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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154634
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】シートベルト用リトラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/405 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B60R22/405
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057755
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀樹
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018HB03
3D018HC01
3D018HC04
3D018HD02
3D018HE01
3D018HE03
(57)【要約】
【課題】ラッチを巻取ドラムに取り付けるだけでクラッチの支持軸からの脱落を防止することができるシートベルト用リトラクタを提供する。
【解決手段】一実施形態に係るシートベルト用リトラクタは、巻取ドラム4の端面から突出する支持軸に軸支され、通常時は巻取ドラム4と一体回転し、車両の緊急時には巻取ドラム4と相対回転するクラッチ5と、巻取ドラム4とクラッチ5との間に介在する付勢部材を備える。クラッチ5は巻取ドラム4の一端面と対向する対向面および支持軸に挿通される中心穴50を有しており、クラッチ5の対向面には、中心穴50よりも径方向外側の位置から突出する保持部9が設けられている。保持部9によって、通常時に、クラッチ5と巻取ドラム4との一体回転が保持される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の側壁を有するハウジングと、
ウエビングを巻き取る、前記一対の側壁の間に前記ウエビングの巻取方向と引出方向に回転可能に収容された巻取ドラムと、
前記巻取ドラムの一端面から突出する支持軸に軸支され、通常時は前記巻取ドラムと一体回転し、車両の緊急時には前記引出方向への回転が阻止されることで前記引出方向へ回転する前記巻取ドラムと相対回転するクラッチと、
前記クラッチに対して前記巻取ドラムが前記引出方向に相対回転することにより作動して、前記巻取ドラムの前記引出方向への回転を阻止するパウルと、
前記巻取ドラムと前記クラッチとの間に介在する、一端部が前記巻取ドラムに取り付けられると共に他端部が前記クラッチに取り付けられて、前記クラッチに対して前記巻取ドラムを前記巻取方向に回転する方向に付勢することで通常時に前記クラッチと前記巻取ドラムとの一体回転を可能とする弾性変形可能な付勢部材と、を備え、
前記クラッチは、前記巻取ドラムの一端面と対向する対向面を有するとともに、その中心穴が前記支持軸に挿通されており、
前記巻取ドラムの一端面を有する端部または前記クラッチの対向面のいずれか一方には、前記中心穴よりも径方向外側の位置から突出する保持部が設けられ、
前記保持部は、通常時に、前記巻取ドラムと前記クラッチとの一体回転を保持することを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
【請求項2】
前記一方に対する他方を備えた前記巻取ドラムまたは前記クラッチには、前記保持部と係合する係合部が設けられ、
前記保持部の先端が、通常時に、前記保持部の基端側である前記巻取ドラムの端部または前記クラッチの対向面との間に前記係合部を挟んで、前記保持部の基端側に対して前記巻取ドラムの軸方向で反対側から前記係合部と係合することで、前記巻取ドラムと前記クラッチとの一体回転を保持することを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項3】
前記係合部は、前記巻取ドラムの端部の外周縁の一部であり、前記保持部は、前記クラッチの対向面から前記巻取ドラムの軸方向に前記係合部を超えて延びることを特徴とする請求項2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項4】
前記係合部は、前記クラッチに形成されたスリットに沿う縁部であり、前記保持部は、前記巻取ドラムの端部から前記巻取ドラムの軸方向に前記スリットを通って延びることを特徴とする請求項2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項5】
前記保持部または前記係合部の一方は、前記巻取ドラムの端部に形成された凹部に設けられ、前記保持部または係合部の他方は、前記クラッチの対向面に形成されるとともに前記凹部に挿入される凸部に設けられることを特徴とする請求項2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、シートベルトとしてのウエビングの引き出しおよび巻き取りを行うシートベルト用リトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両衝突時などの緊急時にウエビングの引き出しを阻止するシートベルト用リトラクタが知られている。シートベルト用リトラクタでは、ウエビングを巻き取る巻取ドラムがハウジングの一対の側壁の間に回転可能に収容される。
【0003】
例えば、特許文献1には、図21に示す巻取ドラム(特許文献1では「スプール」と称呼)110およびクラッチ(特許文献1では「Vギヤ」と称呼)120を有するシートベルト用リトラクタ100が開示されている。なお、図21では、ハウジング(特許文献1では「フレーム」と称呼)などが省略されている。
【0004】
巻取ドラム110の端面からは支持軸111が突出しており、クラッチ120はこの支持軸111に軸支されている。つまり、クラッチ120は、支持軸111に挿通される中心穴121を有する。
【0005】
図示は省略するが、巻取ドラム110とクラッチ120との間には、コイルスプリングが介在している。コイルスプリングは、一端部が巻取ドラム110に取り付けられると共に他端部がクラッチ120に取り付けられて、巻取ドラム110をクラッチ120に対して巻取方向Aに回転する方向に付勢する。このコイルスプリングの付勢力によって、通常時はクラッチ120が巻取ドラム110と一体回転可能となる。
【0006】
一方、クラッチ120は、車両の緊急時に図略のロック機構によって引出方向Bへの回転が阻止される。これにより、巻取ドラム110がクラッチ120と相対回転しながら引出方向Bへ回転するとともに上記のコイルスプリングを圧縮する。
【0007】
巻取ドラム110にはパウル130が移動可能に保持されている。クラッチ120に対して巻取ドラム110が相対回転すると、パウル130が作動してハウジングに形成された内歯に係合する。これにより、巻取ドラム110の引出方向Bへの回転が阻止される。
【0008】
図22に示すように、支持軸111には、クラッチ120の支持軸111からの脱落を防止するためのストッパー112(特許文献1では「ストッパ」と称呼、図21では省略)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5819331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のストッパー112は、クラッチ120の中心穴121よりも径方向外側に張り出すものである。従って、ストッパー112は支持軸111とは別体であり、中心穴121に支持軸111を挿通した後に支持軸111に取り付けられるものと推測される。しかし、そのような作業はシートベルト用リトラクタの組み立て工数の増加を招来する。
【0011】
そこで、本発明は、クラッチを巻取ドラムに取り付けるだけでクラッチの支持軸からの脱落を防止することができるシートベルト用リトラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明のシートベルト用リトラクタは、互いに対向する一対の側壁を有するハウジングと、ウエビングを巻き取る、前記一対の側壁の間に前記ウエビングの巻取方向と引出方向に回転可能に収容された巻取ドラムと、前記巻取ドラムの一端面から突出する支持軸に軸支され、通常時は前記巻取ドラムと一体回転し、車両の緊急時には前記引出方向への回転が阻止されることで前記引出方向へ回転する前記巻取ドラムと相対回転するクラッチと、前記クラッチに対して前記巻取ドラムが前記引出方向に相対回転することにより作動して、前記巻取ドラムの前記引出方向への回転を阻止するパウルと、前記巻取ドラムと前記クラッチとの間に介在する、一端部が前記巻取ドラムに取り付けられると共に他端部が前記クラッチに取り付けられて、前記クラッチに対して前記巻取ドラムを前記巻取方向に回転する方向に付勢することで通常時に前記クラッチと前記巻取ドラムとの一体回転を可能とする弾性変形可能な付勢部材と、を備え、前記クラッチは、前記巻取ドラムの一端面と対向する対向面を有するとともに、その中心穴が前記支持軸に挿通されており、前記巻取ドラムの一端面を有する端部または前記クラッチの対向面のいずれか一方には、前記中心穴よりも径方向外側の位置から突出する保持部が設けられ、前記保持部は、通常時に、前記巻取ドラムと前記クラッチとの一体回転を保持することを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、巻取ドラムの端部とクラッチの対向面の一方には、クラッチの中心穴よりも径方向外側の位置から突出する保持部が設けられ、その保持部が、通常時に、巻取ドラムとクラッチとの一体回転を保持するので、クラッチを巻取ドラムに取り付けるだけでクラッチの支持軸からの脱落を防止することができる。
【0014】
前記一方に対する他方を備えた前記巻取ドラムまたは前記クラッチには、前記保持部と係合する係合部が設けられ、前記保持部の先端が、通常時に、前記保持部の基端側である前記巻取ドラムの端部または前記クラッチの対向面との間に前記係合部を挟んで、前記保持部の基端側に対して前記巻取ドラムの軸方向で反対側から前記係合部と係合することで、前記巻取ドラムと前記クラッチとの一体回転が保持されてもよい。この構成によれば、保持部がクラッチと巻取ドラムの一方に設けられ、この保持部が巻取ドラムとクラッチの他方の係合部と係合することによって、巻取ドラムとクラッチとの一体回転が保持されるようにできる。
【0015】
前記係合部は、前記巻取ドラムの端部の外周縁の一部であり、前記保持部は、前記クラッチの対向面から前記巻取ドラムの軸方向に前記係合部を超えて延びてもよい。この構成によれば、クラッチを巻取ドラムに取り付けた後に、クラッチの裏側から保持部の係合部との係合状態を確認することができる。
【0016】
前記係合部は、前記クラッチに形成されたスリットに沿う縁部であり、前記保持部は、前記巻取ドラムの端部から前記巻取ドラムの軸方向に前記スリットを通って延びてもよい。この構成によれば、クラッチを巻取ドラムに取り付けた後に、クラッチの表側から保持部の係合部との係合状態を確認することができる。
【0017】
前記保持部または前記係合部の一方は、前記巻取ドラムの端部に形成された凹部に設けられ、前記保持部または係合部の他方は、前記クラッチの対向面に形成されるとともに前記凹部に挿入される凸部に設けられてもよい。この構成によれば、シートベルト用リトラクタの他の部品との位置関係に影響を受けずに保持部を設けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クラッチを巻取ドラムに取り付けるだけでクラッチの支持軸からの脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタの斜視図である。
図2図1に示すシートベルト用リトラクタの分解斜視図である。
図3】巻取ドラムユニットの分解斜視図である。
図4】巻取ドラムユニットの分解斜視図である。
図5図1に示すシートベルト用リトラクタの、メカニズムカバーを取り外した状態を左から見た図である(車両センサは断面で示す)。
図6】(a)および(b)は巻取ドラムを左から見た図であり、(a)はパウルが非係合位置にある状態を示し、(b)はパウルが係合位置にある状態を示す。
図7】(a)および(b)は巻取ドラムユニットを左から見た図であり、(a)はクラッチが巻取ドラムと一体回転する状態を示し、(b)は巻取ドラムがクラッチに対して引出方向に相対回転した状態を示す。
図8】クラッチの裏側から見た巻取ドラムユニットの斜視図である。
図9】クラッチの裏側から見た巻取ドラムユニットの分解斜視図である。
図10】第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタの通常時における巻取ドラムユニットを左から見た図である。
図11】第2実施形態における巻取ドラムユニットの分解斜視図である。
図12】第3実施形態に係るシートベルト用リトラクタにおける、クラッチの裏側から見た巻取ドラムユニットの斜視図である。
図13図12のXIII-XIII線に沿った断面図である。
図14】第3実施形態において、巻取ドラムがクラッチに対して引出方向に相対回転したときの、クラッチの裏側から見た巻取ドラムユニットの斜視図である。
図15】第4実施形態に係るシートベルト用リトラクタにおけるクラッチの裏側から見た巻取ドラムユニットの斜視図である。
図16図15のXVI-XVI線に沿った断面図である。
図17】第4実施形態において、裏側から見たクラッチの斜視図である。
図18】第4実施形態における巻取ドラムの斜視図である。
図19図15のXIX-XIX線に沿った断面図である。
図20図15に示す状態から巻取ドラムがクラッチに対して引出方向に相対回転したときの断面図である。
図21】従来のシートベルト用リトラクタにおける巻取ドラムおよびクラッチの分解斜視図である。
図22図21に示すクラッチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1および図2に、本発明の第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1を示す。このシートベルト用リトラクタ1は、車両に搭載され、シートベルトとしてのウエビング10の引き出しおよび巻き取りを行うとともに、車両衝突時などの緊急時にウエビング10の引き出しを阻止するものである。
【0021】
具体的に、シートベルト用リトラクタ1は、ハウジングユニット11、巻取ドラムユニット12、メカニズムカバーユニット13および巻取バネユニット14を有する。以下、説明の便宜上、巻取ドラムユニット12の軸(回転軸)方向を左右方向(特に、メカニズムカバーユニット13側を左方、巻取バネユニット14側を右方)というとともに、左右方向と直交する図1の左下方向を前方、その反対側を後方という。また、左右方向および前後方向と直交する図1の上側を上方、下側を下方という。
【0022】
ハウジングユニット11は、板金製のハウジング2と、ハウジング2に取り付けられた樹脂製のプロテクタ26を有する。プロテクタ26は矩形筒状であり、このプロテクタ26の内側にウエビング10が挿通される。
【0023】
ハウジング2は、断面コ字状に形成されており、左右方向で互いに対向する一対の側壁21,22と、側壁21,22の後辺の下部同士を連結する下側背板23と、側壁21,22の後辺の上部同士を連結する上側背板24を有する。上述したプロテクタ26は上側背板24に取り付けられる。
【0024】
側壁21,22の前辺の上部同士は連結バー25で連結されている。側壁21,22には、巻取ドラムユニット12が挿通される開口21a,22aがそれぞれ設けられている。
【0025】
巻取ドラムユニット12は、ウエビング10を巻き取る巻取ドラム4と、巻取ドラム4の左側端面に取り付けられた略円盤状のクラッチ5を有する。巻取ドラム4は、ハウジング2の側壁21,22の間にウエビング10の巻取方向Aと引出方向Bに回転可能に収容されている(巻取方向Aおよび引出方向Bについては、図5参照)。
【0026】
巻取ドラム4は、アルミニウム合金などのダイキャストにより製造されたものであり、略円柱状のドラム本体41と、ドラム本体41よりも大径の略円盤状の左側端部42および右側端部43を有する。左側端部42はハウジング2の左側側壁21の開口21a内に嵌まり込む部分であり、右側端部43はハウジング2の右側側壁22の開口22a内に嵌まり込む部分である。クラッチ5は、開口21aよりも大きく、左側側壁21の外側に位置する。
【0027】
ハウジング2の左側側壁21の開口21aの周縁には、内歯21bが形成されている。この開口21a内に嵌まり込む巻取ドラム4の左側端部42には、図6(a)に示すようにパウル7が保持されている。左側端部42には、当該左側端部42の周面に開口する凹部42aが設けられており、この凹部42a内にパウル7が挿入されている。
【0028】
パウル7には、複数(図例では3つ)の係合爪72が形成されている。パウル7は、図6(b)に示す係合爪72が内歯21bと噛み合う係合位置と、図6(a)に示す係合爪72が内歯21bから径方向内側に離間する非係合位置との間で移動する。
【0029】
パウル7は、左方へ突出する操作軸71を有している。パウル7は、操作軸71がクラッチ5で操作されることにより、非係合位置と係合位置との間で移動する。
【0030】
図3および図4に示すように、巻取ドラム4の左側端面(左側端部42の外側面)からは巻取ドラム4の軸(回転軸)に沿って支持軸44が突出しており、巻取ドラム4の右側端面(右側端部43の外側面)からは巻取ドラム4の軸に沿って支持軸45が突出している。
【0031】
図2に戻って、巻取バネユニット14は、ハウジング2の右側側壁22に取り付けられる。巻取バネユニット14は、巻取ドラム4の支持軸45を回転可能に支持するとともに、支持軸45に巻取ドラム3を巻取方向Aに回転する付勢力を付与する。なお、巻取バネユニット14の構成は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
メカニズムカバーユニット13は、ハウジング2の左側側壁21に取り付けられる。メカニズムカバーユニット13は、巻取ドラム4の支持軸44を後述するキャップ35を介して回転可能に支持する。
【0033】
メカニズムカバーユニット13は、クラッチ5およびハウジング2の左側側壁21を覆うメカニズムカバー31と、このメカニズムカバー31に取り付けられた車両センサ32を有する。左側側壁21には、開口21aの下方に、車両センサ32用の開口21cも設けられている。車両センサ32は、車両の加速度が大きく変化したこと(第1緊急時(例えば、車両衝突時))を検知するためのものである。
【0034】
メカニズムカバー31には、クラッチ5よりも小径の内周面を規定する内歯31aが形成されている。この内歯31aは、図5に示すように、クラッチ5に取り付けられたロッキングアーム33と係合するためのものである。ロッキングアーム33は、後述するコイルスプリング34と共に、ウエビング10が急激に引き出されたこと(第2緊急時)を検知するためのウエビングセンサを構成する。
【0035】
クラッチ5は、上述した支持軸44に軸支されている。クラッチ5は、樹脂製であり、巻取ドラム4の左側端面(左側端部42の外側面)に対向する対向面を有するとともに巻取ドラム4の左側端面を覆う円盤部51と、円盤部51の周縁に沿う周壁52を有する。図7(a)に示すように、円盤部51は、巻取ドラム4の左側端部42よりも大径である。
【0036】
本実施形態では、図3および図4に示すように、円盤部51がフラットな板状であり、円盤部51の裏面から周壁52の右側(巻取ドラム4側)の端面までの距離よりも、円盤部51の表面から周壁52の左側の端面までの距離が長い。ただし、クラッチ5の形状は適宜変更可能である。
【0037】
円盤部51の中心には、支持軸44に挿通される中心穴50を形成する筒状部53が設けられている。支持軸44の先端は筒状部53よりも左方に突出しており、この先端に、中心穴50の直径よりも大きな直径のキャップ35が取り付けられる。また、円盤部51には、図5に示すように、上述したパウル7の操作軸71を操作するためのガイド穴61が設けられている。
【0038】
図3および図4に示すように、巻取ドラム4とクラッチ5との間には、コイルスプリング(本発明の付勢部材に相当)36が介在する。コイルスプリング36は、クラッチ5を巻取ドラム4に対して引出方向Bに回転する方向に付勢することで、通常時にクラッチ5と巻取ドラム4との一体回転を可能とし、緊急時にクラッチ5に対して巻取ドラム4が前記引出方向Bに相対回転することで弾性変形する。
【0039】
本実施形態では、巻取ドラム4の左側端部42に、当該左側端部42の外側面(巻取ドラム4の左側端面)に開口する凹部42bが設けられており、この凹部42b内にコイルスプリング36が配置される。クラッチ5の円盤部51は、凹部42bと共にコイルスプリング36の収容室を形成するものであり、コイルスプリング36を覆う。
【0040】
凹部42bは、コイルスプリング36の外径と同程度の幅の嵌合部42c(図7(a)参照)を有し、この嵌合部42cにコイルスプリング36の一端部が挿入されてコイルスプリング36の端が嵌合部42cの一面に当接することで、コイルスプリング36の一端部が巻取ドラム4に取り付けられる。
【0041】
一方、図4に示すように、クラッチ5の上述した対向面(円盤部51の裏面)には、凹部42bに挿入される凸部として、コイルスプリング36の他端部を支持するための支持部58が設けられている。この支持部58にコイルスプリング36の他端部が支持されることで、コイルスプリング36の他端部がクラッチ5に取り付けられる。本実施形態では、支持部58が箱状をなし、この支持部58内にコイルスプリング36の他端部が挿入される。
【0042】
図7(a)に示すように、コイルスプリング36は、湾曲した状態で嵌合部42cと支持部58との間に掛け渡される。コイルスプリング36は、巻取ドラム4をクラッチ5に対して巻取方向Aに回転する方向に付勢するとともに、クラッチ5を巻取ドラム4に対して引出方向Bに回転する方向に付勢する。このコイルスプリング36の付勢力によって、通常時はクラッチ5が巻取ドラム4と一体回転可能となる。
【0043】
クラッチ5の周壁52の外周面には、車両センサ32と係合するための外歯52aが形成されている。車両の加速度が大きく変化すると、車両センサ32が図5中に二点鎖線で示すように作動して外歯52aと係合する。これにより、クラッチ5の引出方向Bへの回転が阻止される。
【0044】
上述したロッキングアーム33は、略弓状の形状を有している。円盤部51の表面には、ロッキングアーム33の略中央を揺動可能に支持するための揺動軸54が設けられている。また、円盤部51の表面には、ロッキングアーム33の一端部と対向するバネ受け55が設けられており、このバネ受け55とロッキングアーム33の一端部との間にコイルスプリング34が配置されている。さらに、円盤部51の表面には、ロッキングアーム33の他端部を挟み込むようにストッパー56,57が設けられている。
【0045】
ウエビング10が急激に引き出されると、慣性力によってクラッチ5に対するロッキングアーム33の回転遅れが生じることによりロッキングアーム33が揺動し、図5中に二点鎖線で示すようにロッキングアーム33の他端部がストッパー56から離れて内歯31aと係合するとともにストッパー57と当接する。これにより、クラッチ5の引出方向Bへの回転が阻止される。
【0046】
車両センサ32と外歯52aとの係合またはロッキングアーム33と内歯31aとの係合によってクラッチ5の引出方向Bへの回転が阻止されると(すなわち、第1緊急時または第2緊急時)、図7(b)に示すように、巻取ドラム4がクラッチ5と相対回転しながら引出方向Bへ回転するとともにコイルスプリング36を圧縮する。本実施形態では、このときコイルスプリング36が直線状になる。
【0047】
クラッチ5に対して巻取ドラム4が引出方向Bに相対回転すると、パウル7の操作軸71がガイド穴61で操作されることによりパウル7が作動し、パウル7が図6(a)に示す非係合位置から図6(b)に示す係合位置に移動する。これにより、巻取ドラム4の引出方向Bへの回転が阻止される。
【0048】
図7(a)に示すように、クラッチ5の円盤部51には、2つの第1開口62,63と1つの第2開口64が設けられている。第1開口62,63は、コイルスプリング36の中心軸の両側に位置しており、第2開口64はコイルスプリング36の他端部に対応する位置に位置している。第1開口62,63および第2開口64は、コイルスプリング36が正しく組付けられているかを確認するためのものである。
【0049】
さらに、本実施形態では、図8および図9に示すように、クラッチ5の対向面に、中心穴50よりも径方向外側の位置から突出する保持部9が一体的に設けられているとともに、巻取ドラム4の左側端部42の外周縁の一部がその保持部9用の係合部8となっている。保持部9および係合部8は、コイルスプリング36に対して支持軸44と反対側に位置する。
【0050】
より詳しくは、保持部9は、クラッチ5の対向面における周壁52に接する外周縁に設けられており、対向面から係合部8を超えて巻取ドラム4の軸方向に延びている。保持部9の先端91には、径方向内側に突出する突起が設けられている。すなわち、保持部9の先端91(突起)は、保持部9の基端側であるクラッチ5の対向面との間に係合部8を挟んで、クラッチ5の対向面に対して巻取ドラム4の軸方向で反対側から係合部8と係合する。
【0051】
クラッチ5を巻取ドラム4に組付ける際には、先ず保持部9の先端91が係合部8に接触すると、保持部9が径方向外側に弾性変形し、次に保持部9の先端91にある突起が係合部8を通過することで保持部9が径方向内側に復帰し、保持部9の先端91の突起が係合部8に係合される。
【0052】
本実施形態では、図7(a)および(b)に示すように、保持部9の係合部8との係合状態が通常時も緊急時も維持される。ただし、保持部9の係合部8との係合状態は通常時のみ維持され、緊急時には保持部9の係合部8との係合状態が解除されてもよい。
【0053】
図3および図9に示すように、係合部8は、巻取ドラム4の左側端部42の外周縁の他の部分よりも、巻取ドラム4の軸方向でクラッチ5に向かって盛り上がっている。このため、巻取ドラム4の軸方向に沿った保持部9の長さが、係合部8をクラッチ5に向かって盛り上げない場合よりも短くなっている。一方、図9に示すように、クラッチ5の対向面には、係合部8との干渉を回避するための円弧状の溝59が形成されている。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のシートベルト用リトラクタ1では、保持部9がクラッチ5に一体的に設けられ、この保持部9が通常時および緊急時の状態で巻取ドラム4の係合部8と係合する。これにより、クラッチ5が巻取ドラム4の支持軸44に取り付けられた状態が維持され、通常時に、クラッチ5と巻取ドラム4との一体回転が保持されるので、クラッチ5を巻取ドラム4に取り付けるだけでクラッチ5の支持軸44からの脱落を防止することができる。
【0055】
ところで、本実施形態のように通常時にコイルスプリング36が湾曲した状態であると、湾曲したコイルスプリング36によってクラッチ5が巻取ドラム4の軸方向にも付勢される。従って、保持部9の係合部8との係合によって、湾曲したコイルスプリング36に起因するクラッチ5の浮き上がりを防止することができる。これにより、シートベルト用リトラクタ1として完成した状態だけでなく、巻取ドラムユニット12が組み立てられる際や、シートベルト用リトラクタ1に組付けられる前の巻取ドラムユニット12の状態において、コイルスプリング36の付勢力によりクラッチ5やコイルスプリング36が巻取ドラム4から脱落することが防止され、作業性を向上できる。
【0056】
また、本実施形態では、図8に示すように、クラッチ5を巻取ドラム4に取り付けた後に、クラッチ5の裏側から保持部9の係合部8との係合状態を確認することができる。
【0057】
(第2実施形態)
図10および図11に、本発明の第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1Aを示す(図10および図11では、巻取ドラムユニット以外を省略)。なお、本実施形態ならびに後述する第3および第4実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0058】
本実施形態では、巻取ドラム4の左側端部42に、クラッチ5の中心穴50よりも径方向外側の位置から突出する保持部9Aが一体的に設けられているとともに、クラッチ5の円盤部51の一部がその保持部9A用の係合部8Aとなっている。
【0059】
より詳しくは、円盤部51には、周壁52よりも少し径方向内側の位置に中心穴50を中心とする円弧状のスリット82が形成されており、このスリット82に沿う縁部(スリット82と周壁52の間の部分)が係合部8Aとなっている。
【0060】
一方、保持部9Aは、スリット82を通って巻取ドラム4の軸方向に延びるように巻取ドラム4の左側端部42の外周縁に設けられている。保持部9Aの先端91Aには、径方外側に突出する突起が設けられている。すなわち、保持部9Aの先端91A(突起)は、保持部9Aの基端側である巻取ドラム4の左側端部42との間に係合部8Aを挟んで、巻取ドラム4の左側端部42に対して巻取ドラム4の軸方向で反対側から係合部8Aと係合する。
【0061】
クラッチ5の円盤部51には、クラッチ5を巻取ドラム4に取り付ける際に保持部9Aを挿通するための開口81が形成されている。本実施形態では、開口81がスリット82から見て巻取方向A側に位置する。開口81は、スリット82を周壁52まで拡張したような形状を有する。
【0062】
クラッチ5を巻取ドラム4に組付ける際には、先ず開口81に保持部9Aの先端91Aにある突起を通過させ、次に巻取ドラム4を引出方向Bに回転させて保持部9Aをスリット82内に移動させることで、保持部9Aの先端91Aにある突起を係合部8Aに係合させる。これにより、弾性変形を伴わずに保持部9Aを係合部8Aに係合させることができる。
【0063】
図10は保持部9Aの係合部8Aとの、通常時の係合状態を示す。緊急時には、保持部9Aはクラッチ5に対して引出方向Bへ移動する。従って、保持部9Aの係合部8Aとの係合状態は通常時も緊急時も維持される。ただし、保持部9Aの係合部8Aとの係合状態は通常時のみ維持され、緊急時には保持部9Aの係合部8Aとの係合状態が解除されてもよい。
【0064】
本実施形態のシートベルト用リトラクタ1Aでは、保持部9Aが巻取ドラム4に一体的に設けられ、この保持部9Aが通常時および緊急時の状態でクラッチ5の係合部8Aと係合する。これにより、クラッチ5が巻取ドラム4の支持軸44に取り付けられた状態が維持され、通常時に、クラッチ5と巻取ドラム4との一体回転が保持されるので、クラッチ5を巻取ドラム4に取り付けるだけでクラッチ5の支持軸44からの脱落を防止することができる。
【0065】
また、本実施形態でも第1実施形態と同様に、保持部9Aの係合部8Aとの係合によって、湾曲したコイルスプリング36に起因するクラッチ5の浮き上がりを防止することができる。
【0066】
また、本実施形態では、図10に示すように、クラッチ5を巻取ドラム4に取り付けた後に、クラッチ5の表側から保持部9Aの係合部8Aとの係合状態を確認することができる。
【0067】
(第3実施形態)
図12および図13に、本発明の第3実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1Bを示す(図12および図13では、巻取ドラムユニット以外を省略)。
【0068】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、クラッチ5の対向面に、中心穴50よりも径方向外側の位置から突出する保持部9Bが一体的に設けられているとともに、巻取ドラム4の左側端部42の外周縁の一部がその保持部9B用の係合部8Bとなっている。ただし、保持部9Bおよび係合部8Bは、支持軸44に対してコイルスプリング36と反対側(図7(a)の上部)に位置する。
【0069】
より詳しくは、保持部9Bは、クラッチ5の対向面における周壁52に接する外周縁に設けられており、対向面から係合部8Bを超えて巻取ドラム4の軸方向に延びている。保持部9Bの先端91Bには、径方向内側に突出する突起が設けられている。すなわち、保持部9Bの先端91B(突起)は、保持部9Bの基端側であるクラッチ5の対向面との間に係合部8Bを挟んで、クラッチ5の対向面に対して巻取ドラム4の軸方向で反対側から係合部8Bと係合する。
【0070】
本実施形態では、係合部8Bが径方向外向きに張り出す部分であり、図12に示すように通常時は保持部9Bの係合部8Bとの係合状態が維持されるものの、緊急時には図14に示すように保持部9Bの係合部8Bとの係合状態が解除される。つまり、通常時の状態では巻取ドラム4の軸方向で保持部9Bの先端91Bの突起と係合部8Bとが重なり合っているが、緊急時の状態では、クラッチ5に対して巻取ドラム4が引出方向Bに相対回転することで、係合部8Bが保持部9Bの先端91Bの突起と重なり合わない位置まで移動する。ただし、保持部9Bの係合部8Bとの係合状態は通常時の状態だけでなく緊急時の状態でも維持されてもよい。
【0071】
なお、クラッチ5を巻取ドラム4に組付ける際には、係合部8Bが保持部9Bの先端91Bにある突起と重なり合わない緊急時の位置でクラッチ5を巻取ドラム4に組付け、次に巻取ドラム4を巻取方向Aに回転させることで、保持部9Bの先端91Bにある突起を係合部8Bと係合させる。
【0072】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、クラッチ5を巻取ドラム4に取り付けるだけで保持部9Bによって、クラッチ5が巻取ドラム4の支持軸44に取り付けられた状態が維持され、通常時に、クラッチ5と巻取ドラム4との一体回転が保持されるので、クラッチ5の支持軸44からの脱落を防止することができる。しかも、保持部9Bの係合部8Bとの係合によって、湾曲したコイルスプリング36に起因するクラッチ5の浮き上がりを防止することができる。
【0073】
また、本実施形態では、図12に示すように、クラッチ5を巻取ドラム4に取り付けた後に、クラッチ5の裏側から保持部9Bの係合部8Bとの係合状態を確認することができる。
【0074】
(第4実施形態)
図15および図16に、本発明の第4実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1Cを示す(図15および図16では、巻取ドラムユニット以外を省略する(図15では、パウルも省略))。
【0075】
本実施形態では、クラッチ5の対向面に、中心穴50よりも径方向外側の位置から突出する保持部9Cが一体的に設けられている一方、巻取ドラム4の左側端部42における凹部42bの縁部がその保持部9C用の係合部8Cとなっている。
【0076】
より詳しくは、保持部9Cは、図17に示すように、クラッチ5の凸部としての支持部58から円盤部51と平行かつコイルスプリング36(図16では省略)と反対向きに延びている。一方、左側端部42には、図15,16,18,19に示すように、凹部42bから左側端部42の外周面まで径方向外向きに延びるスリット82Aが設けられている。そして、保持部9Cの先端91Cがスリット82A内に入り込んでいる。
【0077】
すなわち、左側端部42におけるスリット82Aの左側部分が係合部8Cであり、保持部9Cの先端91Cは、保持部9Cの基端側であるクラッチ5の対向面との間に係合部8Cを挟んで、クラッチ5の対向面に対して巻取ドラム4の軸方向で反対側から係合部8Cと係合する。
【0078】
本実施形態では、図19および図20に示すように、保持部9Cの係合部8Cとの係合状態が通常時の状態でも、緊急時の状態でも維持される。ただし、保持部9Cの係合部8Cとの係合状態は通常時の状態のみ維持され、緊急時の状態では保持部9Cの係合部8Cとの係合状態が解除されてもよい。なお、図19および図20では、コイルスプリング36およびパウル7を省略している。
【0079】
なお、クラッチ5を巻取ドラム4に組付ける際には、クラッチ5の支持部58を巻取ドラム4の凹部42bに挿入する際に、保持部9Cの先端91Cをスリット82Aに挿入することで、保持部9Cの先端91Cを係合部8Cと係合させる。また、緊急時の状態では保持部9Cの係合部8Cとの係合状態が解除される場合には、係合部8Cが保持部9Cの先端91Cと重なり合わない緊急時の位置でクラッチ5を巻取ドラム4に組付け、次に巻取ドラム4を巻取方向Aに回転させることで、保持部9Cの先端91Cを係合部8Cと係合させてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、巻取ドラム4の凹部42bに係合部8Cを設け、クラッチ5の支持部58に保持部9Cを設けたが、巻取ドラム4の凹部42bに保持部9Cを設け、クラッチ5の支持部58に係合部8Cを設けてもよい。また、巻取ドラム4の左側端部42に凹部42bとは別の凹部が形成され、クラッチ5の円盤部51に支持部58とは別の凸部が形成され、それらに係合部8Cと保持部9Cが設けられてもよい。
【0081】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、クラッチ5を巻取ドラム4に取り付けるだけで保持部9Cによって、クラッチ5が巻取ドラム4の支持軸44に取り付けられた状態が維持され、通常時に、クラッチ5と巻取ドラム4との一体回転が保持されるので、クラッチ5の支持軸44からの脱落を防止することができる。しかも、保持部9Cの係合部8Cとの係合によって、湾曲したコイルスプリング36に起因するクラッチ5の浮き上がりを防止することができる。
【0082】
また、本実施形態では、図15に示すように、クラッチ5を巻取ドラム4に取り付けた後に、巻取ドラム4のスリット82Aから保持部9Cの係合部8Cとの係合状態を確認することができる。
【0083】
また、本実施形態では、図16に示すように、巻取ドラム4の凹部42bに係合部8Cを設け、凹部42bに挿入される凸部としてのクラッチ5の支持部58に保持部9Cを設けたので、他の実施形態のように巻取ドラム4の左側端部42の外周縁や、クラッチ5の円盤部51の左側(メカニズムカバー31側)に保持部9Cが位置しないので、ハウジング2の側壁21やメカニズムカバー31の内歯31a等との位置関係に影響を受けずに保持部9Cを設けることができる。
【0084】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0085】
例えば、本発明のクラッチ5を巻取ドラム4に対して引出方向Bに付勢する付勢部材は必ずしもコイルスプリング36である必要はなく、一端部が巻取ドラム4に取り付けられると共に他端部がクラッチ5に取り付けられる捩りバネであってもよい。
【0086】
また、保持部9,9A~9Cをクラッチ5に一体的に設けずに別部材で形成して事前にクラッチ5に取付け、その後にクラッチ5を巻取ドラム4に組付けてもよいが、上述した実施形態のように一体的に設けることで、事前に取り付ける手間を省くことや部品点数の増加を防ぐことができる。
【0087】
また、上述した実施形態とは異なり、例えば、保持部9と係合部8とが互いに咬み合うことで、クラッチ5が巻取ドラム4の支持軸44に取り付けられた状態が維持され、通常時に、クラッチ5と巻取ドラム4との一体回転が保持されてもよい。
【0088】
巻取ドラム4は、必ずしも一体物である必要はない。例えば、巻取ドラム4は、ドラム本体41と右側端部43に相当し、軸方向の一方に開口する中心穴が設けられた鋳造品と、前記中心穴の底で鋳造品に一端側が結合されたトーションバーと、左側端部42に相当し、トーションバーの他端側が結合された部品を有して構成されてもよい。この場合、緊急時にパウル7が係合位置に移動すると、左側端部42に相当する部品の巻取ドラム4の引出方向Bへの回転が阻止され、ウエビング10から作用する所定の引出力によりトーションバーが捩れて、ドラム本体41と右側端部43に相当する鋳造品が巻取ドラム4の引出方向Bへ回転することにより、ウエビング10が所定の引出力で引き出されて乗員の衝撃エネルギーが吸収される。また、この場合、トーションバーの一部が支持軸44を構成してもよく、支持軸45がドラム本体41と右側端部43に相当する鋳造品と一体ではなく、別の部品で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1,1A~1C シートベルト用リトラクタ
10 ウエビング
2 ハウジング
21,22 側壁
36 コイルスプリング(付勢部材)
4 巻取ドラム
41 ドラム本体
42,43 端部
44,45 支持軸
5 クラッチ
50 中心穴
51 円盤部
52 周壁
7 パウル
8,8A~8C 係合部
82,82A スリット
9,9A~9C 保持部
91,91A~91C 先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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