(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154563
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】皮膜形成用組成物、該皮膜形成用組成物を塗工してなる積層体、該積層体を用いてなる指紋認証センサー、及び、硬化皮膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20221005BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20221005BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20221005BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221005BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221005BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D7/20
B05D3/06 Z
B05D7/24 302Y
B32B27/00 101
B32B27/16 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057661
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小倉 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】池堂 圭祐
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075BB42Z
4D075BB63Z
4D075DA06
4D075DB13
4D075DB31
4D075DC21
4D075EB43
4D075EC01
4D075EC08
4F100AG00B
4F100AH06A
4F100AK52A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA02A
4F100EH46A
4F100EJ08A
4F100EJ523
4F100EJ543
4F100GB61
4F100JB14A
4F100YY00A
4J038KA06
4J038NA01
4J038NA11
4J038PA17
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】現像性に優れており、硬化皮膜の膜厚を厚くしても、硬化収縮を抑制でき、硬度が高い硬化皮膜を形成することができる皮膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】シロキサンポリマー、ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物、重合開始剤、硬化剤、光酸発生剤、硬化触媒及び有機溶剤を含有し、上記シロキサンポリマーは、分子中にアミド結合と、カルボン酸部分若しくはカルボン酸エステル部分又はその両者とを有する有機基を含むシラン系化合物(A)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(B)と、分子内にエポキシ基を有するシラン系化合物(C)とを構成単量体として含有し、上記シラン系化合物(A)と、上記シラン系化合物(B)とのモル比[上記シラン系化合物(A):上記シラン系化合物(B)]が1:0.8~2.4であり、上記シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体に対する、上記シラン系化合物(C)のモル比[上記シラン系化合物(C)/上記シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体]が7~50であることを特徴とする皮膜形成用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサンポリマー、ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物、重合開始剤、硬化剤、光酸発生剤、硬化触媒及び有機溶剤を含有し、
前記シロキサンポリマーは、分子中にアミド結合と、カルボン酸部分若しくはカルボン酸エステル部分又はその両者とを有する有機基を含むシラン系化合物(A)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(B)と、分子内にエポキシ基を有するシラン系化合物(C)とを構成単量体として含有し、
前記シラン系化合物(A)と、前記シラン系化合物(B)とのモル比[前記シラン系化合物(A):前記シラン系化合物(B)]が1:0.8~2.4であり、
前記シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体に対する、前記シラン系化合物(C)のモル比[前記シラン系化合物(C)/前記シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体]が7~50である
ことを特徴とする皮膜形成用組成物。
【請求項2】
前記シロキサンポリマーは、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(D)、及び/又は、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(E)をさらに構成単量体として含有する請求項1に記載の皮膜形成用組成物。
【請求項3】
前記シラン系化合物(D)と前記シラン系化合物(E)とのモル比[前記シラン系化合物(D):前記シラン系化合物(E)]が、1:0.1~10である請求項1又は2に記載の皮膜形成用組成物。
【請求項4】
基材上に、請求項1~3のいずれか1項に記載の皮膜形成用組成物の硬化皮膜を有することを特徴とする積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の積層体を用いてなることを特徴とする指紋認証センサー。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の皮膜形成用組成物を基材に塗工する塗工工程、露光部に活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成する露光工程、及び、未露光部の塗液を現像液で溶解除去する現像工程を有することを特徴とする硬化皮膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜形成用組成物、該皮膜形成用組成物を塗工してなる積層体、該積層体を用いてなる指紋認証センサー、及び、硬化皮膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、セキュリティ保護に指紋認証が用いられることがある。特にスマートフォン等のモバイル用途では、このような指紋認証機能を備えるものが市場に多数流通している。
【0003】
このような指紋認証機能を備えるセンサーは、ケイ素化合物をボンディングパットとして用いることがある。
例えば、特許文献1には、Si上にSiO2膜が形成され、上記SiO2膜上にBPSG膜またはPSG膜が形成され、上記BPSG膜またはPSG膜上にSiN膜が形成され、上記SiN膜上にPoly-Si膜が形成され、上記Poly-Si膜上にAl系ワイヤが接合されていることを特徴とする接合構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したボンディングパッド(特許文献1ではPoly-Si膜が該当)は、フォトリソグラフィーにより形成されることがある。そのため、ボンディングパッドを形成する皮膜形成用組成物には、優れた現像性を有することが求められている。
【0006】
また、指紋認証の用途において、ボンディングパッドは表面に近い位置に有することがあるため、予期せぬ傷付きを防止する観点から、硬化皮膜が高い硬度を有することが求められている。
【0007】
このような高い硬度を実現するためには、ボンディングパッドを形成する皮膜形成用組成物として多官能の光重合性化合物を用いる方法や、高温で皮膜形成用組成物を熱硬化する方法が検討されているが、このような方法では、硬化収縮を起こしてクラックが発生するといった課題もあった。
【0008】
一方で、指紋認証の用途から優れた集光性能が求められており、このような集光性能を実現するために、ボンディングパッドは、膜厚を厚く(例えば、10μm以上)する必要があった。
【0009】
そのため、膜厚を厚くしたとしても、現像性に優れており、硬化収縮の抑制することができ、硬度が高い硬化皮膜を形成することができる皮膜形成用組成物が望まれていた。
【0010】
そこで本発明は、硬化皮膜の膜厚を厚くしても、現像性に優れており、硬化収縮を抑制でき、硬度が高い硬化皮膜を形成することができる皮膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、シロキサンポリマー、ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物、重合開始剤、硬化剤、光酸発生剤、硬化触媒及び有機溶剤を含有する皮膜形成用組成物において、シロキサンポリマーについて着目し、上記シロキサンポリマーを構成する材料として、分子中にアミド結合と、後述するカルボン酸部分とを有する有機基を含むシラン系化合物(A)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(B)と、分子内にエポキシ基を有するシラン系化合物(C)とを構成単量体として含有し、上記シラン系化合物(A)と上記シラン系化合物(B)との配合量を所定の範囲とし、シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体に対する上記シラン系化合物(C)の配合量を所定の範囲とすることにより、硬化皮膜の膜厚を厚くしても、現像性に優れており、硬化収縮を抑制でき、硬度が高い硬化皮膜を形成することができ、上記の課題をすべて解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、シロキサンポリマー、ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物、重合開始剤、硬化剤、光酸発生剤、硬化触媒及び有機溶剤を含有し、上記シロキサンポリマーは、分子中にアミド結合と、カルボン酸部分若しくはカルボン酸エステル部分又はその両者とを有する有機基を含むシラン系化合物(A)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(B)と、分子内にエポキシ基を有するシラン系化合物(C)とを構成単量体として含有し、上記シラン系化合物(A)と、上記シラン系化合物(B)とのモル比[上記シラン系化合物(A):上記シラン系化合物(B)]が1:0.8~2.4であり、上記シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体に対する、上記シラン系化合物(C)のモル比[上記シラン系化合物(C)/上記シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体]が7~50であることを特徴とする皮膜形成用組成物である。
【0013】
本発明の皮膜形成用組成物において、上記シロキサンポリマーは、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(D)、及び/又は、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(E)をさらに構成単量体として含有することが好ましい。
また、上記シラン系化合物(D)と上記シラン系化合物(E)とのモル比[上記シラン系化合物(D):上記シラン系化合物(E)]が、1:0.1~10であることが好ましい。
また、本発明は、基材上に、上記皮膜形成用組成物の硬化皮膜を有することを特徴とする積層体でもある。
また、本発明は、上記積層体を用いてなることを特徴とする指紋認証センサーでもある。
また、本発明は、上記皮膜形成用組成物を基材に塗工する塗工工程、露光部に活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成する露光工程、及び、未露光部の塗液を現像液で溶解除去する現像工程を有することを特徴とする硬化皮膜の形成方法でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、硬化皮膜の膜厚を厚くしても、現像性に優れており、硬化収縮を抑制でき、硬度が高い硬化皮膜を形成することができる皮膜形成用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の皮膜形成用組成物は、シロキサンポリマー、ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物、重合開始剤、硬化剤、光酸発生剤、硬化触媒及び有機溶剤を含有し、上記シロキサンポリマーは、分子中にアミド結合と、カルボン酸部分若しくはカルボン酸エステル部分又はその両者とを有する有機基を含むシラン系化合物(A)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(B)と、分子内にエポキシ基を有するシラン系化合物(C)とを構成単量体として含有し、上記シラン系化合物(A)と、上記シラン系化合物(B)とのモル比[上記シラン系化合物(A):上記シラン系化合物(B)]が1:0.8~2.4であり、上記シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体に対する、上記シラン系化合物(C)のモル比[上記シラン系化合物(C)/上記シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体]が7~50であることを特徴とする。
【0016】
本発明の皮膜形成用組成物では、シロキサンポリマーにおけるカルボン酸部分若しくはカルボン酸エステル部分又はその両者のみならず、さらにアミド結合を特定の当量有することによって、高膜厚であっても(10μm以上であっても)、良好な現像性を有し、ラジカル重合性不飽和二重結合とエポキシ基を特定の当量比率で有することによって、高膜厚であっても高硬度でありつつ硬化収縮を抑制できるような効果を硬化皮膜に与えることができる。
ただし、本発明は上記メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0017】
(シロキサンポリマー)
上記シロキサンポリマーは、分子中にアミド結合と、カルボン酸部分若しくはカルボン酸エステル部分又はその両者とを有する有機基を含むシラン系化合物(A)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(B)と、分子内にエポキシ基を有するシラン系化合物(C)とを構成単量体として含有する。
【0018】
<シラン系化合物(A)>
上記シラン系化合物(A)は、分子中にアミド結合と、カルボン酸部分若しくはカルボン酸エステル部分又はその両者とを有する有機基を含む。
上記分子中にアミド結合と、カルボン酸部分若しくはカルボン酸エステル部分又はその両者とを有する有機基を含むとは、シラン分子中にアミド結合とカルボン酸部分の組み合わせ(アミック酸構造)、又はアミド結合とカルボン酸エステル部分(アミック酸エステル構造)のいずれか、又はその両方を有するものであることを意味する。
上記シラン系化合物(A)としては、国際公開第2011/105368号で開示された加水分解性オルガノシラン、その製造方法を適宜選択して用いることができる。
【0019】
上記シラン系化合物(A)としては、アミノプロピルトリエトキシシランと、コハク酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸又はイタコン酸とを反応して得られる反応物であることが好ましく、アミノプロピルトリエトキシシランと、コハク酸無水物とを反応して得られる反応物であることがより好ましい。
具体的には、下記化学式(1)で表される構造を有する。
【化1】
【0020】
<シラン系化合物(B)>
上記シラン系化合物(B)は、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する。
上記シラン系化合物(B)としては、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルエチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルシラン化合物、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアリルシラン化合物を挙げることができる。
なかでも、高い加水分解反応性、および架橋密度の観点から、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0021】
<シロキサン系化合物(A)とシラン系化合物(B)とのモル比>
上記シロキサンポリマーは、上記シラン系化合物(A)と上記シラン系化合物(B)とのモル比[上記シラン系化合物(A):上記シラン系化合物(B)]が、1:0.8~2.4である。
【0022】
上記モル比[上記シラン系化合物(A):上記シラン系化合物(B)]が、1:0.8未満であると、硬化皮膜と基材やITO電極との密着性を充分に付与できず現像性(後述するL/S現像性試験においてラインが太る)が低下し、1:2.4を超えると、硬化していない皮膜の現像液に対する溶解性、特に希アルカリ現像液に対する溶解性が不充分(後述するL/S現像性試験において適切なスペースを形成できない)となる。
【0023】
上記シラン系化合物(A)と上記シラン系化合物(B)とのモル比[上記シラン系化合物(A):上記シラン系化合物(B)]は、1:1.0~2.0が好ましく、1:1.5~1.8がより好ましい。
【0024】
<シロキサン系化合物(C)>
上記シロキサン系化合物(C)は、分子内にエポキシ基を有する。
上記シロキサン系化合物(C)としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。
なかでも、架橋密度と高い加水分解反応性の観点から、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0025】
<シロキサン系化合物(C)のモル比>
上記シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体に対する上記シロキサン系化合物(C)のモル比[上記シラン系化合物(C)/上記シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体]は、7~50である。
【0026】
上記シロキサン系化合物(C)のモル比が7未満であると、上記皮膜形成用組成物を硬化する際に硬化収縮を起こしてしまい、上記シロキサン系化合物(C)のモル比が50を超えると、硬化していない皮膜の現像液に対する溶解性、特に希アルカリ現像液に対する溶解性が不充分(後述するL/S現像性試験において適切なスペースを形成できない)となる。
【0027】
上記シロキサンポリマーを構成する構成単量体の全体に対する上記シロキサン系化合物(C)のモル比は、15~35であることが好ましい。
【0028】
上記シラン系化合物(A)と上記シロキサン系化合物(C)とのモル比[上記シラン系化合物(A):上記シロキサン系化合物(C)]は、硬化皮膜と基材やITO電極との密着性を好適に付与する観点から、1:0.1~1.0であることが好ましく、1:0.2~0.7がより好ましく、1:0.3~0.6であることが更に好ましい。
【0029】
<シラン化合物(D)及びシラン化合物(E)>
上記シロキサンポリマーは、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(D)、及び/又は、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(E)をさらに構成単量体として含有することが好ましい。
【0030】
上記シラン系化合物(D)は、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種である。
【0031】
上記テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0032】
また、上記ビス(トリアルコキシシリル)アルカンとしては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン等を挙げることができる。
【0033】
その中でも、汎用性の面から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタンが好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランがより好ましい。
【0034】
上記シラン系化合物(E)は、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種である。
上記シラン系化合物(E)は、飽和炭化水素基を有するものとしては、アルキルトリアルコキシシランが好ましく、不飽和炭化水素基を有するものとしては、フェニルトリアルコキシシランが好ましい。
【0035】
上記アルキルトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、メチルトリイソブトキシシラン、メチルトリ-sec-ブトキシシラン、メチルトリ-tert-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ-n-プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリイソブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、n-プロピルトリイソプロポキシシラン、n-プロピルトリ-n-ブトキシシラン、n-プロピルトリイソブトキシシラン、n-プロピルトリ-sec-ブトキシシラン、n-プロピルトリ-tert-ブトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ-n-プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ-n-ブトキシシラン、イソプロピルトリイソブトキシシラン、イソプロピルトリ-sec-ブトキシシラン、イソプロピルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
【0036】
上記ジアルキルジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n--n-プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジメチルジイソブトキシシラン、ジメチルジ-sec-ブトキシシラン、ジメチルジ-tert-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ-n-プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジイソブトキシシラン、ジエチルジ-sec-ブトキシシラン、ジエチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジエトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-プロピルジイソプロポキシシラン、ジ-n-プロピルジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジイソブトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-tert-ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ-n-プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ-n-ブトキシシラン、ジイソプロピルジイソブトキシシラン、ジイソプロピルジ-sec-ブトキシシラン、ジイソプロピルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジエトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-ブチルジイソプロポキシシラン、ジ-n-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジイソブトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジイソブチルジ-n-プロポキシシラン、ジイソブチルジイソプロポキシシラン、ジイソブチルジ-n-ブトキシシラン、ジイソブチルジイソブトキシシラン、ジイソブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジイソブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジエトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-sec-ブチルジイソプロポキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジイソブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジエトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-tert-ブチルジイソプロポキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジイソブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
【0037】
上記シクロアルキルトリアルコキシシランとしては、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリ-n-プロポキシシラン、シクロペンチルトリイソプロポキシシラン、シクロペンチルトリ-n-ブトキシシラン、シクロペンチルトリイソブトキシシラン、シクロペンチルトリ-sec-ブトキシシラン、シクロペンチルトリ-sec-ブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリ-n-プロポキシシラン、シクロヘキシルトリイソプロポキシシラン、シクロヘキシルトリ-n-ブトキシシラン、シクロヘキシルトリイソブトキシシラン、シクロヘキシルトリ-sec-ブトキシシラン、シクロヘキシルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
上記ビニルトリアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ-n-プロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ-n-ブトキシシラン、ビニルトリイソブトキシシラン、ビニルトリ-sec-ブトキシシラン、ビニルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
【0038】
上記フェニルトリアルコキシシランとしては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ-n-プロポキシシラン、フェニルトリソプロポキシシラン、フェニルトリ-n-n-ブトキシシラン、フェニルトリイソブトキシシラン、フェニルトリ-sec-ブトキシシラン、フェニルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
なかでも、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランの群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、メチルトリエトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランがより好ましい。
【0039】
上記シラン系化合物(D)と上記シラン系化合物(E)とのモル比[上記シラン系化合物(D):上記シラン系化合物(E)]が、1:0.1~10であることが好ましい。
上記シラン系化合物(D)と上記シラン系化合物(E)とのモル比が、上記範囲であると硬化皮膜の密着性と、硬化していない皮膜の現像性とを両立することができる。
上記シラン系化合物(D)と上記シラン系化合物(E)とのモル比は、1:1.2~3であることがより好ましい。
【0040】
上記シラン系化合物(A)と上記シラン系化合物(E)とのモル比[上記シラン系化合物(A):上記シラン系化合物(E)]は、硬化皮膜と基材やITO電極との密着性と、硬化していない皮膜の現像液への溶解性の観点から、1:0.1~5.0であることが好ましい。
上記モル比[上記シラン系化合物(A):上記シラン系化合物(E)]は、1:0.8~3.0であることがより好ましく、1:1.0~2.5であることがさらに好ましい。
【0041】
<その他のシラン系化合物>
上記シロキサンポリマーは、その他のシラン系化合物を含有してもよい。
その他のシラン系化合物としては、メルカプト基を有するシラン系化合物が挙げられ、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0042】
上記シラン系化合物(A)と上記その他のシラン系化合物とのモル比[上記シラン系化合物(A):上記その他のシラン系化合物]は、硬化皮膜と基材やITO電極との密着性を好適に付与する観点から、1:0.1~1.0であることが好ましく、1:0.2~0.7がより好ましく、1:0.3~0.6であることが更に好ましい。
【0043】
<シロキサンポリマーの製造方法>
次に、上記シロキサンポリマーの製造方法について説明する。
上記シロキサンポリマーの製造方法としては、例えば、適切な容器内で上記シラン系化合物(A)及び上記シラン系化合物(B)を混合した後、上記シラン系化合物(C)、必要に応じて、上記シラン系化合物(D)、上記シラン系化合物(E)、及び、上記その他のシラン系化合物を混合し、水、重合触媒、必要に応じて反応溶媒を添加して加水分解させて縮合させる方法等が利用できる。
上記縮合反応後、上記シロキサンポリマー以外の不要な副生成物を、抽出、脱水、溶媒除去等の方法で除去することにより、上記シロキサンポリマーを得ることができる。
【0044】
上記水の量としては、容器内に仕込まれたシラン系化合物の全ての加水分解性の置換基の数に対して、水の分子が同じ数になる程度の量が好適である。
そして、本発明で利用される主要なシラン系化合物では、加水分解性の置換基を一分子あたり3または4個有することから、その様なシラン系化合物が多く含まれるときは、簡易的に水の量を、容器内に仕込まれたシラン系化合物の全ての分子の数に対して、水の分子の数が3~4倍(モル比として、シラン系化合物の全量:水=1:3~4)となる程度の量としてもよい。
【0045】
上記重合触媒としては、例えば、酢酸、塩酸等の酸触媒、アンモニア、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の塩基触媒を用いることができる。
上記重合触媒の量としては、容器内に仕込まれたシラン系化合物の全ての分子の数に対して、重合触媒の分子の数が0.05~0.2倍(モル比として、シラン系化合物の全量:重合触媒=1:0.05~0.2)になる程度の量が好ましい。
【0046】
上記反応溶媒としては、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル等のエステル化合物が好ましく、なかでも低級アルコールがより好ましく、適度な反応温度を維持できて留去しやすいという観点から、エタノール、イソプロピルアルコールがさらに好ましい。
反応温度としては、60~80℃が好ましく、反応時間としては、反応が充分に進行するよう、概ね、2~24時間であることが好ましい。
【0047】
<シロキサンポリマー>
上記シロキサンポリマーは、重量平均分子量(Mw)が、1000~1万であることが好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が1000未満であると、皮膜形成用組成物の硬化性が低下することがあり、上記重量平均分子量(Mw)が、1万を超えると、皮膜形成用組成物の溶解性が低下することがある。
上記シロキサンポリマーは、重量平均分子量(Mw)が、1500~8000であることがより好ましく、2000~4000であることがさらに好ましい。
【0048】
なお、上記重量平均分子量(Mw)としては、上記シロキサンポリマーを溶解させて、0.02質量%の溶液を作製し、フィルター(ジーエルサイエンス社製、GLクロマトディスク、水系25A、孔径0.2μm)を通過させた後、サイズ排除クロマトグラフィー、屈折率検出器から構成されるセミミクロGPC/SEC分析システム(日本分光社製)を用いて、以下の条件により測定することができる。
カラム:KF-603、KF-604(昭和電工社製)
RI検出器:RI-4035(日本分光社製)
PDA検出器:MD-4015((日本分光社製)
溶離液:THF
流速:1.0ml/min
注入量:100μl
【0049】
(ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物)
本発明の皮膜形成用組成物は、ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物、を含有する。
【0050】
上記ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物としては、二価以上の水酸基含有化合物と(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ) アクリレート、トリス(2- ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0051】
なかでも、架橋密度を高くでき優れた硬化皮膜に硬度を付与する観点から、三官能以上の反応性官能基を有する化合物、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ) アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0052】
(重合開始剤)
本発明の皮膜形成用組成物は、重合開始剤を含有する。
上記重合開始剤としては、後記のフォトリソグラフィー法により硬化皮膜を形成する際に、充分な光硬化反応が得られる光重合開始剤を使用することが好ましい。
このような光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メチル-〔4’-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のカルボニル化合物;1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-クロロフェニル)-1,3,5-トリアジン及び2-〔2-(2-フラニル)エチレニル〕-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のトリハロメタン類;2,2’-ビス(2-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラフェニル1,2’-ビイミダゾール等のイミダゾール二量体;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、任意の光増感剤と組み合わせることもできる。
【0053】
(有機溶剤)
本発明の皮膜形成用組成物は、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤としては、アルコール類、多価アルコール類とその誘導体、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤等の有機溶剤を用いることができる。
【0054】
上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール-n-、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール等の低級アルコールが挙げられる。
【0055】
上記多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0056】
上記多価アルコール類の誘導体として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールイソブチルエーテル等のグリコールモノエーテル類が挙げられる。
また、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート等のグリコールモノエーテルアシレート類が挙げられる。
【0057】
上記ケトン系有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げられる。
【0058】
上記エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-n-アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸-n-プロピル等が挙げられる
【0059】
上記有機溶剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記シロキサンポリマーの溶解性及び塗工適性の面から、多価アルコール類の誘導体やエステル系有機溶剤が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピルがより好ましい。
【0060】
(硬化剤)
本発明の皮膜形成用組成物は、硬化剤を含有する。
上記硬化剤としては、芳香族アミン硬化剤、酸無水物、フェノールノボラック樹脂シリコーン系等の硬化剤が挙げられる。
なかでも酸無水物が好ましく、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0061】
(光酸発生剤)
本発明の皮膜形成用組成物は、光酸発生剤を含有する。
上記光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、トリクロロメチル-s-トリアジン類、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、第四級アンモニウム塩類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物等が挙げられる。
【0062】
(硬化触媒)
本発明の皮膜形成用組成物は、硬化触媒を含有する。
上記硬化触媒としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム等の金属のキレート化合物が挙げられる。
【0063】
(その他の材料)
本発明の皮膜形成用組成物は、本発明の効果を低下させない範囲において、添加剤を含有してもよい。
上記添加剤としては、例えば、カルボジイミド系、イソシアネート系、エポキシ基やチオール基等の架橋性官能基を有する架橋剤;フッ素系、シリコーン系等の界面活性剤;芳香族炭化水素系、アミノ化合物系、ニトロ化合物系、キノン類、キサントン類等の光増感剤;ハイドロキノン、メトキノン、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、ジ-t-ブチルハイドロキノン、4-メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ニトロソアミン塩等の重合抑制剤;無機金属酸化物、有機微粒子等の充填剤等を添加することができる。
【0064】
(皮膜形成用組成物における各材料の含有量)
上記ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物は、上記シロキサンポリマー100質量部に対して、10~50質量部含有することが好ましい。
上記ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物の含有量が、上記シロキサンポリマー100質量部に対して10質量部未満であると、硬化皮膜の硬化性や基材やITO電極との密着性が不充分となることがあり、上記シロキサンポリマー100質量部に対して50質量部を超えると、硬化していない皮膜の現像液に対する溶解性が不充分となることがある。
【0065】
上記重合開始剤は、上記シロキサンポリマーと上記ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する重合性単量体との合計量を100質量部としたとき、0.5~40質量部含有することが好ましい。
上記重合開始剤の含有量が、0.5質量部未満であると、光重合性が低下して、フォトリソグラフィー法の露光部に未反応成分が残存することがあり、40質量部を超えると、皮膜形成用組成物の保存安定性が低下する可能性がある。
上記重合開始剤は、上記シロキサンポリマーと上記ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する重合性単量体との合計量を100質量部としたとき、1~20質量部であることがより好ましい。
【0066】
上記硬化剤、光酸発生剤、及び、硬化触媒の含有量は、それぞれ、上記シロキサンポリマー100質量部対して0.1質量部~10質量部程度である。
また、上記添加剤の含有量としては、例えば、上記シロキサンポリマー100質量部対して0.1質量部~10質量部程度である。
【0067】
(皮膜形成用組成物の製造方法)
本発明の皮膜形成用組成物の製造方法としては、適切な容器内に有機溶剤を仕込み、例えば、高速攪拌機等で撹拌しながら、上記シロキサンポリマー、上記ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物、上記重合開始剤、上記硬化剤、上記光酸発生剤、上記硬化触媒及び必要に応じて等のその他の材料を仕込んで混合する方法が利用できる。
なお、本発明の皮膜形成用組成物の製造方法は、上記方法に限定されるものではなく、各材料の仕込みの順番は任意であってよい。
また、固形の状態の材料は、有機溶剤に可溶であれば、仕込みの前に予め溶解させておいてもよく、有機溶剤中に直接または分散剤等を利用して分散可能であれば、仕込みの前に予め分散させておいてもよい。
【0068】
(皮膜形成用組成物の物性)
<現像性>
本発明の皮膜形成用組成物は、現像性に優れる。
上記現像性は、例えば、以下のL/S現像性試験で判断することができる。
【0069】
皮膜形成用組成物を、不揮発成分の濃度が45%になるように(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて、200rpm、60秒間の塗工条件で、硬化皮膜の厚みが10μmとなるようにガラス基板に塗工する。
次いで、80℃で3分間加熱(プリベーク)処理した後、ラインとスペースが刻まれたマスクを装着した紫外線平行露光装置TPE-200SI(テクノポスト社製)を用い、100mJ/cm2の照射条件で焼き付け処理し、一部を現像液として使用される1%Na2CO3/1%ノナール水溶液に90秒間浸漬した後イオン交換水で洗浄し、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、水洗、乾燥して、皮膜形成用組成物のL/S現像性評価用試験ピースを作製する。
この試験ピースを膜厚測定装置(Alpha-Step IQサーフェースプロファイラー、KLM-Tencor社製)を用いてL/Sを評価する。
【0070】
上記L/S現像性試験において、L(ライン)及びS(スペース)の双方が40μm以下であれば、現像性に優れると判断することができる。
【0071】
<硬化収縮>
本発明の皮膜形成用組成物は、硬化する際に硬化収縮を抑制することができる。
上記硬化収縮は、例えば、以下の応力測定試験で判断することができる。
【0072】
皮膜形成用組成物を、不揮発成分の濃度が45%になるように(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて、200rpm、60秒間の塗工条件で、硬化皮膜の厚みが10μmとなるように、シリコンウェーハー上に塗工する。
次いで、80℃で3分間加熱(プリベーク)処理した後、100mJ/cm2の照射条件で焼き付け処理し、一部を現像液として使用される1%Na2CO3/1%ノナール水溶液中に90秒間浸漬した後、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、水洗、乾燥して、硬化皮膜の応力測定用試験ピースを作製する。
この試験ピースを薄膜応測定装置FLX―2320(ヤマトマテリアル社製)を用いて応力測定を行う。
【0073】
上記応力測定試験において、応力が10MPa未満であれば、硬化収縮を十分に抑制することができると判断することができる。
【0074】
<硬度>
本発明の皮膜形成用組成物は、硬度が高い硬化皮膜を形成することができる
上記硬化皮膜の硬度は、例えば、以下の鉛筆引っかき試験で判断することができる。
【0075】
皮膜形成用組成物を、不揮発成分の濃度が45%になるように(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて、200rpm、60秒間の塗工条件で、硬化皮膜の厚みが10μmとなるように、ガラス基板に塗工する。
次いで、80℃で3分間加熱(プリベーク)処理した後、100mJ/cm2の照射条件で焼き付け処理し、一部を現像液として使用される1%Na2CO3/1%ノナール水溶液中に90秒間浸漬した後、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、水洗、乾燥して、硬化皮膜の硬度測定用試験ピースを作製する。
この試験ピースに対して、JIS K 5600-5-4:1999に準じて鉛筆引っかき試験(鉛筆硬度試験)の評価を行う。
【0076】
上記鉛筆引っかき試験において、硬度が4H以上であれば、十分な硬度を有すると判断することができる。
【0077】
(硬化皮膜の形成方法)
本発明の皮膜形成用組成物を用いて硬化皮膜を形成する方法としては、皮膜形成用組成物を基材に塗工する塗工工程、露光部に活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成する露光工程、及び、未露光部の塗液を現像液で溶解除去する現像工程を有することが好ましい。
このような硬化皮膜の形成方法もまた、本発明の一態様である。
【0078】
上記塗工工程における塗工方法、上記露光工程における露光部に照射する活性エネルギー線及びその照射方法、及び、露光部の塗液を除去する現像液は、従来のフォトリソグラフィー法で用いられているもの及び方法を適宜選択して用いることができる。
例えば、皮膜形成用組成物の不揮発成分の濃度が45%となるように希釈し、スピンコーターを用いて塗工し、80℃で3分間等の条件で加熱(プリベーク)処理した後、マスクアライナーを用いて、100mJ/cm2の照射条件でテストパターンを焼き付け処理し、現像液に1分間浸漬した後、150℃で30分間等の条件で加熱(ポストベーク)処理することで硬化皮膜を得ることができる。
【0079】
上記プリベークの条件としては、80~100℃、1~3分間で処理をすることが好ましい。
上記照射条件としては、20~120mJ/cm2であることが好ましい。
上記ポストベークの条件としては、120~180℃、30~60分間の条件で処理をすることが好ましい。
【0080】
また、上記基材としては、透光性を有するものであれば限定されず、タッチパネルや、指紋認証センサーに用いられるガラス基材、プラスチック基材として従来公知のものを適宜用いることができ、表面に透明電極が形成された基材であってもよい。
なお、表面に透明電極を有する場合には、透明電極が形成された面上に、本発明の皮膜形成用組成物の硬化皮膜を形成することが好ましい。
上記基材上に、本発明の皮膜形成用組成物の硬化皮膜を有することを特徴とする積層体もまた、本発明の一態様である。
また、上記積層体は、指紋認証センサーとして好適に用いることができ、上記積層体を用いてなる指紋認証センサーもまた、本発明の一態様である。
【実施例0081】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。
【0082】
<シラン系化合物(A)の作製>
200mlの3つ口フラスコに、アミノプロピルトリエトキシシラン20.00gを入れ、水浴で冷やしながら粉末のコハク酸無水物9.04gを入れ、室温にて20分攪拌した。その後、得られた粗生成物を濃縮し、上記化学式(1)で表される化合物を得た。これを後述するシロキサンポリマーの合成に用いた。
【0083】
シロキサンポリマーの合成には以下の材料を用いた。
<シラン系化合物(B)>
3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)
<シラン系化合物(C)>
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)
<シラン系化合物(D)>
テトラエトキシシラン(東京化成工業社製)
<シラン系化合物(E)>
フェニルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)
メチルトリエトキシシラン(東京化成工業社製)
【0084】
(シロキサンポリマーの合成)
撹拌装置、還流冷却器、温度計、及び滴下漏斗を取り付けた反応容器にシラン系化合物(A)の粗生成物、及び、表1に記載の配合比で各材料をアセトンに溶解し均一の溶液とした。
そこに水及び硝酸を滴下し、還流しながら60分混合した後、得られた反応溶液を室温まで冷却した。
その後、反応溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20.00gを加え、反応副生物であるエタノール、水、塩酸を減圧留去し、加水分解縮合物溶液を得た。
その後、加水分解縮合物溶液にプロピレングリコールジエチルエーテルを加え、シロキサンポリマー1~13の固形分濃度が45質量%である加水分解縮合物溶液を得た。
なお、上記シロキサンポリマー1~13の重量平均分子量(Mw)を、本明細書に記載した条件で測定したところ、いずれも1000~1万の範囲内であった。
【0085】
【0086】
(実施例1~9、比較例1~10の皮膜形成用組成物の作製)
高速撹拌装置を備えた容器内に、ポリシロキサン系化合物1~13の加水分解縮合物溶液及び表2及び3に記載の配合比で各材料を加えて攪拌し、皮膜形成用組成物を作製した。
【0087】
実施例及び比較例の皮膜形成用組成物の作製には、以下の材料を用いた。
<ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する光重合性化合物>
トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリアクリレート(THITAと表記、東京化成工業社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHAと表記、東京化成工業社製)
<硬化剤>
ヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製)
<架橋剤>
カレンズMT PE-1(チオール系架橋剤、昭和電工カレンズ社製)
<重合開始剤>
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(Omnirad819と表記、IGM Resins B.V.社製)
<光酸発生剤>
CPI-100P(三洋化成工業社製)
<硬化触媒>
K-KAT5218(アルミニウム系硬化触媒、楠本化成社製)
ZC-700(ジルコニウム系硬化触媒、マツモトファインケミカル社製)
<その他の材料>
BYK-307(シリコーン系界面活性剤、BYK(株)社製)
【0088】
<L/S現像性試験>
実施例、比較例それぞれの皮膜形成用組成物を、不揮発成分の濃度が45%になるように(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて、200rpm、60秒間の塗工条件で、硬化皮膜の厚みが10μmとなるようにガラス基板に塗工した。
次いで、80℃で3分間加熱(プリベーク)処理した後、ラインとスペースが刻まれたマスクを装着した紫外線平行露光装置TPE-200SI(テクノポスト社製)を用い、100mJ/cm2の照射条件で焼き付け処理し、一部を現像液として使用される1%Na2CO3/1%ノナール水溶液に90秒間浸漬した後イオン交換水で洗浄し、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、水洗、乾燥して、皮膜形成用組成物のL/S現像性評価用試験ピースを作製した。
この試験ピースを膜厚測定装置(Alpha-Step IQサーフェースプロファイラー、KLM-Tencor社製)を用いてL/Sを評価した。その結果を表2及び3に示した。
なお、L/S現像性試験において、L(ライン)及びS(スペース)の双方が40μm以下のものを現像性が優れると判断した。比較例5の皮膜形成用組成物については、現像液に溶解せずパターニングできなかったので、評価は「-」と記載した。
【0089】
<応力測定試験>
実施例、比較例それぞれの皮膜形成用組成物を、不揮発成分の濃度が45%になるように(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて、200rpm、60秒間の塗工条件で、硬化皮膜の厚みが10μmとなるように、シリコンウェーハー上に塗工した。
次いで、80℃で3分間加熱(プリベーク)処理した後、100mJ/cm2の照射条件で焼き付け処理し、一部を現像液として使用される1%Na2CO3/1%ノナール水溶液中に90秒間浸漬した後、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、水洗、乾燥して、硬化皮膜の応力測定用試験ピースを作製した。
この試験ピースを薄膜応測定装置FLX―2320(ヤマトマテリアル社製)を用いて応力測定を行い、以下の基準で評価した。その結果を表2及び3に示した。
(評価基準)
〇:応力が10MPa未満
×:応力が10MPa以上
【0090】
<鉛筆硬度試験>
実施例、比較例それぞれの皮膜形成用組成物を、不揮発成分の濃度が45%になるように(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて、200rpm、60秒間の塗工条件で、硬化皮膜の厚みが10μmとなるように、ガラス基板に塗工した。
次いで、80℃で3分間加熱(プリベーク)処理した後、100mJ/cm2の照射条件で焼き付け処理し、一部を現像液として使用される1%Na2CO3/1%ノナール水溶液中に90秒間浸漬した後、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、水洗、乾燥して、硬化皮膜の硬度測定用試験ピースを作製した。
この試験ピースに対して、JIS K 5600-5-4:1999に準じて鉛筆引っかき試験(鉛筆硬度試験)の評価を行った。その結果を表2及び3に示した。
なお、鉛筆硬度試験における硬度が4H以上のものを十分な硬度が有すると判断した。
【0091】
【0092】
【0093】
本発明の皮膜形成用組成物である実施例1~9では、硬化皮膜の膜厚が10μmであっても、現像性に優れており、硬化収縮を抑制でき、硬度が高い硬化皮膜を形成することができることが確認された。
特に、シラン化合物(D)及びシラン系化合物(E)を所定のモル比で含有する実施例4及び5では、現像性において極めて優れていた。
本発明の皮膜形成用組成物は、硬化皮膜の膜厚を厚くしても、現像性に優れており、硬化収縮を抑制でき、硬度が高い硬化皮膜を形成することができるため、タッチパネル等の透光性基板に塗工する絶縁性皮膜として好適に用いることができる。