(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154619
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】管状体の結束具及び魚介類養殖用の浮体
(51)【国際特許分類】
A01K 61/60 20170101AFI20221005BHJP
A01K 61/10 20170101ALI20221005BHJP
A01K 61/50 20170101ALI20221005BHJP
【FI】
A01K61/60 323
A01K61/10
A01K61/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057740
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
(71)【出願人】
【識別番号】000204608
【氏名又は名称】大下産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000175021
【氏名又は名称】三井化学産資株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】友國 慶子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 明弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】原 浩二
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104AA22
2B104CC02
(57)【要約】
【課題】浮体を構成する各管状体を簡単に、且つ、強固に連結して使用時に各管状体の位置関係のずれを発生させない結束具と、当該結束具を用いて各管状体を連結することにより形成された必要な浮力を有する浮体とをそれぞれ提供する。
【解決手段】魚介類養殖用の筏1は、複数の管状体2と、当該管状体2を径方向に所定の間隔をあけた状態で結束する結束具3とを備える。各管状体2と結束具3とは、それぞれ樹脂材で形成されるとともに、エレクトロフュージョン接合、或いは、ヒートフュージョン接合により互いに連結される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類養殖用の浮体を構成する複数の管状体を径方向に所定の間隔をあけた状態で結束する結束具であって、
前記結束具と前記各管状体とは、それぞれ樹脂材で形成されるとともに、エレクトロフュージョン接合、或いは、ヒートフュージョン接合により互いに連結されていることを特徴とする結束具。
【請求項2】
請求項1に記載の結束具において、
前記結束具には、前記管状体を連結する際、当該管状体を嵌合させる被嵌合部が設けられていることを特徴とする結束具。
【請求項3】
請求項2に記載の結束具において、
前記被嵌合部は、当該被嵌合部に嵌合した状態の前記管状体の径方向に所定の間隔をあけて複数並設されていることを特徴とする結束具。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の結束具において、
前記被嵌合部は、前記管状体を径方向に嵌合させる嵌合凹部であることを特徴とする結束具。
【請求項5】
請求項4に記載の結束具において、
前記結束具には、表面側と裏面側とに互いに反対側に開放する一対の前記嵌合凹部が少なくとも一組形成されていることを特徴とする結束具。
【請求項6】
請求項4に記載の結束具において、
前記結束具の表面には、当該結束具の表面側に開放する前記嵌合凹部が当該嵌合凹部に嵌合した状態の前記管状体の径方向で、且つ、嵌合方向と直交する方向に所定の間隔をあけて複数並設されていることを特徴とする結束具。
【請求項7】
請求項6に記載の結束具において、
前記結束具の裏面には、当該結束具の裏面側に開放する前記嵌合凹部が当該嵌合凹部にに嵌合した状態の前記管状体の径方向で、且つ、嵌合方向と直交する方向に所定の間隔をあけて複数並設されていることを特徴とする結束具。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の結束具において、
前記結束具の内部における前記管状体の連結位置に対応する領域には、エレクトロフュージョン接合用電熱線が埋設されていることを特徴とする結束具。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1つに記載の結束具において、
前記結束具における前記管状体の連結位置に対応する領域に敷設可能に設けられ、エレクトロフュージョン接合用電熱線が埋設された樹脂製シートを備えていることを特徴とする結束具。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の結束具において、
前記結束具には、当該結束具を除く他の前記結束具を接続可能に構成されていることを特徴とする結束具。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の結束具と、
当該結束具により結束された複数の前記管状体とを備えていることを特徴とする魚介類養殖用の浮体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海面、湖面、池面等の水面に浮設される魚介類養殖用の浮体と、当該浮体を構成する複数の管状体を結束する結束具とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、養殖漁業では、魚介類を飼育するために、筏や生け簀といった浮体を水面に浮かせることが一般的に行われる。例えば、特許文献1に開示されている魚介類養殖用の浮体は、複数の金属製又は樹脂製の棒状体を有する本体フレームと、合成樹脂材からなる発泡体で構成された複数の浮子とを備え、本体フレームは、平面視で矩形枠状となるように並べた各棒状体を各浮子で連結することにより組み立てられている。
【0003】
ところで、特許文献1の如き合成樹脂材からなる発泡体で構成された浮子は、台風等により発生する波浪の衝撃や生物の浸食作用等に対する耐性が低いので、長期間水面に浮設されると、壊れてバラバラになったり、或いは、破損して本体フレームから離脱して水面を浮遊するゴミとなってしまい、海や湖等が汚染されるだけでなく、生態系にも影響を及ぼすという問題が生じてしまう。
【0004】
これを回避するために、浮体の本体フレームを複数の管状体により構成することで軽量にするとともに、本体フレーム全体の体積を大きくすることにより、特許文献1の如き浮子を用いずに浮体に必要な浮力を持たせる構造にすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願昭54-091677号(実開昭56-8172号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、管状体自体を大型化することで本体フレーム全体の体積を大きくしようとすると、管状体の持ち運びが煩雑になるとともに設置作業性が悪化し、さらには、管状体の剛性が高くなるので、当該管状体を曲げ加工した後、その形状を維持するように施工するのが困難になってしまうという問題がある。
【0007】
一方、複数の管状体を結束することで本体フレーム全体の体積を大きくしようとする場合、管状体自体を大型化して本体フレーム全体の体積を大きくする場合に比べて、運搬作業、設置作業、及び、曲げ加工においてそれぞれ容易に行えるようにはなるものの、各管状体同士を結束する必要があり、従来より行われてきたワイヤ等による縛り上げや、複数のブラケットと締付部材とにより連結する方法では、作業が煩雑であるだけでなく、使用時に不意に力が加わると結束部分において各管状体同士の位置関係がずれてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、浮体を構成する各管状体を簡単に、且つ、強固に連結して使用時に各管状体の位置関係のずれを発生させない結束具と、当該結束具を用いて各管状体を連結することにより形成された必要な浮力を有する浮体とをそれぞれ提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、エレクトロフュージョン接合、或いは、ヒートフュージョン接合を用いて各管状体と結束具とを連結するようにしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、魚介類養殖用の浮体を構成する複数の管状体を径方向に所定の間隔をあけた状態で結束する結束具において、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明では、前記結束具と前記各管状体とは、それぞれ樹脂材で形成されるとともに、エレクトロフュージョン接合、或いは、ヒートフュージョン接合により互いに連結されていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、前記結束具には、前記管状体を連結する際、当該管状体を嵌合させる被嵌合部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、前記被嵌合部は、当該被嵌合部に嵌合した状態の前記管状体の径方向に所定の間隔をあけて複数並設されていることを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、第2又は第3の発明において、前記被嵌合部は、前記管状体を径方向に嵌合させる嵌合凹部であることを特徴とする。
【0015】
第5の発明では、第4の発明において、前記結束具には、表面側と裏面側とに互いに反対側に開放する一対の前記嵌合凹部が少なくとも一組形成されていることを特徴とする。
【0016】
第6の発明では、第4の発明において、前記結束具の表面には、当該結束具の表面側に開放する前記嵌合凹部が当該嵌合凹部に嵌合した状態の前記管状体の径方向で、且つ、嵌合方向と直交する方向に所定の間隔をあけて複数並設されていることを特徴とする。
【0017】
第7の発明では、第6の発明において、前記結束具の裏面には、当該結束具の裏面側に開放する前記嵌合凹部が当該嵌合凹部に嵌合した状態の前記管状体の径方向で、且つ、嵌合方向と直交する方向に所定の間隔をあけて複数並設されていることを特徴とする。
【0018】
第8の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、前記結束具の内部における前記管状体の連結位置に対応する領域には、エレクトロフュージョン接合用電熱線が埋設されていることを特徴とする。
【0019】
第9の発明では、第1から第7のいずれか1つの発明において、前記結束具における前記管状体の連結位置に対応する領域に敷設可能に設けられ、エレクトロフュージョン接合用電熱線が埋設された樹脂製シートを備えていることを特徴とする。
【0020】
第10の発明では、第1から第9のいずれか1つの発明において、前記結束具には、当該結束具を除く他の前記結束具を接続可能に構成されていることを特徴とする。
【0021】
第11の発明では、魚介類養殖用の浮体が、第1から第10のいずれか1つの結束具と、当該結束具により結束された複数の前記管状体とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明では、結束具と各管状体とを互いに接触させて接触部分に電流を流すか、或いは、結束具の熱した部分と各管状体の熱した部分とを互いに接触させる作業だけで結束具と各管状体とが一体になるので、結束具と各管状体とを簡単に連結することができる。また、結束具と各管状体とが互いに融着により連結されるので、結束具と各管状体とが強固に固定されるようになり、不意に力が加わったとしても結束具によって各管状体の位置関係のずれを発生させないようにすることができる。
【0023】
第2の発明では、結束具と管状体とを連結する際、管状体が結束具の被嵌合部に嵌まった状態になるので、結束具に対する管状体の連結位置が正確に決まる。したがって、結束具に対して管状体を正確な位置に連結することができる。
【0024】
第3の発明では、結束具の各被嵌合部にそれぞれ各管状体を嵌めると、各管状体が所定の間隔をあけて正確な位置に複数並ぶ状態になる。したがって、結束具に対して複数の管状体をばらつき無く組み立てることができる。
【0025】
第4の発明では、管状体を被嵌合部に嵌合させる作業が簡単になるので、組立作業にかかる時間を短縮することができる。
【0026】
第5の発明では、複数の管状体を連結する際、結束具が複数の管状体の内側に位置するようになるので、結束具の占有体積を小さくすることができるようになり、結束具の材料費を低く抑えることができる。
【0027】
第6の発明では、結束具の各嵌合凹部にそれぞれ各管状体を嵌めると、各管状体が所定の間隔をあけて綺麗に並ぶ状態になる。したがって、結束具に対して各管状体を正確な位置で、且つ、綺麗に並設する状態で連結させることができる。
【0028】
第7の発明では、各結束具の各嵌合凹部にそれぞれ各管状体を嵌めると、各管状体が所定の間隔をあけて綺麗に2段に並ぶ状態になる。したがって、1つの結束具に対して各管状体を正確な位置で、且つ、2段に並ぶような状態で連結させることができる。
【0029】
第8の発明では、電熱線が結束具に埋設されているので、電熱線が結束具に埋設されていないものに比べて結束具の運搬作業や設置作業が簡単になり、作業者における作業負荷を減らすことができる。
【0030】
第9の発明では、結束具に連結する管状体の数だけ樹脂製シートを用意すれば良いので、予め全ての嵌合凹部に対応する位置に電熱線が埋設されている第5の発明に比べて低コストな結束具にすることができる。
【0031】
第10の発明では、複数の結束具を連結することができるようになるので、必要に応じて結束具を増やして並設する各管状体の数を増やすことができる。
【0032】
第11の発明では、浮体を構成する各管状体が結束具によって簡単に連結可能になるので、必要な浮力が得られる数の管状体からなる浮体を簡単に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態1に係る魚介類繁殖用の筏を示す平面図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る結束具の斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る
図4相当図である。
【
図8】本発明の実施形態3に係る
図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0035】
《本発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る魚介類養殖用の筏1(浮体)を示す。該筏1は、養殖漁業時において水面に浮設させて使用されるものであり、平面視で中心線C1を中心とした円環状をなすとともに同心円状に配置された複数の管状体2と、該各管状体2を当該管状体2の径方向に所定の間隔をあけた状態で結束する複数の結束具3とを備えている。
【0036】
管状体2は、中心線C1を中心とした輪の大きさの異なるものが3種類あり、筏1は、輪の大きさの異なる3種類の管状体2をそれぞれ2つずつ備えている。
【0037】
管状体2は、平面視で円環状となるようにポリエチレン管を曲げ加工することにより得られる管本体部2aと、該管本体部2aの端部同士を繋ぐソケット継手である継手部2bとを備え、該継手部2bには、エレクトロフュージョン接合(以下、EF接合と呼ぶ)用の電熱線(図示せず)が埋設されている。
【0038】
そして、管状体2は、曲げ加工により得られた円環状をなす管本体部2aの各端部を継手部2bの2つの差込口にそれぞれ差し込むとともに図示しない電熱線に電流を流して発熱させることにより、管本体部2aと継手部2bとを加熱溶融により互いに融着させて一体化させることにより得られるようになっている。
【0039】
結束具3は、
図1に示すように、管状体2の中心線C1を中心とした周方向において等間隔に離間した8個所の位置P1~P8に配設されて各管状体2を結束しており、各位置P1~P8においては、
図3に示すように、それぞれ2つの結束具3が各管状体2を結束している。
【0040】
つまり、本発明の実施形態1における筏1は、16個の結束具3を用いて各管状体2が結束され、中心線C1を中心とする径方向に並設された3つの管状体2が上下2段に位置する構成になっている。
【0041】
結束具3は、
図5及び
図6に示すように、管状体2と同じ材質であるポリエチレン材を用いて形成されたものであり、細長い扁平な略直方体形状をなす結束具本体4と、平面視で正八角形状をなす3つの樹脂製シート5とを備えている。
【0042】
結束具本体4は、当該結束具本体4の長手方向に延びる略帯板状の表面部4aと、該表面部4aの長手方向両端から裏面側に互いに平行に突出する一対の側面部4bと、該両側面部4bの突出端を橋絡する帯板状の裏面部4cとを備えている。
【0043】
両側面部4bの間には、当該両側面部4bの間を等間隔に3つに仕切る一対の仕切壁部4dが設けられ、各仕切壁部4dは、表面部4aと裏面部4cとを橋絡している。
【0044】
表面部4aには、
図3及び
図4に示すように、管状体2を嵌合させる3つの嵌合凹部4e(被嵌合部)が設けられている。
【0045】
各嵌合凹部4eは、結束具本体4の長手方向と直交する側方から見て、表面部4aが裏面部4c側に弓形状に湾曲する形状をなすことで設けられていて、その湾曲面は、管状体2の外周面に対応する形状をなしている。
【0046】
すなわち、嵌合凹部4eには、管状体2を結束具3に連結する際、管状体2が当該管状体2の径方向に嵌合するようになっている。
【0047】
各嵌合凹部4eは、結束具本体4の長手方向に所定の間隔をあけて等間隔に設けられている。すなわち、嵌合凹部4eは、嵌合凹部4eに嵌合した状態の管状体2の径方向で、且つ、嵌合方向と直交する方向に所定の間隔をあけて3つ並設されている。
【0048】
実施形態1では、各位置P1~P8において、
図3に示すように、それぞれ2つの結束具3が裏面部4c同士を融着させることにより一体にされており、各結束具3の嵌合凹部4eは、互いに反対側に開放している。
【0049】
つまり、結束具3は、当該結束具3を除く他の結束具3を接続可能に構成されている。
【0050】
樹脂製シート5は、管状体2及び結束具3と同じ材質であるポリエチレン材を用いて形成されたものであり、中央に貫通孔5bが形成されている。
【0051】
樹脂製シート5の内部には、EF接合用の電熱線5aが貫通孔5b周りを渦巻き状に延びるよう埋設されている。
【0052】
電熱線5aの端部には、コントローラー6が接続され、該コントローラー6は、電熱線5aに電流を流して発熱させることができるようになっている。
【0053】
樹脂製シート5は、柔軟性を有する厚みで形成されており、結束具3における管状体2の連結位置に対応する領域、すなわち、各嵌合凹部4eの表面に沿うように敷設可能になっている。
【0054】
そして、結束具3の各嵌合凹部4eに樹脂製シート5をそれぞれセットした状態で各管状体2を嵌合させるとともに、コントローラー6により各樹脂製シート5に埋設された電熱線5aを発熱させて各管状体2及び結束具3の互いに対応する部分を融着させることにより、各管状体2と結束具3とを連結させて筏1を得るようになっている。
【0055】
次に、本発明の実施形態1の筏1の組立方法について詳述する。
【0056】
まず、6つのポリエチレン管、ポリエチレン材からなる6つのソケット継手及び16個の結束具3をそれぞれ用意する。尚、ポリエチレン管は、直線状をなすものでもよいし、或いは、コイル状に巻かれた状態で保管されたことで巻き癖が付いたものであってもよい。
【0057】
次に、作業者は、ポリエチレン管が円環状となるように曲げ加工してポリエチレン管の各端部を接近させ、それぞれソケット継手の各差込口に挿入する。そして、ソケット継手に埋設された図示しない電熱線に電流を流すことにより、ポリエチレン管とソケット継手とを加熱融着させて管本体部2aと継手部2bとからなる管状体2を得る。本発明の実施形態1では、中心線C1を中心とした輪の大きさの異なる3種類の管状体2を2つずつ作成する。
【0058】
次いで、
図4に示すように、結束具3を2つずつ用意し、各結束具3の各嵌合凹部4eが互いに反対側に向くように裏面部4c同士をEF接合により融着させて一体にし、計8個の結束具3の結合ユニットを作成する。
【0059】
さらに、
図4及び
図5に示すように、各結束具3の嵌合凹部4eに樹脂製シート5を敷設するとともに、EF接合により樹脂製シート5を嵌合凹部4eに取り付ける。
【0060】
しかる後、8個の結束具3の結合ユニットを環状に、且つ、等間隔に配置するとともに、各管状体2を各嵌合凹部4eに嵌合させる。そして、コントローラー6を起動させて各樹脂製シート5の電熱線5aを発熱させて各管状体2及び結束具3の互いに対応する部分を融着させることにより、各管状体2と結束具3とが連結された筏1を得る。
【0061】
以上より、本発明の実施形態1によると、筏1を構成する各管状体2が結束具3によって簡単に連結可能になるので、必要な浮力が得られる数の管状体2からなる筏1を簡単に作ることができる。
【0062】
また、各管状体2と結束具3とを互いに接触させて接触部分に電流を流す作業だけで各管状体2と結束具3とが一体になるので、各管状体2と結束具3を簡単に連結することができる。
【0063】
また、各管状体2と結束具3とが互いに融着により連結されるので、各管状体2と結束具3とが強固に固定されるようになり、不意に力が加わったとしても各結束具3によって各管状体2の位置関係のずれを発生させないようにすることができる。
【0064】
また、管状体2と結束具3とを連結する際、管状体2が結束具3の嵌合凹部4eに嵌まった状態になるので、結束具3に対する管状体2の連結位置が正確に決まる。したがって、結束具3に対して管状体2を正確な位置に連結することができる。
【0065】
また、結束具3の各嵌合凹部4eにそれぞれ各管状体2を嵌めると、各管状体2が所定の間隔をあけて正確な位置に複数並ぶ状態になる。したがって、結束具3に対して複数の管状体2をばらつき無く組み立てることができる。
【0066】
また、管状体2を径方向に移動させるだけで当該管状体2と嵌合凹部4eとを嵌合状態にすることができるので、管状体2を嵌合凹部4eに嵌合させる作業が簡単であり、組立作業にかかる時間を短縮することができる。
【0067】
また、各結束具3の各嵌合凹部4eにそれぞれ各管状体2を嵌めると、各管状体2が所定の間隔をあけて綺麗に並ぶ状態になる。したがって、結束具3に対して各管状体2を正確な位置で、且つ、綺麗に並設する状態で連結させることができる。
【0068】
また、管状体2と結束具3との間に樹脂製シート5を敷設するとともに、当該樹脂製シート5に埋設された電熱線5aを発熱させることにより、管状体2と結束具3とを一体にするようにしているので、結束具3に連結する管状体2の数だけ樹脂製シート5を用意すれば良くなり、予め全ての嵌合凹部4eに対応する数だけ樹脂製シート5を用意しておく必要がないので、部品コストを抑えた結束具3にすることができる。
【0069】
また、複数の結束具3を連結させることができるので、必要に応じて結束具3を増やして並設する各管状体2の数を増やすことができる。
【0070】
《発明の実施形態2》
図7は、本発明の実施形態2の結束具3を示す。この実施形態2では、結束具3の一部構造が実施形態1と異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0071】
実施形態2の結束具3における裏面部4cには、管状体2を嵌合させる3つの嵌合凹部4fが設けられている。
【0072】
各嵌合凹部4fは、結束具本体4の長手方向と直交する側方から見て、裏面部4cが表面部4a側に弓形状に湾曲する形状をなすことで設けられていて、その湾曲面は、管状体2の外周面に対応する形状をなしている。
【0073】
すなわち、嵌合凹部4fは、表面部4aに形成された嵌合凹部4fとは反対側に開放していて、嵌合凹部4fにおいて管状体2を結束具3に連結する際、嵌合凹部4fに管状体2が当該管状体2の径方向に嵌合するようになっている。
【0074】
裏面部4cに設けられた各嵌合凹部4fは、表面部4aに設けられた各嵌合凹部4eにそれぞれ対応する位置になっている。すなわち、嵌合凹部4fは、当該嵌合凹部4fに嵌合した状態の管状体2の径方向で、且つ、嵌合方向と直交する方向に所定の間隔をあけて3つ並設されている。
【0075】
つまり、実施形態2の結束具3には、表面側と裏面側とに互いに反対側に開放する一対の嵌合凹部4e及び嵌合凹部4fが三組形成されている。
【0076】
実施形態2の結束具3の内部における各嵌合凹部4e及び各嵌合凹部4fに対応する領域には、EF接合用の電熱線5aが埋設されていて、管状体2を結束具3に連結する際、各嵌合凹部4e及び各嵌合凹部4fに各管状体2を嵌合させた状態で電熱線5aを発熱させることにより、実施形態1の如き樹脂製シート5を用いることなく管状体2と結束具3とを互いに融着させることができるようになっている。
【0077】
以上より、本発明の実施形態2によると、結束具3の各嵌合凹部4e及び各嵌合凹部4fにそれぞれ各管状体2を嵌めると、各管状体2が所定の間隔をあけて綺麗に2段に並ぶ状態になる。したがって、1つの結束具3に対して各管状体2を正確な位置で、且つ、2段で並ぶような状態で連結させることができる。
【0078】
また、EF接合用の電熱線5aが結束具3に埋設されているので、電熱線5aが結束具3に埋設されていないものに比べて結束具3の運搬作業や設置作業が簡単になり、作業者における作業負荷を減らすことができる。
【0079】
また、複数の管状体2を連結する際、結束具3が複数の管状体2の内側に位置するようになるので、結束具3の占有体積を小さくすることができるようになり、結束具3の材料費を低く抑えることができる。
【0080】
《発明の実施形態3》
図8は、本発明の実施形態3の結束具3を示す。この実施形態3では、結束具3の一部構造が実施形態1と異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0081】
実施形態3の結束具本体4は、表面部4aと裏面部4cとが平板状をなしており、表面部4a、各側面部4b及び裏面部4cで囲われる空間S1には、管状体2を嵌挿可能な嵌合円筒部4g(被嵌合部)が設けられている。
【0082】
該嵌合円筒部4gは、筒中心線が空間S1の連通方向に延びるとともに、結束具本体4の長手方向に所定の間隔をあけて3つ並設されている。
【0083】
各嵌合円筒部4gの内部には、EF接合用の電熱線5aが埋設されていて、管状体2を結束具3に連結する際、各嵌合円筒部4gに各管状体2を嵌合させた状態で電熱線5aを発熱させることにより、管状体2と結束具3とを互いに融着させることができるようになっている。
【0084】
以上より、本発明の実施形態3によると、結束具3に管状体2を連結させる箇所が円筒状をなすとともに管状体2を嵌挿させるような構造であっても、実施形態1,2と同様を効果を得ることができる。
【0085】
尚、本発明の実施形態1~3では、各管状体2と結束具3との接合にEF接合を適用しているが、これに限らず、ヒートフュージョン接合(HF接合)を用いて各管状体2と結束具3とを連結するようにしてもよい。そうすると、結束具3の熱した部分と各管状体2の熱した部分とを互いに接触させる作業だけで各管状体2と結束具3とが一体になるので、各管状体2と結束具3とを簡単に連結することができる。
【0086】
また、本発明の実施形態1~3では、筏1の管状体2の数が6つであるが、これに限らず、筏1の管状体2の数は1~5つでも良いし、7つ以上であってもよい。
【0087】
また、本発明の実施形態1~3では、管状体2の8個所において結束具3を用いて各管状体2を結束しているが、各管状体2の位置関係がばらつかないのであれば、結束具3を用いて各管状体2を結束する個所の数はその他の数であっても構わない。
【0088】
また、本発明の実施形態1~3では、中心線C1を中心とした周方向に等間隔の位置において結束具3を用いて各管状体2を結束しているが、結束する位置は等間隔の位置でなくてもよい。
【0089】
また、本発明の実施形態1では、各結束具3に嵌合凹部4eをそれぞれ複数設けているが、それぞれ1つだけ設けるようにしてもよい。
【0090】
また、本発明の実施形態2では、結束具3の表面側と裏面側とに互いに反対側に開放する一対の嵌合凹部4e及び嵌合凹部4fが三組形成されているが、一組だけ形成されたものであってもよいし、四組以上形成されたものであってもよい。
【0091】
また、本発明の実施形態1,2では、結束具3の表面部4a又は裏面部4cに管状体2を連結しているが、側面部4bに管状体2を連結してもよい。
【0092】
また、本発明の実施形態1,3では、結束具3同士の接続をEF接合により行っているが、例えば、係合爪と係合孔とによる係合手段のようなもので接続するようにしてもよい。
【0093】
また、本発明の実施形態1,3では、2つの結束具3を互いに接続した後、各結束具3に各管状体2を連結して筏1を組み立てるようにしているが、各結束具3に各管状体2をそれぞれ連結した後、2つの結束具3を互いに接続して筏1を組み立てるようにしてもよい。
【0094】
尚、本発明の実施形態1~3の結束具3は、円環状をなす各管状体2の結束に適用されているが、例えば、直線状の管状体2が格子状に配置された筏やその他の生け簀等の浮体を作る際の連結にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、海面、湖面、池面等の水面に浮設される魚介類養殖用の浮体と、当該浮体を構成する複数の管状体を結束する結束具とに適している。
【符号の説明】
【0096】
1 筏(浮体)
2 管状体
3 結束具
4e 嵌合凹部(被嵌合部)
4f 嵌合凹部(被嵌合部)
4g 嵌合円筒部(被嵌合部)
5 樹脂製シート