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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154499
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】アンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/06 20060101AFI20221005BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20221005BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H01Q21/06
H01Q1/52
H01Q13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057567
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】原 康之
(72)【発明者】
【氏名】五井 智之
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021AB06
5J045AA05
5J045DA10
5J045LA03
5J046AA03
5J046AA08
5J046AA19
5J046AB03
5J046AB13
5J046UA02
(57)【要約】
【課題】ダミーのアンテナ素子を追加することなくアンテナ部品の放射特性を改善する。
【解決手段】アンテナモジュール1は、複数のアンテナ素子14と複数のアンテナ素子14をそれぞれ囲むグランド導体と含むアンテナ部品3と、複数のアンテナ素子14のうち最も外側に位置するアンテナ素子を囲むグランド導体に隣接して配置された金属部材20とを備える。これにより、ダミーのアンテナ素子を追加することなくアンテナ部品3の放射特性を改善することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子をそれぞれ囲むグランド導体と含むアンテナ部品と、
前記複数のアンテナ素子のうち最も外側に位置するアンテナ素子を囲む前記グランド導体に隣接して配置された金属部材と、を備えるアンテナモジュール。
【請求項2】
前記アンテナ部品は、前記複数のアンテナ素子がアレイ状に配列された構成を有し、
前記金属部材は、前記アンテナ部品の少なくとも一辺に沿って配置されている、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
前記金属部材は、前記アンテナ部品の各辺に沿って配置されている、請求項2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記金属部材は、前記アンテナ部品の各辺に沿ってそれぞれ配置された複数のパーツからなる、請求項3に記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記金属部材は、前記アンテナ部品を囲む単一のパーツからなる、請求項3に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記金属部材の幅は、前記アンテナ素子から放射する電磁波の波長の1/2以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
前記金属部材の実装面とは反対側に位置する第1面と、前記グランド導体の前記アンテナ部品の実装面とは反対側に位置する第2面の高さ位置の差は、前記アンテナ素子から放射する電磁波の波長の1/20以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
前記金属部材の前記第1面の高さ位置は、前記グランド導体の前記第2面の高さ位置以下である、請求項7に記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
前記アンテナ部品は、それぞれ複数のアンテナ素子を含む複数のアンテナユニットによって構成される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のアンテナモジュール。
【請求項10】
前記金属部材と前記アンテナ部品の間のギャップは、前記複数のアンテナユニット間におけるギャップ以上であり、且つ、前記アンテナ素子から放射する電磁波の波長の1/2以下である、請求項9に記載のアンテナモジュール。
【請求項11】
前記金属部材は内部に空洞を有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のアンテナモジュール。
【請求項12】
前記アンテナ部品は誘電体アンテナである、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のアンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のアンテナ素子のうち最も外側に位置するアンテナ素子に隣接してダミーのアンテナ素子を配置することによって、放射特性を改善したアンテナ部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2019/146183号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、放射特性を改善するためにダミーのアンテナ素子を追加すると、部品点数や製造コストが増加するという問題があった。
【0005】
したがって、本開示は、ダミーのアンテナ素子を追加することなくアンテナ部品の放射特性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施態様によるアンテナモジュールは、複数のアンテナ素子と複数のアンテナ素子をそれぞれ囲むグランド導体と含むアンテナ部品と、複数のアンテナ素子のうち最も外側に位置するアンテナ素子を囲むグランド導体に隣接して配置された金属部材とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ダミーのアンテナ素子を追加することなくアンテナ部品の放射特性を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態によるアンテナモジュール1の構造を説明するための図であり、(a)は略斜視図、(b)は略平面図である。
図2図2は、アンテナユニット10の略斜視図である。
図3図3は、金属部材20の略斜視図である。
図4図4は、変形例による金属部材20の略斜視図である。
図5図5は、変形例による金属部材20の略部分斜視図である。
図6図6は、アンテナユニット10の内部構造を説明するための模式図である。
図7図7は、アンテナユニット10の回路図であり、1つのアンテナ素子14に関連する部分を示している。
図8図8は、金属部材20の空洞22に電子部品40を収容した例を示す模式的な断面図である。
図9図9は、第1の変形例によるアンテナモジュール1aの構造を説明するための略斜視図である。
図10図10は、第2の変形例によるアンテナモジュール1bの構造を説明するための略平面図である。
図11図11は、実施例1の結果を示すグラフであり、(a)は金属部材20が存在しない場合の放射パターンを示し、(b)は金属部材20が存在する場合の放射パターンを示している。
図12図12は、実施例2の結果を示すグラフである。
図13図13は、実施例3の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態によるアンテナモジュール1の構造を説明するための図であり、(a)は略斜視図、(b)は略平面図である。
【0011】
図1に示すように、一実施形態によるアンテナモジュール1は、回路基板2上に搭載された複数のアンテナユニット10からなるアンテナ部品3と、複数のアンテナユニット10の周囲を囲む金属部材20とを備えている。図1に示す例では、4つのアンテナユニット10をxy方向にアレイ状に配置しているが、使用するアンテナユニット10の数や配置がこれに限定されるものではない。x方向又はy方向に隣接するアンテナユニット10間のギャップはS1である。また、アンテナ部品3と金属部材20のx方向又はy方向におけるギャップはS2である。
【0012】
図2は、アンテナユニット10の略斜視図である。
【0013】
図2に示すように、アンテナユニット10は、誘電体層11,12と、誘電体層11に形成された4つのアンテナ素子14と、アンテナ素子14をそれぞれ囲む複数のグランドピラー15と、複数のグランドピラー15同士を接続するリングパターン13とを備えている。これにより、アンテナ部品3には合計で16個のアンテナ素子14が含まれることになる。図3に示す例では、4つのアンテナ素子14がxy方向にアレイ状に配列されているが、1つのアンテナユニット10に含まれるアンテナ素子14の数や配置がこれに限定されるものではない。このように、16個のアンテナ素子14からなるアンテナ部品3を4つのアンテナユニット10に分割していることから、アンテナユニット10と回路基板2の熱膨張係数の差に起因する接続不良などを防止することが可能となる。しかも、4つのアンテナ素子14を1つのアンテナユニット10に集積していることから、部品点数の増大も抑えられる。なお、複数のグランドピラー15及びリングパターン13は、グランド導体の一例である。
【0014】
図3は、金属部材20の略斜視図である。
【0015】
図3に示すように、金属部材20は枠状体であり、銅などの金属材料によって構成される。金属部材20は、全体が金属材料からなるものであっても構わないし、内部に空洞が設けられていても構わないが、少なくともアンテナ素子14と同一方向を向くxy面(上面21)については、金属材料からなる必要がある。図4に示す例では、金属部材20に空洞22が設けられているとともに、回路基板2と向かい合うxy面(下面)を構成する部分が除去されている。金属部材20は、図4に示すような構造であっても構わない。さらに、金属部材20のxz面及びyz面が平坦面である必要はなく、図5に示すように、フィン状であっても構わない。これによれば、放熱特性が高められる。
【0016】
図6は、アンテナユニット10の内部構造を説明するための模式図であり、回路基板2に実装した状態を模式的に示している。
【0017】
図6に示すように、アンテナユニット10は、アンテナ層81と、フィルター層82と、フィルター層82とアンテナ層81の間に積層された配線層83とを有している。
【0018】
アンテナ層81は、誘電体層11と、誘電体層11に埋め込まれた複数のアンテナ素子14を有している。また、アンテナ層ANTは、積層方向(z方向)から見た平面視で、アンテナ素子14を取り囲む複数のグランドピラー15及びリングパターン13を有している。グランドピラー15は、誘電体層11を貫通するよう、z方向に延在するピラー状の導体である。フィルター層82は、誘電体層12と、誘電体層12に埋め込まれた導体パターン又はチップ部品によって構成される。誘電体層12を構成する誘電体材料は、誘電体層11を構成する誘電体材料よりも高い誘電率を有している。誘電体層11,12の材料としては、LTCCを用いることができる。フィルター層82は回路基板2に対する実装面を構成する。実装面には、信号端子31V,31Hと、複数のグランド端子32が設けられている。信号端子31Vは垂直偏波のアンテナ信号を入出力するための端子であり、信号端子31Hは水平偏波のアンテナ信号を入出力するための端子である。
【0019】
フィルター層82と配線層83の間には、グランドパターンG1が設けられ、配線層83とアンテナ層81の間には、グランドパターンG2が設けられている。グランドパターンG2は誘電体層11に埋め込まれている。グランドパターンG1は、誘電体層11と誘電体層12の界面に設けられている。グランドパターンG1とグランドパターンG2は、誘電体層11を貫通するグランドピラー15と接続される。
【0020】
フィルター層82にはフィルター回路19V,19Hが設けられている。フィルター回路19V,19Hはバンドパスフィルターであり、それぞれ信号端子31V,31Hに接続される。フィルター回路19V,19Hは、積層方向から見た平面視で複数のグランドピラー18に取り囲まれている。グランドピラー18は、誘電体層12を貫通するよう、z方向に延在するピラー状の導体であり、グランドパターンG1と接続される。
【0021】
配線層83には、給電パターン16V,16Hが設けられている。給電パターン16V,16Hの一端は、それぞれフィルター回路19V,19Hに接続され、給電パターン16V,16Hの他端は、それぞれ給電ピラー17V,17Hを介して、アンテナ素子14のそれぞれ異なる平面位置に接続される。給電パターン16V,16Hは、積層方向から見た平面視で複数のグランドピラー15に取り囲まれている。
【0022】
このような構成により、アンテナ素子14は誘電体アンテナのパッチ導体として機能する。そして、各アンテナ素子14は、周囲が複数のグランドピラー15で囲まれていることから、アンテナ素子14間における相互干渉が抑えられる。
【0023】
図7は、アンテナユニット10の回路図であり、1つのアンテナ素子14に関連する部分を示している。
【0024】
図7に示すように、信号端子31V,31Hにそれぞれ供給されるアンテナ信号SV,SHは、それぞれフィルター回路19V,19Hを介してアンテナ素子14に供給される。アンテナ素子14に対するアンテナ信号SVとアンテナ信号SHの給電位置は互いに90°異なっている。これにより、アンテナ信号SV,SHは、アンテナ素子14から空間に放射されることになる。
【0025】
ここで、アンテナユニット10の上面と金属部材20の上面21の高さ位置は、ほぼ一致している。アンテナユニット10の上面とは、グランドピラー15のz方向における先端位置によって定義され、グランドピラー15のアンテナ部品3の回路基板2に対する実装面とは反対側に位置する第2面であり、その高さ位置はH1である。金属部材20の上面21とは、金属部材20の回路基板2に対する実装面とは反対側に位置する第1面である。複数のグランドピラー15の先端同士を接続するリングパターン13を備えている場合には、リングパターン13の表面がアンテナユニット10の上面を構成する。アンテナ素子14については、高さ位置H1に設けられていても構わないし、図6に示すように、高さ位置H1よりも僅かに低い位置に設けられていても構わない。
【0026】
そして、本実施形態においては、複数のアンテナユニット10からなるアンテナ部品3を取り囲むように金属部材20が設けられ、その上面21の高さ位置H2がアンテナユニット10の高さ位置H1とほぼ等しいことから、最も外側に位置するアンテナ素子14の放射特性が改善される。つまり、このような金属部材20を設けない場合、中央部に位置するアンテナ素子14については周囲が別のアンテナ素子14で囲まれるのに対し、最も外側に位置するアンテナ素子14については、他のアンテナ素子14と隣接しない部分が存在するため、中央部に位置するアンテナ素子14とは放射特性が異なってしまう。しかしながら、本実施形態においては、複数のアンテナユニット10からなるアンテナ部品を金属部材20で囲んでいることから、金属部材20がダミーのアンテナ素子と同様に機能し、その結果、複数のアンテナ素子14間における特性差が低減される。
【0027】
ここで、高さ位置H1とH2が完全に一致している必要はないが、その差は、アンテナ素子14から放射する電磁波の波長をλとした場合、λ/20以下であることが好ましい。これは、高さ位置H1とH2の差がλ/20を超えると、中央部に位置するアンテナ素子14との条件差が大きくなり、放射特性に有意の差が生じるからである。また、高さ位置H1とH2の大小関係についても特に限定されないが、高さ位置H1とH2が同じであるか、或いは、高さ位置H1の方が高さ位置H2よりも高いことが好ましい。換言すれば、金属部材20の上面21は、高さ位置H1よりも低いことが好ましい。これは、H1<H2である場合には、xz面(E面)の放射パターンに傾きが生じやすいため、公差などを考慮して、僅かにH1≧H2となるよう設計することが望ましいからである。
【0028】
また、金属部材20の上面21の幅W(図1(b)参照)は、λ/2以上であることが好ましい。これは、幅Wをλ/2以上とすることにより、金属部材20がダミーのアンテナ素子とほぼ同様に機能するからである。ここで、金属部材20の幅Wとは、x方向における端部に位置するアンテナ素子14に隣接する部分ではx方向における幅を指し、y方向における端部に位置するアンテナ素子14に隣接する部分ではy方向における幅を指す。
【0029】
さらに、金属部材20とアンテナユニット10の間のギャップS2は、隣接するアンテナユニット10間におけるギャップS1以上であり、且つ、λ/2以下であることが好ましい。これは、ギャップS2が狭すぎる或いは広すぎると、最も外側に位置するアンテナ素子14の放射特性が他のアンテナ素子14と異なってしまうからである。
【0030】
また、金属部材20の内部に空洞22が設けられている場合、模式的な断面図である図8に示すように、空洞22に半導体チップなどの電子部品40を収容しても構わない。これによれば、回路基板2の表面をより有効活用することができるとともに、金属部材20を電磁波から電子部品40を遮蔽するシールドケースとして機能させることができる。電子部品40の端子電極41は、回路基板2の表面に設けられたランドパターン42を介して、回路基板2の表面又は内部に設けられた導体パターン43に接続される。ここで、グランド電位を供給する導体パターン43Gについては、ランドパターン42を介して金属部材20に接続しても構わない。これによれば、金属部材20がヒートシンクとして機能することから、回路基板2の放熱特性を高めることが可能となる。特に、図5に示すように金属部材20がフィン状であれば、ヒートシンクとしての機能が大幅に高められる。もちろん、金属部材20を導体パターン43Gに接続することは必須でなく、接着剤などを用いて回路基板2に固定するだけであっても構わない。この場合であっても、金属部材20によって回路基板2やアンテナ部品3の放熱特性が高められる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によるアンテナモジュール1は、複数のアンテナ素子14を囲む金属部材20を備えていることから、ダミーのアンテナ素子を追加することなく、最も外側に位置するアンテナ素子14の放射特性を改善することが可能となる。特に、本実施形態においては、アンテナユニット10にフィルター層FILなどが内蔵されていることからアンテナユニット10の厚さが厚く、これにより回路基板2を基準としたアンテナ素子14の高さ位置が高い。このような場合、金属部材20を付加しなければ、最も外側に位置するアンテナ素子14の放射特性は大きく変化するが、本実施形態によれば、金属部材20を用いることによって放射特性の変化を防止することができる。しかも、金属部材20が単一のパーツからなることから、部品点数を削減することも可能となる。
【0032】
図9は、第1の変形例によるアンテナモジュール1aの構造を説明するための略斜視図である。
【0033】
図9に示すアンテナモジュール1aは、金属部材20の代わりに4つの金属部材51~54が用いられている点において、図1に示したアンテナモジュール1と相違している。その他の基本的な構成は、図1に示したアンテナモジュール1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
図9に示すように、金属部材51,52はアンテナ部品3のx方向における両側にそれぞれ配置され、金属部材53,54はアンテナ部品3のy方向における両側にそれぞれ配置されている。この場合であっても、最も外側に位置するアンテナ素子14の特性を中央部に位置するアンテナ素子14とほぼ一致させることが可能となる。
【0035】
図9に示すアンテナモジュール1aが例示するように、金属部材は、アンテナ部品3を囲む単一のパーツである必要はなく、アンテナ部品3の各辺に沿ってそれぞれ配置された複数のパーツからなるものであっても構わない。これによれば、設計の自由度が高められる。また、アンテナ部品3の全ての辺に沿って金属部材20を配置する点も必須でなく、求められる特性に応じて、アンテナ部品3の少なくとも一辺に沿って配置すれば足りる。一例として、図9に示すアンテナモジュール1aから、金属部材51~54の一部を省略しても構わない。また、金属部材51~54のそれぞれは、更に複数のパーツから構成されていても構わない。
【0036】
図10は、第2の変形例によるアンテナモジュール1bの構造を説明するための略平面図である。
【0037】
図10に示すアンテナモジュール1bは、xy方向にアレイ状に配列された16個のアンテナユニット60によってアンテナ部品が構成されている点において、図1に示したアンテナモジュール1と相違している。その他の基本的な構成は、図1に示したアンテナモジュール1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
図10に示すように、アンテナユニット60は、1個のアンテナ素子14とこれを取り囲む複数のグランドピラー15を備えている。つまり、図2等を用いて説明したアンテナユニット10とは異なり、1つのアンテナユニット60に1個のアンテナ素子14が割り当てられている。図10に示すアンテナモジュール1bが例示するように、1つのアンテナユニットに複数のアンテナ素子が含まれている点は必須ではない。
【0039】
また、x方向に配列するアンテナ素子14の数とy方向に配列するアンテナ素子14の数が同じである必要はなく、例えば、2×8個のアレイであっても構わない。
【0040】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0041】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本開示によるアンテナモジュールは、複数のアンテナ素子と複数のアンテナ素子をそれぞれ囲むグランド導体と含むアンテナ部品と、複数のアンテナ素子のうち最も外側に位置するアンテナ素子を囲むグランド導体に隣接して配置された金属部材とを備える。
【0043】
これによれば、金属部材と隣接するアンテナ素子の放射特性が改善される。
【0044】
アンテナ部品は、複数のアンテナ素子がアレイ状に配列された構成を有し、金属部材は、アンテナ部品の少なくとも一辺に沿って配置されていても構わない。これによれば、金属部材に沿った複数のアンテナ素子の放射特性が改善される。
【0045】
金属部材は、アンテナ部品の各辺に沿って配置されていても構わない。これによれば、最も外側に位置する全てのアンテナ素子の放射特性が改善される。この場合、金属部材は、アンテナ部品の各辺に沿ってそれぞれ配置された複数のパーツからなるものであっても構わないし、アンテナ部品を囲む単一のパーツからなるものであっても構わない。前者によれば設計の自由度が増し、後者によれば部品点数が削減される。
【0046】
金属部材の幅は、アンテナ素子から放射する電磁波の波長の1/2以上であっても構わない。これによれば、金属部材と隣接するアンテナ素子の放射特性が十分に改善される。
【0047】
金属部材の実装面とは反対側に位置する第1面とグランド導体のアンテナ部品の実装面とは反対側に位置する第2面の高さ位置の差は、アンテナ素子から放射する電磁波の波長の1/20以下であっても構わない。これによれば、金属部材と隣接するアンテナ素子の放射特性が十分に改善される。この場合、金属部材の第1面の高さ位置は、アンテナ部品の第2面の高さ位置以下であっても構わない。これによれば、E面の放射パターンに傾きを防止することができる。
【0048】
アンテナ部品は、それぞれ複数のアンテナ素子を含む複数のアンテナユニットによって構成されていても構わない。これによれば、熱膨張係数の差に起因する接続不良などを防止しつつ、部品点数を削減することが可能となる。この場合、金属部材とアンテナ部品の間のギャップは、複数のアンテナユニット間におけるギャップ以上であり、且つ、アンテナ素子から放射する電磁波の波長の1/2以下であっても構わない。これによれば、金属部材と隣接するアンテナ素子の放射特性が十分に改善される。
【0049】
金属部材は、内部に空洞を有していても構わない。これによれば、空洞に半導体チップなどの電子部品を収容することが可能となる。
【0050】
アンテナ部品は、誘電体アンテナであっても構わない。これによれば、全体のサイズを小型化することができる。
【実施例0051】
(実施例1)
平面サイズが120mm×120mmである回路基板2を用意し、その中央部に4つのアンテナユニット10をアレイ状に配置した。アンテナユニット10の構成は図2等に示すとおりであり、それぞれ4つのアンテナ素子14がアレイ状に配列されているとともに、各アンテナ素子14が複数のグランドピラー15によって囲まれている。アンテナユニット10の平面サイズは10.6mm×10.6mmであり、厚さは2.2mmである。アンテナユニット10間におけるギャップS1は0.7mmである。各アンテナ素子14の偏波方向はy方向であり、yz面がE面、xz面がH面である。
【0052】
そして、図1(b)において符号Aで示す位置のアンテナ素子14のみを28GHzで励振し、yz面(E面)における放射パターンを測定した。測定の結果を図11に示す。ここで、図11(a)は金属部材20が存在しない場合の放射パターンを示し、図11(b)は金属部材20が存在する場合の放射パターンを示している。金属部材20の厚さは、アンテナユニット10と同じ2.2mmであり、幅Wは5mm(≒λ/2)である。金属部材20とアンテナ部品3の間のギャップS2は0.7mmである。
【0053】
図11(a)に示すように、金属部材20が存在しない場合、角部に位置するアンテナ素子14は、-50°付近においてゲインの大きな落ち込みが生じている。これに対し、図11(b)に示すように、金属部材20によってアンテナ部品3を取り囲めば、-50°付近におけるゲインの落ち込みが解消されることが確認できた。
【0054】
(実施例2)
実施例1の構成において、金属部材20の厚さ、つまり上面21の高さ位置H2を変化させた場合の放射パターンの変化を測定した。結果を図12に示す。図12において、符号B1は、高さ位置H2が高さ位置H1と同じ場合(つまり実施例1と同じ条件)での放射パターンを示し、符号B2は、高さ位置H2が高さ位置H1よりも500μm(≒λ/20)だけ高い場合の放射パターンを示し、符号B3は、高さ位置H2が高さ位置H1よりも500μm(≒λ/20)だけ低い場合の放射パターンを示している。
【0055】
図12に示すように、高さ位置H1とH2の差が500μm(≒λ/20)程度であれば、高さ位置H1とH2が一致している場合とほぼ同様の特性が得られることが確認された。
【0056】
(実施例3)
実施例1の構成において、金属部材20の幅Wを変化させた場合の放射パターンの変化を測定した。結果を図13に示す。図13において、符号C1は、幅Wが5mm(≒λ/2)である場合(つまり実施例1と同じ条件)での放射パターンを示し、符号C2は、幅Wが2.5mm(≒λ/4)である場合の放射パターンを示し、符号C3は、幅Wが10mm(≒λ)である場合の放射パターンを示し、符号C4は、金属部材20が存在しない場合の放射パターンを示している。
【0057】
図13に示すように、金属部材20の幅Wが大きくなるほど良好な特性が得られたが、金属部材20の幅Wがλである場合の特性と金属部材20の幅Wがλ/2である場合の特性に大きな差はなく、幅Wがλ/2以上であれば十分な効果が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0058】
1,1a,1b アンテナモジュール
2 回路基板
3 アンテナ部品
10 アンテナユニット
11,12 誘電体層
13 リングパターン
14 アンテナ素子
15,18 グランドピラー
16V,16H 給電パターン
17V,17H 給電ピラー
19V,19H フィルター回路
20 金属部材
21 上面
22 空洞
31 信号端子
32 グランド端子
40 電子部品
41 端子電極
42 ランドパターン
43,43G 導体パターン
51~54 金属部材
60 アンテナユニット
70 金属部材
81 アンテナ層
82 フィルター層
83 配線層
G1,G2 グランドパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13