(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154683
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】車両用のバッテリーケースおよび車両用のバッテリーケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20221005BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20221005BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M50/249
H01M50/262 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057834
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 裕志
(72)【発明者】
【氏名】大石 将人
(72)【発明者】
【氏名】永塚 寛奈
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AS07
5H040AY05
5H040CC15
5H040CC35
5H040CC38
5H040CC59
5H040JJ03
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】製造コストの削減を図ることができる車両用のバッテリーケースを提供する。
【解決手段】バッテリーケース10aは、バッテリーモジュール50を載置可能なロアパネル11とヒートシンク12の積層体と、この積層体の下側に配置されているシェアパネル19と、積層体とシェアパネル19との間に配置されているロアフレーム18aと、積層体およびシェアパネル19の外周部に設けられている枠体とを有しており、枠体の下面には第一接合面131,141,151と、第一接合面131,141,151よりも下側に位置している第二接合面132,142,152とが含まれており、積層体の外周部は第一接合面131,141,151に接合されており、シェアパネル19の外周部は第二接合面132,142,152に接合されており、ロアフレーム18aの第一フランジ部182は積層体の下面に接合されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側にバッテリーを載置可能な板状の内底板部と、
前記内底板部の下側に前記内底板部から離間して配置されている板状の外底板部と、
前記内底板部と前記外底板部との間に配置されているロアフレームと、
前記内底板部および前記外底板部の外周部から上方に立設するように設けられた枠体と、
を有し、
前記枠体の下方部には、上側又は下側を向く第一接合面と、前記第一接合面よりも前記枠体の外側であり且つ下側に位置しており下側を向く第二接合面と、が形成されており、
前記ロアフレームの上端部には、前記内底板部の下面に面する上面を有する第一フランジ部が設けられており、
前記内底板部の外周部は、前記第一接合面と上下方向に重ね合わされた状態で前記第一接合面に接合されており、
前記外底板部の外周部は、前記第二接合面と上下方向に重ね合わされた状態で前記第二接合面に接合されており、
前記ロアフレームの前記第一フランジ部は前記内底板部の下面に接合されている、
車両用のバッテリーケース。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用のバッテリーケースにおいて、
前記ロアフレームの下端部には、前記外底板部の上面に面する下面を有する第二フランジ部が設けられており、
前記ロアフレームの前記第二フランジ部は前記外底板部の上面に接合されている、
車両用のバッテリーケース。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用のバッテリーケースにおいて、
前記ロアフレームは長尺状に形成されるとともに、長尺方向に亘って上下方向に延びるように形成された脚部を有し、
前記第一フランジ部は、前記脚部の上端から、前記ロアフレームの短尺方向に向かって互いに反対方向に延出する一対の第一突出部により構成され、
前記第二フランジ部は、前記脚部の下端から、前記ロアフレームの短尺方向に向かって互いに反対方向に延出する一対の第二突出部により構成され、
前記第二突出部の長さは前記第一突出部の長さよりも短い、
車両用のバッテリーケース。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用のバッテリーケースであって、
前記内底板部の上面側には、前記内底底部の上面に沿って延びる棒状のクロスが配置されており、
前記クロスの下端部は前記内底板部の上面に接合されている、
車両用のバッテリーケース。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用のバッテリーケースにおいて、
前記クロスの長尺方向に直角な面で切断した断面形状は、下方側が開口した本体部と、前記本体部の下方側が開口することにより形成される一対の開口端とを有する開断面形状であり、
前記クロスは、前記一対の開口端から互いに離れるように短尺方向に延出しているとともに前記クロスの長尺方向に延伸しているフランジ部を有しており、
前記フランジ部が前記クロスの長尺方向に沿って前記内底板部の上面に連続的に接合されている、
車両用のバッテリーケース。
【請求項6】
請求項5に記載のバッテリーケースにおいて、
前記クロスの前記フランジ部と前記ロアフレームの前記第一フランジ部とは、上下方向視において互いに重畳していない、
車両用のバッテリーケース。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両用のバッテリーケースにおいて、
前記枠体の前記第一接合面は下側を向く面であり、
前記内底板部の外周部は前記第一接合面に下側から接合されている、
車両用のバッテリーケース。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両用のバッテリーケースにおいて、
前記枠体には、内側に向かって延出する延出部が設けられており、
前記延出部の上面が前記第一接合面であり、
前記内底板部の外周部は前記第一接合面に上側から接合されている、
車両用のバッテリーケース。
【請求項9】
上面側にバッテリーを載置可能に構成されている板状の内底板部と、
前記内底板部の下側に前記内底板部から離間して配置されている板状の外底板部と、
前記内底板部と前記外底板部との間に配置され、上端部に前記内底板部の下面に面する上面を有する第一フランジ部が設けられているロアフレームと、
前記内底板部および前記外底板部の外周部から上方に立設するように設けられた枠体と、
を有し、
前記枠体の下方部には、上側又は下側を向く第一接合面と、前記第一接合面よりも前記枠体の外側であり且つ下側に位置しており下側を向く面第二接合面と、が形成されている、
車両用のバッテリーケースの製造方法であって、
前記第一接合面に重なるように配置された前記内底板部の前記外周部に、下側からレーザーを照射することにより前記内底板部を前記枠体に接合するステップと、
前記内底板部の下側に配置された前記ロアフレームの前記第一フランジ部に、下側からレーザーを照射することにより前記ロアフレームを前記内底板部に接合するステップと、
前記第二接合面の下側に重なるように配置された前記外底板部の前記外周部に、下側からレーザーを照射することにより前記外底板部を前記枠体に接合するステップと、
を含む、
車両用のバッテリーケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のバッテリーケースおよび車両用のバッテリーケースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サイドフレームと底板部材とを含むバッテリーケースが開示されている。特許文献1に開示の底板部材は、第一板と第二板とによりコア材を挟んだサンドイッチ構造を有している。さらに、第一板は、2枚の金属板と、これら2枚の金属板とに挟まれた楕円筒状の配管とを有しており、第一板の内部にはこの配管によってバッテリーを冷却するための冷媒の経路が形成される。そして、第一板と第二板とがサイドカバーに固定されることにより底板部材がサイドフレームに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1のバッテリーケースを製造するためには、多くの工程を要するため、製造コストが嵩むという問題を有する。具体的には、特許文献1のバッテリーケースを製造するためには、2枚の金属板と複数の楕円配管とにより冷媒経路が設けられた第一板を製造し、第一板とコア材と第二板とを重ね合わせることにより底板部材を製造し、製造した底板部材をサイドフレームに接合する、という工程が必要になる。さらに、特許文献1には、第一板をリベットによりサイドフレームに接合し、第二板をリベットまたはカシメ加工によりサイドフレームに接合する方法が開示されている。このような方法では、上側から底板部材の第一板をサイドフレームに接合し、下側から底板部材の第二板をサイドフレームに接合しなければならない。このため、製造中に各部材の位置や向きを変更しなければならず、工数が増加する。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、製造コストの削減を図ることができる車両用のバッテリーケースおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
(課題を解決するための手段)
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用のバッテリーケースは、
上面側にバッテリーを載置可能な板状の内底板部と、
前記内底板部の下側に前記内底板部から離間して配置されている板状の外底板部と、
前記内底板部と前記外底板部との間に配置されているロアフレームと、
前記内底板部および前記外底板部の外周部から上方に立設するように設けられた枠体と、
を有し、
前記枠体の下方部には、上側又は下側を向く第一接合面と、前記第一接合面よりも前記枠体の外側であり且つ下側に位置しており下側を向く第二接合面と、が形成されており、
前記ロアフレームの上端部には、前記内底板部の下面に面する上面を有する第一フランジ部が設けられており、
前記内底板部の外周部は、前記第一接合面と上下方向に重ね合わされた状態で前記第一接合面に接合されており、
前記外底板部の外周部は、前記第二接合面と上下方向に重ね合わされた状態で前記第二接合面に接合されており、
前記ロアフレームの前記第一フランジ部は前記内底板部の下面に接合されている。
【0007】
本発明によれば、内底板部および外底板部を、枠体に下側から接合できるとともに、ロアフレームを内底板部に下側から接合できる。すなわち、これらの部材の一方向組付けが可能である。このため、バッテリーケースの製造中にこれらの各部材の向き(特に上下方向の向き)を変更しなくてもよいから、製造工数の削減を図ることができる。したがって、製造コストの削減を図ることができる。
【0008】
上記発明において、バッテリーケースを構成する各部材について用いている「上」及び「下」といった方向を表す用語は、バッテリーが収納されて車両に組み付けられた状態のバッテリーケースについての上下を言う。従って、例えば、車両に組み付けられる前のバッテリーケースの内底板部についてはバッテリーが載置されるべき面が上面であり、上面と反対側の面が下面であり、バッテリーが載置される側が上側であり、上側と反対側が下側である。また、その他の部材についても、内底板部の上面(下面)と同じ向きの面が上面(下面)であり、内底板部の上側(下側)と同じ側が上側(下側)である。また、上記発明において、枠体は、上下方向から見て内底板部及び外底板部の外周方向に直交する幅方向に所定の厚みを持つように形成されており、枠体の「外側」とは、枠体の幅方向において枠体に囲まれる開口からより離れる側を意味する。その反対に、枠体の「内側」とは、枠体の幅方向において枠体に囲まれる開口により近づく側を意味する。
【0009】
前記ロアフレームの下端部には、前記外底板部の上面に面する下面を有する第二フランジ部が設けられており、
前記ロアフレームの前記第二フランジ部は前記外底板部の上面に接合されている、
という構成が適用できる。
【0010】
このような構成によれば、上下方向視においてロアフレームの第二フランジ部と外底板部とが重畳している箇所において、第二フランジ部と外底板部の上面とを下側から接合できる。したがって、バッテリーケースの一方向組付けが可能になるから、製造コストの削減を図ることができる。
【0011】
前記ロアフレームは長尺状に形成されるとともに、長尺方向に亘って上下方向に延びるように形成された脚部を有し、
前記第一フランジ部は、前記脚部の上端から、前記ロアフレームの短尺方向に向かって互いに反対方向に延出する一対の第一突出部により構成され、
前記第二フランジ部は、前記脚部の下端から、前記ロアフレームの短尺方向に向かって互いに反対方向に延出する一対の第二突出部により構成され、
前記第二突出部の長さは前記第一突出部の長さよりも短い、
という構成が適用できる。
【0012】
このような構成によれば、上下方向視において第一フランジ部には第二フランジ部と重畳しない部分が存在するから、下側から当該重畳しない部分に対して第二フランジ部に遮断されることなくアクセスできる。よって、当該重畳しない部分を内底板部に接合する加工を下側から行うことができる。したがって、このような構成であれば、ロアフレームを他の部材と同じように下側から一方向組付けが可能である。その結果、バッテリーケースの製造コストの削減を図ることができる。
【0013】
前記内底板部の上面側には、前記内底板部の上面に沿って延びる棒状のクロスが配置されており、
前記クロスの下端部は前記内底板部の上面に接合されている、
という構成が適用できる。
【0014】
このような構成によれば、バッテリーケースの剛性を高めることができる。
【0015】
前記クロスの長尺方向に直角な面で切断した断面形状は、下方側が開口した本体部と、前記本体部の前記下方側が開口することにより形成される一対の開口端とを有する開断面形状であり、
前記クロスは、前記一対の開口端から互いに離れるように短尺方向に延出しているとともに前記クロスの長尺方向に延伸しているフランジ部を有しており、
前記フランジ部が前記クロスの長尺方向に沿って前記内底板部の上面に連続的に接合されている、
という構成が適用できる。
【0016】
このような構成によれば、内底板部の上面側に、閉断面形状を有するクロスが配置されている構成と同様の効果を奏することができる。したがって、バッテリーケースの軽量化を図るとともにバッテリーケースの剛性を高めることができる。
【0017】
前記クロスの前記フランジ部と前記ロアフレームの前記第一フランジ部とは、上下方向視において互いに重畳していない、
という構成が適用できる。
【0018】
このような構成によれば、クロスのフランジ部と内底板部とが重畳している箇所が、ロアフレームに覆われない。すなわち、クロスのフランジ部と内底板部とが重畳している箇所に、ロアフレームに遮断されることなく下側からアクセスできる。したがって、クロスのフランジ部と内底板部とが重畳している箇所に対して下側から接合する加工を行うことができる。したがって、一方向組付けが可能であるから、バッテリーケースの製造コストの削減を図ることができる。
【0019】
前記枠体の前記第一接合面は下側を向く面であり、
前記内底板部の外周部は前記第一接合面に下側から接合されている、
という構成が適用できる。
【0020】
このような構成によれば、内底板部の外周部を、下側から枠体の第一接合面に重ねるとともに、重ねた個所に対して下側から接合する加工を施すことができる。したがって、内底板部の一方向組付けが可能であるから、バッテリーケースの製造コストの削減を図ることができる。
【0021】
前記枠体には、内側に向かって延出する延出部が設けられており、
前記延出部の上面が前記第一接合面であり、
前記内底板部の外周部は前記第一接合面に上側から接合されている、
という構成が適用できる。
【0022】
このような構成によれば、内底板部の上面側にバッテリーが載置された場合、バッテリーの重量を枠体の延出部において受けることができる。そして、このような構成であれば、バッテリーが載置された状態において、第一接合面と内底板部との間に互いに引き離すような力が掛からない。したがって、バッテリーケースの耐久性の向上を図ることができる。
【0023】
また、本発明の車両用のバッテリーケースの製造方法は、
上面側にバッテリーを載置可能に構成されている板状の内底板部と、
前記内底板部の下側に前記内底板部から離間して配置されている板状の外底板部と、
前記内底板部と前記外底板部との間に配置され、上端部に前記内底板部の下面に面する上面を有する第一フランジ部が設けられているロアフレームと、
前記内底板部および前記外底板部の外周部から上方に立設するように設けられた枠体と、
を有し、
前記枠体の下方部には、上側又は下側を向く第一接合面と、前記第一接合面よりも前記枠体の外側であり且つ下側に位置しており下側を向く第二接合面と、が形成されている、
車両用のバッテリーケースの製造方法であって、
前記第一接合面に重なるように配置された前記内底板部の前記外周部に、下側からレーザーを照射することにより前記内底板部を前記枠体に接合するステップと、
前記内底板部の下側に配置された前記ロアフレームの前記第一フランジ部に、下側からレーザーを照射することにより前記ロアフレームを前記内底板部に接合するステップと、
前記第二接合面の下側に重なるように配置された前記外底板部の前記外周部に、下側からレーザーを照射することにより前記外底板部を前記枠体に接合するステップと、
を含む。
【0024】
発明がこのように構成されると、内底板部、外底板部、およびロアフレーム(を下側から組付けられる。すなわち、バッテリーケースが一方向組付けされる。したがって製造コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るバッテリーケースの構成を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るバッテリーケースの構成を示す外観斜視図であり、バッテリーが収容されている状態を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るバッテリーケースの構成を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、ロアフレームの構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係るバッテリーケースの構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係るバッテリーケースの構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係るバッテリーケースの構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第一の変形例に係るバッテリーケースの構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第二の変形例に係るバッテリーケースの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態に係る車両用のバッテリーケース10aは、電動車両(EV、PHV(プラグインハイブリッド車両)、HV(ハイブリッド車両)など)に搭載されているバッテリーの収容に用いられる。そして、本実施形態に係る車両用のバッテリーケース10aは、車両の床部(シートの下側)に配置される。また、本発明の実施形態に係る車両用のバッテリーケース10aは、温度調節のための水などの流体(以下、「調温流体」と記す)が流通可能な経路(以下、「調温経路20」と記す)を有しており、この調温経路20に調温流体を流すことによってバッテリーの温度調節(冷却および加熱)可能に構成されている。
【0027】
なお、以下の説明において、本実施形態に係る車両用のバッテリーケース10aの各方向は、車両に組付けられた状態での方向(すなわち、車両の方向)を基準とする。各図においては、本発明の実施形態に係る車載用のバッテリーケース10aの前側を矢印Frで示し、後側を矢印Rrで示し、上側を矢印Upで示し、下側を矢印Dwで示し、右側を矢印Rで示し、左側を矢印Lで示す。また、以下の説明では、本発明の実施形態に係る車両用のバッテリーケース10aを単に「バッテリーケース10a」と略して記す。
【0028】
まず、バッテリーケース10aの全体構成について説明する。
図1は、バッテリーケース10aの構成を示す斜視図である。
図2は、バッテリーケース10aにバッテリーモジュール50が収容されている状態を示す斜視図である。
図3は、バッテリーケース10aの構成を示す分解斜視図であり、下方から見た図である。
【0029】
図1~
図3に示すように、バッテリーケース10aは、ロアパネル11と、ヒートシンク12と、フロントフレーム13と、リアフレーム14と、左右のサイドフレーム15と、複数のクロス16と、複数のクロス支持部材17と、複数のロアフレーム18aと、シェアパネル19とを有している。バッテリーケース10aは、上下方向視において略四辺形を有しており、上側が開口する有底の箱状の構造を有している。具体的には、ロアパネル11、ヒートシンク12、ロアフレーム18aおよびシェアパネル19が「箱の底部」を構成し、フロントフレーム13、リアフレーム14および左右のサイドフレーム15が「箱の側壁部」を構成する。また、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15は、上下方向における内周側に開口部を有する枠体を構成する。この開口部の内部(すなわち、フロントフレーム13、リアフレーム14および左右のサイドフレーム15に囲まれる領域)に、バッテリーを収容可能である。さらに、ロアパネル11の上側には、複数のクロス16が、互いに前後方向に所定の間隔をおいて離間して配置されている。ただし、バッテリーケース10aが、フロントフレーム13、リアフレーム14および左右のサイドフレーム15からなる枠体の開口部の上側を覆う蓋部材を有していてもよい。
【0030】
バッテリーケース10aは、互いに上下方向に離間している内底板部と外底板部とを有する二重底構造を有している。具体的には、ロアパネル11とヒートシンク12とは上下方向に積層しており、互いに直接に接合されている。そして、ロアパネル11とヒートシンク12の積層体が二重底構造の内底板部を形成する。ロアパネル11とヒートシンク12との間には調温経路20が設けられている。なお、調温経路20の構成については後述する。ロアパネル11とヒートシンク12との積層体の下方には、シェアパネル19が配置されている。そして、シェアパネル19が二重底構造の外底板部を形成する。なお、ロアパネル11とヒートシンク12との積層体(内底板部)とシェアパネル19(外底板部)との間には、複数のロアフレーム18aが配置されている。そして、ロアパネル11とヒートシンク12との積層体とシェアパネル19との間には空間が形成されている。つまり、シェアパネル19(外底板部)は、ロアパネル11とヒートシンク12の積層体(内底板部)の下側に離間して配置されている。
【0031】
ロアパネル11は、その上面側にバッテリーモジュール50を載置可能に構成されている。また、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15は、上下方向視において、ロアパネル11およびヒートシンク12の外周に沿うように配置され、これらの外周部から立設するように設けられている。そして、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15は、上下方向視において内周側にバッテリーモジュール50を収容可能な開口部を有する枠体を形成する。なお、
図2に示すように、バッテリーモジュール50は、複数のバッテリーセル501が保護部材502などによって一体に結合された組立体である。各バッテリーモジュール50は上面視において略長方形である。そして、バッテリーケース10aは、複数のバッテリーモジュール50を、それらの長尺方向がバッテリーケース10aの左右方向に平行になる向きで、前後方向に並べて収容可能である。具体的には、バッテリーケース10aは、互いに隣接するクロス16どうしの間の領域、最も前側に位置するクロス16とフロントフレーム13の間の領域および最も後側に位置するクロス16とリアフレーム14との間の領域のそれぞれに、2基ずつのバッテリーモジュール50を収容可能に構成されている。
【0032】
次に、バッテリーケース10aの各部材について説明する。
図3に示すように、ロアパネル11およびヒートシンク12は、いずれも上下方向視において略四辺形の板状の部材である。また、ロアパネル11およびヒートシンク12は、上下方向視において、互いに略同形かつ略同寸である。ロアパネル11およびヒートシンク12は、例えばアルミニウム板により成形される。
【0033】
ロアパネル11およびヒートシンク12の前端部(前側の辺)の左右方向の中央部には、前側に向かって延出する延出部111,121が設けられている。ロアパネル11の延出部111には、2つの給排部112が設けられている。これら2つの給排部112は、ロアパネル11とヒートシンク12との間の調温経路20の内部と外部とを連通する孔である。これらの2つの給排部112を介して、調温経路20への調温流体の供給、および調温経路20からの調温流体の排出が可能である。
【0034】
ヒートシンク12には、調温経路20を構成する経路壁部122が設けられている。経路壁部122は、上側が開口する窪みであり、プレス加工により成形される。このため、経路壁部122は、下側に向かって膨出している。
【0035】
フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15は、いずれも中空で長尺棒状の部材であり、上下方向から見てロアパネル11、ヒートシンク12及びシェアパネル19の外周に沿った方向に直交する幅方向(フロントフレーム13及びリアフレーム14については前後方向、サイドフレーム15については左右方向)に所定の厚みを持つように形成される。フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15には、例えばアルミニウムの押し出し材が適用される。
【0036】
フロントフレーム13およびリアフレーム14は、それらの長尺方向が左右方向(車幅方向)に平行となる向きで、前後方向に互いに離間して平行に配置される。フロントフレーム13およびリアフレーム14の下方部には、ロアパネル11(ロアパネル11とヒートシンク12の積層体)が接合される第一接合面131と、シェアパネル19が接合される第二接合面132とが形成される。第一接合面131および第二接合面132は、いずれも左右方向に長い帯状の平面であり、かつ、上下方向に対して直角で下側を向く平面である。
【0037】
第一接合面131と第二接合面132とは、互いに前後方向および上下方向にずれており、上下方向視において互いに重畳していない。また、第二接合面132は第一接合面131よりも下側に位置している。具体的には、フロントフレーム13およびリアフレーム14の下方部には、下側に向かって突出する突状部が、互いに対向する側とは反対側、すなわち外側(外周側)の辺に沿って左右方向に延伸するように設けられている。そして、突状部ではない部分(内周側)の下面が第一接合面131であり、突状部(外周側)の下面が第二接合面132である。なお、フロントフレーム13においては、第一接合面131が第二接合面132よりも後側に位置しており、リアフレーム14においては第一接合面131が第二接合面132よりも前側に位置している。すなわち、第二接合面132は、第一接合面131よりも、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15により形成される四辺形の枠体の外側(外周側)であり、且つ、下側に位置している。
【0038】
フロントフレーム13の下部には、ロアパネル11およびヒートシンク12の延出部111,121との干渉を避けるための凹部133が設けられている。この凹部133は、ロアパネル11およびヒートシンク12をフロントフレーム13の下側から取り付けられるように、下側が開口している。
【0039】
左右のサイドフレーム15は、それらの長尺方向が前後方向に平行な向きで、左右方向に互いに離間して平行に配置される。左右のサイドフレーム15の下方部には、ロアパネル11(ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体)が接合される第一接合面151と、シェアパネル19が接合される第二接合面152とが形成される。第一接合面151および第二接合面152は、いずれも前後方向に長い帯状の平面であり、かつ、上下方向に対して直角で下側を向く平面である。
【0040】
第一接合面151と第二接合面152とは、互いに左右方向および上下方向にずれており、上下方向視において互いに重畳していない。また、第二接合面152は第一接合面151よりも下側に位置している。具体的には、左右のサイドフレーム15の下方部には、下側に向かって突出する突状部が、互いに対向する側とは反対側、すなわち外側(外周側)の辺に沿って前後方向に延伸するように設けられている。そして、突状部ではない部分(内周側)の下面が第一接合面151であり、突状部(外周側)の下面が第二接合面152である。なお、左のサイドフレーム15においては、第一接合面151が第二接合面152より右側に位置しており、右のサイドフレーム15においては、第一接合面151が第二接合面152よりも左側に位置している。すなわち、第二接合面152は、第一接合面151よりも、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15により形成される略四辺形の枠体の外側(外周側)であり、且つ、下側に位置している。
【0041】
左右のサイドフレーム15は、エネルギー吸収部153を有している。エネルギー吸収部153は、左右のサイドフレーム15の互いに対向する側とは反対側(すなわち、車幅方向外側)に向かって突出し、前後方向に延伸する部分であり、他の部分と一体に繋がっている。エネルギー吸収部153の内部には空間が形成されている。エネルギー吸収部153は、側突などが発生した際に変形することによって、バッテリーモジュール50に掛かる衝撃を緩和するように構成されている。
【0042】
複数のクロス16は、側突などが発生した際に左右方向の荷重を受けることによって、サイドフレーム15が変形してバッテリーモジュール50に接触することを防止または抑制する。複数のクロス16は、いずれも長尺棒状の部材であり、例えばアルミニウムの押し出し材が適用される。複数のクロス16は、それらの長尺方向が左右方向に平行な向きで、ロアパネル11の上面に沿って棒状に延び、前後方向に並べて配置される。
【0043】
図4は、クロス16の構造を示す斜視図である。
図4に示すように、クロス16は、下方側が開口する略四角形の断面形状(すなわち、開断面形状)を有している。具体的には、クロス16は、下方側が開口する本体部161と、本体部161の下方側が開口することにより形成される一対の開口端162(短尺方向に互いに離間する2つの下端部)とを有している。そして、クロス16は、フランジ部163を有する。フランジ部163は、クロス16の一対の開口端162(下端部)から互いに離れる方向に向かって、クロス16の短尺方向(すなわち、バッテリーケース10aの前後方向)外側に向かって延出する。なお、クロス16のフランジ部163は、クロス16の長尺方向(すなわち、バッテリーケース10aの左右方向)の全長にわたって延伸するように、設けられている。フランジ部163の下側の面は、上下方向に対して直角な平面である。
【0044】
クロス支持部材17は、各クロス16の長尺方向の両端部のそれぞれを左右のサイドフレーム15のそれぞれに固定するための部材である。クロス支持部材17には、例えばアルミニウムの押し出し材が適用される。ただし、クロス支持部材17の具体的な構成は特に限定されない。各クロス支持部材17は、各クロス16の両端部のそれぞれを左右のサイドフレーム15に固定できる構成を有していればよい。
【0045】
ロアフレーム18aは、長尺棒状に形成される部材である。ロアフレーム18aには、アルミニウムの押し出し材が適用される。
図5はロアフレーム18aの構成を示す斜視図である。
図5に示すように、ロアフレーム18aは、立壁状の脚部181と、第一フランジ部182と、第二フランジ部184とを有する。脚部181は、ロアフレーム18aの長尺方向亘って上下方向に立壁状に延びるように形成される。この脚部181の上端部に第一フランジ部182が形成され、脚部181の下端部に第二フランジ部184が形成される。第一フランジ部182は、脚部181の上端から、ロアフレーム18aの短尺方向(バッテリーケース10aの前後方向)の両外側に向かって互いに反対方向に延出する一対の第一突出部183,183により構成される。第二フランジ部184は、脚部181の下端から、ロアフレーム18aの短尺方向の両外側に向かって互いに反対方向に延出する一対の第二突出部185,185により構成される。
【0046】
第一フランジ部182の上面および第二フランジ部184の下面は、いずれも上下方向に直角な平面である。そして、第一フランジ部182の幅方向(バッテリーケース10aを基準とすると前後方向)の寸法は、第二フランジ部184の幅方向の寸法よりも大きい。具体的には、第二フランジ部184を構成する第二突出部185の幅方向の長さは、第二フランジ部184を構成する第一突出部183の幅方向の長さよりも短い。また、第一フランジ部182の幅方向の寸法は、脚部181の最大幅よりも大きい。そのため、ロアフレーム18aを下方から見た場合、第一フランジ部182の幅方向の先端部は、脚部181および第二フランジ部184に隠れることなく見える。このほか、ロアフレーム18aには、ヒートシンク12の経路壁部122との干渉を避けるための凹部186が設けられている。
【0047】
シェアパネル19は、上下方向視において略四辺形の板状の部材である。シェアパネル19には、例えばアルミニウム板が適用される。なお、シェアパネル19の前後方向寸法と左右方向寸法とは、それぞれロアパネル11およびヒートシンク12の延出部111,121を除いた前後方向寸法と左右方向寸法よりも大きい。
【0048】
ここで、調温経路20について説明する。ヒートシンク12の上側にロアパネル11が重ね合わせられることにより、経路壁部122により形成される溝がロアパネル11によって塞がれる(換言すると蓋をされた状態になる)。これにより、ロアパネル11とヒートシンク12との間に(換言すると、内底板部の内部に)、調温流体が流通可能な調温経路20が成形される。
【0049】
図3に示すように、調温経路20には、2本の中央部集中経路201と、2本の外周部集中経路202と、収容可能なバッテリーモジュール50の数に応じた数(本実施形態では、収容可能なバッテリーモジュール50の数の2倍)の分岐経路群203と、が含まれる。
【0050】
2本の中央部集中経路201は、ロアパネル11とヒートシンク12の左右方向の略中央に位置しており、互いに略平行で前後方向に延伸する。2本の中央部集中経路201の前端部は、ロアパネル11とヒートシンク12の延出部111,121に位置している。そして、2本の中央部集中経路201は、この延出部111,121において互いに連通している。さらに、2本の中央部集中経路201は、延出部111,121にて、2つの給排部112の一方によって、ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体の外部と連通している。
【0051】
2本の外周部集中経路202は、ロアパネル11およびヒートシンク12の左右方向の外周近傍に位置しており、互いに略平行で前後方向に延伸する部分を有している。2本の外周部集中経路202の前端部近傍は、ロアパネル11およびヒートシンク12の前端に沿って左右方向に延伸している。2本の外周部集中経路202の前端部は、ロアパネル11とヒートシンク12の延出部111,121に位置し、この延出部111,121にて互いに連通している。さらに、2本の外周部集中経路202は、延出部111,121にて、2つの給排部112の他方によって、ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体の外部と連通している。
【0052】
各分岐経路群203は、互いに平行で左右方向に延伸する複数の経路を含む。分岐経路群203は、右側の中央部集中経路201と右側の外周部集中経路202との間、および左側の中央部集中経路201と左側の外周部集中経路202との間に設けられる。さらに分岐経路群203は、上下方向視において、バッテリーモジュール50が載置される範囲に設けられる。具体的には、各分岐経路群203は、上下方向視において、互いに隣り合うロアフレーム18aどうしの間、一番前側のロアフレーム18aとフロントフレーム13との間、および一番後側のロアフレーム18aとリアフレーム14との間に設けられる。
【0053】
右側の中央部集中経路201と右側の外周部集中経路202との間に設けられる各分岐経路群203に含まれる各経路は、一方の端部(左側の端部、換言すると左右方向の中央側の端部)において、それぞれ右側の中央部集中経路201に連通している。さらに、右側の中央部集中経路201と右側の外周部集中経路202との間に設けられる各分岐経路群203に含まれる各経路は、他方の端部(右側の端部、換言すると左右方向外側の端部)において互いに連通しているとともに、1か所のオリフィス205を介して右側の外周部集中経路202と連通している。同様に、左側の中央部集中経路201と左側の外周部集中経路202との間に設けられる各分岐経路群203に含まれる各経路は、一方の端部(右側の端部)において、それぞれ左側の中央部集中経路201に連通している。さらに、左側の中央部集中経路201と左側の外周部集中経路202との間に設けられる各分岐経路群203に含まれる各経路は、他方の端部(左側の端部)において互いに連通しているとともに、1か所のオリフィス205を介して左側の外周部集中経路202と連通している。
【0054】
このような構成の調温経路20によれば、一方の給排部112から2本の中央部集中経路201に流入した調温流体は、2本の中央部集中経路201を流れ、各分岐経路群203の各経路に流入する。そして、各分岐経路群203の各経路を通過した調温流体は、オリフィス205を通じて2本の外周部集中経路202のそれぞれに流入する。2本の外周部集中経路202のそれぞれに流入した調温流体は、他方の給排部112を通じて調温経路20の外部に排出される。そして、調温流体は、調温経路20を流れている間(特に、各分岐経路群203の各経路を流れている間)に、バッテリーモジュール50と熱交換する。これにより、バッテリーモジュール50の温度が調節される。なお、調温流体の流れの方向は前記方向に限定されるものではなく、前記方向とは反対方向であってもよい。
【0055】
次に、バッテリーケース10aの組付け構造について、製造方法と併せて説明する。
【0056】
フロントフレーム13およびリアフレーム14の長尺方向(左右方向)の端部と左右のサイドフレーム15の長尺方向(前後方向)の端部とが互いに接合される。このため、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15により、上下方向視において略四辺形であり内周側に開口部を有する枠体が形成される。さらに、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15により囲まれる領域(開口部)の内部に、複数のクロス16が配置される。複数のクロス16は、それらの長尺方向が左右方向に平行な向きで配置される。そして、複数のクロス16のそれぞれの両端部は、クロス支持部材17を介して左右のサイドフレーム15に接合される。フロントフレーム13およびリアフレーム14と左右のサイドフレーム15との接合には、例えばレーザー溶接が適用できる。同様に、各クロス支持部材17と左右のサイドフレーム15との接合、および各クロス16と各クロス支持部材17の接合にも、レーザー溶接が適用できる。
【0057】
図6は、バッテリーケース10aの前端部近傍を左右方向に直角な平面で切断した断面図である。
図7は、バッテリーケース10aの右端部近傍を前後方向に直角な平面で切断した断面図である。
図6および
図7に示すように、フロントフレーム13、リアフレーム14(図示省略)、および左右のサイドフレーム15(左側のサイドフレーム15については図示省略)の下側に、ロアパネル11の外周部が重ねて配置され、さらにロアパネル11の下側にヒートシンク12が重ねて配置される。より具体的には、ロアパネル11およびヒートシンク12は、それらの外周部のうちの前端部(前辺の近傍)と後端部(後辺の近傍)のそれぞれがフロントフレーム13とリアフレーム14とのそれぞれの第一接合面131,141の下側に重なり、外周部のうちの右端部および左端部(左右の両辺の近傍)のそれぞれが左右のサイドフレーム15の第一接合面151の下側に重なるように配置される。また、この状態では、各クロス16のフランジ部163の下面にロアパネル11の上面が接触する。
【0058】
そして、ロアパネル11およびヒートシンク12は、フロントフレーム13の第一接合面131に重なっている箇所において、フロントフレーム13の第一接合面131にレーザー溶接によって接合され、リアフレーム14の第一接合面141と重なっている箇所においてリアフレーム14の第一接合面141にレーザー溶接によって接合される。
図6中の符号W1は、ロアパネル11およびヒートシンク12とフロントフレーム13との接合個所を示す。同様に、ロアパネル11およびヒートシンク12は、左右のサイドフレーム15の第一接合面151と重なっている箇所において、左右のサイドフレーム15のそれぞれの第一接合面151にレーザー溶接によって接合される。
図7中の符号W3は、ロアパネル11およびヒートシンク12と左右のサイドフレーム15との接合個所を示す。
【0059】
具体的には、ヒートシンク12の外周部に下側からレーザーを照射することによって、ロアパネル11およびヒートシンク12を、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15に接合する。この際、ロアパネル11とヒートシンク12とが互いに接合される。なお、フロントフレーム13およびリアフレーム14の第一接合面131,141および左右のサイドフレーム15の第一接合面151は、それぞれのサイドフレーム15の下方部に設けられた下側を向く面である。したがって、ロアパネル11とヒートシンク12の外周部は、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15の第一接合面131,141,151の下側に重ねられた状態で、すなわち第一接合面131,141,151と上下方向に重ね合わされた状態で、ロアパネル11およびヒートシンク12の下側からこれらの外周部にレーザーを照射できる。
【0060】
さらに、クロス16のフランジ部163とロアパネル11(ロアパネル11とヒートシンク12との積層体)とは、レーザー溶接により互いに接合される。
図8は、バッテリーケース10aを左右方向に直角な平面で切断した断面図であり、ロアフレーム18aの配置位置、およびクロス16とロアフレーム18aとの位置関係を示す断面図である。
図8中の符号W5は、クロス16のフランジ部163とロアパネル11(ロアパネル11とヒートシンク12との積層体)との接合個所を示す。
図8に示すように、ヒートシンク12のうちの上下方向視においてクロス16のフランジ部163と重畳している部分に対して下側からレーザーを照射することによって、ロアパネル11およびヒートシンク12とクロス16のフランジ部163とを互いに接合できる。この際、レーザーが照射された部分において、ロアパネル11とヒートシンク12とが互いに接合される。
【0061】
なお、各クロス16のフランジ部163は、長尺方向の全長にわたって連続的にロアパネル11に接合される(すなわち線溶接される)。このような構成によれば、クロス16によるバッテリーモジュール50を保護する効果、特に、側突の際に左右のサイドフレーム15が変形することを防止または抑制する効果を高めることができる。すなわち、開断面形状を有するクロス16は、閉断面形状(例えば角筒形状)を有するクロスに比較して、剛性が小さい(変形しやすい)。そこで、本実施形態では、クロス16のフランジ部163を長尺方向の全長にわたって連続的に接合する。このような構成により、ロアパネル11によってクロス16の開口が塞がれる(すなわち、開口端162どうしが接続される)ことになるため、閉断面形状を有するクロス16が配置される構成と同様の効果を奏することができる。
【0062】
ヒートシンク12の下側には、複数のロアフレーム18aが配置される。具体的には、複数のロアフレーム18aは、隣り合う分岐経路群203どうしの間、最も前側の分岐経路群203とフロントフレーム13との間、最も後側の分岐経路群203とリアフレーム14との間に配置される。このため、
図8に示すように、隣り合うクロス16どうしの間の領域には、3本ずつのロアフレーム18aが配置される。最も前側のクロス16とフロントフレーム13との間の領域、最も後側のクロス16とリアフレーム14との間の領域についても同様である。
【0063】
前記各領域に配置される3本のロアフレーム18aのうち前側のロアフレーム18aと、その領域に前方向に隣接する領域に配置される3本のロアフレーム18aのうち後側のロアフレーム18aは、上下方向視において、両領域間のクロス16の前後に隣接するように配置される。具体的には、上下方向視において、クロス16とこれら2本のロアフレーム18aとの間には調温経路20が存在しておらず、かつ、クロス16とこれらの2本のロアフレーム18aとが接近している。なお、上下方向視において、クロス16とこれら2本のロアフレーム18aとはできるだけ接近していることが好ましい。ただし、上下方向視において、クロス16のフランジ部163とこれら2本のロアフレーム18aの第一フランジ部182とは前後方向に互いにずれており、互いに重畳していない。例えば、
図8に示すように、クロス16のフランジ部163の前後方向の端面の前後方向位置と、2本のロアフレーム18aの第一フランジ部182の前後方向の端面の前後方向位置とが一致しているか、若しくは両位置間の前後方向における距離が極めて小さい。
【0064】
ヒートシンク12の下側に配置された複数のロアフレーム18aの第一フランジ部182はヒートシンク12の下面に沿って前後方向に延出する。そして、複数のロアフレーム18aの第一フランジ部182の上面は、ヒートシンク12の下面に面する。このように、複数のロアフレーム18aの上端部には、ヒートシンク12の下面に面する上面を有する第一フランジ部182が設けられている。そして、各ロアフレーム18aの第一フランジ部182とヒートシンク12(ロアパネル11とヒートシンク12との積層体)とは、レーザー溶接により互いに接合される。
図6および
図7中の符号W6は、ロアフレーム18aの第一フランジ部182とヒートシンク12(ロアパネル11とヒートシンク12との積層体)との接合個所を示す。具体的には、各ロアフレーム18aの第一フランジ部182に対して下側からレーザーを照射することによって、各ロアフレーム18aの第一フランジ部182が、ヒートシンク12(ロアパネル11とヒートシンク12の積層体)の下面に接合される。ロアフレーム18aの第二フランジ部184の幅(第二突出部185の幅方向長さ)は第一フランジ部182の幅(第一突出部183の幅方向長さ)よりも短いことから、各ロアフレーム18aの第一フランジ部182に対して、第二フランジ部184により遮断されることなく、下側からレーザーを照射できる。
【0065】
なお、各クロス16とロアパネル11およびヒートシンク12との接合は、ヒートシンク12の下側にロアフレーム18aを配置した後(ヒートシンク12の下側にロアフレーム18aが配置されている状態)でも可能である。すなわち、上下方向視において、各クロス16のフランジ部163とロアフレーム18aの第一フランジ部182とは重畳していないから、ロアパネル11およびヒートシンク12における各クロス16のフランジ部163と重畳している部分にはロアフレーム18aの第一フランジ部182が重畳していない。さらに、ロアフレーム18aの第二フランジ部184の幅(第二突出部185の幅方向長さ)は第一フランジ部182の幅(第一突出部183の幅方向長さ)よりも短いから、上下方向視において、ロアパネル11およびヒートシンク12における各クロス16のフランジ部163と重畳している部分とロアフレーム18aの第二フランジ部184とが重畳しない。したがって、ロアパネル11およびヒートシンク12のうちの各クロス16のフランジ部163と重畳している部分に対して、ロアフレーム18aの第一フランジ部182および第二フランジ部184に遮断されることなく、ヒートシンク12の下側からレーザーを照射できる。
【0066】
上記各部材の接合の後、フロントフレーム13、リアフレーム14、左右のサイドフレーム15、クロス16、ロアパネル11、ヒートシンク12、ロアフレーム18aの下側に、シェアパネル19が配置される。このとき、シェアパネル19は、その外周部が、フロントフレーム13およびリアフレーム14の第二接合面132,142、および左右のサイドフレーム15の第二接合面152の下側に重なるように配置される。この状態では、各ロアフレーム18aの第二フランジ部184の下面がシェアパネル19の上面に接触する。
【0067】
そして、シェアパネル19の前端部(前辺近傍の部分)がフロントフレーム13の第二接合面132に接合され、後端部(後辺近傍の部分)がリアフレーム14の第二接合面142に接合され、左右両端部(左右両辺の近傍の部分)が左右のサイドフレーム15のそれぞれの第二接合面152に接合される。すなわち、シェアパネル19の外周部は、第二接合面132,142,152と上下方向に重ね合わされた状態で、これらの第二接合面132,142,152に接合される。
図6中の符号W2は、シェアパネル19とフロントフレーム13の第二接合面152との接合個所を示す。
図7中の符号W4は、シェアパネル19とサイドフレーム15の第二接合面152との接合個所を示す。具体的には、シェアパネル19の外周部に下側からレーザーを照射することにより、シェアパネル19の外周部を、フロントフレーム13、リアフレーム14および左右のサイドフレーム15の第二接合面132,142,152に接合する。
【0068】
さらに、各ロアフレーム18aの第二フランジ部184とシェアパネル19とを互いに接合する。
図6および
図8中の符号W7は、シェアパネル19とロアフレーム18aとの接合個所を示す。
図8に示すように、ロアフレーム18aの第二フランジ部184は、シェアパネル19の上面に沿って、前後方向に延出する。このため、ロアフレーム18aの第二フランジ部184の下面は、シェアパネル19の上面に面している。すなわち、ロアフレーム18aの下端部には、シェアパネル19の上面に面する下面を有する第二フランジ部184が設けられている。そして、シェアパネル19におけるロアフレーム18aの第二フランジ部184と重畳している部分に、下側からレーザーを照射することにより、シェアパネル19と各ロアフレーム18aとを接合する。これにより、各ロアフレーム18aは、ロアパネル11及びヒートシンク12の積層体(内底板部)とシェアパネル19(外底板部)との間に配置されるとともに、第一フランジ部182にてロアパネル11及びヒートシンク12の積層体に接合され、第二フランジ部184にてシェアパネル19に接合される。
【0069】
このような構成によれば、ロアパネル11、ヒートシンク12、ロアフレーム18a、およびシェアパネル19を、フロントフレーム13、リアフレーム14および左右のサイドフレーム15の下側から接合できる。すなわち、ロアパネル11、ヒートシンク12、ロアフレーム18a、およびシェアパネル19の一方向組付けが可能である。したがって、バッテリーケース10aの製造中に各部材の上下方向の向きを変更する必要がないから、製造工数を削減できる。さらに、下側からのみレーザーを照射すればよいから、一方向からレーザーを照射できる設備で製造可能である。したがって、製造コストの削減を図ることができる。
【0070】
なお、実際には、各部材を上下反転させた向きでバッテリーケース10aを製造することができる。すなわち、上下反転させたフロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15の上側(車両に組付けられた状態での下側)にロアパネル11、ヒートシンク12、および複数のロアフレーム18aを載置し、それらの上側からレーザーを照射することにより互いに接合することができる。そしてその後、それらの上側にシェアパネル19を載置し、上側からレーザーを照射することによって、シェアパネル19をフロントフレーム13、リアフレーム14、左右のサイドフレーム15、およびロアフレーム18aに接合することができる。
【0071】
さらに、ヒートシンク12とシェアパネル19とが上下方向に離間しているから、下側から外力が掛かった場合にヒートシンク12に掛かる衝撃を低減できる。すなわち、ヒートシンク12とシェアパネル19とが直接に接触している構成では、シェアパネル19に掛かった外力はシェアパネル19から直接的にヒートシンク12に伝達される。このため、このような構成では、バッテリーモジュール50に外力が掛かりやすい。さらに、ヒートシンク12とシェアパネル19とが直接に接触している構成では、シェアパネル19が変形すると、ヒートシンク12も変形する。このためこのような構成では、シェアパネル19が外力などによって変形すると、それに伴ってヒートシンク12が変形し、その結果、経路壁部122が損傷して調温経路20から調温流体が漏出するおそれがある。
【0072】
これに対して本実施形態によれば、ヒートシンク12とシェアパネル19とが上下方向に離間しているから、シェアパネル19にかかった外力は、直接的にはヒートシンク12に伝達されない。したがって、バッテリーケース10aの下側から外力が掛かった場合に、バッテリーモジュール50に掛かる衝撃を低減できる。さらに、ヒートシンク12とシェアパネル19とが離間しているから、シェアパネル19が変形した場合であっても、ヒートシンク12が変形することを防止または抑制できる。このため、経路壁部122の破損を防止または抑制できるから、調温流体の漏出を防止または抑制できる。また、シェアパネル19に下側からかかった外力は、シェアパネル19に接合されたロアフレーム18aを介してヒートシンク12に伝達される。ここで、ロアフレーム18aはヒートシンク12のうち経路壁部122ではない部分に接合されているので、外力が直接的に経路壁部122に作用しない。このような構成によっても、経路壁部122の破損を防止又は抑制できる。
【0073】
さらに、本実施形態によれば、上下方向視においてクロス16とロアフレーム18aとは、互いに重畳しておらず、隣接している。このような構成によれば、下側からシェアパネル19に外力が掛かった場合、バッテリーモジュール50、ロアパネル11およびヒートシンク12に掛かる外力を低減できる。さらに、このような構成によれば、シェアパネル19、ロアパネル11およびヒートシンク12の変形を低減できる。すなわち、シェアパネル19に下側から外力が掛かった場合、当該外力はロアフレーム18aを介してロアパネル11およびヒートシンク12に伝達される。そして、クロス16とロアフレーム18aとは隣接して設けられているから、ロアフレーム18aからロアパネル11およびヒートシンク12に伝達された外力は、隣接して設けられるクロス16に伝達され、クロス16によって外力を受ける。したがって、シェアパネル19、ロアパネル11およびヒートシンク12の変形を防止または抑制できる。換言すると、クロス16とロアフレーム18aとが隣接して配置される構成により、バッテリーケース10aの剛性を高めることができる。
【0074】
さらに、上下方向視においてクロス16とロアフレーム18aとが隣接する構成であると、ロアフレーム18aがヒートシンク12の下側に配置された状態であっても、下側からレーザーを照射することによりクロス16とロアフレーム18aおよびヒートシンク12とを接合できる。
【0075】
また、クロス16は開断面形状を有しているとともに、クロス16とロアパネル11およびヒートシンク12とは線状に接合されている。このような構成であれば、バッテリーケース10aの軽量化を図りつつ、バッテリーケース10aの剛性の低下を防止すること、または剛性を高めることができる。すなわち、クロス16が開断面形状を有することにより、クロス16が閉断面形状を有する構成に比較して、クロス16の軽量化を図ることができる。したがって、バッテリーケース10aの軽量化を図ることができる。さらに、クロス16のフランジ部163がロアパネル11およびヒートシンク12に連続的に線状に接合されることにより、ロアパネル11およびヒートシンク12のうちのクロス16のフランジ部163どうしの間の部分が、クロス16の一部として機能する。すなわち、閉断面形状を有するクロス16が配置される構成と同様の効果を奏することができる。したがって、閉断面形状を有するクロスが適用される構成と比較して、バッテリーケース10aの剛性が低下することを防止または抑制できる(または、クロス16がロアパネル11およびヒートシンク12に線状に接合されない構成に比較してバッテリーケース10aの剛性を高めること)ができる。
【0076】
(第一の変形例)
次に第一の変形例について説明する。
図9は第一の変形例に係るバッテリーケース10bの構成を示す断面図であり、左右方向に直角な平面で切断した断面図である。前記実施形態では、上面視においてクロス16の前後に1本ずつのロアフレーム18aが隣接して配置されるのに対し、第一の変形例では、上面視においてクロス16と重畳する1本のロアフレーム18bが配置される。
【0077】
図9に示すように、ヒートシンク12には、前後方向に隣接する分岐経路群203どうしの間に、開口部123が設けられている。なお、
図9においては省略してあるが、ヒートシンク12の中央部には中央部集中経路201が設けられており、左右両端には外周部集中経路202が設けられている。このため、この開口部123は、前後方向に隣接する分岐経路群203どうしと、中央部集中経路201と外周部集中経路202とに囲まれた領域に設けられる貫通孔である。
【0078】
ロアフレーム18bは2本の脚部181と、一対の第一フランジ部182と、連結部187と、一対の第二フランジ部184とを有する。ロアフレーム18bには、アルミニウムの押し出し材が適用される。2本の脚部181は、それぞれ左右方向に長い立壁状の部分であり、互いに平行でかつ前後方向に互いに離間している。一対の第一フランジ部182は、2本の脚部181のそれぞれの上端から、互いに反対の短尺方向(前後両方)に延出する平板状の部分である。連結部187は、一対の第一フランジ部182を連結している平板状の部分である。一対の第一フランジ部182および連結部187の上面は、上下方向に直角な平面である。一対の第二フランジ部184は、2本の立壁部のそれぞれの下端部から、互いに反対の短尺方向(前後両方)に延出する平板状の部分である。一対の第二フランジ部184の下面は上下方向に直角な平面である。一対の第二フランジ部184は、接続されておらず、互いに分離している。このため、ロアフレーム18bは、左右方向視において略「Π」字形状の断面を有している。なお、一対の第二フランジ部184の間隔は、クロス16の短尺方向寸法(前後方向寸法)よりも大きい。従って、上下方向においてクロス16と第二フランジ部184は重畳しない。
【0079】
図9に示すように、上下方向視において、クロス16のフランジ部163とロアフレーム18bの連結部187とは重畳するが、クロス16のフランジ部163とロアフレーム18bの第二フランジ部184とは重畳しない。また、ロアフレーム18bの連結部187および第一フランジ部182は、ヒートシンク12に設けられている開口部の内側に位置しており、連結部187および第一フランジ部182の上面はロアパネル11の下面に接触している。そして、クロス16のフランジ部163および連結部187は、ロアパネル11に接合されている。なお、
図9においては省略してあるが、前後方向においてクロス16に隣接しない位置に配置されるロアフレーム18bには、前記実施形態のロアフレーム18aと同じ構成が適用される。
【0080】
第一の変形例に係るバッテリーケース10bの製造方法は、前記実施形態に係るバッテリーケース10aの製造方法と比較すると、前記実施形態ではヒートシンク12の下側からレーザーを照射することによりロアパネル11とクロス16とを接合するのに対し、第一の変形例ではロアフレーム18bの連結部187に下側からレーザーを照射することにより、クロス16とロアパネル11とを接合するとともにロアパネル11とロアフレーム18bの連結部187とを接合する。つまり、クロス16とロアパネル11とロアフレーム18bが、レーザー溶接により一体的に接合される。
図9中の符号W8は、クロス16とロアパネル11とロアフレーム18bとの接合個所を示す。なお、クロス16のフランジ部163は、上下方向視において、ロアフレーム18bの第二フランジ部184と重畳しない位置に配置されている。このため、ロアフレーム18bの第二フランジ部184に遮断されることなく、クロス16のフランジ部163とロアパネル11とロアフレーム18bの連結部187とが重畳している位置に、ロアフレーム18bの下側からレーザーを照射できる。したがって、前記実施形態と同様に、一方向組付けが可能である。
【0081】
さらに、第一の変形例によれば、ロアフレーム18bの数を削減できるから、組付け工数の削減を図ることができる。さらに、ロアフレーム18bとクロス16とを纏めて接合できるから、接合の工数の削減を図ることができる。したがって、製造コストの削減を図ることができる。さらに、第一の変形例によれば、ヒートシンク12に開口部を設けることにより、バッテリーケース10bの軽量化を図ることができる。
【0082】
(第二の変形例)
次に第二の変形例に係るバッテリーケース10cについて説明する。第二の変形例は、フロントフレーム13、リアフレーム14、およびサイドフレーム15と、ロアパネル11およびヒートシンク12との接合構造が前記実施形態と異なる例である。
図10は、第二の変形例に係るバッテリーケース10cのフロントフレーム13とロアパネル11との接合構造を示す断面図であり、左右方向に直角な平面で切断した断面図である。なお、図示を省略するが、リアフレーム14および左右のサイドフレーム15とロアパネル11およびヒートシンク12との接合構造も、
図10に示す構成と同じである。
【0083】
フロントフレーム13およびリアフレーム14の下部には互いに対向する側に向かって延出する延出部134が設けられている。そして、これらの延出部134の上面が、第一接合面131,141である。第一接合面131,141(延出部134の上面)は、上下方向に直角な平面である。また、第一接合面131,141と第二接合面132,142とは前後方向および上下方向に互いにずれており、上下方向視において互いに重畳していない。そして、第一接合面131,141(すなわち、延出部134の上面)は、第二接合面132よりも上側に位置している。
【0084】
同様に、左右のサイドフレーム15の下部には、互いに対向する側に向かって延出するリブ状の延出部が設けられている。この延出部の上面が、第一接合面151である。第一接合面151は、上下方向に直角な平面である。なお、第一接合面151と第二接合面152とは左右方向および上下方向に互いにずれており、上下方向視において互いに重畳していない。そして、第一接合面151は、第二接合面152よりも上側に位置している。
【0085】
また、ロアパネル11の下側にヒートシンク12が重ねて配置されている。ただし、ヒートシンク12はロアパネル11よりも小さく、ロアパネル11の外周部にはヒートシンク12が重畳していない。そして、ヒートシンク12が重畳していないロアパネル11の外周部のうち前端部および後端部は、それぞれフロントフレーム13およびリアフレーム14の第一接合面131,141の上側に配置された状態で(延出部134の上側に重畳している状態で)、第一接合面131,141と接合されている。同様に、ロアパネル11の外周部のうち右端部及び左端部は、それぞれサイドフレーム15の第一接合面151の上側に配置された状態で、第一接合面151に接続されている。
【0086】
前記実施形態に係るバッテリーケース10aの製造方法においては、ヒートシンク12の下側からレーザーを照射することによりロアパネル11およびヒートシンク12を、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15に接合する。これに対して、第二の変形例に係るバッテリーケース10cの製造方法においては、フロントフレーム13およびリアフレーム14の延出部134及び左右のサイドフレーム15の延出部に、下側からレーザーを照射することによって、ロアパネル11を、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15の各延出部の上面である第一接合面に接合する。したがって、前記実施形態と同様に、一方向組付けが可能である。
【0087】
さらに、第二の変形例によれば、ロアパネル11の外周部が、フロントフレーム13およびリアフレーム14の延出部134、および左右のサイドフレーム15の延出部の上側に位置している。このため、バッテリーモジュール50がロアパネル11の上側に載置された場合に、バッテリーモジュール50の重量を、フロントフレーム13およびリアフレーム14の延出部134、および左右のサイドフレーム15の延出部によって受けることができる。すなわち、ロアパネル11の外周部と、フロントフレーム13およびリアフレーム14の第一接合面131,141との接合個所W1には、互いに引き離す方向の力が掛からない。したがって、バッテリーケース10cの耐久性の向上を図ることができる。
【0088】
さらに、第二の変形例においては、ロアパネル11がフロントフレーム13およびリアフレーム14の第一接合面131,141に接合されるとともに、左右のサイドフレーム15の第一接合面151に接合されている。そして、ロアパネル11とヒートシンク12との境界面は、フロントフレーム13およびリアフレーム14の第一接合面131,141と、左右のサイドフレーム15の第一接合面151の上側に位置していない。このため、例えばロアパネル11とヒートシンク12とが境界面にて部分的に分離し、当該分離箇所から調温流体が漏出した場合であっても、漏出した調温流体は第一接合面131,141,151の下方に流下し、第一接合面131,141,151よりも上側に位置するロアパネル11の上側空間(すなわち、バッテリーモジュール50が配置される空間)に流入しない。したがって、漏出した調温流体がバッテリーモジュール50に接触することが防止される。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。
【0090】
例えば、前記実施形態では、各部材の接合にレーザー溶接が適用される例を示したが、各部材の接合方法はレーザー溶接に限定されない。例えば、各部材がFSW(摩擦攪拌接合)により接合される構成であってもよい。要は、互いに積層する部材どうしを積層方向の一方から接合できる接合方法であればよい。
【0091】
また、フロントフレーム13、リアフレーム14、サイドフレーム15の寸法および形状は、前記実施形態に限定されるものではない。また、収容可能なバッテリーモジュール50、クロス16、ロアフレーム18a,18bの数も限定されるものではない。また、ロアパネル11、ヒートシンク12、フロントフレーム13、リアフレーム14、サイドフレーム15、クロス16、クロス支持部材17、ロアフレーム18a,18bおよびシェアパネル19の材質も、アルミニウムに限定されるものではない。これらの各部材には、各種金属材料が適用できる。
【符号の説明】
【0092】
10a,10b,10c…バッテリーケース、11…ロアパネル、12…ヒートシンク、13…フロントフレーム、131…フロントフレームの第一接合面、132…フロントフレームの第二接合面、14…リアフレーム、141…リアフレームの第一接合面、142…リアフレームの第二接合面、15…サイドフレーム、151…サイドフレームの第一接合面、152…サイドフレームの第二接合面、16…クロス、163…クロスのフランジ部、18a,18b…ロアフレーム、182…ロアフレームの第一フランジ部、184…ロアフレームの第二フランジ部、19…シェアパネル、50…バッテリーモジュール