IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミヤワキの特許一覧

<>
  • 特開-弁装置 図1
  • 特開-弁装置 図2
  • 特開-弁装置 図3
  • 特開-弁装置 図4
  • 特開-弁装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154711
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/20 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
F16T1/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057872
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(72)【発明者】
【氏名】上田 一平
(57)【要約】
【課題】高い排気能力と耐衝撃性を両立できる弁装置を提供する。
【解決手段】容器2内に流入された流体Fを容器外に排出する弁装置であって、容器2内の流体Fを排出するメイン排気通路19と、容器2内の空間とメイン排気通路30とを連通してメイン排気通路30よりも通路面積が小さいパイロット排気通路42と、メイン排気通路30を開閉するメイン排気弁34と、駆動源24に連結されてパイロット排気通路42を開閉するパイロット排気弁46と、パイロット排気弁46の開弁時にパイロット排気弁室45内への流体の流入を阻止するチョーク機構55と、パイロット弁シート50から離間する方向にパイロット排気弁46に力を付与するパイロットばね部材56とを備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に流入された流体を容器外に排出する弁装置であって、
前記容器内の流体を排出するメイン排気通路と、
前記容器内の空間と前記メイン排気通路とを連通し、前記メイン排気通路よりも通路面積が小さいパイロット排気通路と、
前記メイン排気通路を開閉するメイン排気弁と、
駆動源に連結されて前記パイロット排気通路を開閉するパイロット排気弁と、
前記パイロット排気弁の開弁時にパイロット排気弁室内への流体の流入を阻止するチョーク機構と、
パイロット弁シートから離間する方向に前記パイロット排気弁に力を付与するパイロットばね部材と、を備えた弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、さらに、メイン弁シートから離間する方向に前記メイン排気弁に力を付与するメインばね部材を備えた弁装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の弁装置において、前記メイン排気弁は、内部に前記パイロット排気通路が形成されて軸方向の一端部でメイン弁シートに着座する筒状のメイン弁体と、前記メイン弁体の他端部から径方向外側に傾斜して延びる傾斜部と、前記傾斜部から軸方向の他端側に延びる筒部とを有し、
前記筒部の内部に、前記パイロット排気弁室が形成されている弁装置。
【請求項4】
請求項3に記載の弁装置において、前記パイロット排気弁は、前記メイン弁体の内側を軸方向に移動する棒状のパイロット弁体と、前記パイロット弁体から径方向外方に延びるフランジ部とを有し、
前記メイン弁体の内側に形成されたばね受け面と前記フランジ部との間に前記パイロットばね部材が介装されている弁装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の弁装置を備えた液体圧送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に流入された蒸気のような流体を容器外に排出する弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器内に貯留された液体を、蒸気もしくは圧縮空気を駆動流体として用いて加圧し、容器外に液体を排出する液体圧送装置がある(例えば、特許文献1)。特許文献1のような圧送装置は、ポンピングトラップと呼ばれ、電気が不要の機械式のポンプである。ポンピングトラップは、電気が不要であるので、例えば、電源供給が困難な区域に適用できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5897988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の液体圧送装置では、駆動流体を排出する排出弁の排気能力が低く、流入側の逆止弁の開弁が遅れて容器内への液体の流入が遅くなることがある。そこで、排気能力を高めるために、排出弁として図5(A)に示すような差圧を利用した高排出弁装置を用いることが考えられる。
【0005】
このような高排出弁装置は、メインバルブ100とパイロットバルブ102を有し、最初に駆動源の駆動力により排気開口の小さなパイロットバルブ102が下降することで開いてパイロット弁室104内の流体が排出される(図5(B))。このとき、チョーク機構108により容器内の空間Rからパイロット弁室104への流体の流入が阻止され、パイロット弁室104の圧力が低下する。さらに、メイン弁室106とパイロット弁室104との差圧により排気開口の大きなメインバルブ100が開いて多量の流体が排出される(図5(C))。
【0006】
しかしながら、このような高排出弁装置は、バルブの衝撃耐久性が低いから、液体圧送装置のような閉弁時に衝撃が加わる弁装置には適用が難しいという問題があった。
【0007】
本発明は、高い排気能力と耐衝撃性を両立できる弁装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の弁装置は、容器内に流入された流体を容器外に排出する弁装置であって、前記容器内の流体を排出するメイン排気通路と、前記容器内の空間と前記メイン排気通路とを連通して前記メイン排気通路よりも通路面積が小さいパイロット排気通路と、前記メイン排気通路を開閉するメイン排気弁と、駆動源に連結されて前記パイロット排気通路を開閉するパイロット排気弁と、前記パイロット排気弁の開弁時にパイロット排気弁室内への流体の流入を阻止するチョーク機構と、パイロット弁シートから離間する方向に前記パイロット排気弁に力を付与するパイロットばね部材とを備えている。
【0009】
この構成によれば、弁内外の差圧を利用した高排出弁装置からなるので、高い排気能力を実現できる。また、パイロット弁シートから離間する方向にパイロット排気弁に力を付与するパイロットばね部材が設けられているので、閉弁時のパイロット排気弁に対する衝撃が緩和される。さらに、パイロットばね部材はパイロット排気弁を開弁させる方向に力が働くので、従来の差圧を利用した高排出弁装置よりも素早く開弁して排気能力が一層高くなる。このように、上記構成の弁装置によれば、高い排気能力と耐衝撃性を両立できる。
【0010】
本発明において、さらに、メイン弁シートから離間する方向に前記メイン排気弁に力を付与するメインばね部材を備えていてもよい。この構成によれば、メインばね部材により、閉弁時のメイン排気弁に対する衝撃が緩和される。また、メインばね部材はメイン排気弁を開弁させる方向に力が働くので、従来の差圧を利用した高排出弁装置よりも素早く開弁して排気能力も高くなる
【0011】
本発明において、前記メイン排気弁は、内部に前記パイロット排気通路が形成されて軸方向の一端部でメイン弁シートに着座する筒状のメイン弁体と、前記メイン弁体の他端部から径方向外側に傾斜して延びる傾斜部と、前記傾斜部から軸方向の他端側に延びる筒部とを有し、前記筒部の内部に前記パイロット排気弁の弁室が形成されていてもよい。
【0012】
この場合、前記パイロット排気弁は、前記メイン弁体の内側を軸方向に移動する棒状のパイロット弁体と、前記パイロット弁体から径方向外方に延びるフランジ部とを有し、前記メイン弁体の内側に形成されたばね受け面と前記フランジ部との間に前記パイロットばね部材が介装されていてもよい。
【0013】
本発明の弁装置は、例えば、液体圧送装置の排出弁として利用できる。液体圧送装置の排出弁は、閉弁時に大きな衝撃が加わるが、この構成によれば、パイロットばね部材により閉弁時のパイロット排気弁に対する衝撃が緩和されるので、液体圧送装置の排出弁にも適用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の弁装置によれば、高い排気能力と耐衝撃性を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る弁装置の一種である排出弁を備えた液体圧送装置を示す概略構成図である。
図2】同液体圧送装置の図1とは異なる状態を示す概略構成図である。
図3】同液体圧送装置を示す縦断面図である。
図4】同排出弁を示す縦断面図である。
図5】(A)~(C)は従来の弁装置の一種である差圧を利用した高排出弁装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1および図2は本発明の第1実施形態に係る排気口構造を備えた液体圧送装置を示す概略構成図である。同圧送装置1は、容器2内に貯留された液体Wを、容器2内に導入された駆動流体Fにより加圧して容器2外に排出する。図1は液体Wが流入している状態を示し、図2は液体Wが排出されている状態を示す。本実施形態の液体Wは、水、詳細には、蒸気配管、蒸気機器などからの復水である。また、本実施形態の駆動流体Fは蒸気である。
【0017】
容器2に、液体Wが流入する液体流入口4と、液体Wが流出する液体流出口6が設けられている。液体流入口4に液体流入通路8が接続され、液体流出口6に液体流出通路10が接続されている。液体流入口4と液体流入通路8との間に流入側逆止弁12が接続され、液体流出口6と液体流出通路10との間に流出側逆止弁14が接続されている。
【0018】
容器2の頂部に、容器2内に駆動流体Fを流入させる駆動流体流入口16と、容器2内の駆動流体Fを容器2外に排出する駆動流体流出口18とが設けられている。駆動流体流入口16に駆動流体流入通路17が接続され、駆動流体流出口18に駆動流体流出通路19が接続されている。圧送装置1は、駆動流体流入口16を開閉する駆動弁(吸入弁)20と、駆動流体流出口18を開閉する弁装置の一種である排出弁(排気弁)22とを有している。
【0019】
容器2の内部に、容器2内に貯留された液体Wの液位WLを検知するフロート24が収納されている。駆動弁20および排出弁22は、作動部材26を介してフロート24に連結されている。作動部材26は、公知の構造であり、互いに回動自在に連結された複数のリンク部材26aと単一のばね部材26bとからなる。作動部材26は、フロート24で検知された液位WLに基づいて駆動弁20および排出弁22を作動させる。つまり、これらフロート24および作動部材26が、駆動弁20および排出弁22の駆動源を構成する。
【0020】
図1に示す液位WLが低いとき、液体Wに浮いたフロート24も低い位置にある。このとき、作動部材26の作動により、駆動弁20が閉状態となり、排出弁22は開状態となる。つまり、容器2内への駆動流体Fの流入が阻止され、容器2の内部空間が大気に開放される。液位WLが低い状態では、容器2の内部の圧力が低いので、液体流入通路8の液体Wが、流入側逆止弁12を開いて液体流入口4から容器2内に流入する。一方、容器2の内部の圧力が低いことから、流出側逆止弁14は閉止状態である。
【0021】
液体Wが容器2内に流入すると、液位WLが上昇し、これに伴い、フロート24も上昇する。液位WLが規定値を超えると、図2に示すように、作動部材26の作動により、駆動弁20が開状態となり、排出弁22は閉状態となる。つまり、容器2内へ駆動流体Fが流入し、容器内2の駆動流体Fの外部への排出が阻止される。これにより、容器2の内部の圧力が高くなるので、容器内2の液体Wが、流出側逆止弁14を開いて液体流出口6から液体流出通路10を通って容器2外に排出される。一方、容器2の内部の圧力が高いので、流入側逆止弁12は閉止状態となる。
【0022】
液体Wが容器2外に排出されると、液位WLが下降する。これに伴い、フロート24も下降し、図1の状態に戻る。以降、図1の状態と図2の状態が繰り返され、液体Wが圧送される。
【0023】
つぎに、図3~4を用いて、排出弁22の詳細を説明する。駆動弁20(吸入弁:図1)の構造は、公知のものと同じであるから、説明を省略する。図3に示すように、容器2に、作動部材26がボルトBにより着脱自在に取り付けられている。作動部材26は、容器2の内側に配置され、その一端にフロート24が取り付けられている。つまり、フロート24は、作動部材26を介して容器2に支持されている。一方、作動部材26の他端に、動力伝達部材28が連結されている。動力伝達部材28は、排出弁22に駆動源の駆動力を付与する。
【0024】
図4に示すように、排出弁22は、内部にメイン排気通路30が形成されたケーシング32と、メイン排気通路30を開閉するメイン排気弁34を有している。メイン排気通路30は、弁軸心AXの径方向に延びる第1の通路30aと、軸方向に延びる第2の通路30bとを有している。第1の通路30aは容器2内の空間Rに連通し、第2の通路30bは駆動流体流出通路19に連通している。すなわち、メイン排気弁34の開弁時は、容器2の内部Rの駆動流体Fが、第1の通路30aから第2の通路30bを通って駆動流体流出通路19に排出される。
【0025】
ケーシング32は、第1の通路30aから排出弁22の軸心AX方向に第2の通路30bと反対側に延びるシリンダ部33を有している。シリンダ部33の内周面に沿ってメイン排気弁34が軸心AX方向に移動する。シリンダ部33の先端(図4の下端)に、径方向内側に環状の底壁35が形成されている。
【0026】
メイン排気弁34は、筒状のメイン弁体36を有している。メイン弁体36は、その軸方向の一端部(図4の上端部)でメイン排気通路30を閉止する。つまり、メイン排気通路30の開口縁(図4の下縁)が、メイン弁体36が着座するメイン弁シート37を構成する。メイン弁体36の内部(中空孔)に、パイロット排気通路42が形成されている。パイロット排気通路42は、容器2内の空間Rとメイン排気通路30とを連通する。パイロット排気通路42は、後述のパイロット排気弁室45を介して容器2内の空間Rに連通している。パイロット排気通路42は、メイン排気通路30よりも通路面積が小さく設定されている。パイロット排気通路42の詳細は後述する。
【0027】
メイン排気弁34は、さらに、メイン弁体36の他端部(図4の下端部)から軸心AX方向の他端側(図4の下側)に向かって径方向外側に傾斜して延びる傾斜部38と、傾斜部38から軸方向の他端側(図4の下端側)に延びる筒部40とを有している。本実施形態のメイン排気弁34は、メイン弁体36と、傾斜部38と、筒部40とが不可分一体に形成されている。傾斜部38に代えて、径方向に広がる円盤状の平坦部としてもよい。
【0028】
本実施形態の傾斜部38は、中空孔39を有するの円錐台形状である。傾斜部38の中空孔は、メイン弁体36の内側(中空孔)に連通し、パイロット排気通路42を構成している。詳細には、傾斜部38の中空孔39は、一端から他端(下方)に向かって軸方向に真直に延びる第1中空孔39aと、第1中空孔39aの他端から軸心AX方向の他端側(下方)に向かって徐々に径方向に広がる第2中空孔39bとを有している。第1中空孔39aは、下流側が大径となる段付き孔である。つまり、第1中空孔39aの大径の一端(上端)がメイン弁体36の内側(中空孔)に連通し、第2中空孔39bの他端(下端)がパイロット排気弁室45に連通している。
【0029】
メイン弁シート37と傾斜部38の一端側の傾斜面38aとの間に、メインばね部材44が介装されている。メインばね部材44は、メイン弁シート37から離間する方向(図4の下方)にメイン排気弁34にばね力を付与する。メインばね部材44は、例えば、圧縮コイルばねである。
【0030】
筒部40の内部に、前述のパイロット排気弁室45が形成されている。筒部40の外径は、シリンダ33の内径とほぼ同じ大きさに設定されている。これにより、メイン排気弁34が、シリンダ33の内面にスムーズに案内されるとともに、メイン排気弁34が軸心AXに対して傾くのを抑制できる。また、筒部40の外面とシリンダ33の内面によりシール構造が構成され、パイロット排気弁室45とメイン排気通路30とが連通しないように区画されている。
【0031】
排出弁22は、さらに、パイロット排気通路42を開閉するパイロット排気弁46を有している。パイロット排気弁46は、棒状のパイロット弁体48を有している。パイロット弁体48は、その軸心AX方向の一端部(図4の上端部)でパイロット排気通路42を閉止する。本実施形態では、傾斜部38内部の第1中空孔39aと、下方に向かって広がるように傾斜した第2中空孔39bとの繋がり部が、パイロット弁体48が着座するパイロット弁シート50を構成する。
【0032】
パイロット排気弁46は、パイロット弁体48から軸心AX方向の他端側(図4の下方)に延びる昇降棒54を有している。昇降棒54は、パイロット排気弁室45から底壁35の中空孔35aを通って容器2内の空間Rにまで延びている。
【0033】
詳細には、昇降棒54は、パイロット弁体48に連なる大径部54aと、大径部54aから軸心AX方向の他端側(図4の下方)に延びる小径部54bを有している。つまり、大径部54aと小径部54bの間に段差部54cが形成されている。本実施形態では、大径部54aから小径部54bまで段階的に径が小さくなっている。つまり、段差部54cは複数(本実施形態では3つ)設けられている。ただし、大径部54aから小径部54bまで段階的に径が小さくなる必要はなく、段差部54cは一つでもよい。また、大径部54aから小径部54bまで徐々に径が小さくなってもよい。
【0034】
昇降棒54の小径部54bがシリンダ部33の底壁35の中空孔35aを通過しており、小径部54bの外径は底壁35の中空孔35aの内径よりも若干小さく設定されている。これにより、パイロット排気弁46が軸心AXに対して傾くのを抑制できる。昇降棒54の小径部54bの他端部(図4の下端部)に、動力伝達部材28(図3)が連結されている。つまり、パイロット排気弁46は、動力伝達部材28を介して駆動源の一部であるフロート24(図3)に連結されている。
【0035】
昇降棒54の大径部54aの外径は底壁35の中空孔35aの内径よりも大きく設定されている。したがって、パイロット排気弁46が開いて昇降棒54が下方に移動すると、二点鎖線で示すように段差部54cが底壁の上面35bに当接する。これにより、中空孔35aが閉塞され、容器2内の空間Rとパイロット排気弁室45とが遮断される。つまり、昇降棒54の段差部54cと底壁35により、パイロット排気弁46の開弁時にパイロット排気弁室45内への流体Fの流入を阻止するチョーク機構55を構成する。
【0036】
昇降棒54の大径部54aに、径方向外側に延びるフランジ部52が形成されている。フランジ部52の外径は、筒部40の内径よりも若干小さく設定されている。筒部40の内側に形成された径方向に沿う平坦なばね受け面58とフランジ部52との間に、パイロットばね部材56が介装されている。パイロットばね部材56は、パイロット弁シート50から離間する方向(図4の下方)にパイロット排気弁46にばね力を付与する。パイロットばね部材56は、例えば、圧縮コイルばねである。
【0037】
パイロット排気弁46におけるパイロット弁体48、昇降棒54の大径部54aおよびパイロットばね部材56が、パイロット排気弁室45に収納されている。
【0038】
つぎに、本実施形態の排出弁22の動作を説明する。図4の排出弁22が閉まった状態(液体Wの圧送状態)から、液位WLが下がると、フロート24(図3)も下降し、パイロット排気弁46の昇降棒54に下方(矢印D1)への力(駆動力)を付与する。このとき、メイン排気弁34は内圧により閉弁を維持するが、二点鎖線で示すように、パイロット排気弁46が駆動力により開弁する。このとき、パイロットばね部材56のばね力が開弁方向に働くので、従来よりも小さな力でパイロット排気弁46が開く。
【0039】
パイロット排気弁46が開弁すると、上述のように、二点鎖線で示す段差部54cが底壁35の上面35bに当接し、中空孔35aが閉塞される。これにより、容器2内の空間Rからパイロット排気弁室45内への流体Fの流入が阻止される。この状態で、パイロット排気弁室45内の流体Fがパイロット排気通路42から排出されるので、パイロット排気弁室45の内圧が下がる(図5(B)参照)。
【0040】
パイロット排気弁室45の内圧が下がると、メイン排気通路30の第1の通路30aの圧力により、メイン排気弁34が下方に押し下げられて開弁し、メイン排気通路30から多量の流体Fが排出される(図5(C)参照)。このように、パイロット排気弁室45とメイン排気通路30との差圧によりメイン排気弁34が開弁するので、小さな駆動力でメイン排気弁34を開弁させることができ、高い排気能力を実現できる。さらに、メインばね部材44のばね力が開弁方向に働くので、従来よりも小さな力でメイン排気弁34が開く。
【0041】
排出弁22が開いた状態(流入状態)から、液位WLが上がると、フロート24(図3)も上昇し、パイロット排気弁46の昇降棒54に上方(矢印D2)への力(駆動力)を付与する。この駆動力により、実線で示すように、パイロット排気弁46が閉弁する。このとき、パイロットばね部材56のばね力により、パイロット弁体48がパイロット弁シート50に着座する際の衝撃が緩和される。
【0042】
さらに、液位WLが上がってフロート24(図3)が上昇すると、メイン排気弁34が閉弁する。このとき、メインばね部材44のばね力により、メイン弁体36がメイン弁シート37に着座する際の衝撃が緩和される。以降、同様の動作が繰り返される。
【0043】
上記構成によれば、差圧を利用してメイン排気弁34が開弁されるので、高い排気能力を実現できる。また、パイロットばね部材56により、閉弁時のパイロット排気弁46に対する衝撃が緩和される。さらに、パイロットばね部材56はパイロット排気弁46を開弁させる方向に力が働くので、従来よりも素早く開弁し、排気能力が一層高くなる。このように、上記構成の排出弁22によれば、高い排気能力と耐衝撃性を両立できる。
【0044】
特に、液体圧送装置1の排出弁22は閉弁時に大きな衝撃が加わるが、上記構成によれば、パイロットばね部材56により閉弁時のパイロット排気弁46に対する衝撃が緩和されるので、液体圧送装置1の排出弁22にも適用できる。
【0045】
メインばね部材44により、閉弁時のメイン排気弁34に対する衝撃も緩和される。また、メインばね部材44はメイン排気弁34を開弁させる方向に力が働くので、従来よりも素早く開弁して排気能力がより一層高くなる
【0046】
メイン排気弁34は、内部にパイロット排気通路42が形成されて軸方向の一端部でメイン弁シート37に着座する筒状のメイン弁体36と、メイン弁体36の他端部から径方向に延びる円盤状の傾斜部38と、傾斜部38から軸方向の他端側に延びる筒部40とを有し、筒部40の内部にパイロット排気弁室45が形成されている。また、パイロット排気弁46は、筒部40の内側を軸方向に移動する棒状のパイロット弁体48と、パイロット弁体48から鍔状に延びるフランジ部52とを有し、筒部40の内側に形成されたばね受け面58とフランジ部52との間にパイロットばね部材56が介装されている。この構成によれば、本実施形態の弁装置(排出弁)22を従来の液体圧送装置にも適用できる。
【0047】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、メインばね部材44とパイロットばね部材56が設けられていたが、メインばね部材44はなくてもよい。また、本発明の弁装置は、液体圧送装置1の排出弁22以外、例えば、バケット式スチームトラップにも適用できる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 液体圧送装置
2 容器
22 排出弁(弁装置)
24 フロート(駆動源)
26 作動部材(駆動源)
30 メイン排気通路
34 メイン排気弁
36 メイン弁体
37 メイン弁シート
38 傾斜部
40 筒部
42 パイロット排気通路
44 メインばね部材
45 パイロット排気弁室
46 パイロット排気弁
48 パイロット弁体
50 パイロット弁シート
52 フランジ部
55 チョーク機構
56 パイロットばね部材
58 ばね受け面
F 駆動流体
W 液体
図1
図2
図3
図4
図5