(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154712
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20221005BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221005BHJP
B41J 29/13 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B41J2/175 133
B41J2/01 303
B41J2/175 113
B41J29/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057875
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】大木 聡
(72)【発明者】
【氏名】芦田 七海
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 真也
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA23
2C056FA10
2C056HA36
2C056KC30
2C061AP01
2C061AP04
2C061AP07
2C061AQ05
2C061BB10
2C061CD07
(57)【要約】
【課題】装置の大型化の抑制及び液体による装置外部の汚染の抑制を実現しつつ、液体注入口から液体貯留室内へ液体の注入を行う際の操作性を向上させる。
【解決手段】プリンタ1は、筐体11の上部開口を部分的に覆うスキャナ部材99と、平面視でスキャナ部材99と重ならない位置において筐体11の上部開口を部分的に覆う開閉可能な上部カバー73とを有している。インク貯留室62a内には、インクタンク61が筐体11の内部のインク注入位置Eにあるとき、インクが注入可能であり、上部カバー73の開状態において、インク注入位置Eが外部に露出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に配置され、記録媒体に液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記筐体の内部に配置され、液体を貯留する液体貯留室及び前記液体貯留室と外部とを連通する液体注入口を有する液体貯留部と、
前記筐体の上部開口を部分的に覆う被覆部材と、
平面視で前記被覆部材と重ならない位置において前記筐体の前記上部開口を部分的に覆う開閉可能なカバー部材と、
を備えており、
前記液体貯留室内には、前記液体貯留部が前記筐体の内部の液体注入位置にあるときに液体が注入可能であり、
前記カバー部材の開状態において、前記液体注入位置が外部に露出することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記被覆部材は、前記記録媒体を読み取り可能なスキャナ部材であって、
前記被覆部材の上部を覆い、前記筐体の上面に沿った回転軸を中心に回転することで開閉可能であって、開状態において前記スキャナ部材を外部に露出させるスキャナカバーをさらに備え、
前記カバー部材は、平面視で前記スキャナカバーと重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記液体吐出ヘッド及び前記液体貯留部を支持するキャリッジと、
前記搬送方向と交差する走査方向に前記キャリッジを移動させる移動機構と、
をさらに備え、
前記液体注入位置は、前記キャリッジがその移動軌道上における前記走査方向の一端側に移動したときの前記液体貯留部の位置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、
前記筐体の上面に沿った回転軸を中心に回転することで前記筐体の外側に向かって開閉可能であって、
開状態のとき、その少なくとも一部が上下方向から見たときに前記筐体の外側となる位置に位置していることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体注入位置は、前記筐体の前端よりも後端に近い位置にあることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記カバー部材の中央部が、前記液体注入位置の上方となることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記筐体の前部に設けられた操作部をさらに備え、
前記液体注入位置は、前記操作部の後側に位置していることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が貯留される液体貯留部を備える液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筐体と、液体噴射ヘッド(液体吐出ヘッド)と、液体噴射ヘッドに供給するインクを収容するインクタンク(液体貯留部)と、を備えた液体噴射装置(液体吐出装置)が記載されている。特許文献1の装置では、上部カバーを開くと筐体の内部が露呈し、筐体内部にあるインクタンクの液体注入口からインクタンクの内部にインクが注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、インクタンクの内部にインクを注入する場合、筐体全体の上部を覆う上部カバーを開かなければならず、開いた状態の上部カバーが邪魔となるため、その操作性が悪い。筐体の外側にインクタンク内にインクを注入するための部分を別途設けることも考えられる。しかし、この場合、装置が大きくなってしまう上、液体注入口からの液体垂れが筐体の外部に及び、液体によって装置外部を汚染してしまう。
【0005】
本発明の目的は、装置の大型化の抑制及び液体による装置外部の汚染の抑制を実現しつつ、液体注入口から液体貯留室内へ液体の注入を行う際の操作性を向上させる液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体吐出装置は、筐体と、前記筐体の内部に配置され、記録媒体に液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記筐体の内部に配置され、液体を貯留する液体貯留室及び前記液体貯留室と外部とを連通する液体注入口を有する液体貯留部と、前記筐体の上部開口を部分的に覆う被覆部材と、平面視で前記被覆部材と重ならない位置において前記筐体の前記上部開口を部分的に覆う開閉可能なカバー部材と、を備えており、前記液体貯留室内には、前記液体貯留部が前記筐体の内部の液体注入位置にあるときに液体が注入可能であり、前記カバー部材の開状態において、前記液体注入位置が外部に露出する。
【発明の効果】
【0007】
筐体の内部の液体貯留室内に液体を注入するために液体注入位置を外部に露出させようとする場合、筐体の上部開口を覆う被覆部材を取り外したり、液体貯留部を筐体の外部に引き出したりする構成が考えられる。しかし、このような構成では、操作手順が増加してしまい、操作性が悪い。本発明によれば、カバー部材を開状態とすることによって外部に露出した液体注入位置において、液体注入口から液体貯留室内に液体を注入することが可能である。これにより、液体注入口から液体貯留室内への液体の注入を行う際の操作性を向上させることができる。また、液体注入位置が筐体内部に位置しているため装置の大型化を抑制できるとともに、液体注入口からの液体の垂れを筐体内部に留めることができるため液体による装置外部の汚染を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るプリンタの全体斜視図である。
【
図2】
図1のプリンタの上部カバーが開いた状態における全体斜視図である。
【
図3】
図1に示すプリンタの内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図4】
図3に示すインクタンク及びインクジェットヘッドの側面図である。
【
図5】
図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】変形例に係るプリンタの上部カバーが開いた状態における全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係るプリンタ1(本発明の液体吐出装置)について、
図1~
図5を参照しつつ、以下に説明する。なお、
図1に示す上下方向、左右方向及び前後方向を、プリンタ1の上下方向、左右方向及び前後方向とする。
【0010】
(プリンタ1の全体構成)
図1に示すように、プリンタ1は、概ね直方体の筐体11を有する。筐体11の前壁11aの略中央には、開口12が形成されている。開口12には、給紙トレイ15及び排紙トレイ16が、上下2段に設けられている。給紙トレイ15は、開口12から前後方向に挿抜可能、すなわち、筐体11から着脱可能に構成されている。所望のサイズ(例えば、A4サイズ)の用紙P(本発明の記録媒体)が給紙トレイ15に載置される。プリンタ1は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称する)などの外部機器と接続可能である。そして、PCなどからの記録データに基づいて記録動作を実行する。
【0011】
筐体11の上面の左部には、
図1に示すように、操作部13が設けられている。操作部13は、各種設定のために操作されるボタンや、各種情報が表示される液晶ディスプレイなどによって構成されている。本実施形態において、操作部13は、各種設定のために操作されるボタンによって構成されている。操作部13は、ボタン及び液晶ディスプレイの双方の機能を有するタッチパネルによって構成されていてもよい。
【0012】
筐体11の上部は開口している。プリンタ1は、
図3に示すように、筐体11の上部開口を部分的に覆うスキャナ部材99を有している。スキャナ部材99は、用紙Pの画像情報を読み取り可能である。スキャナ部材99に読み取られた情報は、後述の制御部40のRAM133に一時的に保存される。なお、画像データに名前を付けて保存する場合、当該情報は後述のEEPROM134に保存されてもよい。本実施形態において、スキャナ部材99は、フラットベットスキャナである。
【0013】
筐体11は、
図1~
図3に示すように、スキャナ部材99の上部全体を覆うスキャナカバー14を有する。スキャナカバー14は、筐体11の天井部分を構成している。スキャナカバー14は、筐体11の後端部において、左右方向に沿う回転軸(不図示)を回転中心として回転可能に構成されている。スキャナカバー14は、
図3に示すように、筐体11の後端部の回転軸(不図示)を回転中心として、反時計回りに回転させることで開状態となり、筐体11内にあるスキャナ部材99を外部に露出させる。スキャナカバー14には、
図1及び
図2に示すように、前後方向における中央部分よりも後側であって左端の部分に切欠きが形成されている。
【0014】
また、平面視でスキャナカバー14と重ならない位置において、筐体11の上部開口の一部を覆う開閉可能な上部カバー73(本発明のカバー部材)が形成されている。上部カバー73は、平面視でスキャナ部材99と重ならない。上部カバー73は、筐体11の上面の後部且つ左部において左右方向に沿う回転軸74を回転中心として回転可能に構成されている。上部カバー73は、回転軸74を中心に回転することで筐体11の外側に向かって開閉可能である。上部カバー73は、
図2に示すように、開状態のとき、その一部が上下方向から見たときに筐体11の後の外側となる位置に位置している。スキャナカバー14及び上部カバー73によって、筐体11の上部の全体が覆われている。
【0015】
(プリンタ1の内部構造)
次に、プリンタ1の内部構造について説明する。
図3に示すように、プリンタ1は、搬送機構20と、記録部30と、ボトル支持部19と、上述したスキャナ部材99と、制御部40とを含む。
【0016】
搬送機構20は、給送部50と、搬送路52と、搬送ローラ対53と、排紙ローラ対54とを有する。給送部50は、
図3に示すように、給紙トレイ15に載置される用紙Pを搬送路52へ給送する。搬送ローラ対53は、給送部50によって給紙された用紙Pを記録部30に搬送する。記録部30は、例えば、インクジェット記録方式の構成を有し、搬送ローラ対53によって搬送された用紙Pに画像を記録する。排紙ローラ対54は、記録部30によって記録された用紙Pを排紙トレイ16に排紙する。
【0017】
給送部50は、
図3に示すように、給紙トレイ15の上側に設けられている。給送部50は、給紙ローラ50aとアーム50bとを有する。給紙ローラ50aは、アーム50bの先端に回転可能に支持されている。アーム50bは、支軸50cに回動可能に支持され、バネなどにより付勢されて給紙ローラ50aが給紙トレイ15に接触するように下側へ回動されている。また、アーム50bは、給紙トレイ15を着脱する際に上方へ退避可能に構成されている。給紙ローラ50aは、給紙モータ91M(
図5参照)によって駆動されて回転し、給紙トレイ15内に積載された用紙Pが、搬送路52へ給送される。
【0018】
給紙トレイ15は、
図3に示すように、斜壁部15aを有する。斜壁部15aは、給紙トレイ15に載置される用紙Pが給紙ローラ50aによって給送されるときに、用紙Pを搬送路52に案内する。
【0019】
搬送路52は、筐体11内に構成されており、
図3に示すように、給紙トレイ15の後側の端部から上方且つプリンタ1の前側へ曲がっている。給紙トレイ15から給送された用紙Pは、搬送路52により下方から上方へUターンするように案内されて記録部30に至る。
【0020】
搬送ローラ対53は、下側に配置された搬送ローラ53aと上側に配置されたピンチローラ53bとを有する。搬送ローラ53aは、搬送モータ92M(
図5参照)によって駆動されて回転する。ピンチローラ53bは、搬送ローラ53aの回転に伴って連れ回る。搬送ローラ53aとピンチローラ53bとは、協働して用紙Pを上下方向から挟持し、用紙Pを記録部30へ搬送する。
【0021】
排紙ローラ対54は、下側に配置された排紙ローラ54aと、上側に配置された拍車ローラ54bとを有する。排紙ローラ54aは、排紙モータ93M(
図5参照)によって駆動されて回転する。拍車ローラ54bは、排紙ローラ54aの回転に伴って連れ回る。排紙ローラ54aと拍車ローラ54bとは、協働して用紙Pを上下方向から挟持し、用紙Pを排紙トレイ16に搬送する。
【0022】
なお、本実施形態において、用紙Pの搬送方向とは、給紙トレイ15から搬送機構20によって搬送される方向であって、
図3中の実線矢印方向である。具体的には、用紙Pの搬送方向は、給紙ローラ50aによって前方から後方に送られ、搬送路52によってUターンするように案内され、さらに、搬送ローラ対53及び排紙ローラ対54によって後方から前方に送られる方向である。
【0023】
記録部30は、
図3に示すように、インクジェットヘッド31(本発明の液体吐出ヘッド)と、4つのインクタンク61(本発明の液体貯留部)と、キャリッジ70と、移動機構71と、プラテン17とを有する。キャリッジ70は、走査方向(左右方向であって、用紙Pの搬送方向と交差する方向)へ往復移動する。インクジェットヘッド31及びインクタンク61は、キャリッジ70に支持されている。つまり、本実施形態におけるプリンタ1は、インクタンク61及びインクジェットヘッド31がキャリッジ70に搭載された所謂オンキャリッジ型である。本実施形態におけるインクタンク61は、その全体がインクジェットヘッド31よりも上方に位置する。しかし、これに限らず、インクタンク61の一部がインクジェットヘッド31の上面よりも上方に位置し、残りの部分が当該上面よりも下方に位置していてもよい。
【0024】
4つのインクタンク61は、筐体11の内部に配置されている。それぞれのインクタンク61は、
図4に示すように、タンク本体62と、バルブ63と、大気連通路64と、電磁バルブ65と、を有している。タンク本体62は、略直方体形状を有しており、内部にインクを貯留するためのインク貯留室62a(本発明の液体貯留室)が形成されている。4つのインクタンク61のぞれぞれのインク貯留室62aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック(M、C、Y、B)のインクが貯留される。また、タンク本体62は、主に透光性材料(例えば、透明又は半透明樹脂)により作製される。これにより、ユーザがインク貯留室62aにおけるインクの量を視認できる。
【0025】
タンク本体62には、
図4に示すように、その上壁62bを貫通する貫通孔62cが形成されている。貫通孔62cは、上壁62bの左右方向の中央であって、やや前方寄りの位置に形成されている。貫通孔62cには、筒体66が嵌め込まれている。筒体66は、その上端部にインク注入口67(本発明の液体注入口)を有する。インク注入口67は、上方(すなわち、外部)に向かって開放された開口である。筒体66の内周面は、インク注入口67からインク貯留室62aに至るインク供給路66aを区画する。これにより、インク注入口67は、インク貯留室62aと外部とを連通する。
【0026】
バルブ63は、インク注入口67を開閉するためのバルブである。バルブ63は、例えば、2方向電磁バルブであって、弁部63aとソレノイド部63bとを有する。弁部63aは、インク貯留室62aに配置され、インク注入口67とインク貯留室62aとに連通する内部流路(不図示)と当該内部流路を開閉する弁(不図示)とを有している。バルブ63は、制御部40の制御により、ソレノイド部63bが駆動されることで、弁部63aが前後方向に移動し、インク注入口67を開閉させる。バルブ63が開状態のとき、インク注入口67を通ってインク貯留室62a内にインクを注入することが可能となる。また、バルブ63が閉状態のとき、インク注入口67を通ってインク貯留室62a内にインクを注入することが規制される。
【0027】
タンク本体62には、
図4に示すように、その上壁62bを貫通し、インク貯留室62aと外部とを連通する大気連通路64が形成されている。大気連通路64は、上壁62bの左右方向の中央であって、後方の位置に形成されている。
【0028】
電磁バルブ65は、大気連通路64を開閉するためのバルブである。電磁バルブ65は、キャリッジ70の上方に配置されている。電磁バルブ65は、2方向電磁バルブであって、弁部65aとソレノイド部65bとを有する。弁部65aは、インク貯留室62aに配置され、大気連通路64とインク貯留室62aとに連通する内部流路(不図示)と当該内部流路を開閉する弁(不図示)とを有している。電磁バルブ65は、制御部40の制御により、ソレノイド部65bが駆動されることで、弁部65aが前後方向に移動し、大気連通路64を開閉させる。
【0029】
また、タンク本体62には、その底壁62gを貫通し、インク貯留室62aのインクをインクジェットヘッド31へ流出する流出口62hが形成されている。流出口62hは、底壁62gの左右方向の中央であって、前端部付近の位置に配置されている。
【0030】
インクジェットヘッド31は、筐体11の内部に配置されている。インクジェットヘッド31は、インクタンク61からのインクが供給される内部流路(不図示)を有する。また、インクジェットヘッド31は、
図4に示すように、その下面であるノズル面31aに形成された複数のノズル32からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル32は、前後方向であって用紙Pの搬送方向に沿ったノズル列を形成している。複数のノズル32からは、インクが吐出される。
【0031】
インクジェットヘッド31は、
図4に示すように、接続部材69を介してインクタンク61と接続されている。接続部材69には、流出口62hとインクジェットヘッド31の内部流路とを繋ぐ連通路(液体流路)69aが形成されている。これにより、インクタンク61のインク貯留室62aに貯留されたインクがインクジェットヘッド31に供給される。
【0032】
プラテン17は、インクジェットヘッド31の下方に配設されており、搬送ローラ対53によって搬送される用紙Pを下方から支持する。プラテン17は、キャリッジ70の往復移動範囲のうち、用紙Pが通過する部分に配設されている。プラテン17の幅は、搬送可能な用紙Pの最大幅より十分に大きいので、搬送路52を搬送される用紙Pは常にプラテン17上を通過する。
【0033】
移動機構71は、
図3に示すように、一対のガイドレール72、及び、ベルト伝達機構(不図示)を含む。一対のガイドレール72は、前後方向に離隔して配置され、左右方向に互いに平行に延在している。キャリッジ70は、これら一対のガイドレール72を跨ぐように配置されている。キャリッジ70は、ベルト伝達機構を介してキャリッジモータ94M(
図5参照)に接続されており、キャリッジモータ94Mを駆動させると、ベルト伝達機構が駆動される。これにより、キャリッジ70が一対のガイドレール72に沿って走査方向(左右方向)に移動し、インクジェットヘッド31を左右方向に沿って移動させる。
【0034】
インクジェットヘッド31は、記録データに基づく制御部40の制御により、ノズル32からインクを吐出する。つまり、キャリッジ70が左右方向へ往復移動することにより、インクジェットヘッド31が用紙Pに対して走査されると共に、ノズル32から、インクを吐出することで、プラテン17上を搬送される用紙Pに画像が記録される。なお、プリンタ1内には、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ(不図示)が設けられている。一方、キャリッジ70には、発光素子と受光素子とを有する透過型の位置検出センサ(不図示)が設けられている。そして、プリンタ1は、キャリッジ70の移動中に位置検出センサが検出したリニアエンコーダの透光部の計数値から、キャリッジ70の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっており、キャリッジモータ94Mの回転駆動が制御される。
【0035】
ボトル支持部19は、インクタンク61のインク注入口67にインクを注入するインクボトル(不図示)を支持する部材である。ボトル支持部19は、
図2及び
図3に示すように、キャリッジ70の上方であって、上部カバー73の下方に配置されている。ボトル支持部19は、
図2に示すように、前後方向及び左右方向に沿って延びる平板状の基部19aと、基部19aに形成され、インクボトルの先端部分を支持可能な支持部分19bを4つ有している。それぞれの支持部分19bには、4つのインクタンク61のうちのインクを補充しようとするインクタンク61に収容されたインクの種類と同じインクが収容されたインクボトルの先端部分が支持される。そして、支持部分19bに支持されたインクボトルが、当該インクタンク61のインク注入口67に装着されることにより、インクボトルから当該インクタンク61のインク貯留室62aにインクが注入される。
【0036】
なお、本実施形態において、インクボトルは、小型の使い切りボトルである。すなわち、インクボトルからインクタンク61にインクを注入する際には、インクボトル内のインクの全量が注入される。
【0037】
スキャナ部材99は、開閉カバー14の下方であってキャリッジ70よりも上方の位置において、左右方向に沿って配設されている。スキャナ部材99は、平面視で上部カバー73と重ならない位置に配置されている。キャリッジ70とともに左右方向に移動するインクタンク61の移動軌道上において、インクタンク61がスキャナ部材99の下方にあるときは、ユーザはインク注入口67にアクセスすることができない。すなわち、インクタンク61の移動軌道上において、インクタンク61がスキャナ部材99の下方にあるときは、スキャナ部材99によって、インク注入口67からインク貯留室62a内へのインクの注入が規制される。
【0038】
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)131、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)135、及び、メモリ140を含む。これらCPU131、ASIC135、メモリ140は内部バス137によって接続される。メモリ140は、ROM(Read Only Memory)132、RAM(Random Access Memory)133、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)134を含む。ROM132には、プリンタ1の各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。CPU131は、プログラムをRAM133やEEPROM134を使いつつ実行する。
【0039】
ASIC135は、インクジェットヘッド31、バルブ63、電磁バルブ65、給紙モータ91M、搬送モータ92M、排紙モータ93M、キャリッジモータ94M等に制御信号を出力し、これらの動作を制御する。例えば、制御部40は、外部機器(例えばPCやスマートフォン)から送信された記録データに基づいて、インクジェットヘッド31、給紙モータ91M、搬送モータ92M、排紙モータ93M、キャリッジモータ94M等を制御して、搬送処理と記録処理とを交互に実行し、用紙Pに画像等を記録させる。また、ASIC135は、操作部13から送信される信号を受信可能である。
【0040】
(インクタンク61へのインクの供給)
続いて、
図2を参照しつつ、プリンタ1において、インクボトルによってインクタンク61にインクを注入する際の、ユーザの操作手順、及び、制御部40で行われる処理の一例について説明する。
【0041】
インクジェットヘッド31のノズル32からインクが排出されることによって、インクタンク61のインクが消費されると、ユーザはインクタンク61にインクを補充する必要が生じる。ユーザは、4つのインクタンク61のうちのいずれかのインクタンク61にインクを補充しようとするとき、操作部13を操作して、インク補給指示の信号を制御部40に送信する。例えば、イエローのインクが貯留されたインクタンク61にインクを補充しようとする場合は、イエローのインクのインク補給指示の信号が制御部40に送信される。なお、インク補給指示は、ユーザによる手動操作によって操作部13から制御部40に送信されてもよく、外部機器から制御部40に送信されてもよい。
【0042】
制御部40は、インク補給指示の信号を受信すると、インク補給指示があったインク補給対象のインクタンク61をインク注入位置E(本発明の液体注入位置)に移動させるために、移動機構71を制御する。
【0043】
インク注入位置Eは、
図2に示すように、筐体11の内部であって、操作部13の後側且つ筐体11の前端よりも後端に近い位置に位置している。本実施形態において、筐体11の前端とは、筐体11から給紙トレイ15が引き抜かれる方向における筐体11の端部であって、記録部30によって画像が記録された用紙Pが送られる方向における筐体11の端部である。また、インク注入位置Eは、上部カバー73が閉状態のときにおける上部カバー73の中央部の下方に位置している。本実施形態において、インク注入位置Eは、キャリッジ70がその移動軌道上における左右方向の左端側に移動したときにおけるインクタンク61の位置である。より詳細には、インク注入位置Eは、インク注入口67が支持部分19bの下方に位置したときにおけるインクタンク61の位置である。
【0044】
本実施形態においては、制御部40は、インク補給指示の信号を受信すると、インク補給対象のインクタンク61を含む4つのインクタンク61がインク注入位置Eに移動するように移動機構71を制御している。すなわち、このとき、インク補給対象のインクタンク61を含む4つのインクタンク61のインク貯留室62a内にインクを注入することが可能である。
【0045】
続いて、ユーザは、上部カバー73を開状態として、インク注入位置Eを外部に露出させる。このとき、スキャナカバー14は閉状態が維持されている。そして、インク補給対象のインクタンク61に対応した支持部分19bにインクボトルを支持させる。そして、制御部40は、インク補給対象のインクタンク61のバルブ63を開放させ、インクボトルの先端をインク補給対象のインクタンク61のインク注入口67に装着させる。これにより、インクボトルからインク補給対象のインクタンク61のインク貯留室62aにインクを注入することができる。
【0046】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ1は、筐体11の上部開口を部分的に覆うスキャナ部材99と、平面視でスキャナ部材99と重ならない位置において筐体11の上部開口を部分的に覆う開閉可能な上部カバー73とを有している。インク貯留室62a内には、インクタンク61が筐体11の内部のインク注入位置Eにあるとき、インクが注入可能であり、上部カバー73の開状態において、インク注入位置Eが外部に露出する。筐体11の内部のインク貯留室62a内にインクを注入するためにインク注入位置Eを外部に露出させようとする場合、筐体11の上部開口を覆う被覆部材(スキャナ部材99など)を取り外したり、インクタンク61を筐体11の外部に引き出したりする構成が考えられる。しかし、このような構成では、操作手順が増加してしまい、操作性が悪い。本実施形態によれば、上部カバー73を開状態とすることによって外部に露出したインク注入位置Eにおいて、インク注入口67からインク貯留室62a内にインクを注入することが可能である。これにより、インク注入口67からインク貯留室62a内へのインクの注入を行う際の操作性を向上させることができる。また、インク注入位置Eが筐体11内部に位置しているためプリンタ1の大型化を抑制できるとともに、インク注入口67からのインクの垂れを筐体11内部に留めることができるためインクによるプリンタ1外部の汚染を抑制できる。
【0047】
また、本実施形態のプリンタ1は、スキャナ部材99の上部を覆い、筐体11の上面に沿った回転軸を中心に回転することで開閉可能であって、開状態においてスキャナ部材99を外部に露出させるスキャナカバー14をさらに有する。そして、上部カバー73は、平面視でスキャナカバー14と重ならない位置に配置されている。スキャナ部材99は用紙Pを読み取る部材であって、埃などが付着すると読み取り精度に影響が出るため、常時外部に露出させることは望ましくない。このため、通常、スキャナ部材99を有する構成においては、スキャナ部材99の上部を覆うスキャナカバー14が設けられる。このような構成において、スキャナカバー14がスキャナ部材99及びインク注入位置Eの両方を覆うものである場合、インク注入口67からインク貯留室62a内にインクを注入するためには、スキャナカバー14を開状態とする必要がある。しかしながら、開状態のスキャナカバー14が筐体11の上方に存在している場合、スキャナカバー14が邪魔となって、インク注入口67からインク貯留室62a内へのインクの注入を行う際の操作性が悪い。スキャナカバー14を液体の注入の邪魔にならない位置まで開くにしても、そのような位置までスキャナカバー14を開くことが手間であるため、操作性の向上にはならない。本実施形態によれば、スキャナ部材99の上部を覆うスキャナカバー14が開閉可能な構成において、インク注入口67からインク貯留室62a内へのインクの注入を行う際には、スキャナ部材99を外部に露出させるためのスキャナカバー14を開くことなく、インク注入位置Eを外部に露出させるための上部カバー73のみを開くことで注入動作を行うことができるので、操作性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態のプリンタ1は、搬送機構20と、インクジェットヘッド31及びインクタンク61を支持するキャリッジ70と、左右方向にキャリッジ70を移動させる移動機構71と、をさらに有している。そして、インク注入位置Eは、キャリッジ70がその移動軌道上における左右方向の左端側に移動したときのインクタンク61の位置である。これによれば、インクタンク61がキャリッジ70に搭載されたいわゆるオンキャリッジ構成において、プリンタ1の大型化の抑制及びインクによるプリンタ1外部の汚染の抑制を実現しつつ、インク注入口67からインク貯留室62a内へインクの注入を行う際の操作性を向上させることができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、上部カバー73は、筐体11の上面に沿った回転軸74を中心に回転することで筐体11の外側に向かって開閉可能であって、開状態のとき、その一部が上下方向から見たときに筐体11の外側となる位置に位置している。これによれば、インク注入口67からインク貯留室62a内へのインクの注入を行う際に、上部カバー73が邪魔となることを抑制でき、操作性がさらに向上する。
【0050】
また、本実施形態では、インク注入位置Eは、筐体11の前端よりも後端に近い位置にある。インク注入位置Eが筐体11の前端よりも後端に近い位置にある構成では、インク注入口67からインク貯留室62a内へインクの注入を行うことが難しい。本実施形態によれば、このような構成においても、プリンタ1の大型化の抑制及びインクによるプリンタ1外部の汚染の抑制を実現しつつ、インク注入口67からインク貯留室62a内へインクの注入を行う際の操作性を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、上部カバー73の中央部が、インク注入位置Eの上方となる。インク注入位置Eが、上部カバー73の中央部の下方となるため、インク注入口67からインク貯留室62a内へのインクの注入を行う際の操作性がより向上する。
【0052】
また、本実施形態のプリンタ1は、筐体11の前部に設けられた操作部13をさらに有し、インク注入位置Eは、操作部13の後側に位置している。操作部13の後側は空きスペースとなっており、この部分にインク注入位置Eを位置させることでプリンタ1の大型化をさらに抑制することができる。
【0053】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許発明の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0054】
また、本発明において、ボトル支持部19は配置されておらず、ボトル105をインク注入口67に直接装着する構成でもよい。以下、
図6を参照しつつ、ボトル支持部19を有していない構成のプリンタ101について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については、同様の符号を用い、その説明を省略する。
図6は、上部カバー73が開状態のときの様子を示す図である。プリンタ101では、
図6に示すように、4つのインクタンク61のそれぞれは、その上面の後端部において左右方向に沿う回転軸(不図示)を回転中心として回転可能なキャップ163を有している。キャップ163は、その前端部分がユーザによって持ち上げられることで、不図示の回転軸を中心に回転し、開状態となる。キャップ163は、閉状態のときに、インクタンク61の上壁62bの上部全体を覆う。また、キャップ163は、開状態のときに、インク注入口67を外部に露出させる。
【0055】
さらに、プリンタ101には、
図6に示すように、平面視で開閉カバー14と重ならない位置であって、インクタンク61とともに移動するキャップ163の前端部の移動軌道上の上方の一部を覆うように左右方向に沿って配設された板状部材121が形成されている。また、平面視で板状部材121と開閉カバー14との間には、1つのキャップ163の左右方向の幅よりも大きく、2つのキャップ163の左右方向の幅の合計よりも小さい間隙171が形成されている。
【0056】
プリンタ101において、インク注入位置Eは、上下方向から見たときに、キャップ163の前端部分が板状部材121と開閉カバー14との間にある間隙171の下方にあるときのインクタンク61の位置である。インクタンク61がインク注入位置Eにあるとき、ユーザは、板状部材121に阻害されることなく、当該インクタンク61のキャップ163の先端部分を持ち上げることが可能である。これにより、キャップ163を開状態として、当該インクタンク61のインク注入口67からインク貯留室62a内にインクを注入することが可能となる。
【0057】
プリンタ101において、インク注入位置Eは、4つのインクタンク61のうち1つのインクタンク61のみ、当該インクタンク61のインク注入口67からインク貯留室62a内にインクを注入することが可能な位置である。なお、本発明において、板状部材121は配置されていなくてもよい。この場合、例えば、インク注入位置Eは、4つのインクタンク61について、インク注入口67からインク貯留室62a内にインクを注入することが可能な位置である。具体的には、例えば、インク注入位置Eは、インクタンク61の移動軌道上のうち平面視でスキャナ部材99と重ならない位置である。
【0058】
上記実施形態では、上部カバー73は、左右方向に沿う回転軸74を回転中心として回転可能である。しかしながら、上部カバー73は、前後方向に沿う回転軸を中心として回転可能な構成でもよい。この場合、上部カバー73は、当該回転軸を中心に回転することで筐体11の外側に向かって開閉可能であって、開状態のとき、その一部が上下方向から見たときに筐体11の左の外側となる位置に位置していることが好ましい。
【0059】
上記実施形態では、インクボトルは、小型の使い切りボトルである。しかしながら、インクボトルは、使い切りのものでなくてもよく、例えば、インク貯留室62aに対して複数回に分けてインクを注入することができる量のインクが収容されていてもよい。また、インクボトルは、内部と外部とを連通する大気連通路を有するものでもよく、大気連通路を有していないものでもよい。ただし、インクボトルが大気連通路を有していないものである場合、インクタンク61は大気連通路64を有していることが好ましい。インクボトルが大気連通路を有している場合、インクタンク61は大気連通路64を有していなくてもよい。
【0060】
上記実施形態では、インク注入位置Eは、インク補給対象のインクタンク61を含む4つのインクタンク61が位置することが可能である。本発明において、インク注入位置Eは、インク補給対象のインクタンク61のみが位置することが可能な位置であってもよい。
【0061】
上記実施形態では、被覆部材は、用紙Pを読み取り可能なスキャナ部材99である。しかしながら、プリンタ1はスキャナ部材99を有しておらず、被覆部材は、筐体11の天板であってもよい。この場合において、天板は、開閉可能でもよく、開閉不可能でもよい。
【0062】
本発明において、インクタンク61及びインクジェットヘッド31がキャリッジ70に搭載されていないオフキャリッジ型でもよい。また、インクジェットヘッド31は、位置が固定された状態でノズルからインクを吐出するライン式でもよい。この場合において、インク注入位置Eは、固定のインクタンク61の位置となる。
【0063】
本発明に係る液体吐出装置は、プリンタ1の他に、複合機やコピー機などにも適用することもできる。
【0064】
上記実施形態では、バルブ63は、電磁バルブである。しかしながら、バルブ63は電磁バルブでなくてもよい。例えば、バルブ63は、インクボトル105のインク注入口67への装着に連動して機械的に開閉するバルブでもよい。
【0065】
上記実施形態において、大気連通路64を開閉するための電磁バルブ65は、電気的に開閉が制御されるものではなくてもよく、例えば、突起部材との接触の有無によって機械的に開閉が制御されるバルブでもよい。また、電磁バルブ65は配置されていなくてもよい。この場合、大気連通路64を閉塞するように、インクの通過を遮断し且つ気体の通過を許容する半透膜が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 プリンタ
11 筐体
14 スキャナカバー
20 搬送機構
31 インクジェットヘッド
32 ノズル
40 制御部
61 インクタンク(液体貯留部)
62 インク貯留室(液体貯留室)
67 インク注入口(液体注入口)
70 キャリッジ
71 移動機構
73 上部カバー(カバー部材)
74 回転軸
99 スキャナ部材
E インク注入位置(液体注入位置)
P 用紙(記録媒体)