IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタの特許一覧

特開2022-154580揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法
<>
  • 特開-揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法 図1
  • 特開-揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法 図2
  • 特開-揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法 図3
  • 特開-揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法 図4
  • 特開-揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法 図5
  • 特開-揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154580
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/06 20060101AFI20221005BHJP
   F03D 3/06 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F03D7/06 Z
F03D3/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057684
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新納 薫
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB02
3H178CC02
3H178DD54X
3H178EE02
3H178EE12
3H178EE23
(57)【要約】
【課題】カットイン風速を低減することができる揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法を提供する。
【解決手段】揚力型垂直軸風車1は、垂直な主軸Ap回りに回転可能であって遠心部に翼4が設けられる回転体3と、翼4を主軸Apに平行な変向軸Ac回りに回転させることで変向可能な変向機構と、翼4が受ける風流方向Wを検出する風向検出部6と、風向検出部6が検出した風流方向Wに基づいて翼4を変向させるよう変向機構を制御する制御装置と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直な主軸回りに回転可能であって遠心部に翼が設けられる回転体と、
前記翼を前記主軸に平行な変向軸回りに回転させることで変向可能な変向機構と、
前記翼が受ける風流方向を検出する風向検出部と、
前記風向検出部が検出した風流方向に基づいて前記翼を変向させるよう前記変向機構を制御する制御装置と、
を備える、揚力型垂直軸風車。
【請求項2】
前記制御装置は、前記風向検出部が検出した風流方向に基づいて前記翼の迎角を算出し、前記迎角に基づいて前記翼の前記主軸回りの回転力が最大となるように前記翼を変向させるよう前記変向機構を制御する、
請求項1に記載の揚力型垂直軸風車。
【請求項3】
前記翼は、前記変向軸回りに所定角度範囲内で回転可能であり、
前記制御装置は、前記所定角度範囲内において、前記翼の前記主軸回りの回転力が最大となるように前記翼を変向させるよう前記変向機構を制御する、
請求項1又は2に記載の揚力型垂直軸風車。
【請求項4】
前記制御装置は、前記回転体が回転起動した後、前記翼を初期姿勢に戻すように前記変向機構を制御する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の揚力型垂直軸風車。
【請求項5】
前記翼は、前記主軸回りに回転対称かつ等間隔に複数設けられ、
前記制御装置は、複数の前記翼について各々の迎角を算出し、前記迎角に基づいて各々の前記翼を変向させるよう前記変向機構を制御する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の揚力型垂直軸風車。
【請求項6】
垂直な主軸回りに回転可能な回転体の遠心部に設けられる翼が受ける風流方向を検出するステップと、
前記風流方向に基づいて前記翼の迎角を算出するステップと、
前記迎角に基づいて前記主軸に平行な変向軸回りの前記翼の変向角度を設定するステップと、
前記変向角度に前記翼を変向するステップと、
を含む、揚力型垂直軸風車の起動方法。
【請求項7】
前記変向角度に前記翼を変向した後、前記回転体の回転を検出するステップと、
前記回転体の回転の検出結果に基づいて前記翼を初期姿勢に戻すように変向するステップと、
を含む、請求項6に記載の揚力型垂直軸風車の起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、揚力型垂直軸風車として、例えば垂直な主軸と一体で主軸回りに回転する複数の翼を有するストレートダリウス型風車(ジャイロミル型風車)が知られている。ストレートダリウス型風車は、翼に対して風流方向に作用する抗力と、風流方向に垂直な方向に作用する揚力との合力によって回転する。このように、ストレートダリウス型風車は、風向に対する依存性が低く、微風でも回転性能がよいため、風力発電機として利用される。例えば、特許文献1には、変化する風速に対して安定した回転を維持するため、回転数に基づいて翼を変向制御する風車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-278637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ストレートダリウス型風車等の揚力型垂直軸風車は、風速が低い場合又は無風である場合、翼を回転させるモーメントが小さくなり、特に停止状態からの起動が困難であるという課題があった。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、カットイン風速を低減することができる揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の揚力型垂直軸風車は、垂直な主軸回りに回転可能であって遠心部に翼が設けられる回転体と、前記翼を前記主軸に平行な変向軸回りに回転させることで変向可能な変向機構と、前記翼が受ける風流方向を検出する風向検出部と、前記風向検出部が検出した風流方向に基づいて前記翼を変向させるよう前記変向機構を制御する制御装置と、を備える。
【0007】
揚力型垂直軸風車の望ましい態様として、前記制御装置は、前記風向検出部が検出した風流方向に基づいて前記翼の迎角を算出し、前記迎角に基づいて前記翼の前記主軸回りの回転力が最大となるように前記翼を変向させるよう前記変向機構を制御する。
【0008】
揚力型垂直軸風車の望ましい態様として、前記翼は、前記変向軸回りに所定角度範囲内で回転可能であり、前記制御装置は、前記所定角度範囲内において、前記翼の前記主軸回りの回転力が最大となるように前記翼を変向させるよう前記変向機構を制御する。
【0009】
揚力型垂直軸風車の望ましい態様として、前記制御装置は、前記回転体が回転起動した後、前記翼を初期姿勢に戻すように前記変向機構を制御する。
【0010】
揚力型垂直軸風車の望ましい態様として、前記翼は、前記主軸回りに回転対称かつ等間隔に複数設けられ、前記制御装置は、複数の前記翼について各々の迎角を算出し、前記迎角に基づいて各々の前記翼を変向させるよう前記変向機構を制御する。
【0011】
また、本開示の一態様の揚力型垂直軸風車の起動方法は、垂直な主軸回りに回転可能な回転体の遠心部に設けられる翼が受ける風流方向を検出するステップと、前記風流方向に基づいて前記翼の迎角を算出するステップと、前記迎角に基づいて前記主軸に平行な変向軸回りの前記翼の変向角度を設定するステップと、前記変向角度に前記翼を変向するステップと、を含む。
【0012】
揚力型垂直軸風車の起動方法の望ましい態様として、前記変向角度に前記翼を変向した後、前記回転体の回転を検出するステップと、前記回転体の回転の検出結果に基づいて前記翼を初期姿勢に戻すように変向するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、カットイン風速を低減することができる揚力型垂直軸風車、及び揚力型垂直軸風車の起動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る揚力型垂直軸風車を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1の揚力型垂直軸風車を模式的に示す平面図である。
図3図3は、図1の揚力型垂直軸風車の翼を初期姿勢から変向した一例を示す平面図である。
図4図4は、図1の揚力型垂直軸風車の翼の変向機構の一例を示す平面図である。
図5図5は、図1の揚力型垂直軸風車の機能ブロック図である。
図6図6は、実施形態に係る揚力型垂直軸風車の動作の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態の記載に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態における構成要素は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。以下の実施形態では、本開示の実施形態を例示する上で、必要となる構成要素を説明し、その他の構成要素を省略する。
【0016】
(実施形態)
まず、実施形態に係る揚力型垂直軸風車1の構成について、図1から図5までを参照して説明する。図1は、実施形態に係る揚力型垂直軸風車1を模式的に示す斜視図である。図2は、図1の揚力型垂直軸風車1を模式的に示す平面図である。図3は、図1の揚力型垂直軸風車1の翼4を初期姿勢から変向した一例を示す平面図である。図4は、図1の揚力型垂直軸風車1の翼4の変向機構5の一例を示す平面図である。図5は、図1の揚力型垂直軸風車1の機能ブロック図である。
【0017】
揚力型垂直軸風車1は、風流に対して発生する揚力によって垂直軸回りに回転する風車である。実施形態の揚力型垂直軸風車1は、例えば、風力発電機として利用されるストレートダリウス型風車を含む。揚力型垂直軸風車1は、実施形態において、主軸部材2と、回転体3と、変向機構5と、風向検出部6と、回転検出部7と、制御装置9と、を備える。
【0018】
主軸部材2は、軸心である主軸Apが垂直に設けられる軸部材である。主軸部材2は、主軸Ap回りに回転可能に設けられる。主軸部材2は、例えば、発電機に接続し、回転方向Rへの回転駆動力を発電機へ出力する。発電機は、例えば、回転子と、固定子と、を含み、主軸部材2から入力される回転駆動力によって回転子が固定子に対して回転することによって、誘導電流を発生させる周知の発電機構を含む。発電機の回転子は、主軸部材2に対して、直接的に、又は変速機、ベルト等を介して間接的に連結される。
【0019】
回転体3は、主軸部材2に固定され、主軸Ap回りに主軸部材2と一体で回転可能に設けられる。回転体3は、例えば、支持部材31と、翼4と、を含む。支持部材31は、主軸部材2から遠心方向に延設される棒形状である。支持部材31は、一端が主軸部材2に固定される。支持部材31は、遠心方向側の他端が翼4に接続する。より詳しくは、支持部材31の他端は、後述の翼4の変向軸部41を介して翼4に接続する。支持部材31は、実施形態において、複数の支持部材31-1、31-2を含む。
【0020】
翼4は、回転体3の遠心部に設けられる。翼4は、変向軸部41を介して、変向軸Ac回りに支持部材31に対して回動可能に支持される。翼4は、変向軸Ac回りに所定角度範囲内で回転可能である。変向軸部41は、翼4本体に固定されるか、又は翼4本体と一体で設けられる。変向軸Acは、主軸Apと平行かつ回転体3の遠心部に設けられる。揚力型垂直軸風車1は、翼4に風流を受けることによって、翼4及び支持部材31を含む回転体3と主軸部材2とが、主軸Ap回りに回転方向Rに回転する。
【0021】
翼4の水平断面形状は、図2に示す初期姿勢において、主軸部材2の回転方向Rの前方側である風上側が厚く、回転方向Rの後方側である風下側が薄い形状である。また、翼4は、平面視で主軸Apからの遠心方向側の面が凸状の曲面であり、主軸Apに対向する側の面が凹状の曲面又は略平坦な形状である。このように、翼4は、初期姿勢において、翼4の接線方向かつ主軸Ap回りの回転方向Rと反対側に吹く風(図2に示す状態では、翼4-1に対して図2の下方から風が吹く場合)に対して最も揚力が大きくなる形状に設けられることが好ましい。
【0022】
翼4は、実施形態において、複数(実施形態では2つ)の翼4-1、4-2を含む。翼4-1、4-2は、実施形態において、主軸Ap回りに回転対称、かつ主軸Apに対して回転方向Rに等間隔に設けられる。なお、翼4は、2つに限定されず、3つ以上でもよい。翼4-1は、変向軸部41-1を介して、主軸Apと平行な変向軸Ac-1回りに支持部材31-1に対して回動可能に設けられる。翼4-2は、変向軸部41-2を介して、主軸Apと平行な変向軸Ac-2回りに支持部材31-2に対して回動可能に設けられる。翼4-1と翼4-2とは、互いに独立して主軸部材2に対して回動可能である。
【0023】
実施形態において、翼4の表面42には、後述の風向検出部6の第1センサ61及び第2センサ62が設けられる。より詳しくは、翼4-1の表面42-1には、後述の風向検出部6-1の第1センサ61-1及び第2センサ62-1が設けられる。また、翼4-2の表面42-2には、後述の風向検出部6-2の第1センサ61-2及び第2センサ62-2が設けられる。
【0024】
図4及び図5に示す変向機構5は、翼4を主軸Apに平行な変向軸Ac回りに主軸部材2及び支持部材31(図2及び図3参照)に対して回転させることで変向可能である。変向機構5は、後述の制御装置9から出力された制御信号に基づいて、翼4を所定角度回転させる。変向機構5は、各々の翼4-1、4-2に対して各々設けられる変向機構5-1、5-2(図5参照)を含む。
【0025】
図4に示すように、変向機構5は、実施形態において、平歯車51と、冠歯車52と、回転軸部材53と、駆動部54と、を含む。なお、以下の説明では、翼4-1に設けられる変向機構5-1の、平歯車51-1、冠歯車52-1、回転軸部材53-1、及び駆動部54-1について説明し、変向機構5-1と同様の構成である変向機構5-2については説明を省略する。
【0026】
平歯車51-1は、軸心が変向軸Ac-1に一致するよう翼4-1の変向軸部41に固定して設けられる。平歯車51-1は、変向軸Ac-1回りに翼4-1と一体で支持部材31-1(図2及び図3参照)に対して回転可能である。平歯車51-1は、周面に冠歯車52-1の歯部と噛み合う歯部を有する。翼4-1は、平歯車51-1が冠歯車52-1によって変向軸Ac-1回りに回転することによって、平歯車51-1と一体で回転する。
【0027】
冠歯車52-1は、軸心が変向軸Ac-1に対して直交するよう設けられる。冠歯車52-1は、平歯車51-1の歯部に噛み合う歯部を有する。回転軸部材53-1は、軸心である回転軸Ar-1回りに支持部材31-1(図2及び図3参照)に対して回動可能に設けられる軸部材である。回転軸Ar-1は、回転軸Ar-1が冠歯車52-1の軸心に一致するように設けられる。
【0028】
駆動部54-1は、回転軸部材53-1に回転軸Ar-1回りの回転駆動力を伝達する。駆動部54-1は、後述の制御装置9から出力された制御信号に基づいて、回転軸部材53-1を回転軸Ar-1回りに回転させる。駆動部54-1は、回転軸部材53-1及び冠歯車52-1の回転軸Ar-1回りの回転を介して、平歯車51-1を変向軸Ac-1回りに回転させることによって、翼4-1を変向させる。
【0029】
風向検出部6は、翼4が受ける風流方向Wを検出する。風向検出部6は、実施形態において、第1センサ61及び第2センサ62を含む差圧計である。風向検出部6は、計測した第1センサ61と第2センサ62との差圧から、翼4が受ける風流方向Wを検出する。風向検出部6は、実施形態において、各々の翼4-1、4-2に対して各々設けられる風向検出部6-1、6-2を含む。
【0030】
風向検出部6-1は、実施形態において、第1センサ61-1及び第2センサ62-1を含む差圧計である。第1センサ61-1は、翼4-1の表面42-1において、主軸部材2の回転方向Rの前方側かつ主軸Apからの遠心方向側に設けられる。第2センサ62-1は、翼4-1の表面42-1において、主軸部材2の回転方向Rの前方側かつ主軸Apに対向する側に設けられる。
【0031】
風向検出部6-2は、実施形態において、第1センサ61-2及び第2センサ62-2を含む差圧計である。第1センサ61-2は、翼4-2の表面42-2において、主軸部材2の回転方向Rの前方側かつ主軸Apからの遠心方向側に設けられる。第2センサ62-2は、翼4-2の表面42-2において、主軸部材2の回転方向Rの前方側かつ主軸Apに対向する側に設けられる。
【0032】
風向検出部6-1、6-2は、検出した風流方向Wを、後述の制御装置9へ出力する。なお、風向検出部6は、複数の翼4-1、4-2のうち、いずれかの翼4にのみ設けられてもよい。また、風向検出部6は、差圧計に限定されず、本開示では、別途設置される風向計でもよい
【0033】
図5に示す回転検出部7は、主軸部材2及び回転体3の回転を検出する。回転検出部7は、実施形態では主軸部材2に設けられるが、本開示では回転体3に設けられてもよい。回転検出部7は、例えば、主軸部材2の回転角度を検出するロータリーエンコーダ等の回転角センサ、主軸部材2のトルク及び回転数を計測する回転計等を含む。回転検出部7は、検出結果を後述の制御装置9へ出力する。
【0034】
制御装置9は、揚力型垂直軸風車1の各部の制御を行う。制御装置9は、各種の制御プログラム及び各種の制御処理に用いられるデータが記憶される記憶装置と、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置と、を含む。制御装置9は、実施形態において、風向取得部91と、迎角算出部92と、変向設定部93と、変向制御部94と、回転取得部95と、を含む。
【0035】
風向取得部91は、風向検出部6から翼4が受ける風流方向Wを取得する。風向取得部91は、実施形態において、各々の翼4-1、4-2に設けられる風向検出部6-1、6-2から、各々が検出した風流方向Wを取得する。風向取得部91は、取得した風流方向Wのデータを、迎角算出部92へ出力する。
【0036】
迎角算出部92は、風向検出部6が検出した風流方向Wに基づいて翼4の迎角を算出する。より詳しくは、迎角算出部92は、風向取得部91が取得した風流方向Wに基づいて、各々の翼4-1、4-2の迎角α1、α2(図2参照)を算出する。迎角算出部92は、算出した迎角α1、α2のデータを、変向設定部93へ出力する。
【0037】
変向設定部93は、翼4の迎角に基づいて各々の翼4-1、4-2を変向させる変向角度(ピッチ角)を設定する。より詳しくは、変向設定部93は、翼4-1の迎角α1に基づいて翼4-1を変向させるピッチ角β1(図3参照)を設定する。また、変向設定部93は、翼4-2の迎角α2に基づいて翼4-2を変向させるピッチ角β2(図3参照)を設定する。ピッチ角β1、β2は、各々の翼4-1、4-2の主軸Ap回りの回転方向Rへの回転力が最大となるように設定される。変向設定部93は、例えば、予め翼4の迎角と主軸Ap回りの回転力との相関関係を記憶していてもよい。変向設定部93は、設定したピッチ角β1、β2のデータを、変向制御部94へ出力する。
【0038】
変向制御部94は、変向設定部93が設定したピッチ角に翼4を変向させるよう変向機構5を制御する。より詳しくは、変向制御部94は、変向設定部93が設定したピッチ角β1に翼4-1を偏向させるよう、翼4-1に対応する変向機構5-1の駆動部54-1を駆動する制御信号を出力する。また、変向制御部94は、変向設定部93が設定したピッチ角β2に翼4-2を偏向させるよう、翼4-2に対応する変向機構5-2の駆動部54-2を駆動する制御信号を出力する。
【0039】
すなわち、制御装置9は、風向検出部6が検出した風流方向Wに基づいて複数の翼4-1、4-2について各々の迎角α1、α2を算出し、各々の迎角α1、α2に基づいて各々の翼4-1、4-2を変向させるよう各々の変向機構5-1、5-2を制御する。この際、制御装置9は、各々の翼4-1、4-2の主軸Ap回りの回転方向Rへの回転力が最大となるピッチ角β1、β2となるように各々の変向機構5-1、5-2を制御する。
【0040】
なお、翼4は、実施形態において、変向軸Ac回りに所定角度範囲内で回転可能である。したがって、制御装置9は、翼4が回転可能な所定角度範囲内において、各々の翼4-1、4-2の主軸Ap回りの回転方向Rへの回転力が最大となるピッチ角β1、β2となるように変向機構5-1、5-2を制御する。
【0041】
変向制御部94は、回転体3が回転起動した後、翼4を図2に示す初期姿勢に戻すように変向機構5を制御する。より詳しくは、変向制御部94は、後述の回転取得部95が回転検出部7から主軸部材2及び回転体3が所定角度又は所定速度以上回転したことを示す検出結果を取得した場合、翼4-1を初期姿勢に戻すように翼4-1に対応する変向機構5-1の駆動部54-1を駆動する制御信号を出力する。また、変向制御部94は、回転取得部95が回転検出部7から主軸部材2及び回転体3が所定角度又は所定速度以上回転したことを示す検出結果を取得した場合、翼4-2を初期姿勢に戻すように翼4-2に対応する変向機構5-2の駆動部54-2を駆動する制御信号を出力する。
【0042】
回転取得部95は、回転検出部7から主軸部材2及び回転体3の回転の検出結果を取得する。回転取得部95は、例えば、回転検出部7から主軸部材2及び回転体3が所定角度又は所定速度以上回転したことを示す検出結果を取得する。回転取得部95は、取得した検出結果を、変向制御部94へ出力する。
【0043】
次に、実施形態に係る揚力型垂直軸風車1の動作について、図6を参照して説明する。図6は、実施形態に係る揚力型垂直軸風車1の動作の一例を示すフローチャート図である。図6に示すフローチャートの処理は、揚力型垂直軸風車1の制御装置9が、予め定められた制御プログラム及びデータに基づいて実行する。制御装置9は、制御装置9に電力が供給される、管理者等による開始操作に関する所定の操作信号を受け付ける、又は回転検出部7より主軸部材2及び回転体3が停止していることを示す検出結果を取得すること等によって、図6に示すステップS101に移行して処理を開始する。
【0044】
ステップS101において、制御装置9は、翼4が受ける風流方向Wを検出する。より詳しくは、風向取得部91が、各々の翼4-1、4-2に設けられる風向検出部6-1、6-2から、各々が検出した風流方向Wを取得する。制御装置9は、ステップS102へ移行する。
【0045】
ステップS102において、制御装置9は、ステップS101で取得した風流方向Wに基づいて迎角を算出する。より詳しくは、迎角算出部92が、風向取得部91が取得した風流方向Wに基づいて、各々の翼4-1、4-2の迎角α1、α2を算出する。制御装置9は、ステップS103へ移行する。
【0046】
ステップS103において、制御装置9は、ステップS102で算出した迎角に基づいて変向角度(ピッチ角)を設定する。より詳しくは、変向設定部93が、翼4-1の迎角α1に基づいて翼4-1を変向させるピッチ角β1を設定する。また、変向設定部93が、翼4-2の迎角α2に基づいて翼4-2を変向させるピッチ角β2を設定する。制御装置9は、ステップS104へ移行する。
【0047】
ステップS104において、制御装置9は、ステップS103で設定した変向角度(ピッチ角)に翼4を変向するよう変向機構5を制御する。より詳しくは、変向制御部94が、変向設定部93が設定したピッチ角β1に翼4-1を偏向させるよう、翼4-1に対応する変向機構5-1の駆動部54-1を駆動する制御信号を出力する。また、変向制御部94が、変向設定部93が設定したピッチ角β2に翼4-2を偏向させるよう、翼4-2に対応する変向機構5-2の駆動部54-2を駆動する制御信号を出力する。
【0048】
各々の翼4-1、4-2の主軸Ap回りの回転方向Rへの回転力が最大となるピッチ角β1、β2に翼4-1、4-2が変向されることによって、主軸部材2及び回転体3が回転方向Rへ回りやすくなり、揚力型垂直軸風車1が回転起動する。制御装置9は、ステップS105へ移行する。
【0049】
ステップS105において、制御装置9は、ステップS104で翼4を変向した後、回転体3の回転を検出する。より詳しくは、回転取得部95が、回転検出部7から主軸部材2及び回転体3の回転の検出結果を取得する。制御装置9は、ステップS106へ移行する。
【0050】
ステップS106において、制御装置9は、ステップS105で取得した主軸部材2及び回転体3の回転の検出結果に基づいて、翼4を初期姿勢に戻すように変向機構5を制御する。より詳しくは、ステップS105で回転検出部7から主軸部材2及び回転体3が所定角度又は所定速度以上回転したことを示す検出結果を取得した場合、変向制御部94が、翼4-1を初期姿勢に戻すように翼4-1に対応する変向機構5-1の駆動部54-1を駆動する制御信号を出力する。また、変向制御部94が、翼4-2を初期姿勢に戻すように翼4-2に対応する変向機構5-2の駆動部54-2を駆動する制御信号を出力する。
【0051】
主軸部材2及び回転体3が回転方向Rへ回転し始めると、翼4は、回転方向Rとは反対方向から相対的に風流を受けることになるので、初期姿勢に戻ることによって、効率的に回転方向Rへ回転することができる。
【0052】
以上で説明したように、実施形態の揚力型垂直軸風車1は、垂直な主軸Ap回りに回転可能であって遠心部に翼4が設けられる回転体3と、翼4を主軸Apに平行な変向軸Ac回りに回転させることで変向可能な変向機構5と、翼4が受ける風流方向Wを検出する風向検出部6と、風向検出部6が検出した風流方向Wに基づいて翼4を変向させるよう変向機構5を制御する制御装置9と、を備える。
【0053】
実施形態の揚力型垂直軸風車1は、停止状態において、風流方向Wに基づいて翼4を変向させるように制御するので、風流に対して十分な揚力が得られるように最適な角度に翼4を制御することができる。これにより、カットイン風速を低減することができ、揚力型垂直軸風車1による発電効率を向上させることができる。
【0054】
また、実施形態の揚力型垂直軸風車1において、制御装置9は、風向検出部6が検出した風流方向Wに基づいて翼4の迎角(迎角α1、α2)を算出し、迎角に基づいて翼4の主軸Ap回りの回転力が最大となるように翼4を変向させるよう変向機構5を制御する。これにより、例えば、予め翼4の迎角と主軸Ap回りの回転力との相関関係を記憶しておくことによって、風流を受ける好適な変向角度に翼4を迅速に変向させることができる。
【0055】
また、実施形態の揚力型垂直軸風車1において、翼4は、変向軸Ac回りに所定角度範囲内で回転可能であり、制御装置9は、所定角度範囲内において、翼4の主軸Ap回りの回転力が最大となるように翼4を変向させるよう変向機構5を制御する。これにより、例えば、風流方向Wに対して後ろ向きである翼4(例えば、図2に示す翼4-2)等が、主軸部材2及び回転体3の回転方向Rへの回転をできるだけ阻害しない変向角度に、翼4を変向させることができる。
【0056】
また、実施形態の揚力型垂直軸風車1において、制御装置9は、回転体3が回転起動した後、翼4を初期姿勢に戻すように変向機構5を制御する。主軸部材2及び回転体3が回転方向Rへ回転し始めると、翼4は、回転方向Rとは反対方向から相対的に風流を受ける。主軸部材2及び回転体3が回転起動した後に翼4を初期姿勢に戻すことによって、主軸部材2及び回転体3の回転を阻害せず、効率的に回転方向Rへの回転を継続させることができる。
【0057】
また、実施形態の揚力型垂直軸風車1において、翼4-1、4-2は、主軸Ap回りに回転対称かつ等間隔に複数設けられ、制御装置9は、複数の翼4-1、4-2について各々の迎角α1、α2を算出し、迎角α1、α2に基づいて各々の翼4-1、4-2を変向させるよう変向機構5-1、5-2を制御する。このように、各々の翼4-1、4-2について、個別に変向させることにより、揚力型垂直軸風車1全体で最も主軸Ap回りの回転力が得られるように制御することが可能である。
【0058】
また、実施形態の揚力型垂直軸風車1の起動方法は、垂直な主軸Ap回りに回転可能な回転体3の遠心部に設けられる翼4が受ける風流方向Wを検出するステップS101と、風流方向Wに基づいて翼4の迎角(迎角α1、α2)を算出するステップS102と、迎角に基づいて主軸Apに平行な変向軸Ac回りの翼4の変向角度(ピッチ角β1、β2)を設定するステップS103と、変向角度に翼4を変向するステップS104と、を含む。
【0059】
実施形態の揚力型垂直軸風車1の起動方法は、停止状態において、風流方向Wに基づいて翼4を変向させるように制御するので、風流に対して十分な揚力が得られるように最適な角度に翼4を制御することができる。これにより、カットイン風速を低減することができ、揚力型垂直軸風車1による発電効率を向上させることができる。
【0060】
また、実施形態の揚力型垂直軸風車1の起動方法は、変向角度(ピッチ角β1、β2)に翼4を変向した後、回転体3の回転を検出するステップS105と、回転体3の回転の検出結果に基づいて翼4を初期姿勢に戻すように変向するステップS106と、を含む。主軸部材2及び回転体3が回転方向Rへ回転し始めると、翼4は、回転方向Rとは反対方向から相対的に風流を受ける。主軸部材2及び回転体3が回転起動した後に翼4を初期姿勢に戻すことによって、主軸部材2及び回転体3の回転を阻害せず、効率的に回転方向Rへの回転を継続させることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 揚力型垂直軸風車
2 主軸部材
3 回転体
31、31-1、31-2 支持部材
4、4-1、4-2 翼
41、41-1、41-2 変向軸部
42、42-1、42-2 表面
5、5-1、5-2 変向機構
51、51-1 平歯車
52、52-1 冠歯車
53、53-1 回転軸部材
54、54-1、54-2 駆動部
6、6-1、6-2 風向検出部
61、61-1、61-2 第1センサ
62、62-1、62-2 第2センサ
7 回転検出部
9 制御装置
91 風向取得部
92 迎角算出部
93 変向設定部
94 変向制御部
95 回転取得部
α1、α2 迎角
β1、β2 ピッチ角
R 回転方向
W 風流方向
Ap 主軸
Ac、Ac-1、Ac-2 変向軸
Ar、Ar-1 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6