(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154581
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221005BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20221005BHJP
C09J 7/21 20180101ALI20221005BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B32B27/00 M
C09J7/40
C09J7/21
C09D163/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057686
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 茜
(72)【発明者】
【氏名】加茂 雅康
(72)【発明者】
【氏名】原 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】河角 奨太
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA08A
4F100AA20A
4F100AK01C
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK25B
4F100AK36D
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4F100AK53D
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4F100AR00B
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4J004AA10
4J004AB01
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4J004DA03
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4J038DB001
4J038KA03
4J038NA10
4J038NA12
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】剥離基材の加熱処理前後での寸法変化が小さく、かつ、加熱によるカールの発生が加熱直後及び冷却後においても効果的に抑制できる粘着シートを提供する。
【解決手段】剥離シートと、前記剥離シート上に設けた粘着剤層と、前記粘着剤層上に設けた表面基材とを有する粘着シートであって、
前記剥離シートは、ポリオレフィン樹脂及び無機充填剤を含む剥離基材、及び前記剥離基材の粘着剤層側に設けた剥離剤層からなり、
前記剥離基材中に含まれる前記無機充填剤の含有量が50~70質量%である、粘着シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離シートと、前記剥離シート上に設けた粘着剤層と、前記粘着剤層上に設けた表面基材とを有する粘着シートであって、
前記剥離シートは、ポリオレフィン樹脂及び無機充填剤を含む剥離基材、及び前記剥離基材の粘着剤層側に設けた剥離剤層からなり、
前記剥離基材中に含まれる前記無機充填剤の含有量が50~70質量%である、粘着シート。
【請求項2】
前記表面基材が合成紙である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記剥離剤層がエポキシ樹脂、及び架橋剤を含む剥離剤組成物から形成されてなる層である、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記架橋剤が、メラミン化合物である、請求項3に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記無機充填剤が炭酸カルシウム、及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なラベル用の粘着シートは、表面基材、粘着剤層、及び剥離材をこの順で積層した構成を有する。汎用のラベル用の粘着シートとしては、表面基材として紙材が使用されることが多いが、紙材に対して美観や質感を高めるために、表面基材として合成樹脂フィルムが用いられる場合がある。また、冷凍食品用ラベルやシャンプー等の水回りで用いられるボトル用ラベルで用いる場合には、耐湿性及び耐水性の向上のために、表面基材として合成樹脂フィルムが用いられる。
さらに、合成樹脂フィルムは、紙よりも引張強度が高いため、ウエットティッシュ用ラベルのように、剥離と貼付を繰り返しても、破れずに使用できるような用途のラベルの表面基材として使用されている。特に、表面基材に対して、紙に近い質感を付与すると共に、上記のような性質も有するようにしたい場合には、合成樹脂フィルムとして、各種合成紙が用いられる。
【0003】
ところで、ラベル用の粘着シートは、表面基材の表面に各種の印刷手段によって各種表示や情報を印刷または印字されてラベルとして用いられる。合成樹脂フィルムを表面基材とする粘着シートの印刷手段でも、普通紙と同様に印刷できることが望まれることが多く、レーザープリンターへの適用が望まれている。
【0004】
例えば特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートを主原料とする合成紙の一面にシリコン樹脂を塗布して成る剥離材の該シリコン樹脂塗布面に、粘着剤を介して、表面材を貼合せたロール状粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紙材や合成樹脂フィルムを表面基材に用いた粘着シートは、印刷処理をレーザープリンターなどで行うと、極めて大きなカールが発生してしまう。例えば、トナーを表面基材に定着させる際に通過する熱転写ロールの熱により、剥離材の基材が樹脂製であれば表面基材との加熱で生じる収縮率の差によって、剥離材の基材が紙製であればさらに乾燥による収縮によって粘着シートのカールの原因となる。
前述の特許文献1に記載のロール状粘着シートではカールの発生を十分に抑えることができない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、剥離基材の加熱処理前後での寸法変化が小さく、かつ、加熱によるカールの発生が加熱直後及び冷却後においても効果的に抑制できる粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、剥離シートの剥離基材として、特定の含有量の、ポリオレフィン樹脂及び無機充填剤を含む基材を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]剥離シートと、前記剥離シート上に設けた粘着剤層と、前記粘着剤層上に設けた表面基材とを有する粘着シートであって、
前記剥離シートは、ポリオレフィン樹脂及び無機充填剤を含む剥離基材、及び前記剥離基材の粘着剤層側に設けた剥離剤層からなり、
前記剥離基材中に含まれる前記無機充填剤の含有量が50~70質量%である、粘着シート。
[2]前記表面基材が合成紙である、上記[1]に記載の粘着シート。
[3]前記剥離剤層がエポキシ樹脂、及び架橋剤を含む剥離剤組成物から形成されてなる層である、上記[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[4]前記架橋剤が、メラミン化合物である、上記[3]に記載の粘着シート。
[5]前記無機充填剤が炭酸カルシウム、及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、剥離基材の加熱処理前後での寸法変化が小さく、かつ、加熱によるカールの発生が加熱直後及び冷却後においても効果的に抑制できる粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の粘着シートの一例を示す、粘着シートの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔本発明の粘着シートの構成〕
図1は、本発明の粘着シートの一例を示す、粘着シートの模式断面図である。
図1の粘着シート10は、剥離シート1と、該剥離シート1上に設けた粘着剤層2と、該粘着剤層2上に設けた表面基材3とを有する。前記剥離シート1は、剥離基材4、及び該剥離基材4の粘着剤層側に設けた剥離剤層5からなる。
【0013】
以下、本発明の粘着シートを構成する、剥離シート、粘着剤層、及び表面基材の各層について説明する。
〔剥離シート〕
本発明の粘着シートで用いる剥離シートは、剥離基材の片面に剥離剤層を有する。
前記剥離基材は、ポリオレフィン樹脂、及び無機充填剤を含む。また、前記剥離基材中に含まれる前記無機充填剤の含有量は50~70質量%である。
前記剥離基材中に含まれる無機充填剤の含有量が50質量%未満であると剥離基材の加熱処理前後での寸法変化が大きくなり、また、加熱により粘着シートにカールが発生するおそれがあり、70質量%を超えると剥離基材の表面が粗くなり厚さムラが発生するおそれがある。このような観点から、前記無機充填剤の含有量は、好ましくは55~65質量%である。
【0014】
前記剥離基材中に含まれるポリオレフィン樹脂の含有量は、好ましくは30~50質量%であり、より好ましくは35~45質量%である。前記剥離基材中に含まれるポリオレフィン樹脂の含有量が30質量%以上であると剥離基材の表面が粗くなり過ぎず、厚さムラの発生を抑えることができ、50質量%以下であると剥離基材の加熱処理前後での寸法変化が小さく、また、加熱により粘着シートにカールが発生するのを抑えることができる。
【0015】
前記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-ポリプロピレン共重合体等が挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのポリオレフィン樹脂の中でも、粘着シートの剥離材として使える厚さにおいて必要な強度に設計できることから、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0016】
前記無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム;シリカ微粒子、コロイダルシリカ、白雲母等のシリカ;酸化チタン、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの無機充填剤の中でも、ポリオレフィン樹脂に対し高濃度でも安定して配合が可能であることから、炭酸カルシウム、及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0017】
前記無機充填剤の形状は特に限定されず、球状、プレート型、フレーク状、鱗片状等が挙げられる。
前記無機充填剤の平均粒子径は、剥離基材の表面粗さを平滑にできることから、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは0.5~15μmである。
なお、前記平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
【0018】
前記剥離基材は、ポリオレフィン樹脂、及び無機充填剤の他に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0019】
前記剥離基材としては、市販品を用いてもよく、例えば、株式会社TBMの「ライメックス(登録商標)」等が挙げられる。
【0020】
前記剥離基材の厚さは、強度及び寸法安定性の観点から、好ましくは30~300μmであり、より好ましくは50~250μmであり、更に好ましくは100~200μmである。
【0021】
前記剥離剤層は、前記剥離基材上に剥離剤組成物を用いて形成することができる。
剥離剤層を形成する剥離剤組成物としては、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、長鎖アルキル系樹脂等の剥離性樹脂成分を主成分とする剥離剤組成物、剥離性を有さない樹脂成分と剥離性付与成分の配合物からなる剥離剤組成物、または剥離性を有さない樹脂成分が剥離性付与成分で変性された樹脂成分を含む剥離剤組成物が挙げられる。これらの中でも、剥離性を有さない樹脂成分が剥離性付与成分で変性された樹脂成分を含む剥離剤組成物が、硬化性が優れる点で好ましい。
【0022】
剥離性を有さない樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、エネルギー線硬化型アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分の中でも、硬化性及び剥離基材との密着性に優れることから、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂が好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エステル、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の水酸基含有エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エステルがより好ましい。
前記剥離性付与成分としては、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、長鎖アルキル樹脂が挙げられ、このうち剥離性を有さない樹脂成分を変性可能な成分としては、当該樹脂成分と結合可能な官能基を有するシリコーン樹脂、フッ素系樹脂、長鎖アルキル樹脂が挙げられる。剥離性付与成分で変性された樹脂成分としては、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性アルキド樹脂、シリコーン変性アクリレート化合物重合体、フルオロ変性エポキシ樹脂、フルオロ変性アルキド樹脂、フルオロ変性アクリレート化合物重合体、長鎖アルキル変性エポキシ樹脂、長鎖アルキル変性アルキド樹脂、長鎖アルキル変性アクリレート化合物重合体などが挙げられる。剥離性付与成分で変性された樹脂成分の中でも、長鎖アルキル変性エポキシ樹脂が、硬化性が優れる点で好ましい。
【0023】
前記剥離剤組成物は、架橋剤を含んでもよい。架橋剤としては、上述の剥離性を有する樹脂成分または剥離性を有さない樹脂成分(以下、単に「樹脂成分」ともいう)を架橋させることができる化合物であれば特に制限されないが、反応性とポットライフのバランスの観点から、メラミン系化合物が好ましい。
メラミン系化合物としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシブチルメラミン、及びこれらの重合体(樹脂)等が挙げられる。これらのメラミン系化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのメラミン系化合物の中でも、反応性に優れ剥離剤層に優れた耐熱性を付与できることから、ヘキサメトキシメチルメラミン又はその重合体が好ましい。
【0024】
前記樹脂成分と前記架橋剤との含有量比〔樹脂成分/架橋剤〕(質量比)は、硬化性及び密着性の観点から、好ましくは15/85~98/2であり、より好ましくは40/60~95/5であり、更に好ましくは60/40~90/10であり、より更に好ましくは70/30~85/15である。
【0025】
また、前記樹脂成分及び前記架橋剤の合計含有量は、剥離剤組成物全量に対して、好ましくは85~99.9質量%であり、より好ましくは90~99.5質量%であり、更に好ましくは95~99質量%である。
【0026】
前記剥離剤組成物は、剥離剤層の形成時の反応を促進させる観点から、さらに酸触媒を含むことが好ましい。酸触媒としては、公知の酸触媒の中から適宜選択して用いることができるが、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。
酸触媒の使用量は、前記樹脂成分及び前記架橋剤の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部であり、より好ましくは0.5~10質量部であり、更に好ましくは1~5質量部である。
【0027】
前記剥離剤層の厚さは、剥離性及び塗膜の硬化性の観点から、好ましくは10~3000nmであり、より好ましくは30~1000nmである。
【0028】
〔粘着剤層〕
本発明の粘着シートが有する粘着剤層としては、粘着性樹脂を含む粘着剤組成物から形成することができる。
前記粘着性樹脂としては、用途に応じて適宜選択されるが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、及びこれらの樹脂に重合性官能基を有するエネルギー線硬化型樹脂等が挙げられる。
これらの粘着性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
また、粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物には、粘着性樹脂の種類や粘着シートの用途に応じて、粘着剤用添加剤を含有してもよい。
前記粘着剤用添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、難燃剤、増粘剤、帯電防止剤、重合開始剤、硬化助剤等が挙げられる。
【0030】
前記粘着剤層の厚さとしては、用途に応じて適宜設定されるが、好ましくは1~100μmであり、より好ましくは5~80μmであり、更に好ましくは10~60μmである。
【0031】
〔表面基材〕
本発明の粘着シートが有する表面基材としては、合成樹脂フィルムが挙げられ、好ましくは合成紙である。
【0032】
合成紙としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド等の樹脂からなる合成繊維から構成されたもの等が挙げられる。
なお、本発明で用いる合成紙としては、市販品を用いてもよく、例えば、「クリスパー(登録商標)」(東洋紡株式会社製、ボイド含有型ポリエステル系合成紙)、「ユポ(登録商標)」(株式会社ユポコーポレーション製、ボイド含有型ポリプロピレン系合成紙)、「レーザーピーチ」(日清紡ペーパープロダクツ株式会社製、ポリエステル系合成紙)等が挙げられる。
これらの中でも、表面基材としては、ポリプロピレン系合成紙がより好ましい。
【0033】
表面基材に用いられる合成紙以外の合成樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0034】
なお、合成樹脂フィルムは、さらに紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
また、表面基材は、単層であってもよく、2以上を積層した複層であってもよい。
【0035】
本発明の一態様で用いる表面基材は、粘着剤層との密着性を向上させる観点から、表面基材を構成する合成樹脂フィルムの表面に対して、酸化法や凹凸化法等による表面処理、又はプライマー層を設けてもよい。
酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、熱風処理、オゾン及び紫外線照射処理等が挙げられる。
凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0036】
前記表面基材の厚さとしては、用途に応じて適宜設定されるが、好ましくは5~1000μmであり、より好ましくは10~700μmであり、更に好ましくは20~500μmであり、より更に好ましくは30~300μmである。
【0037】
なお、本発明の一態様の粘着シートにおいて、レーザープリンター等を用いた印刷の際に、トナーやインク等の定着を良好とする観点から、表面基材の粘着剤層とは反対側の表面上に、さらに印刷受容層を有してもよい。
【0038】
〔粘着シートの製造方法〕
粘着シートの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、剥離基材上に上述の剥離剤組成物を塗布し、乾燥して剥離剤層を形成して剥離シートを製造する。続いて、当該剥離剤層上に上述の粘着剤組成物を塗布し、粘着剤層を形成し、当該粘着剤層の表出している表面上に表面基材を積層して製造したり、または、表面基材の一面に粘着剤組成物を塗布し、粘着剤層を形成し、当該粘着剤層の表出している表面上に剥離シートの剥離剤層の面を積層することで粘着シートを製造することができる。
【0039】
各層の形成材料である組成物には、各層に含まれる成分の他、塗布性を良好とする観点から、必要に応じて、溶媒を加えて、溶液の形態としてもよい。
また、前記塗布方法としては、公知の方法が適用でき、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0040】
本発明の粘着シートは、剥離基材の加熱処理前後での寸法変化が小さく、かつ、加熱によるカールの発生が加熱直後及び冷却後においても効果的に抑制できる。したがって、加熱を伴う用途に好適であり、特に、レーザープリンターによる印刷に好適に用いられる。
【実施例0041】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
以下の実施例及び比較例で使用した各層の形成材料は以下のとおりである。
【0043】
〔剥離基材〕
・剥離基材1:ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン樹脂、無機充填剤として炭酸カルシウムを含む基材(株式会社TBM製、製品名「ライメックス(登録商標)」、炭酸カルシウム含有量:61質量%)厚さ=150μm
なお、剥離基材1.00gをマッフル炉により800℃で燃焼して有機成分を除去し、酸化カルシウムからなる灰分の重量を測定した。これを炭酸カルシウムの量に換算して、剥離基材に含まれる炭酸カルシウムの含有量とした。
・剥離基材2:ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル株式会社製、製品名「ダイアホイル T102-75S」)厚さ=75μm
・剥離基材3:ポリエチレンフィルム(ジェイフィルム株式会社製、製品名「PEワダトウメイ 75AS カイ4」)厚さ=75μm
・剥離基材4:ポリプロピレンフィルム(リケンテクノス株式会社製、製品名「PP 100」)厚さ=75μm
・剥離基材5:ポリプロピレン系合成紙(株式会社ユポコーポレーション製、製品名「ユポ(登録商標)」)厚さ=110μm
・剥離基材6:グラシン紙(UPM-Kymmene Corporation社製、製品名「UPM BRILLIANT58」)厚さ=51μm
・剥離基材7:片面ポリエチレンラミネート紙:上質紙(日本製紙株式会社製、製品名「ジョウシツAB‐EC85G」厚さ=134μm)の片面に溶融押出法により20μmのポリエチレン層を積層して片面ポリエチレンラミネート紙を作成した。
・剥離基材8:片面クレーコート紙:上質紙(日本製紙株式会社製、製品名「ジョウシツAB‐EC85G」厚さ=134μm)の片面に、クレーコート組成物の塗膜を形成し、続いてスーパーカレンダー処理を行い、片面クレーコート紙を作成した。
・剥離基材9:両面クレーコート紙:上質紙(日本製紙株式会社製、製品名「ジョウシツAB‐EC85G」厚さ=134μm)の両面に、クレーコート組成物の塗膜を形成し、続いてスーパーカレンダー処理を行い、両面クレーコート紙を作成した。
【0044】
〔表面基材〕
・ポリプロピレン系合成紙(株式会社ユポコーポレーション製、製品名「ユポ(登録商標)」)厚さ=80μm
【0045】
〔剥離剤組成物〕
・剥離剤組成物1:長鎖アルキル変性されたビスフェノールA型エポキシ樹脂エステル80質量部と、メラミン樹脂20質量部との混合物(昭和電工マテリアルズ株式会社製、製品名「TA31-059D」、固形分濃度50質量%、溶媒:キシレン/トルエン/イソブタノール=18/16/16(質量比)の混合溶媒)の固形分100質量部に対して、酸触媒としてp-トルエンスルホン酸(昭和電工マテリアルズ株式会社製、製品名「ドライヤー 900」)2.5質量部を添加して、調製した組成物。
・剥離剤組成物2:無溶剤付加硬化型シリコーン系剥離剤(ダウ・東レ株式会社製、製品名「LTC-1057L」、固形分濃度100質量%)の固形分100質量部に対して、白金触媒(ダウ・東レ株式会社製、製品名「DOWSILTM SRX 212 Catalyst」)1.5質量部を添加して、調製した組成物。
・剥離剤組成物3:溶剤付加硬化型シリコーン(信越化学工業株式会社製、製品名「KS-839」、固形分濃度30質量%)の固形分100質量部に対して、白金触媒(信越化学工業株式会社製、製品名「CAT-PL-56」)1.0質量部を添加して、調製した組成物。
【0046】
(実施例1)
(1)剥離シートの作製
前記剥離基材1の片面に、上記の剥離剤組成物1を塗布し塗膜を形成し、当該塗膜を130℃で1分間乾燥して、厚さ100nmの剥離剤層を形成し、剥離シートを作製した。
【0047】
(2)粘着シートの作製
作製した剥離シートの剥離剤層上に、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、製品名「PA-T1」)を塗布し塗膜を形成し、当該塗膜を105℃で2分間乾燥して、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。そして、当該粘着剤層の表面上に、上記の表面基材を積層して、粘着シート(1)を得た。
【0048】
(比較例1)
前記剥離基材1を剥離基材2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着シート(2)を得た。
【0049】
(比較例2)
前記剥離基材1を剥離基材3に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着シート(3)を得た。
【0050】
(比較例3)
前記剥離基材1を剥離基材4に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着シート(4)を得た。
【0051】
(比較例4)
前記剥離基材1を剥離基材5に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着シート(5)を得た。
【0052】
(比較例5)
前記剥離基材1を剥離基材6に変更し、前記剥離剤組成物1を剥離剤組成物2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着シート(6)を得た。
【0053】
(比較例6)
前記剥離基材1を剥離基材7に変更し、前記剥離剤組成物1を剥離剤組成物2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着シート(7)を得た。
【0054】
(比較例7)
前記剥離基材1を剥離基材8変更し、前記剥離剤組成物1を剥離剤組成物2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着シート(8)を得た。
【0055】
(比較例8)
前記剥離基材1を剥離基材9に変更し、前記剥離剤組成物1を剥離剤組成物3に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着シート(9)を得た。
【0056】
(剥離基材の熱収縮率の評価)
上記の剥離基材1~5を100mm×100mmに切り出し、各試験片を作製した。当該試験片のMD方向の長さ及びCD方向の長さをそれぞれ2回測定し、それぞれ平均値を求め加熱前の長さ(L0)とした。次に、前記試験片を熱風循環式恒温槽に入れ、100℃で5分間網に懸垂し、10分間放冷した後の試験片について、MD方向の長さ及びCD方向の長さをそれぞれ2回測定し、それぞれ平均値を求め加熱後の長さ(L1)とした。同様に、加熱温度を120℃、150℃に変更してそれぞれ加熱後の長さ(L1)を測定した。前記L0及び前記L1から、下記式(I)より熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=(L0-L1)/L0×100 (I)
【0057】
(粘着シートのカールの抑制効果の評価)
作製した粘着シートをA4サイズとし、レーザープリンター(富士ゼロックス株式会社製、製品名「DocuPrint C5000d」)を用いてカラー印刷した。そして、印刷直後30秒以内(印刷直後)、印刷後2分経過時(空冷後)、及び印刷後23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間静置後(調湿後)の粘着シートの反り面側を平坦なテーブルに静置して、当該粘着シートの四隅のテーブルからの高さを測定し、そのカール高さの最大値を求めた。
なお、カール高さの最大値は、カールの状態が正カール(表面基材が反り面の外側、剥離基材が反り面の内側となるカール)の場合は、当該最大値の符号をプラスとし、逆カール(表面基材が反り面の内側、剥離基材が反り面の外側となるカール)の場合は、当該最大値の符号をマイナスと標記する。
【0058】
【0059】
表1より、ポリオレフィン樹脂及び無機充填剤を含み、該無機充填剤の含有量が50~70質量%である剥離基材は、加熱処理前後での寸法変化が小さいことがわかる。また、実施例1で作製した粘着シートは、比較例1~8で作製した粘着シートに比べて、印刷直後、空冷後、及び調湿後のいずれにおいても優れたカール抑制効果が得られることがわかる。