(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154527
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】電子ハイハット及び電子ハイハットの動作方法
(51)【国際特許分類】
G10H 1/00 20060101AFI20221005BHJP
G10H 3/14 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G10H1/00 A
G10H3/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057602
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】森田 豊
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478CC10
5D478JJ00
5D478NN11
(57)【要約】
【課題】、打撃時の感触を向上できる電子ハイハット及び電子ハイハットの動作方法を提供すること。
【解決手段】ボトムフレーム20のエッジ部20cが平板状に形成されるので、ボトムフレーム20の外縁部分を軽量化できる。これにより、打撃されたトップシンバル3がボトムフレーム20に接触しても、ボトムフレーム20の外縁部分の重量がトップシンバル3の揺動(打撃による変位)を阻害し難くなる。よって、トップシンバル3を打撃した時の感触を軽くできるので、打撃時の感触を向上できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ロッドに揺動可能に取り付けられるボトムシンバルと、そのボトムシンバルの上方側に配置され、前記第1ロッドに対して上下に相対変位する第2ロッドに揺動可能に取り付けられるトップシンバルと、を備え、
前記ボトムシンバルは、前記ボトムシンバルの骨格を形成する第1フレームを備え、
前記第1フレームは、前記トップシンバルの変位時に前記トップシンバルに接触する平板状の接触部を備えることを特徴とする電子ハイハット。
【請求項2】
前記接触部の前記トップシンバルとの対向面が凹凸を有さない平面状に形成されることを特徴とする請求項1記載の電子ハイハット。
【請求項3】
前記第2ロッドに対する前記トップシンバルの揺動時に、前記ボトムフレームの内縁側から外縁側にかけて前記トップシンバルに接触する範囲が平板状の前記接触部として構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子ハイハット。
【請求項4】
前記第1フレームは、前記接触部よりも内周側の部位を構成するボウ部を備え、
前記接触部は、前記ボウ部の0.5倍以上3倍以下の厚みに形成されることを構成する請求項1から3のいずれかに記載の電子ハイハット。
【請求項5】
前記トップシンバルは、前記トップシンバルの骨格を形成する第2フレームを備え、
前記第2フレームは、前記接触部に向けて突出し前記第2フレームと一体に形成される突起を備え、
前記トップシンバルの変位時に前記突起と前記接触部とが接触することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子ハイハット。
【請求項6】
前記ボトムシンバルは、前記接触部の上に積層され、前記接触部よりも軟質な緩衝材と、その緩衝材の上に積層され、前記緩衝材よりも摩擦係数の低い低摩擦材と、を備え、
前記緩衝材および前記低摩擦材を介して前記突起と前記接触部とが接触することを特徴とする請求項5記載の電子ハイハット。
【請求項7】
前記接触部、前記緩衝材、及び前記低摩擦材は、前記突起の突出方向と直交する方向に延びる平板状に形成されることを特徴とする請求項6記載の電子ハイハット。
【請求項8】
前記第1フレームは、前記接触部よりも内周側の部位から前記トップシンバルに向けて突出する内側突起を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電子ハイハット。
【請求項9】
前記第1フレームは、前記接触部よりも外周側の部位から前記トップシンバルに向けて突出する外側突起を備え、
前記第1フレームの全周にわたって延びる前記内側突起および前記外側突起によって前記接触部が取り囲まれることを特徴とする請求項8記載の電子ハイハット。
【請求項10】
前記第1フレームは、少なくとも前記接触部が繊維強化樹脂を用いて形成されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電子ハイハット。
【請求項11】
第1ロッドに揺動可能に取り付けられるボトムシンバルと、そのボトムシンバルの上方側に配置され、前記第1ロッドに対して上下に相対変位する第2ロッドに揺動可能に取り付けられるトップシンバルと、を備えた電子ハイハットの動作方法であって、
前記ボトムシンバルは、前記ボトムシンバルの骨格を形成する第1フレームを備え、
前記第1フレームは、平板状の接触部を備え、
前記トップシンバルの変位時に、前記トップシンバルを前記接触部に接触させることを特徴とする電子ハイハットの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ハイハット及び電子ハイハットの動作方法に関し、特に、打撃時の感触を向上できる電子ハイハット及び電子ハイハットの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1ロッドに揺動可能に取り付けられるボトムシンバルと、第1ロッドに対して上下動する第2ロッドに揺動可能に取り付けられるトップシンバルと、を備える電子ハイハットが知られている。この種の電子ハイハットでは、第2ロッドを上下動させてトップシンバルをボトムシンバルに接触させたり、トップシンバルを打撃したりする演奏が行われる。このような演奏時には、トップシンバルとボトムシンバルとが接触した状態で揺動することがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、トップシンバルパット部100(トップシンバル)とボトムシンバルパット部200(ボトムシンバル)との接触部分に滑りチューブ140や滑りフィルム212を設ける技術が記載されている。この技術によれば、トップシンバルがボトムシンバルと接触しながら揺動した場合に、滑りチューブ140と滑りフィルム212との滑りによって各シンバルの揺動をスムーズにできる。よって、打撃時の感触をアコースティックのハイハットシンバルに近づけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-208555号公報(例えば、段落0099,0128,0188、
図5,14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、強度を確保(破損を抑制)するために、ボトムシンバル(ボトムフレーム)の外縁部分が比較的肉厚に形成されていることに加え、その肉厚の部分に金属板210を介して滑りフィルム212が取り付けられるので、ボトムシンバルの外縁側(トップシンバルとの接触部分)の重量が増加する。このボトムシンバルの重量の増加により、トップシンバルを打撃した時の感触が重くなることがあるため、打撃時の感触を十分に向上できないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、打撃時の感触を向上できる電子ハイハット及び電子ハイハットの動作方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の電子ハイハットは、第1ロッドに揺動可能に取り付けられるボトムシンバルと、そのボトムシンバルの上方側に配置され、前記第1ロッドに対して上下に相対変位する第2ロッドに揺動可能に取り付けられるトップシンバルと、を備え、前記ボトムシンバルは、前記ボトムシンバルの骨格を形成する第1フレームを備え、前記第1フレームは、前記トップシンバルの変位時に前記トップシンバルに接触する平板状の接触部を備える。
【0008】
本発明の電子ハイハットの動作方法は、第1ロッドに揺動可能に取り付けられるボトムシンバルと、そのボトムシンバルの上方側に配置され、前記第1ロッドに対して上下に相対変位する第2ロッドに揺動可能に取り付けられるトップシンバルと、を備えた電子ハイハットの動作方法であって、前記ボトムシンバルは、前記ボトムシンバルの骨格を形成する第1フレームを備え、前記第1フレームは、平板状の接触部を備え、前記トップシンバルの変位時に、前記トップシンバルを前記接触部に接触させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態における電子ハイハットの断面図である。
【
図2】(a)は、
図1のIIa部分を拡大した電子ハイハットの部分拡大断面図であり、(b)は、
図2(a)の状態からトップシンバルをクローズさせた様子を示す電子ハイハットの部分拡大断面図である。
【
図3】(a)は、
図2(b)の状態からトップシンバルが打撃された様子を示す電子ハイハットの部分拡大断面図であり、(b)は、
図3(a)の状態からボトムシンバル及びトップシンバルが初期位置を超えて変位する様子を示す電子ハイハットの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、電子ハイハット1の全体構成について説明する。
図1は、一実施形態における電子ハイハット1の断面図である。なお、
図1では、ボトムシンバル2及びトップシンバル3の軸を含む平面で切断した断面を図示している。また、
図1では、図面を簡素化するために、電子ハイハット1の構成の一部の図示を省略し、要部のみを図示している。
【0011】
図1に示すように、電子ハイハット1は、ボトムシンバル2と、そのボトムシンバル2の上方側で上下動するトップシンバル3と、を備え、アコースティックのハイハットシンバルを模した電子打楽器として構成される。
【0012】
ボトムシンバル2は、その骨格を形成するボトムフレーム20を備え、このボトムフレーム20がボトム支持部材4を介してシャフト5に支持される。なお、
図1では、ボトム支持部材4の詳細な断面構造の図示を省略してハッチングを付している。シャフト5は円筒状に形成され、図示しないスタンドによって自立可能に構成されており、シャフト5の上端部に略円筒状のボトム支持部材4が固定される。
【0013】
ボトム支持部材4は、シャフト5に固定される大径部40と、その大径部40の上面に形成される小径部41と、から構成される。大径部40よりも小径部41の直径が小さく形成されている。ボトムフレーム20の中央には、ボトム支持部材4の大径部40よりも小径の貫通孔20aが形成され、この貫通孔20aに小径部41が挿入される。これにより、ボトム支持部材4の大径部40の上面にボトムフレーム20が揺動可能に支持される。
【0014】
ボトム支持部材4及びシャフト5には、トップシンバル3を上下動させるためのロッド6が挿入される。ロッド6は、踏み込み式のペダル(図示せず)の操作により、ボトム支持部材4及びシャフト5の内周側で上下動するものである。
【0015】
ロッド6の上端側には筒状の筒部材7が取り付けられ、この筒部材7の下端側には、トップシンバル3を揺動可能に支持するためのトップ支持部材8が固定される。トップ支持部材8は略円筒状に形成されており、後述するトップシンバル3の頭部31aに形成された貫通孔31bに筒部材7を挿入することにより、トップ支持部材8にトップシンバル3が引っ掛けられる。
【0016】
トップ支持部材8の上端部は山形に形成され、このトップ支持部材8の山形の上端部に引っ掛かる谷形の溝がトップシンバル3(頭部31a)の下面に形成されている。これにより、トップ支持部材8にトップシンバル3が揺動可能に支持される。
【0017】
筒部材7には、トップシンバル3に重ねるようにしてワッシャ9、一対のナット10、及びクラッチ11が順に装着される。筒部材7の外周面にはおねじが形成されており、一対のナット10を締め付けて弾性部材のワッシャ9を押さえ付けることにより、筒部材7にトップシンバル3が揺動可能に装着される。
【0018】
筒部材7の上端部にクラッチ11が固定されており、クラッチ11の側面から蝶ボルト12をロッド6に向けて締め付けることで筒部材7(トップシンバル3)がロッド6に固定される一方、蝶ボルト12を緩めることでロッド6に対する筒部材7(トップシンバル3)の相対位置が調整される。クラッチ11によって筒部材7が固定された状態のロッド6をペダル(図示せず)の踏み込みによって上下動させることにより、それに連動してトップシンバル3が上下に変位する(
図2参照)。
【0019】
トップシンバル3の骨格を構成するトップフレーム30は、トップ支持部材8に支持される第1トップフレーム31と、その第1トップフレーム31が固定され、上面が打面として構成される第2トップフレーム32と、から構成される。
【0020】
第1トップフレーム31は、その中央部に形成される略円柱状の頭部31aを備える。頭部31aには、上下に貫通する貫通孔31bが形成され、上述した通り、この貫通孔31bに筒部材7が挿入される。
【0021】
頭部31aの下端部からは、フランジ部31cが径方向外側に向けてフランジ状に張り出している。フランジ部31cの外縁からは、カバー部31dが下方に垂下しつつ径方向外側に張り出しており、このカバー部31dによって第2トップフレーム32の下面が覆われる。
【0022】
第2トップフレーム32は、中央に貫通孔32aを有する円盤状に形成され、第2トップフレーム32の貫通孔32aに第1トップフレーム31の頭部31aが挿入される。この挿入状態で第1トップフレーム31のフランジ部31cを第2トップフレーム32の内縁部分にねじ止めし、カバー部31dの外縁部分を第2トップフレーム32の下面にねじ止めすることにより、第1トップフレーム31と第2トップフレーム32とが一体となったトップフレーム30が形成される。
【0023】
第1トップフレーム31のカバー部31dと第2トップフレーム32との間の空間には、打撃センサS1などの電子部品が収納される。打撃センサS1は、第2トップフレーム32の下面に取り付けられる圧電素子であり、第2トップフレーム32への打撃時の振動が打撃センサS1によって検出される。この打撃センサS1や後述する感圧センサS2(
図2参照)などによって検出された打撃は電気信号に変換され、図示しない音源装置に出力される。これにより、トップシンバル3への打撃位置に応じた楽音が生成される。
【0024】
第2トップフレーム32は、内縁側から外縁側にかけて緩やかに下降傾斜する形状に形成され、この形状に沿う円盤状のカバー33によって第2トップフレーム32の上面が覆われる。カバー33の中央には貫通孔33aが形成され、この貫通孔33aに第1トップフレーム31の頭部31aが挿入される。
【0025】
カバー33の材質(本実施形態では、ゴム)は、トップフレーム30(第2トップフレーム32)の材質(本実施形態では、ガラス繊維強化樹脂)よりも軟質であるため、第2トップフレーム32への打撃時の衝撃がカバー33によって吸収される。
【0026】
次いで、
図2及び
図3を参照して、電子ハイハット1の詳細構成について説明する。
図2(a)は、
図1のIIa部分を拡大した電子ハイハット1の部分拡大断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)の状態からトップシンバル3をクローズさせた様子を示す電子ハイハット1の部分拡大断面図である。
図3(a)は、
図2(b)の状態からトップシンバル3が打撃された様子を示す電子ハイハット1の部分拡大断面図であり、
図3(b)は、
図3(a)の状態からボトムシンバル2及びトップシンバル3が初期位置を超えて変位する様子を示す電子ハイハット1の部分拡大断面図である。
【0027】
図2に示すように、トップシンバル3を上下動させるペダル(図示せず)の踏み込みが解除された状態(
図2(a)の状態)では、ボトムシンバル2からトップシンバル3が離隔しており、この状態がオープン状態である。オープン状態からペダルが踏み込まれると、下方に変位するトップシンバル3がボトムシンバル2に接触してクローズ状態(
図2(b)の状態)となる。
【0028】
なお、このペダルの踏み込みに伴うトップシンバル3のクローズ状態は、図示しない変位センサ(ロッド6の上下動に伴うトップシンバル3の上下の変位量を検出するもの)によって検出され、この検出信号も図示しない音源装置に出力される。これにより、トップシンバル3をクローズさせる演奏に応じた楽音が生成される。
【0029】
また、
図3に示すように、クローズ状態でトップシンバル3が打撃された時(又は、打撃時の変位でトップシンバル3がボトムシンバル2に接触した時)には、ボトムシンバル2とトップシンバル3とが互いに接触した状態で揺動する。そして、本実施形態では、このようなボトムシンバル2及びトップシンバル3の揺動をスムーズにさせることにより、打撃時の感触を向上できる構成となっている。この構成について、以下に説明する。
【0030】
図2に示すように、電子ハイハット1のボトムフレーム20は、内縁側から外縁側にかけて緩やかに上昇傾斜するボウ部20bと、そのボウ部20bの外縁から径方向外側に延びるエッジ部20cと、を備える。これらのボウ部20b及びエッジ部20cの各部は、周方向に連続して一体的に形成されている。
【0031】
エッジ部20cの上面には、円環状のクッション材21が接着され、このクッション材21の上面には、円環状の樹脂フィルム22が接着される。クッション材21は、発泡樹脂を用いて形成されており、樹脂フィルム22は、クッション材21よりも摩擦係数の低い材質(本実施形態では、ポリエステル製の布)を用いて形成されている。
【0032】
これらのクッション材21及び樹脂フィルム22は、
図2に示すようなボトムシンバル2とトップシンバル3との接触(衝突)時の衝撃を緩和するためや、
図3に示すような揺動時にボトムシンバル2とトップシンバル3との滑りをスムーズにするためのものである。
【0033】
トップシンバル3の第2トップフレーム32の下面からは、樹脂フィルム22に向けて突起32bが下方に突出しており、トップシンバル3の変位時には、この突起32bがクッション材21及び樹脂フィルム22を介してボトムフレーム20のエッジ部20cに接触(衝突)する。
【0034】
エッジ部20cが平板状に形成されるため、ボトムフレーム20の外縁部分が比較的軽量化されている。これにより、打撃されたトップシンバル3がボトムフレーム20に接触しても、ボトムフレーム20の重量がトップシンバル3の揺動(打撃による変位)を阻害し難くなる。よって、トップシンバル3を打撃した時の感触を軽くできるので、打撃感触を向上できる。
【0035】
なお、「平板状」とは、エッジ部20cの上下の両面が平行であること、即ち、エッジ部20cの内縁から外縁にかけて厚み(
図2の上下方向寸法)が一定であることを意味している。また、一定とは、エッジ部20cの内縁から外縁にかけての厚みの平均値に対し、エッジ部20cの最小および最大の厚みが±30%の範囲内であることである。このように、エッジ部20cの上面(トップシンバル3と対向する対向面)にリブのような凹凸(空隙)を形成しないことにより、エッジ部20cの上面の平面度、即ち、樹脂フィルム22の平面度を確保できる。よって、
図3に示すような樹脂フィルム22と突起32bとの滑りをスムーズにできる。
【0036】
本実施形態では、エッジ部20cの厚みが3mmに設定されているが、このエッジ部20cの厚みは、ボトムフレーム20のボウ部20bの厚み(本実施形態では、3mm)の0.5倍以上3倍以下に設定することが好ましく、2mm以上4mm以下の厚みで形成することがより好ましい。これにより、エッジ部20cの強度の低下(破損)を抑制しつつ、エッジ部20cを軽量化して打撃感触を向上できる。
【0037】
ここで、従来の電子ハイハット(例えば、特開2005-208555号公報)では、トップフレームを覆うカバーの下面に樹脂製のチューブを嵌め込み、そのチューブをトップシンバルの変位時にボトムシンバルと接触させる構成である。このような構成の場合、部品点数が増大することに加え、カバーの弾性変形などによってチューブがボトムシンバルに適切に接触しない場合がある。
【0038】
これに対して本実施形態では、第2トップフレーム32と一体に形成された突起32bがカバー33の最下面よりも下方に突出しており、その突起32bが(クッション材21及び樹脂フィルム22を介して)ボトムフレーム20のエッジ部20cに接触する構成である。これにより、電子ハイハット1の部品点数を低減できる。また、カバー33にチューブを嵌め込む構成とは異なり、突起32bがカバー33の弾性変形の影響を受けることが無い。よって、樹脂フィルム22に対して突起32bを適切に接触させることができるので、突起32bと樹脂フィルム22との滑りを効果的に発揮できる。
【0039】
この一方で、突起32bが第2トップフレーム32と一体に形成される場合、突起32bの剛性が比較的高くなるため、例えば、突起32bをエッジ部20cに直接接触(衝突)させる構成であると、その衝撃が大きくなる。よって、かかる接触時の衝突音が大きくなったり、平板状のエッジ部20cが破損し易くなったりするという問題が生じる。また、
図3に示すようなボトムシンバル2とトップシンバル3との滑りが生じた場合に、突起32bやエッジ部20cが摩耗し易くなるという問題も生じる。
【0040】
これに対して本実施形態では、エッジ部20cよりも軟質なクッション材21がエッジ部20cの上に積層され、クッション材21よりも摩擦係数の低い樹脂フィルム22がクッション材21の上に積層される。これにより、
図2に示すようなボトムシンバル2とトップシンバル3との接触(衝突)時の衝撃をクッション材21によって緩和できるので、かかる接触時の衝突音を低減できると共に、エッジ部20cを平板状に形成した場合であっても、エッジ部20cの破損を抑制できる。更に、
図3に示すようなボトムシンバル2とトップシンバル3との滑りが生じた場合に、その滑りを樹脂フィルム22によってスムーズにできるので、突起32b及びエッジ部20cが摩耗することを抑制できる。
【0041】
即ち、ボトムフレーム20と第2トップフレーム32との接触部分にクッション材21及び樹脂フィルム22を設ける構成は、平板状のエッジ部20cに対し、第2トップフレーム32と一体に形成した突起32bを接触させる場合に特に有効な構成となる。
【0042】
第2トップフレーム32は、突起32bよりも外周側(
図2の右側)に延びる外周部32cと、その外周部32cの外縁から下方に屈曲する屈曲部32dと、その屈曲部32dの下端から外周側に張り出す張出部32eと、を備え、これらの各部によって第2トップフレーム32のエッジ(外縁)部分が構成されている。外周部32c、屈曲部32d、及び、張出部32eの各部は、周方向に連続して一体的に形成されている。
【0043】
張出部32eの上面には環状の感圧センサS2が取り付けられており、この感圧センサS2がカバー33によって覆われる。第2トップフレーム32(カバー33)のエッジ部分が打撃された際には、カバー33によって感圧センサS2が押し込まれる。これにより、トップシンバル3のエッジ部分への打撃が検出される。
【0044】
カバー33の外縁部分は、張出部32eの外周面および下面を覆うようにして下方に折り返されており、この折り返し部分の内縁が第2トップフレーム32の突起32bと屈曲部32dとの間に挿入される。これにより、ボトムシンバル2との接触時の滑りをスムーズにするための機能に加え、カバー33の外縁部分を固定するための機能を突起32bに持たせることができる。
【0045】
ここで、上述した通り、第2トップフレーム32の突起32bはカバー33の最下面よりも下方に突出しており、トップシンバル3がクローズされた状態では、突起32bが樹脂フィルム22に接触する。この接触位置を初期位置P1(
図2(b)参照)とする。
図3に示すように、クローズ状態で打撃されたトップシンバル3がボトムシンバル2と共に下方に傾くと、突起32bの接触位置が初期位置P1よりも樹脂フィルム22の内縁側の部位P2にスライドする。これは、ボトムシンバル2の揺動支点と、トップシンバル3の揺動支点とが上下に離隔しているためである。
【0046】
また、トップシンバル3への打撃力によっては、下方に傾いたボトムシンバル2及びトップシンバル3が初期状態に戻る際に、
図3(b)に示すように、初期状態を超えて上方側に傾くことがある。この時、突起32bの接触位置が初期位置P1よりも樹脂フィルム22の外縁側の部位P3にスライドする。
【0047】
即ち、クローズ状態で打撃された際のトップシンバル3の揺動時には、ボトムシンバル2(樹脂フィルム22)の内縁側の部位P2から外縁側の部位P3にかけての接触範囲R(所定範囲)で突起32bが接触する。そして、この接触範囲Rよりも広い範囲にわたってエッジ部20cが平板状に形成される。このように、トップシンバル3(突起32b)が接触し得る接触範囲Rの全体にわたってエッジ部20cを平板状にして軽量化することにより、トップシンバル3を打撃した時の感触を効果的に向上できる。
【0048】
また、
図3に示すような樹脂フィルム22と突起32bとの滑りをスムーズにする(安定させる)ためには、常に突起32bの先端を樹脂フィルム22に接触させることが好ましい。よって、本実施形態では、エッジ部20c、クッション材21、及び、樹脂フィルム22の各々を、突起32bの突出方向と直交する方向に延びる平板状(樹脂フィルム22については、フィルム状)に形成している。これにより、常に突起32bの先端を樹脂フィルム22の上面に滑らせることができるので、その滑りをスムーズにできる。
【0049】
エッジ部20cよりも内周側におけるボトムフレーム20の上面からは、内側突起20dが上方に突出しており、この内側突起20dは、ボトムフレーム20の全周にわたって連続する円環状に形成される。これにより、エッジ部20cの近傍を内側突起20dによって補強できる。また、エッジ部20cの近傍に内側突起20dを形成することにより、樹脂製のボトムフレーム20を金型成形した時の熱収縮などでエッジ部20cに歪みが生じることを抑制できる。エッジ部20cの歪みを抑制することにより、エッジ部20cの上面の平面度、即ち、樹脂フィルム22の平面度を確保できるので、
図3に示すような樹脂フィルム22と突起32bとの滑りをスムーズにできる。
【0050】
エッジ部20cの外縁からは、外側突起20eが上方に突出しており、外側突起20eは、クッション材21及び樹脂フィルム22の外周面に沿う円環状に形成される。これにより、クッション材21及び樹脂フィルム22の外周面を外側突起20eによって覆うことができるので、電子ハイハット1の意匠性を向上できる。
【0051】
更に、外側突起20eをエッジ部20cの外縁部分に形成することにより、内側突起20dと外側突起20eとによってエッジ部20cを周方向の全周にわたって取り囲むことができる。これにより、上述した熱収縮などによってエッジ部20cに歪みが生じることをより効果的に抑制できる。
【0052】
このように、エッジ部20cに歪みが生じることを抑制するためには、内側突起20d及び外側突起20eの各々を周方向にわたって連続する円環状に形成する構成が好ましい。この一方で、内側突起20d及び外側突起20eを周方向に連続する(隙間のない完全な)円環状に形成すると、打撃時等に加わる荷重によってボトムフレーム20が歪んだ(撓んだ)場合に、応力の逃げ場が無く、発生した歪みを吸収できず、結果的に内側突起20d及び外側突起20eの先端部に応力が集中して割れが生じることがある。
【0053】
これに対して本実施形態では、ボトムフレーム20が繊維強化樹脂(本実施形態では、ガラス繊維強化樹脂)を用いて形成されている。これにより、内側突起20d及び外側突起20eを円環状に形成した場合であっても、ボトムフレーム20の歪み(撓み)による内側突起20d及び外側突起20eの割れを抑制できる。
【0054】
更に、ボトムフレーム20が繊維強化樹脂を用いて形成されるので、エッジ部20cの強度も確保できる。これにより、エッジ部20cを平板状(薄肉)に形成した場合であっても、トップシンバル3との接触(衝突)でエッジ部20cが破損することを抑制できる。つまり、繊維強化樹脂を用いてボトムフレーム20を形成することにより、従来の電子ハイハット(例えば、特開2005-208555号公報)のように、トップシンバル3との接触部分に金属板を用いることや、リブなどの補強を行うことなく、ボトムフレーム20のエッジ部分を平板状(薄肉)に形成できる。よって、部品点数を低減して電子ハイハット1の製品コストを低減できると共に、ボトムフレーム20の重量増を抑制して打撃時の感触を向上できる。
【0055】
以上、上記実施形態に基づき説明をしたが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0056】
上記実施形態では、ボトムフレーム20のうち、トップシンバル3との接触範囲Rに位置する部位が平板状のエッジ部20cとして構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、接触範囲Rよりも狭い範囲でボトムフレーム20を平板状に形成する構成でも良い。
【0057】
上記実施形態では、エッジ部20cにクッション材21や樹脂フィルム22が積層される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、クッション材21や樹脂フィルム22に加え、金属板などの他の部材がエッジ部20cに取り付けられる構成でも良い。また、クッション材21や樹脂フィルム22を省略し、トップフレーム30(第2トップフレーム32)にエッジ部20cを直接接触させる構成でも良い。
【0058】
上記実施形態では、エッジ部20cに向けて突出する突起32bがトップフレーム30(第2トップフレーム32)と一体に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、従来の電子ハイハットのように、トップフレーム30(第2トップフレーム32)又はカバー33の下面に樹脂製のチューブを嵌め込み、そのチューブをボトムフレーム20と接触させる構成でも良い。また、突起32bをボトムフレーム20に接触させるのではなく、トップフレーム30(第2トップフレーム32)とボトムフレーム20とを面同士で接触させる構成でも良い。
【0059】
上記実施形態では、トップフレーム30が第1トップフレーム31と第2トップフレーム32とを備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、トップフレーム30を1又は3以上のフレームから構成しても良い。
【0060】
上記実施形態では、ボトムフレーム20のエッジ部20cの内周側に内側突起20dが設けられ、エッジ部20cの外周側に外側突起20eが設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、内側突起20d及び外側突起20eのいずれか一方または両方を省略しても良い。
【0061】
上記実施形態では、内側突起20d及び外側突起20eが円環状に形成される(周方向に連続して形成される)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、内側突起20d又は外側突起20eをボトムフレーム20の周方向で断続的に形成する(例えば、径方向に延びる内側突起20dを放射状に形成する)構成でも良い。この構成であれば、打撃時等の荷重でボトムフレーム20が歪んだ(撓んだ)場合に、応力の逃げ場を生じさせる(発生した歪みを吸収する)ことができる。よって、内側突起20dや外側突起20eに応力が集中することを抑制できるので、内側突起20dや外側突起20eの割れを抑制できる。
【0062】
上記実施形態では、ボトムフレーム20及びトップフレーム30(第1トップフレーム31及び第2トップフレーム32)の各フレームがガラス繊維強化樹脂を用いて形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、炭素繊維などの他の繊維で強化された繊維強化樹脂や、繊維を含まない他の合成樹脂(例えば、ABS樹脂やスーパーエンプラなど)を用いて各フレームを形成しても良い。即ち、各フレームを構成する材質は、上記の形態に限定されるものではない。
【0063】
上記実施形態では、エッジ部20c、クッション材21、及び、樹脂フィルム22が、トップフレーム30(第2トップフレーム32)の突起32bの突出方向と直交する方向に延びる平板状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、突起32bの突出方向と直交する方向に対し、エッジ部20c、クッション材21、及び(又は)、樹脂フィルム22が傾斜する構成でも良い。
【0064】
上記実施形態では、ボトムフレーム20の全体が繊維強化樹脂を用いて形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ボトムフレーム20のエッジ部20cのみが繊維強化樹脂を用いて形成される構成でも良い。
【符号の説明】
【0065】
1 電子ハイハット
2 ボトムシンバル
20 ボトムフレーム(第1フレーム)
20a 貫通孔
20b ボウ部
20c エッジ部(接触部)
20d 内側突起
20e 外側突起
21 クッション材(緩衝材)
22 樹脂フィルム(低摩擦材)
3 トップシンバル
30 トップフレーム(第2フレーム)
31 第1トップフレーム(第2フレームの一部)
31a 頭部
31b 貫通孔
31c フランジ部
31d カバー部
32 第2トップフレーム(第2フレームの一部)
32a 貫通孔
32b 突起
32c 外周部
32d 屈曲部
32e 張出部
33 カバー
33a 貫通孔
4 ボトム支持部材
40 大径部
41 小径部
5 シャフト(第1ロッド)
6 ロッド(第2ロッド)
7 筒部材
8 トップ支持部材
9 ワッシャ
10 ナット
11 クラッチ
12 蝶ボルト
S1 打撃センサ
S2 感圧センサ
P1 初期位置
P2 内縁側の部位
P3 外縁側の部位
R 接触範囲