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特開2022-154531電力システム、車両、および電力システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154531
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】電力システム、車両、および電力システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20221005BHJP
   H01M 8/04007 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20221005BHJP
   B60L 58/33 20190101ALI20221005BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221005BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04007
H01M8/04746
H01M8/0438
H01M8/00 Z
B60L58/33
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057610
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 潤野
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸高
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健人
(72)【発明者】
【氏名】樽家 憲司
【テーマコード(参考)】
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA03
5H125AC07
5H125BD04
5H125BD14
5H125CD06
5H125EE32
5H125EE51
5H125FF26
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB11
5H127AC10
5H127AC11
5H127AC15
5H127BA02
5H127BB02
5H127CC07
5H127DB72
5H127DC76
(57)【要約】      (修正有)
【課題】燃料電池用と熱源用のウォーターポンプを持つ冷却液循環系を持つ電力システムにおいて、冷却液の逆流に伴う燃料電池の結露や乾燥などの不具合を防止と燃費を向上する。
【解決手段】電力システム100は燃料電池スタック11c-14cおよび燃料電池用ウォーターポンプ11b-14bを有する燃料電池システム11-14と、熱源用ウォーターポンプ31、作動することで発熱する熱源30と、大気と熱交換を行う放熱器20と、燃料電池システム11-14、熱源30、および放熱器20を熱的に接続する冷却通路42,43と制御装置50を備え、制御装置50は燃料電池用ウォーターポンプ11b-14bと熱源用ウォーターポンプ31が所定の吐出量となるように回転数の切り替え制御を行うことにより冷却液の逆流を防止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックおよび燃料電池ウォーターポンプを有する燃料電池システムと、
熱源ウォーターポンプを有し、作動することで発熱する熱源と、
大気と熱交換を行う放熱器と、
前記燃料電池システム、前記熱源、および前記放熱器を熱的に接続する冷却通路と、
前記燃料電池システム、前記熱源、および前記放熱器を制御する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記燃料電池ウォーターポンプの回転数を、予め定められた単位時間当たりの最小吐出流量である第1の吐出流量になる回転数と、前記第1の吐出流量より多い第2の吐出流量になる回転数とで切り替えて制御し、
前記熱源ウォーターポンプの回転数を、予め定められた単位時間当たりの最小吐出流量である第3の吐出流量になる回転数と、前記第3の吐出流量より多い第4の吐出流量になる回転数とで切り替えて制御し、
前記第1の吐出流量<前記第4の吐出流量、かつ、前記第2の吐出流量>前記第3の吐出流量である、
電力システム。
【請求項2】
前記燃料電池システムは、流路、およびバルブをさらに有し、
前記燃料電池システムの前記流路は、
前記バルブが開状態にあるときに、冷却液が、前記燃料電池システム内に流入し、前記燃料電池ウォーターポンプと前記燃料電池スタックとを通過して前記燃料電池システム外に流出するメイン流路と、
前記バルブが閉状態にあるときに、前記冷却液が、前記燃料電池システムの外部を循環するバイパス流路とを有する、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記燃料電池システムの作動状態、前記熱源の作動状態、および前記バルブの開閉状態の少なくとも1つに基づいて、前記燃料電池ウォーターポンプの前記回転数を制御する、
請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記熱源の非作動時は、前記燃料電池ウォーターポンプが前記第2の吐出流量になる回転数に制御し、前記熱源ウォーターポンプが前記第3の吐出流量になる回転数に制御し、
前記熱源の作動時は、前記燃料電池ウォーターポンプが前記第1の吐出流量になる回転数に制御し、前記熱源ウォーターポンプが第4の吐出流量になる回転数に制御する、
請求項2または3に記載の電力システム。
【請求項5】
前記燃料電池システムを複数有し、前記複数の燃料電池システムと前記熱源は前記冷却通路上でそれぞれ並列に接続される、
請求項2から4のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記電力システムに要求される出力に応じて作動が必要な前記複数の燃料電池システムの数を決定し、
前記熱源の非作動時は、作動させない前記燃料電池システムの前記燃料電池ウォーターポンプが前記第1の吐出流量になる回転数に制御し、作動させる前記燃料電池システムの前記燃料電池ウォーターポンプが第2の吐出流量になる回転数に制御し、前記熱源ウォーターポンプが第3の吐出流量になる回転数に制御し、
前記熱源の作動時は、前記燃料電池ウォーターポンプが前記第1の吐出流量または前記第2の吐出流量のいずれかになる回転数にそれぞれ制御し、前記熱源ウォーターポンプが前記第4の吐出流量になる回転数に制御する、
請求項5に記載の電力システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記熱源の作動時は、前記複数の燃料電池システムの内、作動させない前記燃料電池システムの前記燃料電池ウォーターポンプが前記第1の吐出流量になる回転数に制御し、作動させる前記燃料電池システムの前記燃料電池ウォーターポンプが前記第2の吐出流量になる回転数に制御する、
請求項6に記載の電力システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記燃料電池ウォーターポンプを、前記バルブが閉状態にあるときに前記第1の吐出流量になる回転数に制御し、前記バルブが開状態にあるときに前記第2の吐出流量になる回転数に制御する、
請求項7に記載の電力システム。
【請求項9】
前記バルブは前記制御装置によって開閉制御が可能な電磁バルブであって、
前記制御装置は、
前記複数の燃料電池システムの内、作動しない前記燃料電池システムの前記バルブを閉状態に制御し、作動させる前記燃料電池システムの前記バルブを開状態に制御する、
請求項5から8のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項10】
燃料電池スタックおよび燃料電池ウォーターポンプを有する燃料電池システムと、
熱源ウォーターポンプを有し、作動することで発熱する熱源と、
大気と熱交換を行う放熱器と、
前記燃料電池システム、前記熱源、および前記放熱器を熱的に接続する冷却通路と、
前記燃料電池システム、前記熱源、および前記放熱器を制御する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
予め定められた単位時間当たりの第1の最小吐出流量を下回らない範囲で、前記燃料電池システムの温度に応じて前記燃料電池ウォーターポンプの回転数を制御し、
前記熱源の非稼働時には、前記燃料電池ウォーターポンプの単位時間当たりの吐出流量ごとに、予め定められた第2の最小吐出流量を下回らない範囲で前記熱源ウォーターポンプの回転数を制御し、
前記熱源の稼働時には、前記熱源の温度に応じて前記熱源ウォーターポンプの回転数を制御する、
電力システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記燃料電池システムの作動状態、前記熱源の作動状態、および前記燃料電池システムのバルブの開閉状態の少なくとも1つに基づいて、前記燃料電池ウォーターポンプの前記回転数を制御する、
請求項10に記載の電力システム。
【請求項12】
前記燃料電池システムを複数有し、前記複数の燃料電池システムと前記熱源は前記冷却通路上でそれぞれ並列に接続される、
請求項10または11に記載の電力システム。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の電力システムを有し、
前記熱源はリターダである、
車両。
【請求項14】
電力システムの制御方法であって、
前記電力システムは、
燃料電池スタックおよび燃料電池ウォーターポンプを有する燃料電池システムと、
熱源ウォーターポンプを有し、作動することで発熱する熱源と、
大気と熱交換を行う放熱器と、
前記燃料電池システム、前記熱源、および前記放熱器を熱的に接続する冷却通路と、
前記燃料電池システム、前記熱源、および前記放熱器を制御する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記燃料電池ウォーターポンプの回転数を、予め定められた単位時間当たりの最小吐出流量である第1の吐出流量になる回転数と、前記第1の吐出流量より多い第2の吐出流量になる回転数とで切り替えて制御する段階と、
前記熱源ウォーターポンプの回転数を、予め定められた単位時間当たりの最小吐出流量である第3の吐出流量になる回転数と、前記第3の吐出流量より多い第4の吐出流量になる回転数とで切り替えて制御する段階と、を実行し、
前記第1の吐出流量<前記第4の吐出流量、かつ、前記第2の吐出流量>前記第3の吐出流量である、
電力システムの制御方法。
【請求項15】
電力システムの制御方法であって、
前記電力システムは、
燃料電池スタックおよび燃料電池ウォーターポンプを有する燃料電池システムと、
熱源ウォーターポンプを有し、作動することで発熱する熱源と、
大気と熱交換を行う放熱器と、
前記燃料電池システム、前記熱源、および前記放熱器を熱的に接続する冷却通路と、
前記燃料電池システム、前記熱源、および前記放熱器を制御する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
予め定められた単位時間当たりの第1の最小吐出流量を下回らない範囲で、前記燃料電池システムの温度に応じて前記燃料電池ウォーターポンプの回転数を制御する段階と、
前記熱源の非稼働時には、前記燃料電池ウォーターポンプの単位時間当たりの吐出流量ごとに、予め定められた第2の最小吐出流量を下回らない範囲で前記熱源ウォーターポンプの回転数を制御する段階と、
前記熱源の稼働時には、前記熱源の温度に応じて前記熱源ウォーターポンプの回転数を制御する段階と、を実行する、
電力システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システム、車両、および電力システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「エネルギー源としての燃料電池システムと、該燃料電池システムを負荷に応じて制御可能に冷却するための燃料電池冷却システムと、を備える、自動車、特に商用車のための燃料電池駆動部」が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特表2011-503812号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、電力システムが提供される。電力システムは、燃料電池スタックおよび燃料電池ウォーターポンプを有する燃料電池システムを備える。電力システムは、熱源ウォーターポンプを有し、作動することで発熱する熱源を備える。電力システムは、大気と熱交換を行う放熱器を備える。電力システムは、燃料電池システム、熱源、および放熱器を熱的に接続する冷却通路を備える。電力システムは、燃料電池システム、熱源、放熱器を制御する制御装置を備える。制御装置は、燃料電池ウォーターポンプの回転数を、予め定められた単位時間当たりの最小吐出流量である第1の吐出流量になる回転数と、第1の吐出流量より多い第2の吐出流量になる回転数とで切り替えて制御し、熱源ウォーターポンプの回転数を、予め定められた単位時間当たりの最小吐出流量である第3の吐出流量になる回転数と、第3の吐出流量より多い第4の吐出流量になる回転数とで切り替えて制御し、第1の吐出流量<第4の吐出流量、かつ、第2の吐出流量>第3の吐出流量である。
【0004】
燃料電池システムは、流路、およびバルブをさらに有し、燃料電池システムの流路は、バルブが開状態にあるときに、燃料電池システム内に流入し、燃料電池ウォーターポンプと燃料電池スタックとを通過して燃料電池システム外に流出するメイン流路と、バルブが閉状態にあるときに、燃料電池ウォーターポンプと燃料電池スタックとを通過しない外部の流路であるバイパス流路とを有してよい。
【0005】
制御装置は、燃料電池システムの作動状態、熱源の作動状態、およびバルブの開閉状態の少なくとも1つに基づいて、燃料電池ウォーターポンプの回転数を制御してよい。
【0006】
制御装置は、熱源の非作動時は、燃料電池ウォーターポンプが第2の吐出流量になる回転数に制御し、熱源ウォーターポンプが第3の吐出流量になる回転数に制御し、熱源の作動時は、燃料電池ウォーターポンプが第1の吐出流量になる回転数に制御し、熱源ウォーターポンプが第4の吐出流量になる回転数に制御してよい。
【0007】
燃料電池システムを複数有し、複数の燃料電池システムと熱源は冷却通路上でそれぞれ並列に接続されてよい。
【0008】
制御装置は、電力システムに要求される出力に応じて作動が必要な複数の燃料電池システムの数を決定し、熱源の非作動時は、作動させない燃料電池システムの燃料電池ウォーターポンプが第1の吐出流量になる回転数に制御し、作動させる燃料電池システムの燃料電池ウォーターポンプが第2の吐出流量になる回転数に制御し、熱源ウォーターポンプが第3の吐出流量になる回転数に制御し、熱源の作動時は、燃料電池ウォーターポンプが第1の吐出流量または第2の吐出流量のいずれかになる回転数にそれぞれ制御し、熱源ウォーターポンプが第4の吐出流量になる回転数に制御してよい。
【0009】
制御装置は、熱源の作動時は、複数の燃料電池システムの内、作動させない燃料電池システムの燃料電池ウォーターポンプが第1の吐出流量になる回転数に制御し、作動させる燃料電池システムの燃料電池ウォーターポンプが第2の吐出流量になる回転数に制御してよい。
【0010】
制御装置は、燃料電池ウォーターポンプを、バルブが閉状態にあるときに第1の吐出流量になる回転数に制御し、バルブが開状態にあるときに第2の吐出流量になる回転数に制御してよい。
【0011】
バルブは制御装置によって開閉制御が可能な電磁バルブであって、制御装置は、複数の燃料電池システムの内、作動しない燃料電池システムのバルブを閉状態に制御し、作動させる燃料電池システムのバルブを開状態に制御してよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、電力システムが提供される。電力システムは、燃料電池スタックおよび燃料電池ウォーターポンプを有する燃料電池システムを備える。電力システムは、熱源ウォーターポンプを有し、作動することで発熱する熱源を備える。電力システムは、大気と熱交換を行う放熱器を備える。電力システムは、燃料電池システム、熱源、および放熱器を熱的に接続する冷却通路を備える。電力システムは、燃料電池システム、熱源、放熱器を制御する制御装置を備える。制御装置は、予め定められた単位時間当たりの第1の最小吐出流量を下回らない範囲で、燃料電池システムの温度に応じて燃料電池ウォーターポンプの回転数を制御し、熱源の非稼働時には、燃料電池ウォーターポンプの単位時間当たりの吐出流量ごとに、予め定められた第2の最小吐出流量を下回らない範囲で熱源ウォーターポンプの回転数を制御し、熱源の稼働時には、熱源の温度に応じて熱源ウォーターポンプの回転数を制御する。
【0013】
制御装置は、燃料電池システムの作動状態、熱源の作動状態、およびバルブの開閉状態の少なくとも1つに基づいて、燃料電池ウォーターポンプの回転数を制御してよい。
【0014】
燃料電池システムを複数有し、複数の燃料電池システムと熱源は冷却通路上でそれぞれ並列に接続されてよい。
【0015】
本発明の第3の態様においては、車両が提供される。車両は、上記電力システムを有し、熱源はリターダである。
【0016】
本発明の第4の態様においては、電力システムの制御方法が提供される。電力システムの制御方法における電力システムは、燃料電池スタックおよび燃料電池ウォーターポンプを有する燃料電池システムを備える。電力システムは、熱源ウォーターポンプを有し、作動することで発熱する熱源を備える。電力システムは、大気と熱交換を行う放熱器を備える。電力システムの制御方法は、燃料電池システム、熱源、および放熱器を熱的に接続する冷却通路を備える。電池システムは、燃料電池システム、熱源、放熱器を制御する制御装置を備える。制御装置は、燃料電池ウォーターポンプの回転数を、予め定められた単位時間当たりの最小吐出流量である第1の吐出流量になる回転数と、第1の吐出流量より多い第2の吐出流量になる回転数とで切り替えて制御する段階と、熱源ウォーターポンプの回転数を、予め定められた単位時間当たりの最小吐出流量である第3の吐出流量になる回転数と、第3の吐出流量より多い第4の吐出流量になる回転数とで切り替えて制御する段階と、を実行し、第1の吐出流量<第4の吐出流量、かつ、第2の吐出流量>第3の吐出流量である。
【0017】
本発明の第5の態様においては、電力システムの制御方法が提供される。電力システムの制御方法における電力システムは、燃料電池スタックおよび燃料電池ウォーターポンプを有する燃料電池システムを備える。電力システムは、熱源ウォーターポンプを有し、作動することで発熱する熱源を備える。電力システムは、大気と熱交換を行う放熱器を備える。電力システムの制御方法は、燃料電池システム、熱源、および放熱器を熱的に接続する冷却通路を備える。電池システムは、燃料電池システム、熱源、放熱器を制御する制御装置を備える。制御装置は、予め定められた単位時間当たりの第1の最小吐出流量を下回らない範囲で、燃料電池システムの温度に応じて燃料電池ウォーターポンプの回転数を制御する段階と、熱源の非稼働時には、燃料電池ウォーターポンプの単位時間当たりの吐出流量ごとに、予め定められた第2の最小吐出流量を下回らない範囲で熱源ウォーターポンプの回転数を制御する段階と、熱源の稼働時には、熱源の温度に応じて熱源ウォーターポンプの回転数を制御する段階と、を実行する。
【0018】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態における電力システム100の概略的な構成を示す図である。
図2】第1の実施形態における各燃料電池システム11から14とリターダ30のウォーターポンプの回転数制御の第1の例を示す図である。
図3】第1の実施形態における各燃料電池システム11から14とリターダ30のウォーターポンプの回転数制御の第2の例を示す図である。
図4】第1の実施形態における協調制御のパターンを示す図である。
図5】第1の実施形態における電力システム100の動作を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態における電力システム200の概略的な構成を示す図である。
図7】第2の実施形態における電力システム200の動作を示すフローチャートである。
図8】コンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、第1の実施形態における電力システム100の概略的な構成を示す図である。図1に示すように、電力システム100は、燃料電池システム(FCS1)11と、燃料電池システム(FCS2)12と、燃料電池システム(FCS3)13と、燃料電池システム(FCS4)14と、ラジエータ20と、リターダ30と、を有する。燃料電池システム11と、燃料電池システム12と、燃料電池システム13と、燃料電池システム14とには、それぞれ、FCECU11dと、FCECU12dと、FCECU13dと、FCECU14dとが接続されている。リターダ30には、ウォーターポンプ(EWP)31と、FCECU32とが接続されている。FCECU11dから14d、およびFCECU32には、制御装置としてのFCECUマスタ50が接続されている。図示しないが、当該FCECUマスタ50は、電力システム100が搭載される装置を制御するECUと接続される。
【0022】
電力システム100は、例えば、燃料電池車両などの車両に搭載される。車両は、例えば、大型トラックなどの大型車両である。車両は、電力システム100の複数の燃料電池システム11から14から駆動力を得て駆動される。大型トラックなどの大型車両は、複数の燃料電池システム11から14の駆動力を有することにより円滑に駆動される。なお、車両は、小型車両であってもよいし、車両以外の移動体(例えば、船舶、飛行体、ロボット)に搭載されてもよく、また、定置型の燃料電池システムに搭載されてもよい。本実施形態において、電力システム100が有する燃料電池システムの数は、燃料電池システム11から14の4つとしているが、それ以上であってもよく、それ以下であってもよい。
【0023】
本実施形態では省略しているが、燃料電池システム11から14は、他の構成を有してもよい。他の構成としては、例えば、FCVCU(Fuel Cell Voltage Control Unit)、BATTVCU(BATTERY Voltage Control Unit)、PDU(Power Drive Unit)13aと、MOT(MOTER)、高電圧補機、IPU(Intelligent Power Unit)などが挙げられる。
【0024】
燃料電池システム11は、サーモバルブ(TH)11aと、ウォーターポンプ(EWP)11bと、燃料電池スタック(STK)11cとを有する。同様に、燃料電池システム12は、サーモバルブ(TH)12aと、ウォーターポンプ(EWP)12bと、燃料電池スタック(STK)12cとを有する。燃料電池システム13は、サーモバルブ(TH)13aと、ウォーターポンプ(EWP)13bと、燃料電池スタック(STK)13cとを有する。燃料電池システム14は、サーモバルブ(TH)14aと、ウォーターポンプ(EWP)14bと、燃料電池スタック(STK)12cとを有する。
【0025】
図1には、燃料電池スタック11cから14cを冷却するための冷却通路が実線で示される。冷却通路は、燃料電池システム11から14と、ラジエータ20と、リターダ30とを配管によって熱的に接続する。冷却通路には、燃料電池スタック11cから14cを冷却するための冷却液が循環する。冷却通路は、メイン流路41aから41dと、バイパス流路42,43とを有する。
【0026】
メイン流路41aから41dは、サーモバルブ11aから14aが開状態にあるときに、冷却液が、燃料電池システム11から14内に流入し、燃料電池ウォーターポンプ11bから14bと燃料電池スタック11cから14cとを通過して燃料電池システム11から14の外部に流出する流路である。バイパス流路42,43は、サーモバルブ11aから14aが閉状態にあるときに、冷却液が、燃料電池システム11から14のウォーターポンプ11bから14bと燃料電池スタック11cから14cとを通過しないで、燃料電池システム11から14の外部を循環する流路である。バイパス流路42は、冷却液が、ラジエータ20からリターダ30へ向かう流路である。バイパス流路43は、冷却液が、リターダ30からラジエータ20へ向かう流路である。図1に示すように、複数の燃料電池システム11から14とリターダ30は、冷却通路上でそれぞれ並列に接続される。
【0027】
燃料電池スタック11cから14cは、例えば固体ポリマーイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込んで構成された単位燃料電池を複数積層して構成されており、燃料ガスとして水素ガスが供給される水素極と、酸化剤ガスとして酸素を含む空気が供給される空気極と、冷却液が供給される冷却通路とを備えている。そして、アノードで触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソードまで移動して、カソードで酸素と電気化学反応を起こして発電し、水が生成される。また、この発電に伴う発熱により燃料電池スタック11cから14cが上限温度を越えないように、冷却通路を流れる冷却液で熱を奪い冷却するようになっている。
【0028】
ウォーターポンプ11bから14bは、高電圧バッテリまたはモータ回生電力により駆動され、冷却通路において冷却液を循環させる。
【0029】
サーモバルブ11aから14aは、燃料電池スタック11cから14cの冷却時に通路を開放してバイパス流路42から冷却水を流入させる。また、燃料電池スタック11cから14cの冷却時以外の時には、サーモバルブ11aから14aは、バイパス流路42からの通路を閉塞し、冷却水の流入を阻止する。サーモバルブ11aから14aには図示しない温度センサが設けられており、サーモバルブ11aから14a周辺の冷却水の温度を基準として、自動的に開閉を行う。具体的には、サーモバルブ11aから14a周辺の冷却液が予め定められた温度よりも低いときには、冷却液を冷却する必要がないので、通路を閉塞し、バイパス流路42からの冷却水の流入を阻止する。一方で、冷却液が予め定められた温度よりも高いときには、冷却液を冷却する必要があるので、通路を開放してバイパス流路42から冷却水を流入させる。予め定められた温度は、例えば、75度である。
【0030】
ラジエータ20は、熱媒体と外気とで熱交換を行う冷却部品である。ラジエータ20は、放熱器であるFAN21を有する。
【0031】
リターダ30は、電力システム100が搭載される車両の制動機構である。大型トラックなどの大型車両において、ディスクブレーキではブレーキ能力が足りないためその重量を加味したブレーキは通常のディスクブレーキではなく、リターダといわれる流体式または磁気式のブレーキが採用される。本実施形態において、リターダ30は流体式リターダである。流体式リターダのロータを回転させてロータおよびステータ間で流体を循環させることにより流体に抵抗を発生させ、発生した抵抗で車両の制動力を得ることができる。本実施形態ではリターダ30を熱源として説明するが、リターダに相当する構成要素として、リターダ以外の熱源であっても良い。
【0032】
FCECU11dから14d、および32は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、CPU、ROM、RAM、その他、A/D変換器、D/A変換器等の入出力装置、計時部としてのタイマ等を有する。FCECU11dから14d、および32は、CPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行する。
【0033】
FCECU11dから14dは、燃料電池システム11から14のエネルギーマネージメントを行うように構成される。FCECU32は、リターダ30のエネルギーマネージメントを行うように構成される。FCECU11dから14d、およびFCECU32は、CPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することにより、ROMに格納されたプログラムを実行し、例えば、図示しない開度センサ、圧力センサ、流量センサ、温度センサ、エアポンプの回転数センサ等のセンサ検出値、燃料電池スタックの電圧、電流、エアポンプの電圧、電流、回転数、モータの電圧、電流、回転数等を検出して、各機器を制御する。
【0034】
FCECU11dから14d、およびFCECU32は、制御装置としてのFCECUマスタ50により統括的に管理される。FCECU11dから14d、およびFCECU32は、FCECUマスタ50からの指令を受けて各装置の制御を行う。FCECUマスタ50は、燃料電池システム11から14の作動状態、リターダ30の作動状態、およびサーモバルブ11aから14aの開閉状態の少なくとも1つに基づいて、ウォーターポンプ11bから14bの回転数を制御する。FCECUマスタ50は、電力システム100に要求される出力に応じて作動が必要な各燃料電池システム11から14の数を決定する。FCECU32は、当該電力システム100の外に設置され、又は電力システム100が搭載される車両を制御するECUの一機能として搭載され、電力システム100が搭載される車両を制御するECUからの命令によりリターダ30を制御し、FCECUマスタ50からの信号に基づき電力システム100が搭載される車両を制御するECUからの命令でEWP31を制御するように構成されていても良い。
【0035】
サーモバルブ11aが開いているときの冷却水の循環経路を、代表して燃料電池システム11に破線のroute1として示す。サーモバルブ11aが開いている間、燃料電池スタック11cを冷却するための冷却液は、バイパス流路42から、燃料電池システム11内部に流れ込み、サーモバルブ11aを通過する。続いて、冷却液は、ウォーターポンプ11bによって昇圧されて燃料電池スタック11cに供給され、燃料電池スタック11c内の冷却通路を通る際に燃料電池スタック11cから熱を奪って燃料電池スタック11cを冷却する。続いて、熱せられた冷却液は、バイパス流路43へと流れる(route1)。そして、熱せられた冷却液はラジエータ20に送られ、ラジエータ20のFAN21において外部に放熱することにより冷却液は冷却される。他の燃料電池システム12、13、14についても、サーモバルブ12a、13a、14aが開いているときの冷却液の循環経路は、燃料電池システム11と同じである。
【0036】
サーモバルブ12aが閉じているときの冷却液の循環経路を、代表して燃料電池システム12に破線のroute2として示す。サーモバルブ12aが閉じている間、冷却液は、燃料電池システム12内部で、サーモバルブ12aと、ウォーターポンプ12bと、燃料電池スタック12cの間を循環するように流れる(route2)。他の燃料電池システム11、13、14についても、サーモバルブ11a、13a、14aが閉じているときの冷却液の循環経路は、燃料電池システム12と同じである。
【0037】
ここで、各燃料電池システム11から14のウォーターポンプ11bから14bと、リターダ30のウォーターポンプ31の回転数の設定によっては、冷却液が上記循環経路を通常の方向に流れずに逆流することがある。冷却液が逆流しているときの冷却液の循環経路を、代表して燃料電池システム13に破線のroute3として示す。冷却液は、バイパス流路43から、燃料電池システム13内に流入し、燃料電池スタック13cへと流入する(route3)。他の燃料電池システム11、12、14についても、冷却液の逆流経路は、燃料電池システム13と同じである。
【0038】
冷却液が逆流することによって、下記の問題が生じる。第1に、冷却液の逆流を防止するために逆止弁を各燃料電池システム11から14ごとに配置する必要が生じるが、逆止弁を各燃料電池システム11から14ごとに配置することにより電力システム100の製造コストが増加する。第2に、逆止弁を配置しない形態においては、逆流防止に焦点を当てて各ウォーターポンプ11bから14bの駆動を最大化して冷却する必要が生じるため、システム全体の燃費が悪化する。第3に、冷却液が逆流することによって、各燃料電池システム11から14内の冷却液の流量が変動し、結露や乾燥が生じる。第1の実施形態では、冷却液の逆流の発生を防止するために、各燃料電池システム11から14のウォーターポンプ11bから14b、およびリターダ30のウォーターポンプ31の回転数の制御を行う。
【0039】
図2は、第1の実施形態における各燃料電池システム11から14とリターダ30のウォーターポンプの回転数制御の第1の例を示す図である。通常の制御において、冷却効率を上げるため、リターダ30が作動している間には、各燃料電池システム11から14のウォーターポンプ11bから14bの回転数を低下させて、各燃料電池システム11から14の発電量を低下させる制御を行う。しかしながら、各燃料電池システム11から14のウォーターポンプ11bから14bの回転を完全に停止してしまうと、図1のroute3に示す冷却液の逆流が発生してしまう。したがって、第1の例では、冷却液の逆流の発生を防止するために、リターダ30が作動している間に、ウォーターポンプ11bから14bを予め定められた最小の回転数で回転させる制御を行う。
【0040】
具体的には、FCECUマスタ50は、各燃料電池システム11から14のウォーターポンプ11bから14bの回転数を、ウォーターポンプ11bから14bからの冷却液の吐出流量が予め定められた単位時間当たりの最小吐出流量である第1の吐出流量になる第1の回転数と、第1の吐出流量より多い第2の吐出流量になる第2の回転数とで切り替えて制御する。第1の回転数および第2の回転数は、リターダ30の作動・非作動の条件および、リターダ30のウォーターポンプ31の回転数を考慮して決定される。第1の回転数は、例えば、4500rpmである。
【0041】
FCECUマスタ50は、リターダ30の非作動時(OFF時)は、ウォーターポンプ11bから14bの回転数を、第2の回転数に制御する。一方で、FCECUマスタ50は、リターダ30の作動時(ON時)は、ウォーターポンプ11bから14bの回転数を、第1の回転数に制御する。したがって、ウォーターポンプ11bから14bは、リターダ30の作動・非作動の条件に関わらず、予め定められた単位時間当たりの第1の最小吐出流量となる第1の回転数を下回らない範囲で回転する。
【0042】
また、通常走行時にはリターダ30は作動しておらず、各燃料電池システム11から14のみが作動している。しかしながら、リターダ30が作動していないときにリターダ30のウォーターポンプ31の回転を完全に停止してしまうと、リターダ30の周辺で冷却液の逆流が発生してしまう。したがって、本実施形態では、リターダ30の周辺における逆流の発生を防止するために、各燃料電池システム11から14が作動している間に、リターダ30のウォーターポンプ31を予め定められた回転数で回転させる制御を行う。
【0043】
具体的には、FCECUマスタ50は、リターダ30のウォーターポンプ31の回転数を、リターダ30からの冷却液の吐出流量が予め定められた単位時間当たりの最小吐出流量である第3の吐出流量になる第3の回転数と、第3の吐出流量より多い第4の吐出流量になる第4の回転数とで切り替えて制御する。第3の回転数および第4の回転数は、各燃料電池システム11から14のウォーターポンプ11bから14bの回転数および、リターダ30周辺の冷却液の温度を考慮して決定される。第3の回転数は、例えば、3000rpmである。
【0044】
FCECUマスタ50は、リターダ30の非作動時(OFF時)は、ウォーターポンプ31の回転数を第3の回転数に制御する。FCECUマスタ50は、リターダ30の作動時(ON時)は、ウォーターポンプ31の回転数を第4の回転数に制御する。
【0045】
第1の回転数は第4の回転数よりも小さい(すなわち、第1の吐出流量<第4の吐出流量)。すなわち、ウォーターポンプ11bから14bの最小回転数は、リターダ30の動作時のウォーターポンプ31の回転数よりも小さい。また、第2の回転数は第3の回転数よりも大きい(すなわち、第2の吐出流量>第3の吐出流量)。すなわち、ウォーターポンプ31の最小回転数は、リターダ30の非動作時のウォーターポンプ11bから14bの回転数よりも小さい。
【0046】
図3は、第1の実施形態における各燃料電池システム11から14とリターダ30のウォーターポンプの回転数制御の第2の例を示す図である。第2の例は、燃料電池システム11を単独制御し、燃料電池システム12から14を協調制御する例である。協調制御とは、複数の燃料電池システムのウォーターポンプの回転数を統一して動作させる制御を言う。複数の燃料電池システムを協調制御することにより、複数の燃料電池システムからバイパス流路43に流れ込む冷却液の量や、バイパス流路42から複数の燃料電池システムに流れ込む冷却液の量を等しくすることができ、冷却液の逆流を防止することができる。第2の例では、リターダ30の非作動時に、燃料電池システム12から14を作動させ、燃料電池システム11を非作動とする。また、リターダ30の作動時に、燃料電池システム11を作動させ、燃料電池システム12から14を非作動とする。
【0047】
図3に示すように、FCECUマスタ50は、リターダ30の非作動時に、ウォーターポンプ12bから14bの回転数を、第2の回転数に制御する。一方で、FCECUマスタ50は、リターダ30の非作動時に、ウォーターポンプ11bの回転数を、第1の回転数に制御する。FCECUマスタ50は、リターダ30の非作動時に、ウォーターポンプ31の回転数を第3の回転数に制御する。
【0048】
FCECUマスタ50は、リターダ30の作動時に、ウォーターポンプ12bから14bの回転数を、第1の回転数に制御する。一方で、FCECUマスタ50は、リターダ30の作動時に、ウォーターポンプ11bの回転数を、第2の回転数に制御する。FCECUマスタ50は、リターダ30の作動時に、ウォーターポンプ31の回転数を第4の回転数に制御する。
【0049】
図4は、第1の実施形態における協調制御のパターンを示す図である。図4において、「〇」は、協調制御する燃料電池システムを示しており、「×」は協調制御しない燃料電池システムを示している。図4に示すように、各燃料電池システム11から14を協調制御するパターンは12通りある。パターン(12)は、燃料電池システム11から14を全て協調制御する例であり、第1の実施形態における第1の例(図2参照)である。パターン(11)は、燃料電池システム11を単独制御し、燃料電池システム12から14を協調制御する例であり、第1の実施形態における第2の例(図3参照)である。図4に示す他のパターンを使用して各燃料電池システム11から14を協調制御してもよい。
【0050】
ある燃料電池システムについて協調制御の対象とするか否かは、当該燃料電池システムにおけるサーモバルブの開閉状態に応じて決定してよい。この場合、冷却水の温度が予め定められた温度以上であり、サーモバルブが開いた状態の燃料電池システムについて協調制御して、冷却水の温度が予め定められた温度より低く、サーモバルブが閉じた状態の燃料電池システムについて単独制御してもよい。
【0051】
図5は、第1の実施形態における電力システム100の動作を示すフローチャートである。FCECUマスタ50が各ウォーターポンプの駆動を要求する指令を出すと(ステップS01)、リターダ30のスイッチがONであるか、OFFであるかを判断する(ステップS02)。リターダ30のスイッチがONである場合(ステップS02:YES)、ウォーターポンプ31の回転数を第4の回転数に設定し(ステップS03)、ウォーターポンプ11bから14bの回転数を第1の回転数に設定する(ステップS04)。リターダ30のスイッチがOFFである場合(ステップS02:NO)、ウォーターポンプ31の回転数を第3の回転数に設定し(ステップS05)、ウォーターポンプ11bから14bの回転数を第2の回転数に設定する(ステップS06)。
【0052】
第1の実施形態における電力システム100によれば、冷却液の逆流の発生を防止するために、各燃料電池システム11から14のウォーターポンプ11bから14b、およびリターダ30のウォーターポンプ31の回転数の制御を行う。これにより、冷却液の逆流を防止するために逆止弁を各燃料電池システム11から14ごとに配置する必要がなくなり、電力システム100の製造コストを低減することができる。さらに、冷却液の逆流に伴う結露や乾燥などの不具合の発生を防止することができ、さらに、電力システム100の燃費を向上することができる。
【0053】
図6は、第2の実施形態における電力システム200の概略的な構成を示す図である。以下、第2の実施形態において第1の実施形態と異なる構成についてのみ説明を行い、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。第2の実施形態の電力システム100は、サーモバルブ11aから14dに代えて、電磁バルブ(EWV)11eから14e有する。電磁バルブ11eから14eは、それぞれ、FCECU11dから14dと接続されており、FCECUマスタ50により指令を受けて開閉が制御される。FCECUマスタ50は、各燃料電池システム11から14の内、作動しない燃料電池システムの電磁バルブ11eから14eを閉状態に制御し、作動させる燃料電池システムの電磁バルブ11eから14eを開状態に制御する。
【0054】
図7は、第2の実施形態における電力システム200の動作を示すフローチャートである。FCECUマスタ50が電磁バルブ11eから14eの駆動を要求する指令を出すと(ステップS11)、各燃料電池システム11から14の温度が予め定められた温度以上であるかを判断する(ステップS12)、各燃料電池システム11から14の温度が予め定められた温度以上である場合(ステップS12:YES)、電磁バルブ11eから14eを開き(ステップS14)、各燃料電池システム11から14の温度が予め定められた温度以上でない場合(ステップS12:NO)、電磁バルブ11eから14eを閉じる(ステップS13)。
【0055】
電磁バルブ11eから14eが開かれると、リターダ30のスイッチがONであるか、OFFであるかを判断する(ステップS15)。リターダ30のスイッチがONである場合(ステップS15:YES)、ウォーターポンプ31の回転数を第4の回転数に設定し(ステップS16)、ウォーターポンプ11bから14bの回転数を第1の回転数に設定する(ステップS17)。リターダ30のスイッチがOFFである場合(ステップS15:NO)、ウォーターポンプ31の回転数を第3の回転数に設定し(ステップS18)、ウォーターポンプ11bから14bの回転数を第2の回転数に設定する(ステップS19)。
【0056】
第2の実施形態における電力システム200によれば、上記第1の実施形態における電力システム100と同様の効果を奏する。
【0057】
第2の実施形態における電力システム200によれば、燃料電池システム11から14のバルブに電磁バルブ11eから14eを用いる。第1の実施形態のように、サーモバルブ11aから14aを用いると、サーモバルブ11aから14aは冷却水の温度によって開閉するため、冷却通路内部の圧力を制御する方法が冷却水の温度に完全に依存する。しかしながら、電磁バルブ11eから14eを用いることにより冷却水の温度以外の条件でもバルブの開閉をコントロールでき、冷却通路の圧力を制御することができる。また、電磁バルブ11eから14eを用いることにより、冷却通路内部の圧力を制御する指令を瞬時に電磁バルブ11eから14eに伝えて、即座にバルブの開閉を行うことができる。
【0058】
図8は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0059】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0060】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0061】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0062】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0063】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0064】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0065】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0066】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0067】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0068】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0069】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0070】
11~14 燃料電池システム、11a~14a サーモバルブ、11b~14b ウォーターポンプ、11c~14c 燃料電池スタック、20 ラジエータ、30 リターダ、11d~14d FCECU、11b~14b ウォーターポンプ31 FCECU、41a~41d メイン流路、42,43 バイパス流路、100 電力システム、50 FCECUマスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8