(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154618
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/09 20120101AFI20221005BHJP
B60W 30/14 20060101ALI20221005BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20221005BHJP
G08G 1/16 20060101ALN20221005BHJP
【FI】
B60W30/09
B60W30/14
B60T7/12 C
B60T7/12 F
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057739
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】鞍田 靖宏
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241BA33
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD12
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB32Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D246EA02
3D246EA05
3D246GB27
3D246GB34
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246HA51A
3D246HA64A
3D246HA93A
3D246HB12A
3D246JA03
3D246JB02
3D246JB05
3D246JB53
3D246JB56
5H181AA01
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】制動性能が低下した場合でも、適切に制動制御することができる運転支援装置、運転支援方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】制動制御を実行する制動制御部と、前記制動制御部の第1制動制御量を算出する第1算出部と、設定基準に基づいて、前記第1制動制御量に基づく前記制動制御の実行頻度よりも低い実行頻度で実行される前記制動制御の第2制動制御量を算出する第2算出部と、前記第1制動制御量に基づく推定制動挙動と、前記第1制動制御量に基づく実制動挙動の相対関係に基づいて、前記設定基準を更新する更新部と、を備える、運転支援装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動制御を実行する制動制御部と、
前記制動制御部の第1制動制御量を算出する第1算出部と、
設定基準に基づいて、前記第1制動制御量に基づく前記制動制御の実行頻度よりも低い実行頻度で実行される前記制動制御の第2制動制御量を算出する第2算出部と、
前記第1制動制御量に基づく推定制動挙動と、前記第1制動制御量に基づく実制動挙動の相対関係に基づいて、前記設定基準を更新する更新部と、を備える、
運転支援装置。
【請求項2】
前記第1算出部は、設定車速に応じた車速制御を実行する際の前記第1制動制御量を算出し、
前記第2算出部は、緊急制動制御を実行する際の前記第2制動制御量を算出する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記設定基準は、前記緊急制動制御を実行する際の車速及び減速度に応じた制動制御量を含む制動マップである、
請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記更新部は、前記推定制動挙動と前記実制動挙動の複数の相対関係に基づいて、前記設定基準を更新する、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記複数の相対関係のデータのうち、対象データが、他のデータとの差が所定の閾値を超えるデータである場合に、前記対象データを前記複数の相対関係のデータから除外する、
請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
運転支援装置のコンピュータが、
制動制御の第1制動制御量を算出し、
設定基準に基づいて、前記第1制動制御量に基づく前記制動制御の実行頻度よりも低い実行頻度で実行される前記制動制御の第2制動制御量を算出し、
前記第1制動制御量に基づく推定制動挙動と、前記第1制動制御量に基づく実制動挙動の相対関係に基づいて、前記設定基準を更新し、
前記制動制御を実行する、
運転支援方法。
【請求項7】
運転支援装置のコンピュータに、
制動制御の第1制動制御量を算出させ、
設定基準に基づいて、前記第1制動制御量に基づく前記制動制御の実行頻度よりも低い実行頻度で実行される前記制動制御の第2制動制御量を算出させ、
前記第1制動制御量に基づく推定制動挙動と、前記第1制動制御量に基づく実制動挙動の相対関係に基づいて、前記設定基準を更新させ、
前記制動制御を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を制動制御するにあたり、目標減速度を算出し、フィードフォワード制御を行って車両を減速させ、先行車両との車間距離を調整する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両を制動制御する技術としては、上記の車間距離を調整するための制御のほか、例えば、緊急的に車両を制動する技術がある。緊急的に車両を制動する技術は、緊急時にしか実行されず、その実行頻度が低かった。このため、例えば制動装置が劣化し、例えばブレーキパッドが摩耗して制動性能が低下していたとしても、緊急的に車両を制動する技術では、制動性能の低下に応じた制御をできないおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、制動性能が低下した場合でも、適切に制動制御することができる運転支援装置、運転支援方法、及びプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る運転支援装置、運転支援方法、及びプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る運転支援装置は、制動制御を実行する制動制御部と、前記制動制御部の第1制動制御量を算出する第1算出部と、設定基準に基づいて、前記第1制動制御量に基づく前記制動制御の実行頻度よりも低い実行頻度で実行される前記制動制御の第2制動制御量を算出する第2算出部と、前記第1制動制御量に基づく推定制動挙動と、前記第1制動制御量に基づく実制動挙動の相対関係に基づいて、前記設定基準を更新する更新部と、を備える、運転支援装置である。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記第1算出部は、設定車速に応じた車速制御を実行する際の前記第1制動制御量を算出し、前記第2算出部は、緊急制動制御を実行する際の前記第2制動制御量を算出する、ものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記設定基準は、前記緊急制動制御を実行する際の車速及び減速度に応じた制動制御量を含む制動マップである、ものである。
【0009】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記更新部は、前記推定制動挙動と前記実制動挙動の複数の相対関係に基づいて、前記設定基準を更新する、ものである。
【0010】
(5):上記(4)の態様において、前記複数の相対関係のデータのうち、対象データが、他のデータとの差が所定の閾値を超えるデータである場合に、前記対象データを前記複数の相対関係のデータから除外する、ものである。
【0011】
(6):この発明の一態様に係る運転支援方法は、運転支援装置のコンピュータが、制動制御の第1制動制御量を算出し、設定基準に基づいて、前記第1制動制御量に基づく前記制動制御の実行頻度よりも低い実行頻度で実行される前記制動制御の第2制動制御量を算出し、前記第1制動制御量に基づく推定制動挙動と、前記第1制動制御量に基づく実制動挙動の相対関係に基づいて、前記設定基準を更新し、前記制動制御を実行する、運転支援方法である。
【0012】
(7):この発明の一態様に係るプログラムは、運転支援装置のコンピュータに、制動制御の第1制動制御量を算出させ、設定基準に基づいて、前記第1制動制御量に基づく前記制動制御の実行頻度よりも低い実行頻度で実行される前記制動制御の第2制動制御量を算出させ、前記第1制動制御量に基づく推定制動挙動と、前記第1制動制御量に基づく実制動挙動の相対関係に基づいて、前記設定基準を更新させ、前記制動制御を実行させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
(1)~(7)の態様によれば、制動性能が低下した場合でも、適切に制動制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る運転支援装置100の構成図である。
【
図2】緊急制動マップ152の内容の一例を示す図である。
【
図3】運転支援装置100における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】更新後の緊急制動マップ152の内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の運転支援装置、運転支援方法、及びプログラムの実施形態について説明する。
【0016】
図1は、実施形態に係る運転支援装置100の構成図である。運転支援装置100が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0017】
運転支援装置100は、車両に対する制動制御として、クルーズ制御(Adaptive Cruise Control:ACC)及び衝突軽減ブレーキシステム(Collision Mitigation Brake System:CMBS)などの緊急制動制御を実行可能である。クルーズ制御は、例えば、車両の前方を走行する先行車両に追従して走行するための制御である。クルーズ制御では、車両と先行車両の車間距離などに基づいて設定車速を設定したフィードバック制御により、車両が設定車速で走行するように車両を加速したり減速したりして車間距離を維持するように走行駆動力制御装置やブレーキ装置が制御される。先行車両がない場合には、クルーズ制御では、予め設定された設定車速で車両が走行するように車両が加速されたり減速されたりする。クルーズ制御は、設定車速に応じた車速制御の一例である。
【0018】
緊急制動制御は、例えば、走行する車両が歩行者などの障害物との衝突を避けるための制御である。緊急制動制御では、例えば、衝突回避動作を開始してから車両が障害物に衝突するまでの衝突余裕時間(Time To Collision;TTC)を設定するなどしたフィードフォワード制御により、車両が障害物と衝突しないようにブレーキ装置が制御されたり操舵輪の舵角が制御されたりする。
【0019】
運転支援装置100には、例えば、加速度センサ20と、車輪速センサ30と、距離センサ40と、入力インターフェース50と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置300と、の間で電気信号を入出力可能である。加速度センサ20は、車両の加速度を検出する。加速度センサ20は、検出した加速度を示す電気信号を運転支援装置100に出力する。
【0020】
車輪速センサ30は、車両に搭載された車輪の車輪速を検出する。車輪速センサ30は、検出した車輪速を示す電気信号を運転支援装置100に出力する。距離センサ40は、車両の周辺の物体、例えば車両の前方を走行する先行車両と車両の車間距離を検出する。距離センサ40は、検出した車間距離を示す電気信号を運転支援装置100に出力する。
【0021】
入力インターフェース50は、例えば、乗員の手が届く位置に設けられる。入力インターフェース50は、乗員が操作可能である。入力インターフェース50は、乗員の操作に応じた情報、例えば、クルーズ制御を実行するか否かの情報、及びクルーズ制御を実行する際の設定車速の情報を示す電気信号を運転支援装置100に出力する。
【0022】
運転支援装置100は、例えば、減速度設定部110と、減速トルク算出部120と、制動制御部130と、記憶部150と、を備える。減速度設定部110、減速トルク算出部120、及び制動制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。記憶部150は、上記の記憶装置により実現される。
【0023】
記憶部150は、例えば、緊急制動マップ152を記憶する。
図2は、緊急制動マップ152の内容の一例を示す図である。緊急制動マップ152は、緊急制動制御に利用されるマップである。緊急制動マップ152は、緊急制動制御を実行する際の車速及び減速度に応じて定められたブレーキ装置300に出力される要求トルクを含む。
【0024】
緊急制動マップ152に記憶される要求トルクは、例えば車速ごとに、「A」、「B」、「C」の順で設定され、枝番として付された「1」、「2」、「3」の順で1段階ずつ大きくなっている。このため、
図2に示される要求トルクのうち、「A-1」で示される要求トルクが最も大きく、「C-3」で示される要求トルクが最も小さい。記憶部150は、さらに、図示しないクルーズ制御制動マップも備えている。クルーズ制御制動マップは、クルーズ制御を実行する際に、複数種類の車両及び減速度に応じた要求トルクを含むマップである。
【0025】
減速度設定部110は、車両を制動制御する際の減速度を設定する。減速度設定部110は、例えば、クルーズ制御部112と、緊急減速制御部114と、を備える。クルーズ制御部112は、入力インターフェース50により、クルーズ制御を実行する情報を示す電気信号を出力された場合に、クルーズ制御を実行する際の減速度を設定する。
【0026】
クルーズ制御部112は、例えば、距離センサ40により出力される電気信号に基づく車間距離及びその時間変化等に基づいて、クルーズ制御のうちの制動制御(以下、クルーズ制動制御)を行う際の車両の減速度を設定する。クルーズ制御部112は、設定した減速度に応じた減速度要求を生成し、生成した減速度要求(以下、第1減速度要求)を減速トルク算出部120に出力する。運転支援装置100は、クルーズ制御のうちの駆動制御を行う際の車両の加速度を算出し、算出した加速度に応じた加速度要求を走行駆動力出力装置200に出力する。
【0027】
緊急減速制御部114は、緊急制動の際の車両の減速度を設定する。緊急減速制御部114は、加速度センサ20及び車輪速センサ30のそれぞれにより出力される電気信号に基づく加速度及び車速等に基づいて、減速度を設定する。緊急減速制御部114は、設定した減速度に応じた減速度要求を生成し、生成した減速度要求(以下、第2減速度要求)を減速トルク算出部120に出力する。
【0028】
第2減速度要求に応じた緊急制動制御は、衝突回避などの緊急時に実行される。一方、第1減速度要求に応じたクルーズ制動制御は、先行車両に追従して走行するなどの通常時に実行される。このため、第2減速度要求に応じた緊急制動制御は、第1減速度要求に応じたクルーズ制動制御よりも実行頻度が低い制動制御である。
【0029】
減速トルク算出部120は、減速度設定部110により出力された減速度要求に応じた減速トルクを算出する。減速トルク算出部120は、例えば、トルク算出部122と、マップ更新部124と、を備える。トルク算出部122は、減速度設定部110により出力される減速度要求に基づいて、制動制御部130に対するトルク要求を生成する。
【0030】
トルク算出部122は、減速度設定部110のクルーズ制御部112により第1減速度要求を出力された場合には、クルーズ制御制動マップを参照して、第1減速度要求に応じた要求トルクを算出する。トルク算出部122は、減速度設定部110の緊急減速制御部114により第2減速度要求を出力された場合には、出力された第2減速度要求と車輪速センサ30により出力された電気信号に基づく車速を、
図2に示す緊急制動マップ152に参照して、要求トルクを算出する。緊急制動マップ152は、制動マップ及び設定基準の一例である。
【0031】
トルク算出部122は、第1制動制御量に基づくクルーズ制動制御の実行頻度よりも低い実行頻度で実行される緊急制動制御の第2制動制御量を算出する。クルーズ制御部112により出力された減速度要求に応じた減速トルクは、クルーズ制御を実行する際の減速トルクである。緊急減速制御部114により出力された減速度要求に応じた減速トルクは、緊急制動制御を実行する際の減速トルクである。
【0032】
トルク算出部122は、算出した要求トルクに応じたトルク要求を生成し、生成したトルク要求を制動制御部130に出力する。第1減速度要求に応じた要求トルクは、第1制動制御量の一例である。第2減速度要求に応じた要求トルクは、第2制動制御量の一例である。クルーズ制御部112及びトルク算出部122は、第1算出部の一例である。緊急減速制御部114及びトルク算出部122は、第2算出部の一例である。トルク算出部122は、第1減速度要求に応じた要求トルクを算出する第1トルク算出部と、第2減速度要求に応じた要求トルクを算出する第2トルク算出部を備えてもよい。
【0033】
マップ更新部124は、トルク算出部122が第1減速度要求に基づく要求トルクに応じたトルク要求を出力した場合に、トルク要求に応じた車両の車速及び減速度の推測値(以下、それぞれ車速推測値及び減速度推測値という)を算出する。マップ更新部124は、加速度センサ20及び車輪速センサ30により出力される電気信号に基づく車両の車速及び減速度(以下、それぞれ車速計測値及び減速度計測値という)を取得する。第1減速度要求に基づくトルク要求に応じた車両の車速及び減速度の推測値は、第1制動制御量に基づく推定制動挙動の一例である。第1減速度要求に基づくトルク要求に応じた車両の車速及び減速度は、第1制動制御量に基づく実制動挙動の一例である。
【0034】
マップ更新部124は、算出した車速推測値及び減速度推測値と、取得した車速計測値及び減速度計測値を比較する。マップ更新部124は、車速推測値と車速計測値とを比較して得られた値(以下、車速真値)及び減速度推測値と減速度計測値とを比較して得られた値(以下、減速度真値)を推定する。マップ更新部124は、推定した真値及び減速度真値のデータを記憶部150に格納する。記憶部150には、多数の車速真値及び減速度真値(以下、真値と総称することがある)のデータが蓄積される。真値は、推定制動挙動と実制動挙動の相対関係の一例である。相対関係は、真値以外の関係でもよい。例えば、相対関係は、推測値と実測値との関係でもよい。
【0035】
マップ更新部124は、推定した真値の確からしさを検証(判定)し、真値が確からしい場合には、真値を確定する。マップ更新部124は、真値が確からしくない場合には、緊急制動マップ152を更新(変更)する。マップ更新部124は、例えば、推定した真値と、記憶部150に蓄積された複数の真値に基づいて、緊急制動マップ152を更新する。マップ更新部124は、更新部の一例である。
【0036】
マップ更新部124は、例えば、蓄積された複数の車速真値及び減速度真値における計時変化の変化割合に対する推定された車速真値及び減速度真値の変化割合がそれぞれに設定された基準値以下である場合に、推定した真値が確からしいと判定する。マップ更新部124は、蓄積された車速真値または減速度真値の一方または両方の計時変化の変化割合に対する推定された車速真値及び減速度真値の変化割合が基準値を超える場合に、真値が確からしくないと判定する。真値が確からしいか否かを判定する基準は、これ以外の基準でもよい。
【0037】
マップ更新部124は、推測値と実測値を比較して得られた車速真値及び減速度真値のデータが、複数の車速真値及び減速度真値のデータのうちの他のデータとの差が所定の閾値を超える場合に、そのデータを複数の車速真値及び減速度真値のデータから除外する。推測値と実測値を比較して得られた車速真値及び減速度真値のデータは、対象データの一例である。
【0038】
所定の閾値は、任意に設定することができる。例えば、大雨である場合や雪道を走行する場合など、摩擦力が低い路面を車両が走行する場合に得られる真値のデータは、通常の路面を走行する場合に得られる真値のデータをかけ離れることが多い。このため、例えば、摩擦力が低い路面を走行した場合の真値のデータを除外する程度の大きさに閾値を設定すればよい。
【0039】
制動制御部130は、減速トルク算出部120により出力されるトルク要求に基づいて、ブレーキ装置300に制御要求を出力する。制御要求は、例えば、ブレーキ装置300が油圧ブレーキを備える場合には、液圧(油圧)要求である。制御要求は、例えば、ブレーキ装置300が電動ブレーキを備える場合には、電流要求である。
【0040】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、運転支援装置100により出力される加速度要求、あるいはアクセルペダルやブレーキペダルなどの運転操作子の操作に基づいて送信される情報に従って作動して車両を駆動させる。
【0041】
ブレーキ装置300は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、制動制御部130により出力される制御要求、あるいは上記の運転操作子の操作に基づいて送信される情報に従って作動して車両を制動させる。ブレーキ装置300は、例えば、第1減速度要求に基づくクルーズ制動制御、及び第2減速度要求に基づく緊急制動制御によって作動して車両を制動させる。
【0042】
次に、運転支援装置100における処理について説明する。
図3は、運転支援装置100における処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、運転支援装置100が緊急制動マップ152を更新する手順について説明する。運転支援装置100は、まず、入力インターフェース50により出力される電気信号に基づいて、クルーズ制御を実行するか否かを判定する(ステップS101)。クルーズ制御を実行しないと判定した場合、運転支援装置100は、
図3に示す処理を終了する。
【0043】
運転支援装置100がクルーズ制御を実行すると判定した場合、クルーズ制御部112は、距離センサ40により出力される電気信号に基づく車両と先行車両の車間距離及びその時間変化に基づいて、要求減速度を設定する。クルーズ制御部112は、設定した要求減速度に応じた第1減速度要求を減速トルク算出部120に出力する(ステップS103)。
【0044】
続いて、減速トルク算出部120は、クルーズ制御部112により出力された要求減速度と加速度センサ20により出力された電気信号に基づく要求トルクを算出する。クルーズ制御部112が、算出した要求トルクを制動制御部130に送信することにより、運転支援装置100は、車両のクルーズ制御を実行する。
【0045】
運転支援装置100がクルーズ制御を実行しているときに、減速トルク算出部120は、マップ更新部124において、クルーズ制御を実行することによる車両の車速推測値及び減速度推測値を算出する(ステップS105)。マップ更新部124は、例えば、クルーズ制御部112により出力される第1減速度要求に基づくトルク要求に応じて車両の車速推測値及び減速度推測値を算出する。
【0046】
続いて、マップ更新部124は、加速度センサ20及び車輪速センサ30によりそれぞれ出力される電気信号に基づく車両の車速計測値及び減速度計測値を取得する(ステップS107)。続いて、マップ更新部124は、車速推測値及び減速度推測値と、車速計測値及び減速度計測値とをそれぞれ比較し、車速真値及び減速度真値を推定する(ステップS109)。
【0047】
続いて、マップ更新部124は、推定した車速真値または減速度真値が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS111)。車速真値または減速度真値のいずれかが閾値を超えていると判定した場合、マップ更新部124は、推定した真値のデータを記憶部150に記憶するデータから除外する(ステップS113)。車速真値または減速度真値のいずれかが閾値を超えている真値のデータを排除することにより、例えば、摩擦力が低い路面を走行した場合などのデータを除外することができる。
【0048】
続いて、マップ更新部124は、車速真値または減速度真値のいずれもが閾値を超えていないと判定した場合、真値のデータを記憶部150に格納する。続いて、マップ更新部124は、推定した真値を確定するか否かを判定する(ステップS115)。マップ更新部124は、推定した真値が確からしいか否かに基づいて、真値を確定するか否かを判定し、推定した真値が確からしい場合に真値を確定し、推定した真値が確からしくない場合に真値を確定しない。
【0049】
推定した真値を確定しないとマップ更新部124が判定した場合、運転支援装置100は、
図3に示す処理を終了する。推定した真値を確定すると判定した場合、マップ更新部124は、緊急制動マップ152を更新する(ステップS117)。この場合、マップ更新部124は、例えば、更新前の緊急制動マップ152と比較して、要求トルクを枝番の段階で1段階大きく更新する。
【0050】
図4は、更新後の緊急制動マップ152の一例を示す図である。例えば、車速が60km/hであり、減速度が0.5m/s
2である場合には、要求トルクが「A-1」から「A-2」に更新される。
図4に示す緊急制動マップ152は、すべての車速及び減速度において要求トルクを更新しているが、車速及び減速度の一部について緊急制動マップ152を更新してもよい。マップ更新部124は、例えば、真値が確からしくないと判定された車速や減速度についての要求トルクを更新してもよい。こうして、運転支援装置100は、
図3に示す処理を終了する。
【0051】
実施形態の運転支援装置100は、クルーズ制御を実行した場合に得られる真値に基づいて、緊急制動マップ152を更新する。このため、実行頻度の低い緊急制動制御の際に使用する緊急制動マップ152を、緊急制動制御よりも実行頻度が高いクルーズ制御を実行した際に得られるデータを用いて更新する。したがって、例えばブレーキ装置300のブレーキパッドが摩耗するなどして制動性能が低下した場合でも、緊急制動制御についての制御量を大きくするなどの対応によって適切に制動制御することができる。また、摩耗したブレーキパッドを交換して制動性能が向上した場合でも、例えば制御量を小さくするなどして適切に制動制御することができる。
【0052】
また、上記の実施形態では、推定した真値に基づいて緊急制動マップ152を更新するが、クルーズ制御制動マップも併せて更新してもよい。上記の実施形態では、減速度設定部110、減速トルク算出部120、及び制動制御部130が運転支援装置100の内部にまとめて設けられているが、これらの要素が異なる装置に分散されていてもよい。
【0053】
例えば、減速度設定部110におけるクルーズ制御部112は、減速と加速の双方を行うクルーズ制御装置の一部に設けられていてもよい。また、減速トルク算出部120は、インテグレーテッド・マネジメント・ユニット(IMG)に設けられ、制動制御部130は、電動サーボブレーキシステム(ESB)やビークルスタビリティアシスト(VSA)に設けられていてもよい。
【0054】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
制動制御の第1制動制御量を算出し、
設定基準に基づいて、前記第1制動制御量に基づく前記制動制御の実行頻度よりも低い実行頻度で実行される前記制動制御の第2制動制御量を算出し、
前記第1制動制御量に基づく推定制動挙動と、前記第1制動制御量に基づく実制動挙動の相対関係に基づいて、前記設定基準を更新し、
前記制動制御を実行する、
ように構成されている、運転支援装置。
【0055】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0056】
20…加速度センサ
30…車輪速センサ
40…距離センサ
50…入力インターフェース
100…運転支援装置
110…減速度設定部
112…クルーズ制御部
114…緊急減速制御部
120…減速トルク算出部
122…トルク算出部
124…マップ更新部
130…制動制御部
150…記憶部
152…緊急制動マップ
200…走行駆動力出力装置
300…ブレーキ装置