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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154687
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】車両用のバッテリーケース
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20221005BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20221005BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20221005BHJP
   H01M 50/233 20210101ALI20221005BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20221005BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20221005BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20221005BHJP
【FI】
B60K1/04
H01M50/249
H01M50/224
H01M50/233
H01M50/242
H01M50/209
H01M50/291
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057838
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 将人
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 裕志
(72)【発明者】
【氏名】永塚 寛奈
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB04
3D235BB07
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC15
3D235DD23
3D235EE63
3D235FF12
3D235HH26
3D235HH42
3D235HH55
5H040AA14
5H040AA37
5H040AS04
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY10
5H040CC20
5H040CC30
5H040CC38
5H040LL01
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】側突に対する耐性の向上を図ることができるバッテリーケースを提供する。
【解決手段】バッテリーケース10の左右のサイドフレーム15は、互いに対向する側に設けられている側壁部32および互いに対向する側とは反対側に設けられているEA部31を有しており、前記EA部31は、上面および下面が上下方向に対して直角な板状の部分であり互いに上下方向に離間しているEA上板部311とEA下板部312とを有しており、前記側壁部32は、上面および下面が上下方向に対して直角な板状の部分であり互いに上下方向に離間している第一リブ状部325と第二リブ状部326とを有しており、EA上板部311の厚さ方向の中心線の延長線Lは第一リブ状部325の内部を通過しており、EA下板部312の厚さ方向の中心線の延長線Lは第二リブ状部326の内部を通過している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に離間して配置されるとともに前記第一方向とは直角な第二方向に延伸しており、それらの間にバッテリーを収容可能な2つのサイドフレームを有しており、
2つの前記サイドフレームは、内部に空間が形成されているエネルギー吸収部と、前記エネルギー吸収部よりも相手方の前記サイドフレームに近い側である近接側に設けられており内部に空間が形成されている側壁部と、を有しており、
前記エネルギー吸収部は、前記第一方向および前記第二方向に対して直角な第三方向に互いに離間しており、前記第一方向および前記第二方向に延伸する第一板状部および第二板状部を有しており、
前記側壁部は、
前記第一方向に交差する方向および前記第二方向に延伸しており、前記第一板状部および前記第二板状部の前記近接側の端部が結合されている第三板状部と、
前記第一方向に交差する方向および前記第二方向に延伸しており、前記第三板状部の前記近接側に前記第三板状部から離間して配置されている第四板状部と、
前記第一方向および前記第二方向に延伸しており、前記近接側の端部が前記第三板状部に結合しており、前記近接側の端部とは反対側の端部が前記第四板状部に結合している第一リブ状部および第二リブ状部と、
を有しており、
前記第二方向視において、前記第一板状部の厚さ方向の中心線の延長線は前記第一リブ状部の内部を通過しており、前記第二板状部の厚さ方向の中心線の延長線は前記第二リブ状部の内部を通過している、
車両用のバッテリーケース。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用のバッテリーケースであって、
前記第一方向の一方の端部が2つの前記サイドフレームの一方に接合されており、前記第一方向の他方の端部が2つの前記サイドフレームの他方に接合されており、前記第三方向の一方の面にバッテリーを載置可能な底板部材をさらに有しており、
前記底板部材と前記側壁部との接合箇所から前記第一リブ状部までの前記第三方向の距離は、前記底板部材と前記側壁部との接合箇所から前記第二リブ状部までの距離よりも大きく、
前記第一リブ状部の厚さは前記第一板状部の厚さよりも厚い、
車両用のバッテリーケース。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用のバッテリーケースであって、
前記側壁部は、前記第一リブ状部と前記第二リブ状部とを繋ぐように設けられている第三リブ状部をさらに有する、
車両用のバッテリーケース。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用のバッテリーケースであって、
前記第三リブ状部の一方の端部は、前記第一リブ状部と前記第三板状部との結合個所に結合しており、
前記第三リブ状部の他方の端部は、前記第二リブ状部と前記第四板状部との結合個所に結合している、
車両用のバッテリーケース。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両用のバッテリーケースであって、
前記第二リブ状部の厚さは前記第一リブ状部の厚さよりも薄い、
車両用のバッテリーケース。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載の車両用のバッテリーケースであって、
2つの前記サイドフレームは金属材料からなる押し出し材であり、前記側壁部と前記エネルギー吸収部とは一体に繋がっている、
車両用のバッテリーケース。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6に記載の車両用のバッテリーケースであって、
2つの前記サイドフレームどうしの間には、前記第一方向および前記第二方向に延伸する板状部を有し、前記第一方向の端部が2つの前記サイドフレームの前記第三板状部に対向するかまたは前記第三板状部に接触する複数のクロスが配置されており、
前記第二方向視において、前記第一リブ状部の前記厚さ方向の中心線が複数の前記クロスの前記板状部の内部を通過している、
いる、
車両用のバッテリーケース。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用のバッテリーケースにおいて、
前記クロスの前記板状部の厚さは、前記第一リブ状部の厚さよりも厚い、
車両用のバッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のバッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両(EV、PHV(プラグインハイブリッド車両)、HV(ハイブリッド車両)など)のバッテリーを収容するバッテリーケースは、例えば、車両の下部であってロッカーパネルどうしの間に配置される。また、電動車両においては、側突が発生した際にバッテリーが保護されることが求められる。このため、特許文献1には、左右のロッカーパネルの車幅方向内側に衝撃吸収部が設けられる車両の下部構成が開示されている。そして、バッテリーケースはこの衝撃吸収部どうしの間に配置されている。このような構成であれば、側突のエネルギーをロッカーパネルに設けられている衝撃吸収部によって吸収することができるから、バッテリーケースに収容されているバッテリーに掛かる衝撃を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-110003号公報
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、特許文献1に開示されている車両の下部構成では、ロッカーパネルの衝撃吸収部が側突によって車幅方向内側に入り込むように変形すると、衝撃吸収部がバッテリーケースの側壁部に接触してバッテリーに衝撃が掛かることがある。また、バッテリーケースの側壁部が変形すると、変形したバッテリーケースの側壁部がバッテリーに衝突してバッテリーを損傷させるおそれがある。このように、特許文献1に開示される車両の下部構成では、側突時においてバッテリーを十分に保護できないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、側突からバッテリーを保護する効果を高めることができるバッテリーケースを提供することである。
【0006】
(課題を解決するための手段)
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用のバッテリーケースは、
第一方向に離間して配置されるとともに前記第一方向とは直角な第二方向に延伸しており、それらの間にバッテリーを収容可能な2つのサイドフレームを有しており、
2つの前記サイドフレームは、内部に空間が形成されているエネルギー吸収部と、前記エネルギー吸収部よりも相手方の前記サイドフレームに近い側である近接側に設けられており内部に空間が形成されている側壁部と、を有しており、
前記エネルギー吸収部は、前記第一方向および前記第二方向に対して直角な第三方向に互いに離間しており、前記第一方向および前記第二方向に延伸する第一板状部および第二板状部を有しており、
前記側壁部は、
前記第一方向に交差する方向および前記第二方向に延伸しており、前記第一板状部および前記第二板状部の前記近接側の端部が結合されている第三板状部と、
前記第一方向に交差する方向および前記第二方向に延伸しており、前記第三板状部の前記近接側に前記第三板状部から離間して配置されている第四板状部と、
前記第一方向および前記第二方向に延伸しており、前記近接側の端部が前記第三板状部に結合しており、前記近接側の端部とは反対側の端部が前記第四板状部に結合している第一リブ状部および第二リブ状部と、
を有しており、
前記第二方向視において、前記第一板状部の厚さ方向の中心線の延長線は前記第一リブ状部の内部を通過しており、前記第二板状部の厚さ方向の中心線の延長線は前記第二リブ状部の内部を通過している.
【0007】
本発明によれば、サイドフレームの剛性を高めることができる。具体的には、側突などによってエネルギー吸収部に対して第二方向外側から外力が掛かった場合、当該外力はエネルギー吸収部の第一板状部と第二板状部とを通じて側壁部に伝わる。そして、第一板状部の厚さ方向の中心線の延長線が第一リブ状部の内部を通過しており、第二板状部の厚さ方向の中心線の延長線が第二リブ状部の内部を通過しているから、第一板状部と第二板状部とを介して側壁部に伝わった外力は、直接的に側壁部の第一リブ状部と第二リブ状部によって受けられる。このため、第一リブ状部および第二リブ状部が設けられない構成に比較して側壁部の変形を防止または抑制できる。すなわち、サイドフレームの剛性を高めることができる。
【0008】
前記第一方向の一方の端部が2つの前記サイドフレームの一方に接合されており、前記第一方向の他方の端部が2つの前記サイドフレームの他方に接合されており、前記第三方向の一方の面にバッテリーを載置可能な底板部材をさらに有しており、
前記底板部材と前記側壁部との接合箇所から前記第一リブ状部までの前記第三方向の距離は、前記底板部材と前記側壁部との接合箇所から前記第二リブ状部までの距離よりも大きく、
前記第一リブ状部の厚さは前記第一板状部の厚さよりも厚い、
という構成が適用できる。
【0009】
このような構成によれば、エネルギー吸収部の方が側壁部よりも変形しやすい。したがって、エネルギー吸収部に対して近接側に押すような外力が掛かった場合、エネルギー吸収部が変形することによって外力によるエネルギーを吸収するとともに、外力による側壁部の変形を防止または抑制する。したがって、2つのサイドフレームの間に配置されているバッテリーが損傷することを防止または抑制できる。
【0010】
前記側壁部は、前記第一リブ状部と前記第二リブ状部とを繋ぐように設けられている第三リブ状部をさらに有する、
という構成が適用できる。
【0011】
側壁部がさらに第三リブ状部を有することによって、側壁部の剛性を高めることができるとともに、エネルギーの吸収量を大きくできる。
【0012】
前記第三リブ状部の一方の端部は、前記第一リブ状部と前記第三板状部との結合個所に結合しており、
前記第三リブ状部の他方の端部は、前記第二リブ状部と前記第四板状部との結合個所に結合している、
という構成が適用できる。
【0013】
このような構成によれば、エネルギー吸収部をもう一方のサイドフレームに接近させる(収容されているバッテリーに接近させる)ような外力が掛かった場合、第三リブ状部によって、側壁部がバッテリーの側に倒れるように変形することを防止または抑制できる。
【0014】
前記第二リブ状部の厚さは前記第一リブ状部の厚さよりも薄い、
という構成が適用できる。
【0015】
このような構成によれば、側壁部がバッテリーの収容されている領域の側に向かって倒れるように変形することが防止または抑制できる。すなわち、側壁部に対してエネルギー吸収部から力が掛かった場合、第一リブ状部よりも薄い第二リブ状部の方が、第一リブ状部よりも変形しやすい。そして、第二リブ状部が第一方向に潰れるように変形し第一リブ状部が変形しない場合、または第二リブ状部の第一方向の変形量が第一リブ状部の第一方向の変形量よりも大きい場合、側壁部は底板部材から遠い側の端部が、2つのサイドフレームの互いに対向する側とは反対側に倒れるように変形する。すなわち、2つのサイドフレームの間にバッテリーが収容されている構成においては、側壁部はバッテリーから離れる方向に倒れるように変形する。
【0016】
2つの前記サイドフレームは金属材料からなる押し出し材であり、前記側壁部と前記エネルギー吸収部とは一体に繋がっている、
という構成が適用できる。
【0017】
このような構成によれば、側壁部とエネルギー吸収部との間にクリアランスが設けられないから、側壁部とエネルギー吸収部との第一方向寸法を大きくできる。したがって、側壁部およびエネルギー吸収部によるエネルギーの吸収量を大きくできる。また、側壁部とエネルギー吸収部とを接合するための工程や部材が不要であるから、製造コストの削減を図ることができる。
【0018】
2つの前記サイドフレームどうしの間には、前記第一方向および前記第二方向に延伸する板状部を有し、前記第一方向の端部が2つの前記サイドフレームの前記第三板状部に対向するかまたは前記第三板状部に接触する複数のクロスが配置されており、
前記第二方向視において、前記第一リブ状部の前記厚さ方向の中心線が複数の前記クロスの前記板状部の内部を通過している、
いる、
とい
【0019】
このような構成によれば、側壁部が変形してクロスに接触した場合、側壁部の第一リブ状部からクロスに伝達される力を、クロスの板状部で受けることができる。したがって、バッテリーケースの剛性を高めることができる。
【0020】
前記クロスの前記板状部の厚さは、前記第一リブ状部の厚さよりも厚い、
という構成が適用できる。
【0021】
このような構成によれば、クロスの剛性を高めることができるから、バッテリーケースの剛性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態に係るバッテリーケースの構成を示す外観斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るバッテリーケースの構成を示す外観斜視図であり、バッテリーが収容されている状態を示す図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るバッテリーケースの構成を示す分解斜視図である。
図4図4は、クロスの構成を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るバッテリーケースの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、本発明の実施形態に係る車両用のバッテリーケース10を単に「バッテリーケース10」と略して記す。以下の説明において、バッテリーケース10およびバッテリーケース10を形成する各部材について用いる各方向は、車両に組付けられた状態での方向(すなわち、車両の方向)を基準とする。各図においては、バッテリーケース10の前側を矢印Frで示し、後側を矢印Rrで示し、上側を矢印Upで示し、下側を矢印Dwで示し、右側を矢印Rで示し、左側を矢印Lで示す。
【0024】
バッテリーケース10は、電動車両(EV、PHV(プラグインハイブリッド車両)、HV(ハイブリッド車両)など)に搭載されるバッテリーの収容に用いられる。そして、バッテリーケース10は、車両の床部(シートの下側)に配置される。
【0025】
まず、バッテリーケース10の全体構成について説明する。図1は、バッテリーケース10の構成を示す斜視図である。図2は、バッテリーケース10の構成を示す図であり、バッテリーモジュール50が収容されている状態を示す図である。図3は、バッテリーケース10の構成を示す分解斜視図であり、下方から見た図である。
【0026】
図1図3に示すように、バッテリーケース10は、ロアパネル11と、ヒートシンク12と、フロントフレーム13と、リアフレーム14と、左右の2つのサイドフレーム15と、複数のクロス16と、複数のクロス支持部材17と、複数のロアフレーム18と、シェアパネル19とを有している。バッテリーケース10は、上下方向視において略四辺形を有しており、上側が開口する有底の箱状の構成を有している。具体的には、ロアパネル11、ヒートシンク12、ロアフレーム18およびシェアパネル19が「箱の底部」を形成し、フロントフレーム13、リアフレーム14および左右のサイドフレーム15が「箱の側壁部」を形成する。また、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15は、上下方向視における内周側に開口部を有する略四辺形の枠体を形成する。
【0027】
そして、ロアパネル11の上面側であって、フロントフレーム13、リアフレーム14および左右のサイドフレーム15に囲まれる領域(すなわち、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15により形成される枠体の開口部の内部)が、バッテリーモジュール50を収容可能な領域である。左右の2本のサイドフレーム15は、バッテリーモジュール50を収容可能な領域の左右の両外側に、それらの長尺方向が前後方向に平行な向きで配置される。すなわち、左右のサイドフレーム15は、第一方向の例である左右方向に互いに離間して配置されており、第二方向の例である前後方向に延伸している。なお、説明の便宜上、左右のサイドフレーム15における互いに相手方に近い側(バッテリーモジュール50を収容可能な領域の側)を「近接側」と記す。複数のクロス16は、それらの長尺方向が左右方向に平行な向きで、前後方向に並べて配置されている。そして、各クロス16の長尺方向(左右方向)の端面は、左右のサイドフレーム15の近接側の側面(すなわち、左右のサイドフレーム15の互いに対向する面。より具体的には、側壁内周板部321の近接側の面)に近接して対向している。ただし、クロス16の長尺方向の端部がサイドフレーム15に接触していてもよい。
【0028】
次に、バッテリーケース10の各部材について説明する。
【0029】
ロアパネル11およびヒートシンク12は、底板部材の例であり、いずれも上下方向視において略四辺形の板状の部材である。また、ロアパネル11およびヒートシンク12は、上下方向視において、互いに略同形かつ略同寸である。ロアパネル11およびヒートシンク12は、例えばアルミニウム板により成形される。
【0030】
ロアパネル11およびヒートシンク12の前端部(前側の辺)の左右方向の中央部には、前側に向かって延出する延出部111,121が設けられている。ロアパネル11の延出部111には、2つの給排部112が設けられている。これら2つの給排部112は、ロアパネル11とヒートシンク12との間に設けられる調温経路20の内部と外部とを連通する孔である。なお、調温経路20は、バッテリーモジュール50の温度調節を行うための調温流体(例えば水)が流通可能な経路である。これらの2つの給排部112を介して、調温経路20への調温流体の供給、および調温経路20からの調温流体の排出が可能である。
【0031】
ヒートシンク12には、調温経路20を形成する経路壁部122が設けられている。経路壁部122は、上側が開口する窪みであり、プレス加工により成形される。このため、経路壁部122は、下側に向かって膨出している。
【0032】
ヒートシンク12は、ロアパネル11の下側に重ねて接合される。そして、ヒートシンク12とロアパネル11とが互いに接合されると、ヒートシンク12に形成されている経路壁部122がロアパネル11によって蓋をされる。したがって、ロアパネル11とヒートシンク12との間(換言すると、ロアパネル11とヒートシンク12の積層体の内部)に、調温流体が流通可能な調温経路20が形成される。
【0033】
フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15は、いずれも中空で長尺棒状の部材である。フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15には、アルミニウムの押し出し材が適用される。
【0034】
フロントフレーム13およびリアフレーム14は、それらの長尺方向が左右方向(車幅方向)に平行となる向きで、前後方向に互いに離間して平行に配置される。フロントフレーム13およびリアフレーム14の下方部には、ロアパネル11(ロアパネル11とヒートシンク12の積層体)が接合される第一接合面131,141と、シェアパネル19が接合される第二接合面132,142とが形成される。第一接合面131,141および第二接合面132,142は、いずれも左右方向に長く、上下方向に対して直角で下側を向く平面である。
【0035】
フロントフレーム13およびリアフレーム14の第一接合面131,141と第二接合面132,142とは、互いに前後方向および上下方向にずれており、上下方向視において互いに重畳していない。また、フロントフレーム13およびリアフレーム14の第二接合面132,142は第一接合面131,141よりも下側に位置している。具体的には、フロントフレーム13およびリアフレーム14の下面には、下側に向かって突出する突状部が、フロントフレーム13とリアフレーム14とが互いに対向する側とは反対側の辺に沿って左右方向に延伸するように設けられている。そして、突状部ではない部分の下面が第一接合面131,141であり、突状部の下面が第二接合面132,142である。なお、フロントフレーム13においては、第一接合面131が第二接合面132よりも後側に位置しており、リアフレーム14においては第一接合面141が第二接合面142よりも前側に位置している。すなわち、第一接合面131,141は、第二接合面132,142よりも、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15により形成される四辺形の枠体の内周側に位置している。また、第二接合面132,142は第一接合面131,141よりも下側に位置している。
【0036】
フロントフレーム13の下部には、ロアパネル11およびヒートシンク12の延出部111,121との干渉を避けるための凹部133が設けられている。この凹部133は、ロアパネル11およびヒートシンク12をフロントフレーム13の下側から取り付けられるように、下側が開口している。
【0037】
左右のサイドフレーム15は、それらの長尺方向が前後方向に平行な向きで、左右方向に互いに離間して平行に配置される。左右のサイドフレーム15は、内部に空間が形成されているエネルギー吸収部31(以下、「EA部31」と記す)と、EA部31の一側(具体的には左右のサイドフレーム15の互いに対向する側)に位置しており内部に空間が形成されている側壁部32とを有している。そして、左右のサイドフレーム15の側壁部32の下方部には、ロアパネル11(ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体)が接合される第一接合面151と、シェアパネル19が接合される第二接合面152とが設けられる。第一接合面151および第二接合面152は、いずれも前後方向に長く、上下方向に対して直角で下側を向く平面である。なお、左右のサイドフレーム15の構成の詳細については後述する。
【0038】
複数のクロス16は、バッテリーケース10の剛性を高める機能を有する。そして、クロス16は、側突などが発生した際に左右方向の荷重を受けることによって、サイドフレーム15が変形してバッテリーモジュール50に接触することを防止または抑制する。複数のクロス16は、いずれも長尺棒状の部材であり、例えばアルミニウムの押し出し材が適用される。複数のクロス16は、それらの長尺方向が左右方向に平行な向きでロアパネル11の上面に沿って棒状に延伸しており、前後方向に並べて配置される。
【0039】
図4は、クロス16の構成を示す斜視図である。クロス16は、図4に示すように、下端部が開口する略四角形の断面形状(すなわち、開口断面形状)を有している。すなわち、クロス16は、前後方向および左右方向に延伸する平板状のクロス上板部161と、クロス上板部161の前後方向の両端部から下方に延伸するとともに、左右方向に延伸する平板状のクロス前板部162およびクロス後板部163とを有している。クロス上板部161がクロス16の板状部の例である。さらに、クロス前板部162およびクロス後板部163の下端部には、前後方向に互いに反対側に延出するフランジ部164が、クロス16の長尺方向(すなわち、左右方向)の全長にわたって設けられている。フランジ部164の下側の面は、上下方向に対して直角な(すなわち、ロアパネル11の上面に平行な)平面である。
【0040】
クロス支持部材17は、各クロス16の長尺方向の両端部のそれぞれを左右のサイドフレーム15のそれぞれに固定するための部材である。クロス支持部材17には、例えばアルミニウムの押し出し材が適用される。なお、クロス支持部材17の具体的な構成は特に限定されない。各クロス支持部材17は、各クロス16の両端部のそれぞれを左右のサイドフレーム15に固定できるように構成されていればよい。
【0041】
ロアフレーム18は、長尺棒状の部材である。ロアフレーム18には、アルミニウムの押し出し材が適用される。ロアフレーム18の上面および下面は、上下方向に直角な平面であり、互いに平行である。また、ロアフレーム18の上面側には、ヒートシンク12の経路壁部122との干渉を避けるための凹部が設けられている。なお、ロアフレーム18の断面形状は特に限定されるものではない。
【0042】
シェアパネル19は、上下方向視において略四辺形の板状の部材である。シェアパネル19には、例えばアルミニウム板が適用される。なお、シェアパネル19の前後方向寸法と左右方向寸法とは、それぞれロアパネル11およびヒートシンク12の延出部111,121を除いた前後方向寸法と左右方向寸法よりも大きい。
【0043】
次に、バッテリーケース10の組付け構成について説明する。
【0044】
フロントフレーム13およびリアフレーム14のそれぞれの長尺方向の端部と、左右のサイドフレーム15のそれぞれの長尺方向の端部とが互いに接合される。これにより、上下方向視において内周側に開口部を有する略四辺形の枠体が形成される。そして、この枠体の開口部の内部に、複数のクロス16がそれらの長尺方向がフロントフレーム13およびリアフレーム14の長尺方向に略平行となる向きで配置される。このため、各クロス16の長尺方向の端面が、左右のサイドフレーム15に近接して対向する。そして、各クロス16の両端部は、クロス支持部材17を介して左右のサイドフレーム15のそれぞれに接合される。
【0045】
フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15の下側に、ロアパネル11およびヒートシンク12が配置される。このとき、ロアパネル11およびヒートシンク12の外周部は、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15の第一接合面131,141,151の下側に重畳している。そして、ロアパネル11およびヒートシンク12の外周部が、フロントフレーム13、リアフレーム14、および左右のサイドフレーム15の第一接合面131,141,151に接合される。さらに、クロス16のフランジ部164とロアパネル11とが接合される。
【0046】
ロアパネル11およびヒートシンク12の下側に、複数のロアフレーム18が配置される。具体的には、複数のロアフレーム18は、それらの長尺方向がフロントフレーム13およびリアフレーム14の長尺方向に平行な向きで、互いに前後方向に離間して配置される。そして、各ロアフレーム18の上端部(上面)が、ヒートシンク12の下面に接合される。
【0047】
ロアパネル11、ヒートシンク12、左右のサイドフレーム15、および複数のロアフレーム18の下側に、シェアパネル19が配置される。シェアパネル19の外周部は、フロントフレーム13、リアフレーム14および左右のサイドフレーム15の第二接合面132.142.152の下側に重畳している。また、各ロアフレーム18の下端部(下面)は、シェアパネル19の上面に接触している。そして、シェアパネル19の外周部は、フロントフレーム13、リアフレーム14および左右のサイドフレーム15の第二接合面152に接合される。さらに、各ロアフレーム18の下端部がシェアパネル19に接合される。
【0048】
なお、バッテリーケース10を形成する各部材どうしの接合には、例えばレーザー溶接が適用される。
【0049】
次に、サイドフレーム15の構成の詳細、およびサイドフレーム15と他の部材との関係について説明する。図5は、バッテリーケース10を前後方向に直角な平面で切断した断面図である。
【0050】
図5に示すように、左右のサイドフレーム15は、EA部31と側壁部32とを有している。EA部31は、側壁部32の一側(具体的には、バッテリーモジュール50を収容可能な領域とは反対側。換言すると、フロントフレーム13、リアフレーム14および左右のサイドフレーム15により形成される枠体の外周側)に位置している。なお、EA部31と側壁部32とは一体に繋がっている。
【0051】
EA部31は、前後方向に長い中空棒状の構成を有している。EA部31は、側突など発生した場合に変形することによって側突などによる衝撃のエネルギーを吸収し、バッテリーモジュール50に掛かる衝撃を低減するように構成されている。図5に示すように、EA部31は、第一板状部の例であるEA上板部311、第二板状部の例であるEA下板部312、および複数(図6においては5つ)のEA縦板部313を有している。
【0052】
EA上板部311およびEA下板部312は、前後方向および左右方向に延伸する平板状の部分である。EA上板部311とEA下板部312は、第三方向の例である上下方向に離間している。EA上板部311およびEA下板部312には、EA部31を車両のロッカーパネル52にボルト止めするためのボルト51を挿通するボルト挿通孔153が設けられている。このボルト挿通孔153は、EA上板部311およびEA下板部312を上下方向に貫通する貫通孔である。複数のEA縦板部313は、前後方向および上下方向に延伸する平板状の部分である。複数のEA縦板部313は、左右方向に互いに離間している。そして、複数のEA縦板部313の上端部はEA上板部311に繋がっており、複数のEA縦板部313の下端部はEA下板部312に繋がっている。EA部31の前後方向に直角な平面で切断した断面形状は、左右方向に長く上面および下面が略水平な長方形である。
【0053】
側壁部32は、EA部31よりも近接側に設けられている。側壁部32は、前後方向に直角な平面で切断した断面が縦長の形状を有している。そして、側壁部32は、前後方向に長い中空棒状の構成を有している。側壁部32は、第四板状部の例である側壁内周板部321と、第三板状部の例である側壁外周板部322と、側壁上板部323と、側壁下板部324と、第一リブ状部325と、第二リブ状部326と、第三リブ状部327とを有している。
【0054】
側壁内周板部321および側壁外周板部322は、左右方向に対して交差する方向(例えば上下方向)および前後方向に延伸する板状の部分である。本実施形態では、側壁内周板部321の下部(具体的には後述する第一リブ状部325よりも下側の部分)は、上下方向および前後方向に延伸する平板状の構成を有しており、側壁内周板部321の上部(第一リブ状部325よりも上側の部分)は、上下方向に対して傾斜する方向および前後方向に延伸する平板状の構成を有している。また、側壁外周板部322は、上下方向および前後方向に延伸する平板状の構成を有している。側壁内周板部321と側壁外周板部322とは互いに左右方向に離間している。そして、側壁内周板部321は、側壁外周板部322よりも、近接側(バッテリーモジュール50が収容される領域に近い側)に位置している。さらに、側壁外周板部322には、EA部31のEA上板部311およびEA下板部312の左右方向の一方の端部(2つのサイドフレーム15の互いに対向する側に近い端部)が一体に繋がっている。
【0055】
側壁上板部323および側壁下板部324は、左右方向および前後方向に延伸する板状の部分である。側壁上板部323と側壁下板部324とは上下方向に互いに離間している。側壁上板部323は、側壁内周板部321の上端(上辺)と側壁外周板部322の上端(上辺)とを繋ぐように設けられる部分である。側壁下板部324は、側壁内周板部321の下端(下辺)と側壁外周板部322の下端(下辺)とを繋ぐように設けられる部分である。
【0056】
サイドフレーム15の側壁部32の下方部には、第一接合面151および第二接合面152が設けられている。第一接合面151および第二接合面152の構成は、いずれも、前後方向に長く、上下方向に対して直角で下側を向く平面である。また、第一接合面151と第二接合面152とは上下方向位置が互いに異なっており、第二接合面152は第一接合面151よりも下方に位置している。具体的には、図5に示すように、サイドフレーム15の側壁内周板部321の下方端から近接側とは反対側に延伸する部分(後述する第二リブ状部326の一部)の下面、および側壁内周板部321の下方端から近接側に延伸する板状の延出部328の下面は、一体に繋がった平面を形成している。この一体に繋がっている平面が第一接合面151である。第二接合面152は、第一接合面151よりも側壁外周板部322の側であって、第一接合面151よりも下方に設けられている。
【0057】
第一リブ状部325、第二リブ状部326、および第三リブ状部327は、サイドフレーム15の側壁部32の内部(側壁内周板部321、側壁外周板部322、側壁上板部323および側壁下板部324に囲まれる領域)に設けられている。
【0058】
第一リブ状部325および第二リブ状部326は、前後方向および左右方向に延伸する平板状の部分である。第一リブ状部325および第二リブ状部326の左右方向の一方の端部(近接側の端部。図5中ではL側の端部)は、それぞれ側壁内周板部321に繋がっており、前記一方の端部とは反対側の端部(図5中ではR側の端部)はそれぞれ側壁外周板部322に繋がっている。換言すると、第一リブ状部325および第二リブ状部326は、側壁部32の内部において、側壁内周板部321と側壁外周板部322とを繋ぐように設けられる。なお、第一リブ状部325と第二リブ状部326とは上下方向に離間しており(上下方向位置が互いに異なっており)、第二リブ状部326は第一リブ状部325の下方に位置する。
【0059】
図5に示すように、第二リブ状部326の下面の一部が第一接合面151を形成している。ただし、第二リブ状部326の下面と第一接合面151とはそれぞれ別の面であってもよい。例えば、第二リブ状部326の下面が第一接合面151より下方に位置しており、第二リブ状部326の上面が第一接合面151より上方に位置していてもよい。
【0060】
第一リブ状部325は、ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体よりも上側に位置している。一方、および第二リブ状部326の上下方向位置は、ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体の上下方向位置と同じ(または略同じ)である。このため、ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体と側壁部32との接合箇所(第一接合面151)から第一リブ状部325までの上下方向距離は、ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体と側壁部32との接合箇所から第二リブ状部326までの上下方向距離(本実施形態では、0またはほぼ0)よりも大きい。なお、第一リブ状部325および第二リブ状部326が上下方向に関してロアパネル11およびヒートシンク12の積層体の上側に位置していてもよい。この場合であっても、ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体と側壁部32との接合箇所(第一接合面151)から第一リブ状部325までの上下方向距離は、ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体と側壁部32との接合箇所から第二リブ状部326までの上下方向距離よりも大きい。
【0061】
図5に示すように、前後方向に直角な平面で切断した断面において、EA上板部311の厚さ方向の中心線(EA上板部311の上面と下面に対する中心線。なお、この中心線は、実際には、前後方向および左右方向に延伸する平面である)の延長線L(以下、「第一基準線L」と記す)は、側壁部32の第一リブ状部325の上面と下面の間(すなわち、第一リブ状部325の内部)を通過している。同様に、前後方向に直角な平面で切断した断面において、EA下板部312の厚さ方向の中心線L(EA下板部312の上面と下面に対する中心線)の延長線(以下、「第二基準線L」と記す)は、第二リブ状部326の上面と下面の間(すなわち、第二リブ状部326の内部)を通過している。換言すると、第一リブ状部325とEA上板部311とは、左右方向視において互いに重畳する部分を有している。同様に、第二リブ状部326とEA下板部312とは、左右方向視において互いに重畳する部分を有している。
【0062】
このような構成であると、サイドフレーム15の剛性を高めることができる。具体的には、側突などによってEA部31に対して車幅方向外側から内側に向かう外力(図5においては右側から左側に向かう力)が掛かった場合、当該外力はEA上板部311とEA下板部312を通じて側壁部32に伝わる。そして、第一基準線Lが第一リブ状部325の内部を通過しており、第二基準線Lが第二リブ状部326の内部を通過しているから、EA上板部311とEA下板部312を介して側壁部32に伝わった外力は、直接的に側壁部32の第一リブ状部325と第二リブ状部326によって受けられる。第一リブ状部325および第二リブ状部326は、外力の作用方向にほぼ平行な方向に延伸するため、外力により変形し難い。このため、第一リブ状部325および第二リブ状部326が設けられない構成に比較して側壁部32の変形を防止または抑制できる。すなわち、サイドフレーム15の剛性を高めることができる。
【0063】
さらに、第二リブ状部326の下面が第一接合面151の一部であるため、第二リブ状部326はロアパネル11およびヒートシンク12の積層体に直接的に接合されている。したがって、第二リブ状部326に掛かった外力を、直接的に(すなわち、他の部材等を介することなく)ロアパネル11とヒートシンク12の積層体およびロアフレーム18で受けることができる。このため、第二リブ状部326がロアパネル11およびヒートシンク12の積層体に直接的に接合されていない構成に比較して、バッテリーケース10の剛性を高めることができる。
【0064】
また、側壁部32の第一リブ状部325の厚さtは、EA上板部311の厚さtよりも厚い。このような構成であると、側壁部32の第一リブ状部325の剛性をEA上板部311の剛性よりも高めることができるから、EA部31に比較して側壁部32の剛性を高めることができる。このため、側突などが発生してEA部31に左右方向の力が掛かった場合、EA部31においてエネルギーを吸収しつつ、側壁部32の変形を防止または抑制することができる。したがって、このような構成であると、バッテリーモジュール50に掛かる衝撃を低減できるとともに、側壁部32の変形を防止または抑制することにより変形した側壁部32によってバッテリーモジュール50が損傷することを防止または抑制できる。なお、第一リブ状部325は、ロアパネル11とヒートシンク12の積層体、およびロアフレーム18の上方に位置している。このような構成であると、EA上板部311から第一リブ状部325に伝達された力は、ロアパネル11とヒートシンク12の積層体およびロアフレーム18に直接的には伝達されない。換言すると、EA上板部311から第一リブ状部325に伝達された力を直接的に受けることができない。このため、側壁部32の剛性を高めるためには、第一リブ状部325の剛性を高めることが好ましい。本実施形態では、第一リブ状部325の厚さtをEA上板部311の厚さtよりも厚くすることにより、側壁部32の剛性を高めることができる。
【0065】
また、第一リブ状部325の厚さtは、第二リブ状部326の厚さtよりも厚い。このような構成であると、側突などが発生した際に側壁部32がバッテリーモジュール50の側に倒れるように変形することが防止または抑制される。具体的には、第二リブ状部326の厚さtが第一リブ状部325の厚さtよりも薄いと、EA部31を通じて側壁部32に左右方向の中心側に向かう外力が掛かった場合に、第二リブ状部326の方が第一リブ状部325よりも左右方向に潰れるように変形しやすくなる。そして、第二リブ状部326が左右方向に潰れるように変形し第一リブ状部325が変形しない場合、または第二リブ状部326の左右方向に潰れるように変形した場合の変形量が第一リブ状部325の変形の変形量よりも大きい場合、側壁部32はその上部が外周側(バッテリーモジュール50が収容される側とは反対側)に倒れるように変形する。したがって、側壁部32がバッテリーモジュール50に接触することが防止または抑制できる。
【0066】
側壁部32の第二リブ状部326の厚さtは、EA下板部312の厚さtDよりも薄い。このような構成であると、側突などが発生した際に側壁部32がバッテリーモジュール50の側に倒れるように変形することが防止または抑制される。具体的には、第二リブ状部326の厚さtがEA下板部312の厚さtよりも薄いと、EA部31を通じて側壁部32に外力が掛かった場合に、EA部31とともに左右方向に潰れるように変形しやすくなる。そして、第二リブ状部326が潰れるように変形すると、側壁部32はその上部が外周側(バッテリーモジュール50が収容される側とは反対側)に倒れるように変形する。したがって、側壁部32がバッテリーモジュール50に接触することが防止または抑制できる。
【0067】
第三リブ状部327は、その上面および下面が、上下方向および左右方向に対して傾斜している。具体的には、第三リブ状部327の上面および下面の近接側の端部が近接側の反対側の端部よりも下側に位置する態様で傾斜している。そして、第三リブ状部327の近接側の端部は、側壁内周板部321と第二リブ状部326との結合箇所に繋がっている。また、近接側の端部とは反対側の端部は、側壁外周板部322と第一リブ状部325との結合箇所に繋がっている。換言すると、第三リブ状部327は、「側壁内周板部321と第二リブ状部326との結合箇所」と「側壁外周板部322と第一リブ状部325との結合箇所」とを繋ぐように設けられる。
【0068】
第三リブ状部327により、側壁部32の剛性をさらに高めることができる。すなわち、第三リブ状部327は変形することによってエネルギーを吸収できるから、側壁部32が第三リブ状部327を有することによって、側壁部32が吸収できるエネルギーを大きくできる。このため、バッテリーモジュール50に掛かる衝撃を低減できる。
【0069】
さらに、EA部31に対して車幅方向外側から中心側に向かう力が掛かった場合、第三リブ状部327によって、側壁部32がバッテリーモジュール50の側に倒れるように変形することを防止または抑制できる。すなわち、EA部31に対して車幅方向外側(近接側とは反対側)から車幅方向中心側(近接側)に向かう力が掛かると、側壁部32にはEA部31を介してバッテリーモジュール50に接近するような力が掛かる。一方、側壁部32は、第一リブ状部325よりも下側に位置する第一接合面151と第二接合面152においてそれぞれロアパネル11(ロアパネル11とヒートシンク12の積層体)とシェアパネル19とのそれぞれに接合されている。このため、前記の力は、側壁部32を、第一接合面151および第二接合面152を中心としてバッテリーモジュール50の側に倒す方向に回転させるように作用する。そして、第三リブ状部327は、「第一リブ状部325と側壁外周板部322との結合箇所」と「第二リブ状部326と側壁内周板部321との結合箇所」とに跨るように設けられているから、前記の力は、第三リブ状部327の面方向と平行または略平行になり、第三リブ状部327は前記の力によっては変形し難い。したがって、このような構成によれば、側壁部32がバッテリーモジュール50の側に倒れるように変形することを防止または抑制できる。
【0070】
さらに、第三リブ状部327の近接側の端部は第一接合面151の近傍(具体的には、第一接合面151の直上)に位置しているから、第三リブ状部327に掛かった力は、ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体に伝達することができる。すなわち、ロアパネル11およびヒートシンク12の積層体によって、第三リブ状部327に掛かった力を受けることができる。したがって、バッテリーケース10の変形を防止または抑制できる。すなわち、バッテリーケース10の剛性を高めることができる。
【0071】
なお、第三リブ状部327の厚さtは、第一リブ状部325の厚さtよりも薄い。このような構成であると、第二リブ状部326の厚さtが第一リブ状部325の厚さtよりも薄いという構成と同様の理由により、側壁部32がバッテリーモジュール50に接触することが防止または抑制できる。なお、第三リブ状部327の厚さtは、第二リブ状部326の厚さtと同じであるか、または第二リブ状部326の厚さtより厚い。第三リブ状部327の厚さtと第二リブ状部326の厚さtとが同じであり、かつ第一リブ状部325の厚さtよりも薄ければ、前記作用を奏することができる。さらに、第三リブ状部327の厚さtが第二リブ状部326の厚さtより厚いと、EA部31に対して車幅方向外側から中心側に向かう力が掛かった場合、第二リブ状部326が最も潰れるように変形しやすく、第三リブ状部327が第二リブ状部326の次に潰れるように変形しやすく、第一リブ状部325が最も変形しにくくなる。このため、EA部31に対して車幅方向外側から中心側に向かう力が掛かった場合に、側壁部32はその上部が外周側に倒れるように変形する。したがって、側壁部32がバッテリーモジュール50に接触することが防止または抑制できる。
【0072】
次に、クロス16とサイドフレーム15との関係について説明する。図5に示すように、前後方向に直角な面で切断した断面において、第一基準線Lは、クロス上板部161の内部(クロス上板部161の上面と下面との間)を通過している。このような構成によれば、側突などにより変形したサイドフレーム15がクロス16に接触した場合、サイドフレーム15の第一リブ状部325から伝わる力をクロス上板部161で受けることができる。クロス上板部161は、第一リブ状部325から伝達される外力の作用方向にほぼ平行な方法に延伸するため、この外力によっては変形し難い。したがって、クロス16の変形を防止または抑制できるとともに、サイドフレーム15の変形を抑制できるから、収容されているバッテリーモジュール50にサイドフレーム15が接触することを防止または抑制できる。すなわち、バッテリーケース10の側突に対する耐性を向上させることができる。
【0073】
さらに、クロス上板部161の内部を第一基準線Lが通過する構成であると、クロス16の高さをサイドフレーム15の側壁上板部323よりも低くできる。したがって、このような構成であれば、バッテリーケース10の側突に対する耐性の向上を図りつつ、バッテリーケース10の上下方向寸法の小型化および軽量化を図ることができる。
【0074】
さらに、クロス上板部161の厚さtは、第一リブ状部325の厚さtよりも厚い。このような構成であると、クロス16の剛性を高めることができるから、側突などが発生してサイドフレーム15が変形した場合であっても、変形したサイドフレーム15がバッテリーモジュール50に接触することを防止または抑制する効果を高めることができる。さらに、クロス16の剛性を高めることができるから、クロス16に接合されているロアパネル11およびロアパネル11にロアフレーム18を介して接合されているシェアパネル19(すなわち、バッテリーケース10の底部)の変形を防止または抑制できる。したがって、バッテリーケース10の剛性を高めることができる。
【0075】
なお、サイドフレーム15は、押し出し成形により成形される。すなわちEA部31と側壁部32とは一体に成形される。このような構成であると、EA部31と側壁部32とが別部材である構成に比較して、エネルギーの吸収量を大きくできる。すなわち、EA部31と側壁部32とが別部材であると、組付けのためにEA部31と側壁部32との間にクリアランスが必要になる。そして、このクリアランスはエネルギーの吸収に寄与しない。一方、EA部31と側壁部32とが一体に成形される構成であると、EA部31と側壁部32との間にクリアランスが不要である。このため、このクリアランスに対応する寸法だけ、EA部31および側壁部32を大きくできる。したがって、エネルギーの吸収量を大きくできる。また、EA部31と側壁部32とが一体に成形される構成であると、別部材である構成に比較して、バッテリーケース10の部品点数を削減することができるとともに、組付け工数を削減することができる。さらに、EA部31と側壁部32とを接合する工程および部材(ボルトおよびナットなど)が不要である。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。
【0077】
例えば、サイドフレーム15の断面形状は各図に示される形状に限定されるものではない。また、側壁部32の内部には、第一リブ状部325、第二リブ状部326および第三リブ状部327のほかにさらに別のリブ状部が設けられていてもよい。また、EA縦板部313の数も特に限定されるものではない。
【0078】
また、前記実施形態では、サイドフレーム15がアルミニウムの押し出し材である構成を示したが、サイドフレーム15の材質はアルミニウムに限定されない。本発明のバッテリーケース10のサイドフレーム15には、各種金属の押し出し材が適用できる。
【0079】
また、前記実施形態では、バッテリーケース10が、上側が開口する箱状である例を示すが、このような構成に限定されない。例えば、バッテリーケース10が蓋部を有しており、蓋部によって開口部の上側が塞がれていてもよい。
【0080】
また、前記実施形態では、各部材の接合にレーザー溶接が適用される例を示したが、各部材の接合方法はレーザー溶接に限定されない。例えば、各部材がFSW(摩擦攪拌接合)により接合される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…バッテリーケース、11…ロアパネル、12…ヒートシンク、13…フロントフレーム、14…リアフレーム、15…サイドフレーム、19…シェアパネル、50…バッテリーモジュール、31…サイドフレームのエネルギー吸収部、311…EA上板部、312…EA下板部、313…EA縦板部、32…サイドフレームの側壁部、321…側壁内周板部、322…側壁外周板部、323…側壁上板部、324…側壁下板部、325…第一リブ状部、326…第二リブ状部、327…第三リブ状部、328…延出部
図1
図2
図3
図4
図5