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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154570
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】転写装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20221005BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20221005BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20221005BHJP
【FI】
G09F9/00 338
H05K3/34 512Z
H05K3/34 501D
H01L33/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057671
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】寺田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】新井 義之
(72)【発明者】
【氏名】陣田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】大床 潤
【テーマコード(参考)】
5E319
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
5E319AA04
5E319AA07
5E319AB05
5E319AC03
5E319AC11
5E319CD35
5E319GG20
5F142AA82
5F142CB14
5F142CB23
5F142CD02
5F142FA32
5F142GA02
5G435AA17
5G435BB04
5G435CC09
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】保持する基板に対する素子の向きを変えずに転写基板から被転写基板へ素子の転写を高速で行うことができる転写装置を提供する。
【解決手段】転写基板W1に保持されている素子2を被転写基板W2へ転写させる転写装置1であり、転写基板W1を保持して第1の速度v1で移動させる第1の移動手段10と、被転写基板w2を保持して第2の速度v2で移動させる第2の移動手段20と、第1の移動手段10が保持する転写基板W1および第2の移動手段20が保持する被転写基板W2と対向するよう、素子2を保持する外周面31が第3の速度で無端移動する中間転写体30と、を備え、第1の移動手段10が保持する転写基板W1から中間転写体30の外周面31へ素子2を転写させ、第2の移動手段20が保持する被転写基板W2へ中間転写体30の外周面31から素子2を転写させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写基板に保持されている素子を被転写基板へ転写させる転写装置であり、
前記転写基板を保持して第1の速度で移動させる第1の移動手段と、
前記被転写基板を保持して第2の速度で移動させる第2の移動手段と、
前記第1の移動手段が保持する前記転写基板および前記第2の移動手段が保持する前記被転写基板と対向するよう、素子を保持する外周面が第3の速度で無端移動する中間転写体と、
を備え、
前記第1の移動手段が保持する前記転写基板から前記中間転写体の外周面へ素子を転写させ、前記第2の移動手段が保持する前記被転写基板へ前記中間転写体の外周面から素子を転写させることを特徴とする、転写装置。
【請求項2】
前記転写基板から前記中間転写体の外周面への素子の転写および前記中間転写体の外周面から前記被転写基板への素子の転写が同時に実施されることを特徴とする、請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記第1の速度と前記第2の速度は異なることを特徴とする、請求項1もしくは2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記第1の速度と前記第2の速度は等しいことを特徴とする、請求項1もしくは2に記載の転写装置。
【請求項5】
前記第3の速度は少なくとも前記第1の速度と前記第2の速度のいずれかと等しいことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の転写装置。
【請求項6】
前記中間転写体の外周面は、素子を保持する部分が周囲より突出していることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の転写装置。
【請求項7】
前記転写基板から前記中間転写体の外周面への素子の転写と前記中間転写体の外周面から前記被転写基板への素子の転写の少なくとも一方では、非接触で素子を転写させることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の転写装置。
【請求項8】
前記転写基板および前記被転写基板のいずれか一方と前記中間転写体の外周面は移動速度が等しく、素子の受け渡し位置において互いに素子を保持し、少なくとも素子の受け渡し位置において、転写先側の素子の保持力の方が転写元側の素子の保持力より高いことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の転写装置。
【請求項9】
前記転写基板および前記被転写基板のいずれか一方と前記中間転写体の外周面は、素子の受け渡し位置において互いの移動方向と略垂直な方向に互いを相対移動させる手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の転写装置。
【請求項10】
前記第1の移動手段と前記第2の移動手段の少なくとも一方は、素子の受け渡し位置において基板が前記中間転写体に最も近づくように基板を沿わせて搬送するバックアップ部材を備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の転写装置。
【請求項11】
前記第1の移動手段、前記中間転写体、および前記第2の移動手段は、共通の駆動源により駆動することを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDなどの素子を配線基板などに転写する、転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の液晶ディスプレイに代わる次世代表示方法として、LEDを使用したディスプレイの開発が進んでいる。LEDディスプレイでは、FHD(Full High Definition)パネルで1920×1080個、4Kパネルでは3840×2160個もの赤色LED、緑色LED、青色LEDがそれぞれ格子状の配列にて配線基板に高密度に実装されている。
【0003】
このように配線基板へ高密度に実装される各色LEDは、たとえば約20um×40umといった微小寸法を有する、いわゆるマイクロLEDであり、特許文献1に示すようにサファイアなどの成長基板上に窒化ガリウムの結晶をエピタキシャル成長させる工程などを経て得られ、基板上で上記寸法のチップ状にダイシングされる。ダイシングされた各マイクロLEDの表面にはバンプなど配線回路が形成され、この面が配線基板と対向するように、マイクロLEDが配線基板に実装される。また、微小寸法のマイクロLEDを転写するにあたり、レーザーリフトオフなどの手法が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-170993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、マイクロLEDを配線基板に転写するにあたり、特許文献1に記載の方法では相当な時間を要するおそれがあった。
【0006】
具体的には、バンプ側が基板に保持された状態からマイクロLEDを回路基板にフリップチップ実装するにあたり、従来のレーザーリフトオフなどの転写方法では、一度の転写でマイクロLEDの向きは反転して転写されるため、上記基板から一度別の中継基板へマイクロLEDを転写し、中継基板への転写が全て完了した後、その中継基板から回路基板へマイクロLEDを転写するという2回の工程を経る必要があり、相当な時間を要していた。
【0007】
また、一度検査基板などに転写して点灯検査を行ったあと、配線基板に転写する場合がある。このとき、マイクロLEDを点灯させるためには、検査基板上でも配線基板上でもマイクロLEDのバンプが各基板と対向し、転写される必要がある。そのため、検査基板から回路基板へは同じ向きにマイクロLEDを転写する必要があり、上記フリップチップ実装と同様に2回の転写工程を経る必要があるため、相当な時間を要していた。
【0008】
本願発明は、上記問題点を鑑み、保持する基板に対する素子の向きを変えずに転写基板から被転写基板へ素子の転写を高速で行うことができる転写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の転写装置は、転写基板に保持されている素子を被転写基板へ転写させる転写装置であり、前記転写基板を保持して第1の速度で移動させる第1の移動手段と、前記被転写基板を保持して第2の速度で移動させる第2の移動手段と、前記第1の移動手段が保持する前記転写基板および前記第2の移動手段が保持する前記被転写基板と対向するよう、素子を保持する外周面が第3の速度で無端移動する中間転写体と、を備え、前記第1の移動手段が保持する前記転写基板から前記中間転写体の外周面へ素子を転写させ、前記第2の移動手段が保持する前記被転写基板へ前記中間転写体の外周面から素子を転写させることを特徴としている。
【0010】
この転写装置により、表裏反転が2回実施されるので転写基板と被転写基板とで保持する素子の向きが同じとなる。また、中間転写体が無端移動する構成であるため、転写基板からの素子の受け取りと被転写基板への素子の引き渡しを同じ工程内で実施することができる。
【0011】
また、前記転写基板から前記中間転写体の外周面への素子の転写および前記中間転写体の外周面から前記被転写基板への素子の転写が同時に実施されると良い。
【0012】
こうすることにより、中間転写体を介しての転写基板から被転写基板への転写タクトの短縮が可能である。
【0013】
また、前記第1の速度と前記第2の速度は異なっていても良い。
【0014】
こうすることにより、転写基板と被転写基板とで移動方向における保持する素子のピッチを変換させることができる。
【0015】
また、前記第1の速度と前記第2の速度は等しくても良い。
【0016】
こうすることにより、ピッチは同一のまま転写基板から被転写基板へ素子を移し替えることができる。
【0017】
また、前記第3の速度は少なくとも前記第1の速度と前記第2の速度のいずれかと等しいことが好ましい。
【0018】
こうすることにより、転写基板と被転写基板の少なくともいずれかで、中間転写体との素子の受け渡しの衝撃を最小化することができる。
【0019】
また、前記中間転写体の外周面は、素子を保持する部分が周囲より突出していると良い。
【0020】
こうすることにより、転写基板もしくは被転写基板の素子の配置位置が深いところにある場合でも素子の受け渡しを行うことができる。
【0021】
また、前記転写基板から前記中間転写体の外周面への素子の転写と前記中間転写体の外周面から前記被転写基板への素子の転写の少なくとも一方では、非接触で素子を転写させると良い。
【0022】
こうすることにより、転写元と転写先の相対移動に起因する転写時の衝撃を最小化することができる。
【0023】
また、前記転写基板および前記被転写基板のいずれか一方と前記中間転写体の外周面は移動速度が等しく、素子の受け渡し位置において互いに素子を保持し、少なくとも素子の受け渡し位置において、転写先側の素子の保持力の方が転写元側の素子の保持力より高くても良い。
【0024】
こうすることにより、位置精度良く素子の受け取りを行うことができる。
【0025】
また、前記第1の移動手段と前記第2の移動手段の少なくとも一方は、素子の受け渡し位置において基板が前記中間転写体に最も近づくように基板を沿わせて搬送するバックアップ部材を備えていると良い。
【0026】
こうすることにより、前後の素子と被転写基板との干渉を防ぎ、素子を受け取りやすくすることができる。
【0027】
また、前記第1の移動手段、前記中間転写体、および前記第2の移動手段は、共通の駆動源により駆動すると良い。
【0028】
こうすることにより、転写装置全体の駆動部の構成を簡易化することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の転写装置により、保持する基板に対する素子の向きを変えずに転写基板から被転写基板へ素子の転写を高速で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態における転写装置を説明する図である。
図2】本実施形態の転写装置における中間転写体から被転写基板への素子の受け渡し位置近傍を示す図である。
図3】本発明の他の実施形態における転写装置を説明する図である。
図4】本発明のさらに他の実施形態における転写装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態における転写装置1について、図1を参照して説明する。
【0032】
本実施形態の転写装置1は、第1の移動手段10、第2の移動手段20、および中間転写体30を有し、第1の移動手段10によって移動する転写基板W1から中間転写体30の外周面31へ素子2を転写する。そして、中間転写体30の外周面31は無端移動(移動端を持たない形態で移動)しており、転写基板W1から受け取った素子2を第2の移動手段20によって移動する被転写基板W2へ転写する。
【0033】
ここで、本実施形態では、素子2はマイクロLEDチップであり、最終的な被転写基板4は配線回路が形成されたディスプレイ用の回路基板である。回路基板には、赤色、緑色、青色の素子2が配置され、配置される個数は、回路基板がFHD(Full High Definition)パネル向けの回路基板であった場合は各色1920×1080個、4Kパネル向けの回路基板であった場合は3840×2160個にも及ぶ。
【0034】
また、転写基板W1および被転写基板W2は、本実施形態では可撓性を有する長尺の帯状の形態を有し、ロールツーロールにより移動する。
【0035】
なお、本説明では、水平方向であり互いに直交する方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向と呼び、鉛直方向をZ軸方向と呼ぶ。
【0036】
第1の移動手段10は、巻き出しロール11および巻き取りロール12を有し、帯状の転写基板W1を長尺方向(図1におけるX軸方向)にロールツーロールで移動させる。
【0037】
巻き出しロール11および巻き取りロール12は、略円柱状の回転体であり、それぞれの中心軸を回転軸として回転する。転写基板W1の長尺方向の端部は、それぞれ巻き出しロール11および巻き取りロール12の回転面に巻かれている。巻き出しロール11と巻き取りロール12のうち少なくとも一方は、図示しない駆動源と接続されており、この駆動源によって回転することにより、転写基板W1は所定の張力を付与されながら長尺方向に所定の速度(図1に示す第1の速度v1)で移動する。
【0038】
また、転写基板W1には、転写基板W1の長尺方向および短尺方向に素子2が所定のピッチで規則的に配列、保持されている。本実施形態では、転写基板W1上で素子2は転写基板W1の長尺方向に図1に示すようにピッチP1で配列されている。なお、転写基板W1の短尺方向における素子2の配列の状態については説明を省略する。
【0039】
そして、第1の移動手段10が転写基板W1を移動させることにより、転写基板W1上の素子2が移動する。
【0040】
第2の移動手段20は、巻き出しロール21および巻き取りロール22を有し、帯状の被転写基板W2を長尺方向(図1におけるX軸方向)にロールツーロールで移動させる。
【0041】
巻き出しロール21および巻き取りロール22は、略円柱状の回転体であり、それぞれの中心軸を回転軸として回転する。被転写基板W2の長尺方向の端部は、それぞれ巻き出しロール21および巻き取りロール22の回転面に巻かれている。巻き出しロール21と巻き取りロール22のうち少なくとも一方は、図示しない駆動源と接続されており、この駆動源によって回転することにより、被転写基板W2は所定の張力を付与されながら長尺方向に所定の速度(図1に示す第2の速度v2)で移動する。
【0042】
中間転写体30は、無端移動する外周面31を有し、所定の周期で循環する。外周面が無端移動する形態の一例として、本実施形態では中間転写体30は略円柱状のドラムであり、この円柱の中心軸を回転軸として図示しない駆動源により回転駆動することにより、外周面31が所定の速度(図1に示す第3の速度v3)で回転移動する。なお、この中間転写体30の回転軸方向は、少なくとも素子2を受け渡す位置において転写基板W1および被転写基板W2の移動方向と直交する。
【0043】
中間転写体30の外周面31は素子2の保持力源として粘着性を有し、粘着力により素子2を保持する。また、本実施形態では、この外周面31の素子2を保持する部分は周囲より突出しており、突出部32を形成する。この突出した外周面31の配列にしたがって、素子2が保持される。
【0044】
ここで、中間転写体30の外周面31は、図1に領域R1で示すように、所定箇所にて第1の移動手段10が保持する転写基板W1と対向しており、この領域R1において、転写基板W1から中間転写体30への素子2の転写が行われ、ここから素子2は中間転写体30の外周面31に保持される。
【0045】
転写基板W1から中間転写体30への素子2の転写方法は、特定の方法に限定されないが、本実施形態ではレーザーリフトオフを利用している。領域R1において図示しない光線源から転写基板W1の素子2が保持されている部分へ光エネルギーBが照射されることにより、レーザーアブレーションが生じて転写基板W1から中間転写体30の外周面31へ向かって素子2が飛ばされ、中間転写体30への素子2の転写が実行される。
【0046】
ここで、光エネルギーBがたとえばラインレーザーのような幅広の光線であり、その長手方向が転写基板W1の短尺方向と平行であれば、転写基板W1の短尺方向に並んだ複数の素子2を同時に中間転写体30へ転写することができる。
【0047】
なお、領域R1において、転写基板W1の移動方向と中間転写体30の外周面31の移動方向は、(反対向きでなく)同じ向きであることが好ましい。これにより、領域R1における両者の相対速度を小さくすることができる。
【0048】
ここで、図1に示すように、転写基板W1上では外側を向いていた側の素子2の面Aは、中間転写体30では外周面31と対向するように(内側を向くように)保持される。すなわち、中間転写体30では転写基板W1に対して素子2が表裏反転して転写される。
【0049】
次に、中間転写体30の外周面31は、図1に領域R2で示すように、所定箇所にて第2の移動手段20が保持する被転写基板W2と対向しており、この領域R2において、中間転写体30から被転写基板W2への素子2の転写が行われ、ここから素子2は被転写基板W2に保持される。
【0050】
中間転写体30から被転写基板W2への素子2の転写方法は、特定の方法に限定されないが、本実施形態では保持力の差を利用した移し替えが利用されている。
【0051】
保持力の差を利用して中間転写体30から被転写基板W2へ素子2を転写する様子を図2に示す。図1に示した領域R2において、中間転写体30の外周面31は被転写基板W2に最接近し、この位置において、中間転写体30と被転写基板W2が互いに素子2に接触する状態が形成される。
【0052】
ここで、被転写基板W2上の素子2の受け取り面W21も粘着性を有している場合、中間転写体30および被転写基板W2により素子2が粘着保持される。その後、中間転写体30および被転写基板W2がともに移動し、両者の距離が遠のく際、素子2は粘着力が高い方に保持された状態となる。したがって、少なくとも素子2の受け渡しの時に被転写基板W2の受け取り面W21の粘着力(図2に示す粘着力ad1)の方が中間転写体30の外周面31の粘着力(図2に示す粘着力ad2)よりも大きければ、素子2は中間転写体30から被転写基板W2へ渡される。すなわち、素子2の受け渡し位置において、転写先側(被転写基板W2)の素子2の保持力の方が転写元側(中間転写体30の外周面)の素子2の保持力より高いことにより、素子2は転写元から転写先へ渡される。
【0053】
ここで、両者の保持力は、上記の通り少なくとも素子2の受け渡しの時に被転写基板W2の受け取り面W21の保持力の方が中間転写体30の外周面31の保持力よりも大きければ良い。したがって、たとえば中間転写体30の外周面31が粘着力ad1よりも大きな粘着力を通常有していたとしても、UV照射や加熱などにより素子2の受け渡しの時にのみ一時的に粘着力を低減させて粘着力ad2にすることによって、被転写基板W2への転写が可能な状態にすると良い。
【0054】
また、本実施形態では、中間転写体30において外周面31が突出した形態を有している。これにより、被転写基板W2において図2に示す隔壁部W22などによって受け取り面W21が深い位置にあった場合であっても素子2を受け取り面W21に接触させることができる。
【0055】
なお、このように素子2の受け渡しの際に素子2が中間転写体30にも被転写基板W2にも保持される状態が形成される場合、領域R2における中間転写体30の外周面31と被転写基板W2の移動方向と速度はともに同じである、すなわち両者の相対速度がゼロであることが好ましい。こうすることにより、両者の速度差に起因する転写時に素子2にかかる衝撃を防ぐことができると同時に、図2のように被転写基板W2の受け取り面W21が深い位置にあった場合であっても中間転写体30の突出部32をその隙間に干渉無く入り込ませ、素子2を転写させることができる。これに対し、領域R1におけるレーザーリフトオフによる転写のように素子2が両方の保持機構に接する状態が形成されない場合は、両者の相対移動に起因する転写時の衝撃は比較的小さい。
【0056】
また、このように素子2の受け渡しの際に素子2が中間転写体30にも被転写基板W2にも保持される状態を形成する場合、素子2と被転写基板W2が確実に面同士で接触するようにするために、受け渡し位置において中間転写体30と被転写基板W2の移動方向(図1における左右方向)と略垂直な方向(上下方向)に互いを相対移動させる手段(不図示)がさらに設けられていることが好ましい。
【0057】
具体的には、たとえば受け渡し位置に到達した突出部32のみ瞬間的に伸びて素子2が被転写基板W2に接近し、素子2を被転写基板W2に渡した後、突出部32の長さが元に戻るようにしても良い。
【0058】
また、素子2を被転写基板W2に渡すタイミングで瞬間的に中間転写体30全体が被転写基板W2に接近し、素子2を被転写基板W2に渡した後、元の位置に戻るようにしても良い。
【0059】
また、素子2を中間転写体30から受け取るタイミングで瞬間的に第2の移動手段20全体が中間転写体30に接近し、素子2を受け取った後、元の位置に戻るようにしても良い。
【0060】
また被転写基板W2を挟んで中間転写体30と反対側の位置から被転写基板W2を突き上げる機構により、素子2を中間転写体30から受け取るタイミングで瞬間的に被転写基板W2を中間転写体30に接近させ、素子2を受け取った後、被転写基板W2が元の位置に戻るようにしても良い。
【0061】
以上の2回の素子2の転写により、転写基板W1に保持されていた素子2は、中間転写体30を介して被転写基板W2へ転写される。ここで、図1に示すように、中間転写体30では内側を向いていた側の素子2の面Aは、被転写基板W2上では外側を向くように保持される。すなわち、表裏反転の転写が2回実施されることによって、転写基板W1と被転写基板W2とでは保持する素子2の向きが同じとなる。したがって、本発明では、保持する基板に対する素子2の向きを変えずに転写基板W1から被転写基板W2へ素子2の転写が行われる。
【0062】
また、本発明では中間転写体30の外周面が無端移動することにより、転写基板W1の搬送方向の素子2の配列数に制限無く、素子2を連続して転写基板W1から受け取り、被転写基板W2へ渡すことができる。そして、転写基板W1からの素子2の受け取りと被転写基板W2への素子2の引き渡しを同じ工程内で実施することができるため、基板から基板への素子の転写の実質1回分の時間で素子の向きを揃えた転写を行うことができる。
【0063】
ここで、第1の移動手段10による転写基板W1の速度(図1における第1の速度v1)と第2の移動手段20による被転写基板W2の速度(図1における第2の速度v2)とが異なれば、各基板の移動方向における素子2のピッチを変更して転写基板W1から被転写基板W2へ素子2の転写を行うことができる。具体的には、図1に示す転写基板W1におけるピッチP1と被転写基板W2におけるピッチP2の比(P2/P1)は、第1の速度v1と第2の速度v2の比(v2/v1)とほぼ比例する。そのため、被転写基板W2上に所望のピッチP2で素子2を配列することができるように、第1の速度v1および第2の速度v2を調節すると良い。
【0064】
このとき、中間転写体30の外周面31の移動速度である第3の速度v3は任意に設定することができる。ここで、本実施形態のように転写基板W1と中間転写体30との間でレーザーリフトオフ(すなわち非接触転写)により素子2の受け渡しが行われ、中間転写体30と被転写基板W2との間で保持力の差による転写(すなわち接触転写)により素子2の受け渡しが行われる場合、前述の通り非接触転写よりも接触転写の方が渡す側と受ける側の速度差に起因する転写時の衝撃が大きく影響するため、第3の速度v3は第2の速度v2と等しいことが好ましい。
【0065】
また、これに限らず少なくとも第3の速度v3が第1の速度v1と第2の速度v2のいずれかと等しくしておくことにより、転写基板W1と被転写基板W2の少なくともいずれかで、中間転写体30との素子2の受け渡し時に素子2にかかる衝撃を最小化することができる。一方、第1の速度v1、第2の速度v2、第3の速度v3が互いに異なっていても構わない。
【0066】
なお、この第1の速度v1、第2の速度v2、第3の速度v3の比率に基づいて、中間転写体30における突出部32のピッチが設定されると良い。
【0067】
また、このとき、第1の移動手段10、第2の移動手段20、および中間転写体30は図示しない共通の駆動源により駆動していても良い。この共通の駆動源からそれぞれへの駆動力の伝達経路において所定の減速機などを設けることによって、それぞれが第1の速度v1、第2の速度v2、第3の速度v3で動作するよう、動作を同期させることができる。こうすることにより、転写装置1全体の駆動部の構成を簡易化することができる。
【0068】
次に、本発明の他の実施形態における転写装置を図3に示す。
【0069】
本実施形態における転写装置1では、転写基板W1および被転写基板W2は帯状ではなく枚葉の形態を有し、この場合、第1の移動手段10、第2の移動手段20はたとえば吸着保持により転写基板W1、被転写基板W2を保持する。そして、第1の移動手段10、第2の移動手段20が図示しない駆動機構により所定の方向に移動することによって、転写基板W1および被転写基板W2は所定の方向に所定の速度で移動する。
【0070】
このとき、転写基板W1はLEDチップをエピタキシャル成長させるベースとなる成長基板でも良く、また、複数回の転写を経て成長基板から回路基板への素子2の転写を完了させる場合の中間基板であっても良い。また、転写基板W1の形状は、ウェハ状であっても良く、四角の板状であっても良い。また、被転写基板W2は上記中間基板であっても良く、最終的にLEDチップが実装される回路基板であっても良い。
【0071】
このように、転写基板W1および被転写基板W2は帯状に限られない。また、転写基板W1および被転写基板W2の一方が帯状で、もう一方が枚葉であっても構わない。
【0072】
次に、本発明のさらに他の実施形態における転写装置を図4に示す。
【0073】
本実施形態における転写装置1では、外周面31が無端移動する中間転写体30の例として図1のようなドラム状ではなくベルトコンベア状の中間転写体30が設けられている。
【0074】
また、第2の移動手段20は、ロールツーロールにより帯状の被転写基板W2を搬送するものであるが、素子2の受け渡し位置において被転写基板W2が中間転写体30に最も近づくように被転写基板W2を沿わせて搬送するバックアップ部材として、バックアップロール23をさらに備えている。このようなバックアップロール23が備えられていることにより、中間転写体30から素子2を受け取る位置において被転写基板W2がばたついて中間転写体30との距離がばらつくことを防ぎ、被転写基板W2が素子2を受け取りやすくすることができる。また、特に本実施形態のように中間転写体30がベルトコンベア状であって素子2の受け渡し位置近傍において直線移動する場合に、素子2を受け取る位置の前後において素子2と被転写基板W2とが干渉することを防ぎ、被転写基板W2が素子2を受け取りやすくすることができる。
【0075】
以上の転写装置により、保持する基板に対する素子の向きを変えずに転写基板から被転写基板へ素子の転写を行うことが可能である。
【0076】
ここで、本発明の転写装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、中間転写体30の外周面31は素子2を保持する部分のみが突出している形態に限らず、全体的に平坦であっても良い。
【0077】
また、以上で説明した実施形態では中間転写体30や被転写基板W2における素子2の保持力源として粘着性を利用しているが、それに限らず、たとえば静電気により素子2を保持する形態であっても良い。
【0078】
また、以上で説明した実施形態では転写基板W1から中間転写体30への転写は非接触転写、中間転写体30から被転写基板W2への転写は接触転写としているが、それに限らずたとえば転写基板W1から中間転写体30への転写は接触転写、中間転写体30から被転写基板W2への転写は非接触転写としてもよく転写基板W1から中間転写体30への転写および中間転写体30から被転写基板W2への転写がともに接触転写もしくは非接触転写であっても良い。
【0079】
また、図1に示す第1の速度v1と第2の速度v2とが等しくても良い。この場合、素子2のピッチは同一のまま単に転写基板W1から被転写基板W2への素子2の移し替えが行われる。このような用途で本発明の転写装置が用いられても良い。この場合第3の速度v3もこれらと同じ速度であることが好ましい。
【符号の説明】
【0080】
1 転写装置
2 素子
10 第1の移動手段
11 巻き出しロール
12 巻き取りロール
20 第2の移動手段
21 巻き出しロール
22 巻き取りロール
23 バックアップ部材
30 中間転写体
31 外周面
32 突出部
B 光エネルギー
P1 ピッチ
P2 ピッチ
W1 転写基板
W2 被転写基板
W21 受け取り面
W22 隔壁部
図1
図2
図3
図4