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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154497
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】食酢含有飲料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/68 20060101AFI20221005BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20221005BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A23L2/00 D
A23L2/00 B
A23L2/52
A23L2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057565
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】鉄井 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】尾嶋 満里子
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK26
4B117LL01
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、食酢を含有する飲料において、穀物臭、酢酸臭をマスキングした食酢含有飲料、及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】
食酢を含有する飲料を調製する際に、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを配合することを特徴とする、食酢含有飲料、及びその製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを配合することを特徴とする食酢含有飲料。
【請求項2】
フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを配合することを特徴とする食酢含有飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食酢含有飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食酢の中でも、黒酢は、普通の穀物酢やリンゴ酢などに比べると、刺激臭が少なく、のどごしが良く、しかも栄養素、特に天然のアミノ酸を多く含むほか、高血圧の改善などの生活習慣病の改善効果もあるため、近年、黒酢を含有する黒酢飲料が上市されている。
【0003】
しかし、黒酢には、黒酢特有の穀物臭や酸味などの味のクセがあるため、このような黒酢由来の味のクセをマスキングする方法が提案されている。
【0004】
例えば黒酢の酢味・刺激臭をマスキングする方法として、特許文献1には、スクラロース等の高甘味度甘味料を用いて酸味・刺激臭を和らげる方法が開示されている。
特許文献2には、黒酢独特の味のクセ、具体的には苦味、収斂味、えぐ味からくる異味や不快味をマスキングする方法として、黒酢にトレハロースを配合する方法が開示されている。
特許文献3には、黒酢の香りむら、酸味、のど越しを改善する方法として、大麦黒酢にお茶、特にジャスミン茶を配合する方法が開示されている。
特許文献4には、黒酢飲料にカルシウムを配合することによって、黒酢を飲んだ後にまとわりつくような“くどいうま味”を効果的に軽減することができ、より飲み易い黒酢飲料となる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-335924号公報
【特許文献2】特開2005-269951号公報
【特許文献3】特開2007-143470号公報
【特許文献4】特開2011-055793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来提案されていた黒酢飲料の風味改善方法は、前述のように、スクラロース等の甘味料や、トレハロース、お茶、カルシウムなど、比較的強い風味を持つ素材やカロリーの高い素材を配合することにより、黒酢特有の風味をマスキングするものであったため、黒酢の美味しさを逆に損ねてしまったり、黒酢飲料自体のカロリーが高くなって健康志向に反するものとなってしまったりするなどの課題を抱えていた。
本発明の課題は、食酢を含有する飲料において、穀物臭、酢酸臭をマスキングした食酢含有飲料、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
(1)
フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを配合することを特徴とする食酢含有飲料。
(2)
フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを配合することを特徴とする食酢含有飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の食酢含有飲料は、食酢による、穀物臭、酢酸臭をマスキングする効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0010】
本発明に係る食酢含有飲料は、食酢を含有する飲料であり、そのまま若しくは希釈、溶解して摂取する飲料である。
【0011】
本発明に係る食酢含有飲料に含有される食酢としては、一般的に食酢として用いられているものを使用することができる。食酢としては醸造酢、米酢、米黒酢、玄米酢、もろみ酢、大麦黒酢、黒糖黒酢、その他の穀物酢、リンゴ酢、梅酢、ブドウ酢、プルーン酢、その他果実酢を用いることが出来る。発明に係る食酢含有飲料には、食酢のいずれか1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
特に、米黒酢、大麦黒酢、黒糖黒酢、梅酢、リンゴ酢、ブドウ酢、プルーン酢、その他果実酢から選ばれる1種又は2種以上を用いた場合、特に米黒酢またはリンゴ酢を用いた場合、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートによる穀物臭、酢酸臭をマスキングする効果が十分に発揮されるため好ましい。
【0013】
本発明に用いるフェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートは、フレーバー成分であり、単品香料をそのまま用いてもよく、混合香料として用いてもよい。
【0014】
フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートの配合比は、フェニルエチルアルコール:シトロネロール:ゲラニルアセテート=1:0.0000001~0.0001:0.0000001~0.0001とするが好ましい。フェニルエチルアルコール1質量部に対しシトロネロール又はゲラニルアセテートの配合量がそれぞれ0.0000001未満では、酢酸臭が強く好ましくない場合がある。フェニルエチルアルコール1質量部に対しシトロネロール又はゲラニルアセテートの配合量がそれぞれ0.0001を超える場合、嗜好性が低減し好ましくない場合がある。
【0015】
また、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートの配合は3成分の合計で、食酢1質量部に対し0.00000001~0.0022質量部が好ましい。0.00000001質量部未満では酢酸臭が強く好ましくない場合がある。0.0022質量部を超えると嗜好性が低減し好ましくない場合がある。
【0016】
本発明の食酢含有飲料は、果汁又はその濃縮物を添加することが好ましい。果汁又はその濃縮物を添加することにより、風味が良好で、飲みやすい飲料を得ることができる。かかる果汁としては、特に限定されないが、リンゴ果汁、かんきつ系果汁、ブドウ系果汁、梅果汁、プルーン果汁、ベリー系果汁等が例示される。
【0017】
本発明の食酢含有飲料には、ビタミン類を配合することができる。かかるビタミン類としては、飲料に配合し得るビタミンであれば特に限定されない。例えばアスコルビン酸若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のビタミンC類、チアミン若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のビタミンB類、リボフラビン若しくはその誘導体並びにそれらの塩類から選ばれる1種又は2種以上のビタミンB類、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種または2種以上のビタミンB類などが例示される。
【0018】
本発明の食酢含有飲料には、アミノ酸、ペプチド、タンパク質を配合することができる。かかるアミノ酸、ペプチド、タンパク質としては保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用し得るものであれば特に限定されない。例えばアミノ酸としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、リジン、スレオニン、アスパラギン、フェニルアラニン、セリン、メチオニン、グリシン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、シスチン、テアニンなどが例示される。ペプチド、タンパク質としては、例えばコラーゲン及びその加水分解物、エラスチン及びその加水分解物などが例示される。
【0019】
本発明の食酢含有飲料には、甘味料を配合することができる。かかる甘味料としては飲料の分野に利用し得る甘味料であれば特に限定されず、白砂糖、グラニュー糖、和三盆、黒糖、三温糖などの砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、水飴、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、ブドウ糖果糖液糖、還元麦芽糖水飴、粉飴、還元澱粉糖化物、エリスリトール、マルトース、トレハロース、マルチトール、パラチノース、キシリトール、ソルビトール、甘草抽出物、ステビア抽出物及び/又はその精製物、羅漢果抽出物、ソーマチン、モネリン、ミラクリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン及び/又はその塩、ズルチン、ネオテームなどが挙げられる。これらの甘味料は、1種を単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明においては、蜂蜜、黒糖から選択される1種又は2種を添加することが好ましい。はちみつ、黒糖を添加することにより食酢含有飲料の味にコクを加えることが可能である。
【0021】
本発明の食酢含有飲料は、増粘剤を配合して、ゼリー状飲料として用いることもできる。かかる増粘剤としては保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用し得る増粘剤であれば特に限定されない。例えば寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナン、キサンタンガム、タマリンド種子多糖類、ネイティブジェランガム、脱アシル型ジェランガム、未加工でんぷん、加工でんぷん、ペクチン、タラガム等が挙げられる。
【0022】
本発明の食酢含有飲料は、賦形剤を添加し乾燥させることにより、粉末化したものを摂取時溶解して用いることもできる。また、飲料は炭酸タイプであってもよい。
【0023】
本発明の食酢含有飲料には、通常飲料に用いることが可能な成分、例えば、上記以外のビタミン類、有機酸類、無機酸類、生薬、着色料、香料、保存剤、増粘剤、オリゴ糖類、多糖類、などの他、キトサン化合物、栄養強化成分、滋養強壮成分などを適時選択して配合することができ、飲料製造の常法により製造することができる。
【0024】
本発明の製造方法は、食酢含有飲料に、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを添加することによる製造方法である。
【実施例0025】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0026】
まず、香気成分別による食酢のマスキング効果を検討した。表1に示した食酢含有飲料を調製し、マスキングスコアを算定した。
官能評価専門員8名による、官能評価の結果食酢の呈味が完全にマスキングされているを5、食酢の呈味が全くマスキングされていないを1として、絶対評価を行った。
【0027】
【表1】
【0028】
表1に示した通り、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを配合した本発明の飲料は、マスキングスコアに優れたものであった。
【0029】
表2に示した食酢含有飲料を調製し、穀物臭、酢酸臭の低減効果及び嗜好性の評価を行った。評価は飲料の官能評価専門員8名により通常飲用する状態で飲用し、下記の基準により絶対評価した。
穀物臭の低減(5段階評価:0(穀物臭が強い)~5(穀物臭が弱い))
酢酸臭の低減(5段階評価:0(酢酸臭が強い)~5(酢酸臭が弱い))
嗜好性(5段階評価:0(嗜好性が低い)~5(嗜好性が高い))
【0030】
【表2】
【0031】
表2に示した通り、本発明のフェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを配合した食酢含有飲料は、穀物臭及び酢酸臭の低減及び嗜好性に優れたものであった。