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  • 特開-車両用シート 図1
  • 特開-車両用シート 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154572
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20221005BHJP
   B60N 2/30 20060101ALI20221005BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/30
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057676
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】白澤 義文
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B087DA05
3B087DA09
3B087DB07
(57)【要約】
【課題】シートバックとシートクッションとを連動させてこれらの設定状態を変更し得る態様、およびシートバックの起立姿勢の角度を単独で変更し得る態様の両立を適切に図り得る車両用シートを提供する。
【解決手段】シートバック2に連動させてシートクッション1の位置および/または姿勢を変更するためのリンク部材3を備えている、車両用シートAであって、シートバック2およびリンク部材3の両者の一方に設けられ、かつ所定の回転支持部59を中心とする円弧状のガイド面部6a,6bと、前記両者の他方に設けられ、かつシートバック2の起立角度が変更されるときにガイド面部6a,6bに沿うように変位する相対変位が可能な被ガイド部7と、ガイド面部6a,6bと被ガイド部7との前記相対変位を阻止するロック状態、およびその解除状態とを切り替え設定可能なロック機構C3と、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転支持部を中心として回転することにより起立角度の変更が可能とされたシートバックと、
このシートバックの起立角度の変更に連動させてシートクッションの位置および/または姿勢を変更することが可能に、前記シートバックを前記シートクッションまたは前記シートクッションを支持する支持部材に連結するためのリンク部材と、
を備えている、車両用シートであって、
前記シートバックおよび前記リンク部材の両者のいずれか一方に設けられ、かつ前記回転支持部を中心とする円弧状のガイド面部と、
前記両者の他方に設けられ、かつ前記シートバックの起立角度が変更されるときに、前記ガイド面部に沿うように変位する相対変位が可能な被ガイド部と、
前記ガイド面部と前記被ガイド部との前記相対変位を阻止するロック状態、およびその解除状態とを切り替え設定可能なロック機構と、
を備えていることを特徴とする、車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に搭載される車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートとしては、シートバック(背もたれ部)の起立角度が変更可能なリクライニングシートとされたものが多い。また、このようなタイプの車両用シートの中には、シートバックとシートクッション(座部)とがリンク部材によって連結され、シートバックの起立角度の変更に連動してシートクッションの位置や姿勢が変更されるように構成されたものがある(たとえば、特許文献1を参照)。このような構成によれば、シートバックの起立角度に対応させてシートクッションの位置や姿勢を変更する操作の容易化が図られる。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、シートクッションをシートバックの起立角度の変更に連動して変位させるための手段として、リンク部材を用いてそれらを単に連結させていたに過ぎない。このため、シートクッションの位置や姿勢を変更させることなく、シートバックの起立姿勢の角度のみを変更し、リクライニング状態に設定することは困難なものとなっている。したがって、この点が不便なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-129317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、シートバックとシートクッションとを連動させてこれらの設定状態を変更し得る態様、およびシートバックとシートクッションとを連動させることなく、シートバックの起立姿勢の角度を単独で変更し得る態様の両立を適切に図ることが可能な車両用シートを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明により提供される車両用シートは、回転支持部を中心として回転することにより起立角度の変更が可能とされたシートバックと、このシートバックの起立角度の変更に連動させてシートクッションの位置および/または姿勢を変更することが可能に、前記シートバックを前記シートクッションまたは前記シートクッションを支持する支持部材に連結するためのリンク部材と、を備えている、車両用シートであって、前記シートバックおよび前記リンク部材の両者のいずれか一方に設けられ、かつ前記回転支持部を中心とする円弧状のガイド面部と、前記両者の他方に設けられ、かつ前記シートバックの起立角度が変更されるときに、前記ガイド面部に沿うように変位する相対変位が可能な被ガイド部と、前記ガイド面部と前記被ガイド部との前記相対変位を阻止するロック状態、およびその解除状態とを切り替え設定可能なロック機構と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
まず、前記ロック機構を前記ロック状態に設定すると、シートバックの起立角度の変更に連動させて、シートクッションの位置および/または姿勢を変更させることができる。一方、前記ロック状態を解除すると、シートクッションを連動させることなく、シートバ
ックの起立角度を変更させることが可能である。このように、本発明によれば、シートバックとシートクッションとを連動させてこれらの設定状態を変更すること、およびシートバックとシートクッションとを連動させることなく、シートバックの起立姿勢の角度を単独で変更することの両立を適切に図ることが可能である。したがって、シートバックやシートクッションを所望の状態に設定する場合の融通性、利便性に優れたものとすることができる。
本発明によれば、シートバックの起立角度の変更にシートクッションの位置や姿勢が連動して変更されるモードを、シートバックの起立角度を問わずに設定することが可能となり、融通性、利便性を一層優れたものとすることができる。
【0009】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、本発明に係る車両用シートの一例を示す概略側面図であり、(b)は、(a)の要部拡大図であり、(c)は、(b)の一部分が動作した状態の要部説明図である。
図2図1(b)のII-II断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
図1に示す車両用シートAは、たとえば自動車のリヤシートであり、自動車の車室のフロア部9上に搭載される。この車両用シートAは、シートクッション1、シートバック2、このシートバック2の起立角度を変更可能とするリクライニング装置C1、リンク部材3、ガイド機構C2、およびロック機構C3を備えている。
【0013】
シートバック2は、回転支持部59に支持されており、かつこの回転支持部59を中心として回転することにより、その起立角度が変更可能である。回転支持部59は、たとえばフロア部9の段部90に固定されたベース部40に支持された略水平な支持軸である。
【0014】
リクライニング装置C1は、シートバック2の起立角度の変更設定を可能とする装置である。本実施形態のリクライニング装置C1自体は、従来既知のものであるため、その内容は簡単に説明する。
【0015】
すなわち、このリクライニング装置C1は、通常時においては、図1(b)によく表れているように、回転支持部59に取付けられた扇形状ラチェット5の円弧状歯部5aに、係合部材51の係合部51aが係合している。このことにより、扇形状ラチェット5の回転は阻止された状態にある。一方、扇形状ラチェット5は、シートバック2の側面部に取付けられた側板フレーム52に固定されている。したがって、前記した通常時の状態においては、シートバック2の回転(起立角度の変更)は阻止されている。円弧状歯部5aと係合部51aとの係合状態は、操作レバー53に連動して回転するカム54が、係合部材51を円弧状歯部5a側に押圧していることにより維持され、その押圧力としては、バネ55の弾発力が利用されている。
【0016】
一方、操作レバー53がバネ55の弾発力に抗して矢印Naに示す方向に持ち上げられると、ピン57を支点としてカム54が矢印Nb方向に下降する。その結果、係合部材51は、軸部58を中心として扇形状ラチェット5から離反する方向に回転し、円弧状歯部5aと係合部51aとの係合状態は解除される。この状態においては、扇形状ラチェット5が回転可能であり、車両用シートAのユーザ(着座者)がシートバック2にもたれ掛か
ると、シートバック2は後方に倒れていく。シートバック2にもたれていない場合には、別途設けられたバネ56の弾発力F1によって、シートバック2は前方に起き上がる。シートバック2の起立角度がユーザの所望の角度になった場合に、操作レバー53から手を離すと、その際の角度でシートバック2の回転は阻止される。なお、前記したバネ56に代えて、ダンパなどを用いることもできる。
【0017】
リンク部材3は、シートバック2の起立角度の変更に連動してシートクッション1の位置および/または姿勢が変更されるように、シートバック2をシートクッション1またはシートクッション1の支持部材に連結するための部材である。本実施形態においては、シートクッション1の前部が、補助リンク部材10を介して支持されており、この補助リンク部材10の上部とシートクッション1との連結軸部11(本発明でいう支持部材の具体例に相当)に、リンク部材3の前端部が連結されている。リンク部材3の後端部は、側面視円弧状に湾曲した形状とされ、この部分には、後述する円弧状長孔6や、円弧状歯部30が設けられている。
【0018】
ガイド機構C2は、シートバック2とリンク部材3との相対関係を一定の状態に維持しておくためのガイド機構であり、リンク部材3に設けられた円弧状長孔6と、この円弧状長孔6に進入する被ガイドピン7と、を備えている。
円弧状長孔6は、その内周壁面に、一対の円弧状ガイド面6a,6bを有している。これら一対の円弧状ガイド面6a,6bは、本発明でいう「ガイド面部」の具体例に相当し、側面視において、回転支持部59を中心とする適当な曲率半径Rの円弧状である。
被ガイドピン7は、本発明でいう「被ガイド部」の具体例に相当する。この被ガイドピン7は、側板フレーム52に取付けられたホルダ4に固定されており、シートバック2の起立角度が変更されるときには、円弧状ガイド面6a,6bにガイドされるようにして円弧状長孔6内をその長手方向に変位(相対変位)可能である。
【0019】
ロック機構C3は、被ガイドピン7が円弧状長孔6内をその長手方向に変位することを阻止するロック状態と、その解除状態とを切り替え可能な機構である。具体的には、このロック機構C3は、リンク部材3の後端部の上部に設けられた円弧状歯部30、およびこの円弧状歯部30に係合可能なロック用部材8を備えている。
円弧状歯部30は、山形状などの複数の歯部が、側面視において回転支持部59を中心とする円弧状に並んで設けられた部位である。
【0020】
ロック機構C3のロック用部材8は、ホルダ4に、矢印N1で示すように昇降可能な状態に保持されており、このロック用部材8の下部には、円弧状歯部30に係合可能な複数の歯部状(または1つの突起状)の係合部80が設けられている。図1(b)および図2に示すように、ロック用部材8を下降させた状態においては、係合部80が円弧状歯部30に係合する結果、被ガイドピン7が円弧状長孔6内を変位することが阻止されるように、シートバック2とリンク部材3の後端部とは擬似的な固定状態(ロック状態)となる。これに対し、図1(c)に示すように、ロック用部材8を手で操作するなどして上昇させた状態においては、係合部80と円弧状歯部30との係合状態が解消されるため、前記したロック解除状態となる。この状態では、被ガイドピン7が円弧状長孔6内を変位するようにして、シートバック2の起立角度を変更可能である。
【0021】
好ましくは、図2の仮想線で示すように、ロック用部材8を円弧状歯部30に向けて、適度な力Fで弾発付勢するバネ87が設けられる。このような構成によれば、車両の振動などに起因して、ロック用部材8が不用意に上昇しないようにすることができる。
【0022】
次に、前記した車両用シートAの作用について説明する。
【0023】
まず、図1(b)および図2に示したように、ロック用部材8の係合部80をリンク部材3の円弧状歯部30に係合させたロック状態においては、シートバック2の起立角度を変更させると、リンク部材3がこれに伴って変位する結果、シートクッション1の位置および/または姿勢が変化する。したがって、シートバック2およびシートクッション1のそれぞれの設定状態の変更を、同時に、かつ容易・迅速に行なうことができる。
【0024】
一方、図1(c)に示したように、ロック用部材8を上昇させ、係合部80を円弧状歯部30から離間させたロック解除状態にすると、シートバック2の起立角度を変更したとしても、これに伴って被ガイドピン7がリンク部材3の円弧状長孔6内を変位するに過ぎず、リンク部材3は変位しない。したがって、シートクッション1の位置や姿勢を変更させることなく、シートバック2の起立角度のみを変更することが可能となる。
【0025】
このように、この車両用シートAにおいては、シートバック2とシートクッション1とを連動させてこれらの設定状態を変更すること、およびシートバック2とシートクッション1とを連動させることなく、シートバック2の起立姿勢の角度を単独で変更することの両立を適切に図ることができる。
さらに、この車両用シートAにおいては、シートバック2がどのような起立角度にあるかには関係なく、ロック用部材8の係合部80を円弧状歯部30に対して係脱させ、前記したロック状態、およびその解除状態を設定可能である。したがって、シートバック2やシートクッション1をユーザが所望の状態に設定する際の融通性に優れ、便利である。
【0026】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両用シートの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0027】
上述の実施形態においては、円弧状長孔6がリンク部材3に設けられ、被ガイドピン7がシートバック2に設けられ(間接的に設けられているが、本発明はこのような態様を含む)ているが、本発明はこれに限定されない。円弧状長孔6をシートバック2側に設け、かつ被ガイドピン7をリンク部材3に設けた構成とすることもできる。
【0028】
また、上述の実施形態においては、本発明に係るガイド面部が、円弧状長孔6の一対の内壁面部として設けられ、被ガイド部が、円弧状長孔6に進入した被ガイドピン7として設けられているが、本発明はこれに限定されない。本発明でいうガイド面部は、円弧状長孔に代えて、円弧状凹溝の内壁面部として設けてもよい他、側面視において円弧状をなす単なる段状の壁面部として設けられていてもよい。被ガイド部は、ピン状以外の形態とすることも可能である。
上述の実施形態においては、ロック用部材8の上昇操作を行なった際に、操作レバー53をさらに操作することとなるが、本発明においては、ロック用部材8の上昇操作に伴って操作レバー53が連動(自動的に動作)するように、連動動作装置を備えた構成とすることもできる。
【0029】
ロック機構としては、種々の機構を用いることが可能である。たとえば、図2には、被ガイドピン7の先端部に抜け止め用のフランジ部70が設けられている。ここで、このフランジ部70に相当する部位を、被ガイドピン7とは別体の押圧用部材として変更した上で、この押圧用部材をリンク部材3の側面に圧接可能な構成とすれば、被ガイドピン7とリンク部材3とをロックさせることが可能である。前記圧接の力を弱めれば、ロック状態の解除が可能である。本発明におけるロック機構は、たとえばそのような構成とすることもできる。
【0030】
本発明に係る車両用シートは、リヤシートに限定されず、フロントシートにも適用可能であり、その具体的な搭載位置や種類は問わない。
【符号の説明】
【0031】
A 車両用シート
C3 ロック機構
1 シートクッション
11 連結軸部(支持部材)
2 シートバック
3 リンク部材
30 円弧状歯部
59 回転支持部
6 円弧状長孔
6a,6b 円弧状ガイド面(ガイド面部)
7 被ガイドピン(被ガイド部)
8 ロック用部材
図1
図2