(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154739
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24D 17/00 20220101AFI20221005BHJP
F24H 15/40 20220101ALI20221005BHJP
【FI】
F24D17/00 M
F24H1/10 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057916
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】大谷 忠之
(72)【発明者】
【氏名】林 宗和
【テーマコード(参考)】
3L073
【Fターム(参考)】
3L073AA02
3L073AA18
3L073AB15
3L073AC01
3L073AC10
(57)【要約】
【課題】浴室に吐出される湯温は使用者ごとに相違する場合がある。浴室のリモコンで出湯温度を変更することも可能ではあるが、ある使用者が出湯温度を変更すれば次の使用者が再度出湯温度を変更する必要がある。
【解決手段】手動操作により出湯温度を設定する出湯温度設定手段と、この出湯温度で設定された出湯温度を補正して実際に出湯する際の湯温である目標温度を設定する出湯温度補正手段と、使用者を特定する使用者特定手段とを有し、実際の出湯温度が上記出湯温度補正手段によって設定された目標温度よりも低温であって、かつ上記出湯温度設定手段によって設定された出湯温度より所定温度低い予備温度に到達すると、この予備温度から上記目標温度までの温度上昇速度を、上記使用者特定手段によって特定された使用者ごとに設定された温度上昇速度に設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動操作により出湯温度を設定する出湯温度設定手段と、この出湯温度で設定された出湯温度を補正して実際に出湯する際の湯温である目標温度を設定する出湯温度補正手段と、使用者を特定する使用者特定手段とを有し、実際の出湯温度が上記出湯温度補正手段によって設定された目標温度よりも低温であって、かつ上記出湯温度設定手段によって設定された出湯温度より所定温度低い予備温度に到達すると、この予備温度から上記目標温度までの温度上昇速度を、上記使用者特定手段によって特定された使用者ごとに設定された温度上昇速度に設定することを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
上記出湯温度補正手段による目標温度を変更可能に設定し、この変更された目標温度を上記使用者ごとに記憶する記憶手段を備えたことを特徴とする給湯装置。
【請求項3】
上記使用者ごとに、上記出湯温度補正手段で設定される目標温度の経過時間による変更状態を記憶し、この記憶された変更状態を元に上記目標温度を使用者ごとに自動で変更する機能を上記出湯温度補正手段に設けたことを特徴とする請求項2に記載の給湯装置。
【請求項4】
季節に応じて上記温度上昇速度および上記目標温度の少なくとも一方を補正する補正手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内のハンドシャワーから吐出される湯温を使用者ごとに最適に設定することのできる給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の給湯装置から出湯される出湯温度はリモコンによって設定されるように構成されている。一般的に、台所と浴室内にそれぞれリモコンが設定されており、両リモコンで出湯温度を設定することができるが、浴室のリモコンが優先的に設定されており、浴室のリモコンで設定された出湯温度は台所側のリモコンで不用意に変更できないように設定されている。
【0003】
なお、いずれにせよ出湯温度が設定されると、その温度の温水が出湯されるようにガスの燃焼量や出湯量が制御され、常に設定された温度の温水が出湯されるように制御される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記給湯装置から出湯される温水は浴室のハンドシャワーに供給され、ハンドシャワーから吐出されるが、使用者(入浴者)ごとに好みの湯温が相違する場合がある。このような場合には浴室のリモコンで出湯温度を変更することも可能ではあるが、ある使用者が出湯温度を変更すれば次の使用者が再度出湯温度を変更するなどの繁雑な作業をしなければならないため、実際には浴室のリモコンから出湯温度を変更する操作はほとんど行われない。
【0006】
使用者ごとにハンドシャワーから吐出する湯温を変更したい場合には、ハンドシャワーに混合水栓を設け、使用者ごとに温水と冷水との吐出量を手動で変更して混合比率を調節できるように構成され、あるいはサーモスタットが内蔵された混合水栓を設けて出湯温度の調節操作を簡便にしたものが知られている。
【0007】
しかしながら、上記いずれの構成においても使用者ごとに好みの出湯温度を調節しなければならないという煩雑さは解消されない。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、使用者ごとに所望する湯温を出湯できる給湯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明による給湯装置は、手動操作により出湯温度を設定する出湯温度設定手段と、この出湯温度で設定された出湯温度を補正して実際に出湯する際の湯温である目標温度を設定する出湯温度補正手段と、使用者を特定する使用者特定手段とを有し、実際の出湯温度が上記出湯温度補正手段によって設定された目標温度よりも低温であって、かつ上記出湯温度設定手段によって設定された出湯温度より所定温度低い予備温度に到達すると、この予備温度から上記目標温度までの温度上昇速度を、上記使用者特定手段によって特定された使用者ごとに設定された温度上昇速度に設定することを特徴とする。
【0010】
例えば風呂リモコンに対する手動操作により出湯温度を40℃に設定している場合であっても、実際には出湯時点で水を混同して湯温を下げ、出湯温度を38℃にしている場合がある。このような場合には38℃を目標温度として設定する。次に、出湯温度が例えば予備温度である36℃に到達すると、この36℃から38℃までの湯温上昇速度を使用者ごとに変更することによって、各使用者ごとの嗜好に合わせる。
【0011】
ところで、上記出湯温度補正手段による目標温度を変更可能に設定し、この変更された目標温度を上記使用者ごとに記憶する記憶手段を備えてもよい。
【0012】
具体的には、熱い湯を所望する使用者であれば出湯温度設定手段で設定される40℃を超えて42℃を目標温度としてもよいし、あるいはぬるい湯温が好みの使用者であれば目標温度を37℃に設定してもよい。そして、使用者ごとに好みの目標温度を記憶し、上記使用者特定手段で特定された使用者ごとに目標温度を変更する。
【0013】
また、上記使用者ごとに、上記出湯温度補正手段で設定される目標温度の経過時間による変更状態を記憶し、この記憶された変更状態を元に上記目標温度を使用者ごとに自動で変更する機能を上記出湯温度補正手段に設けてもよい。
【0014】
すなわち、体が温まってくると所望する湯温が変化し、始めはぬるい湯温を所望していても途中からより湯温の高い出湯を希望する場合があり、その場合には出湯温度補正手段で目標温度を変更できる。その変更された目標温度を記憶して、目標温度を使用者ごとに自動で変更する。
【0015】
なお、季節に応じて上記温度上昇速度および上記目標温度の少なくとも一方を補正する補正手段を備えてもよい。
【0016】
すなわち、外気温の高い夏場と外気温が低い冬場とでは同じ温度の湯温であっても体感温度が相違する。そこで、冬場であれば夏場よりも温度上昇速度を遅くし、あるいは目標温度を低く設定することが好まれる場合がある。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明は、使用者ごとに快適な湯温で出湯することを可能とし、かつその使用者ごとの温度設定についての操作を簡便にすることができる。なお、追い焚き機能付きの給湯装置であれば、シャワーやカランからの出湯ほか、浴槽内の湯を給湯装置内に引き込み、再加熱した後浴槽内に出湯して、浴槽内の湯を循環させるが、その際の浴槽内への出湯温度も上述の同様に使用者ごとに設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明が適用される電子混合水栓の外観の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、1は本発明が適用される浴室の一例を示している。この浴室1内には浴槽11が設けられており、この浴槽11への湯張りや追い焚きは浴室1の壁面に取り付けられた風呂リモコン12によって行われる。具体的には、図外の給湯装置から浴槽11へ湯張りされる際の給湯温度や、追い焚き時の湯温はこの風呂リモコン12によって設定される。
【0020】
一般的に、給湯装置には風呂リモコン12の他に台所から給湯温度を設定できる台所リモコン(図示せず)が設けられているが、台所リモコンに対して風呂リモコン12が優先されるように設定されており、この風呂リモコン12で設定した湯温の温水が給湯装置から出湯され、浴室1や台所に給湯されるように構成されている。
【0021】
浴室1に給湯された温水は電子混合水栓2を介してカラン13やハンドシャワー14から出湯される。なお、ハンドシャワー14は電子混合水栓2に対してホース14aを介して接続されている。
【0022】
上記のように、給湯装置から出湯される湯温は風呂リモコン12によって設定され、Sの湯温の温水が浴槽11の湯張りや電子混合水栓2に給湯される。例えば、浴槽11への湯張り時の湯温として43℃を設定していた場合、その湯温でハンドシャワーを浴びると熱いと感じる場合が生じる。そのような場合であれば風呂リモコン12を操作して給湯装置からの出湯温度を下げるのではなく、ハンドシャワー14から吐出される温水に水道水を混合させて湯温を下げるようにしていた。この水道水を温水に混合させる手法としては、手動によって水道水の混合量を増減したり、水道水の混合量をサーモスタットが内蔵された調温機能付きの混合水栓を用いていた。ただし、これらのものでは使用者ごとに設定温度を変更しなくてはいけないばかりか、実際にハンドシャワー14やカラン13から吐出される温水の温度が変動しやすいという不具合を有していた。
【0023】
そこで、
図2を参照して、電子混合水栓2は電力供給や図外の給湯装置とデータ通信を行うためのケーブル21を接続した。また、
図3を合わせて参照して、水道水供給部15と温水供給部16とから電子混合水栓2内部に給水および給湯された水道水および温水は、各々流量制御部31,32で流量を増減制御されて混合タンク3で混合され、適温の温水となる。そして、出湯ボタン25が押されると開閉弁33が開弁して混合された温水がカラン13から吐出される。また、出湯ボタン26が押されると開閉弁34が開弁して混合された温水がホース14aを通ってハンドシャワー14から吐出されるように構成されている。なお、
図3には示さないが、水道水温度と混合タンク3内の湯温とは温度センサで検知されており、給湯装置から給湯される湯温はケーブル21を介して取得される。
【0024】
上記電子混合水栓2内には図示しない制御装置が内蔵されている。出湯温度設定手段に相当する上記風呂リモコン12で設定された出湯温度でカラン13やハンドシャワー14から出湯されることを嫌う使用者は、実際に出湯される出湯温度を目標温度として補正できるように出湯温度補正機能を電子混合水栓2に付与した。具体的には、例えば使用者1であれば、選択スイッチ24のうちの「1」を長押ししながら補正スイッチ23を操作して表示部22に表示される温度を目標温度として設定する。このようにして予め使用者ごとに目標温度を設定し、それらを制御装置内に記憶できるように構成した。そして、さらに使用者ごとに目標温度に到達する速度を設定できるようにした。具体的には到達速度を調速スイッチ27で増減し、その増減された到達速度を表示部28に表示するように構成した。
【0025】
具体的には、
図4(a)を参照して、使用者全ての目標温度T1が全て同一温度の場合、予備温度T2を自動的に設定して、混合タンク3内の湯温がこの予備温度T2に到達すると、使用者ごとに目標温度T1までの温度上昇速度を変更するようにした。この
図4(a)に示した例では、使用者1が急速の温度上昇を好み、使用者2はそれより緩やかな温度上昇を好み、使用者3はさらに緩やかな温度上昇を好んでいる。
【0026】
この
図4(a)に示した例では全ての使用者について目標温度T1が同じであったが、これら目標温度についても各使用者ごとに変更することができる。
図4(b)を参照して、上述のように、選択スイッチ24のうちの「1」を押しながら補正スイッチ23を操作して目標温度をT3に設定すると、使用者1の場合には混合タンク3内の湯温が予備温度T2に到達した時点から、設定されている温度上昇速度で湯温が目標T3に到達するまで水道水と温水との混合比が変更される。また、使用者2についても目標温度をT1ではなくT4に設定することが可能である。
【0027】
次に、
図4(c)を参照して、例えば使用者1に着眼した場合、最初に目標温度としてT1が設定されていた場合、その後に目標温度がT3に変更されると、使用者1についてこの新たなT3が目標温度として記憶され次回使用者1が選択されると、目標温度は最初からT3に設定される。同様に目標温度がT5に変更されると、使用者1について目標温度として記憶されている温度がT5に変更される。
【0028】
ところで、上記
図4(a)を用いて予備温度T2から目標温度T1までの温度上昇速度を各使用者ごとに設定できる旨を説明したが、その温度上昇速度を季節によって自動機に補正するように構成してもよい。なお、季節の識別は制御装置内にカレンダ機能を付与してもよいし、あるいは電子混合水栓2に流入する水道水の水温によって季節を推定してもよい。具体的には、冬季など外気温が低い状態では実際に水温に対して体感温度は高く感じる。特に入浴開始直後ではその傾向が顕著である。そこで、
図4(d)に示すように、混合タンク3内の湯温が予備温度T2に到達してもその湯温をしばらく保持し、その後に目標温度T1まで上昇させることによって、実際の給湯温度と体感温度とのずれを解消させるようにしてもよい。なお、
図4(d)では予備温度T2の状態を所定時間保持させたが、予備温度T2から目標温度T1までの温度上昇速度を記憶されている温度上昇速度より遅くしたり、目標温度T1を低く修正してもよい。
【0029】
ところで、上記実施の形態では電子水栓を使用してシャワーやカランから吐出される湯温を制御したが、追い焚き時の浴槽への再加熱された温水の水温制御にも適用される。その際には、浴槽内へ戻される温水は電子水栓を経由しないので、上述の温度制御機能を電子水栓だけではなく給湯装置側に設けてもよく、その際には浴槽に戻される湯温だけではなく最初に湯張りされる温水の温度制御に、上述のような使用者ごとの温度制御を適用しても構わない。
【0030】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0031】
1 浴室
2 電子混合水栓
3 混合タンク
7 調速スイッチ
11 浴槽
12 風呂リモコン
13 カラン
14 ハンドシャワー
14a ホース
15 水道水供給部
16 温水供給部
21 ケーブル
22 表示部
23 補正スイッチ
24 選択スイッチ
25 出湯ボタン
26 出湯ボタン
28 表示部
31 流量制御部
32 流量制御部
33 開閉弁
34 開閉弁