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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154510
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】排泄物処理装置、及びアウター
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/451 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
A61F5/451 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057581
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594152929
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】仲島 雅
(72)【発明者】
【氏名】中野 敬太
(72)【発明者】
【氏名】小幡 純子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 鎮廣
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA09
4C098CC36
4C098CD05
4C098CE05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用者の動きによってレシーバが使用者の前後方向にずれる事態を抑制すること。
【解決手段】排泄物処理装置は、アウター100と、レシーバ21の少なくとも一部を、アウター100に位置決めする位置決め部121とを備え、アウター100のうちのレシーバ21と少なくとも重なる領域AR1は、レシーバ21が使用者の前後にずれる方向に対応する所定方向(Y)への伸び率が20%以下に設定されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の尿道口を含む排泄箇所を覆うレシーバを備え、前記レシーバによって水分を含む排泄物を受ける排泄物処理装置において、
前記使用者に装着され、前記レシーバを前記使用者の反対側から覆うアウターと、
前記レシーバの少なくとも一部を、前記アウターに位置決めする位置決め部とを備え、
前記アウターのうちの前記レシーバと少なくとも重なる領域は、前記レシーバが前記使用者の前後にずれる方向に対応する所定方向への伸び率Rが20%以下に設定されている
ことを特徴とする排泄物処理装置。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記レシーバの少なくとも一部を、前記アウターに対して前記所定方向への移動を規制可能に位置決めすることを特徴とする請求項1に記載の排泄物処理装置。
【請求項3】
前記レシーバは、前記使用者の股間部に沿って前記使用者の尿道口から肛門に向かって延在し、
前記位置決め部は、前記レシーバの前記延在する方向における両端部を、それぞれ前記アウターに対し、着脱自在に位置決めすることを特徴とする請求項2に記載の排泄物処理装置。
【請求項4】
前記レシーバは、前記使用者の股間部に沿って前記使用者の尿道口から肛門に向かって延在するシート状部材であり、
前記位置決め部は、前記レシーバにおける前記尿道口側の端部を位置決めする第1位置決め部と、前記レシーバにおける前記肛門側の端部を、前記所定方向に移動自在、かつ、前記所定方向に直交する直交方向に移動不能に位置決めする第2位置決め部とを有することを特徴とする請求項3に記載の排泄物処理装置。
【請求項5】
前記第2位置決め部は、前記アウターに設けられて前記尿道口側の端部が挿入されるポケットを有し、
前記ポケットは、内部に挿入された前記端部の前記直交方向へのずれを規制することを特徴とする請求項4に記載の排泄物処理装置。
【請求項6】
前記第2位置決め部は、前記アウターに設けられて前記尿道口側の端部の左右に立設するクッション材を有することを特徴とする請求項4に記載の排泄物処理装置。
【請求項7】
前記アウターは、前記使用者の下腹部及び臀部を覆うアウター本体と、前記アウター本体に対し、前記レシーバと重なる領域に取り付けられるサブ部材とを有し、
前記サブ部材は、前記アウターにおける前記領域を、前記所定方向への伸び率Rが20%以下に規制することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の排泄物処理装置。
【請求項8】
前記アウターは、前記使用者の太股が独立して通過する左右の足通過部を有し、
前記足通過部のそれぞれが前記太股の周囲に渡って密着し、左右の前記足通過部の間で、前記アウターが前記レシーバを前記使用者側に押さえる構成にしたことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の排泄物処理装置。
【請求項9】
伸び率Rの値は次の条件で算出された値であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の排泄物処理装置。
幅50mm、長さ300mmの試験片をたて方向及びよこ方向に調整し、全幅をつかむように引張試験機又はこれと同等の性能を持つ装置にセットした後、200mm間隔(L0)に印を付け、14.7Nの荷重を加える。1分間保持後の印間の長さ(L1)を測定し、次式によって伸び率Rが得られる。
R(%)=((L1-L0)/L0)×100
【請求項10】
使用者の尿道口を含む排泄箇所を覆うレシーバを、前記使用者の反対側から覆うアウターであって、
前記レシーバの少なくとも一部を当該アウターに位置決めする位置決め部を備え、
前記アウターのうちの前記レシーバと少なくとも重なる領域は、前記レシーバが前記使用者の前後にずれる方向に対応する所定方向への伸び率Rが20%以下に設定されている
ことを特徴とするアウター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物処理装置、及びアウターに関する。
【背景技術】
【0002】
尿等の排泄物を、吸引チューブを介して吸引する排泄物処理装置が知られている。この種の排泄物処理装置には、使用者の股間に装着されるレシーバと、レシーバに設けられた尿センサーと、レシーバに吸引チューブを介して接続されると共にセンサーに接続されるポンプ内蔵ユニットとを備えた集尿装置がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のレシーバは、使用者の肌と、使用者の着衣との間に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-022785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成では、使用者が動くとレシーバがずれることがある。
特に、使用者の前後方向にレシーバが大きくずれる可能性があり、その方向にレシーバが大きくずれると、尿等の排泄物を適切に吸引できなくなるおそれが生じる。また、従来の構成は、レシーバを装着する際にレシーバの装着位置が判り難い、と指摘されることがあった。
本発明は、使用者の動きによってレシーバが使用者の前後方向にずれる事態を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、使用者の尿道口を含む排泄箇所を覆うレシーバを備え、前記レシーバによって水分を含む排泄物を受ける排泄物処理装置において、前記使用者に装着され、前記レシーバを前記使用者の反対側から覆うアウターと、前記レシーバの少なくとも一部を、前記アウターに位置決めする位置決め部とを備え、前記アウターのうちの前記レシーバと少なくとも重なる領域は、前記レシーバが前記使用者の前後にずれる方向に対応する所定方向への伸び率Rが20%以下に設定されていることを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記位置決め部は、前記レシーバの少なくとも一部を、前記アウターに対して前記所定方向への移動を規制可能に位置決めしてもよい。
【0007】
また、上記構成において、前記レシーバは、前記使用者の股間部に沿って前記使用者の尿道口から肛門に向かって延在し、前記位置決め部は、前記レシーバの前記延在する方向における両端部を、それぞれ前記アウターに対し、着脱自在に位置決めしてもよい。
【0008】
また、上記構成において、前記レシーバは、前記使用者の股間部に沿って前記使用者の尿道口から肛門に向かって延在するシート状部材であり、前記位置決め部は、前記レシーバにおける前記尿道口側の端部を位置決めする第1位置決め部と、前記レシーバにおける前記肛門側の端部を、前記所定方向に移動自在、かつ、前記所定方向に直交する直交方向に移動不能に位置決めする第2位置決め部とを有してもよい。
【0009】
また、上記構成において、前記第2位置決め部は、前記アウターに設けられて前記尿道口側の端部が挿入されるポケットを有し、前記ポケットは、内部に挿入された前記端部の前記直交方向へのずれを規制してもよい。
【0010】
また、上記構成において、前記第2位置決め部は、前記アウターに設けられて前記尿道口側の端部の左右に立設するクッション材を有してもよい。
【0011】
また、上記構成において、前記アウターは、前記使用者の下腹部及び臀部を覆うアウター本体と、前記アウター本体に対し、前記レシーバと重なる領域に取り付けられるサブ部材とを有し、前記サブ部材は、前記アウターにおける前記領域を、前記所定方向への伸び率Rが20%以下に規制してもよい。
【0012】
また、上記構成において、前記アウターは、前記使用者の太股が独立して通過する左右の足通過部を有し、前記足通過部のそれぞれが前記太股の周囲に渡って密着し、左右の前記足通過部の間で、前記アウターが前記レシーバを前記使用者側に押さえる構成にしてもよい。
【0013】
また、上記構成において、伸び率Rの値は次の条件で算出された値であってもよい。
幅50mm、長さ300mmの試験片をたて方向及びよこ方向に調整し、全幅をつかむように引張試験機又はこれと同等の性能を持つ装置にセットした後、200mm間隔(L0)に印を付け、14.7Nの荷重を加える。1分間保持後の印間の長さ(L1)を測定し、次式によって伸び率Rが得られる。
R(%)=((L1-L0)/L0)×100
【0014】
また、使用者の尿道口を含む排泄箇所を覆うレシーバを、前記使用者の反対側から覆うアウターであって、前記レシーバの少なくとも一部を当該アウターに位置決めする位置決め部を備え、前記アウターのうちの前記レシーバと少なくとも重なる領域は、前記レシーバが前記使用者の前後にずれる方向に対応する所定方向への伸び率Rが20%以下に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
使用者の動きによってレシーバが使用者の前後方向にずれる事態を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る排泄物処理装置の概要構成を示す図である。
図2】レシーバの使用状態を使用者の股間部と共に示す図である。
図3】レシーバを平面状に展開した状態の分解斜視図である。
図4】アウターを使用者に装着した状態を示す図である。
図5】アウターを平面状に展開した状態を示す図である。
図6】平面状に展開したアウターとレシーバを示す図である。
図7】第2実施形態に係る排泄物処理装置のアウターを平面状に展開した状態を示す図である。
図8】第3実施形態に係る排泄物処理装置のアウターとレシーバを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る排泄物処理装置10の概要構成を示す図である。
排泄物処理装置10は、レシーバ21と、レシーバ21に吸引チューブ36及び配線23を介して接続される排泄物処理ユニット31とを備えている。排泄物処理ユニット31は、装置本体又はポンプ内蔵ユニットということもできる。この排泄物処理装置10は、使用者11から排泄された尿を吸引し、吸引した尿を排泄物処理ユニット31内のタンク32内に回収する装置であり、集尿装置、吸引式集尿装置、又は特殊尿器とも称される。
【0018】
レシーバ21は、尿を受ける容器であり、尿を吸い込む吸込ユニットとして機能する。レシーバ21の外部には、吸引チューブ36の先端(上流端に相当)が接続されるチューブ接続口21Aと、レシーバ21内の尿センサー81に配線23を接続するためのコネクタ21Cとが露出している。
このレシーバ21は、後述するアウター100(図4)を利用して使用者11の股間部11C(図2)に装着される。アウター100は、使用者11に装着される装着部材であり、下着、又はサポータと言うこともできる。尿センサー81は尿を検出するセンサーである。
【0019】
図1を利用して排泄物処理ユニット31について説明する。
排泄物処理ユニット31は、タンク32と、サブタンク33と、真空ポンプ34と、フィルタ35と、これらにつながる複数本の吸引チューブ36,37及び38とを備え、これらによって尿を吸引する吸引経路が形成される。真空ポンプ34は、吸引経路を真空にすることによって、空気と共にレシーバ21に集められた尿を吸引する。真空ポンプ34の排気口には排気チューブ39が接続されている。なお、図1には空気の流れを矢印で示している。
【0020】
以下の説明において、各吸引チューブ36~38を特に区別して表記する場合、レシーバ21につながる上流側の吸引チューブ36を「第1チューブ36」と表記し、下流側にいくに従って、「第2チューブ37」、「第3チューブ38」とそれぞれ表記する。これら吸引チューブ36~38及び排気チューブ39には、シリコーンゴム製のチューブ、又は塩化ビニル製のチューブ等の可撓性を有するチューブが使用される。なお、排泄物処理ユニット31内に配置される各チューブ37~39のいずれかを、可撓性を有しないチューブとしてもよい。
【0021】
タンク32は、吸引された尿を貯留し、適宜なタイミングで取り外され、貯留された尿を廃棄場所で廃棄可能にする。排泄物処理ユニット31は、タンク32が着脱自在なタンク接続部40を有している。このタンク接続部40に第1チューブ36の下流端及び第2チューブ37の上流端が接続される。タンク32をタンク接続部40に接続することによって、タンク32の上部開口が塞がれてタンク32内の気密状態が保持され、かつ、タンク32内が第1チューブ36及び第2チューブ37に連通する。この構成により、第1チューブ36を介してタンク32内に流入した尿等の液体がタンク32内に貯留される。また、タンク32内の液面よりも上方の空気を第2チューブ37へと流すことができる。
【0022】
タンク接続部40は、タンク32内に向けて下方に突出する突出部40Aを有している。突出部40Aには、タンク32内の尿の液面の上昇に応じて上下動するフロートが設けられている。さらに、突出部40Aには、フロートが予め定めた上限位置に移動すると、タンク32と第2チューブ37との連通を遮断する弁機構も設けられている。これらの構成により、タンク32内の液面が上限位置を超えるとタンク32と第2チューブ37との連通が自動遮断される。
【0023】
サブタンク33は、メインタンクとして機能するタンク32と真空ポンプ34との間に配置される。タンク32から流出した水分がサブタンク33に貯留されることによって、真空ポンプ34への水分(尿等)の流入が防止される。このサブタンク33には、第2チューブ37の下流端が着脱自在に接続されると共に、第3チューブ38の上流端が着脱自在に接続される。タンク32及びサブタンク33は取り外し可能である。したがって、各タンク32,33のメンテナンスが容易である。
【0024】
真空ポンプ34の吸気口には、第3チューブ38の下流端が接続される。真空ポンプ34の排気口には排気チューブ39の上流端が接続される。排気チューブ39の下流端にはフィルタ35が接続される。フィルタ35は脱臭フィルタである。したがって、フィルタ35により真空ポンプ34から排出された空気が脱臭される。なお、真空ポンプ34の保護のために、真空ポンプ34の上流である第3チューブ38にフィルタをつけてもよい。
【0025】
排泄物処理ユニット31は、操作部41、報知部42、駆動部43及び制御部44を更に備えている。操作部41は、使用者11等からの各種の指示を入力し、入力された指示を制御部44に出力する。入力可能な指示には、吸引動作を自動で行う自動運転モードの指示、及び、吸引動作を手動で行う手動運転モードの指示等が含まれる。自動運転モードは、尿センサー81によって尿が検出されると、真空ポンプ34を所定時間作動させて尿を自動吸引する動作状態である。また、手動運転モードは、使用者11等の所定操作に応じて真空ポンプ34を作動/停止させる動作状態である。
【0026】
排泄物処理ユニット31が指示を入力する方法は、ハードウェアスイッチの操作、音声入力、及び通信等の公知の様々な方法を適用可能である。報知部42は、制御部44の制御の下、ランプ、表示パネル、及び音声デバイス等の公知のデバイスを用いて各種の情報を外部に報知する。駆動部43は、制御部44の制御の下、吸引源として機能する真空ポンプ34を駆動する。
【0027】
制御部44は、予め記憶された制御プログラムを実行することにより排泄物処理装置10の動作を制御するコンピュータとして機能する。また、制御部44は、配線23を介して尿センサー81が接続されることによって、尿センサー81の検出結果を取得する。この制御部44が実行する処理は、自動運転モード及び手動運転モードを選択的に実行する吸引制御を含んでいる。
【0028】
自動運転モードは、尿センサー81によって尿が検出されると、尿の吸引を開始する動作モードである。なお、尿の吸引を終了するタイミングは、尿センサー81によって尿が検出されてから所定時間が経過したタイミングでもよいし、尿センサー81によって尿が検出されなくなってから所定時間が経過したタイミングでもよい。手動運転モードは、使用者11等からの指示に応じて吸引開始と吸引終了とを行う動作モードである。なお、各モードの具体的な吸引制御には、公知の制御を適用可能である。
【0029】
図2は、レシーバ21の使用状態を使用者11の股間部11Cと共に示す図である。図2に示す使用者11は仰向けの姿勢(仰臥位)である。図2中の下方は使用者11の背側であり、上方は使用者11の腹側であり、符号11Lは使用者11の足を示し、符号11Tは尾てい骨(尾骨とも称する)を示している。図2では、説明の便宜のために片足のみ示している。
レシーバ21は、股間部11Cに対し尿道口11Nからなる排泄箇所を覆う位置に装着される。レシーバ21は、股間部11Cに沿って湾曲自在な柔軟性を有し、尿道口11Nから肛門11Kに向かって延在し、尾てい骨11T近傍まで延在することが可能な中空の長手部材に形成される。このレシーバ21は、股間部11Cと両足11Lとの間にできる隙間に収まり、使用者11が座った姿勢(坐位)や横向きの姿勢(側臥位)でもレシーバ21を装着し続けることが可能である。
このようにレシーバ21が、尿道口11Nから肛門11Kの間を含む広い領域を覆うので、使用者11が仰臥位、坐位、及び側臥位のいずれの姿勢であってもレシーバ21で尿を受け易くなる。
【0030】
図3は、レシーバ21を平面状に展開した状態の分解斜視図である。図3の説明においては、レシーバ21の装着時に使用者11側となる方向を上とし、使用者11から離間する側となる方向を下として説明する。
レシーバ21は、所定の中心線LCに沿って延び、中心線LCに対して幅方向(装着時の使用者11の左右方向)に対称形状に形成されている。中心線LCは、レシーバ21の装着時に股間部11Cの左右中心に位置し、尿道口11Nから肛門11Kに向かって延在する線に相当している。
【0031】
レシーバ21は、尿(排泄物)の収容空間50A(図2参照)を有する外装部50を備えている。本実施形態のレシーバ21は、布タイプの外装部50を備えている。
レシーバ21の外装部50は、第一の外装布の一例としての表面防水布51を有する。表面防水布51は、外装部50の使用者11側の表面(装着時の内表面)を構成し、使用者11の下腹部から股間部11Cを経て臀部の一部までを覆う。表面防水布51は、防水加工された布で形成され、収容空間50Aから尿が染み出ないようにする。外装部50の使用者11側の表面が布で形成されるので、使用者11の装着感を良好にし易くなる。なお、第一の外装布の一例としては、表面防水布51に代えて、撥水加工がなされた布でもよい。
【0032】
表面防水布51には、中心線LCに沿って延びる長孔状の開口部51Aが形成されている。開口部51Aは、表面防水布51の先端側に偏った位置に形成されている。レシーバ21を使用者11に装着した場合、開口部51Aは、股間部11Cに沿って使用者11の尿道口11Nから肛門11Kに向かって所定の幅で延在する。この開口部51Aは、収容空間50Aへの尿の入口、及び、レシーバ21内に尿を吸引する吸引口として機能する。本実施形態では、開口部51Aが長孔状であるが、開口部51Aは丸孔状、角孔状等、収容空間50Aへの尿の入口、及び、レシーバ21内に尿を吸引する吸引口として機能する開口形状であれば、開口部51Aは任意の開口形状でよい。
【0033】
表面防水布51の下方(裏面側)には、表面布61が配置される。表面布61は表面防水布51よりも長手方向に短く、表面防水布51の先端側に配置される。表面布61は、透水性を有すると共に柔軟性を有する布地で形成され、表面防水布51の開口部51Aを下方から覆う。表面布61は、開口部51Aよりも大きく、表面防水布51よりも小さい形状に形成されている。開口部51Aが布地からなる表面布61で閉塞されるので、表面布61以外のレシーバ21内の部材が開口部51Aから使用者11に直接接触することを回避でき、装着感の向上に寄与する。なお、表面布61は、保水量の少ない布が好ましい。
【0034】
ここで、透水性を有すると共に柔軟性を有する布地としては、例えば、パイル織物が適用可能である。また、一種類の布地に代えて、機能性の異なる二種類の布地を一体化した布地でもよい。例えば、表面布61としては、軟質性のメッシュの布地と、吸水速乾性の布地とを縫合して一体とされた布地でもよい。この表面布61の場合、軟質性のメッシュの布地が上方(表面側)となり、吸水速乾性の布地が下方(裏面側)となるように、表面布61が表面防水布51の下方に配置される。これにより、吸水速乾性の布地によって、尿の吸込み性と透過性を安定し易くできると共に、軟質性のメッシュの布地によって、使用者11の肌と吸水速乾性の生地が直接触れさせないにして装着感を確保できる。
【0035】
表面布61の下方には、スペーサー62を介して尿センサー81が配置される。スペーサー62は、メッシュ素材からなる柔軟性を有するシート材で形成される。このスペーサー62は、表面布61と同じ大きさに形成され、表面布61と輪郭を揃えた状態で積層される。スペーサー62は表面布61と尿センサー81の間に空間を確保する。
表面布61と尿センサー81との間にメッシュ素材のスペーサー62が配置されるので、開口部51Aから進入した尿を尿センサー81に速やかに接触させ易くなる。また、スペーサー62により、尿センサー81が、乾き切っていない表面布61と接触し続けることが防止され、尿吸引後も尿センサー81が短絡した状態を防止し易くできる。なお、スペーサー62は、保水性が少なく、尿等の影響で腐食しない材料が好ましく、例えば、樹脂で形成されている。
【0036】
尿センサー81は、長手方向に延びるセンサーシート82と、センサーシート82の基端側に設けられたコネクタ21Cとを備える。センサーシート82は、スペーサー62の下面側に配置される。コネクタ21Cは、外装部50の外部に導出され、表面防水布51における使用者11の反対側に位置する。これによって、コネクタ21Cは使用者11の肌に接触し難くなっている。センサーシート82は開口部51Aよりも幅狭に形成されている。
センサーシート82には少なくとも一対以上の電極が設けられている。
尿センサー81は、電極間の抵抗値が水分を介して導通したときに低くなることを利用して尿を検出する。この尿センサー81によって開口部51Aを通過する尿を検出するので、外装部50の底面に溜まる尿を検出する場合と比べ、早期に尿を検出し易くなる。なお、上述のスペーサー62は、表面布61と同じ大きさに形成される構成に代えて、少なくとも電極の部分の上部を覆う形状であればよい。
【0037】
尿センサー81の下方には、消臭不織布63が配置される。消臭不織布63は、透水性及び所定の消臭効果を有する不織布で形成され、かつ柔軟性を有している。この消臭不織布63は、スペーサー62と同じ大きさに形成され、スペーサー62と共に尿センサー81のセンサーシート82を挟んでいる。消臭不織布63は、少なくとも尿の消臭効果を有している。
【0038】
消臭不織布63の下方には、吸水布64が配置される。吸水布64は、拡散性が高く柔軟性を有する布地で形成されている。吸水布64は、消臭不織布63の大きさ以上の大きさに形成される。本実施形態では、吸水布64は、消臭不織布63と同じ大きさに形成される。吸水布64は、厚み方向に尿を通過させると共に、通過させた尿の開口部51A側への移動を抑制する。吸水布64は、保水性が少ないほうが好ましい。
【0039】
吸水布64の下方には、先端に吸引口を備える吸引チューブ71が配置される。本実施形態の吸引チューブ71は、チューブ接続口21Aから延びて2つに分岐するYの字状に形成される。吸引チューブ71は、シリコーンゴム製のチューブ、又は塩化ビニル製のチューブといった可撓性を有するチューブである。
吸引チューブ71の2つに分岐した部分71K(以下、先端側部分71Kと言う)の間には、形状保持体65が配置される。先端側部分71K、及び形状保持体65は、内防水布52に設けられた凹状の収容部52Aに収容される。
【0040】
内防水布52は、外装部50の表面の一部を構成する部材であり、第二の外装布の一例である。この内防水布52は、外装部50の使用者11とは反対側の表面(装着時の外表面)を構成する。内防水布52は、収容部52Aと、収容部52Aの周囲に形成されたフランジ状の接合部52Bとを備えている。
内防水布52は、表面防水布51の外周部51Bと接合部52Bで熱溶着される。表面防水布51と内防水布52とが熱溶着されることによって、外装部50、及びその収容空間50Aが形成される。熱溶着で接合した構造により、外装部50およびその収容空間50Aが形成される。内防水布52は、防水加工された布で形成され、収容空間50Aから尿が染み出ないようにする。なお、第二の外装布の一例としては、内防水布52に代えて、撥水加工がなされた布でもよい。
【0041】
表面防水布51と内防水布52とが合わせ構造で接合されることで、各種部材61~65、71、81が収容空間50Aに積層状に挟まれて一体とされる。熱溶着で接合するため、縫合で接合する場合と比べて収容空間50Aからの尿漏れを防止し易い。外装部50と、各種部材61~65、71、81により、本実施形態のレシーバ21が構成される。
【0042】
図3に示すように、収容部52Aは、開口部51Aの長手方向に延びる長穴形状で凹む形状に形成されている。この収容部52Aに、吸引チューブ71の2つに分岐した先端側部分71K及び形状保持体65が嵌まることによって、先端側部分71Kが内防水布52に位置決めされる。先端側部分71Kは、開口部51Aの長手方向にわたって開口部51Aの幅方向に間隔を空けて配置される。
【0043】
吸引チューブ71のチューブ接続口21Aは、収容部52Aの外部に導出される。吸引チューブ71は、排泄物処理ユニット31の吸引力によって、外装部50内の収容空間50Aを負圧にし、吸水布64と収容部52Aとの間に入った尿を吸引する。吸引チューブ71の先端は、仰臥位等の場合に、収容空間50Aのうちの最下端又は最下端近傍に位置し、先端に設けられた吸込口により収容空間50A内の尿を吸引し易くなる。
【0044】
形状保持体65は、多孔性の軟質構造体で形成されている。形状保持体65は、多孔性を有するので、吸水布64と収容部52Aとの間の空間の空気及び尿の流れを妨げない。また、形状保持体65は、吸引チューブ71からの吸引によって収容空間50Aが負圧になっても変形しない程度の強度や弾性力を有している。
図3に示すように、形状保持体65は、吸引チューブ71の2つに分岐した先端側部分71Kを、収容空間50Aの内壁に接触させて配置した状態で、吸水布64と収容部52Aとの間に空く空間を埋める形状に形成されている。これによって、形状保持体65は、分岐した先端側部分71K間を架橋する架橋部材として機能し、吸引時の負圧等で吸引チューブ71が位置ずれする事態や、収容空間50Aが狭くなる事態を抑制できる。
【0045】
また、形状保持体65は、吸引チューブ71の外径以上の厚みを有することで、吸水布64と収容部52Aとの間を上下に渡って架橋する架橋部材としても機能する。これによって、吸引時の負圧等で収容空間50Aが負圧になった場合でも、吸水布64と収容部52Aとの間に空く空間が上下に狭くなる事態を抑制できる。吸水布64と収容部52Aとの間に空く空間以外は、上記シート部材が積層される構成であるので、吸引時の負圧が作用しても上記シート部材の箇所は殆ど変形しない。すなわち、形状保持体65によって、外装部50を含むレシーバ21の形状変更を抑制することができる。
本構成では、図3に示すように、形状保持体65は、表面防水布51の開口部51Aに対応する領域に配置される。このため、開口部51Aに対応する領域の一部が吸引チューブ71で塞がれる事態を回避でき、排出開始直後の尿を収容部52A内に導入させ易く、かつ、吸引時に開口部51A全体に吸引力を作用させやすくなる。
【0046】
図4は、アウター100を使用者11に装着した状態を示している。
アウター100は、前開きで左右に開くことが可能なオープンタイプに形成されている。このアウター100は、オムツと比べて薄いシート状の伸縮性及び屈曲性を有する素材で形成され、使用者11に装着された状態では、股下が短く膝上丈の、いわゆるショーツ(ショートパンツ)とほぼ同じ外観となる。
図5は、アウター100を平面状に展開した状態を示している。図中、符号Xは、使用者11の左右方向である。また、符号Yは、レシーバ21が使用者11の前後方向(股間部11Cに沿って前後)にずれるときのレシーバ21の移動方向であり、説明の便宜上、「前後ずれ方向Y」と表記する。この前後ずれ方向Yは、本発明の「所定方向」に相当する。
【0047】
図4及び図5に示すように、アウター100は、レシーバ21が装着されるアウター本体101と、アウター本体101から使用者11の左右に延在する左右延出部111とを一体に備える。アウター本体101は、使用者11の臀部を覆う背側覆い部102と、使用者11の下腹部を覆う前側覆い部103とを備えている。
背側覆い部102は、使用者11の股間部11Cから背側に行くに従って徐々に幅広となるシート状部材であり、背側の端部に、左右に延出する左右延出部111が取り付けられている。背側覆い部102は、使用者11の臀部よりも幅広に形成され、臀部から左右にはみ出す部分を使用者11の下腹部側へ回り込ませることができる。背側覆い部102の左右両端、つまり、使用者11の下腹部側に回り込む部分には、左右のスナップ受け部102Aが設けられている。
【0048】
左右のスナップ受け部102Aは、前側覆い部103の左右に設けられた複数のスナップ103Sが着脱可能なスナップ受け(スナップが嵌合する部品に相当)を有している。スナップ受け部102Aは、例えば、複数のスナップ受けと布地とを一体にした既製品を装着した部分である。本説明において、スナップは、ホック、又はホックボタンとも称される部品であり、例えば、スナップボタンのセットを構成する対の部品のうち、雄側の部品である。また、スナップ受けは、例えば、スナップボタンのセットを構成する対の部品のうち、雌側の部品である。
なお、本発明は、スナップを用いる構成に限定されない。例えば、面ファスナーなどの着脱可能、かつ固定可能(位置決め可能)な部材を広く適用可能である。面ファスナーを用いた場合、調整範囲を拡げやすくなり、様々な太股のサイズに合わせて固定位置を調整し易くなる。
【0049】
前側覆い部103は、使用者11の股間部11Cから下腹部側を覆うように延在するシート状部材であり、背側覆い部102と一体の部材である。前側覆い部103は、想定される使用者11の下腹部の幅よりも幅が狭く形成され、左右にスナップ部103Aが設けられる。左右のスナップ部103Aは、前側覆い部103と一体の生地に対し、複数のスナップ103Sと布地とが一体に構成された既製品を装着した部分である。なお、左右のスナップ部103Aは、生地にスナップ103Sを直接取り付けた構成でもよい。スナップ受け部102Aとスナップ部103Aとは、着脱容易な他の着脱構造を適用してもよい。
【0050】
左右のスナップ受け部102Aとスナップ部103Aとを連結することによって、図4に示すように、使用者11の左右の太股11Vがそれぞれ独立して通過する足通過部101Vが形成される。足通過部101Vは、換言すると、スナップ受け部102Aからスナップ部103Aまでの範囲は、対応可能な太さの太股11Vを通すことが可能なサイズであって、かつ、その太股11Vの周囲に渡って密着する相対的に強い伸縮力を有する部分に形成されている。
【0051】
前側覆い部103は、左右の足通過部101Vの間で、使用者11の下腹部に向けてレシーバ21を押さえるように形状及び伸縮力が設定されている。本構成では、想定されるサイズの使用者11に対し、少なくとも図4中の符号で示す領域AR0(背側の同領域も含む)が使用者11側に密着する形状及び伸縮力に形成されている。
本構成では、この領域AR0が使用者11に密着するようにアウター100が構成されている。左右の足通過部101Vの間でレシーバ21を使用者11側に押さえることができるので、レシーバ21が左右の太股11Vの間に保持され、レシーバ21が左右方向Xに大きくずれる事態が抑制される。
【0052】
左右延出部111は、対応可能な体型の使用者11の腰に巻き付け可能な長さに形成されている。左右延出部111の両端部は、面ファスナーを用いて任意の位置で互いに連結可能である。左右延出部111を使用者11の腰に巻き付け、その両端部を互いに連結することによって、アウター100を、使用者11の腰を基準とした位置に取り付け可能である。なお、左右延出部111の伸縮性及び伸縮力は適宜に設定すればよい。本構成では、図4に示すように、前側覆い部103の一部が左右延出部111に重なる。
アウター100の各部を構成する素材は、特に限定されない。例えば、広く流通する天然素材、又は化学繊維等を適用可能である。
【0053】
本構成では、上述したように、レシーバ21を左右の太股11Vの間に保持することで、レシーバ21の左右方向Xへのずれがある程度、抑制することができる。これに対し、前後ずれ方向Y(図4)においては、左右の太股11Vや足通過部101Vではレシーバ21の移動を十分に規制することができない。仮にレシーバ21が前後ずれ方向Yにずれると、尿を適切に受けることができない事態や、尿センサー81が尿を適切に検出できない事態や、尿を吸引できなくなる事態が生じるおそれがある。
【0054】
そこで、本構成では、レシーバ21をアウター100に位置決めする位置決め部121を設け、位置決め部121によって、アウター100に対するレシーバ21の前後ずれ方向Yへのずれを規制している。さらに、アウター100の伸縮によって位置決め部121がアウター100と共にずれてしまう事態を規制するために、アウター100のうちのレシーバ21と少なくとも重なる領域AR1について、前後ずれ方向Yへの伸び率Rを所定範囲に制限している。
以下、位置ずれを規制するための構成について説明する。
【0055】
位置決め部121は、レシーバ21における尿道口11N側の端部を位置決めする第1位置決め部122と、レシーバ21における肛門11K側の端部を位置決めする第2位置決め部123とを備えている。
図6は、平面状に展開したアウター100とレシーバ21を示す図である。
第1位置決め部122は、領域AR1内に配置されるスナップ受け部122Aを有し、このスナップ受け部122Aには、レシーバ21の尿道口11N側の端部に設けられたスナップ部21D(図6)を着脱可能である。スナップ受け部122Aは、例えば、複数(本構成では2個)のスナップ受けと布地とを一体にした既製品をアウター100に装着した部分である。
【0056】
図6に示すように、レシーバ21には、レシーバ21の中心線LCに対して左右一方に偏った位置にコネクタ21Cが設けられ、左右他方に空いたスペースにスナップ部21Dが設けられている。スナップ部21Dは、例えば、複数のスナップと布地とが一体に構成された既製品をレシーバ21に装着した部分である。スナップ受け部122Aとスナップ部21Dとは、着脱容易な他の着脱構造を適用してもよい。
【0057】
スナップ受け部122Aとスナップ部21Dとを連結することによって、レシーバ21の尿道口11N側の端部がアウター100に位置決めされる。この位置決めによって、レシーバ21の尿道口11N側の端部が、アウター100に対して左右方向X、及び前後ずれ方向Yにずれる事態を回避できる。
【0058】
第2位置決め部123は、少なくとも一部が領域AR1内に配置されるポケット123Pを有している。ポケット123Pは、アウター100に固定され、レシーバ21における肛門11K側の端部を挿入可能な袋形状に形成される。
ポケット123Pの袋形状は、レシーバ21における肛門11K側の端部が挿入されると、その端部の左右方向X(前後ずれ方向Yに直交する方向)へのずれを規制可能な幅に形成されている。
なお、ポケット123Pは、一端が閉塞した袋形状でなくてもよく、両端が開放した形状でもよい。ポケット123Pは、レシーバ21における肛門11K側の端部の左右方向Xへのずれを規制するものであればよい。
【0059】
第1位置決め部122、及び第2位置決め部123によって、レシーバ21の延在する方向における両端部が、アウター100に対し着脱自在に位置決めされる。
より具体的には、第1位置決め部122、及び第2位置決め部123の双方によって、レシーバ21の両端部が、アウター100に対して左右方向X(前後ずれ方向Yに直交する方向に対応する方向)にずれる事態が規制される。また、第1位置決め部122、及び第2位置決め部123のうち、尿道口11Nに相対的に近い第1位置決め部122によって、レシーバ21がアウター100に対して左右方向X及び前後ずれ方向Yに移動することが規制されるので、尿道口11N近辺にレシーバ21を適切に配置し易くなる。
【0060】
アウター100のうちのレシーバ21と重なる領域AR1については、次の伸び率Rに設定される。
伸び率Rは、アウター100の前後ずれ方向Yへの伸縮やずれによって、アウター100の一部と共にレシーバ21が移動する事態を許容範囲内に抑える値に設定される。アウター100の前後ずれ方向Yへの伸縮やずれとは、使用者11の所定の動きによって生じる伸縮やずれであり、例えば、寝返り、介護時に発生するアクション(体位交換、移乗)、歩行といった日常発生するアクションによって生じるアウター100の伸縮やずれである。
【0061】
また、許容範囲は、レシーバ21が、予め設定した基準位置からずれても排泄物処理装置10の機能を十分に発揮できる範囲である。例えば、許容範囲は、尿を適切に受けて吸引でき、尿センサー81が尿を検出可能な範囲であり、実験によって定めた範囲、又は、設計上、定めた範囲でもよい。
【0062】
発明者等は、高齢者の体を模した人形を用いた実験、及び、高齢者等の人体に装着した実験等によって検討したところ、伸び率Rは、前後ずれ方向Yに対応する方向で20%以下に規制することが好ましく、より好ましくは、10%以内である。
【0063】
本実施形態において、伸び率Rの値は、「JIS L 1096織物及び編物の生地試験方法」に基づく値を採用する。具体的には、幅50mm、長さ300mmの試験片をたて方向及びよこ方向に調整し、全幅をつかむように引張試験機又はこれと同等の性能を持つ装置にセットした後、200mm間隔(L0)に印を付け、14.7Nの荷重を加える。1分間保持後の印間の長さ(L1)を測定し、次式によって伸び率Rを算出することができる。
【0064】
R(%)=((L1-L0)/L0)×100・・・式(1)
【0065】
伸び率Rが20%を超える場合とは、尿漏れの抑制、尿センサー81による尿の検出精度、及び尿の吸引が、実用的な範囲に収まらない場合に相当する。つまり、レシーバ21として実用上十分な性能を発揮できるように、伸び率Rの範囲を設定すればよい。
本発明において、伸び率Rは、生地そのものの伸び率に限定されず、伸び率が相対的に大きい生地に後加工を行うことによって伸び率を抑えた場合には、後加工を行った後の伸び率を意味する。後加工は例えば縫製である。
【0066】
なお、領域AR1について、前後ずれ方向Y以外の伸び率Rについては適宜に設定すればよい。また、領域AR1以外の領域についても、前後ずれ方向Y、及び前後ずれ方向Y以外の方向のそれぞれについて、伸び率Rを適宜に設定すればよい。
例えば、アウター100のフィット性、着脱性、及び足通過部101Vに望まれる伸縮力を考慮すると、アウター100の左右方向Xの伸び率Rは、20%を超えることが好ましい場合が考えられる。この考えに合わせれば、領域AR1、及び領域AR1以外の領域について、左右方向Xの伸び率Rを、20%を超える範囲に設定してもよい。
【0067】
一方、アウター100の左右方向Xの伸び率Rを20%以下にしても実用上問題が生じない場合、領域AR1の左右方向Xの伸び率Rを20%以下に設定してもよいし、領域AR1以外の領域についても左右方向Xの伸び率Rを20%以下に設定してもよい。この場合、領域AR1について、前後ずれ方向Y及び左右方向Xを含む全方向について、伸び率Rを20%以下にすることも考えられる。伸び率Rの方向性がなくなることで、領域AR1の生地の選定が容易になり、また、アウター本体101の製作も容易になる。
また、領域AR1以外の領域について、前後ずれ方向Yの伸び率Rを20%以下にしても実用上問題が生じない場合、領域AR1、及び領域AR1以外の領域の双方を、前後ずれ方向Yの伸び率Rを20%以下にしてもよい。この場合、領域AR1を含むアウター本体101を同一の生地にすることが考えられ、アウター本体101の製作が容易になる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の排泄物処理装置10は、使用者11に装着され、レシーバ21を使用者11の反対側から覆うアウター100と、レシーバ21の少なくとも一部を、アウター100に位置決めする位置決め部121とを備えている。アウター100のうちのレシーバ21と少なくとも重なる領域AR1は、前後ずれ方向Yへの伸び率Rが20%以下に設定されている。
この構成によれば、位置決め部121によってアウター100に対するレシーバ21のずれを抑え、かつ、アウター100そのものの前後ずれ方向Yへの伸縮やずれを抑えることができる。この結果、使用者11の動き等によってレシーバ21が使用者11の前後方向等にずれる事態を抑制できる。
【0069】
また、位置決め部121は、レシーバ21の少なくとも一部を、アウター100に対して前後ずれ方向Yへの移動を規制可能に位置決めする。この構成によれば、レシーバ21が使用者11の前後方向にずれる事態を効果的に抑制できる。
【0070】
また、レシーバ21は、使用者11の股間部11Cに沿って使用者11の尿道口11Nから肛門11Kに向かって延在する。また、位置決め部121は、レシーバ21の延在する方向における両端部を、それぞれアウター100に対し、着脱自在に位置決めする。これらの構成によれば、レシーバ21の延在する方向における両端部を除く領域に、位置決め部121を配置せずにすむ。したがって、使用者11の尿道口11N周辺等へレシーバ21を適切に配置し易くなる。また、上記構成によれば、レシーバ21を装着する際に、レシーバ21の装着位置が判りやすくなる、といった利点も得られる。
【0071】
また、レシーバ21は、使用者11の股間部11Cに沿って使用者11の尿道口11Nから肛門11Kに向かって延在するシート状部材に形成されている。また、位置決め部121は、レシーバ21における尿道口11N側の端部を位置決めする第1位置決め部122と、レシーバ21における肛門11K側の端部を、前後ずれ方向Yに移動自在、かつ、前後ずれ方向Yに直交する左右方向X(直交方向に相当)に移動不能に位置決めする第2位置決め部123とを有している。
これらの構成によれば、シート状のレシーバ21が使用者11の前後方向等にずれる事態を抑制しながら、レシーバ21を尿道口11N周辺等に適切に配置でき、かつ、レシーバ21を容易に着脱し易くなる。
【0072】
また、第2位置決め部123は、アウター100に設けられて、レシーバ21における尿道口11N側の端部が挿入されるポケット123Pを有している。このポケット123Pは、内部に挿入された上記端部の左右方向Xへのずれを規制する。
第2位置決め部123にポケット123Pを採用することにより、シート状のレシーバ21を第2位置決め部123に容易に着脱し易くなる。また、使用者11が仰臥位の際にポケット123Pに体圧が作用しても、ポケット123Pに代えてスナップ等の係合構造を採用する場合に比べて、使用者11に与える違和感を低減でき、快適性を向上できる。
【0073】
また、第1位置決め部122には、スナップ留めからなる係合構造を採用している。この構成によれば、体圧が作用することが相対的に低い尿道口11N側(下腹側)の端部については、スナップ留めによりレシーバ21とアウター100との位置ずれを効果的に防止できる。
【0074】
さらに、アウター100は、使用者11の太股11Vが独立して通過する左右の足通過部101Vを有している。そして、足通過部101Vのそれぞれが太股11Vの周囲に渡って密着し、左右の足通過部101Vの間で、アウター100がレシーバ21を使用者11側に押さえる。この構成によれば、使用者11の左右の太股11Vを基準にしてレシーバ21を配置でき、レシーバ21が左右方向Xにずれる事態を抑制できる。
【0075】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る排泄物処理装置10のアウター100を平面状に展開した状態を示している。
第2実施形態は、アウター本体101に対し、レシーバ21と重なる領域AR1に取り付けられるサブ部材131を備え、サブ部材131が、アウター本体101における領域AR1を、前後ずれ方向Yへの伸び率Rを20%以下に規制する点が第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と異なる点を説明し、重複説明は省略する。
【0076】
サブ部材131は、アウター本体101の背側覆い部102から前側覆い部103に渡って連続するシート状部材に形成され、アウター本体101と一体的に屈曲可能な屈曲性を有している。このサブ部材131は、背側覆い部102及び前側覆い部103の左右中央領域を覆うようにアウター本体101の内側に取り付けられ、領域AR1をアウター本体101内側から覆っている。
サブ部材131は、アウター100の領域AR1を、前後ずれ方向Yへの伸び率Rが20%以下に規制する部材である。より具体的には、サブ部材131そのものが、前後ずれ方向Yへの伸び率Rが20%以下、より好ましくは、10%以内に形成されている。
【0077】
図7に示すように、このサブ部材131は、背側覆い部102、スナップ受け部102A、スナップ部103Aのいずれにも取り付けられていない。したがって、サブ部材131が、背側覆い部102、スナップ受け部102A、スナップ部103Aの伸縮を妨げることがない。また、サブ部材131そのものがレシーバ21に接触するので、サブ部材131によってレシーバ21の前後ずれ方向Yへのずれ等を効果的に抑制できる。
【0078】
また、サブ部材131には、レシーバ21をアウター100に位置決めするためのスナップ受け部122A、及びポケット123Pが取り付けられる。したがって、サブ部材131によって、スナップ受け部122A、及びポケット123Pが、前後ずれ方向Y等へずれる事態を効果的に防止できる。
【0079】
このように、サブ部材131によって、スナップ受け部122A、ポケット123P及びレシーバ21の前後ずれ方向Yへのずれを防止することができる。これにより、アウター本体101の伸び率Rを20%以下に規制する必要がなくなり、アウター本体101の伸縮性や素材の選択の自由度が向上する。
また、サブ部材131の左右方向Xへの伸び率Rを20%以下に設定しても、使用者11へのアウター100の装着性を阻害しないようにできる。
【0080】
したがって、サブ部材131に要求される機能が少なく済み、例えば、左右方向Xへの伸縮性を、左右方向Xへの伸び率Rと同一又は同等に範囲にしてもよくなる。これにより、サブ部材131に要求される伸縮性や、素材の選択の自由度も確保できる。
【0081】
すなわち、第1実施形態では、アウター本体101に対し、領域AR1を前後ずれ方向Yへの伸び率Rが20%以下に規制する構成、様々な体型の使用者11の下腹部、臀部、及び太股11Vのそれぞれに適度な圧力で密着し、かつ、スナップ受け部102Aとスナップ部103Aとを連結可能にする伸縮性、適度な通気性、尿が漏れないようにする尿漏れ防止性能等の様々な構成や性能を満たすことが要求される。
これに対し、第2実施形態では、上記規制する構成については、アウター本体101に要求されず、また、尿漏れ防止性能についても、サブ部材131でカバーすることが可能になる。したがって、上記第1実施形態の各種の効果に加えて、アウター本体101の選択自由度が向上し、アウター100そのものを製作し易くなる、といった効果が得られる。
【0082】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る排泄物処理装置10のアウター100とレシーバ21を示す図である。
第3実施形態は、第2位置決め部123が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を説明し、重複説明は省略する。
第2位置決め部123は、アウター100に設けられて尿道口11N側の端部の左右に立設するクッション材123Qを有する。クッション材123Qは、平面視で門型形状に形成されている。
【0083】
図8に示すように、クッション材123Q内にレシーバ21における尿道口11N側の端部が嵌まることによって、レシーバ21の端部が左右方向Xにずれる事態を防止できる。また、クッション材123Qはレシーバ21よりも厚く形成され、例えば、10mm~15mmの厚さに形成される。これにより、使用者11が仰向けの姿勢の場合に、クッション材123Qが臀部のクッションとして機能し、使用者11の快適性が向上する。
【0084】
また、レシーバ21をアウター100に着脱する際に、クッション材123Qで囲まれる空間を外部から容易に視認できるので、レシーバ21の着脱作業が容易になる、という視覚的な効果も得られる。
また、クッション材123Qの厚さや素材の選定によって、使用者11の体型や指向に合わせた装着感の調整が可能になる。なお、クッション材123Qの形状は、レシーバ21における尿道口11N側の端部を、前後ずれ方向Yに移動自在、かつ、前後ずれ方向Yに直交する左右方向Xに移動不能に位置決め可能な範囲で、適宜に変更してもよい。
【0085】
上記の各実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、図6等に示すレシーバ21及びアウター100に本発明を適用する場合を説明したが、各部の構造、及び形状等は適宜に変更してもよい。また、レシーバ21の外装部50を布で製作する場合を説明したが、これに限定されず、軟質樹脂等のエラストマーで製作してもよい。また、アウター100を前開きで左右に開くことが可能なオープンタイプに形成する場合を説明したが、これに限定されず、例えば、前開きしないショーツタイプに形成してもよい。
【0086】
また、尿を吸引する排泄物処理装置10、及び、この排泄物処理装置10に使用されるアウター100に本発明を適用する場合を説明したが、これに限定されない。本発明は、水分を含む排泄物を受ける排泄物処理装置、及び、この排泄物処理装置に使用されるアウターに広く適用可能である。尿以外の排泄物としては、例えば、便、及び経血を挙げることができる。
【符号の説明】
【0087】
10 排泄物処理装置
11 使用者
11C 股間部
11K 肛門
11N 尿道口
21 レシーバ
21D、103A スナップ部
31 排泄物処理ユニット
81 尿センサー(センサー)
100 アウター
101 アウター本体
101V 足通過部
102 背側覆い部
102A、122A スナップ受け部
103 前側覆い部
111 左右延出部
121 位置決め部
122 第1位置決め部
123 第2位置決め部
123P ポケット
123Q クッション材
131 サブ部材
X 左右方向
Y 前後ずれ方向(所定方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8