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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154575
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20221005BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20221005BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C08L63/00 B
C08K3/00
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057679
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良平
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002AC115
4J002BG105
4J002CC023
4J002CC024
4J002CD041
4J002CD042
4J002CD051
4J002CD052
4J002CD061
4J002CD062
4J002CP035
4J002DA039
4J002DE146
4J002DJ016
4J002DJ017
4J002EX068
4J002EX078
4J002FD099
4J002FD143
4J002FD144
4J002GQ01
4J002GQ05
4M109AA01
4M109CA21
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB06
4M109EB08
4M109EB09
4M109EB12
4M109EB13
4M109EB19
(57)【要約】
【課題】タブレット状の樹脂組成物の破損を抑制する。
【解決手段】成分(a):エポキシ樹脂、成分(b):硬化剤および成分(c):無機充填材を含む、タブレット状の封止用樹脂組成物であって、以下の方法1で測定される、封止用樹脂組成物の25℃における曲げ強度が、2.20MPa以上19.00MPa以下であり、封止用樹脂組成物のタブレット密度が、0.0005g/mm3以上0.005g/mm3以下である、封止用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ樹脂、
(b)硬化剤、および
(c)無機充填材
を含む、タブレット状の封止用樹脂組成物であって、
以下の方法1で測定される、当該封止用樹脂組成物の25℃における曲げ強度が、2.20MPa以上19.00MPa以下であり、
当該封止用樹脂組成物のタブレット密度が、0.0005g/mm3以上0.005g/mm3以下である、封止用樹脂組成物。
(方法1)
該封止用樹脂組成物の25℃における3点曲げ試験をJIS K7171に準拠して、支点間距離20mm、速度10mm/分、支持台の半径R2が2mmの条件で測定し、前記曲げ強度を得る。
【請求項2】
前記方法1にて測定される、当該封止用樹脂組成物の25℃における破断荷重が、115N以上1000N以下である、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(a)が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂およびフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項1または2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
当該封止用樹脂組成物中の前記成分(c)の含有量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して70質量%以上90質量%以下である、請求項1乃至3いずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
当該封止用樹脂組成物中の前記成分(c)の含有量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して55体積%以上80体積%以下である、請求項1乃至4いずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
前記成分(c)の平均粒径d50が、3μm以上30μm以下である、請求項1乃至5いずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
封止用樹脂組成物に関する技術として、特許文献1(特開2019-135288号公報)に記載のものがある。同文献には、結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂、上記成分以外の25℃で固体の多官能型エポキシ樹脂、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物、無機充填材、及び特定のイミダゾール系硬化促進剤、を含有する組成物をシート状に成形したものである半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートについて記載されている。同文献には、かかる半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートであれば、硬化前の状態において可とう性に優れ、ハンドリング性が良好でありつつ、硬化後に高いガラス転移温度を有しながらも、保存安定性及び成形性にも優れる半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートとなると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭2019-135288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、本発明者は、タブレット状に成形された樹脂組成物について検討した。その結果、タブレットの破損を抑制するという点で改善の余地があることが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
(a)エポキシ樹脂、
(b)硬化剤、および
(c)無機充填材
を含む、タブレット状の封止用樹脂組成物であって、
以下の方法1で測定される、当該封止用樹脂組成物の25℃における曲げ強度が、2.20MPa以上19.00MPa以下であり、
当該封止用樹脂組成物のタブレット密度が、0.0005g/mm3以上0.005g/mm3以下である、封止用樹脂組成物が提供される。
(方法1)
該封止用樹脂組成物の25℃における3点曲げ試験をJIS K7171に準拠して、支点間距離20mm、速度10mm/分、支持台の半径R2が2mmの条件で測定し、前記曲げ強度を得る。
【0006】
また、本発明によれば、たとえば前記本発明における封止用樹脂組成物を硬化してなる硬化体を得ることもできる。
【0007】
また、本発明によれば、たとえば前記本発明における封止用樹脂組成物で電子部品または半導体パッケージを封止してなる、電子装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タブレット状の封止用樹脂組成物の破損を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
【0010】
(封止用樹脂組成物)
本実施形態において、封止用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも呼ぶ。)は、タブレット状であり、以下の成分(a)~(c)を含む。
(a)エポキシ樹脂
(b)硬化剤
(c)無機充填材
以下の方法1で測定される、封止用樹脂組成物の25℃における曲げ強度が、2.20MPa以上19.00MPa以下である。そして、封止用樹脂組成物のタブレット密度が、0.0005g/mm3以上0.005g/mm3以下である。
(方法1)
封止用樹脂組成物の25℃における3点曲げ試験をJIS K7171に準拠して、支点間距離20mm、速度10mm/分、支持台の半径R2が2mmの条件で測定し、曲げ強度を得る。
【0011】
本実施形態においては、タブレット状の樹脂組成物が成分(a)~(c)を含むとともに、樹脂組成物の25℃における曲げ強度およびタブレット密度がそれぞれ特定の範囲にある。このため、タブレットの破損を効果的に抑制することができるため、保存安定性に優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0012】
(樹脂組成物の曲げ強度)
樹脂組成物の25℃における曲げ強度は、タブレット剛性を高める観点から、2.20MPa以上であり、好ましくは3.00MPa以上、より好ましくは4.00MPa以上、さらに好ましくは10.00MPa以上である。
また、タブレットの耐衝撃性向上の観点から、樹脂組成物の25℃における曲げ強度は、19.00MPa以下であり、好ましくは16.00MPa以下、より好ましくは14.00MPa以下、さらに好ましくは12.00MPa以下である。
樹脂組成物の曲げ強度は、上述の方法1により求められる。
【0013】
(タブレット密度)
封止用樹脂組成物のタブレット密度は、タブレット剛性を高める観点から、0.0005g/mm3以上であり、好ましくは0.0008g/mm3以上、より好ましくは0.001g/mm3以上、さらに好ましくは0.0015g/mm3以上である。
また、タブレットの耐衝撃性向上の観点から、封止用樹脂組成物のタブレット密度は、0.005g/mm3以下であり、好ましくは0.004g/mm3以下、より好ましくは0.003g/mm3以下、さらに好ましくは0.0025g/mm3以下である。
封止用樹脂組成物のタブレット密度は、たとえば電子天秤で秤量したタブレット重量をノギスで測定したタブレットサイズで除すことにより測定される。
【0014】
樹脂組成物の曲げ強度およびタブレット密度は、タブレット状の樹脂組成物の破損のしやすさの程度を反映する指標である。本発明者は、成分(a)~(c)を組み合わせて含むタブレット状の樹脂組成物の曲げ強度およびタブレット密度を上記範囲内に制御することにより、タブレットの破損を効果的に抑制できることを新たに見出した。
【0015】
本実施形態においては、たとえば樹脂組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、樹脂組成物の調製方法等を適切に選択することにより、上記曲げ強度およびタブレット密度を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、成分(c)のサイズおよび量を調整すること、タブレット化する前の樹脂密度が適切な範囲にあるものを用いること、粉粒体をタブレット化する際の加圧時間等の条件を粉体特性に合わせて調整すること、得られるタブレットの高さを調整すること等が、上記曲げ強度およびタブレット密度を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0016】
(破断荷重)
樹脂組成物の25℃における破断荷重は、タブレット剛性を高める観点から、たとえば115N以上であり、好ましくは150N以上、より好ましくは200N以上、さらに好ましくは600N以上である。
また、タブレットの耐衝撃性向上の観点から、樹脂組成物の25℃における破断荷重は、たとえば1000N以下であり、好ましくは900N以下、より好ましくは800N以下、さらに好ましくは700N以下である。
ここで樹脂組成物の25℃における曲げ弾性率は、前述の方法1にて測定される。
【0017】
(タブレット高さ)
樹脂組成物のタブレット高さ、すなわち、タブレット径に鉛直な方向における最大径は、タブレットを溶融成形する際の生産性向上の観点から、好ましくは10mm以上であり、より好ましくは20mm以上、さらに好ましくは25mm以上である。
また、タブレット輸送時の折れ防止等の破損抑制の観点から、樹脂組成物のタブレット高さは、好ましくは50mm以下であり、より好ましくは40mm以下、さらに好ましくは30mm以下である。
【0018】
樹脂組成物の形態は、タブレット状であり、さらに具体的には、粉粒体の樹脂組成物を打錠成形して得られるものである。ここで、粉粒体であるとは、粉末状または顆粒状のいずれかである場合を指す。
次に、樹脂組成物の構成成分について具体例を挙げて説明する。
【0019】
(成分(a))
成分(a)は、エポキシ樹脂である。
成分(a)は、たとえば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等に例示されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂;ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である。
樹脂硬化性をより好ましいものとする観点から、成分(a)は、好ましくはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂およびフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0020】
樹脂組成物中の成分(a)の含有量は、成形性向上の観点から、樹脂組成物全体に対し、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
また、成形時の収縮抑制の観点から、樹脂組成物中の成分(a)の含有量は、樹脂組成物全体に対し、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは18質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下、よりいっそう好ましくは10質量%以下である。
【0021】
(成分(b))
成分(b)は、硬化剤である。
成分(b)としては、たとえば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等のアミノ類;
アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;
トリヒドロキシフェニルメタン型フェノール樹脂をはじめとするトリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;上記以外のフェノール樹脂;
ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等を含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;ならびにカルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
また、成分(b)は、好ましくはフェノール樹脂を含み、より好ましくはフェノールノボラック樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂およびビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0022】
樹脂組成物中の成分(b)の含有量は、硬化特性向上の観点から、樹脂組成物全体に対し、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらにより好ましくは4質量%以上である。
また、成形時の流動性や充填性を向上する観点から、樹脂組成物中の成分(b)の含有量は、樹脂組成物全体に対し、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは8質量%以下である。
【0023】
(成分(c))
成分(c)は、無機充填材である。成分(c)として、たとえば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ;タルク;酸化チタン;窒化珪素;窒化アルミニウムが挙げられる。
成分(c)は、汎用性に優れている観点から、好ましくはシリカを含み、より好ましくはシリカである。
シリカの形状の一例として、溶融球状シリカ等の球状シリカ、破砕シリカが挙げられる。
また、成分(c)が、難燃性を付与できる成分を含んでもよい。かかる成分の具体例として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛およびモリブデン酸亜鉛からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0024】
成分(c)の平均粒径d50は、ダブレット状の樹脂組成物の破損抑制の観点から、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。
また、成形時の充填性を向上する観点から、成分(c)の平均粒径d50は、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0025】
ここで、成分(c)の平均粒径d50は、市販のレーザー式粒度分布計(たとえば、島津製作所社製 SALD-7000)で測定したときの平均粒径(体積平均径)である。
【0026】
樹脂組成物中の成分(c)の含有量は、ダブレット状に成形された樹脂組成物の破損抑制の観点から、樹脂組成物全体に対し、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは85質量%以上である。
また、成形時の流動性や充填性向上の観点から、樹脂組成物中の成分(c)の含有量は、樹脂組成物全体に対し、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは88質量%以下、さらに好ましくは86質量%以下である。
【0027】
樹脂組成物中の成分(c)の含有量は、ダブレット状に成形された樹脂組成物の破損抑制の観点から、樹脂組成物全体に対し、好ましくは55体積%以上であり、より好ましくは60体積%以上、さらに好ましくは65体積%以上である。
また、成形時の流動性や充填性向上の観点から、樹脂組成物中の成分(c)の含有量は、樹脂組成物全体に対し、たとえば85体積%であり、好ましくは80体積%以下であり、より好ましくは78体積%以下、さらに好ましくは75体積%以下である。
【0028】
樹脂組成物は、成分(a)~(c)以外の成分を含んでもよい。たとえば、樹脂組成物は、硬化促進剤、イオンキャッチャー、カップリング剤、低応力材、離型剤、着色剤およびその他の添加剤からなる群から選択される1種または2種以上をさらに含んでもよい。
【0029】
(硬化促進剤)
硬化促進剤として、たとえば、成分(a)のエポキシ樹脂と成分(b)の硬化剤との架橋反応を促進させるものを用いることができる。硬化促進剤の一例として、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
【0030】
樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、硬化性を向上する観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。
また、硬化物の製造安定性を高める観点から、樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以下である。
【0031】
(カップリング剤)
カップリング剤は、たとえば、エポキシシラン、メルカプトシラン、フェニルアミノシラン等のアミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
硬化物の強度および靭性をバランス良く向上する観点から、カップリング剤は、好ましくはシランカップリング剤であり、アミノ基を有するシランカップリング剤であることがより好ましい。
【0032】
樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、硬化性を向上する観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。
また、硬化物の製造安定性を高める観点から、樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以下である。
【0033】
(低応力材)
低応力材は、たとえば、シリコーンオイル、シリコーンゴムおよびカルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリルゴムなる群から選択される1種以上を含む。
【0034】
(離型剤)
離型剤は、たとえば、カルナバワックス等の天然ワックス;酸化ポリエチレンワックス、モンタン酸エステルワックス、1-アルケン(C>10)・マレイン酸無水物の重縮合物とステアリルアルコールとの反応生成物等の合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類;ならびにパラフィンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
樹脂組成物中の離型剤の含有量は、離型性および硬化特性をより好ましいものとする観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0035】
(着色剤)
着色剤は、たとえば、カーボンブラック、黒色酸化チタン、ベンガラおよび有機色素などからなる群から選択される1種以上を含む。
樹脂組成物中の着色剤の含有量は、硬化物の外観をより好ましいものとする観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0036】
また、その他の添加剤として、たとえば酸化防止剤が挙げられる。
【0037】
本明細書において、タブレット化前の粉粒体状の樹脂組成物の溶融硬化品の密度を適宜「樹脂密度」とも呼ぶ。
本実施形態において、樹脂密度は、樹脂強度向上の観点から、好ましくは0.0005g/mm3以上であり、より好ましくは0.0008g/mm3以上、さらに好ましくは0.001g/mm3以上、さらにより好ましくは0.0015g/mm3以上である。
また、樹脂流動性向上の観点から、樹脂組成物の樹脂密度は、好ましくは0.005g/mm3以下であり、より好ましくは0.004g/mm3以下、さらに好ましくは0.003g/mm3以下、さらにより好ましくは0.0025g/mm3以下である。
樹脂密度は、JIS K 6911に準拠した方法で得られた試験片の比重(25℃)に、1×10-3を乗じた値を樹脂密度として用いている。試験片の作製方法については実施例の項で後述する。
【0038】
次に、樹脂組成物の製造方法を説明する。
本実施形態において、樹脂組成物は、たとえば、上述した各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕する方法により得ることができる。また、得られた樹脂組成物について、適宜分散度や流動性等を調整してもよい。
【0039】
ここで、本実施形態において、曲げ強度が上述の条件を満たす樹脂組成物を得るためには、従来技術とは異なる製法上の工夫を施すことが重要である。たとえば、樹脂組成物の製造にあたり、成分(c)のサイズおよび配合量を調整するとともに原料の混合速度等の混合条件を調整して樹脂組成物の粉粒体の特性を調整するとよい。また、タブレット化する前の樹脂密度等が適切な範囲にあるものを用いることも好ましい。また、粉粒体をタブレット化する際の加圧時間等の条件を粉体特性に合わせて調整し、また、得られるタブレットの高さを調整することも好ましい。これにより、得られるタブレットの曲げ強度およびタブレット密度を前述の範囲内により安定的に制御することができる。
【0040】
本実施形態において得られる樹脂組成物を硬化することにより、樹脂組成物の硬化体を得ることができる。
また、本実施形態における樹脂組成物は、たとえば電子部品または半導体パッケージの封止材料として好適に用いることができる。
【0041】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0042】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
(処方例1~5)
各例について、表1に示す各成分をミキサーにより常温で5分混合した。次いで、得られた混合物を、高温側ロール表面温度90℃、低温側ロール表面温度25℃の条件でロール混練した後、冷却、粉砕して粉粒体である樹脂組成物を得た。
【0044】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:オルソクレゾールノボラック(OCN)型エポキシ樹脂、EXP-S、DIC社製
エポキシ樹脂2:OCN型エポキシ樹脂、YDCN-800-65、新日鐵化学社製
エポキシ樹脂3:OCN型エポキシ樹脂、YDCN-800-70、新日鐵化学社製
エポキシ樹脂4:ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、YX8800、三菱ケミカル社製
エポキシ樹脂5:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、YL6810、三菱ケミカル社製
エポキシ樹脂6:ビフェニル型エポキシ樹脂、NC3000、日本化薬社製
エポキシ樹脂7:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂とビフェニル型エポキシ樹脂の混合物、EPIKOTE YL6677、三菱ケミカル社製
エポキシ樹脂8:フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、NC-2000、日本化薬社製
エポキシ樹脂9:ビフェニル型エポキシ樹脂、エピコートYX4000K、三菱ケミカル社製
【0045】
(硬化剤)
硬化剤1:トリフェノールメタン型フェノール樹脂、MEH-7500、明和化成社製
硬化剤2:フェノールノボラック樹脂、Sumilite Resin PR-51470、住友ベークライト社製
硬化剤3:フェノールノボラック樹脂、Sumilite Resin PR-51714、住友ベークライト社製
硬化剤4:α-ナフトール骨格含有フェノールアラルキル樹脂、SN-485、日鉄ケミカル&マテリアル社製
硬化剤5:フェノールノボラック樹脂、Sumilite Resin PR-HF-3、住友ベークライト社製
硬化剤6:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、GPH-65、日本化薬社製
硬化剤7:トリスフェニルメタン型フェノール樹脂、HE910-20、エア・ウォーター社製
【0046】
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:トリフェニルフォスフィン、PP-360、ケイ・アイ化成社製
硬化促進剤2:下記式で表される硬化促進剤
【0047】
【化1】
【0048】
(硬化促進剤2の製造方法)
メタノール1800gを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン249.5g、2,3-ジヒドロキシナフタレン384.0gを加えて溶かし、次に室温攪拌下28%ナトリウムメトキシド-メタノール溶液231.5gを滴下した。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド503.0gをメタノール600gに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥し、桃白色結晶の硬化促進剤2を得た。
【0049】
硬化促進剤3:4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラート、TPP-BQ、ケイ・アイ化成社製
【0050】
(無機充填材)
無機充填材1:溶融破砕シリカ、FMT-05、フミテック社製、平均粒径4.7μm
無機充填材2:シリカ、SC-2500-SQ、アドマテックス社製、平均粒径0.5μm
無機充填材3:水酸化アルミニウム、CL-303、住友化学社製、平均粒径4.0μm
無機充填材4:破砕シリカ、FS-784、デンカ社製、平均粒径13.0μm
無機充填材5:溶融球状シリカ、S-CO、日鉄ケミカル&マテリアル社製、平均粒径20μm
無機充填材6:球状シリカ、FEB24S5、アドマテックス社製、平均粒径12.3μm
無機充填材7:シリカ、TS-6026、日鉄ケミカル&マテリアル社製、平均粒径9μm
無機充填材8:シリカ、FB-105、デンカ社製、平均粒径11.7μm
無機充填材9:シリカ、ES-355、東海ミネラル社製、平均粒径29.4μm
【0051】
(カップリング剤)
カップリング剤1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、CF4083、東レダウコーニング社製
カップリング剤2:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、GPS-M、JNC社製
【0052】
(低応力材)
低応力材1:シリコーンエラストマー、CF-2152、東レ・ダウコーニング社製
低応力材2:エポキシ化ポリブタジエン、JP-200、日本曹達社製
低応力材3:アクリロニトリルブタジエンゴム、CTBN 1008-SP、宇部興産社製(カルボキシル基末端ブタジエンアクリルゴム)
【0053】
(離型剤)
離型剤1:カルナウバワックス、C-WAX、東亜化成社製
(着色剤)
着色剤1:カーボンブラック、#5、三菱ケミカル社製
【0054】
(実施例1~11、比較例1~5)
処方例1~5のいずれかの粉粒体状の樹脂組成物をタブレット化することにより、タブレット状の樹脂組成物を得た。各例で用いた粉粒体状の樹脂組成物の処方、タブレットの作製条件および得られたタブレットに関する測定結果を表2~表6に示す。
【0055】
(タブレット状の樹脂組成物の製造方法)
タブレットマシン(菊水製作所社製 BARPRESS)を用い、表2~表6に記載の作製条件で粉粒体状の樹脂組成物を圧縮打錠し、重量8g、直径14mmの打錠物として各例の樹脂組成物を得た。
表2~表6中、「樹脂密度」は、各処方例における粉粒体の樹脂組成物の溶融硬化品の密度であり、以下の方法で測定した。
「加圧時間」は、打錠機の杵先端の位置が、臼下端からタブレット高さの位置にある時間をいう。
「タブレット密度」は、各例で得られたタブレット状の樹脂組成物の密度であり、以下の方法で測定した。
「タブレット高さ」は、各例で得られたタブレット状の樹脂組成物の長径、すなわち、タブレット径に鉛直な方向における最大径とした。
【0056】
(タブレット密度の測定方法)
各例で得られた樹脂組成物のタブレット重量を電子天秤で秤量した。また、各例で得られた樹脂組成物のタブレットサイズをノギスで測定した。
得られたタブレット重量をタブレットサイズで除し、タブレット密度[g/mm3]とした。
【0057】
(樹脂密度の測定方法)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS-30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、各粉粒体の樹脂組成物を注入成形し、直径50mm、厚さ3mmの円盤状の成形品を得た。次に得られた成形品を、175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)して、各樹脂組成物の硬化物からなる試験片を得た。次に、JIS K 6911に準拠した方法で得られた試験片の比重(25℃)を測定し、その値に1×10-3を乗じたものを樹脂密度として用いた。なお、樹脂密度の単位は、g/mm3である。
【0058】
(タブレット高さの測定方法)
タブレット高さは、タブレット径に鉛直な方向における最大径を、ノギスを用いて計測した。
【0059】
(曲げ強度)
各例で得られたタブレット状の樹脂組成物の曲げ強さを前述の方法1に従って測定した。
【0060】
(破断荷重)
前述の方法1に従い、各例で得られたタブレット状の樹脂組成物の25℃における破断荷重(N)を測定した。
【0061】
(折れ)
タブレット40個をV型混合機(徳寿工作所、V-10)に入れ、10分間混合した。混合完了後のタブレットのうち、体積の10%以上欠損しているものを「折れ」とカウントした。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
表2~表6より、各実施例で得られたタブレット状の樹脂組成物においては、折れによるタブレット破損が好適に抑制された。