(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154568
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】掛け布団
(51)【国際特許分類】
A47G 9/02 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
A47G9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057669
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 克也
(72)【発明者】
【氏名】富田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 真也
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102BA02
(57)【要約】
【課題】布にかかるコストを抑えて縫製を容易に行うことができ、内容物の漏れの可能性を低減して使い心地を良好にできる掛け布団を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る掛け布団は、第1布部2と、第2布部3と、第1方向D1に延びる複数の第1マチ部4と、第2方向D2に沿って延びる第2マチ部5と、を備える掛け布団1である。第2マチ部5は、掛け布団1の第2方向D2の一端から他端まで延びており、第1マチ部4の第1端部4b,4dは、第1布部2及び第2布部3に縫い合わされている。第1マチ部4の第1端部4b,4dとは反対側に位置する第2端部4c,4fは、領域Aの内側に第2マチ部5に沿うように折り曲げられており、第2端部4c,4fと第2マチ部5との間には、領域Aに内容物を充填するノズルNが挿入される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向、及び前記第1方向に交差する第2方向に延びる第1布部と、
前記第1布部に重ね合わされて前記第1方向及び前記第2方向に延びる第2布部と、
前記第1方向に沿って延びると共に前記第1布部と前記第2布部に縫い合わされており、前記第1布部と前記第2布部との間に形成される内部空間を複数の領域に仕切る複数の第1マチ部と、
前記第2方向に沿って延びると共に前記第1布部及び前記第2布部に縫い合わされており、前記内部空間を複数の領域に仕切る第2マチ部と、
を備える掛け布団であって、
前記第2マチ部は、前記掛け布団の前記第2方向の一端から他端まで延びており、
前記第1マチ部の第1端部は、前記第1布部及び前記第2布部に縫い合わされており、
前記第1マチ部の前記第1端部とは反対側に位置する第2端部は、前記領域の内側に前記第2マチ部に沿うように折り曲げられており、
前記第2端部と前記第2マチ部との間には、前記領域に内容物を充填するノズルが挿入される、
掛け布団。
【請求項2】
前記第2端部は、前記第2マチ部から離間する方向、及び前記第2マチ部に接近する方向に移動可能とされている、
請求項1に記載の掛け布団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内部空間に内容物が収容される掛け布団に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003-144285号公報には、表地と裏地が4辺の周縁部で縫合されて内部に区画室が形成された立体キルト構造のふとんが記載されている。裏地の内側には、ふとんの縦方向の全長にわたって延びる2本の縦桟と、ふとんの横方向に沿って延びる複数の横桟とが設けられ、縦桟と横桟が交差する複数の交差部が配置されている。
【0003】
縦桟及び横桟のそれぞれは、裏地に縫い代において縫い付けられている。交差部において、縦桟はふとんの縦方向に延在しており、縦桟の横方向の両側に一対の横桟が設けられる。一対の横桟と縦桟との間には隙間が形成されている。横桟は、縦桟に直接縫い合わされておらず、当て布を介して縦桟に接続されている。
【0004】
1つの交差部に対して4枚の当て布が用いられる。各当て布は、平面視においてL字状とされており、L字の縦棒部分が縦桟に縫合され、L字の横棒部分が横桟に縫合される。当て布のL字の横棒部分における全面が横桟に接続される。当て布のL字の縦棒部分では、上辺及び下辺が縦桟に接続され、上辺と下辺の間は縦桟から離間している。この当て布の縦桟から離間した部分と、横桟と縦桟の間に形成された隙間とは、羽毛充填用パイプが通る通路とされている。この縦桟と当て布又は横桟との間に形成された通路に羽毛充填用パイプが通された状態で、羽毛充填用パイプから区画室に羽毛が充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した掛け布団では、縦桟と横桟が互いに交差する交差部に4枚の当て布が用いられる。このように交差部ごとに4枚の当て布を用意しなければならないので、当て布として用いられる布にコストがかかっているという現状がある。また、掛け布団の複数の交差部のそれぞれに4枚の当て布が縫製されるので、掛け布団の使用者に当て布による違和感を感じさせる可能性があり、掛け布団の使い心地の点で改善の余地がある。
【0007】
前述した掛け布団では、1枚1枚の当て布を横桟及び縦桟のそれぞれに縫製しなければならないので、縫製に手間がかかっているという問題がある。更に、前述した掛け布団には、当て布を縦桟及び横桟のそれぞれに手で縫製しなければならない。よって、縫製の熟練度に依存しており、未熟な縫製者が縫製を行った場合には、縫製が外れて羽毛等の内容物が漏れる可能性がある。
【0008】
本開示は、布にかかるコストを抑えて縫製を容易に行うことができ、内容物の漏れの可能性を低減して使い心地を良好にできる掛け布団を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る掛け布団は、第1方向、及び第1方向に交差する第2方向に延びる第1布部と、第1布部に重ね合わされて第1方向及び第2方向に延びる第2布部と、第1方向に沿って延びると共に第1布部と第2布部に縫い合わされており、第1布部と第2布部との間に形成される内部空間を複数の領域に仕切る複数の第1マチ部と、第2方向に沿って延びると共に第1布部及び第2布部に縫い合わされており、内部空間を複数の領域に仕切る第2マチ部と、を備える掛け布団であって、第2マチ部は、掛け布団の第2方向の一端から他端まで延びており、第1マチ部の第1端部は、第1布部及び第2布部に縫い合わされており、第1マチ部の第1端部とは反対側に位置する第2端部は、領域の内側に第2マチ部に沿うように折り曲げられており、第2端部と第2マチ部との間には、領域に内容物を充填するノズルが挿入される。
【0010】
この掛け布団では、第1布部と第2布部の間において、第1方向に延びる複数の第1マチ部と、第2方向に延びる複数の第2マチ部とが配置される。第1布部と第2布部の間に形成される掛け布団の内部空間は、複数の第1マチ部、及び複数の第2マチ部によって複数の領域に仕切られている。第2マチ部は掛け布団の第2方向の一端から他端まで延びている。第1方向に沿って複数の第1マチ部が並んでおり、複数の第1マチ部の間において第2マチ部が第2方向に延在している。第1マチ部は第1方向の一端に第1端部を有し、第1端部は第1布部及び第2布部に縫い合わされている。第1マチ部は第1方向の他端に第2端部を有し、第2端部は当該領域の内側に第2マチ部に沿うように折り曲げられている。第2マチ部に沿うように折り曲げられてる第2部分と第2マチ部との間には、当該領域に内容物を充填するノズルが挿入される。従って、前述した当て布を用いずにノズルが挿入される通路を形成でき、当て布を不要とすることができるので、布にかかるコストを抑えることができる。また、当て布が不要となるので、掛け布団の使用者に当て布による違和感を感じさせないようにすることができる。その結果、掛け布団の使い心地を良好にすることができる。当て布を用いずに、第1マチ部を折り曲げてノズルの通路を形成できるので、縫製を容易に行うことができる。また、当て布を用いる場合と比較して縫製が必要な箇所を減らすことができるので、縫製が外れる可能性を低減して内容物が漏れる可能性を低減させることができる。
【0011】
第2端部は、第2マチ部から離間する方向、及び第2マチ部に接近する方向に移動可能とされていてもよい。この場合、領域の内側に第2マチ部に沿うように折り曲げられた第2端部が第2マチ部に対して移動可能とされている。従って、ノズルの通路である第2マチ部と第2端部との距離が可変となることにより、領域の内部に充填する内容物の偏りをより確実に抑制することができる。また、第2端部を移動可能とする場合には、第1布部及び第2布部への第2端部の縫製を省略できるので、縫製の手間を軽減させることができる。従って、縫製を一層容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、布にかかるコストを抑えて縫製を容易に行うことができ、内容物の漏れの可能性を低減して使い心地を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る掛け布団を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る掛け布団の第1マチ部及び第2マチ部を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図3の第1マチ部と第2マチ部の交差部を示す斜視図である。
【
図5】実施形態に係る掛け布団の隅部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る掛け布団の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部の図示を簡略化又は誇張している場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る掛け布団1を示す平面図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。例えば、掛け布団1は、羽毛布団である。掛け布団1は、例えば、長方形状を呈する。掛け布団1は、長方形状の第1布部2と、第1布部2の裏側に位置する長方形状の第2布部3とを有する。第1布部2及び第2布部3は、例えば、互いに同一の形状及び同一の大きさとされている。
【0016】
第1布部2及び第2布部3は、第1方向D1、及び第1方向D1に交差する第2方向D2に延びている。第1方向D1は、例えば、掛け布団1の幅方向(短手方向)であり、第2方向D2は掛け布団1の長手方向である。一例として、第1方向D1及び第2方向D2は互いに直交している。
【0017】
第1布部2及び第2布部3の材料としては、綿、ポリエステル、レーヨン又はリヨセル等、種々のものを用いることが可能である。第1布部2は、2つの短辺2bと2つの長辺2cを含む外縁2Aを有する。第2布部3も同様、短辺3b及び長辺3cを含む外縁3Aを有する。
【0018】
第1布部2の短辺2bと第2布部3の短辺3bとが合わされると共に、第1布部2の長辺2cと第2布部3の長辺3cとが合わされることによって、第1布部2の外縁2Aと第2布部3の外縁3Aとが重ねられる。外縁2A及び外縁3Aが互いに重ね合わされた状態で外縁2Aと外縁3Aとが縫い込まれることにより、第1布部2と第2布部3が連結される。
【0019】
掛け布団1は、第1布部2及び第2布部3によって形成される内部空間Sを仕切ると共に第1方向D1に延びる複数の第1マチ部4と、内部空間Sを仕切ると共に第2方向D2に延びる第2マチ部5とを備える。第1マチ部4及び第2マチ部5は、第1方向D1及び第2方向D2の双方に直交する第3方向D3に幅を有する立体キルトである。第3方向D3は、一例として、鉛直方向である。
【0020】
第1マチ部4及び第2マチ部5の材料は、互いに同一であってもよい。第1マチ部4及び第2マチ部5は、例えば、第1布部2及び第2布部3よりも硬い布によって構成されている。これにより、第1マチ部4及び第2マチ部5のへたりをより確実に抑制することができる。また、第1マチ部4及び第2マチ部5の材料は、互いに異なっていてもよい。
【0021】
第1マチ部4及び第2マチ部5の材料は、例えば、ポリエステルであってもよい。この場合、第1マチ部4及び第2マチ部5のコストを抑えると共に第1マチ部4及び第2マチ部5の強度を高めることができる。しかしながら、第1マチ部4及び第2マチ部5の材料は、ポリエステル以外の材料であってもよく、例えば、綿、レーヨン又はキュプラ等であてもよく適宜変更可能である。また、第1マチ部4及び第2マチ部5の材料は、ポリエステル及び綿の混紡等、複数の材料が混紡された材料であってもよい。
【0022】
図3は、掛け布団1における第1マチ部4及び第2マチ部5の配置を模式的に示す掛け布団1の平面図である。
図2及び
図3に示されるように、第1マチ部4及び第2マチ部5は、内部空間Sを複数の領域Aに仕切っている。領域Aは、第1マチ部4及び第2マチ部5によって仕切られた区画室に相当する。平面視における領域Aの形状は、例えば、長方形状である。
【0023】
第1マチ部4及び第2マチ部5によって形成される領域Aの数は、例えば、20(5×4)である。領域Aには、内容物Bが収容される。内容物Bは、例えば、柔軟性素材によって構成されている。内容物Bは、一例として、羽毛である。しかしながら、内容物Bは、例えば、粒わたであってもよく、内容物Bの種類は特に限定されない。
【0024】
第1方向D1に延びる複数の第1マチ部4の組Cが第2方向D2に沿って並んでおり、第2方向D2に沿って並ぶ組Cの数は、例えば、4である。しかしながら、組Cの数は、1以上且つ3以下、又は5以上であってもよく、特に限定されない。第2マチ部5は、第2方向D2の一端から他端まで延びている。すなわち、第2マチ部5は、第2方向D2の一端側の短辺2b,3bから第2方向D2の他端側の短辺2b,3bまで延在している。
【0025】
例えば、掛け布団1は複数の第2マチ部5を備え、複数の第2マチ部5は第1方向D1に沿って並んでいる。一例として、第2マチ部5の数は3である。しかしながら、第2マチ部5の数は、1、2又は4以上であってもよく、特に限定されない。第2マチ部5は、第1布部2に縫い込まれる上辺部5bと、第2布部3に縫い込まれる下辺部5cを有する。
【0026】
上辺部5bにおいて第2マチ部5は縫製によって第1布部2に縫い込まれ、下辺部5cにおいて第2マチ部5は縫製によって第2布部3に縫い込まれる。なお、第1マチ部4も、第2マチ部5と同様、第1布部2に縫い込まれる上辺部と、第2布部3に縫い込まれる下辺部を有する。
【0027】
掛け布団1は、例えば、第1方向D1に沿って並ぶ複数の第1マチ部4を有する。第1マチ部4は、長辺2c、3cから延びる第1マチ部4Aと、第1方向D1に沿って並ぶ2つの第2マチ部5の間で第1方向D1に延びる第1マチ部4Bとを含む。第1マチ部4A及び第1マチ部4Bの構成は、例えば、互いに同一である。従って、以下では、特に識別する必要がない場合には、第1マチ部4A及び第1マチ部4Bをまとめて第1マチ部4として説明することがある。
【0028】
第1マチ部4Aは、長辺2c,3cに縫い合わされる第1端部4bと、第1端部4bとは反対側に位置しており領域Aの内側に第2マチ部5に沿うように折り曲げられた第2端部4cとを有する。第1マチ部4Aの長さ(平面視における第1マチ部4Aの長さ)は、長辺2c,3cから第2マチ部5までの距離K1よりも長い。長辺2c,3cから延びる第1マチ部4Aの長さの余剰部分が第2端部4cとして領域Aの内側に折り曲げられている。
【0029】
第1マチ部4Aの第2端部4cと第2マチ部5との間には、隙間M1が形成されている。隙間M1は、領域Aに内容物Bを充填するノズルNが挿入される通路である。ノズルNは、例えば、円筒状を呈する。ノズルNからは内容物Bが噴射され、ノズルNから領域Aに内容物Bが噴射されることによって領域Aに内容物Bが充填される。ノズルNは、一例として、金属製である。しかしながら、ノズルNは、例えば、樹脂製であってもよく、ノズルNの材料は特に限定されない。
【0030】
掛け布団1の短辺2b,3bには、第2方向D2の端部に位置する領域AにノズルNを入れるための開口8が形成されている。開口8は、例えば、掛け布団1の製造の過程で形成される孔であってもよく、領域Aへの内容物Bの充填が完了した後に閉じられてもよい。開口8から第2方向D2の一端の領域Aに挿入されたノズルNは、当該領域Aよりも第2方向D2の奥に位置する領域Aにも挿入可能となっている。
【0031】
図4は、第1マチ部4Bと第2マチ部5を拡大した斜視図である。
図3及び
図4に示されるように、第1マチ部4Bは、第2マチ部5に縫い合わされる第1端部4dと、領域Aの内側に第2マチ部5に沿うように折り曲げられた第2端部4fとを有する。第1マチ部4Bの長さ(平面視における第1マチ部4Bの長さ)は、第1方向D1に沿って並ぶ2つの第2マチ部5の間の距離K2よりも長い。第2マチ部5に縫い合わされた部分から伸びる第1マチ部4Bの長さの余剰部分が第2端部4fとして領域Aの内側に折り曲げられている。
【0032】
第1マチ部4Bの第2端部4fと第2マチ部5との間には、隙間M2が形成されている。隙間M2は、前述した隙間M1と同様、ノズルNが挿入される通路である。第2端部4fは、例えば、第1布部2に縫い込まれる上辺部4gと、第2布部3に縫い込まれる下辺部4hを有する。一例として、隙間M2は、上辺部4gと下辺部4hの間に形成されている。この隙間M2にノズルNを第2方向D2に沿って通す(例えば
図4の矢印に沿って通す)ことにより、ノズルNを領域Aに挿入してノズルNから内容物Bを領域Aに充填することが可能となる。
【0033】
例えば、複数の第2マチ部5のうちの一部を挟むように隙間M1と隙間M2が形成されており、複数の第2マチ部5のうちの残部には一対の第1マチ部4(第1マチ部4A及び第1マチ部4B)が縫い込まれている。すなわち、第1マチ部4との間に隙間M1,M2を形成する第2マチ部5と、第1マチ部4との間に隙間M1,M2を形成しない第2マチ部5が、第1方向D1に沿って(例えば交互に)並んでいる。
【0034】
図5は、掛け布団1の隅部(四隅)を拡大した平面図である。
図1及び
図5に示されるように、掛け布団1は、掛け布団1に他の寝具を連結させるための第1紐6を有する。第1紐6は、第1方向D1及び第2方向D2の双方に対して傾斜する方向に延在している。第1紐6の一端は短辺2b,3bに縫い込まれており、第1紐6の他端は長辺2c,3cに縫い込まれている。
【0035】
第1紐6の材料は、例えば、第1マチ部4(又は第2マチ部5)の材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1紐6は、伸縮しない紐であってもよいし、伸縮するゴム紐であってもよい。このように第1紐6の材料としては種々のものを用いることが可能である。
【0036】
掛け布団1は、例えば、他の寝具を掛け布団1に連結するための第2紐7を有してもよい。掛け布団1は、例えば、複数の第2紐7を備え、複数の第2紐7のそれぞれは短辺2b,3b及び長辺2c,3cのそれぞれに縫製されている。一例として、第2紐7は、短辺2b,3bの第1方向D1の中央、又は長辺2c,3cの第2方向D2の中央、に設けられる。第2紐7は輪状とされており、第2紐7に他の寝具の紐を結ぶことによって掛け布団1に他の寝具を連結させることが可能である。
【0037】
次に、掛け布団1の製造方法の例について説明する。まず、
図2に示されるように、第1布部2及び第2布部3を用意する(第1布部及び第2布部を用意する工程)。そして、第2布部3の上に第2マチ部5を縫製する(第2布部に第2マチ部を縫製する工程)。具体的には、第2布部3の上に第2マチ部5が第2方向D2に延びるように配置して、第2マチ部5の下辺部5cを第2布部3に縫製して第2布部3に第2マチ部5を固定する。
【0038】
図3に示されるように、複数の第1マチ部4を用意する(第1マチ部を用意する工程)。このとき、長辺2c,3cから第2マチ部5までの距離K1よりも長い第1マチ部4Aを用意すると共に、第1方向D1に沿って並ぶ2つの第2マチ部5の間の距離K2よりも長い第1マチ部4Bを用意する。
【0039】
続いて、第1マチ部4Aの第1端部4bの下辺部を長辺3cに縫製によって固定し(第1マチ部の第1端部を固定する工程)、第1マチ部4Aの第2端部4cを第2マチ部5に沿うように領域Aの内側に折り曲げる(第1マチ部の第2端部を折り曲げる工程)。そして、折り曲げた第2端部4cの下辺部を第2布部3に縫製によって固定する(第2端部を固定する工程)。
【0040】
また、一対の第2マチ部5の間に第1マチ部4Bを配置する。第1マチ部4Bの第1端部4dの下辺部を第2マチ部5に縫製によって固定し(第1端部を第2マチ部に固定する工程)、第1マチ部4Bの第2端部4fを第2マチ部5に沿うように領域Aの内側に折り曲げる(第1マチ部の第2端部を折り曲げる工程)。
【0041】
そして、
図3及び
図4に示されるように、折り曲げた第2端部4fの下辺部4hを第2布部3に縫製によって固定する(第2端部を固定する工程)。以上のように第1マチ部4及び第2マチ部5を第2布部3に固定した後には、第1マチ部4及び第2マチ部5のそれぞれを第1布部2に固定する。
【0042】
具体的には、第1マチ部4及び第2マチ部5の上に第1布部2を被せて(第1マチ部及び第2マチ部に第1布部を被せる工程)、第1マチ部4Aの第1端部4bの上辺部を第1布部2に縫製によって固定する(第1端部を第1布部に固定する工程)と共に、第1マチ部4Aの第2端部4cの上辺部を第1布部2に縫製によって固定する(第2端部を第1布部に固定する工程)。そして、第1マチ部4Bの第1端部4dの上辺部を第1布部2に縫製によって固定すると共に(第1端部を第1布部に固定する工程)、第1マチ部4Bの第2端部4fの上辺部4gを第1布部2に縫製によって固定する(第2端部を第1布部2に固定する工程)。
【0043】
そして、第1布部2の短辺2bと第2布部3の短辺3bを縫い合わせると共に、第1布部2の長辺2cと第2布部3の長辺3cとを縫い合わせて、第1布部2を第2布部3に縫製する(第1布部を第2布部に縫製する工程)。このとき、第2方向D2に沿って並ぶ一対の短辺2b,3bのうちのいずれかにノズルNの挿入のための開口8を形成する(ノズルの挿入のための開口を形成する工程)。開口8は、第1マチ部4の第2端部4c,4fの第2方向D2側に形成される。
【0044】
そして、開口8からノズルNを挿入して領域Aに内容物Bを充填する(領域に内容物を充填する工程)。このとき、例えば、開口8から最も遠い最奥部の領域AまでノズルNを挿入し、最奥部の領域Aから内容物Bの充填を行い、その後、当該領域AからノズルNを引き出して当該領域Aの手前側(開口8側)の領域Aに対して内容物Bの充填を行う。このようにノズルNを引きながら複数の領域Aのそれぞれに内容物Bを充填し、開口8が形成されている領域Aに対する内容物Bの充填が終わった後に、第2方向D2に沿って並ぶ複数の領域Aへの内容物Bの充填が完了する。
【0045】
第2方向D2に沿って並ぶ複数の領域Aへの内容物Bの充填は、第1方向D1に沿って行う。そして、全ての領域Aに対する内容物Bの充填が終わった後に、縫製によって開口8を塞いで掛け布団1の製造が完了する。なお、領域Aに内容物Bを充填しているときに、充填された内容物Bが第1マチ部4Bの第2端部4f(又は第1マチ部4Aの第2端部4c)を第2マチ部5に密着させる。従って、折り曲げられた第2端部4f(第2端部4c)が第2マチ部5に密着することとなるので、内容物Bを充填しつつ隙間M2(隙間M1)を小さくすることができる。
【0046】
次に、本実施形態に係る掛け布団1から得られる作用効果についてより詳細に説明する。掛け布団1では、第1布部2と第2布部3の間において、第1方向D1に延びる複数の第1マチ部4と、第2方向D2に延びる複数の第2マチ部5とが配置される。第1布部2と第2布部3との間に形成される掛け布団1の内部空間Sは、複数の第1マチ部4、及び複数の第2マチ部5によって複数の領域Aに仕切られている。
【0047】
第2マチ部5は掛け布団1の第2方向D2の一端から他端まで延びている。第1方向D1に沿って複数の第1マチ部4が並んでおり、複数の第1マチ部4の間において第2マチ部5が第2方向D2に延在している。第1マチ部4は第1方向D1の一端に第1端部4b,4dを有し、第1端部4b,4dは第1布部2及び第2布部3に縫い合わされている。
【0048】
第1マチ部4は第1方向D1の他端に第2端部4c,4fを有し、第2端部4c,4fは領域Aの内側に第2マチ部5に沿うように折り曲げられている。第2マチ部5に沿うように折り曲げられている第2端部4c,4fと第2マチ部5との間には、領域Aに内容物Bを充填するノズルNが挿入される。
【0049】
従って、従来用いられていた当て布を用いずにノズルNが挿入される通路を隙間M1,M2として形成でき、当て布を不要とすることができるので、布にかかるコストを抑えることができる。また、当て布が不要となるので、掛け布団1の使用者に当て布による違和感を感じさせないようにすることができる。その結果、掛け布団1の使い心地を良好にすることができる。
【0050】
当て布を用いずに、第1マチ部4を折り曲げてノズルNの通路を隙間M1,M2として形成できるので、縫製を容易に行うことができる。また、当て布を用いる場合と比較して縫製が必要な箇所を減らすことができるので、縫製が外れる可能性を低減して内容物Bが漏れる可能性を低減させることができる。
【0051】
第2端部4c,4fは、第2マチ部5から離間する方向、及び第2マチ部5に接近する方向(例えば第1方向D1)に移動可能とされていてもよい。この場合、領域Aの内側に第2マチ部5に沿うように折り曲げられた第2端部4c,4fが第2マチ部5に対して移動可能とされている。
【0052】
従って、ノズルNの通路である第2マチ部5と第2端部4c,4fとの距離が可変となることにより、領域Aの内部に充填する内容物の偏りをより確実に抑制することができる。第2端部4c,4fを移動可能とする場合には、第1布部2及び第2布部3への第2端部4c,4fの縫製を省略できる。
【0053】
本実施形態では、第2端部4c,4fの上辺部(例えば上辺部4g)の第1布部2への縫製と、第2端部4c,4fの下辺部(例えば下辺部4h)の第2布部3への縫製と、を省略できる。また、第2端部4c,4fの上辺部のみが第1布部2に縫製されてもよいし、第2端部4c,4fの下辺部のみが第2布部3に縫製されてもよいし、第2端部4c,4fが第1布部2及び第2布部3のいずれにも縫製されなくてもよい。
【0054】
第2端部4c,4fが第2マチ部5に対し移動可能である場合、第2端部4c,4fを領域Aの内部において移動自在とすることが可能である。そして、縫製の手間を軽減させることができるので、縫製を一層容易に行うことができる。更に、第2端部4c,4fが第2マチ部5に対して移動可能である場合、領域Aに内容物Bを充填しているときにおける第2マチ部5への第2端部4c,4fの移動及び密着をより確実に行うことができる。従って、第2端部4c,4fをより確実に第2マチ部5に密着させることができる。その結果、領域Aにおける内容物Bの偏りを一層確実に低減して内容物Bを領域Aに均一に充填させることができる。
【0055】
次に、変形例に係る掛け布団11について
図6、
図7及び
図8を参照しながら説明する。なお、掛け布団11の一部の構成は、前述した掛け布団1の一部の構成と同一であるため、掛け布団1と重複する部分の説明を掛け布団1のときと同一の符号を付して適宜省略する。掛け布団11は、第1布部2によって構成される上面12と、第2布部3によって構成される下面13とを有する。
【0056】
図6は、掛け布団11の下面13を示す底面図である。
図7は、掛け布団11の上面12を示す平面図である。
図6及び
図7に示されるように、上面12と下面13とでは、第2マチ部5の数が互いに異なっている。例えば、上面12に縫い込まれている第2マチ部5の数は、下面13に縫い込まれている第2マチ部5の数よりも多い。一例として、上面12には4つの第2マチ部5が縫い込まれているのに対し、下面13には3つの第2マチ部5が縫い込まれている。掛け布団11は、掛け布団1と同様、複数の第1紐6、及び複数の第2紐7を有する。なお、第1紐6及び第2紐7の数及び配置態様は、
図6及び
図7の例に限られず、適宜変更可能である。
【0057】
図8は、
図6のB-B線断面図である。
図6~
図8に示されるように、掛け布団11は、第1方向D1の中央を含む領域において上下2層構造とされている。すなわち、掛け布団11は、第1方向D1の両端のそれぞれでは上下1層構造であり、第1方向D1の中央では上下2層構造である。掛け布団11は、例えば、第1方向D1に沿って並ぶ3つ以上の第2マチ部5を備える。
【0058】
第1方向D1に沿って並ぶ3つ以上の第2マチ部5のうち、第1方向D1の両端に位置する一対の第2マチ部5は、第1布部2及び第2布部3のそれぞれに縫い込まれている。第1方向D1の両端に位置する一対の第2マチ部5の間には第3マチ部14が第1方向D1に沿って延びており、第3マチ部14によって掛け布団11が上下2層に分けられている。
【0059】
例えば、複数の第2マチ部5のうちの一部は、第1布部2及び第3マチ部14に縫製されている。また、複数の第2マチ部5のうちの一部は、第2布部3及び第3マチ部14に縫製されている。一例として、掛け布団11は、第1布部2及び第3マチ部14に縫製される2つの第2マチ部5と、第2布部3及び第3マチ部14に縫製される1つの第2マチ部5とを備える。
【0060】
掛け布団11は、掛け布団1と同様、複数の第1マチ部4Aと、複数の第1マチ部4Bとを備える。例えば、第1方向D1の一端及び他端のそれぞれに第1マチ部4Aが設けられる。第1方向D1に沿って並ぶ2つの第1マチ部4Aの間に複数の第1マチ部4Bが設けられる。第1マチ部4Bは、第3マチ部14と第1布部2の間、及び第3マチ部14と第2布部3の間のそれぞれに設けられる。
【0061】
掛け布団11は、第1布部2及び第3マチ部14に縫い込まれる第1マチ部4Bと、第2布部3及び第3マチ部14に縫い込まれる第1マチ部4Bとを有する。第1マチ部4A及び第1マチ部4Bのそれぞれは、前述と同様、第1端部4b,4d及び第2端部4c,4fを有する。
【0062】
複数の第1マチ部4Bのうちの一部と第3マチ部14と第2マチ部5との間には、隙間M3が形成されている。隙間M3も、前述した隙間M1,M2と同様、第2端部4c,4fが領域Aの内側に折り曲げられていることによって形成されている。隙間M3の第2方向D2の端部(短辺2b,3b)には、隙間M1,M2と同様、隙間M3に連通する開口8が形成されている。以上の掛け布団11では、前述の掛け布団1と同様、開口8から隙間M1,M2,M3を介して各領域AにノズルNを入れて、ノズルNから各領域Aに内容物Bを充填していくことにより、領域Aへの内容物Bの充填が行われる。
【0063】
以上、変形例に係る掛け布団11は、掛け布団1と同様、第1マチ部4が第2端部4c,4fを有し、第2端部4c,4fは領域Aの内側に第2マチ部5に沿うように折り曲げられている。そして、第2端部4c,4fと第2マチ部5との間には、領域Aに内容物Bを充填するノズルNが挿入される。
【0064】
従って、前述した当て布を用いずにノズルNが挿入される通路を隙間M1,M2,M3として形成でき、当て布を不要とすることができるので、布にかかるコストを抑えることができる。当て布が不要となるので、掛け布団1の使用者に当て布による違和感を感じさせないようにすることができ、縫製を容易に行うことができると共に、掛け布団1の使い心地を良好にすることができる。従って、掛け布団11からは、掛け布団1と同様の作用効果が得られる。
【0065】
以上、本開示に係る掛け布団の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限定されることはなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、他のものに用いられるものであってもよい。すなわち、本開示に係る掛け布団の各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述の実施形態に限られず適宜変更可能である。
【0066】
例えば、前述の実施形態では、第1紐6及び第2紐7を備える掛け布団1,11について説明した。この掛け布団1,11の場合、第1紐6又は第2紐7を介して掛け布団1,11に他の寝具を連結させることが可能となる。しかしながら、本開示に係る掛け布団は、第1紐6及び第2紐7の少なくともいずれかを有しない掛け布団であってもよい。
【0067】
例えば、前述の実施形態では、平面視における領域Aの形状が長方形状(各角度が90°である四角形状)である例について説明した。しかしながら、平面視における領域の形状は、長方形以外の形状であってもよく、例えば、三角形、平行四辺形、菱形、台形、五角形、六角形(一例として亀甲形)、七角形若しくは八角形等の多角形、楕円形状、長円形状、又は扇形状等であってもよく、特に限定されない。
【0068】
領域Aの各角の角度は90°でなくてもよく、領域Aの各角の角度は鋭角(90°未満)又は鈍角であってもよい(90°より大きくてもよい)。但し、領域Aに収容される内容物Bを効率よく乾燥させる観点では、領域Aの各角の角度は90°以上である(より好ましくは90°より大きい)ことが望ましい。
【0069】
(実施例)
次に、本開示に係る掛け布団の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。実施例に係る掛け布団は、
図3に示されるように、前述した実施形態に係る掛け布団1と同様、第1布部2、第2布部3、第1マチ部4及び第2マチ部5を備え、第1マチ部4は第2マチ部5に沿って折り曲げられた第2端部4c,4fを有する。実施例に係る掛け布団の縦糸(第2方向D2に沿って延びる糸)は、TTC(テトロンテトロンコットン)、ポリエステル、及び綿の少なくともいずれかを含む。実施例に係る掛け布団の横糸(第1方向D1に沿って延びる糸)は、綿とポリエステルの混紡、又はポリエステルである。実施例に係る掛け布団は、コインランドリーの洗濯機によって洗濯及び乾燥させることが可能である。
【0070】
実施例に係る掛け布団は、平面視における領域Aの形状が長方形状である掛け布団1と、平面視における領域Aの形状が六角形状である掛け布団とを含んでおり、これらの掛け布団をコインランドリーで洗濯及び乾燥させる試験を行った。コインランドリーでは、予洗い(予備洗い)及び本洗いを行い、最終脱水回転数を800(rpm)とした。最終脱水回転数とは、1分間のクリーニング機の脱水回転数を示している。以上のようにコインランドリーで洗濯及び乾燥を行った結果、平面視における領域Aの形状が長方形状及び六角形状のいずれの場合であっても、コインランドリーで縮む等の問題がなく洗濯及び乾燥を行うことができた。更に、平面視における領域Aの形状が六角形状である場合、平面視における領域Aの形状が長方形状である場合と比較して、乾燥をより効率よく行うことができた。これは、領域Aの各角の角度が鈍角(120°)であることより、各角に内容物がより詰まりにくくなったことが理由であると考えられる。
【符号の説明】
【0071】
1…掛け布団、2…第1布部、2A…外縁、2b…短辺、2c…長辺、3…第2布部、3A…外縁、3b…短辺、3c…長辺、4,4A,4B…第1マチ部、4b…第1端部、4c…第2端部、4d…第1端部、4f…第2端部、4g…上辺部、4h…下辺部、5…第2マチ部、5b…上辺部、5c…下辺部、6…第1紐、7…第2紐、8…開口、11…掛け布団、12…上面、13…下面、14…第3マチ部、A…領域、B…内容物、C…組、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、K1,K2…距離、M1,M2,M3…隙間、N…ノズル、S…内部空間。