(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154631
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】スクリーン印刷用インク組成物および印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/106 20140101AFI20221005BHJP
B41M 1/12 20060101ALI20221005BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C09D11/106
B41M1/12
B41M1/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057752
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大吉 浩平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 平
【テーマコード(参考)】
2H113
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113AA04
2H113BA10
2H113BB02
2H113DA22
2H113DA46
2H113DA57
2H113EA12
4J039AD01
4J039BA04
4J039BC02
4J039BC25
4J039BE25
4J039EA42
4J039GA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】厚みの厚い印刷物を形成した場合においても、印刷物に印刷不良や表面荒れを生じ難いスクリーン印刷用インク組成物を提供する。
【解決手段】(a)ゴム形成成分と、(b)架橋剤と、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒と、(d)主溶媒に溶解し前記ゴム形成成分には溶解しない貧溶媒とを含み、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が300~50000Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が50~1500Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が10~20であることを特徴とするスクリーン印刷用インク組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ゴム形成成分と、
(b)架橋剤と、
(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒と、
(d)主溶媒に溶解し前記ゴム形成成分には溶解しない貧溶媒と
を含み、
25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が300~50000Pa・s、
25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が50~1500Pa・s、
25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が10.0~20.0である
ことを特徴とするスクリーン印刷用インク組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリーン印刷用インク組成物をスクリーン印刷した後、硬化処理することにより、印刷物を形成することを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記印刷物がガスケットである請求項2に記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷用インク組成物および印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のセルの積層構造体からなる燃料電池においては、水素ガスや酸素ガス等をシールするために、燃料電池セルを構成するセパレータなどの基板の表面に、ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料からなる上面が平坦なガスケットを設けたものが知られている。
【0003】
上記ガスケットは、プレス成形法や射出成型法等によっても製造できるものの、タクトタイム等を考慮して、スクリーン印刷を用いた製造方法が提案されるようになっている(例えば、特許文献1(特開2008-34383号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ガスケットをスクリーン印刷によって形成する場合、以下の(1)~(3)のような手順で行うことになる。
(1)
図1に概略断面図で示すように、ステンレスメッシュ等からなるスクリーンS1の下部側に、ガスケットの平面形状に対応する所定パターンのペースト塗布用開口Oが形成されたマスクMを有するスクリーン版Sを配置し、係るスクリーン版Sの下部に、基板Bを位置決め当接する。
(2)スクリーン版Sの上部に供給したガスケット成形用の未架橋ゴム材料からなるペースト1を、スキージRの走行によってマスクMのペースト塗布用開口Oへ押し出して基板Bの表面に付着させた後、基板Bをスクリーン版Sから離間させ、
図2に対応する概略断面図で示すように、基板Bの表面に所定の印刷パターンでペースト塗布層Pを形成する。
(3)上記塗布層Pを熱などにより硬化処理させることによって、基板1上に、(塗布層Pに対応する形状を有する)ガスケットを一体成形する。
【0006】
ところで、上記ガスケットとしては、厚さ90μm~100μm程度以上の比較的厚みの厚いものも求められるようになっている。
【0007】
しかしながら、本発明者等が検討したところ、厚みの厚いガスケットを、比較的粘度の低いインク組成物(未架橋ゴム材料からなるペースト)を用いてスクリーン印刷により製造しようとした場合、インク組成物がスクリーン版に付着し易く、インク組成物が押し出され難くなって、印刷ダレ等の印刷不良が発生しやすくなる。
【0008】
そこで、スクリーン印刷用のインク組成物(未架橋ゴム材料からなるペースト)として、チキソトロピー性の高いインク組成物や、粘度の高いインク組成物を使用することが考えられたが、本発明者等が検討したところ、チキソトロピー性の高いインク組成物や、粘度の高いインク組成物を用いた場合には、得られるガスケットの表面にメッシュ痕(スクリーン痕)等の表面荒れを生じ易くなり、外観不良や性能不良を生じ易くなることが判明した。
【0009】
このような状況下、本発明は、厚みの厚い印刷物を形成した場合においても、印刷物に印刷不良や表面荒れを生じ難いスクリーン印刷用インク組成物および係るスクリーン印刷用インク組成物を用いた印刷物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討を行った結果、(a)ゴム形成成分と、(b)架橋剤と、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒と、(d)主溶媒に溶解し前記ゴム形成成分には溶解しない貧溶媒とを含み、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が300~50000Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が50~1500Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が10~20であるスクリーン印刷用インク組成物により上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)(a)ゴム形成成分と、
(b)架橋剤と、
(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒と、
(d)主溶媒に溶解し前記ゴム形成成分には溶解しない貧溶媒と
を含み、
25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が300~50000Pa・s、
25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が50~1500Pa・s、
25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が10.0~20.0である
ことを特徴とするスクリーン印刷用インク組成物、
(2)上記(1)に記載のスクリーン印刷用インク組成物をスクリーン印刷した後、硬化処理することにより、印刷物を形成することを特徴とする印刷物の製造方法、
(3)上記印刷物がガスケットである上記(2)に記載の印刷物の製造方法、
を提供するものである。
なお、以下、適宜、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒を「(c)主溶媒」、(d)主溶媒に溶解しゴム形成成分には溶解しない貧溶媒を「(d)貧溶媒」と、各々称するものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スクリーン印刷用インク組成物を構成する溶媒として、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒とともに、(d)主溶媒に溶解しゴム形成成分には溶解しない貧溶媒を採用することにより、インク組成物中におけるゴム形成成分の凝集性を向上させ、スクリーン版への付着性を低減しその押出性を向上させて、印刷不良を低減することができる。
また、本発明によれば、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られるスクリーン印刷用インク組成物の粘度(0.1/s)が300~50000Pa・sであることにより、印刷ダレを好適に抑制することができ、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られるスクリーン印刷用インク組成物の粘度(10/s)が50~1500Pa・sであることにより、印刷姓を好適に担保することができる。
さらに、本発明によれば、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られるスクリーン印刷用インク組成物の損失正接(0.1rad/s)が10.0~20.0であることにより、インク組成物のスクリーン版への付着性が低減されその押し出し性が向上することにより、印刷不良の発生を一層効果的に抑制することができる。
このため、本発明によれば、厚みの厚い印刷物を形成した場合においても、印刷物に印刷不良や表面荒れを生じ難いスクリーン印刷用インク組成物および係るスクリーン印刷用インク組成物を用いた印刷物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】スクリーン印刷による印刷方法を説明するための概略断面図である。
【
図2】スクリーン印刷により得られた印刷物について説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、
(a)ゴム形成成分と、
(b)架橋剤と、
(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒と、
(d)主溶媒に溶解し前記ゴム形成成分には溶解しない貧溶媒と
を含み、
25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が300~50000Pa・s、
25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が50~1500Pa・s、
25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が10~20である
ことを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(a)ゴム形成成分は、(a-1)ゴム成分のみ、または(a-2)ゴム成分および可塑剤の混合物により構成されるものを意味する。
【0016】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(a)ゴム形成成分を構成するゴム成分として、具体的には、シリコーンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、エチレン・プロピレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ポリイソブチレン、変成シリコーン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、フッ素ゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴムから選ばれる一種以上が好ましく、エチレン・プロピレン・ジエンゴムがより好ましい。
【0017】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(a)ゴム形成成分が、(a-2)ゴム成分および可塑剤の混合物からなる場合、可塑剤としては、ゴム形成成分のポリマー粘度を所望範囲に調整し得るものであれば特に制限されず、ゴム用の可塑剤または軟化剤として公知の物から適宜選択することができる。
ゴム形成成分を構成する可塑剤として、具体的には、例えばゴム成分がエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)である場合、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、トリメット酸エステル、ポリエステル、リノシール酸エステル、酢酸エステル、鉱物油等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0018】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(a)ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は、2000~50000Pa・sであることが好ましく、10000~45000Pa・sであることがより好ましく、10000~40000Pa・sであることがさらに好ましい。
【0019】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(a)ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)が上記範囲内にあることにより、スクリーン印刷時にインク組成物をスクリーン版から押し出した後、押し出し物を乾燥処理または架橋剤の加熱硬化処理したときに、押し出し物の粘度を所望範囲に容易に低減し、押し出し物のレベリング性(表面平滑性)を容易に向上させることができる。
【0020】
なお、本出願書類において、ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は、ポリマー形成成分を主溶媒に溶解させた後、60℃で12時間以上熱風乾燥させ完全に溶媒を除去した状態で、E型粘度計(Anton-paar社製レオメータMCR301)により、直径12mmのパラレルプレート(PP12)を用い、120℃、角周波数0.1ラジアン/秒間、ひずみ0.1%の条件下で測定して得られる値を意味する。
【0021】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、ゴム成分を、15.0~60.0質量%含むものであることが好ましく、20.0~50.0質量%含むものであることがより好ましく、28.0~40.0質量%含むものであることがさらに好ましい。
【0022】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物が、ゴム形成成分中に可塑剤を含むものである場合、本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、可塑剤を、1.0~20.0質量%含むものであることが好ましく、3.0~18.0質量%含むものであることがより好ましく、5.0~15.0質量%含むものであることがさらに好ましい。
【0023】
また、本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、(a)ゴム形成成分を、15.0~80.0質量%含むものであることが好ましく、30.0~80.0質量%含むものであることがより好ましく、35.0~65.0質量%含むものであることがさらに好ましく、40.0~60.0質量%含むものであることが一層好ましい。
【0024】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(b)架橋剤としては、上記(a)ゴム形成成分中のゴム成分を架橋し得るものであれば特に制限されず、公知の架橋剤から適宜選択することができ、熱架橋剤であることが好ましい。
【0025】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(b)架橋剤として、具体的には、硫黄、有機過酸化物、キノイド化合物、フェノール樹脂、アミン、金属酸化物、ポリオール化合物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0026】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、(b)架橋剤を、1.5~15.0質量%含むものであることが好ましく、2.0~10.0質量%含むものであることがより好ましく、3.0~8.0質量%含むものであることがさらに好ましい。
【0027】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物が、(b)架橋剤を上記範囲内で含むことにより、(a)ゴム形成成分中のゴム成分を好適に架橋することができる。
【0028】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒を含む。
【0029】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒としては、(c)ゴム形成成分に対して溶解性を示すものであれば特に制限されず、例えばゴム成分がエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)である場合、トルエン、ベンゼン、メシチレン、キシレン等の芳香族系炭化水素類や、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の脂肪族系炭化水素から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0030】
なお、本出願書類において、「ゴム形成成分を溶解させる」とは、シート状に成形した厚さ1mmのゴム形成成分を縦5mmmm×横5mmの正方形状に裁断し、得られた裁断物と主溶媒とを重量比で1:9の割合で投入し、撹拌機にて12時間攪拌した後、さらに12時間静置したときに、目視観察により溶け残りがないことを意味する。
【0031】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(d)主溶媒に溶解しゴム形成成分には溶解しない貧溶媒としては、(a)ゴム形成成分の種類に応じて適宜選択することができ、例えばゴム成分がエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)である場合、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートや、乳酸ブチル等のエステル系溶媒、エーテル系溶媒等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0032】
本出願書類において、「主溶媒に溶解する」とは、ガラス製容器内において、主溶媒と貧溶媒とを体積比で1:1の割合で混合し、12時間静置したときに、目視観察により乳化や分離が生じていないことを意味する。
【0033】
また、本出願書類において、「ゴム形成成分に溶解しない」とは、カーボンブラック等の有色のフィラーを10~50質量%含むゴム形成成分と貧溶媒とを重量比で1:9の割合で投入し、撹拌機にて12時間攪拌した後、さらに12時間静置したときに、目視観察により(フィラーにより着色された)ゴム形成成分が分散していないことを意味する。
【0034】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物が、(c)主溶媒とともに(d)貧溶媒を含むことにより、インク組成物中におけるゴム形成成分の凝集性を向上させ、インク組成物のスクリーン版への付着性を低減しその押し出し性を向上させて、印刷ダレの発生を効果的に抑制することができる。
【0035】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(c)主溶媒および(d)貧溶媒の沸点は、スクリーン印刷時に乾燥による連続印刷性への影響が小さく乾燥時の乾燥が困難でなければ特に制限されず、170~220℃であることが好ましく、185~220℃であることがより好ましく、200~220℃であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒と(d)主溶媒に溶解しゴム形成成分には溶解しない貧溶媒との含有比は、質量比で、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒:(d)主溶媒に溶解しゴム形成成分には溶解しない貧溶媒で表される比が、80:20~97:3 であることが好ましく、80:20~96:4であることがより好ましく、85:15~95:5であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒と(d)主溶媒に溶解しゴム形成成分には溶解しない貧溶媒との含有比が上記範囲内にあることにより、インク組成物中におけるゴム形成成分の凝集性を向上させ、インク組成物のスクリーン版への付着性を低減しその押し出し性を向上させて、印刷ダレの発生を効果的に抑制することができる。
【0038】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、(a)ゴム形成成分、(b)架橋剤、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒および(d)主溶媒に溶解しゴム形成成分には溶解しない貧溶媒の他に、例えば、フィラー、可塑剤、分散剤、架橋助剤、消泡剤、発泡剤等から選ばれる一種以上を含んでもよい。
【0039】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、(c)主溶媒と(d)貧溶媒とを、合計で、15.0~70.0質量%含むことが好ましく、20 .0~70.0質量%含むことが好ましく、35.0~ 65.0質量%含むことがより好ましく、40.0~60.0質量%含むことがさらに好ましい。
【0040】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が、300~50000Pa・sであり、300~10000Pa・sであることが好ましく、400~1000Pa・sであることがより好ましく、450~900Pa・sであることがさらに好ましい。
【0041】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物における、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が上記範囲内にあることにより、厚みの厚い印刷物を形成した場合においても、印刷ダレの発生を一層効果的に抑制することができる。
【0042】
なお、本出願書類において、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)は、E型粘度計(Anton-paar社製レオメータMCR301)を用い、25℃の温度下、剪断速度0.1/sの条件下で測定される粘度を意味する。
【0043】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が、50~1500Pa・sであり、100 ~800Pa・sであることが好ましく、100~500Pa・sであることがより好ましい。
【0044】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物における、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が上記範囲内にあることにより、印刷性を好適に担保しつつスクリーン印刷することができる。
【0045】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が、10.0~20.0であることが好ましく、10.0~17.0であることが好ましく、10.0~13.0であることがより好ましい。
【0046】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が、上記範囲内にあることにより、インク組成物のスクリーン版への付着性が低減されその押し出し性が向上することにより、印刷ダレの発生を効果的に抑制することができる。
【0047】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物において、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)は、(a)ゴム形成成分および(b)架橋剤に対する、(c)主溶媒および(d)貧溶媒の種類および配合割合を調整することにより、容易に制御することができる。
【0048】
なお、本出願書類において、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)は、スクリーン印刷用インク組成物を12時間以上攪拌し、不分散物や溶け残りがないことを目視により確認した後、真空脱泡を行って内部の気泡を取り除いた状態で、E型粘度計(Anton-paar社製レオメータMCR301)により、直径25mmのパラレルプレート(PP25)を用い、サンプル厚み1mm、25℃、角周波数0.1ラジアン/秒間、ひずみ0.1%の条件下で測定して得られる値を意味する。
【0049】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物を調製する方法は特に制限されない。
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、例えば、(a)ゴム形成成分と、(b)架橋剤と、さらに必要に応じその他の成分とを、各々所望量採取した上、インタミックス、ニーダ、バンバリーミキサ等の公知の混練機またはオープンロール等の公知の混練装置を用いて混練し、得られた混練物に対し、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒と、(d)主溶媒に溶解し上記ゴム形成成分には溶解しない貧溶媒をさらに加えて、さらに公知の攪拌機を用いて攪拌することによって調製することができる。
【0050】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物を用いてスクリーン印刷する方法は、以下に述べる本発明に係る印刷物の製造方法の説明で詳述するとおりである。
【0051】
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、スクリーン印刷により厚みの厚い印刷物を印刷する際に好適に使用することができる。
本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物は、例えば、スクリーン印刷によりガスケットを形成する際に好適に使用することができ、スクリーン印刷により燃料電池用ガスケットを形成する際により好適に使用することができる。
【0052】
本発明によれば、厚みの厚い印刷物を形成した場合においても、印刷物に印刷不良や表面荒れを生じ難いスクリーン印刷用インク組成物を提供することができる。
【0053】
次に、本発明に係る印刷物の製造方法について説明する。
本発明に係る印刷物の製造方法は、本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物をスクリーン印刷した後、硬化処理することにより、印刷物を形成することを特徴とするものである。
【0054】
本発明に係る印刷物の製造方法で用いる、本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物の詳細は、上述したとおりである。
【0055】
本発明に係る印刷物の製造方法は、例えば以下の(1)~(3)のような手順で実施することができる。
(1)
図1に概略断面図で示すように、ステンレスメッシュ等からなるスクリーンS1の下面側に、得ようとする印刷物の平面形状に対応する所定パターンのペースト塗布用開口Oが形成されたマスクMを有するスクリーン版Sを配置し、係るスクリーン版Sの下面に、基板Bを位置決め当接する。
(2)スクリーン版Sの上部に供給したペースト1(本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物)を、スキージRの走行によってマスクMのペースト塗布用開口Oへ押し出して基板Bの表面に付着させた後、基板Bをスクリーン版Sから離間させ、
図2に対応する概略断面図で示すように、基板Bの表面に所定の印刷パターンでペースト塗布層Pを形成する。
(3)上記塗布層Pを熱などにより硬化処理させることによって、基板1上に、目的とする印刷物を形成する。
【0056】
印刷物の厚みは、上記スクリーン版の厚みを調整することにより、容易に制御することができる。
本発明に係る製造方法で得られる印刷物の厚みは、90μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、100~150μmであることがさらに好ましく、100~120μmであることが一層好ましい。
【0057】
なお、本出願書類において、印刷物の厚みは、印刷物の断面を切り出し、マイクロスコープで8点測定したときの最大値を意味する。
本発明に係る印刷物の製造方法においては、本発明に係るスクリーン印刷用インク組成物を用いていることから、得られる印刷物の厚さが厚くても、印刷ダレ等の印刷不良や表面荒れの発生を抑制しつつ簡便に印刷物を形成することができる。
【0058】
本発明に係る印刷物の製造方法において、得られる印刷物としては、ガスケットを挙げることができ、ガスケットとしては、燃料電池用ガスケットを挙げることができる。
【0059】
本発明に係る製造方法で得られる印刷物が燃料電池用ガスケットである場合、印刷物を形成する上記基板としては、燃料電池セルを構成するセパレータ等を挙げることができる。
上記基板がセパレータである場合、セパレータとガスケットとの一体化物を容易に形成することができる。
【0060】
本発明によれば、得られる印刷物の厚さが厚くても、印刷ダレ等の印刷不良や表面荒れの発生を抑制しつつ簡便に印刷物を形成し得る印刷物の製造方法を提供することができる。
【0061】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。
【0062】
(実施例1)
表1に示すように、(a)ゴム形成成分として、エチレンプロピレンジエンゴム1(EPDM1)31.3重量部と、(b)架橋剤3.1重量部と、カーボンブラック12.5重量部とをオープンロールで混練りして混練物を作製し、得られた混練物に対し、(c)主溶剤であるドデカン47.7重量部および(d)貧溶媒であるジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)5.3重量部をさらに加えて撹拌機で攪拌することにより、スクリーン印刷用インク組成物を調製した。
上記ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は237000Pa・sであった。
また、得られたスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が10.6、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が886Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が584Pa・sであるものであった。
【0063】
得られたスクリーン印刷用インク組成物を用いて、実施例1と同様にして、以下の条件でスクリーン印刷を行い、厚さ102μmのガスケットを得た上で、スクリーン版への付着割合と得られた印刷物における表面荒れ個数を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
(スクリーン印刷方法)
スクリーン印刷用インク組成物を、スクリーン版(165メッシュ/インチ)上に供給し、スクレーパーでスクリーン版の開口部に充てんした後、スキージにて開口部に充てんされたインク組成物を基材に転写した。転写したインク組成物を、熱風オーブンにより120℃で30分間乾燥させた後、200℃で30分間加熱して、架橋、硬化することにより、目的とするガスケットを得た。
【0065】
(スクリーン版への付着割合)
マイクロスコープを用いて上記スクリーン印刷時に使用したスクリーン版の印刷部分における任意の四箇所を倍率30倍で各々観察し、各観察箇所におけるスクリーン版への付着度合を下記式により求めた。
スクリーン版への付着度合=(インク組成物が付着しているスクリーン開口数/観察箇所周縁部の開口を除く全スクリーン開口数)×100
その上で、上記付着度合の算術平均値をインク組成物のスクリーン版への付着割合として求め、以下の基準によりインク組成物のスクリーン版への付着抑制性を評価した。
〇:上記スクリーン版への付着割合が0%~30%
×:上記スクリーン版への付着割合が30%を超え100%以下
結果を表1に示す。
【0066】
(表面荒れ個数)
マイクロスコープを用いて上記スクリーン印刷により得られたガスケット表面の任意の箇所を倍率5倍で観察し、係る観察箇所における、(スクリーン痕等の表面荒れ個数/全観察面積)×100を表面荒れ個数として求めた。
結果を表1に示す。
【0067】
(実施例2)
表1に示すように、(a)ゴム形成成分として、エチレンプロピレンジエンゴム1(EPDM1)28.5重量部と可塑剤1を9.1重量部、(b)架橋剤2.8重量部およびカーボンブラック11.4重量部をオープンロールで混練りして混練物を作製し、得られた混練物に対し、(c)主溶剤であるドデカン43.4重量部および(d)貧溶媒であるジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)4.8重量部をさらに加えて撹拌機で攪拌することにより、スクリーン印刷用インク組成物を調製した。
上記ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は35300Pa・sであった。
また、得られたスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が16.5、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が541Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が328Pa・sであるものであった。
【0068】
得られたスクリーン印刷用インク組成物を用いて、実施例1と同様にしてスクリーン印刷を行い、厚さ124μmのガスケットを得た上で、実施例1と同様にして、スクリーン版への付着割合と得られた印刷物における表面荒れ個数を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例1)
表1に示すように、(a)ゴム形成成分として、エチレンプロピレンジエンゴム1(EPDM1)31.3重量部と、(b)架橋剤3.1重量部と、カーボンブラック12.5重量部とをオープンロールで混練りして混練物を作製し、得られた混練物に対し、(c)主溶剤であるドデカン53.0重量部をさらに加えて撹拌機で攪拌することにより、スクリーン印刷用インク組成物を調製した。
上記ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は237000Pa・sであった。
また、得られたスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が22.0、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が596Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が375Pa・sであるものであった。
【0070】
得られたスクリーン印刷用インク組成物を用いて、実施例1と同様にして、スクリーン印刷を行って厚さ106μmのガスケットを得た上で、実施例1と同様にして、スクリーン版への付着割合と得られた印刷物における表面荒れ個数を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例3)
表1に示すように、(a)ゴム形成成分として、エチレンプロピレンジエンゴム2(EPDM2)35.9重量部と、(b)架橋剤3.6重量部と、カーボンブラック14.4重量部とをオープンロールで混練りして混練物を作製し、得られた混練物に対し、(c)主溶剤であるドデカン41.5重量部および(d)貧溶媒であるジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)4.6重量部をさらに加えて撹拌機で攪拌することにより、スクリーン印刷用インク組成物を調製した。
上記ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は11900Pa・sであった。
また、得られたスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が19.0、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が804Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が532Pa・sであるものであった。
【0072】
得られたスクリーン印刷用インク組成物を用いて、実施例1と同様にして、スクリーン印刷を行って厚さ117μmのガスケットを得た上で、実施例1と同様にして、スクリーン版への付着割合と得られた印刷物における表面荒れ個数を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例2)
表1に示すように、(a)ゴム形成成分として、エチレンプロピレンジエンゴム3(EPDM3)23.8重量部と、(b)架橋剤2.4重量部と、カーボンブラック9.5重量部とをオープンロールで混練りして混練物を作製し、得られた混練物に対し、(c)主溶剤であるドデカン64.3重量部をさらに加えて撹拌機で攪拌することにより、スクリーン印刷用インク組成物を調製した。
上記ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は300000Pa・sであった。
また、得られたスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が25.0、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が572Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が349Pa・sであるものであった。
【0074】
得られたスクリーン印刷用インク組成物を用いて、実施例1と同様にして、スクリーン印刷を行って厚さ65μmのガスケットを得た上で、実施例1と同様にして、スクリーン版への付着割合と得られた印刷物における表面荒れ個数を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例4)
表1に示すように、(a)ゴム形成成分として、エチレンプロピレンジエンゴム2(EPDM2)31.3重量部と、(b)架橋剤3.1重量部と、カーボンブラック12.5重量部とをオープンロールで混練りして混練物を作製し、得られた混練物に対し、(c)主溶剤であるドデカン45.1重量部および(d)貧溶媒である乳酸ブチル8.0重量部をさらに加えて撹拌機で攪拌することにより、スクリーン印刷用インク組成物を調製した。
上記ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は237000Pa・sであった。
また、得られたスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が10.7、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が850Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が438Pa・sであるものであった。
【0076】
得られたスクリーン印刷用インク組成物を用いて、実施例1と同様にして、スクリーン印刷を行って厚さ91μmのガスケットを得た上で、実施例1と同様にして、スクリーン版への付着割合と得られた印刷物における表面荒れ個数を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例5)
表1に示すように、(a)ゴム形成成分として、エチレンプロピレンジエンゴム1(EPDM1)28.0重量部と、(b)架橋剤2.8重量部と、カーボンブラック11.2重量部とをオープンロールで混練りして混練物を作製し、得られた混練物に対し、(c)主溶剤であるドデカン52.2重量部および(d)貧溶媒であるジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)5.8重量部をさらに加えて撹拌機で攪拌することにより、スクリーン印刷用インク組成物を調製した。
上記ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は237000Pa・sであった。
また、得られたスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が17.0、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が310Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が210Pa・sであるものであった。
【0078】
得られたスクリーン印刷用インク組成物を用いて、実施例1と同様にして、スクリーン印刷を行って厚さ102μmのガスケットを得た上で、実施例1と同様にして、スクリーン版への付着割合と得られた印刷物における表面荒れ個数を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
(比較例3)
表1に示すように、(a)ゴム形成成分として、エチレンプロピレンジエンゴム1(EPDM1)28.0重量部と、(b)架橋剤2.8重量部と、カーボンブラック11.2重量部とをオープンロールで混練りして混練物を作製し、得られた混練物に対し、(c)主溶剤であるドデカン58.0重量部をさらに加えて撹拌機で攪拌することにより、スクリーン印刷用インク組成物を調製した。
上記ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は237000Pa・sであった。
また、得られたスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が47.1、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が154Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が127Pa・sであるものであった。
【0080】
得られたスクリーン印刷用インク組成物を用いて、実施例1と同様にして、スクリーン印刷を行って厚さ81μmのガスケットを得た上で、実施例1と同様にして、スクリーン版への付着割合と得られた印刷物における表面荒れ個数を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
(比較例4)
表1に示すように、(a)ゴム形成成分として、エチレンプロピレンジエンゴム1(EPDM1)31.4重量部と、(b)架橋剤3.1重量部と、カーボンブラック12.5重量部とをオープンロールで混練りして混練物を作製し、得られた混練物に対し、(c)主溶剤であるデカン53.0重量部をさらに加えて撹拌機で攪拌することにより、スクリーン印刷用インク組成物を調製した。
上記ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は237000Pa・sであった。
また、得られたスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が17.2、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が269Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が201Pa・sであるものであった。
【0082】
得られたスクリーン印刷用インク組成物を用いて、実施例1と同様にして、スクリーン印刷を行って厚さ119μmのガスケットを得た上で、実施例1と同様にして、スクリーン版への付着割合と得られた印刷物における表面荒れ個数を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例6)
表1に示すように、(a)ゴム形成成分として、エチレンプロピレンジエンゴム1(EPDM1)28.5重量部と可塑剤2を9.1質量部、(b)架橋剤2.8重量部およびカーボンブラック11.4重量部をオープンロールで混練りして混練物を作製し、得られた混練物に対し、(c)主溶剤であるドデカン43.4重量部および(d)貧溶媒であるジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)4.8重量部をさらに加えて撹拌機で攪拌することにより、スクリーン印刷用インク組成物を調製した。
上記ゴム形成成分のポリマー粘度(0.1rad/s)は31300Pa・sであった。
また、得られたスクリーン印刷用インク組成物は、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)が19.9、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が439Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が287Pa・sであるものであった。
【0084】
得られたスクリーン印刷用インク組成物を用いて、実施例1と同様にして、スクリーン印刷を行って厚さ91μmのガスケットを得た上で、実施例1と同様にして、スクリーン版への付着割合と得られた印刷物における表面荒れ個数を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
【0086】
表1に示すように、実施例1~実施例6で得られたスクリーン印刷用インク組成物は、(a)ゴム形成成分と、(b)架橋剤とを含み、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(0.1/s)が300~50000Pa・s、25℃の温度下においてE型粘度計によって得られる粘度(10/s)が50~1500Pa・sであるものであるとともに、スクリーン印刷用インク組成物を構成する溶媒として、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒とともに、(d)主溶媒に溶解しゴム形成成分には溶解しない貧溶媒を含むことにより、E型粘度計によって得られる損失正接(0.1rad/s)を10.0~20.0に制御してインク組成物中におけるゴム形成成分の凝集性を効果的に向上させ、スクリーン印刷時におけるインク組成物の付着量を抑制して、その押し出し性を向上させ得るものであることが分かる。
また、表1に示すように、実施例1~実施例3で得られたスクリーン印刷用インク組成物は、スクリーン印刷用インク組成物を構成する溶媒として、上記(c)主溶媒と(d)貧溶媒とを含むことにより、スクリーン印刷後の乾燥処理時または(b)架橋剤の加熱硬化処理時に上記(d)貧溶媒が揮発することにより、スクリーン版による押し出し直後に比較して押し出し物の乾燥時の粘度が低減し、レベリング性(表面平滑性)を容易に向上させ、表面荒れ個数を低減し得ることが分かる。
【0087】
これに対して、表1に示すように、比較例1~比較例4で得られた比較用スクリーン印刷用インク組成物は、(c)ゴム形成成分を溶解させる主溶媒とともに、(d)主溶媒に溶解しゴム形成成分には溶解しない貧溶媒を含まないために、スクリーン印刷時におけるインク組成物の付着量が高く、また、スクリーン版による押し出し後に押し出し物のレベリング性(表面平滑性)を向上させることができず、表面荒れ個数が高い数値を示すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、厚みの厚い印刷物を形成した場合においても、印刷物に印刷不良や表面荒れを生じ難いスクリーン印刷用インク組成物および係るスクリーン印刷用インク組成物を用いた印刷物の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 ペースト
M マスク
S スクリーン版
S1 スクリーン
O 開口
B 基板
R スキージ
P ペースト塗布層