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特開2022-154611運転支援装置、運転支援方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154611
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221005BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20221005BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20221005BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W50/14
B60W30/09
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057729
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】相村 誠
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BA60
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE05
3D241CE08
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC18Z
3D241DC30Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC54Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC15
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】運転支援の遅れを抑制することができる運転支援装置、運転支援方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】運転支援装置は、レーダ装置またはLIDARの少なくとも一方及び光学手段を含み、自車両の前方の障害物を検出する検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の前方の障害物を認識する認識部と、前記検出手段により検出された前記障害物との衝突可能性が所定値以上である場合に、警報制御及び走行制御のうち少なくともいずれか一方を実行する支援実行部と、を備え、前記支援実行部は、前記自車両と前記自車両に対する対向車との間で前記障害物が検出された場合に、前記自車両と前記対向車との間で前記障害物が検出されていない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置またはLIDARの少なくとも一方及び光学手段を含み、自車両の前方の障害物を検出する検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の前方の障害物を認識する認識部と、
前記検出手段により検出された前記障害物との衝突可能性が所定値以上である場合に、警報制御及び走行制御のうち少なくともいずれか一方を実行する支援実行部と、を備え、
前記支援実行部は、前記自車両と前記自車両に対する対向車との間で前記障害物が検出された場合に、前記自車両と前記対向車との間で前記障害物が検出されていない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、
運転支援装置。
【請求項2】
前記支援実行部は、更に、前記自車両が前照灯を点灯させている場合または前記自車両の周囲の照度が所定照度未満である場合の少なくとも一方を満たす場合に、前記自車両の周囲の照度が所定照度以上である場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記支援実行部は、更に、前記検出手段が送信した送信波が前記対向車に反射した反射波の反射強度が、前記送信波が前記障害物に反射した反射波の反射強度よりも高い場合に、前記対向車に反射した反射波の反射強度が前記障害物に反射した反射波の反射強度以下である場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、
請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記支援実行部は、更に、前記検出手段によりマイクロドップラー信号が検出された場合に、前記マイクロドップラー信号が検出されない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記支援実行部は、更に、前記自車両及び前記対向車のそれぞれの前照灯が点灯している場合に、前記自車両及び前記対向車のそれぞれの前照灯が点灯していない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
運転支援装置のコンピュータが、
レーダ装置またはLIDARの少なくとも一方及び光学手段を含み、自車両の前方の障害物を検出する検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の前方の障害物を認識し、
前記検出手段により検出された前記障害物との衝突可能性が所定値以上である場合に、警報制御及び走行制御のうち少なくともいずれか一方を実行し、かつ、
前記コンピュータが、
前記自車両と前記自車両に対する対向車との間で前記障害物が検出された場合に、前記自車両と前記対向車との間で前記障害物が検出されていない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、
運転支援方法。
【請求項7】
運転支援装置のコンピュータに、
レーダ装置またはLIDARの少なくとも一方及び光学手段を含み、自車両の前方の障害物を検出する検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の前方の障害物を認識させ、
前記検出手段により検出された前記障害物との衝突可能性が所定値以上である場合に、警報制御及び走行制御のうち少なくともいずれか一方を実行させ、かつ、
前記コンピュータに、
前記自車両と前記自車両に対する対向車との間で前記障害物が検出された場合に、前記自車両と前記対向車との間で前記障害物が検出されていない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くさせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ及びレーダ装置により得られる情報に基づいて、車両の周囲における歩行者を検出し、歩行者との接触を回避するため、車両のブレーキ制御をする技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/126012号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラとレーダ装置を用いて歩行者を検出する場合において、夜間に自車両と対向車との間に存在する歩行者を検出する状況がある。この状況下では、対向車のヘッドライドによる光の影響を受けて、カメラによって撮像した映像に基づく歩行者の認識が遅れ、ブレーキ制御などの運転支援が遅れることがある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、運転支援の遅れを抑制することができる運転支援装置、運転支援方法、及びプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る運転支援装置、運転支援方法、及びプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る運転支援装置は、レーダ装置またはLIDARの少なくとも一方及び光学手段を含み、自車両の前方の障害物を検出する検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の前方の障害物を認識する認識部と、前記検出手段により検出された前記障害物との衝突可能性が所定値以上である場合に、警報制御及び走行制御のうち少なくともいずれか一方を実行する支援実行部と、を備え、前記支援実行部は、前記自車両と前記自車両に対する対向車との間で前記障害物が検出された場合に、前記自車両と前記対向車との間で前記障害物が検出されていない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、運転支援装置である。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記支援実行部は、更に、前記自車両が前照灯を点灯させている場合または前記自車両の周囲の照度が所定照度未満である場合の少なくとも一方を満たす場合に、前記自車両の周囲の照度が所定照度以上である場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、するものである。
【0008】
(3):上記(1)または(2)の態様において、前記支援実行部は、更に、前記検出手段が送信した送信波が前記対向車に反射した反射波の反射強度が、前記送信波が前記障害物に反射した反射波の反射強度よりも高い場合に、前記対向車に反射した反射波の反射強度が前記障害物に反射した反射波の反射強度以下である場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、するものである。
【0009】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記支援実行部は、更に、前記検出手段によりマイクロドップラー信号が検出された場合に、前記マイクロドップラー信号が検出されない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、するものである。
【0010】
(5):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記支援実行部は、更に、前記自車両及び前記対向車のそれぞれの前照灯が点灯している場合に、前記自車両及び前記対向車のそれぞれの前照灯が点灯していない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、するものである。
【0011】
(6):この発明の一態様に係る運転支援方法は、運転支援装置のコンピュータが、レーダ装置またはLIDARの少なくとも一方及び光学手段を含み、自車両の前方の障害物を検出する検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の前方の障害物を認識し、かつ、前記検出手段により検出された前記障害物との衝突可能性が所定値以上である場合に、警報制御及び走行制御のうち少なくともいずれか一方を実行し、前記コンピュータが、前記自車両と前記自車両に対する対向車との間で前記障害物が検出された場合に、前記自車両と前記対向車との間で前記障害物が検出されていない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、運転支援方法である。
【0012】
(7):この発明の一態様に係るプログラムは、運転支援装置のコンピュータに、レーダ装置またはLIDARの少なくとも一方及び光学手段を含み、自車両の前方の障害物を検出する検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の前方の障害物を認識させ、前記検出手段により検出された前記障害物との衝突可能性が所定値以上である場合に、警報制御及び走行制御のうち少なくともいずれか一方を実行させ、かつ、前記コンピュータに、前記自車両と前記自車両に対する対向車との間で前記障害物が検出された場合に、前記自車両と前記対向車との間で前記障害物が検出されていない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くさせる、プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
(1)~(7)によれば、対向車と自車両の間における物体などの障害物の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る運転支援装置を利用した車両システム1の構成図である。
図2】運転支援装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図3】自車両M1と対向車M2と横断物体Pの位置関係の一例を示す図である。
図4図3の状況で自車両M1から見た対向車M2及び横断物体Pを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0016】
実施形態の運転支援装置について説明する。図1は、実施形態に係る運転支援装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。以下の説明において、車両システム1が搭載される車両を自車両M1という。
【0017】
車両システム1は、例えば、外界センサ10と、物体認識装置16と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、運転操作子80と、運転支援装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0018】
外界センサ10は、自車両M1の外界の情報を取得する。外界センサ10は、カメラ11と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14とを備える。カメラ11は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ11は、自車両M1の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ11は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ11は、例えば、周期的に繰り返し自車両M1の周辺を撮像する。カメラ11は、ステレオカメラであってもよい。カメラ11は、光学手段の一例である。
【0019】
レーダ装置12は、自車両M1の周辺にミリ波などの電波を放射(送信)すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両M1の任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12が送信する電波は、送信波の一例である。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0020】
LIDAR14は、自車両M1の周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両M1の任意の箇所に取り付けられる。
【0021】
HMI30は、自車両M1の乗員に対して各種情報を提示する警報装置(報知装置)である。また、HMI130は、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0022】
車両センサ40は、運転支援等に利用する自車両M1の走行状態に関する情報を検出するセンサである。車両センサ40は、自車両M1の速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両M1の向きを検出する方位センサ、自車両M1の周囲の明るさを検出する照度センサ等を含む。
【0023】
運転操作子80は、自車両M1を運転するためにドライバが操作する操作子である。運転操作子80は、例えば、ドライバが着座する運転席の近傍に設けられる。運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティック、前照灯スイッチその他の操作子を含む。
【0024】
運転支援装置100は、認識部120と、支援実行部140とを備える。認識部120及び支援実行部140は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0025】
認識部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現される。認識部120は、対向車認識部122と、物体認識部124とを備える。対向車認識部122は、レーダ装置12が放射した電波が、自車両M1に対する対向車に反射した反射強度等に基づいて、自車両に対向する対向車を認識する。物体認識部124は、レーダ装置12が放射した電波が物体に反射した反射強度等に基づいて、自車両の前方を含む周囲における物体を認識する。物体は、障害物の一例である。
【0026】
対向車認識部122は、例えば、ディープラーニング等による対向車の認識と、パターンマッチングによる対向車の認識とを並行して実行し、双方の認識結果を総合的に評価することにより対向車を認識する。また、対向車認識部122は、例えば、ディープラーニング等による対向車の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。対向車認識部122は、対向車が前照灯を点灯させているか否かを認識するようにしてもよい。
【0027】
物体認識部124は、例えば、対向車認識部122における車両を物体に代えたディープラーニングやパターンマッチング等によって、横断物体を認識する。物体認識部124は、例えば、道路を横断する物体を横断物体として認識する。物体認識部124は、さらに、対向車認識部122が対向車を認識したときに、対向車と自車両M1との間における横断物体を認識する。物体は、歩行者を含む。物体は、移動しない物でもよい。
【0028】
物体認識部124は、歩行する者以外の者、例えば、自転車やキックボードに搭乗する者を歩行者と認識してもよい。物体認識部124は、人以外の動物などを歩行者と認識してもよい。物体認識部124は、道路を横断する物体以外、例えば自車両M1に近づいたり、自車両M1から遠ざかったりする物体を認識してもよい。なお、認識部120は、AIによる画像認識と、予め与えられたモデルによる画像認識との一方を行ってもよい。
【0029】
支援実行部140は、判定部142と、警報制御部144と、走行制御部146とを備える。判定部142は、認識部120により認識された横断物体と自車両M1との距離を算出する。判定部142は、算出した横断物体と自車両M1の距離に基づいて、横断物体と自車両M1との衝突可能性を算出する。
【0030】
判定部142は、レーダ装置12が放射した電波が対向車に反射した反射強度(以下、対向車反射強度)が、横断物体に反射した反射強度(以下、物体反射強度)よりも大きいか否かを判定する。判定部142は、物体認識部124が横断物体を認識する際に利用した反射波がレーダ装置12により検出された際に、レーダ装置12がマイクロドップラー信号を検出したか否かを判定する。マイクロドップラー信号は、被測定物である横断物体の移動速度に比例した周波数の信号であるドップラー信号のうち、周波数が所定値よりも長い信号である。
【0031】
警報制御部144は、乗員に向けて警報を行う警報制御により運転支援を行う。警報制御は、例えば、前方衝突予測(FCW)である。警報制御部144は、判定部142により算出された衝突可能性が第1所定値以上である場合に、自車両M1の乗員への警報を行うようHMI30を制御する。警報制御部144は、例えば、自車両M1の前方に横断物体が存在し、横断物体と衝突する可能性がある場合に、HMI30を警報制御して、自車両M1の乗員に対して、横断物体と衝突する可能性がある旨の警報を行う。
【0032】
警報制御部144では、認識部120が横断物体を認識してから警報を行うまでの時間(Time To Collision:以下、TTC)を複数段階、例えば3段階に設定可能である。TTCは、最も時間が短い第1段階、次に時間が短い第2段階、最も時間が長い第3段階のいずれかの時間に設定される。乗員は、例えばTTC段階設定スイッチを操作することにより、自らの好みに応じて警報制御部144におけるTTCを設定可能である。
【0033】
走行制御部146は、自車両M1の走行制御を行うことで運転支援を行う。走行制御とは、例えば、自車両M1の速度又は操舵の一方又は両方を制御することである。走行制御は、例えば、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)である。走行制御部146は、認識部120の認識結果や車両センサ40の検出結果に基づいて、ブレーキ装置210を制御する。
【0034】
例えば、走行制御部146は、例えば、判定部142により算出された衝突可能性が第2所定値以上である場合に、ブレーキ装置210を制御する。走行制御部146は、例えば、自車両M1の前方に横断物体が存在する場合に、自車両M1と横断物体との接触を避けるように自車両M1を走行制御する。第2所定値は、第1所定値よりも大きい値である。第2所定値は、第1所定値と同一の数値でもよい。
【0035】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、走行制御部146から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0036】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、走行制御部146から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。
【0037】
ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、走行制御部146から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0038】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、走行制御部146から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0039】
次に、運転支援装置100における処理について説明する。図2は、運転支援装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。まず、運転支援装置100は、支援実行部140において、自車両M1が前照灯を点灯させているか、あるいは照度センサにより検出される自車両M1の周囲の照度が所定照度未満であるかのいずれかを満たしているか否かを判定する(ステップS101)。運転支援装置100は、ステップS101の判定により、実質的に自車両M1の周囲が暗所であるか否かを判定する。
【0040】
自車両M1が前照灯を点灯させているか、あるいは照度センサにより検出される自車両M1の周囲の照度が所定照度未満であるかのいずれも満たしていないと判定した場合、運転支援装置100は、図2に示す処理を終了する。自車両M1が前照灯を点灯させているか、あるいは照度センサにより検出される自車両M1の周囲の照度が所定照度未満であると判定した場合、認識部120は、対向車認識部122において、対向車を認識したか否かを判定する(ステップS103)。
【0041】
対向車を認識していないと対向車認識部122が判定した場合、運転支援装置100は、図2に示す処理を終了する。対向車認識部122が対向車を認識したと判定した場合、認識部120は、物体認識部124において、横断物体を認識したか否かを判定する(ステップS105)。横断物体を認識していないと物体認識部124が判定した場合、運転支援装置100は、図2に示す処理を終了する。
【0042】
横断物体を認識したと物体認識部124が判定した場合、判定部142は、対向車反射強度が物体反射強度よりも高いか否かを判定する(ステップS107)。対向車反射強度が物体反射強度よりも高くないと判定部142が判定した場合、運転支援装置100は、図2に示す処理を終了する。
【0043】
対向車反射強度が物体反射強度よりも高いと判定部142が判定した場合、判定部142は、レーダ装置12によりマイクロドップラー信号が検出されたか否かを判定する(ステップS109)。レーダ装置12によりマイクロドップラー信号が検出されていないと判定部142が判定した場合、運転支援装置100は、図2に示す処理を終了する。
【0044】
レーダ装置12によりマイクロドップラー信号が検出されたと判定した場合、警報制御部144は、HMI30に警報させる制御の開始タイミングを早くする(ステップS111)。警報に開始タイミングを早くするため、警報制御部144は、設定されていたTTCの設定段階を1段階高くする。例えば、TTCの設定段階が第2段階に設定されている場合には、TTCの設定段階を第1段階に上げる。
【0045】
このため、運転支援装置100は、自車両M1の周囲の照度が所定照度未満である場合に、自車両M1の周囲の照度が所定照度以上である場合よりも警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする。さらに、運転支援装置100は、対向車反射強度が横断物体反射強度よりも高い場合に、対向車反射強度が横断物体反射強度以下である場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする。さらに、運転支援装置100は、レーダ装置12によりマイクロドップラー信号が検出された場合に、レーダ装置12によりマイクロドップラー信号が検出されていない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする。こうして、運転支援装置100は、図2に示す処理を終了する。
【0046】
図3は、自車両M1と対向車M2と横断物体Pの位置関係の一例を示す図、図4は、図3の状況で自車両M1から見た対向車M2及び横断物体Pを示す図である。例えば、自車両M1の前方に横断物体Pが存在する場合、運転支援装置100は、自車両M1と横断物体Pの衝突可能性を算出し、衝突可能性に応じて警報制御や走行制御をする。
【0047】
ここで、横断物体Pが対向車M2の前を移動、例えば横断している場合には、自車両M1の前照灯の光と対向車M2の前照灯の光が交錯し、図4の領域Xに示されるように、横断物体Pが見えにくくなるいわゆる蒸発現象が生じることがある。蒸発現象が生じた場合には、認識部120における横断物体Pの認識が遅れ、その分支援実行部140における警報や運転支援が遅れることが考えられる。
【0048】
この点、実施形態の運転支援装置100は、自車両M1と対向車M2との間で横断物体Pが検出された場合に、自車両M1と対向車M2との間で横断物体Pが検出されていない場合よりも警報制御部144による制御の開始する開始タイミングを早くする。このため、横断物体Pなどの障害物の認識が遅れる状況であっても、運転支援の遅れを抑制することができる。
【0049】
上記の実施形態では、運転支援装置100は、判定部142により算出された衝突可能性が第1所定値以上である場合に、警報制御の開始タイミングを早くし、第2所定値以上である場合に走行制御の開始タイミングを早くする。これに対して、警報制御の開始タイミングのみを早くするようにしてもよいし、走行制御の開始タイミングのみを早くするようにしてもよい。
【0050】
上記の実施形態では、横断物体が認識された場合に運転支援の開始タイミングを早くするが、横断物体以外の物体が認識された場合に運転支援の開始タイミングを早くしてもよい。上記の実施形態では、自車両M1の周囲が暗所である場合に運転支援の開始タイミングを早くするが、自車両M1の周囲が暗所であるか否かにかかわらず運転支援の開始タイミングを早くしてもよい。
【0051】
さらに、対向車反射強度が物体反射強度よりも大きくない場合、レーダ装置12がマイクロドップラー信号を受信していない場合に、運転支援の開始タイミングを早くしてもよい。あるいは、自車両M1と対向車M2の両方の前照灯が点灯している場合に、運転支援の開始タイミングを早くしてもよい。
【0052】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
レーダ装置またはLIDARの少なくとも一方及び光学手段を含み、自車両の前方の障害物を検出する検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の前方の障害物を認識し、
前記検出手段により検出された前記障害物との衝突可能性が所定値以上である場合に、警報制御及び走行制御のうち少なくともいずれか一方を実行し、かつ、
前記自車両と前記自車両に対する対向車との間で前記障害物が検出された場合に、前記自車両と前記対向車との間で前記障害物が検出されていない場合よりも前記警報制御及び前記走行制御のうち少なくともいずれか一方を開始する開始タイミングを早くする、
運転支援装置。
【0053】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…車両システム
10…外界センサ
11…カメラ
12…レーダ装置
16…物体認識装置
40…車両センサ
80…運転操作子
100…運転支援装置
120…認識部
122…対向車認識部
124…物体認識部
140…支援実行部
142…判定部
144…警報制御部
146…走行制御部
200…走行駆動力出力装置
210…ブレーキ装置
220…ステアリング装置
M1…自車両
M2…対向車
P…横断物体
図1
図2
図3
図4