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特開2022-154681化粧シート、化粧板、及び化粧シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154681
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】化粧シート、化粧板、及び化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20221005BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057832
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 麻美子
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01C
4F100AK03A
4F100AR00B
4F100AT00E
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100CB00D
4F100DD07C
4F100GB08
4F100HB01B
4F100HB31B
4F100JB13
4F100JB16A
4F100JL11D
4F100JN24C
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】化粧シートの表面にマット感を付与しつつ、見る角度によってその艶の程度が変わらない、意匠性に優れた化粧シート、化粧板、及び化粧シートの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る化粧シート8は、熱可塑性樹脂層4と、絵柄模様層3と、表面保護層1とをこの順に備え、表面保護層1の表面にはエンボス部5が形成されており、表面保護層1のエンボス部5が形成された表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaは2.0μm以上10.0μm以下の範囲内であり、且つJIS B 0601で規定される十点平均粗さRzは20.0μm以上40.0μmの範囲内である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂層と、絵柄模様層と、表面保護層とをこの順に備えた化粧シートであって、
前記表面保護層の表面には凹凸形状が形成されており、
前記表面保護層の前記凹凸形状が形成された前記表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaは2.0μm以上10.0μm以下の範囲内であり、且つJIS B 0601で規定される十点平均粗さRzは20.0μm以上40.0μmの範囲内であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記算術平均粗さRaは、1.0μm以上8.0μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記算術平均粗さRaは、3.9μm以上6.6μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記十点平均粗さRzは、25.0μm以上38.0μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記十点平均粗さRzは、26.7μm以上37.4μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記化粧シートの外層側からJIS Z8741:1997に準拠して測定した60度鏡面光沢度が5.0以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記化粧シートの外層側からJIS Z8741:1997に準拠して測定した85度鏡面光沢度と、前記化粧シートの外層側からJIS Z8741:1997に準拠して測定した20度鏡面光沢度との差が0.0以上6.0以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化粧シートと、基材とを、接着剤層を介して積層したことを特徴とする化粧板。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれかに1項に記載の化粧シートの製造方法であって、
熱可塑性樹脂層と、絵柄模様層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備えた積層体の前記透明熱可塑性樹脂層の表面に凹凸形状を形成する工程と、
前記透明熱可塑性樹脂層の前記凹凸形状が形成された前記表面に表面保護層を形成する工程と、を有し、
前記凹凸形状を形成する工程では、前記透明熱可塑性樹脂層の前記凹凸形状が形成された前記表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaが2.0μm以上10.0μm以下の範囲内となるように、且つJIS B 0601で規定される十点平均粗さRzが20.0μm以上40.0μmの範囲内となるように前記凹凸形状を形成することを特徴とする化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート、化粧板、及び化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートに関する技術としては、例えば、特許文献1に記載された技術がある。
化粧シートには、意匠性の観点から、化粧シートを構成する表面保護層に艶調整剤(艶消し添加剤)を添加して化粧シート表面のマット感を調整するものがある。
艶調整剤を表面保護層に添加した化粧シートは、見る角度によって表面の艶の程度が変わってしまう場合や、斜光で見た時に艶調整剤の凹凸によって光が乱反射し、化粧シート全体(表面保護層全体)が白く見える現象が起こる場合がある。そのため、化粧シートを見る角度によっては、異なる意匠のように見えてしまうことがある。
また、表面保護層の種類(例えば、表面保護層の構成樹脂成分の種類)が変わる場合、艶の程度を合わせるために艶調整剤の添加量を表面保護層の種類に合わせて調整する必要が生ずる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-129959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、化粧シートの表面にマット感を付与しつつ、見る角度によってその艶の程度が変わらない、意匠性に優れた化粧シート、化粧板、及び化粧シートの製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る化粧シートは、熱可塑性樹脂層と、絵柄模様層と、表面保護層とをこの順に備え、前記表面保護層の表面には凹凸形状が形成されており、前記表面保護層の前記凹凸形状が形成された前記表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaは2.0μm以上10.0μm以下の範囲内であり、且つJIS B 0601で規定される十点平均粗さRzは20.0μm以上40.0μmの範囲内である。
【0006】
また、本発明の一態様に係る化粧板は、上述した化粧シートと、基材とを、接着剤層を介して積層したものである。
【0007】
また、本発明の一態様に係る化粧シートの製造方法は、熱可塑性樹脂層と、絵柄模様層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備えた積層体の前記透明熱可塑性樹脂層の表面に凹凸形状を形成する工程と、前記透明熱可塑性樹脂層の前記凹凸形状が形成された前記表面に表面保護層を形成する工程と、を有し、前記凹凸形状を形成する工程では、前記透明熱可塑性樹脂層の前記凹凸形状が形成された前記表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaが2.0μm以上10.0μm以下の範囲内となるように、且つJIS B 0601で規定される十点平均粗さRzが20.0μm以上40.0μmの範囲内となるように前記凹凸形状を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、化粧シートの表面にマット感を付与しつつ、見る角度によってその艶の程度が変わらない、意匠性に優れた化粧シート、化粧板、及び化粧シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る化粧シート及び化粧板の一構成例を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る表面保護層の一構成例を示す断面図である。
図3】本発明の実施例で透明熱可塑性樹脂層の表面に形成したパターンの形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(化粧シート及び化粧板の構成)
以下に、本発明の実施形態に係る化粧シート及び化粧板について、図面に基づいて詳細に説明するが、本発明の範囲内にあるものであれば、必ずしもこの順に積層してある必要はない。またこの図面に記載されていない層が付加されていてもよい。
図1に本実施形態に係る化粧シート及び化粧板の一実施例の断面構造を示す。
本実施形態に係る化粧シート8は、熱可塑性樹脂層4、絵柄模様層3、透明熱可塑性樹脂層2、表面保護層1をこの順に積層したものである。透明熱可塑性樹脂層2及び表面保護層1の表面にはエンボス(凹凸)部5が形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層2に形成されたエンボス部5を構成する全ての面は、表面保護層1を構成する樹脂で覆われていてもよい。
本実施形態に係る化粧板9は、基材(化粧板用基材)7、接着剤層6、化粧シート8をこの順に積層したものである。
以下、上述した各層の構成について詳しく説明する。
【0011】
[表面保護層]
本実施形態に係る表面保護層1は、化粧シート8に、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性などの機能を付与するために設けられた層であって、艶調整剤を含まない層である。
表面保護層1は、表面に凹凸形状(エンボス部5)を有している。図2は、表面保護層1の表面に形成されたエンボス部5の形状を模式的に示す図である。図2に示すように、表面保護層1は、層内の下層(裏面側)の領域であるコア部1Aと、層内の上層(表面側)の領域である突状部1B(凸状突起の一例)とを含み、表面に凹凸形状を有している。つまり、表面保護層1は、コア部1Aとコア部1Aの一方の面から畝状に突出して設けられた突状部1Bとを有している。これにより、表面保護層1の表面には、凹凸形状が形成されている。突状部1Bは、等間隔で規則的に並んでいてもよいし、不規則に並んでいてもよい。また、突状部1Bは、独立して形成されていてもよいし、突状部1B同士がその一部を共有するようにして形成されていてもよい。
【0012】
以下、表面保護層1の表面に形成された凹凸形状について詳しく説明する。
表面保護層1の表面の、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaは、2.0μm以上10.0μm以下の範囲内である。この算術平均粗さRaは、1.0μm以上8.0μm以下の範囲内であれば好ましく、3.9μm以上6.6μm以下の範囲内であればより好ましい。
また、表面保護層1の表面の、JIS B 0601で規定される十点平均粗さRzは、20.0μm以上40.0μmの範囲内である。この十点平均粗さRzは、25.0μm以上38.0μm以下の範囲内であれば好ましく、26.7μm以上37.4μm以下の範囲内であればより好ましい。
【0013】
つまり、表面保護層1の表面の、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaは2.0μm以上10.0μm以下の範囲内であり、且つJIS B 0601で規定される十点平均粗さRzは20.0μm以上40.0μmの範囲内である。算術平均粗さRaと十点平均粗さRzとが上記数値範囲内であれば、表面保護層の種類(例えば、表面保護層の構成樹脂成分の種類)によらず、化粧シート8の表面にマット感を付与しつつ、見る角度に依存することなく艶の程度を維持することができる。
【0014】
また、本実施形態に係る表面保護層1であれば、艶調整剤(艶消し添加剤)を含んでいないため、見る角度によって艶の程度が変わることや、斜光で見た場合に艶調整剤の凹凸によって光が乱反射し表面保護層1全体が白く見える現象が起きることもない。そのため、本実施形態に係る表面保護層1であれば、化粧シート8(表面保護層1)を見る角度によって異なる意匠のように見えてしまうこともない。
また、本実施形態に係る表面保護層1であれば、表面保護層の種類(例えば、表面保護層の構成樹脂成分の種類)が変わる場合であっても、艶の程度を合わせるために艶調整剤の添加量を表面保護層の種類に合わせて調整する必要もない。
【0015】
また、化粧シート8の外層側からJIS Z8741:1997に準拠して測定した60度鏡面光沢度は5.0以下であることが好ましい。60度鏡面光沢度が5.0以下であれば、化粧シート8の表面に十分なマット感を付与することができる。
また、化粧シート8の外層側からJIS Z8741:1997に準拠して測定した85度鏡面光沢度と、化粧シート8の外層側からJIS Z8741:1997に準拠して測定した20度鏡面光沢度との差は0.0以上6.0以下の範囲内であれば好ましく、0.0以上3.8以下の範囲内であればより好ましい。また、20度鏡面光沢度が0.2以下であり、且つ85度鏡面光沢度が4.0以下であればより好ましい。85度鏡面光沢度と20度鏡面光沢度との差が上記数値範囲内、あるいは上記数値であれば、見る角度に依存することなく艶の程度を確実に維持することができる。
【0016】
表面保護層1の厚さは、6μm以上20μm以下の範囲とすることが好ましい。表面保護層1の厚さが6μm以上である場合、表面保護層として必要な耐摩耗性等の機能を十分に有することができる。また、表面保護層1の厚さが20μm以下である場合、表面保護層1が不要に厚くなりすぎず、製造コストが増加しすぎないという効果を有する。
表面保護層1は、樹脂材料により形成される。樹脂材料としては、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等のいずれであってもよい。
例えば、電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂を用いることができる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。紫外線硬化型樹脂は、水系樹脂又は非水系(有機溶剤系)樹脂の何れであってもよい。
【0017】
表面保護層1は、透明熱可塑性樹脂層2を完全に覆っていれば、表面保護層としての機能を化粧シート8の全面に亘って発現することができる。また、表面保護層1の密度は、目的とする艶や性能に応じて調整可能である。
表面保護層1を構成する材料としては、上述した樹脂材料以外に、例えば、ウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系などの樹脂材料から適宜選択して用いることができる。
表面保護層1は、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および帯電防止剤等の各種添加剤を配合してもよい。
本実施形態における表面保護層1を設ける方法としては、例えば、グラビアコート、リバースコート、グラビアリバースコート、ダイコート、フローコートなど、公知の各種コート方式が利用可能である。
【0018】
[透明熱可塑性樹脂層]
透明熱可塑性樹脂層2は、絵柄模様層3を保護するために必要に応じて設けることができ、絵柄を活かせるものであれば透明でも半透明でもよい。あるいは適宜艶消し模様やエンボス付与によりエンボス部5を設けたものであってもよい。
透明熱可塑性樹脂層2を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴムなどが挙げられるが、その中でも特に、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテンの単独重合あるいはこれら2種以上の共重合樹脂、もしくはそれらの混合樹脂からなるものが好ましい。また、これらの樹脂中には、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、加工安定剤、などの各種添加剤を添加してもよい。
【0019】
透明熱可塑性樹脂層2の膜厚としては15μm以上150μm以下の範囲内が好適である。熱可塑性樹脂層4と透明熱可塑性樹脂層2とを絵柄模様層3を介して積層する方法としては、接着性樹脂層(図示せず)を介して貼り合わせるドライラミネート法や、絵柄模様層3を設けた熱可塑性樹脂層4上に、透明熱可塑性樹脂層2となる透明樹脂をTダイから溶融押出しして製膜しながら貼り合わせる押出しラミネート法などを用いることができる。
なお、上述の実施形態では透明熱可塑性樹脂層2を備えた場合について説明したが、本実施形態では透明熱可塑性樹脂層2を備えなくてもよい。つまり、絵柄模様層3を設けた熱可塑性樹脂層4上に表面保護層1を形成してもよい。
【0020】
[熱可塑性樹脂層]
熱可塑性樹脂層4は、絵柄模様層3をグラビア印刷などで設けることが可能なものであることが好ましい。熱可塑性樹脂層4としては、例えば、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙等の紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴム、有機系もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀等の金属箔等から任意で選定可能である。
【0021】
[絵柄模様層]
絵柄模様層3は、隠蔽性あるいは意匠性を付与するための層であり、熱可塑性樹脂層4上に全面ベタあるいは部分的に絵柄インキを印刷することで設けることができる。
絵柄インキのバインダーとしては、例えば、硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変成物の中から適宜選択すればよい。これらは水性や溶剤系、あるいはエマルジョン系でも問題はなく、且つ硬化方法も1液タイプでも、硬化剤を利用した2液タイプでも任意での選択が可能である。さらに、紫外線や電子線等の活性エネルギー線照射によりインキを硬化させることも可能である。
【0022】
絵柄インキの顔料としては、例えば、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等、公知の各種顔料を使用することができる。これらのインキ材料については、絵柄模様層3の下の熱可塑性樹脂層4や絵柄模様層3の上に積層される樹脂との接着性も考慮して選定する必要がある。
【0023】
絵柄模様層3には、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、分散剤などの各種添加剤を添加してもよい。絵柄模様層3を設ける方法としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、シルク印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷技法により、熱可塑性樹脂層4に直接施すことができる。なお、インキの塗布とは別に各種金属の蒸着やスパッタリングで金属調の意匠性を施すことも可能である。
【0024】
[基材]
本実施形態では、上述した化粧シート8を基材7に貼り合せて、化粧板9としてもよい。具体的には、化粧シート8を、鋼板・アルミ板などの金属系基材、MDFなどの木質系基材、またはPETなどの樹脂系基材上に貼り合わせることにより、高い強度を有する化粧板9を得ることができる。
また、基材7は、例えば、パルプやセルロース繊維を主体とする紙素材(紙系基材)であってもよい。
基材7が紙素材である場合、紙力剤や隠蔽改善を目的とした添加剤、セルロースナノファイバー、着色剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0025】
また、基材7が樹脂材料(樹脂系基材)である場合、樹脂材料としてはポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステル等に代表されるような熱可塑性樹脂が用いられることが好ましい。熱可塑性樹脂には、例えば酸化チタンや炭酸カルシウム等の無機材料を添加剤として含んでいてもよい。熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステルの少なくとも1種を使用することで、無機材料の分散性が向上する。また、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンを使用することで、無機材料の分散性がさらに向上する。
【0026】
さらに、基材7が樹脂フィルム(樹脂系基材)である場合、樹脂フィルムとしてはポリエチレンテレフタレートを主とするフィルム素材であることが好ましい。樹脂フィルムには、上述した無機材料を添加剤として含んでいてもよい。また、基材7が樹脂フィルムである場合、基材7は1軸もしくは2軸に延伸された樹脂フィルムであってもよい。1軸もしくは2軸に延伸された樹脂フィルムにより形成された基材7は、内部に空隙を含んでいてもよい。
【0027】
基材7が樹脂材料又は樹脂フィルムである場合、基材7に対する無機材料の含有量を1質量%以上90質量%以下の範囲内とすることが好ましく、5質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがより好ましく、20質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがさらに好ましい。無機材料の含有量を上述した範囲内とすることにより、十分な不燃性または十分な難燃性を確実に得つつ、印刷適性やラミネート適性を確実に向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを確実に低減することができる。
【0028】
建具用基材(基材7)としては、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。上記板材を基材7として用いる場合、基材7の厚さは、2mm以上25mm以下の範囲内であることが好ましく、5mm以上20mm以下の範囲内であることがより好ましく、10mm以上15mm以下の範囲内であることがさらに好ましい。基材7の厚さが上述の範囲内である場合、ラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減することができる。
【0029】
なお、基材7は、アルミなどの金属やプラスチックなどの樹脂、またはそれらの複合材料であっても良い。基材7を設けることにより、例えば、重歩行時における靴のかかとや小石による傷の発生を抑制可能な化粧板9を提供することができる。
基材7の表面には、例えばコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施してもよい。これにより、基材7と熱可塑性樹脂層4との接着性(密着性)が向上する。
【0030】
[接着剤層]
接着剤層6は、接着剤で構成された層であり、基材7と熱可塑性樹脂層4とを貼り合せるための層である。
接着剤層6を構成する接着剤としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系等を採用することができる。特に、本実施形態においては、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの配合による2液硬化型ウレタン系の接着剤等が好ましい。また、これらの材料にシリカや硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機質粉末を添加して接着剤層6を形成すると、巻取保存時のブロッキングの防止や、投錨効果による接着力の向上に有効である。
【0031】
接着剤層6の構成材料としては、任意の樹脂系どうしの接着強度向上に寄与するものであるならば、特に限定は無く、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等種々の材料が使用できる。なお、接着剤層6の構成材料としては、一般的には、塗膜凝集力の高い2液硬化型のポリウレタン系接着剤を用いることが多い。また、塗工方法も塗液粘度等によって適宜選択できる。接着剤層6の層厚は、0.5μm~6μm程度が好適である。
【0032】
[接着性樹脂層]
接着性樹脂層(図示せず)は、絵柄模様層3を設けた熱可塑性樹脂層4と透明熱可塑性樹脂層2とを貼り合わせるため、必要に応じて設けられる。接着性樹脂層が無くとも目標とする接着強度が得られる場合、あるいは透明熱可塑性樹脂層2を設けない場合等には、存在の必要が無いこともある。
なお、接着性樹脂層の構成材料として、上述した接着剤層6の構成材料と同じものを用いてもよい。
【0033】
(化粧シート及び化粧板の製造方法)
以下、本実施形態に係る化粧シート8の製造方法の一例について、簡単に説明する。
上述した熱可塑性樹脂層4、及び絵柄模様層3をこの順に積層する。
次に、絵柄模様層3上に透明熱可塑性樹脂層2を形成すると同時に、透明熱可塑性樹脂層2の表面にエンボス加工によりエンボス部5を形成する。ここで、エンボス部5の形状を、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaが2.0μm以上10.0μm以下の範囲内となるように、且つJIS B 0601で規定される十点平均粗さRzが20.0μm以上40.0μmの範囲内となるように形成する。
【0034】
次に、エンボス部5を形成した透明熱可塑性樹脂層2の表面に表面保護層1を形成するための塗液を塗布する。この際、表面保護層1を形成するための塗液の厚さは、透明熱可塑性樹脂層2の表面上で均一となっている。そのため、表面保護層1を形成するための塗液の表面には、透明熱可塑性樹脂層2の表面に形成された凹凸形状と同じ形状が形成される。
最後に、この塗液を硬化させることで、透明熱可塑性樹脂層2上に表面保護層1を形成する。この塗液の硬化工程においては、表面保護層1を形成するための塗液の形状はそのまま維持されるので、化粧シート8の表面保護層1の表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaは2.0μm以上10.0μm以下の範囲内であり、且つJIS B 0601で規定される十点平均粗さRzは20.0μm以上40.0μmの範囲内となる。
こうして、本実施形態に係る化粧シート8を形成する。
【0035】
以下、本実施形態に係る化粧板9の製造方法の一例について、簡単に説明する。
上述した化粧シート8と基材7とを、上述した接着剤層6を介して貼り合せる。
最後に、接着剤層6を硬化させて化粧板9を形成する。
【0036】
[実施例]
(実施例1)
オレフィン素材からなる熱可塑性樹脂層の上に、絵柄模様層として木目柄をグラビア印刷機で印刷して設けた。
次に、絵柄模様層の上に、オレフィン素材からなる透明熱可塑性樹脂層を押出ラミネートで貼り合わせた。このとき、透明熱可塑性樹脂層の表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaは3.9μmであり、JIS B 0601で規定される十点平均粗さRzは26.7μmであった。また、透明熱可塑性樹脂層の表面に形成した凹凸形状のパターンを、図3(a)に示すパターンとした。つまり、実施例1では、透明熱可塑性樹脂層の表面に凸部(突状部)あるいは凹部を連続的且つ不規則に形成した。
その後に、表面保護層として熱硬化性樹脂(DICグラフィックス(株)製UCクリヤー)を6μmの厚さで塗工した。
こうして、実施例1に係る化粧シートを得た。
【0037】
(実施例2)
表面保護層の構成樹脂を紫外線硬化型樹脂(DICグラフィックス(株)製ウレタンアクリレート樹脂)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る化粧シートを得た。また、透明熱可塑性樹脂層の表面に形成した凹凸形状のパターンを、図3(a)に示すパターンとした。なお、実施例2では、表面保護層の厚さは9μmとした。
【0038】
(実施例3)
透明熱可塑性樹脂層の表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaを6.6μmとして、JIS B 0601で規定される十点平均粗さRzを37.4μmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る化粧シートを得た。なお、透明熱可塑性樹脂層の表面に形成した凹凸形状のパターンを、図3(b)に示すパターンとした。
【0039】
(比較例1)
透明熱可塑性樹脂層の表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaを1.5μmとして、JIS B 0601で規定される十点平均粗さRzを21.3μmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る化粧シートを得た。
【0040】
(比較例2)
透明熱可塑性樹脂層の表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaを11.3μmとして、JIS B 0601で規定される十点平均粗さRzを37.2μmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る化粧シートを得た。
【0041】
<評価>
上記実施例および比較例で得られた化粧シートについて、以下の方法で「60°光沢値」及び「光沢差」を評価した。評価結果を下記表1に示す。なお、「算術平均粗さRa」及び「十点平均粗さRz」は、以下の方法で測定した。
【0042】
(算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzの測定)
上記実施例及び比較例で得られた化粧シートの表面保護層の表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRa、及びJIS B 0601で規定される十点平均粗さRzを、(株)ミツトヨ製の小型表面粗さ測定器サーフテストSJ-410を使用してそれぞれ測定した。
なお、本実施例における算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzは、表面保護層の異なる箇所を10回測定して得られた平均値をそれぞれ用いた。
【0043】
(60°光沢値及び光沢差の測定)
上記実施例および比較例で得られた化粧シートの表面保護層の表面における、20度、60度、85度の3角度の光沢度(すなわち、20度鏡面光沢度、60度鏡面光沢度、85度鏡面光沢度)を、(株)テツタニ製のマイクロトリグロス3角度表面光沢度計を使用してそれぞれ測定した。
なお、本実施例における各光沢度は、表面保護層の異なる箇所を10回測定して得られた平均値をそれぞれ用いた。
【0044】
ここで、「60°光沢値」とは、JIS B 0601で規定される60度鏡面光沢度(Gs60)を意味する。また、「光沢差」とは、20度鏡面光沢度(Gs20)の値と85度鏡面光沢度(Gs80)の値との差を意味する。
また、「評価」における基準は以下のようにした。
○:「60°光沢値」が5.0以下であり、且つ「光沢差」が6.0以下である。
×:「60°光沢値」が5.0超である。または「光沢差」が6.0超である。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示したとおり、実施例1~実施例3に例示した本実施形態に係る化粧シートは、表面保護層の表面における、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaを2.0μm以上10.0μm以下の範囲内とし、且つJIS B 0601で規定される十点平均粗さRzを20.0μm以上40.0μmの範囲内とすることにより、60°光沢値(60度鏡面光沢度Gs60)が5.0以下となり、マット感に優れたものとなっている。
また、表1に示したとおり、実施例1~実施例3に例示した本実施形態に係る化粧シートでは、表面保護層の表面における光沢差(20度鏡面光沢度Gs20の値と85度鏡面光沢度Gs85の値との差)が6.0以下となり、見る角度によってその艶の程度が変わらないものとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の化粧シートは、建築内装用および外装用、建具の表面や枠材、家電製品の表面材、床材等々の建築用資材に用いられる化粧シートに関するもので、木質ボード、無機系ボード類、金属板等に貼り合わせて化粧板として利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 ・・・表面保護層
2 ・・・透明熱可塑性樹脂層
3 ・・・絵柄模様層
4 ・・・熱可塑性樹脂層
5 ・・・エンボス部
6 ・・・接着剤層
7 ・・・基材
8 ・・・化粧シート
9 ・・・化粧板
図1
図2
図3