(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154590
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/486 20060101AFI20221005BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221005BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20221005BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20221005BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20221005BHJP
C12N 9/99 20060101ALI20221005BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20221005BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A61K36/486
A61P43/00 111
A61P1/02
A61Q11/00
A61K8/9789
C12N9/99
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057701
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】518148478
【氏名又は名称】シーシーアイホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】光永 徹
(72)【発明者】
【氏名】山内 恒生
(72)【発明者】
【氏名】征矢野 真由
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 里奈
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC05
4B117LL09
4B117LP01
4C083AA111
4C083CC41
4C083EE32
4C088AB59
4C088BA09
4C088BA10
4C088NA14
4C088ZA67
4C088ZC20
(57)【要約】
【課題】新規なグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤を提供する。
【解決手段】ムラサキナツフジ抽出物を含む、グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムラサキナツフジ抽出物を含む、グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤。
【請求項2】
前記ムラサキナツフジ抽出物は、水と、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコールとの混合液による抽出物である、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の阻害剤を含む、口腔用組成物。
【請求項4】
抗う蝕用である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1もしくは2に記載の阻害剤または請求項3もしくは4に記載の組成物を含む、グルコシルトランスフェラーゼ阻害用飲食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコシルトランスフェラーゼは、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)などの細菌などにより産生される酵素であり、う蝕の原因となるプラークの形成に重要な役割を果たしている。そのため、グルコシルトランスフェラーゼの活性を阻害することは、う蝕予防にとって有効と考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、五斂子の抽出物を有効成分として含有するグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規なグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、驚くべきことに、ムラサキナツフジ抽出物がグルコシルトランスフェラーゼ阻害活性を有することを見出した。そして、この知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の一形態によれば、ムラサキナツフジ抽出物を含む、グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規なグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0010】
<グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤>
本発明の一形態は、ムラサキナツフジ抽出物を含む、グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤に関する。
【0011】
本明細書において、「グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤」を単に「本発明に係る阻害剤」または「阻害剤」とも称する。
【0012】
グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)などの細菌などにより産生される酵素である。これらの細菌は、多くの哺乳類の口腔内に存在し、スクロースからGTaseを介してグルカンを生成する。これらの細菌は、生成したグルカンによって、歯の表面に付着してプラークを形成する。グルコシルトランスフェラーゼの阻害とは、グルコシルトランスフェラーゼの働きを阻害する活性であり、スクロースからGTaseを介してグルカンが生成されることを阻害することを意味する。
【0013】
本発明に係る阻害剤の有効成分であるムラサキナツフジ抽出物は、ムラサキナツフジ(Millettia reticulata Benth.)の全体または一部を適当な溶媒によって抽出することによって、得られる。
【0014】
ここで、抽出の対象となるムラサキナツフジの部分は、特に制限されず、ムラサキナツフジ全体でも部分(茎、葉、種子、根など)でもよい。これらのうち、グルコシルトランスフェラーゼ活性の阻害効果を考慮すると、茎を抽出することが好ましい。
【0015】
また、抽出の対象となるムラサキナツフジ全体またはその部分(以下、単に「ムラサキナツフジ原料」とも称する)は、そのままの形態で抽出に供されてもよいが、抽出に供される前に、予め乾燥および/または粉砕されることが好ましい。これにより、ムラサキナツフジから所望の有効成分をより効率よく抽出できる。
【0016】
ここで、ムラサキナツフジ原料を予め乾燥する際の、乾燥条件は、特に制限されない。粉砕されやすさなどを考慮すると、乾燥温度は、好ましくは20~60℃であり、より好ましくは20~40℃である。また、乾燥時間は、好ましくは24~120時間であり、より好ましくは48~96時間である。または、ムラサキナツフジ原料を、凍結乾燥粉末化法、高圧法、超高圧法等の方法によって、乾燥してもよい。このうち、高圧法は、例えば、100~150℃で2~10時間(例えば、120℃で4時間)の高圧加熱処理することにより、ムラサキナツフジ原料中の細胞を加圧破砕する方法である。
【0017】
また、ムラサキナツフジ原料を予め粉砕する際の、粉砕条件もまた、特に制限されない。ムラサキナツフジ原料の粉砕後の大きさは、抽出効率などを考慮すると、好ましくは0.5~10mm程度、より好ましくは1~5mm程度である。粉砕方法としては、裁断機、スライサー、カッター、ピーラー、ジョークラッシャー、ジェットミル、ブレンダーなどで細断する方法などが挙げられる。
【0018】
次に、必要であれば予め乾燥および/または粉砕したムラサキナツフジ原料を、適当な溶媒を用いて抽出する。ここで使用できる溶媒は、ムラサキナツフジ原料から有効成分を抽出できるものであれば特に制限されず、適宜選択される。具体的には、水(水道水、工業用水、蒸留水、逆浸透膜水、濾過水、滅菌水、精製水等を含む);メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;アセトン等のケトン;ジエチルエーテル、ホルムアルデヒド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。上記溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合溶媒の形態で使用されてもよい。これらのうち、溶媒は、抽出効率、安全性などを考慮すると、水、または水と、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコールとの混合液であることが好ましい。一実施形態において、ムラサキナツフジ抽出物は、水、または水と、メタノール、エタノール、イソプロパノールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコールとの混合液による抽出物であり、好ましくは水と、メタノール、エタノール、イソプロパノールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコールとの混合液による抽出物であり、より好ましくは水とエタノールとの混合液による抽出物である。
【0019】
なお、必要であれば、ムラサキナツフジ原料を酸性またはアルカリ性条件下で抽出してもよい。すなわち、酸性またはアルカリ性の溶媒を使用してもよい。ここで、酸性溶媒を調製する際に使用できる酸としては、特に制限されないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸などが挙げられる。また、アルカリ性溶媒を調製する際に使用できるアルカリとしては、特に制限されないが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。ムラサキナツフジ原料を酸性またはアルカリ性条件下で抽出する際の溶媒のpHは、抽出条件などを考慮して、適宜選択される。また、酸性溶媒またはアルカリ性溶媒を使用した場合には、抽出後に、抽出液を中性(pH=7±1程度)になるように中和することが好ましい。
【0020】
溶媒の添加量は、ムラサキナツフジ原料から有効成分を抽出できるものであれば特に制限されない。具体的には、溶媒を、ムラサキナツフジ原料1gに対して、1~100mLの量、より好ましくは5~50mLの量を添加することが好ましい。
【0021】
抽出条件は、ムラサキナツフジ原料から有効成分を抽出できるものであれば特に制限されない。具体的には、抽出温度は、好ましくは40~200℃、より好ましくは60~150℃である。また、抽出時間は、好ましくは30分~6時間、より好ましくは1~4時間である。このような条件であれば、ムラサキナツフジ原料から有効成分を効率よく抽出できる。
【0022】
上記抽出工程後は、ムラサキナツフジ原料および溶媒の混合液から、固形物(ムラサキナツフジ原料残渣)を除去して、抽出液を分離する。ここで、分離方法としては、特に制限されないが、濾過、遠心分離などが挙げられる。さらに、この抽出液は、そのまま使用してもよいが、必要であれば、希釈液による希釈形態、濃縮によるエキス、ペースト若しくは固体形態、凍結による凍結物形態、凍結乾燥による乾燥粉末物形態など、様々な形態(抽出物)に変換してもよい。ここで、変換方法は、単独で適用してもあるいは2種以上を組み合わせて適用してもよい。好ましくは、抽出液を適当な濃度になるまで濃縮(例えば、減圧濃縮)する方法が好ましく使用される。
【0023】
抽出液または抽出物をさらに精製してもよい。ここで、精製方法としては、特に制限されず、公知の精製方法が使用できる。具体的には、塩化セチルピリジニウムなどの4級アンモニウム塩を添加して沈殿物を得、この沈殿物を適当な溶媒(例えば、水、アルコール)で洗浄する方法、陰イオン交換イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性反応によるクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーやレクチンクロマトグラフィーなどを用いたクロマトグラフィーを用いる方法、再結晶法などが挙げられる。
【0024】
上記で得られた本発明に係るムラサキナツフジ抽出物は、グルコシルトランスフェラーゼ阻害活性を有する。したがって、本発明に係るムラサキナツフジ抽出物は、グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤に好適に使用できる。
【0025】
本発明に係るムラサキナツフジ抽出物は、グルコシルトランスフェラーゼの活性を阻害することにより、プラークの形成を抑制することできる。よって、本発明に係る阻害剤は、う蝕(虫歯)、口臭、虫歯などの予防などに有効である。
【0026】
本発明に係る阻害剤は、所望の効果を発揮するのに十分な量(すなわち、有効量)のムラサキナツフジ抽出物を含む。本形態において、有効量とは、グルコシルトランスフェラーゼの活性を阻害するという効果を発揮するうえで少なくとも必要とされる有効成分(すなわち、ムラサキナツフジ抽出物)の量を意味する。
【0027】
本発明に係る阻害剤は、ムラサキナツフジ抽出物のみからなる剤として調製されてもよく、製剤化のために許容されうる添加剤を併用して、常法に従い、製剤として調製されてもよい。本発明に係る阻害剤は、例えば経口投与する製剤または口腔内に適用する製剤である。製剤化のために許容されうる添加剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤、結合剤、増粘剤、分散剤、懸濁化剤、崩壊剤、制菌剤、界面活性剤などを挙げることができる。
【0028】
剤形は、特に制限されず、適宜設定することができる。経口投与する製剤としては、カプセル剤、経口液剤、シロップ剤、顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、経口ゼリー剤などが挙げられる。口腔内に適用する製剤としては、ガム剤、舌下錠、トローチ剤、ドロップ剤、バッカル錠、付着錠などの口腔用錠剤、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤、含嗽剤などが挙げられる。
【0029】
本発明に係る阻害剤を使用する対象は、特に制限されないが、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、サル、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン等の霊長類、ならびにマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ラクダ、ヤギなどの非ヒト哺乳動物双方を包含する。一実施形態では、対象は、ヒトである。また、他の実施形態では、対象は、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタなどであり、より好ましくはウサギ、イヌ、ネコ等のペット動物である。
【0030】
(口腔用組成物)
本発明の一形態は、上述のグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤を含む、口腔用組成物(本明細書中、単に「本発明に係る組成物」とも称する)である。
【0031】
本発明に係る口腔用組成物は、抗う蝕用として好適である。上述のとおり、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)などの細菌は、スクロースからGTaseを介してグルカンを生成する。これらの細菌は、生成したグルカンによって、歯の表面に付着してプラークを形成する。このプラークは、う蝕の要因となることが知られている。本発明に係るムラサキナツフジ抽出物は、う蝕の原因菌が産生するGTaseの活性を阻害することができる。したがって、本発明に係るグルコシルトランスフェラーゼを有効成分として含む口腔用組成物は、抗う蝕用として好適である。
【0032】
本発明に係る口腔用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、口腔用として従来使用される成分を含むことができる。このような成分としては、例えばリン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、アルミノシリケート、無水ケイ酸、レジンなどの研磨剤;長鎖アルキル硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウリルジエタノールアマイド、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤;カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸塩、カラゲナン、アラビアガム、ポリビニルアルコールなどの粘結剤;ポリエチレングリコール、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコールなどの粘稠剤;サッカリン、ステビオサイド類、グリチルリチン酸、ソーマチン等の甘味剤;デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなどの防腐剤;メントール、カルボン、オイゲノール、アネトール、ハッカ油、スペアミント油、ペパーミント油、ユーカリ油、ジンジャー油、アニスなど等の香料;色素;pH調整剤等が挙げられる。これらの成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整することができる。
【0033】
口腔用組成物の形態としては、上述の口腔内に適用する製剤に加えて、粉歯磨剤、練歯磨剤、液状歯磨剤、潤製歯磨剤、液体歯磨剤などの歯磨剤、洗口液(マウスウォッシュ)、水ハミガキ、口中清涼剤、うがい用錠剤、軟膏状製剤、クリーム状製剤、貼付剤などが挙げられる。また、口腔用組成物は、後述の飲食品組成物の形態であってもよい。
【0034】
口腔用組成物における有効成分であるグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤の配合割合は、特に限定されない。口腔用組成物は、有効量のムラサキナツフジ抽出物を含むように本発明に係る阻害剤を適切な量で含むことが好ましい。本形態において、「有効量」とは、グルコシルトランスフェラーゼ活性の阻害といった所望の効果を発揮するうえで少なくとも必要とされる阻害剤の有効成分(すなわち、ムラサキナツフジ抽出物)の量を意味する。前記配合割合は、口腔用組成物全体に対して、本発明に係る阻害剤が例えば0.001~50質量%である。
【0035】
(飲食品組成物)
本発明の一形態は、本発明に係る阻害剤または本発明に係る組成物を含む、グルコシルトランスフェラーゼ阻害用飲食品組成物(本明細書中、単に「本発明に係る飲食品」とも称する)である。
【0036】
本発明に係る飲食品は、本発明に係る阻害剤または本発明に係る組成物の有効成分、すなわち有効量のムラサキナツフジ抽出物を含むように阻害剤を適切な量で含むことが好ましい。本実施形態において、「有効量」とは、個々の飲食品を通常喫食される量摂取した結果、有効成分としての効果を発揮しうるような量で有効成分を含有することを意味する。
【0037】
本発明に係る飲食品は、本発明に係る阻害剤または本発明に係る組成物に安定剤等の慣用の添加成分を加えて飲食品として調製したもの、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類等を、それらにさらに配合して調製したもの、液状、半液体状もしくは固体状にしたもの、ペースト状にしたもの、または、一般の飲食品へ阻害剤を添加したものであってもよい。
【0038】
本発明において、「飲食品」は、医薬以外のものであって、哺乳動物などが経口摂取可能な形態のものであれば特に制限はなく、その形態も液状物(溶液、懸濁液、乳濁液など)、半液体状物、粉末、または固体成形物のいずれのものであってもよい。このため飲食品は、例えば飲料の形態であってもよく、また、サプリメントのような栄養補助食品の錠剤形態であってもよい。
【0039】
飲食品として具体的には、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品などの即席食品類;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料などの飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、唐揚げ粉、パン粉などの小麦粉製品;飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子などの菓子類;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類などの調味料;加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズなどの油脂類;乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類などの乳製品;魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品などの水産加工品;畜肉ハム・ソーセージなどの畜産加工品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアルなどの農産加工品;冷凍食品;栄養食品などが挙げられる。
【0040】
本発明において「飲食品」には、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、疾病リスク低減表示が付された食品、または、病者用食品のような分類のものも包含される。さらに「飲食品」という用語は、ヒト以外の哺乳動物を対象として使用される場合には、飼料を含む意味で用いられうる。
【0041】
本発明に係る飲食品においては、上述した有効成分に加えて、他の機能を有する成分をさらに添加してもよい。また例えば、日常生活で摂取する食品、健康食品、機能性食品、サプリメント(例えば、カルシウム、マグネシウム等のミネラル類、ビタミンK等のビタミン類を1種以上含有する食品)に本発明の有効成分を配合することにより、本発明による効果に加えて、他の成分に基づく機能を併せ持つ飲食品を提供することができる。
【0042】
本発明に係る飲食品における阻害剤の配合割合は、特に限定されるものではないが、飲食品全体に対して、本発明に係る阻害剤または本発明に係る組成物が例えば0.001~50質量%である。
【実施例0043】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0044】
<ムラサキナツフジエキスの調製>
乾燥したムラサキナツフジ(茎)を、ブレンダーで1~5mm程度に裁断し、裁断したムラサキナツフジ1gに対して70w/v%エタノール水溶液を30mL加え、95℃で90分間還流して抽出した。その後、抽出液を濾過して、固形物を取り除き、減圧濃縮することでムラサキナツフジ抽出物を得た。得られた抽出物をDMSOに溶解してムラサキナツフジエキスを調製した。
【0045】
<グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害活性試験>
(実施例1)
下記表1の組成となるように、各成分を蒸留水に溶解して、基質溶液100mLを調製した。基質溶液のpHは、6N NaOHを用いて6.0に調整した。
【0046】
【0047】
ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)から抽出したGTase(100U/mg、GTaseは8,000rpmで遠心分離して回収した菌体を8M尿素液により抽出し、その抽出液を12,000rpmで遠心分離し、上清を10mM PBS溶液にて透析して回収した)を酵素溶液とした。
【0048】
ムラサキナツフジエキス(サンプル溶液)150μL、蒸留水2150μLおよび酵素溶液100μLを混合した後、基質溶液600μLを添加し、よく混和して試験液を調製した。
【0049】
試験液を37℃で6時間静置して反応させた。分光光度計(島津製作所社製)により550nmにおける濁度を測定した。
【0050】
GTaseの阻害率は、以下の式により求めた:
阻害率(%)={(ODC-ODS)/(ODC)}×100
ODC:ネガティブコントロール溶液の吸光度(OD550)
ODS:サンプル溶液の吸光度(OD550)。
【0051】
ネガティブコントロール溶液として、ムラサキナツフジエキスの代わりに蒸留水をサンプル溶液として使用した。
【0052】
結果を表2に示す。
【0053】
(比較例1~3)
ムラサキナツフジエキスの代わりに、花椒エキス、緑茶エキスまたはクロルヘキシジン(ポジティブコントロール)をサンプル溶液として使用したこと以外は、実施例1と同様にして阻害率を求めた(花椒エキス:株式会社常盤植物化学研究所より入手、緑茶エキス:松浦薬業株式会社より入手、クロルヘキシジン:富士フイルム和光純薬株式会社より入手)。
【0054】
結果を表2に示す。
【0055】
【0056】
表2に示すように、ムラサキナツフジエキスが高いGTase阻害活性を有することが分かる。