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特開2022-154729放射型温度計、半田付け装置、温度測定方法及び半田付け製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154729
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】放射型温度計、半田付け装置、温度測定方法及び半田付け製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/02 20220101AFI20221005BHJP
   G01J 5/00 20220101ALI20221005BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G01J5/02 J
G01J5/00 101Z
B23K1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057904
(22)【出願日】2021-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 めぐ
(72)【発明者】
【氏名】小澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】松田 純
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AC11
2G066AC20
2G066BA11
2G066BA31
(57)【要約】
【課題】ノイズの発生を抑えた放射型温度計、半田付け装置、温度測定方法及び半田付け製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】測定対象TAからの放射エネルギーREを検出する検出素子2と、測定対象TAと検出素子2との間に配設され測定対象TAからの放射エネルギーREを集束させる集束レンズ3と、検出素子2と集束レンズ3との間に配設され、測定対象TAからの放射エネルギーREの経路に沿って第1の開口7A、7Bが設けられた第1の絞り4A、4Bと、集束レンズ3と測定対象TAとの間に配設され、測定対象TAからの放射エネルギーREの経路に沿って第2の開口8が設けられた第2の絞り5と、検出素子2、集束レンズ3、第1の絞り4A、4B及び第2の絞り5の少なくとも一部を内部に収容する鏡筒6と、を含む放射型温度計1を採用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象からの放射エネルギーを検出する検出素子と、
前記測定対象と前記検出素子との間に配設され、前記測定対象からの前記放射エネルギーを集束させる集束レンズと、
前記検出素子と前記集束レンズとの間に配設され、前記測定対象からの前記放射エネルギーの経路に沿って第1の開口が設けられた第1の絞りと、
前記集束レンズと前記測定対象との間に配設され、前記測定対象からの前記放射エネルギーの経路に沿って第2の開口が設けられた第2の絞りと、
前記検出素子、前記集束レンズ、前記第1の絞り及び前記第2の絞りの少なくとも一部を内部に収容する鏡筒と、を備える、
放射型温度計。
【請求項2】
前記第1の絞りは、前記検出素子と前記集束レンズとの間に所定間隔を空けて2つ以上配設される、
請求項1に記載の放射型温度計。
【請求項3】
前記第2の絞りは、前記集束レンズと前記測定対象との間に所定間隔を空けて2つ以上配設される、
請求項1又は請求項2に記載の放射型温度計。
【請求項4】
前記鏡筒の内面の、前記検出素子の感度波長域に対する放射率が、0.5~1.0の範囲内である、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の放射型温度計。
【請求項5】
前記鏡筒の内面は前記検出素子の前記感度波長域に対する高放射率の表面処理が施されている、
請求項4に記載の放射型温度計。
【請求項6】
測定対象からの放射エネルギーを検出する検出素子と、
前記測定対象と前記検出素子との間に配設され、前記測定対象からの前記放射エネルギーを集束させる集束レンズと、
前記検出素子及び前記集束レンズの少なくとも一部を内部に収容し、且つその内面の前記検出素子の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内である鏡筒と、を備える、
放射型温度計。
【請求項7】
チャンバと、
前記チャンバの底面又は前記底面近傍に配設された熱源と、
前記チャンバの天面の一部に設けられた透光性の窓と、
前記チャンバ外に配設され、前記窓を介してワークの任意の位置の温度を測定する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の放射型温度計と、を備え、
前記チャンバの前記天面は前記検出素子の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内である、
半田付け装置。
【請求項8】
前記チャンバ内の前記熱源の上部の前記ワークの周囲空間に配設された第1の遮光部材をさらに備える、
請求項7に記載の半田付け装置。
【請求項9】
前記窓は石英ガラスを含み、前記検出素子はInGaAsフォトダイオードを含む、
請求項7又は請求項8に記載の半田付け装置。
【請求項10】
底面に開口を有する筐体と、
前記開口の周囲に設けられた支持部材と、
前記支持部材上に配設され、その上面側に前記ワークが配設される伝熱プレートと、
前記底面と前記伝熱プレートとの隙間に沿って前記筐体内に配設された第2の遮光部材と、を備えるキャリアをさらに備える、
請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の半田付け装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の放射型温度計を用いて、所定の測定対象の温度を測定する工程を備える、
温度測定方法。
【請求項12】
請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の半田付け装置の前記チャンバ内に前記ワークを配設する工程と、
前記半田付け装置を用いて前記ワークを半田付けする工程と、を備える、
半田付け製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は放射型温度計、半田付け装置、温度測定方法及び半田付け製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象からの放射エネルギーをフォトダイオード等の検出素子で検出することで、測定対象の温度を測定する放射型温度計が知られている。例えば特許文献1には、検出素子に加えて、電源から検出素子に電流を流したときの出力信号に基づいて温度を求め、検出素子の温度補償を行う演算手段を含む放射型温度計が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-271147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような放射型温度計においては、測定対象からのものとは異なる放射エネルギーが検出素子に入り込むとノイズの原因となる。
【0005】
本開示は、ノイズの発生を抑えた放射型温度計、半田付け装置、温度測定方法及び半田付け製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係る放射型温度計は、測定対象からの放射エネルギーを検出する検出素子と、前記測定対象と前記検出素子との間に配設され、前記測定対象からの前記放射エネルギーを集束させる集束レンズと、前記検出素子と前記集束レンズとの間に配設され、前記測定対象からの前記放射エネルギーの経路に沿って第1の開口が設けられた第1の絞りと、前記集束レンズと前記測定対象との間に配設され、前記測定対象からの前記放射エネルギーの経路に沿って第2の開口が設けられた第2の絞りと、前記検出素子、前記集束レンズ、前記第1の絞り及び前記第2の絞りの少なくとも一部を内部に収容する鏡筒と、を含むものである。
【0007】
このような放射型温度計においては、第1の絞りは主に鏡筒内に生じる放射エネルギーが検出素子に入射することを、第2の絞りは主に測定対象からの放射エネルギーとは異なる放射エネルギーが放射型温度計の外部から鏡筒内及び集束レンズ内に入射することをそれぞれ抑制できる。これにより、測定対象からの放射エネルギーとは異なる放射エネルギーが検出されることに起因するノイズを抑えた、高精度な検出が可能な放射型温度計を得ることができる。
【0008】
本開示の第2の態様に係る放射型温度計は、上記本開示の第1の態様に係る放射型温度計において、前記第1の絞りは、前記検出素子と前記集束レンズとの間に所定間隔を空けて2つ以上配設される。
【0009】
このような放射型温度計においては、第1の絞りとして2つ以上の絞りを採用することで、鏡筒内に侵入した外乱光が検出素子に入射することを効果的に抑制することができる。
【0010】
本開示の第3の態様に係る放射型温度計は、上記本開示の第1又は2の態様に係る放射型温度計において、前記第2の絞りは、前記集束レンズと前記測定対象との間に所定間隔を空けて2つ以上配設される。
【0011】
このような放射型温度計においては、第2の絞りとして2つ以上の絞りを採用することで、測定対象からの放射エネルギーとは異なる放射エネルギーが放射型温度計の外部から鏡筒内に入射することを効果的に抑制することができる。
【0012】
本開示の第4の態様に係る放射型温度計は、上記本開示の第1乃至4のいずれかの態様に係る放射型温度計において、前記鏡筒の内面の、前記検出素子の感度波長域に対する放射率が、0.5~1.0の範囲内である。
【0013】
このような放射型温度計においては、鏡筒内面の検出素子の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内であることにより、鏡筒内に入射した外乱光の当該内面における反射が抑制されることで、所望の測定対象からの放射エネルギー以外のエネルギーが検出素子に入射することを抑制するため、ノイズをさらに抑えた高精度な検出が可能な放射が温度計を得ることができる。
【0014】
本開示の第5の態様に係る放射型温度計は、上記本開示の第4の態様に係る放射型温度計において、前記鏡筒の内面は前記検出素子の前記感度波長域に対する高放射率の表面処理が施されている。
【0015】
このような放射型温度計においては、鏡筒内面に(例えば黒色めっき処理や黒色アルマイト処理といった)表面処理を行うことで、鏡筒自体の放射率等に関わらず、当該鏡筒内面の放射率を所望の値に調整することができる。
【0016】
本開示の第6の態様に係る放射型温度計は、測定対象からの放射エネルギーを検出する検出素子と、前記測定対象と前記検出素子との間に配設され、前記測定対象からの前記放射エネルギーを集束させる集束レンズと、前記検出素子及び前記集束レンズの少なくとも一部を内部に収容し、且つその内面の前記検出素子の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内である鏡筒と、を含むものである。
【0017】
このような放射型温度計においては、鏡筒内面の検出素子の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内であることにより、鏡筒内に入射した外乱光の当該内面における反射が抑制されることで、所望の測定対象からの放射エネルギー以外のエネルギーが検出素子に入射することを抑制できる。これにより、測定対象からの放射エネルギーとは異なる放射エネルギーが検出されることに起因するノイズを抑えた、高精度な検出が可能な放射が温度計を得ることができる。
【0018】
本開示の第7の態様に係る半田付け装置は、チャンバと、前記チャンバの底面又は前記底面近傍に配設された熱源と、前記チャンバの天面の一部に設けられた透光性の窓と、前記チャンバ外に配設され、前記窓を介してワークの任意の位置の温度を測定する、第1乃至6の態様のいずれかに記載の放射型温度計と、を含み、前記チャンバの前記天面は前記検出素子の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内であるものである。
【0019】
このような半田付け装置においては、チャンバの天面(天板)の検出素子の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内であることにより、熱源で生じる放射エネルギーがチャンバの天面で反射することを抑制でき、チャンバ内に外乱光が生じることを抑制することができる。これにより、放射型温度計に測定対象からのもの以外の放射エネルギーが入射しにくくなり、ノイズを抑えた高精度な検出が可能な半田付け装置を得ることができる。
【0020】
本開示の第8の態様に係る半田付け装置は、上記本開示の第7の態様に係る半田付け装置において、前記チャンバ内の前記熱源の上部の前記ワークの周囲空間に配設された第1の遮光部材をさらに含む。
【0021】
このような半田付け装置においては、熱源からの放射エネルギーのうち、ワークに照射されずにワークの周囲空間を介してチャンバの天面側に照射される放射エネルギーを、遮光部材によって遮光することができる。
【0022】
本開示の第9の態様に係る半田付け装置は、上記本開示の第7又は8の態様に係る半田付け装置において、前記窓は石英ガラスを含み、前記検出素子はInGaAsフォトダイオードを含む。
【0023】
このような半田付け装置においては、検出素子としてInGaAsフォトダイオードを採用したことで、石英ガラスを透過する波長(0.9~2.6μm)の放射エネルギーに基づいて測定対象の温度測定を行うことができる。また、ワークの酸化膜を除去するためにチャンバ内がギ酸雰囲気となっていたとしても、別途の調整を行うことなく測定対象の温度測定を行うことができる。
【0024】
本開示の第10の態様に係る半田付け装置は、上記本開示の第7乃至9のいずれかの態様に係る半田付け装置において、底面に開口を有する筐体と、前記開口の周囲に設けられた支持部材と、前記支持部材上に配設され、その上面側に前記ワークが配設される伝熱プレートと、前記底面と前記伝熱プレートとの隙間に沿って前記筐体内に配設された第2の遮光部材と、を備えるキャリアをさらに含むものである。
【0025】
このような半田付け装置においては、ワークを搬送するためのキャリアに遮光部材が設けられているため、熱源からの放射エネルギーのうち、キャリアの隙間を介してチャンバの天面側に照射される放射エネルギーを、遮光部材によって遮光することができる。
【0026】
本開示の第11の態様に係る温度測定方法は、第1乃至6のいずれかの態様に記載の放射型温度計を用いて、所定の測定対象の温度を測定する工程を含むものである。
【0027】
このような温度測定方法においては、測定対象からの放射エネルギーとは異なる放射エネルギーが検出されることに起因するノイズが抑制された放射型温度計を用いて測定対象の温度を測定することにより、測定対象の温度を精度よく測定することができる。
【0028】
本開示の第12の態様に係る半田付け製品の製造方法は、第7乃至10のいずれかの態様に記載の半田付け装置の前記チャンバ内に前記ワークを配設する工程と、
前記半田付け装置を用いて前記ワークを半田付けする工程と、を含むものである。
【0029】
このような半田付け製品の製造方法においては、測定対象の温度を高精度に測定しつつ半田付けを実行することができるようになり、主に半田付け工程における温度管理を確実に行うことができ、半田付け製品の製造歩留まりが向上する。
【発明の効果】
【0030】
本開示の放射型温度計、半田付け装置、温度測定方法及び半田付け製品の製造方法によれば、測定対象からのものとは異なる放射エネルギーが検出素子に入り込むことを抑制でき、ノイズの発生を抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る放射型温度計の一例を示す概略断面図である。
図2】本開示の第2の実施の形態に係る放射型温度計の一例を示す概略断面図である。
図3】本開示の第3の実施の形態に係る放射型温度計の一例を示す概略断面図である。
図4】本開示の第1の実施の形態に係る半田付け装置の一例を示す概略説明図である。
図5図4のA-A線矢視図である。
図6図4に示す半田付け装置を用いた半田付け製品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図7】本開示の第2の実施の形態に係る半田付け装置の一例を示す概略説明図である。
図8】本開示の第2の実施の形態に係る半田付け装置のキャリアを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0033】
<放射型温度計>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る放射型温度計の一例を示す概略断面図である。本実施の形態に係る放射型温度計1は、任意の測定対象、例えば任意のワークW上に設定された特定の測定領域TAから放射される放射エネルギーREに基づいて、測定領域TAの温度を測定するものである。したがって、本実施の形態の放射型温度計1は、通常、測定領域TAに対して所定間隔を空けて対向するように配設される。そして、測定領域TAの温度測定を実現するために、本実施の形態の放射型温度計1は、図1に示すように、少なくとも検出素子2と、集光レンズ3と、第1の絞り4A、4Bと、第2の絞り5と、鏡筒6とを含んでいる。なお、集光レンズ3は集束レンズの一例である。
【0034】
検出素子2は、測定領域TAから放射される放射エネルギーRE、詳しくは赤外線放射エネルギーを検出するものであってよい。この検出素子としては、半導体素子、詳しくはSi(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)あるいはInGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)素子等を用いたフォトダイオードを採用することができる。また、このフォトダイオードには、PN接合型のもの又はPIN構造のものを採用することができる。この検出素子2は、その受光面が鏡筒6内に位置し、その電極が鏡筒6外に延在し図示しない増幅器等が実装された制御基板に接続されるように、鏡筒6の一端面に取り付けられる。
【0035】
集光レンズ3は、測定領域TAからの放射エネルギー(具体的には赤外光)REを集束(集光)し、検出素子2の受光面に入射させるためのものであってよい。この集光レンズ3は、測定領域TAと検出素子2との間に配設されるものであり、具体的には、鏡筒6内部であって検出素子2から所定距離だけ離れた位置に配設できる。
【0036】
第1の絞り4A、4Bは、集光レンズ3により集光された測定領域TAからの放射エネルギーREを通過させ、それ以外の放射エネルギーを遮るために設けられたものであってよい。この第1の絞り4A、4Bは、その略中央部に測定領域TAからの放射エネルギーREを通過させるための開口7A、7Bが設けられ、比較的高い放射率(具体的には、検出素子2の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内)を有する板状あるいは膜状の部材とすることができる。この第1の絞り4A、4Bは、図1に示すように、例えば2つ設けることができ、鏡筒6内部の検出素子2と集光レンズ3との間に、所定間隔を空けて略平行に取り付けられるものとしてよい。ここで、2つの第1の絞り4A、4Bにそれぞれ設けられる第1の開口7A、7Bの大きさは、測定領域TAからの放射エネルギーREの通過する経路を考慮して、異なる大きさとすると好ましい。具体的には集光レンズ3に近い側に配設された第1の絞り4Aの第1の開口7Aの方が、検出素子2に近い側に配設された第1の絞り4Bの第1の開口7Bに比べて僅かに大きくすると好ましい。また、本実施の形態においては、第1の絞りを2つ配設した場合について例示したが、本開示はこれに限定されず、1つであっても3つ以上であってもよい。ただし、第1の絞りを複数採用した方が、集光レンズ3を通過した外乱光が検出素子2に入射することを効果的に抑制でき好ましい。
【0037】
第2の絞り5は、測定領域TA以外の領域からの放射エネルギーが放射型温度計1に侵入することを防止するために設けられたものであってよい。この第2の絞り5は、その略中央部に測定領域TAからの放射エネルギーREを通過させるための開口8が設けられ、比較的高い放射率(具体的には、検出素子2の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内)を有する板状あるいは膜状の部材とすることができる。この第2の絞り5は、図1に示すように、鏡筒6の検出素子2が取り付けられていない側の端部を部分的に覆うように設けることができる。ここで、第2の絞り5に設けられる開口8の大きさは、測定領域TAからの放射エネルギーREの通過する経路を考慮した大きさとすると好ましい。また、本実施の形態においては第2の絞り5を1つ配設した場合について例示したが、本開示はこれに限定されず、例えば図1に示す第2の絞り5と集光レンズ3の間の領域に1つ以上の第2の絞りをさらに配設してもよい。このように、第2の絞りを複数設ければ、測定領域TA以外からの放射エネルギーが集光レンズ3に入射することを効果的に抑制できる。
【0038】
鏡筒6は、一方の端部が閉塞された略円筒状の部材であって、この閉塞された側の端面の略中央部に検出素子2が取り付けられ、他方の端部は開放されているものとすることができる。この鏡筒6内には、一方の端部から順に、検出素子2、2つの第1の絞り4B、4A、集光レンズ3及び第2の絞り5が所定間隔を空けて(少なくとも部分的に)収容されている。
【0039】
上述の構成を備える本実施の形態に係る放射型温度計1においては、測定領域TA以外からの放射エネルギーは、鏡筒6内に配置された第1及び第2の絞り4A、4B、5によって検出素子2の受光面方向への進行が遮られる。この構成により、検出素子2には実質的に測定領域TAからの放射エネルギーREのみが入射されるようになり、ノイズを含まない高精度な温度測定が可能な放射型温度計1を提供することができるようになる。
【0040】
上述した通り、第1の実施の形態に係る放射型温度計1は、主に複数の絞りによってノイズの発生を抑制しているが、このような絞り構造以外の方法によっても、ノイズの発生を抑制することが可能である。そこで以下には、第1の実施の形態において説示した絞り構造を採用することに加えて、鏡筒に所定の処理を行うことでノイズの発生を更に抑制した放射型温度計1Aについて、説明する。
【0041】
図2は、本開示の第2の実施の形態に係る放射型温度計の一例を示す概略断面図である。第2の実施の形態に係る放射型温度計1Aは、図2に示すように、鏡筒6A以外は上述した第1の実施の形態に係る放射型温度計1と同様の構成を採用しているものである。そこで、以下には第1の実施の形態に係る放射型温度計1とは異なる構成部分を中心に説明を行い、当該放射型温度計1と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略するものとする。
【0042】
鏡筒6Aは、図2に示すように、一方の端部が閉塞された略円筒状の部材であって、この閉塞された側の端面の略中央部に検出素子2が取り付けられ、他方の端部は開放されているものとすることができる。そして、この鏡筒6Aの内面9Aには、その全面にわたり、検出素子2の感度波長域に対する高放射率の表面処理が施されている。ここで、検出素子2の感度波長域に対する高反射率の表面処理としては、黒アルマイト処理や無電解黒色メッキ処理を挙げることができるが、これに限定されない。例えば、鏡筒6Aの内面9Aに単に高放射率の黒色材料を塗布したものであってもよい。このような表面処理が施されることにより、鏡筒6Aの内面9Aは、高い放射率、具体的には検出素子2の感度波長域に対する放射率が、0.5~1.0の範囲内、より好ましくは0.7~1.0の範囲内に調整されている。
【0043】
上述したように、鏡筒6Aの内面9Aの放射率を高くすると、鏡筒6Aの内面9Aに照射される放射エネルギーの反射を抑制することができる。したがって、本実施の形態に係る放射型温度計1Aにおいては、例えば第2の絞り5の開口8から予期せず入射した測定領域TA以外の領域からの放射エネルギーが鏡筒6Aの内面9Aに反射して集光レンズ3に入射すること、及び、鏡筒6A内で生じる外乱光が鏡筒6Aの内面9Aに反射して検出素子2の受光面に入射することを、いずれも抑制することができる。これにより、ノイズを含まない高精度な温度測定が可能な放射型温度計1Aを提供することができるようになる。
【0044】
図3は、本開示の第3の実施の形態に係る放射型温度計の一例を示す概略断面図である。第3の実施の形態に係る放射型温度計1Bの鏡筒6Bは、図3に示すように、上記第2の実施の形態に係る放射型温度計1Aの鏡筒6Aと同様に、その内面9Bの全面にわたり検出素子2の感度波長域に対する高放射率の表面処理が施されている。他方、この放射型温度計1Bは、第1及び第2の実施の形態に係る放射型温度計1、1Aが有する絞りを有していない。本実施の形態に係る放射型温度計1Bのように、鏡筒6Bの内面9Bに高放射率の表面処理を行えば、測定領域TAからの放射エネルギーREは集光レンズ3を介して検出素子2の受光面に入射させることができ、且つ測定領域TA以外からの放射エネルギーは鏡筒6Bに照射された際に吸収されるため、検出素子2の受光面への入射が抑制できる。なお、本実施の形態に係る放射型温度計1Bにおいては、第2の実施の形態と同様に、前述した放射型温度計1、1Aと同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略している。
【0045】
上述した第2及び第3の実施の形態においては、鏡筒6A、6Bの内面9A、9Bの放射率を0.5~1.0の範囲内とするための具体的な方法として、表面処理を行う場合を例示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、鏡筒6A、6Bの材料に高放射性材料、例えばグラファイトを含むカーボン系材料を含有させることにより、鏡筒6A、6B自体の放射率を所望の値とするようにしてもよい。また、上述した表面処理は少なくとも鏡筒6A、6Bの内面9A、9Bに施されていれば足りる。したがって、例えば表面処理の作業効率の観点から、鏡筒6A、6B全体に表面処理が施されたものであってもよいし、第2の実施の形態に係る放射型温度計1Aにあっては、鏡筒6Aの内面9Aと共に第1及び第2の絞り4A、4B、5に同様の表面処理を施してもよい。
【0046】
上述した構成を備える放射型温度計1、1A、1Bによれば、複数の絞り及び/又は鏡筒内の表面処理により、測定領域TAからの放射エネルギーREの経路とは異なる経路を経て鏡筒に侵入する、あるいは侵入した外乱光が、検出素子2の受光面に到達することを抑制できる。したがって、測定領域TA以外からの放射エネルギーの検出素子2の受光面への入射が抑えられるため、これに起因するノイズの発生を抑制でき、以て高精度な温度検出が可能な放射型温度計1、1A、1Bを得ることができる。
【0047】
上述した放射型温度計1、1A、1Bを用いることにより、所定の測定対象の温度の測定方法を提供することができる。当該測定方法としては、放射型温度計1、1A、1Bの鏡筒6、6A、6Bの開口している側の端部が特定の測定対象に向くよう、測定対象に対向する位置に配置した後、検出素子2にて検出結果を取得して、測定対象の温度を測定すればよい。
【0048】
<半田付け装置>
次に、本開示に含まれる、半田付け装置について説明する。図4は、本開示の第1の実施の形態に係る半田付け装置の一例を示す概略説明図である。また、図5は、図4のA-A線矢視図である。第1の実施の形態に係る半田付け装置10は、図4及び図5に示すように、バッチ処理タイプのリフロー炉として機能するものを採用することができる。この半田付け装置10では、少なくとも、ワークWとしての半導体基板上に半球状の半田バンプを形成するために予め配設された原料半田を溶融させる、あるいは、ワークWとしての半導体基板上に、半田バンプを生成する、あるいはクリーム半田やプリフォーム半田を介して配設された電子部品を実装することが可能である。なお、本実施の形態においては、単一の装置内で一連のリフロー半田付けを行う半田付け装置10を例示するものとする。また、ワークWとしては、電子部品が実装される半導体基板を例示するものとする。
【0049】
本実施の形態に係る半田付け装置10は、図4に示すように、少なくとも、チャンバ11と、チャンバ11の天板(天面の一例)12に設けられた透光性の窓13と、熱源としての赤外線(IR)ランプ14と、放射型温度計1とを含むものである。
【0050】
チャンバ11は、内部に半田付けを行うワークWを収容可能な箱型の筐体で構成されており、その底面又は底面近傍には熱源としての赤外線ランプ14が配設され、その上部にはワークWの出し入れが可能なように開閉可能とされた天板12が設けられているものとすることができる。このチャンバ11には、リフロー半田付けを実行するために、その内部に、半田の表面に形成される酸化膜を除去するための還元ガスを供給する還元ガス供給部17が設けられていてよい。還元ガスとしては水素ガスやカルボン酸(ギ酸)ガス等を用いることができるが、本実施の形態においてはギ酸ガスを採用したものを例示する。加えて、このチャンバ11の適所には、図示しないチャンバ11内のガスを排出するための排出路や、チャンバ11内に不活性ガス等の他のガスを供給するためのガス供給路等が設けられていてよい。また、チャンバ11内のガスを排出する排出路に真空ポンプを取り付け、この真空ポンプを動作させることにより、リフロー半田付けにおける所定のタイミングで、チャンバ11内を真空状態とすることができる構造を採用すると、半田内のボイド(空隙)の抑制等の観点から好ましい。
【0051】
チャンバ11の天板12は、その一辺がヒンジを介してチャンバ11の上部に固定されており、その中央部分に透光性の窓13が設けられた板状の部材で構成できる。天板12を閉塞した際、チャンバ11内が気密状態となるように、天板12及び/又はチャンバ11に天板12を固定するためのロックや気密状態とするためのシールを設けると好ましい。ここで、この天板12には、放射型温度計1の検出素子2の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内のものが採用されることは、特に留意すべき事項である。このように、天板12が高い放射率を有することで、天板12に照射された放射エネルギーの反射が抑えられ、チャンバ11内に外乱光が発生することを抑制できる。上述した所望の放射率を得るために、この天板12は、高放射率の材料、例えばカーボンプレートで形成するとよい。
【0052】
窓13は、天板12の任意の位置、具体的にはチャンバ11内のワークWが配設される領域に対向する略中央位置に設けられたものであって、放射型温度計1が検出する放射エネルギーを透過する部材、例えば石英ガラスが嵌め込まれたものとすることができる。この窓13の大きさや位置は適宜調整が可能なものであるが、本実施の形態においては、天板12の中央部分に、ワークWの大きさに合わせた大きさで形成されたものを例示している。また、窓に嵌め込まれる部材は石英ガラス以外でもよい。
【0053】
赤外線ランプ14は、ワークWを加熱する熱源として機能するものであって、チャンバ11内に配設されたワークWを、その下面側から加熱するものである。本実施の形態における赤外線ランプ14は、チャンバ11の底面又は底面近傍の位置、詳しくは、チャンバ11の底部から立設する複数本の支持ピン15上に配設されたワークWの底面に対して所定の間隔を空けて対向する位置に、所定の間隔を空けて複数本(図4及び図5においては5本)、互いに平行となるように配置される。ここで、チャンバ11の底面近傍とは、チャンバ11の高さ方向における中央部より底面に近い側の領域を指す。本実施の形態においては、熱源として複数本の赤外線ランプ14を採用しているが、ワークWを加熱可能なものであればこれに限定されず、例えばホットプレート等の熱源を用いることもできる。また、複数本の赤外線ランプ14の隙間に、ワークWに選択的に接触することで冷却するクシ歯状の冷却手段を設けてもよい。
【0054】
ワークWを支持する複数本(図4及び図5においては4本)の支持ピン15は、チャンバ11の底部から実質的に垂直に伸びる同一長さのピンで構成することができる。この支持ピン15は、ワークWを熱的に独立させるべく、熱伝導率の小さな材料、例えばセラミック材料で構成することができる。また、支持ピン15の先端部は、ワークWとの接触面積を小さくするべく、先細な形状となっていると好ましい。
【0055】
本実施の形態に係る半田付け装置10に用いられる放射型温度計1は、上述した第1の実施の形態に係る放射型温度計1を採用することができる。この放射型温度計1は、測定対象、例えばワークWの任意の位置に、窓13を介して対向するように、その鏡筒6の開口する端部を向けて配設される。また、本実施の形態に係る半田付け装置10に採用される放射型温度計1は1つであっても複数であってもよく、また、例えば測定対象の位置に合わせて(例えば図4に点線で示す位置に向かって)移動可能に設けられていてもよい。なお、本実施の形態に係る半田付け装置10においては、放射型温度計として上述した第1の実施の形態に係る放射型温度計1を採用しているが、他の放射型温度計、例えば第2又は第3の実施の形態に係る放射型温度計1A、1Bを採用することもできる。
【0056】
本実施の形態に係る半田付け装置10に用いられる放射型温度計1にあっては、検出素子2として、InGaAsフォトダイオードが用いられることは、特に留意すべき事項である。これは、本実施の形態に係る半田付け装置10においては還元ガスとしてギ酸を用いること、及び窓に嵌め込まれる部材として石英ガラスが採用されていることに起因するものである。詳しくは、ギ酸は特定の波長域の放射エネルギーを吸収する性質を備えているため、ギ酸に吸収される波長の放射エネルギーに基づいて温度測定を行うと、実際の温度よりも低い検出結果となる。また、石英ガラスは0.9~2.6μmの波長を透過するため、この範囲内の放射エネルギーに基づいて温度測定が可能な温度計とする必要がある。この点、InGaAsフォトダイオードは受光波長域が0.5~2.6μm(PIN型)であるため、InGaAsフォトダイオードを検出素子2に用いれば、石英ガラスを透過する放射エネルギーに基づいて温度測定が可能であり、且つギ酸による放射エネルギーの吸収を考慮する必要も実質的になく、良好な温度測定を実現することができる。なお、本実施の形態に係る半田付け装置10においては、検出素子2としてInGaAsフォトダイオードを採用した例を示したが、検出素子2は、チャンバ11内で使用されるガスや窓13に嵌め込まれる部材の材質等に合わせて変更することが可能である。
【0057】
また、本実施の形態に係る半田付け装置10においては、赤外線ランプ14の配設位置よりも上部で且つ支持ピン15上に支持されたワークWよりも下部に、前記ワークWの周囲を遮光する第1の遮光部材としての第1のインナーカバー16を設けると好ましい。この第1のインナーカバー16は、赤外線ランプ14から照射される放射エネルギーとしての赤外光が、チャンバ11内におけるワークWの周囲領域(周囲空間)SAを介してチャンバ11の天板12側へ照射されることを遮るための部材である。したがって、この第1のインナーカバー16は、図5に示すように、ワークWの周囲領域全てを塞ぐ額縁状の部材で構成されており、且つ内側の端部は支持ピン15上のワークWの外縁部に平面視で重なる(オーバーラップする)位置まで延在している。また、第1のインナーカバー16の高さ位置は、第1のインナーカバー16とワークWとの隙間を通過する放射エネルギーをできるだけ少なくするべく、支持ピン15上のワークWの下面に近接する位置に設定されている。この第1のインナーカバー16は高い放射率、例えばチャンバ11の天板12と同程度の放射率を有していることが好ましく、例えばカーボンプレートで形成することができる。第1のインナーカバー16の具体的な形状や配置については、その機能を維持できる範囲内において、適宜調整することが可能である。
【0058】
上述した構成を備える半田付け装置10によれば、天板12の検出素子2の感度波長域に対する放射率が高いため、天板12に到達した赤外線ランプ14からの放射エネルギー、あるいはワークW内の測定領域TA以外からの放射エネルギーが、天板12に反射して外乱光となることが抑制されている。加えて、赤外線ランプ14からワークWの下面に照射される放射エネルギーが、ワークWの周囲領域SAを介して天板12側に到達することが、第1のインナーカバー16によって抑制されている。これらの構成により、測定領域TA以外からの放射エネルギーが外乱光として放射型温度計1に入射することを抑制することができる。他方、放射型温度計1は窓13を介して測定領域TAと対向するように位置決めされているから、測定領域TAからの放射エネルギーREは放射型温度計1に確実に入射するため、高精度な温度検出結果を得ることができ、当該温度検出結果に基づいてリフロー半田付けを実行することができるようになる。
【0059】
図6は、図4に示す半田付け装置を用いた半田付け製品の製造方法の一例を示すフローチャートである。以下には、主に図6を用いて、上述した半田付け装置を用いた半田付け製品の製造方法の一例を説明する。
【0060】
先ず、半田付け装置10の天板12を開放し、リフロー半田付けを行うワークWを支持ピン15上に配設(載置)する(ステップS1)。次いで、天板12を閉塞してチャンバ11内を気密状態とした後、赤外線ランプ14を動作させてワークWの加熱を開始する。この際、放射型温度計1による温度検出動作も開始され、放射型温度計1は継続的な温度検知を実行する。赤外線ランプ14によりワークWが加熱され、放射型温度計1が還元温度(例えば、180~260℃)に到達したことを検出する(ステップS2)と、還元ガス供給部17を動作させてチャンバ11内にギ酸ガスの供給を開始(ステップS3)し、半田バンプあるいはクリーム半田の表面に形成された酸化膜を還元除去する。次いで、放射型温度計1が半田溶融温度(例えば、220~350℃)に到達したことを検知すると(ステップS4)、所定の時間この温度状態を維持した後、チャンバ11内に不活性ガス等を供給してワークWの冷却を行う(ステップS5)。この冷却動作が完了すると、リフロー半田付けがなされたワークWはチャンバ11外に取り出され(ステップS6)、半田付け製品として出荷あるいは次の処理に移行等される。
【0061】
上述した半田付け製品の製造方法によれば、上述した半田付け装置10が用いられることにより、還元温度及び半田溶融温度を高精度に検出することができるから、ギ酸ガスの供給タイミングが所望のタイミングに対して前後にずれることに起因する酸化膜除去不良や、半田溶融不良等の発生を提言することができ、半田付け製品の製造歩留まりが向上する。
【0062】
上記第1の実施の形態に係る半田付け装置10においては、ワークWを1つあるいは所定の数ずつ出し入れして処理を実行する、バッチ処理タイプのリフロー炉として機能する装置について説明を行ったが、本開示はこれに限定されない。以下には、第2の実施の形態に係る半田付け装置20として、ライン上を搬送されるワークWに対して複数の処理が連続的に実施される製造システムの一部として用いられ得る、インラインタイプのリフロー炉として機能するものについて、説明を行う。
【0063】
図7は、本開示の第2の実施の形態に係る半田付け装置の一例を示す概略説明図である。本実施の形態に係る半田付け装置20は、図7に示すように、チャンバ21の構造と、ワークWを搬送するためのキャリア25を備えている点以外は、第1の実施の形態に係る半田付け装置10と同様の構成を備えていてよい。そこで、以下には第1の実施の形態に係る半田付け装置10とは異なる構成を中心に説明を行い、第1の実施の形態に係る半田付け装置10と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略するものとする。
【0064】
本実施の形態に係る半田付け装置20は、異なる処理を実行するチャンバがライン上に複数個連結されて構成される製造システムの一部として用いることができるものである。したがって、本実施の形態に係る半田付け装置20のチャンバ21は、その側面にライン上を搬送されるワークWを搬入するための入口側ゲート23Aと、リフロー半田付けを行った後のワークWを次の処理を実行等するべくチャンバ21外へ搬出する出口側ゲート23Bとが設けられている。これら入口側及び出口側ゲート23A、23Bは、それぞれ上下方向にスライドすることで開閉可能なものを採用できる。また、チャンバ21の天板22は開閉不能な状態で固定され、還元ガス供給部24が接続されている。この天板22は、第1の実施の形態に係る半田付け装置10の天板12と同様に、放射型温度計1の検出素子2の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内のものが採用される。
【0065】
本実施の形態に係る半田付け装置20のチャンバ21には、第1の実施の形態に係る半田付け装置10と同様に、赤外線ランプ14と、支持ピン15と、第1のインナーカバー16とが配設されている。ただし、赤外線ランプ14はワークWを直接加熱するのではなく、後述するキャリア25の加熱プレート28(図8参照)を加熱する。また、支持ピン15もワークWをその内部に支持するキャリア25を支持するものである。さらに第1のインナーカバー16は、キャリア25の周囲領域SAに沿って形成され、当該キャリア25の周囲領域SAを介して天板22側に照射される赤外線ランプ14からの放射エネルギーを遮断している。
【0066】
図8は、本開示の第2の実施の形態に係る半田付け装置のキャリアを示す説明図であって、図8(A)は平面図、図8(B)は図8(A)のB-B線断面図、図8(C)は図8(B)のC部矢視図である。本実施の形態に係る半田付け装置20においては、ワークWをその形状等に関わらずライン上を円滑に搬送できるよう、ワークWを支持するキャリア25が用いられている。このキャリア25は、図8(A)乃至図8(C)に示すように、筐体26と、支持部材の一例としての断熱ピン27と、伝熱プレートの一例としての加熱プレート28と、第2の遮光部材の一例としての第2のインナーカバー29とを少なくとも含むものである。
【0067】
筐体26は、矩形状の底面261と、底面261の外縁部から立設する所定高さの側壁262とを含むことができる。また、底面261の中央部には開口の一例としての矩形状の底面開口263が設けられていてよい。そして、筐体26の上部はワークWの出し入れが可能なように開放された上部開口264となっている。なお、筐体26の具体的な形状についてはこれに限定されず、特に、底面261及び底面開口263以外の構造については何ら限定されない。
【0068】
断熱ピン27は、底面261の四隅であって底面開口263に近接する周囲位置に配設され、加熱プレート28を支持するピン状の部材とすることができる。この断熱ピン27も支持ピン15と同様に、支持対象物(加熱プレート28)を熱的に独立するべく、熱伝導率の小さな材料、例えばセラミック材料で構成される。なお、本実施の形態においては、断熱ピン27を底面261の四隅に1つずつ計4つ配置した場合を例示したが、その数や配置については、適宜変更することができる。
【0069】
加熱プレート28は、断熱ピン27上に載置された熱伝導率の高い平板で構成することができる。この加熱プレート28の上部には任意の形状のワークWが載置され、このワークWは、リフロー半田付けの際、赤外線ランプ14によって加熱された加熱プレート28の熱によって加熱される。加熱プレート28は、熱伝導率が高く且つ放熱率も比較的高い材料、例えばグラファイトで形成すると好ましい。この加熱プレート28が採用されていることにより、加熱対象としてのワークWの形状はチャンバ21内における支持構造(本実施の形態においては支持ピン15)によって制約されなくなる。そのため、ワークWは、チャンバ21に搬入可能であって且つ加熱プレート28上に載置可能な形状であれば、この半田付け装置20を用いてリフロー半田付けを行うことができる。例えば、図7及び図8に示すように、比較的小さなワークWのリフロー半田付けも可能である。
【0070】
本実施の形態に係るキャリア25では、上述の通り、加熱プレート28は筐体26の底面に立設した断熱ピン27上に載置される構造を採用している。この場合、底面開口263を介して加熱プレート28の下面に照射された赤外線ランプ14からの放射エネルギーの一部が、底面261と加熱プレート28との間の隙間G(図8(C)参照)を介してチャンバ21の天板22側に漏洩する恐れがある。そこで、本実施の形態に係るキャリア25においては、この隙間Gからの漏れ光を遮光するために、第2のインナーカバー29を採用している。この第2のインナーカバー29は、図8(A)乃至図8(C)に示すように、底面261に固定され、加熱プレート28の外縁に沿って延びる環状の部材で構成されていてよい。この第2のインナーカバー29は、第1のインナーカバー16や天板22と同様に、高い放射率、すなわち検出素子2の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内の放射率を有していることが好ましく、例えばカーボンプレートで形成することができる。
【0071】
この第2のインナーカバー29が設けられることにより、底面261と加熱プレート28との間の隙間G部分も遮光される。これにより、キャリア25を用いた半田付け装置20であっても、赤外線ランプ14からの放射エネルギーが天板22側に照射されることを効果的に抑制することができるようになる。なお、図8に示す第2のインナーカバー29は、加熱プレート28の外側を囲むように配設したものを例示しているが、本開示の第2のインナーカバー29はこのような構造に限定されない。例えば、第2のインナーカバー29の少なくとも内側の一部分が加熱プレート28の外縁部に平面視で重なる(オーバーラップする)位置まで延在していてもよい。また、図8に示す第2のインナーカバー29の高さは、断熱ピン27上に載置された加熱プレート28の下面よりも高く設定されているが、当該加熱プレート28の下面と同一あるいはわずかに低いものであってもよい。
【0072】
以上説明した通り、上記第1及び第2の実施の形態に係る半田付け装置10、20によれば、チャンバ11、21の天板12、22側に設けられた放射型温度計1(1A、1B)に、測定領域TAからの放射エネルギー以外の放射エネルギーの入射が効果的に抑制される。したがって、放射型温度計1による温度測定の精度が向上し、半田付けプロセスを円滑に実行することができるようになる。
【0073】
なお、上述した半田付け装置10、20においては、理解を容易にするために測定領域TAをワークWの一部とし、測定された温度をリフロー半田付けにおける制御に活用した例を説示したが、本開示はこれらに限定されない。例えば、測定領域TAはワークW以外のもの、例えば加熱プレート28や、ワークWに取り付けられた任意の治具であってもよい。また、半田付け装置10、20のメンテナンス作業時における赤外線ランプ14の出力調整に利用してもよい。本開示の放射型温度計、半田付け装置、温度測定方法及び半田付け製品の製造方法においては、温度検出の際のノイズが抑制されているため、測定対象の放射エネルギーが小さくても精度よく温度測定を行うことができる。
【0074】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1、1A、1B 放射型温度計
2 検出素子
3 集光レンズ(集束レンズの一例)
4A、4B 第1の絞り
5 第2の絞り
6、6A、6B 鏡筒
7A、7B 第1の開口
8 第2の開口
9A、9B 内面
10、20 半田付け装置
11、21 チャンバ
12、22 天板(天面の一例)
13 窓
14 赤外線ランプ(熱源の一例)
15 支持ピン
16 第1のインナーカバー(第1の遮光部材の一例)
25 キャリア
26 筐体
263 底面開口(開口の一例)
27 断熱ピン(支持部材の一例)
28 加熱プレート(伝熱プレートの一例)
29 第2のインナーカバー(第2の遮光部材の一例)
RE 放射エネルギー
SA 周囲領域(周囲空間)
TA 測定領域(測定対象)
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバの底面又は前記底面近傍に配設された熱源と、
前記チャンバの天面の一部に設けられた透光性の窓と、
前記チャンバ外に配設され、前記窓を介してワークの任意の位置の温度を測定する放射型温度計と、
前記チャンバ内の前記熱源の上部の前記ワークの周囲空間に配設された第1の遮光部材と、を備え
半田付け装置。
【請求項2】
前記チャンバの前記天面は前記放射型温度計の検出素子の感度波長域に対する放射率が0.5~1.0の範囲内である、
請求項に記載の半田付け装置。
【請求項3】
前記窓は石英ガラスを含み、前記放射型温度計の検出素子はInGaAsフォトダイオードを含む、
請求項又は請求項に記載の半田付け装置。
【請求項4】
底面に開口を有する筐体と、
前記開口の周囲に設けられた支持部材と、
前記支持部材上に配設され、その上面側に前記ワークが配設される伝熱プレートと、
前記底面と前記伝熱プレートとの隙間に沿って前記筐体内に配設された第2の遮光部材と、を備えるキャリアをさらに備える、
請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の半田付け装置。
【請求項5】
前記放射型温度計は、
測定対象からの放射エネルギーを検出する検出素子と、
前記測定対象と前記検出素子との間に配設され、前記測定対象からの前記放射エネルギーを集束させる集束レンズと、
前記検出素子と前記集束レンズとの間に配設され、前記測定対象からの前記放射エネルギーの経路に沿って第1の開口が設けられた第1の絞りと、
前記集束レンズと前記測定対象との間に配設され、前記測定対象からの前記放射エネルギーの経路に沿って第2の開口が設けられた第2の絞りと、
前記検出素子、前記集束レンズ、前記第1の絞り及び前記第2の絞りの少なくとも一部を内部に収容する鏡筒と、を備える、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の半田付け装置。
【請求項6】
請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の半田付け装置の前記チャンバ内に前記ワークを配設する工程と、
前記半田付け装置を用いて前記ワークを半田付けする工程と、を備える、
半田付け製品の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバの底面又は前記底面近傍に配設された熱源と、
前記チャンバの天面の一部に設けられた透光性の窓と、
前記チャンバ外に配設され、前記窓を介してワークの任意の位置の温度を測定する放射型温度計と、
前記チャンバ内の前記熱源の上部の前記ワークと前記チャンバの側面との間の周囲空間を塞ぐように配設された第1の遮光部材と、を備える、
半田付け装置。