(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154558
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】車載電子システム、車両、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60R 25/34 20130101AFI20221005BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20221005BHJP
G08B 13/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60R25/34
B60R25/24
G08B13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057654
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久浩
(72)【発明者】
【氏名】河野 悟司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑典
【テーマコード(参考)】
5C084
【Fターム(参考)】
5C084AA04
5C084DD03
5C084DD22
5C084EE06
5C084GG37
5C084GG43
5C084HH05
5C084HH08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両に搭載される車載電子システムに関する。
【解決手段】車載電子システムは、車両のセキュリティ状態の判断に用いられる1以上のセンサと、セキュリティ状態の異常時に警報する警報装置と、センサと警報装置とに他のECUを介さず直接接続され、かつ他の複数のECUと接続される第1ECUとを備え、第1ECUは、少なくとも前記センサから受信する情報に基づきセキュリティ状態を判断するセキュリティ状態判断部と、セキュリティ状態判断部によって前記セキュリティ状態が異常と判断された場合に警報装置を動作させる警報装置制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載電子システムであって、
前記車両のセキュリティ状態の判断に用いられる1以上のセンサと、
前記セキュリティ状態の異常時に警報する警報装置と、
前記センサと前記警報装置とに他のECU(Electronic Control Unit)を介さず直接接続され、かつ他の複数のECUと接続される第1ECUと、
を備え、
前記第1ECUは、
少なくとも前記センサから受信する情報に基づきセキュリティ状態を判断するセキュリティ状態判断部と、
前記セキュリティ状態判断部によって前記セキュリティ状態が異常と判断された場合に前記警報装置を動作させる警報装置制御部と
を備える車載電子システム。
【請求項2】
前記第1ECUに他のECUを介さず直接接続され、前記車両に対するオーナー認証結果による施錠信号及び解錠信号を受信する第2ECU
を更に備え、
前記セキュリティ状態判断部は、前記第2ECUから受信した情報に更に基づいて、前記セキュリティ状態を判断する
請求項1に記載の車載電子システム。
【請求項3】
前記センサは、ドアスイッチ、フードスイッチ、及び前記車両内に設けられた超音波センサのうちの少なくとも1つを含む
請求項1又は2に記載の車載電子システム。
【請求項4】
前記警報装置は、ホーン及びセキュリティインジケータの少なくとも一方を含む
請求項1から3のいずれか一項に記載の車載電子システム。
【請求項5】
前記第1ECUに接続され、灯体を制御する第3ECU
をさらに備え、
前記警報装置制御部は、前記セキュリティ状態判断部によって前記セキュリティ状態が異常と判断された場合に、前記第3ECUへハザード出力要求を送信し、
前記第3ECUは、前記ハザード出力要求に応じて起動するとともに前記灯体を制御する
請求項1から4のいずれか一項に記載の車載電子システム。
【請求項6】
前記警報装置は少なくともホーンを含み、
前記警報装置制御部は、前記セキュリティ状態判断部によって前記セキュリティ状態が異常と判断された場合に、前記ホーンを動作させる信号の出力と、前記第3ECUへの前記ハザード出力要求の送信とを交互に行うことによって、前記ホーンと前記灯体とを交互に動作させる
請求項5に記載の車載電子システム。
【請求項7】
複数のスレーブECU間のデータ通信、及び、前記複数のスレーブECUと車外装置との間のデータ通信を中継するゲートウェイ機能を有するコアECU
を更に備え、
前記第1ECUは、前記複数のECUと前記コアECUとの間に設けられ、前記複数のECUと前記コアECUとの間の通信を中継するゲートウェイ機能を備えるECUである
請求項1から6のいずれか一項に記載の車載電子システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の車載電子システムを備える車両。
【請求項9】
車両に搭載される車載電子システムにおいて、前記車両のセキュリティ状態の判断に用いられる1以上のセンサと前記セキュリティ状態の異常時に警報する警報装置とに他のECUを介さず直接接続され、かつ他の複数のECUと接続される第1ECUが実行する制御方法であって、
少なくとも前記センサから受信する情報に基づきセキュリティ状態を判断する段階と、
前記セキュリティ状態が異常と判断された場合に前記警報装置を動作させる段階と
を備える制御方法。
【請求項10】
車両に搭載される車載電子システムにおいて前記車両のセキュリティ状態の判断に用いられる1以上のセンサと前記セキュリティ状態の異常時に警報する警報装置とに他のECUを介さず直接接続され、かつ他の複数のECUと接続されるコンピュータに、
少なくとも前記センサから受信する情報に基づきセキュリティ状態を判断する手順と、
前記セキュリティ状態が異常と判断された場合に前記警報装置を動作させる手順と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載電子システム、車両、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スタンバイ時の消費電力を低く抑えることができるとされる車載電子システムが記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特許第5502372号明細書
【発明の概要】
【0003】
第1の態様において、車載電子システムが提供される。車載電子システムは、車両に搭載される。車載電子システムは、車両のセキュリティ状態の判断に用いられる1以上のセンサを備える。車載電子システムは、セキュリティ状態の異常時に警報する警報装置を備える。車載電子システムは、センサと警報装置とに他のECUを介さず直接接続され、かつ他の複数のECUと接続される第1ECUを備える。第1ECUは、少なくともセンサから受信する情報に基づきセキュリティ状態を判断するセキュリティ状態判断部と、セキュリティ状態判断部によってセキュリティ状態が異常と判断された場合に警報装置を動作させる警報装置制御部とを備える車載電子システム。
【0004】
車載電子システムは、第1ECUに他のECUを介さず直接接続され、車両に対するオーナー認証結果による施錠信号及び解錠信号を受信する第2ECUを更に備える。セキュリティ状態判断部は、第2ECUから受信した情報に更に基づいて、セキュリティ状態を判断してよい。
【0005】
センサは、ドアスイッチ、フードスイッチ、及び車両内に設けられた超音波センサのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0006】
警報装置は、ホーン及びセキュリティインジケータの少なくとも一方を含んでよい。
【0007】
車載電子システムは、第1ECUに接続され、灯体を制御する第3ECUをさらに備えてよい。警報装置制御部は、セキュリティ状態判断部によってセキュリティ状態が異常と判断された場合に、第3ECUへハザード出力要求を送信し、第3ECUは、ハザード出力要求に応じて起動するとともに灯体を制御してよい。
【0008】
警報装置は少なくともホーンを含んでよい。警報装置制御部214は、セキュリティ状態判断部によってセキュリティ状態が異常と判断された場合に、動作させる信号の出力と、第3ECUへのハザード出力要求の送信とを交互に行うことによって、ホーンと灯体とを交互に動作させてよい。
【0009】
車載電子システムは、複数のスレーブECU間のデータ通信、及び、複数のスレーブECUと車外装置との間のデータ通信を中継するゲートウェイ機能を有するコアECUを備えてよい。第1ECUは、複数のECUとコアECUとの間に設けられ、複数のECUとコアECUとの間の通信を中継するゲートウェイ機能を備えるECUであってよい。
【0010】
第2の態様において、車両が提供される。車両は、上記の車載電子システムを備える。
【0011】
第3の態様において、制御方法が提供される。制御方法は、車両に搭載される車載電子システムにおいて、車両のセキュリティ状態の判断に用いられる1以上のセンサとセキュリティ状態の異常時に警報する警報装置とに他のECUを介さず直接接続され、かつ他の複数のECUと接続される第1ECUが実行する制御方法である。制御方法は、少なくともセンサから受信する情報に基づきセキュリティ状態を判断する段階を備える。制御方法は、セキュリティ状態が異常と判断された場合に警報装置を動作させる段階を備える。
【0012】
第4の態様において、プログラムが提供される。プログラムは、車両に搭載される車載電子システムにおいて車両のセキュリティ状態の判断に用いられる1以上のセンサとセキュリティ状態の異常時に警報する警報装置とに他のECUを介さず直接接続され、かつ他の複数のECUと接続されるコンピュータに、少なくともセンサから受信する情報に基づきセキュリティ状態を判断する手順を実行させる。プログラムは、コンピュータに、セキュリティ状態が異常と判断された場合に警報装置を動作させる手順を実行させる。
【0013】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る車両20のシステム構成を模式的に示す。
【
図3】車両20のエンジンフードが開かれた場合に第1ECU210及び第3ECU230が実行する処理の実行手順を示すシーケンス図である。
【
図4】本発明の複数の実施形態が全体的又は部分的に具現化され得るコンピュータ2000の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、一実施形態に係る車両20のシステム構成を模式的に示す。車両20は、車載電子システム22を備える。車載電子システム22は、TCU201、コアECU202、第1ECU210、第2ECU220、第3ECU230、第4ECU240、第5ECU250、フードスイッチ271、ドアスイッチ272、超音波センサ273、ホーン281、セキュリティインジケータ282、及びMID298を備える。なお、
図1には車両20が車載電子システム22を備える構成を示すが、車両20の構成は本実施形態の例に限られない。
【0017】
コアECU202、第1ECU210、第2ECU220、第3ECU230、第4ECU240、第5ECU250は、車載機器の制御を行う電子制御ユニット(Electronic Control Unit)である。コアECU202、第1ECU210、第2ECU220、第3ECU230、第4ECU240、第5ECU250のそれぞれのECUは、プロセッサ及び揮発性メモリ及び不揮発性メモリを備えるコンピュータを含んで構成され得る。TCU201は、テレマティクス制御ユニット(Telematics Control Unit)である。TCU201は、車両20外との間の無線通信を担う。例えば、TCU201は、移動体網を通じた無線通信や、無線LAN通信を担う。
【0018】
コアECU202は通信ネットワーク180aを介して第1ECU210に接続されている。コアECU202と第1ECU210とは、通信ネットワーク180aを通じて相互に通信可能である。コアECU202は通信ネットワーク180eを介して第5ECU250に接続されている。コアECU202と第5ECU250とは、通信ネットワーク180eを通じて相互に通信可能である。コアECU202は通信ネットワーク180fを介してTCU201に接続されている。コアECU202とTCU201とは通信ネットワーク180fを通じて相互に通信可能である。コアECU202は通信ネットワーク180fを介してMID298に接続されている。コアECU202とMID298とは通信ネットワーク180gを通じて相互に通信可能である。
【0019】
第1ECU210は、通信ネットワーク180aを介して第2ECU220に接続されている。コアECU202と第2ECU220とは通信ネットワーク180bを通じて相互に通信可能である。第1ECU210は、通信ネットワーク180cを介して第3ECU230及び第4ECU240に接続されている。第1ECU210、第2ECU220、第3ECU230とは、通信ネットワーク180bを通じて相互に通信可能である。第1ECU210は、通信ネットワーク180dを介して超音波センサ273に接続されている。第1ECU210と超音波センサ273とは通信ネットワーク180dを通じて相互に通信可能である。なお、第4ECU240は、電動ステアリングロック機能を担うECUである。第5ECU250は、例えば、燃料噴射装置等、主として車両20の運転制御に関する制御を行うECUを統括制御するECUである。他のECUの機能については後述する。
【0020】
通信ネットワーク180a、通信ネットワーク180b、通信ネットワーク180c、及び通信ネットワーク180eは、CAN(Controller Area Network)通信ネットワークである。通信ネットワーク180dは、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)等のシリアル通信線やLIN(Local Interconnect Network)等に準拠した通信線であってよい。通信ネットワーク180fは、イーサネット(登録商標)に準拠した通信ネットワーク及びCAN(Controller Area Network)通信ネットワークを含んでよい。
【0021】
第1ECU210には、フードスイッチ271、ドアスイッチ272、ホーン281、及びセキュリティインジケータ282が接続されている。第1ECU210には、ジカ線190aを介してフードスイッチ271が接続されている。第1ECU210には、ジカ線190aを通じてフードスイッチ271の出力を取得する。第1ECU210には、ジカ線190bを介してドアスイッチ272が接続されている。第1ECU210は、ジカ線190bを通じてドアスイッチ272の出力を取得する。第1ECU210には、ジカ線190cを介してホーン281が接続されている。第1ECU210は、ジカ線190cを通じてホーン281を動作させる駆動信号を出力する。第1ECU210には、ジカ線190dを介してセキュリティインジケータ282が接続されている。第1ECU210は、ジカ線190dを通じてセキュリティインジケータ282を動作させる駆動信号を出力する。また、第3ECU230には、灯体232が接続されている。第3ECU230には、ジカ線190eを介して灯体232が接続されている。第3ECU230は、ジカ線190aを通じて灯体232を動作させる駆動信号を出力する。ジカ線190a、ジカ線190b、ジカ線190c、ジカ線190d、及びジカ線190eは、シリアル通信等のデータ通信用配線ではなく、相互に直接接続された信号線である。ジカ線190a、ジカ線190b、ジカ線190c、ジカ線190d、及びジカ線190eはアナログ信号を伝送する信号線であってよい。
【0022】
図2は、第1ECU210の機能構成を、コアECU202、第3ECU230、第5ECU250、フードスイッチ271、ドアスイッチ272、超音波センサ273、ホーン281、セキュリティインジケータ282及び灯体232とともに示す。
【0023】
フードスイッチ271は、例えば、エンジンフードが開いた場合にフードスイッチ271の接点が閉じ、エンジンフードが閉じられた場合にフードスイッチ271の接点が開く。これにより、フード開のときはフード開状態を示すLレベルの信号が第1ECU210に入力され、フード閉のときはフード閉状態を示すHレベルの信号が第1ECU210に入力される。ドアスイッチ272は、例えば、ドアが開いた場合にドアスイッチ272の接点が閉じ、ドアが閉じられた場合にドアスイッチ272の接点が開く。これにより、ドア開のときはドア開状態を示すLレベルの信号が第1ECU210に入力され、ドア閉のときはドア閉状態を示すHレベルの信号が第1ECU210に入力される。超音波センサ273は、車両20内に設けられ、発振した超音波が反射波を検出する。
【0024】
ホーン281は、警音を発するセキュリティアラームである。ホーン281は第1ECU210により直接的に制御される。ホーン281は、警音器と共用であってよい。セキュリティインジケータ282は、メーター内に設けられたLEDを含む。セキュリティインジケータ282は第1ECU210により直接的に制御される。灯体232は、非常点滅表示灯であり、いわゆるハザードランプとして使用される灯体である。第1ECU210は、第3ECU230を通じて灯体232の点灯を動作させる。
【0025】
フードスイッチ271、ドアスイッチ272、及び超音波センサ273は、車両20のセキュリティ状態の判断に用いられる1以上のセンサの一例である。ホーン281及びセキュリティインジケータ282は、セキュリティ状態の異常時に警報する警報装置の一例である。
【0026】
第1ECU210は、フードスイッチ271、ドアスイッチ272、及び超音波センサ273とホーン281及びセキュリティインジケータ282とに、他のECUを介さず直接接続され、かつ他の複数のECUと接続される。第1ECU210は、セキュリティ状態判断部212と警報装置制御部214とを備える。セキュリティ状態判断部212は、第1ECU210は、少なくともセンサから受信する情報に基づきセキュリティ状態を判断する。警報装置制御部214は、セキュリティ状態判断部212によってセキュリティ状態が異常と判断された場合に、ホーン281及びセキュリティインジケータ282の少なくとも1つを動作させる。
【0027】
このように、第1ECU210がフードスイッチ271及びドアスイッチ272、並びに警報装置に他のECUを介さず直接接続されているので、警報の応答性を高めることができる。また、第1ECU210は、コアECU202や第5ECU250等が動作していなくても、フードスイッチ271及びドアスイッチ272から出力される信号を取得して、警報装置を動作させることができる。そのため、車両20のイグニッション電源オフ時に、コアECU202や第5ECU250等を動作させることなく、第1ECU210が定期的に起動してフードスイッチ271及びドアスイッチ272の出力を監視することで、セキュリティ状態の異常を検出することが可能になる。そのため、イグニッション電源オフ時に盗難防止の監視を行うために必要な待機電流を低減することができる。また、盗難防止機能が第1ECU210に集約されているので、盗難防止のためにECUの数を削減することができる。そのため、UN R116(盗難防止装置に係る協定規則)等に対し認証を取得するためのコストも削減することができる。
【0028】
第2ECU220は、第1ECU210に他のECUを介さず直接接続され、車両20に対するオーナー認証結果による施錠信号及び解錠信号を受信する。第2ECU220は、例えばキーレスエントリECUである。第2ECU220は、例えばキーから無線信号で送信されたコードを受信し、受信したコードと予め記憶されたコードとが一致する場合には、キー認証が取れた旨の認証結果を生成する。第1ECU210は、第2ECU220から受信した情報に更に基づいて、セキュリティ状態を判断する。例えば、第1ECU210は、第2ECU220によって、キー認証が取れた旨の認証結果を取得していない場合において、フードスイッチ271、ドアスイッチ272、及び超音波センサ273の少なくともいずれかによって予め定められた信号が検知された場合に、セキュリティ状態の異常と判断する。
【0029】
このように、第2ECU220は、第1ECU210に他のECUを介さず直接接続される。そのため、第1ECU210は、他のECUを動作させずに、第2ECU220から認証結果等の信号を受信することができる。そのため、イグニッション電源オフ時の待機電流を低減することができる。また、外部から信号を受信するECUを第1ECU210から切り離すことができるので、セキュリティを向上させることができる。
【0030】
第3ECU230は、第1ECU210に接続され、灯体232を制御する。警報装置制御部214は、セキュリティ状態判断部212によってセキュリティ状態が異常と判断された場合に、第3ECU230へハザード出力要求を送信する。第3ECU230は、ハザード出力要求に応じて起動するとともに灯体232を制御する。このように、第1ECU210が、セキュリティ状態の異常と判断した場合に第3ECU230にハザード出力要求を出すことで、第3ECU230が起動とともに灯体232を制御するので、起動させたECUへフードスイッチ271やドアスイッチ272によって検出された信号を再送する処理を行う場合に比べて、灯体232の応答性を向上できる。
【0031】
警報装置制御部214は、セキュリティ状態判断部212によってセキュリティ状態が異常と判断された場合に、ホーン281を動作させる信号の出力と、第3ECU230へのハザード出力要求の送信とを交互に行うことによって、ホーン281と灯体232とを交互に動作させる。
【0032】
コアECU202は、複数のスレーブECU間のデータ通信、及び、複数のスレーブECUと車外装置との間のデータ通信を中継するゲートウェイ機能を有する。ここで、複数のスレーブECUは、例えば、第1ECU210、第5ECU250等である。コアECU202は「セントラルECU」 や「マスタECU」等と呼ばれる場合もある。第1ECU210、第5ECU250等のスレーブECUは、ECU202のゲートウェイ機能を通じて、TCU201を介して車外装置との間のデータ通信を行う。第1ECU210は、複数のECUとコアECU202との間に設けられ、第2ECU220、第3ECU230、第4ECU240等の複数のECUとコアECUとの間の通信を中継するゲートウェイ機能を備えるECUである。このように、第2ECU220、第3ECU230、及び第4ECU240を第1ECU210に接続して、ECU202に直接接続しない構成を採用することで、サイバーセキュリティの信頼性を高めることができる。
【0033】
図3は、車両20のエンジンフードが開かれた場合に第1ECU210及び第3ECU230が実行する処理の実行手順を示すシーケンス図である。なお、本シーケンスの開始前において、イグニッション電源がオフ状態であるとする。また、第2ECU220によりキーの認証が得られていない状態であるとする。
【0034】
S302において、フードスイッチ271が開かれることによって、フード開状態を示す信号が第1ECU210に出力される。第1ECU210は定期的に起動するとS312において、セキュリティ状態判断部212はフードが開状態であるか否かを検出する処理を行う。フードスイッチ271から出力される信号がフード開状態を示す信号であり、第2ECU220からキー認証が取れた旨の認証結果を受信していない場合、セキュリティ状態が異常と判断し、警報装置制御部214はセキュリティ状態異常時処理を開始する(S314)。
【0035】
セキュリティ状態異常時処理として、警報装置制御部214は、ジカ線190cを通じて、ホーン281を動作させるホーン駆動信号をホーン281に出力(S316)することにより、ホーン281は警音を出力する(S317)。続いて、S318において、警報装置制御部214は、通信ネットワーク180cを通じてハザード出力要求を第3ECU230に送信する。第3ECU230は、ハザード出力要求に応じて起動するとともにハザード処理を行い(S319)、S320においてジカ線190eを通じて灯体232に予め定められたパターンの灯体駆動信号を出力することによって、灯体232を予め定められたパターンで発光させる(S321)。
【0036】
引き続き、S316~S321のシーケンスと同様に、警報装置制御部214は、ジカ線190cを通じてホーン駆動信号をホーン281に出力(S326)することにより、ホーン281は警音を出力する(S327)。続いて、S328において、警報装置制御部214は、通信ネットワーク180cを通じてハザード出力要求を第3ECU230に送信し、第3ECU230はハザード出力要求に応じてハザード処理を行い(S329)、S330においてジカ線190eを通じて灯体232に予め定められたパターンの灯体駆動信号を出力することによって、灯体232を予め定められたパターンで発光させる(S331)。以後、警報装置制御部214は、S316~S321のシーケンスとS336~S331のシーケンスとを交互に実行することにより、警音出力とハザード出力とを繰り返す。ホーン281や第3ECU230が第1ECU210に他のECUを介さず直接接続されることで、警音出力とハザード出力の応答遅れの発生が抑制され、警音出力とハザード出力とを繰り返すことができ、防犯性能が向上する。
【0037】
以上に説明したように、車載電子システム22によれば、セキュリティ関連の機能を第1ECU210及び第1ECU210に直結されたECUに集約しているので、警報の応答性を高めることができる。また、イグニッション電源オフ時に、コアECU202や第5ECU250等を動作させることなく、セキュリティ状態の異常を検出することが可能になるので、イグニッション電源オフ時にセキュリティ状態の監視を行うために必要な待機電流を低減することができる。また、セキュリティ関連の機能が第1ECU210に集約されているので、セキュリティ関連処理を行うために動作する必要があるECUの数を削減することができる。そのため、例えば、UN R116(盗難防止装置に係る協定規則)等に対し認証を取得するためのコストも削減することができる。
【0038】
車両20は、輸送機器の一例としての車両である。車両は、内燃機関を備える自動車、電気自動車、燃料電池自動車(FCV)等の自動車であってよい。自動車は、バス、トラック、二輪自動車等を含む。車両は、鞍乗型車両等であってよく、バイクであってよい。輸送機器としては、車両の他に、無人航空機を含む航空機、船舶等の機器を含む。輸送機器は、人又は物品を輸送する任意の機器であってよい。輸送機器は移動体の一例である。移動体は、輸送機器に限らず、移動可能な任意の機器であってよい。
【0039】
図4は、本発明の複数の実施形態が全体的又は部分的に具現化され得るコンピュータ2000の例を示す。コンピュータ2000にインストールされたプログラムは、コンピュータ2000を、実施形態に係る車載電子システム等のシステム又はシステムの各部、もしくは情報処理装置等の装置又は当該装置の各部として機能させる、当該システム又はシステムの各部もしくは当該装置又は当該装置の各部に関連付けられるオペレーションを実行させる、及び/又は、実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2000に、本明細書に記載の処理手順及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU2012によって実行されてよい。
【0040】
本実施形態によるコンピュータ2000は、CPU2012、及びRAM2014を含み、それらはホストコントローラ2010によって相互に接続されている。コンピュータ2000はまた、ROM2026、フラッシュメモリ2024、通信インタフェース2022、及び入力/出力チップ2040を含む。ROM2026、フラッシュメモリ2024、通信インタフェース2022、及び入力/出力チップ2040は、入力/出力コントローラ2020を介してホストコントローラ2010に接続されている。
【0041】
CPU2012は、ROM2026及びRAM2014内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0042】
通信インタフェース2022は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。フラッシュメモリ2024は、コンピュータ2000内のCPU2012によって使用されるプログラム及びデータを格納する。ROM2026は、アクティブ化時にコンピュータ2000によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ2000のハードウエアに依存するプログラムを格納する。入力/出力チップ2040はまた、キーボード、マウス及びモニタ等の様々な入力/出力ユニットをシリアルポート、パラレルポート、キーボードポート、マウスポート、モニタポート、USBポート、HDMI(登録商標)ポート等の入力/出力ポートを介して、入力/出力コントローラ2020に接続してよい。
【0043】
プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、又はメモリカードのようなコンピュータ可読記憶媒体又はネットワークを介して提供される。RAM2014、ROM2026、又はフラッシュメモリ2024は、コンピュータ可読記憶媒体の例である。プログラムは、フラッシュメモリ2024、RAM2014、又はROM2026にインストールされ、CPU2012によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2000に読み取られ、プログラムと上記様々なタイプのハードウエアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ2000の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0044】
例えば、コンピュータ2000及び外部デバイス間で通信が実行される場合、CPU2012は、RAM2014にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2022に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2022は、CPU2012の制御下、RAM2014及びフラッシュメモリ2024のような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取った送信データをネットワークに送信し、ネットワークから受信された受信データを、記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0045】
また、CPU2012は、フラッシュメモリ2024等のような記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM2014に読み取られるようにし、RAM2014上のデータに対し様々な種類の処理を実行してよい。CPU2012は次に、処理されたデータを記録媒体にライトバックする。
【0046】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理にかけられてよい。CPU2012は、RAM2014から読み取られたデータに対し、本明細書に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々な種類のオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々な種類の処理を実行してよく、結果をRAM2014にライトバックする。また、CPU2012は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2012は、第1の属性の属性値が指定されている、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0047】
上で説明したプログラム又はソフトウエアモジュールは、コンピュータ2000上又はコンピュータ2000近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能である。コンピュータ可読記憶媒体に格納されたプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2000に提供してよい。
【0048】
コンピュータ2000にインストールされ、コンピュータ2000を第1ECU210として機能させるプログラムは、CPU2012等に働きかけて、コンピュータ2000を、第1ECU210の各部としてそれぞれ機能させてよい。これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ2000に読込まれることにより、ソフトウエアと上述した各種のハードウエア資源とが協働した具体的手段である第1ECU210の各部として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ2000の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の第1ECU210が構築される。
【0049】
様々な実施形態が、ブロック図等を参照して説明された。ブロック図において各ブロックは、(1)オペレーションが実行されるプロセスの段階又は(2)オペレーションを実行する役割を持つ装置の各部を表わしてよい。特定の段階及び各部が、専用回路、コンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、及び/又はコンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタル及び/又はアナログハードウエア回路を含んでよく、集積回路(IC)及び/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、及び他の論理オペレーション、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウエア回路を含んでよい。
【0050】
コンピュータ可読記憶媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、処理手順又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段をもたらすべく実行され得る命令を含む製品の少なくとも一部を構成する。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0051】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0052】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ又はプログラマブル回路に対し、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、説明された処理手順又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段をもたらすべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0053】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0054】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0055】
20 車両
22 車載電子システム
27 フードスイッチ
180 通信ネットワーク
190 ジカ線
200 制御システム
201 TCU
202 ECU
210 第1ECU
212 セキュリティ状態判断部
214 警報装置制御部
220 第2ECU
230 第3ECU
232 灯体
240 第4ECU
250 第5ECU
271 フードスイッチ
272 ドアスイッチ
273 超音波センサ
281 ホーン
282 セキュリティインジケータ
298 MID
2000 コンピュータ
2010 ホストコントローラ
2012 CPU
2014 RAM
2020 入力/出力コントローラ
2022 通信インタフェース
2024 フラッシュメモリ
2026 ROM
2040 入力/出力チップ