例えば、気管支喘息に起因して、異常呼吸音としての笛声音という症状が表れる。
【0014】
尚、機械学習に用いられる学習データの全てが、一の症状に関する特徴を含む生体音データから生成されなくてよい。つまり、上記学習データの一部は、例えば正常な生体に関する特徴を含む生体音データから生成されていてもよい。
【0015】
当該情報処理装置は、取得手段及び生成手段を備える。取得手段は、所定の周波数帯域を分割したn個の周波数帯域ごとに(ここで、nは、3以上の自然数)、学習データに一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれているか否かを判定することにより、学習データの第1の特性を取得する。
【0016】
取得手段はまた、上記所定の周波数帯域を分割したm個の周波数帯域ごとに(ここで、mは、2以上の自然数であり、且つ、上記nより小さい)、学習データに一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、学習データの第2の特性を取得する。
【0017】
つまり、取得手段は、同一の学習データを、n個の周波数帯域に分類して、その第1の特性を取得するとともに、m個の周波数帯域に分類して、その第2の特性を取得する。生成手段は、取得手段により取得された第1の特性及び第2の特性に基づいて、一の症状に係る学習モデルを生成する。
【0018】
例えば花の品種等、特徴の共通点は多いが互いに種類が異なる対象を識別するための学習モデルを生成する場合には、学習データに含まれる特徴を比較的細かく分類することにより、識別能力の比較的高い学習モデルが生成されることが多い。
【0019】
これに対して、生体音の場合、同じ疾病であっても、例えば疾病の重篤度、生体において疾病が生じている部位、生体の身体的特徴(例えば身長、体重、肥満度、筋肉量等)、等が異なれば、表れる症状(ここでは、生体音)の程度が変わる可能性がある。例えば、上述した笛声音についても、気管支喘息の重篤度等によって、その特徴が変化する可能性がある。このため、生体音については、学習データに含まれる特徴を比較的細かく分類してしまうと、かえって学習モデルの識別能力が低下する可能性がある。
【0020】
一方で、一の症状に対応する十分な量の生体音データを偏りなく収集することができれば、学習データに含まれる特徴を比較的細かく分類しても、識別能力の比較的高い学習モデルを生成することができる可能性がある。しかしながら、一の症状に対応する十分な量の生体音データを偏りなく収集することは現実的ではない。
【0021】
そこで、当該情報処理装置では、学習データを比較的細かく分類(即ち、n個の周波数帯域に分類)して第1の特性が取得されるとともに、同一の学習データを比較的粗く分類(即ち、m個の周波数帯域に分類)して第2の特性が取得される。ここで、第1の特性は一の症状に関する比較的細かい特徴を示すことが期待できる。第2の特性は一の症状に関するおおまかな特徴を示すことが期待できる。
【0022】
当該情報処理装置では、第1の特性及び第2の特性に基づいて学習モデルが生成される。このように生成された学習モデルは、学習データに対する良好な識別能力を有するとともに、未知のデータに対する識別能力も比較的高くなることが、本願発明者の研究により判明している。従って、当該情報処理装置によれば、学習モデルの汎化性能を向上させることができる。
【0023】
当該情報処理装置の一態様では、生成手段は、第1の特性に基づいて、n個の周波数帯域各々の重み係数を特定するとともに、第2の特性に基づいて、m個の周波数帯域各々の重み係数を特定して、学習モデルを生成してよい。ここで、一の症状に関する特徴としての周波数成分が多く含まれる周波数帯域ほど、重み係数が大きくてよい。
【0024】
当該情報処理装置の他の態様では、生体音データは、一の症状が現れている被検体から取得したデータと、一の症状を模して人工的に作成したデータと、を含んでよい。このように構成すれば、学習データの数を比較的容易に増やすことができ、実践上非常に有利である。
【0025】
<情報処理方法>
情報処理方法に係る実施形態について説明する。実施形態に係る情報処理方法は、一の症状に関する特徴を含む生体音データから生成された学習データを用いて機械学習を行う情報処理方法である。
【0026】
当該情報処理方法は、所定の周波数帯域を分割したn個の周波数帯域ごとに(ここで、nは、3以上の自然数)、学習データに一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれているか否かを判定することにより、学習データの第1の特性を取得する第1取得工程を含む。
【0027】
当該情報処理方法は、上記所定の周波数帯域を分割したm個の周波数帯域ごとに(ここで、mは、2以上の自然数であり、且つ、上記nより小さい)、学習データに一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、学習データの第2の特性を取得する第2取得工程を含む。
【0028】
当該情報処理方法は、第1の特性及び第2の特性に基づいて、一の症状に係る学習モデルを生成する生成工程を含む。当該情報処理方法によれば、上述した実施形態に係る情報処理装置と同様に、学習モデルの汎化性能を向上させることができる。
【0029】
<コンピュータプログラム>
コンピュータプログラムに係る実施形態について説明する。実施形態に係るコンピュータプログラムは、一の症状に関する特徴を含む生体音データから生成された学習データを用いて機械学習を行う情報処理装置のコンピュータを、所定の周波数帯域を分割することにより規定されるn(nは、3以上の自然数)個の周波数帯域ごとに、学習データに、一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、学習データの第1の特性を取得するとともに、上記所定の周波数帯域を分割することにより規定されるm(mは、2以上の自然数であり、且つ、nより小さい)個の周波数帯域ごとに、学習データに、一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定することにより、学習データの第2の特性を取得する取得手段と、第1の特性及び第2の特性に基づいて、一の症状に係る学習モデルを生成する生成手段と、として機能させる。
【0030】
当該コンピュータプログラムによれば、当該コンピュータプログラムを格納するRAM(Random Access Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(DVD Read Only Memory)等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムを、情報処理装置を構成するコンピュータに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを、通信手段を介してダウンロードした後に実行させれば、上述した実施形態に係る情報処理装置を比較的容易にして実現することができる。これにより、上述した実施形態に係る情報処理装置と同様に、学習モデルの汎化性能を向上させることができる。
【0031】
尚、当該コンピュータプログラムが記録された、例えばCD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体が、記録媒体に係る実施形態の一例に相当する。
【実施例0032】
情報処理装置に係る実施例について図1乃至図5を参照して説明する。図1において、実施例に係る情報処理装置1は、機械学習部10及び識別部20を備えて構成されている。機械学習部10は、入力データとしての学習データから学習モデルを生成するように構成されている。機械学習部10は、学習モデルを生成するために、特徴量抽出部11、評価計算部12及び学習部13を有する。識別部20は、機械学習部10により生成された学習モデルを用いて、入力データを識別するように構成されている。
【0033】
機械学習部10について図1に加えて図2を参照して説明する。機械学習部10に入力される学習データ(即ち、入力データ)は、一の症状が現れている被検体から取得したデータ(言い換えれば、臨床データ)と、一の症状を模して人工的に作成したデータと、を含んでいてよい。学習データには、一の症状が現れていない被検体から取得したデータが含まれていてよい。
【0034】
学習データに含まれる、一の症状が現れている被検体から取得したデータ及び一の症状を模して人工的に作成したデータ各々には、一の症状であることを示すラベルが付与されていてもよい。学習データに含まれる、一の症状が現れていない被検体から取得したデータには、例えば正常であることを示すラベルが付与されていてもよい。尚、学習データの生成方法については、既存の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0035】
機械学習部10の特徴量抽出部11は、学習データから特徴量としての周波数成分を抽出する。評価計算部12は、特徴量抽出部11による特徴量の抽出結果を参照して、詳細分類(図2参照)に含まれるn個の周波数帯域ごとに、学習データに一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定する。評価計算部12は、判定結果を示す第1の評価(図2の“評価1”に相当)を、学習データの第1の特性として取得する。尚、上記“n”は、3以上の自然数である。
【0036】
評価計算部12は、同一の学習データについて、特徴量抽出部11による特徴量の抽出結果を参照して、大分類(図2参照)に含まれるm個の周波数帯域ごとに、学習データに一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定する。評価計算部12は、判定結果を示す第2の評価(図2の“評価2”に相当)を、学習データの第2の特性として取得する。尚、上記“m”は、2以上の自然数であり、且つ、上述の“n”より小さい数である。
【0037】
上述した詳細分類としては、例えば図3(a)に示すように、0Hz~4000Hzの周波数帯域を、13個の周波数帯域に分割する分類方法が挙げられる。上述した大分類としては、例えば図3(b)に示すように、0Hz~4000Hzの周波数帯域を、3個の周波数帯域に分割する分類方法が挙げられる。
【0038】
機械学習部10の学習部13は、評価計算部12により取得された第1の特性及び第2の特性に基づいて、一の症状に係る学習モデルを生成する。具体的には例えば、学習部13は、第1の特性に基づいて、詳細分類に含まれるn個の周波数帯域各々の重み係数を特定する。学習部13は、第2の特性に基づいて、大分類に含まれるm個の周波数帯域各々の重み係数を特定する。そして、学習部13は、詳細分類に含まれるn個の周波数帯域各々の重み係数と、大分類に含まれるm個の周波数帯域各々の重み係数とに基づいて、上記学習モデルを生成する。
【0039】
ここで、学習モデルの具体例について図4を参照して説明する。図4に示すグラフの縦軸は、例えば特徴量の多寡、重み、度数等に対応している。ここでは、便宜上、図4に示すグラフの縦軸は重みであるものとする。図4(a)は、上述した第1の特性のみに基づいて生成された学習モデルの一例である。図4(a)に示す学習モデルでは、点線円C1で囲われた周波数帯域の重みが比較的小さくなっている。
【0040】
図4(a)に示す学習モデルにおいて、点線円C1で囲われた周波数帯域の重みが比較的小さくなっている理由としては、次の2つの理由が挙げられる。即ち、(i)一の症状に関する特徴としての周波数成分がほとんど又は全くないため、及び、(ii)学習データに偏りがあったため、である。
【0041】
ここで、一の疾病に起因する症状であっても、疾病の重篤度等によって表れる症状(例えば生体音)の程度が異なることに鑑みれば、図4(a)に示す学習モデルにおいて、点線円C1で囲われた周波数帯域の重みが比較的小さくなっている理由は、学習データに偏りがあった可能性が高いと考えられる。このような図4(a)に示す学習モデルでは、未知のデータに対する識別能力が比較的低くなる可能性がある。
【0042】
これに対して、図4(b)は、上述した第1の特性及び第2の特性に基づいて生成された学習モデルの一例である。図4(b)に示す学習モデルでは、点線円C2で囲われた周波数帯域(即ち、図4(a)の点線円C1で囲われた周波数帯域に相当)の重みが比較的大きくなっている。つまり、第1の特性及び第2の特性に基づいて学習モデルを生成することにより、仮に学習データに偏りがあったとしても、学習データの偏りの影響が緩和された学習モデルを生成することができる。
【0043】
従って、図4(b)に示すような第1の特性及び第2の特性に基づいて生成された学習モデルは、図4(a)に示すような第1の特性のみに基づいて生成された学習モデルに比べて、未知のデータに対する識別能力を向上させることができる。
【0044】
次に、情報処理装置1の機械学習部10の動作について図5のフローチャートを参照して説明を加える。図5において、機械学習部10の評価計算部12は、特徴量抽出部11による特徴量の抽出結果を参照して、詳細分類に含まれるn個の周波数帯域ごとに、学習データに一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定する。そして、評価計算部12は、判定結果に相当する第1の評価を計算する(ステップS101)。評価計算部12は、該第1の評価を学習データの第1の特性として取得する。
【0045】
評価計算部12は、上記ステップS101の処理と並行して又は相前後して、同一の学習データについて、特徴量抽出部11による特徴量の抽出結果を参照して、大分類に含まれるm個の周波数帯域ごとに、学習データに一の症状に関する特徴としての周波数成分が含まれるか否かを判定する。そして、評価計算部12は、判定結果に相当する第2の評価を計算する(ステップS102)。評価計算部12は、該第2の評価を、学習データの第2の特性として取得する
その後、機械学習部10の学習部13は、評価計算部12により取得された第1の特性及び第2の特性に基づいて、一の症状に係る学習モデルを生成する(ステップS103)。
【0046】
尚、実施例における「評価計算部12」及び「学習部13」は、夫々、上述した実施形態における「取得手段」及び「生成手段」の一例に相当する。
【0047】
情報処理装置1の識別部20は、上述の如く生成された学習モデルを用いて、入力データとしての未知の生体音データを識別する。具体的には、識別部20は、先ず、生体音データに含まれる周波数成分を、所定の周波数帯域で、n個の周波数帯域に分離して第1の解析結果を取得する(nは、3以上の自然数)。識別部20は、また、生体音データに含まれる周波数成分を、所定の周波数帯域で、m個の周波数帯域に分離して第2の解析結果を取得する(mは、2以上の自然数、且つ、上記nより小さい)。
【0048】
識別部20は、上記第1の解析結果及び上記第2の解析結果と、機械学習部10により生成された一の症状に係る学習モデルとに基づいて、生体音データが一の症状に関する特徴を含んでいるか否かを判定する。識別部20は、判定結果を、例えば表示装置(図示せず)等に出力する。
【0049】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う情報処理装置及び方法、コンピュータプログラム並びに記録媒体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
1…情報処理装置、10…機械学習部、11…特徴量抽出部、12…評価計算部、13…学習部、20…識別部
図1
図2
図3
図4
図5