(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154643
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ブレーキ装置、摩耗量算出方法、及び摩耗量算出プログラム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/171 20060101AFI20221005BHJP
B61H 15/00 20060101ALI20221005BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20221005BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20221005BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20221005BHJP
F16D 129/06 20120101ALN20221005BHJP
【FI】
B60T8/171 Z
B61H15/00
B60T13/74 B
F16D65/18
F16D121:24
F16D129:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057764
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木上 昭吾
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
3J058
【Fターム(参考)】
3D048AA04
3D048BB43
3D048CC49
3D048HH18
3D048QQ07
3D048RR11
3D048RR17
3D048RR29
3D246AA17
3D246BA08
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3D246HC06
3D246JB04
3D246LA13Z
3J058AA48
3J058AA78
3J058AA87
3J058BA60
3J058CA02
3J058CA42
3J058CB11
3J058CD24
3J058DA04
3J058DB02
3J058DB03
3J058DB08
3J058DB09
3J058DB12
3J058DB23
3J058FA21
(57)【要約】
【課題】電動アクチュエータを駆動源とするブレーキ装置において、摩擦材の摩耗量を検知するブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ装置は、車輪及び車輪と一体に回転する回転体のいずれか一方である被摩擦材に押圧する摩擦材をモータ11によって駆動することにより車輪2を制動する。ブレーキ装置は、モータ11の駆動情報を取得する取得部と、取得した駆動情報を用いることにより制輪子14が車輪2の踏面2Aに接触するまでの制輪子14の移動距離を算出する移動距離算出部23と、移動距離と、過去のある時点における移動距離とに基づいて制輪子14の摩耗量を算出する摩耗量算出部24とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪及び前記車輪と一体に回転する回転体のいずれか一方である被摩擦材に押圧する摩擦材を電動アクチュエータによって駆動することにより前記車輪を制動するブレーキ装置であって、
前記電動アクチュエータの駆動情報を取得する取得部と、
取得した前記駆動情報を用いることにより前記摩擦材が前記被摩擦材に接触するまでの前記摩擦材の移動距離を算出する移動距離算出部と、
前記移動距離と、過去のある時点における前記移動距離とに基づいて前記摩擦材の摩耗量を算出する摩耗量算出部と、を備える
ブレーキ装置。
【請求項2】
前記摩擦材の移動距離における基準位置に前記摩擦材が位置することを検知するセンサを備え、
前記取得部は、前記センサから検知情報を取得し、
前記移動距離算出部は、前記センサが検知した基準位置から前記摩擦材が前記被摩擦材に接触した位置までの前記摩擦材の移動距離を算出する
請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記基準位置は、前記摩擦材が前記被摩擦材から最も離間した全開位置である
請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記移動距離算出部は、前記電動アクチュエータの電流と時間との積及び前記電動アクチュエータの回転数の少なくとも一方から前記摩擦材の移動距離を算出する
請求項1~3のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記被摩擦材の摩耗量を取得する被摩擦材摩耗量取得部を備え、
前記摩耗量算出部は、前記被摩擦材の摩耗量を反映させて前記摩擦材の摩耗量を算出する
請求項1~4のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記電動アクチュエータを駆動制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記摩擦材を前記被摩擦材に接触した位置から所定距離離れた位置まで移動するよう制御する
請求項1~5のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記摩擦材の摩耗量が編成車両の他のブレーキ装置の摩擦材の摩耗量よりも大きいときに、ブレーキ力を他のブレーキ装置のブレーキ力よりも小さくなるように調整する
請求項6に記載のブレーキ装置。
【請求項8】
前記摩擦材を交換したときに当該摩擦材を前記被摩擦材に当接させたときの移動距離を取得し、取得した移動距離を前記過去のある時点における移動距離として前記摩耗量を算出する
請求項1~7のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項9】
前記摩擦材の摩耗量が所定値以上になったときに報知する報知部を備える
請求項1~8のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項10】
車輪及び前記車輪と一体に回転する回転体のいずれか一方である被摩擦材に押圧する摩擦材を電動アクチュエータによって駆動することにより前記車輪を制動するブレーキ装置の摩擦材の摩耗量算出方法であって、
前記電動アクチュエータの駆動情報を取得する取得ステップと、
取得した前記駆動情報を用いることにより前記摩擦材が前記被摩擦材に接触するまでの前記摩擦材の移動距離を算出する移動距離算出ステップと、
前記移動距離と、過去のある時点における前記移動距離とに基づいて前記摩擦材の摩耗量を算出する摩耗量算出ステップと、を含む
摩耗量算出方法。
【請求項11】
車輪及び前記車輪と一体に回転する回転体のいずれか一方である被摩擦材に押圧する摩擦材を電動アクチュエータによって駆動することにより前記車輪を制動するブレーキ装置の摩擦材の摩耗量算出プログラムであって、
コンピュータに、
前記電動アクチュエータの駆動情報を取得する取得ステップと、
取得した前記駆動情報を用いることにより前記摩擦材が前記被摩擦材に接触するまでの前記摩擦材の移動距離を算出する移動距離算出ステップと、
前記移動距離と、過去のある時点における前記移動距離とに基づいて前記摩擦材の摩耗量を算出する摩耗量算出ステップと、を実行させる
摩耗量算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置、摩耗量算出方法、及び摩耗量算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータを動力源として制輪子を、車輪と一体に回転するディスクに押圧させて車輪を制動する電動ブレーキ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の電動ブレーキ装置は、制輪子をディスクに押圧させるブレーキ動作を繰り返すことで、制輪子がディスクとの摩擦によって摩耗する。そして、制輪子が所定量以上摩耗した場合には、制輪子を交換する必要がある。そのため、モータ等の電動アクチュエータを駆動源とするブレーキ装置において、制輪子等の摩擦材の摩耗量を算出することが求められている。なお、ディスクブレーキ装置に限らず、車輪の踏面に摩擦材を接触させるトレッドブレーキ装置においても同様の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するブレーキ装置は、車輪及び前記車輪と一体に回転する回転体のいずれか一方である被摩擦材に押圧する摩擦材を電動アクチュエータによって駆動することにより前記車輪を制動するブレーキ装置であって、前記電動アクチュエータの駆動情報を取得する取得部と、取得した前記駆動情報を用いることにより前記摩擦材が前記被摩擦材に接触するまでの前記摩擦材の移動距離を算出する移動距離算出部と、前記移動距離と、過去のある時点における前記移動距離とに基づいて前記摩擦材の摩耗量を算出する摩耗量算出部と、を備える。
【0006】
電動アクチュエータによって駆動される摩擦材が摩耗すると、摩擦材が被摩擦材に接触するまでの移動距離が増える。上記構成によれば、電動アクチュエータの駆動情報を用いることにより摩擦材が被摩擦材に接触するまでの摩擦材の移動距離を算出することで、過去のある時点における摩擦材の移動距離との変化から摩擦材の摩耗量を算出することができる。
【0007】
上記ブレーキ装置について、前記摩擦材の移動距離における基準位置に前記摩擦材が位置することを検知するセンサを備え、前記取得部は、前記センサから検知情報を取得し、前記移動距離算出部は、前記センサが検知した基準位置から前記摩擦材が前記被摩擦材に接触した位置までの前記摩擦材の移動距離を算出することが好ましい。
【0008】
上記ブレーキ装置について、前記基準位置は、前記摩擦材が前記被摩擦材から最も離間した全開位置であることが好ましい。
上記ブレーキ装置について、前記移動距離算出部は、前記電動アクチュエータの電流と時間との積及び前記電動アクチュエータの回転数の少なくとも一方から前記摩擦材の移動距離を算出することが好ましい。
【0009】
上記ブレーキ装置について、前記被摩擦材の摩耗量を取得する被摩擦材摩耗量取得部を備え、前記摩耗量算出部は、前記被摩擦材の摩耗量を反映させて前記摩擦材の摩耗量を算出することが好ましい。
【0010】
上記ブレーキ装置について、前記電動アクチュエータを駆動制御する制御部を備え、前記制御部は、前記摩擦材を前記被摩擦材に接触した位置から所定距離離れた位置まで移動するよう制御することが好ましい。
【0011】
上記ブレーキ装置について、前記制御部は、前記摩擦材の摩耗量が編成車両の他のブレーキ装置の摩擦材の摩耗量よりも大きいときに、ブレーキ力を他のブレーキ装置のブレーキ力よりも小さくなるように調整することが好ましい。
【0012】
上記ブレーキ装置について、前記摩擦材を交換したときに当該摩擦材を前記被摩擦材に当接させたときの移動距離を取得し、取得した移動距離を前記過去のある時点における移動距離として前記摩耗量を算出することが好ましい。
【0013】
上記ブレーキ装置について、前記摩擦材の摩耗量が所定値以上になったときに報知する報知部を備えることが好ましい。
上記課題を解決する摩耗量算出方法は、車輪及び前記車輪と一体に回転する回転体のいずれか一方である被摩擦材に押圧する摩擦材を電動アクチュエータによって駆動することにより前記車輪を制動するブレーキ装置の摩擦材の摩耗量算出方法であって、前記電動アクチュエータの駆動情報を取得する取得ステップと、取得した前記駆動情報を用いることにより前記摩擦材が前記被摩擦材に接触するまでの前記摩擦材の移動距離を算出する移動距離算出ステップと、前記移動距離と、過去のある時点における前記移動距離とに基づいて前記摩擦材の摩耗量を算出する摩耗量算出ステップと、を含む。
【0014】
電動アクチュエータによって駆動される摩擦材が摩耗すると、摩擦材が被摩擦材に接触するまでの移動距離が増える。上記方法によれば、電動アクチュエータの駆動情報を用いることにより摩擦材が被摩擦材に接触するまでの摩擦材の移動距離を算出することで、過去のある時点における摩擦材の移動距離との変化から摩擦材の摩耗量を算出することができる。
【0015】
上記課題を解決する摩耗量算出プログラムは、車輪及び前記車輪と一体に回転する回転体のいずれか一方である被摩擦材に押圧する摩擦材を電動アクチュエータによって駆動することにより前記車輪を制動するブレーキ装置の摩擦材の摩耗量算出プログラムであって、コンピュータに、前記電動アクチュエータの駆動情報を取得する取得ステップと、取得した前記駆動情報を用いることにより前記摩擦材が前記被摩擦材に接触するまでの前記摩擦材の移動距離を算出する移動距離算出ステップと、前記移動距離と、過去のある時点における前記移動距離とに基づいて前記摩擦材の摩耗量を算出する摩耗量算出ステップと、を実行させる。
【0016】
電動アクチュエータによって駆動される摩擦材が摩耗すると、摩擦材が被摩擦材に接触するまでの移動距離が増える。上記プログラムによれば、電動アクチュエータの駆動情報を用いることにより摩擦材が被摩擦材に接触するまでの摩擦材の移動距離を算出することで、過去のある時点における摩擦材の移動距離との変化から摩擦材の摩耗量を算出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、摩擦材の摩耗量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ブレーキ装置の第1実施形態の構成を示す概略図。
【
図2】同実施形態のブレーキ装置の動作を示すフローチャート。
【
図3】同実施形態のブレーキ装置の動作を示すフローチャート。
【
図4】ブレーキ装置の第2実施形態の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図3を参照して、ブレーキ装置の第1実施形態について説明する。ブレーキ装置は、鉄道車両に備えられている。
【0020】
図1に示すように、ブレーキ装置10は、鉄道車両の車輪2の踏面2Aに制輪子14を押圧することで制動力を発生させるトレッドブレーキ装置である。ブレーキ装置10は、回転型のモータ11を備え、モータ11によって駆動される。ブレーキ装置10は、モータ11の駆動力を伝達する伝達部材12と、制輪子保持部材13とを備えている。伝達部材12は、モータ11の駆動力によって制輪子保持部材13を変位させる。制輪子保持部材13は、制輪子14が取り付けられ、伝達部材12によって車輪2の径方向へ変位する。制輪子14は、制輪子保持部材13とともに変位して、車輪2の踏面2Aに押し当てられる。制輪子14は車輪2の踏面2Aに押し当てられることで摩耗して、制輪子14の厚さが減少する。なお、モータ11が電動アクチュエータに相当する。また、車輪2が非摩擦材に相当し、制輪子14が摩擦材に相当する。
【0021】
ブレーキ装置10は、制御装置20によって制御される。制御装置20は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。制御装置20すなわちプロセッサにより実行される処理には、摩耗量算出方法が含まれる。摩耗量算出方法は、後述する摩耗量算出処理を含む。なお、制御装置20は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、またはそれらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。コンピュータ可読媒体に格納されたプログラムには摩耗量算出プログラムが含まれる。摩耗量算出プログラムは、取得ステップと移動距離算出ステップと摩耗量算出ステップとをコンピュータに実行させる。
【0022】
制御装置20は、車両制御盤5からの制動指令に基づいて制動力を制御する。制御装置20は、ブレーキ装置10を制御する制御部21を備えている。制御部21は、必要な制動力に応じてモータ11を駆動制御する。制御部21は、制輪子14を車輪2の踏面2Aに接触した位置から所定距離離れた位置まで移動するように制御する。こうすることで、制輪子14を車輪2の踏面2Aに接触させて制動が開始されるまでの時間を一定とすることができる。伝達部材12には、制輪子14の移動距離における基準位置に制輪子14が位置することを検知するセンサ12Aが設けられている。
【0023】
制御装置20は、駆動情報取得部22と、移動距離算出部23と、摩耗量算出部24とを備えている。駆動情報取得部22は、モータ11の駆動情報を取得する。駆動情報取得部22は、センサ12Aの検知情報を取得する。移動距離算出部23は、制輪子14が車輪2の踏面2Aに接触するまでの制輪子14の移動距離を算出する。摩耗量算出部24は、移動距離と、過去のある時点における移動距離とに基づいて制輪子14の摩耗量を算出する。
【0024】
移動距離算出部23は、センサ12Aが検知した基準位置から制輪子14が車輪2の踏面2Aに接触した接触位置までの制輪子14の移動距離を算出する。基準位置は、制輪子14が車輪2の踏面2Aから最も離間した全開位置である。移動距離算出部23は、モータ11の電流と時間との積及びモータ11の回転数の少なくとも一方から制輪子14の移動距離を算出する。制御部21は、制輪子14が車輪2の踏面2Aに接した接触位置に到達したことをモータ11の電流値の急激な変化又は回転数の急激な変化に基づいて認識することができる。なお、移動距離算出部23は、接触位置をリミットスイッチ等によって認識してもよい。
【0025】
移動距離算出部23は、2種類の方法で制輪子14の移動距離を算出する。移動距離算出部23は、モータ11が起動されたときに、制輪子14を全開位置に駆動してから車輪2の踏面2Aに接触する接触位置までの移動距離を算出する。また、移動距離算出部23は、制輪子14を車輪2の踏面2Aに接触した接触位置から基準位置まで戻したときの移動距離を算出する。
【0026】
ここで、制輪子保持部材13及び制輪子14が基準位置にあるときに、制輪子保持部材13の先端位置、言い換えれば制輪子14の取付位置と、車輪2の中心との距離を基準距離Lとする。制輪子14を車輪2から最も離した全開位置、言い換えれば制輪子保持部材13が最も縮んだ位置である最縮位置を基準位置とする。車輪2の半径を「r」とする。制輪子14の厚さを「A」とする。制輪子14の基準位置から車輪2の踏面2Aに接触する接触位置までの移動距離を「B」とする。制輪子14の摩耗量を「C」とする。
【0027】
車輪2の半径rは、車輪2が転削されたときに計測されて、速度換算のための情報として制御装置20に入力される。なお、車輪2の転削は所定の走行距離毎に実施する計画転削と、フラットなどの異常がある場合に実施される修繕転削がある。これら転削が実施されるまでの車輪2の半径rの変化は制輪子14の摩耗量(厚さAの変化量)に比べ十分に小さい。よって、制輪子14の厚さAの変化の監視において、半径rの変化は無視することができる。なお、制輪子14の厚さAを厳密に求めたいときには、車輪2の実測値の半径rを加味して制輪子14の厚さAを算出してもよい。例えば、制御装置20は、被摩擦材である車輪2の摩耗量を取得する被摩擦材摩耗量取得部25を備える。そして、摩耗量算出部24は、取得した車輪2の摩耗量を反映させて制輪子14の摩耗量Cを算出する。新品の制輪子14を制輪子保持部材13に取り付けたとき、制輪子14の厚さAは一意の値である。制輪子14を制輪子保持部材13に取り付けたとき又は車輪2を転削したときに計測した移動距離が過去のある時点における移動距離に相当する。
【0028】
摩耗量算出部24は、以下の式(1)、(2)によって制輪子14の厚さAを算出して、以下の式(3)によって制輪子14の摩耗量Cを算出する。基準距離Lは、車輪2の半径rと制輪子14の厚さAと制輪子14の移動距離Bとの和である。よって、制輪子14の厚さAを求められる。そして、摩耗量算出部24は、得られた制輪子14の厚さAを制輪子14の厚さの初期値A0から引くことで制輪子14の摩耗量Cを算出する。
【0029】
L=r+A+B・・・(1)
A=L-r-B・・・(2)
C=A0-A・・・(3)
【0030】
基準距離Lは、ブレーキ装置10が取り付けられる車輪2毎に異なる可能性があるため、ブレーキ装置10毎に取り付けた直後に半径r、厚さA、移動距離Bを特定することで、基準距離Lの初期値を確定させることが望ましい。そして、制輪子14が摩耗すると、制輪子14の厚さAが初期値A0から減少し、移動距離Bが増加する。なお、取り付けた制輪子14が新品でない場合には、制輪子14の厚さAを使用可能な最小寸法として制御装置20に入力してもよい。摩耗量算出部24は、制輪子14の移動距離Bを始業点検や仕業検査等のときに定期的に自動測定して、制輪子14の厚さAを算出する。そして、摩耗量算出部24は、制輪子14の厚さAを厚さの初期値A0から引くことで、制輪子14の摩耗量Cを算出する。
【0031】
制御部21は、制輪子14の摩耗量Cが編成車両の他のブレーキ装置10の制輪子14の摩耗量Cと比較する。そして、制御部21は、制輪子14の摩耗量Cが編成車両の他のブレーキ装置10の制輪子14の摩耗量Cよりも大きいときには、ブレーキ力を他のブレーキ装置10のブレーキ力よりも小さくなるように調整する。
【0032】
ブレーキ装置10は、報知部26を備えている。報知部26は、制輪子14の摩耗量Cが所定値以上になったときに報知する。報知部26は、始業点検や仕業検査等のときに作業者が気づくことができるものが望ましく、音を出すスピーカーや光が点灯するライトや表示部等である。また、報知部26は、車両制御盤5に信号を出力するものでもよい。
【0033】
次に、
図2を併せ参照して、制御装置20による摩耗量算出処理の手順について説明する。
図2は、モータ11が起動されたときに、制輪子14を全開位置に駆動してから車輪2の踏面2Aに接触する接触位置までの移動距離Bを算出して、制輪子14の厚さAから制輪子14の摩耗量Cを算出するときの処理を示している。
【0034】
まず、制御装置20は、モータ11を駆動して制輪子14を基準位置に移動させる(ステップS1)。すなわち、制御部21は、モータ11を駆動制御して、基準位置である全開位置まで制輪子14を移動させる。制御部21は、制輪子14が全開位置に到達したことをセンサ12Aの検知によって認識する。
【0035】
続いて、制御装置20は、モータ11を駆動して制輪子14を接触位置まで移動させる(ステップS2)。すなわち、制御部21は、モータ11を駆動制御して、制輪子14が車輪2の踏面2Aに接触するまで制輪子14を移動させる。制御部21は、制輪子14が接触位置に到達したことをモータ11の電流値の急激な変化又は回転数の急激な変化に基づいて認識する、又はリミットスイッチ等によって認識する。
【0036】
続いて、制御装置20は、モータ11の移動距離Bを算出する(ステップS3)。すなわち、移動距離算出部23は、ステップS2において制輪子14を基準位置から接触位置まで移動させたときの制輪子14の移動距離Bを、モータ11の電流と時間との積及びモータ11の回転数の少なくとも一方から算出する。なお、ステップS3が移動距離算出ステップに相当する。
【0037】
続いて、制御装置20は、制輪子14の摩耗量Cを算出する(ステップS4)。すなわち、摩耗量算出部24は、予め入力されている基準距離L及び車輪2の半径rに加えて算出した移動距離Bを用いて、式(2)によって制輪子14の厚さAを算出する。そして、摩耗量算出部24は、得られた制輪子14の厚さAを制輪子14の厚さの初期値A0から引くことで制輪子14の摩耗量Cを算出する。なお、ステップS4が摩耗量算出ステップに相当する。よって、算出した制輪子14の摩耗量Cによって制輪子14の交換を判断することができる。
【0038】
次に、
図3を併せ参照して、制御装置20による摩耗量算出処理の手順について説明する。
図3は、制輪子14を車輪2の踏面2Aに接触した接触位置から基準位置まで戻したときの移動距離Bを算出して、制輪子14の厚さAから制輪子14の摩耗量Cを算出するときの処理を示している。
【0039】
まず、制御装置20は、モータ11を駆動して制輪子14を接触位置に移動させる(ステップS11)。すなわち、制御部21は、モータ11を駆動制御して、制輪子14が車輪2の踏面2Aに接触するまで制輪子14を移動させる。制御部21は、制輪子14が接触位置に到達したことをモータ11の電流値の急激な変化又は回転数の急激な変化に基づいて認識する、又はリミットスイッチ等によって認識する。
【0040】
続いて、制御装置20は、モータ11を駆動して制輪子14を基準位置まで移動させる(ステップS12)。すなわち、制御部21は、モータ11を駆動制御して、基準位置である全開位置まで制輪子14を移動させる。制御部21は、制輪子14が全開位置に到達したことをセンサ12Aの検知によって認識する。
【0041】
続いて、制御装置20は、制輪子14の移動距離Bを算出する(ステップS13)。すなわち、移動距離算出部23は、ステップS12において制輪子14を接触位置から基準位置まで移動させたときの制輪子14の移動距離Bを、モータ11の電流と時間との積及びモータ11の回転数の少なくとも一方から算出する。なお、ステップS13が移動距離算出ステップに相当する。
【0042】
続いて、制御装置20は、制輪子14の摩耗量Cを算出する(ステップS14)。すなわち、摩耗量算出部24は、予め入力されている基準距離L及び車輪2の半径rに加えて算出した移動距離Bを用いて、式(2)によって制輪子14の厚さAを算出する。そして、摩耗量算出部24は、得られた制輪子14の厚さAを制輪子14の厚さの初期値A0から引くことで制輪子14の摩耗量Cを算出する。なお、ステップS14が摩耗量算出ステップに相当する。よって、算出した制輪子14の摩耗量Cによって制輪子14の交換を判断することができる。
【0043】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
(1)モータ11の駆動情報を用いることにより制輪子14が車輪2の踏面2Aに接触するまでの制輪子14の移動距離Bを算出することで、過去のある時点における制輪子14の移動距離との変化から制輪子14の摩耗量Cを算出することができる。
【0044】
(2)基準位置から制輪子14が車輪2の踏面2Aに接触する接触位置までの移動距離Bを算出するため、移動距離の変化を確実に取得することができる。
(3)制輪子14を全開位置から制輪子14が車輪2の踏面2Aに接触する接触位置まで駆動させることで制輪子14の移動距離を算出することができる。
【0045】
(4)モータ11の電流と時間との積及びモータ11の回転数から制輪子14の移動距離Bを算出することができる。
(5)車輪2の摩耗量を反映することにより制輪子14の摩耗量Cを正確に算出することができる。
【0046】
(6)制輪子14を車輪2の踏面2Aに接触させるときに、制動が開始されるまでの時間を毎回同じにすることができる。
(7)制輪子14を交換したときに制輪子14を車輪2の踏面2Aに当接させたときの移動距離を過去のある時点における移動距離とすることで、交換した制輪子14の摩耗量を算出することができる。
【0047】
(8)報知部26の報知によって制輪子14が所定値以上の摩耗量になったことに気づくことができる。
(9)制輪子14の摩耗量が他のブレーキ装置10の制輪子14の摩耗量よりも大きいときにブレーキ力を他のブレーキ装置10のブレーキ力よりも小さくなるように調整する。このため、ブレーキ装置10同士の制輪子14の摩耗量を近づけることができ、摩耗した制輪子14を交換する時期を同じくらいにすることができる。
【0048】
(第2実施形態)
以下、
図2~
図4を参照して、ブレーキ装置をブレーキ装置に具体化した第2実施形態について説明する。この実施形態は、ディスクブレーキ装置である点が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0049】
図4に示すように、ブレーキ装置30は、鉄道車両の車輪2と一体に回転するディスク3に制輪子34A,34Bを押圧することで制動力を発生させるディスクブレーキ装置である。ブレーキ装置30は、回転型のモータ31を備え、モータ31によって駆動される。ブレーキ装置30は、モータ31の駆動力を伝達する伝達部材32と、左アーム33A及び右アーム33Bとを備えている。伝達部材32は、モータ31の駆動力によって左アーム33A及び右アーム33Bを変位させる。左アーム33Aには制輪子34Aが取り付けられ、右アーム33Bには制輪子34Bが取り付けられる。左アーム33A及び右アーム33Bは、伝達部材32によってディスク3の側面3Aに対して垂直方向へ変位する。制輪子34A,34Bは、左アーム33A及び右アーム33Bとともに変位して、ディスク3の側面3Aに押し当てられる。制輪子34A,34Bはディスク3の側面3Aに押し当てられることで摩耗して、制輪子34A,34Bの厚さが減少する。なお、モータ31が電動アクチュエータに相当する。また、ディスク3が回転体であって非摩擦材に相当し、制輪子34A,34Bが摩擦材に相当する。
【0050】
ブレーキ装置30は、第1実施形態と同様の制御装置20によって制御される。制御装置20は、車両制御盤5からの制動指令に基づいて制動力を制御する。制御装置20は、ブレーキ装置30を制御する制御部21を備えている。制御部21は、必要な制動力に応じてモータ31を駆動制御する。制御部21は、制輪子34A,34Bをディスク3の側面3Aに接触した位置から所定距離離れた位置まで移動するように制御する。こうすることで、制輪子34A,34Bをディスク3の側面3Aに接触させて制動が開始されるまでの時間を一定とすることができる。伝達部材32には、制輪子34A,34Bの移動距離における基準位置に制輪子34A,34Bが位置することを検知するセンサ32Aが設けられている。
【0051】
制御装置20は、駆動情報取得部22と、移動距離算出部23と、摩耗量算出部24とを備えている。駆動情報取得部22は、モータ31の駆動情報を取得する。駆動情報取得部22は、センサ32Aの検知情報を取得する。移動距離算出部23は、制輪子34A,34Bがディスク3の側面3Aに接触するまでの制輪子34A,34Bの移動距離を算出する。摩耗量算出部24は、移動距離と、過去のある時点における移動距離とに基づいて制輪子34A,34Bの厚さを算出する。
【0052】
移動距離算出部23は、センサ32Aが検知した基準位置から制輪子34A,34Bがディスク3の側面3Aに接触した接触位置までの制輪子34A,34Bの移動距離を算出する。基準位置は、制輪子34A,34Bがディスク3の側面3Aから最も離間した全開位置である。移動距離算出部23は、モータ31の電流と時間との積及びモータ31の回転数の少なくとも一方から制輪子34A,34Bの移動距離を算出する。制御部21は、制輪子34A,34Bがディスク3の側面3Aに接した接触位置に到達したことをモータ31の電流値の急激な変化又は回転数の急激な変化に基づいて認識することができる。なお、移動距離算出部23は、接触位置をリミットスイッチ等によって認識してもよい。
【0053】
移動距離算出部23は、2種類の方法で制輪子34A,34Bの移動距離を算出する。移動距離算出部23は、モータ31が起動されたときに、制輪子34A,34Bを全開位置に駆動してからディスク3の側面3Aに接触する接触位置までの移動距離を算出する。また、移動距離算出部23は、制輪子34A,34Bをディスク3の側面3Aに接触した接触位置から基準位置まで戻したときの移動距離を算出する。
【0054】
ここで、左アーム33A及び右アーム33B及び制輪子34A,34Bが基準位置にあるときに、左アーム33Aの制輪子34Aの取付位置と右アーム33Bの制輪子34Bの取付位置との距離を基準距離Lとする。制輪子34A,34Bをディスク3の側面3Aから最も離した全開位置、言い換えれば左アーム33A及び右アーム33Bが最も開いた位置である全開位置を基準位置とする。ディスク3の厚さを「t」とする。制輪子34A,34Bの厚さを「A」とする。基準位置からディスク3の側面3Aに接触する接触位置までの移動距離を「B」とする。制輪子34A,34Bの摩耗量を「C」とする。
【0055】
ディスク3の厚さtは、制御装置20に初期情報として入力される。なお、ディスク3の厚さtの変化は制輪子34A,34Bの摩耗量(厚さAの変化量)に比べ十分に小さい。よって、制輪子34A,34Bの厚さAの変化の監視において、ディスク3の厚さtの変化は無視することができる。新品の制輪子34A,34Bを左アーム33A及び右アーム33Bに取り付けたとき、制輪子34A,34Bの厚さAは一意の値である。制輪子34A,34Bを左アーム33A及び右アーム33Bに取り付けたときに計測した移動距離が過去のある時点における移動距離に相当する。
【0056】
摩耗量算出部24は、以下の式(4)、(5)によって制輪子34A,34Bの厚さAを算出して、以下の式(6)によって制輪子34A,34Bの摩耗量Cを算出する。基準距離Lは、ディスク3の厚さtと制輪子34A,34Bの厚さAと制輪子34A,34Bの移動距離Bとの和である。よって、制輪子34A,34Bの厚さAを求められる。そして、摩耗量算出部24は、得られた制輪子34A,34Bの厚さAを制輪子34A,34Bの厚さの初期値A0から引くことで制輪子34A,34Bの摩耗量Cを算出する。
【0057】
L=t+2(A+B)・・・(4)
A=(L-t-2B)/2・・・(5)
C=A0-A・・・(6)
【0058】
基準距離L及びディスク3の厚さtは定数である。摩耗量算出部24は、制輪子34A,34Bの移動距離Bを始業点検や仕業検査等のときに定期的に自動測定して、制輪子34A,34Bの厚さAを算出する。そして、摩耗量算出部24は、制輪子34A,34Bの厚さAを厚さの初期値A0から引くことで制輪子34A,34Bの摩耗量Cを算出する。
【0059】
制御部21は、制輪子34A,34Bの摩耗量Cが編成車両の他のブレーキ装置10の制輪子34A,34Bの摩耗量Cと比較する。そして、制御部21は、制輪子34A,34Bの摩耗量Cが編成車両の他のブレーキ装置10の制輪子34A,34Bの摩耗量Cよりも大きいときには、ブレーキ力を他のブレーキ装置10のブレーキ力よりも小さくなるように調整する。
【0060】
ブレーキ装置10は、報知部26を備えている。報知部26は、制輪子34A,34Bの摩耗量Cが所定値以上になったときに報知する。報知部26は、始業点検や仕業検査等のときに作業者が気づくことができるものが望ましく、音を出すスピーカーや点灯するライトや表示部等である。また、報知部26は、車両制御盤5に信号を出力するものでもよい。
【0061】
次に、
図2を併せ参照して、制御装置20による摩耗量算出処理の手順について説明する。
図2は、モータ31が起動されたときに、制輪子34A,34Bを全開位置に駆動してからディスク3の側面3Aに接触する接触位置までの移動距離Bを算出して、制輪子34A,34Bの厚さAから制輪子34A,34Bの摩耗量Cを算出するときの処理を示している。
【0062】
まず、制御装置20は、モータ31を駆動して制輪子34A,34Bを基準位置に移動させる(ステップS1)。すなわち、制御部21は、モータ31を駆動制御して、基準位置である全開位置まで制輪子34A,34Bを移動させる。制御部21は、制輪子34A,34Bが全開位置に到達したことをセンサ32Aの検知によって認識する。
【0063】
続いて、制御装置20は、モータ31を駆動して制輪子34A,34Bを接触位置まで移動させる(ステップS2)。すなわち、制御部21は、モータ31を駆動制御して、制輪子34A,34Bがディスク3の側面3Aに接触するまで制輪子34A,34Bを移動させる。制御部21は、制輪子34A,34Bが接触位置に到達したことをモータ31の電流値の急激な変化又は回転数の急激な変化に基づいて認識する、又はリミットスイッチ等によって認識する。
【0064】
続いて、制御装置20は、モータ31の移動距離Bを算出する(ステップS3)。すなわち、移動距離算出部23は、ステップS2において制輪子34A,34Bを基準位置から接触位置まで移動させたときの制輪子34A,34Bの移動距離Bを、モータ31の電流と時間との積及びモータ31の回転数の少なくとも一方から算出する。なお、ステップS3が移動距離算出ステップに相当する。
【0065】
続いて、制御装置20は、制輪子34A,34Bの摩耗量Cを算出する(ステップS4)。すなわち、摩耗量算出部24は、予め入力されている基準距離L及びディスク3の厚さtに加えて算出した移動距離Bを用いて、式(5)によって制輪子34A,34Bの厚さAを算出する。そして、摩耗量算出部24は、得られた制輪子34A,34Bの厚さAを制輪子34A,34Bの厚さの初期値A0から引くことで制輪子34A,34Bの摩耗量Cを算出する。なお、ステップS4が摩耗量算出ステップに相当する。よって、算出した制輪子34A,34Bの摩耗量Cによって制輪子34A,34Bの交換を判断することができる。
【0066】
次に、
図3を併せ参照して、制御装置20による摩耗量算出処理の手順について説明する。
図3は、制輪子34A,34Bをディスク3の側面3Aに接触した接触位置から基準位置まで戻したときの移動距離Bを算出して、制輪子34A,34Bの厚さAから制輪子34A,34Bの摩耗量Cを算出するときの処理を示している。
【0067】
まず、制御装置20は、モータ31を駆動して制輪子34A,34Bを接触位置に移動させる(ステップS11)。すなわち、制御部21は、モータ31を駆動制御して、制輪子34A,34Bがディスク3の側面3Aに接触するまで制輪子34A,34Bを移動させる。制御部21は、制輪子34A,34Bが接触位置に到達したことをモータ31の電流値の急激な変化又は回転数の急激な変化に基づいて認識する、又はリミットスイッチ等によって認識する。
【0068】
続いて、制御装置20は、モータ31を駆動して制輪子34A,34Bを基準位置まで移動させる(ステップS12)。すなわち、制御部21は、モータ31を駆動制御して、基準位置である全開位置まで制輪子34A,34Bを移動させる。制御部21は、制輪子34A,34Bが全開位置に到達したことをセンサ32Aの検知によって認識する。
【0069】
続いて、制御装置20は、制輪子34A,34Bの移動距離Bを算出する(ステップS13)。すなわち、移動距離算出部23は、ステップS12において制輪子34A,34Bを接触位置から基準位置まで移動させたときの制輪子34A,34Bの移動距離Bを、モータ11の電流と時間との積及びモータ11の回転数の少なくとも一方から算出する。なお、ステップS13が移動距離算出ステップに相当する。
【0070】
続いて、制御装置20は、制輪子34A,34Bの摩耗量Cを算出する(ステップS14)。すなわち、摩耗量算出部24は、予め入力されている基準距離L及びディスク3の厚さtに加えて算出した移動距離Bを用いて、式(5)によって制輪子34A,34Bの厚さAを算出する。そして、摩耗量算出部24は、得られた制輪子34A,34Bの厚さAを制輪子34A,34Bの厚さの初期値A0から引くことで制輪子34A,34Bの摩耗量Cを算出する。なお、ステップS14が摩耗量算出ステップに相当する。よって、算出した制輪子34A,34Bの摩耗量Cによって制輪子34A,34Bの交換を判断することができる。
【0071】
次に、第2実施形態の効果について説明する。
(1)モータ31の駆動情報を用いることにより制輪子34A,34Bがディスク3に接触するまでの制輪子34A,34Bの移動距離Bを算出することで、過去のある時点における制輪子34A,34Bの移動距離との変化から制輪子34A,34Bの摩耗量Cを算出することができる。
【0072】
(2)基準位置から制輪子34A,34Bがディスク3に接触する接触位置までの移動距離Bを算出するため、移動距離の変化を確実に取得することができる。
(3)制輪子34A,34Bを全開位置から制輪子34A,34Bがディスク3の側面3Aに接触する接触位置まで駆動させることで制輪子34A,34Bの移動距離を算出することができる。
【0073】
(4)モータ31の電流と時間との積及びモータ31の回転数から制輪子34A,34Bの移動距離Bを算出することができる。
(5)制輪子34A,34Bをディスク3に接触させるときに、制動が開始されるまでの時間を毎回同じにすることができる。
【0074】
(6)制輪子34A,34Bを交換したときに制輪子34A,34Bをディスク3に当接させたときの移動距離を過去のある時点における移動距離とすることで、交換した制輪子34A,34Bの摩耗量を算出することができる。
【0075】
(7)報知部26の報知によって制輪子34A,34Bが所定値以上の摩耗量になったことに気づくことができる。
(8)制輪子34A,34Bの摩耗量が他のブレーキ装置10の制輪子34A,34Bの摩耗量よりも大きいときにブレーキ力を他のブレーキ装置10のブレーキ力よりも小さくなるように調整する。このため、ブレーキ装置10同士の制輪子34A,34Bの摩耗量を近づけることができ、摩耗した制輪子34A,34Bを交換する時期を同じくらいにすることができる。
【0076】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0077】
・上記各実施形態では、制輪子34A,34Bの摩耗量Cが編成車両の他のブレーキ装置10の制輪子34A,34Bの摩耗量Cよりも大きいときには、制輪子34A,34Bの摩耗量が均一となるようにブレーキ力を調整した。しかしながら、制輪子34A,34Bの摩耗量が均一となるようにブレーキ力を調整しなくてもよい。
【0078】
・上記各実施形態では、摩擦材の摩耗量が所定値以上になったときに報知する報知部26をブレーキ装置10,30に備えた。しかしながら、報知部26の構成を省略してもよい。
【0079】
・上記各実施形態では、摩擦材の摩耗量が他のブレーキ装置の摩擦材の摩耗量よりも大きいときにブレーキ力を他のブレーキ装置のブレーキ力よりも小さくなるように調整した。摩擦材の交換時期を近づけなくてもよければ、他のブレーキ装置の摩擦材の摩耗量と比較しなくてもよい。
【0080】
・上記各実施形態では、制御部21が制動するために摩擦材が被摩擦材に接触した後、摩擦材と被摩擦材との隙間が一定となる位置まで駆動して停止した。しかしながら、制御部21が制動するために摩擦材が被摩擦材に接触した後、摩擦材を初期位置まで駆動して停止してもよい。
【0081】
・上記各実施形態では、全開位置を基準位置としたが、全開位置とは異なる位置を基準位置としてもよい。すなわち、摩擦材を全開位置に駆動してから被摩擦材に接触する接触位置までの摩擦材の移動距離Bを算出したが、全開位置とは異なる基準位置に駆動してから被摩擦材に接触する接触位置までの摩擦材の移動距離Bを算出してもよい。また、摩擦材を被摩擦材に接触した接触位置から全開位置とは異なる基準位置まで戻したときの摩擦材の移動距離Bを算出してもよい。
【0082】
・上記各実施形態では、移動距離算出部23が2種類の方法で摩擦材の移動距離Bを算出した。しかしながら、移動距離算出部23は、2種類いずれか一方の方法で摩擦材の移動距離Bを算出してもよい。
【0083】
・上記各実施形態では、回転型のモータ11,31を用いて摩擦材を変位させたが、直動アクチュエータやリニアアクチュエータを用いて摩擦材を変位させてもよい。
・上記各実施形態では、摩擦材の摩耗量Cによって摩擦材の交換を判断したが、摩擦材の厚さAによって摩擦材の交換を判断してもよい。例えば、摩擦材の厚さAが交換の規定値以下になったことによって摩擦材の交換を判断する。
【0084】
・上記各実施形態において、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成することができるように構成されていればよい。
【0085】
・上記各実施形態において、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成することができるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0086】
A 厚さ
B 移動距離
C 摩耗量
L 基準距離
r 半径
t 厚さ
2 車輪(被摩擦材)
2A 踏面
3 ディスク(被摩擦材)
3A 側面
5 車両制御盤
10 ブレーキ装置
11 モータ
12 伝達部材
12A センサ
13 制輪子保持部材
14 制輪子(摩擦材)
20 制御装置
21 制御部
22 駆動情報取得部
23 移動距離算出部
24 摩耗量算出部
25 被摩擦材摩耗量取得部
26 報知部
30 ブレーキ装置
31 モータ
32 伝達部材
32A センサ
33A 左アーム
33B 右アーム
34A 制輪子(摩擦材)
34B 制輪子(摩擦材)