(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154756
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】有機微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 265/04 20060101AFI20221005BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20221005BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20221005BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C08F265/04
C09D5/03
C09D7/65
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057942
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植田 正博
(72)【発明者】
【氏名】長原 将也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 広隆
【テーマコード(参考)】
4J026
4J038
【Fターム(参考)】
4J026AA45
4J026AA46
4J026AC34
4J026BA25
4J026BA27
4J026BA28
4J026BB07
4J026DA04
4J026DA15
4J026DB04
4J026DB14
4J026FA04
4J026FA07
4J026GA02
4J038CG001
4J038CG002
4J038DA031
4J038DA161
4J038DB001
4J038DD001
4J038DG001
4J038KA08
4J038KA20
4J038NA27
4J038PA02
(57)【要約】
【課題】分散性に優れた有機微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】有機微粒子の製造方法であって、有機微粒子はコア部およびシェル部を有し、コア部はガラス転移温度が-100~-30℃であり、油溶性重合開始剤を用いて単量体を重合したものであり、シェル部はガラス転移温度が80~120℃であり、少なくとも水酸基またはカルボキシル基を有する単量体を乳化し、水溶性開始剤を用いて重合され、製造された有機微粒子の一次粒子径が2~20μmであることを特徴とする有機微粒子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機微粒子の製造方法であって、有機微粒子はコア部およびシェル部を有し、コア部はガラス転移温度が-100~-30℃であり、油溶性重合開始剤を用いて単量体を重合したものであり、シェル部はガラス転移温度が80~120℃であり、少なくとも水酸基またはカルボキシル基を有する単量体を乳化し、水溶性開始剤を用いて重合されたことを特徴とする有機微粒子の製造方法。
【請求項2】
製造された有機微粒子の一次粒子径が2~20μmであることを特徴とする請求項1記載の有機微粒子の製造方法。
【請求項3】
コア部を形成する単量体として不飽和基を二以上有する単量体を含むことを特徴とする請求項1または2記載の有機微粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3いずれかに有機微粒子の製造方法によって製造された微粒子を含有することを特徴とする粉体塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性に優れた有機微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題への対応により、各業界においても脱溶剤化への流れが活発になっており、塗料業界においても従来の溶剤型塗料から粉体塗料への代替が進められている。粉体塗料には各種物性の向上を目的として有機微粒子の添加が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1には、各種粉体塗料に対して優れた分散性を示し、塗膜外観や耐ブロッキング性など粉体塗料本来の特性を保持したまま、塗膜の加工性や耐衝撃性を改良することができる粉体塗膜組成物が開示されている。この粉体塗膜組成物には多層ポリマー粒子が添加されているが、このような多層ポリマー粒子は二次凝集しやすいため、塗膜が薄い場合に塗膜外観に影響を及ぼすおそれがあった。各種粉体塗料に対して優れた分散性を示し、塗膜外観や耐ブロッキング性など粉体塗料本来の特性を保持したまま、塗膜の加工性や耐衝撃性を改良することができる粉体塗膜組成物各種粉体塗料に対して優れた分散性を示し、塗膜外観や耐ブロッキング性など粉体塗料本来の特性を保持したまま、塗膜の加工性や耐衝撃性を改良することができる粉体塗膜組成物
【特許文献1】特開2000-1633
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、分散性に優れた有機微粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、有機微粒子の製造方法であって、有機微粒子はコア部およびシェル部を有し、コア部はガラス転移温度が-100~-30℃であり、油溶性重合開始剤を用いて単量体を重合したものであり、シェル部はガラス転移温度が80~120℃であり、少なくとも水酸基またはカルボキシル基を有する単量体を乳化し、水溶性開始剤を用いて重合されたことを特徴とする有機微粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法により得られる有機微粒子は分散性に優れ、二次凝集しにくい。したがって、粉体塗料の改質剤として用いた際にも凝集することなく、優れた塗膜外観が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係る有機微粒子はコア部およびシェル部を有する。コア部はガラス転移温度が-100~-30℃であり、油溶性重合開始剤を用いて単量体を重合したものである。コア部を形成する単量体の内、ガラス転移温度を前期範囲とするために用いる単量体としては、ブタジエンや、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートを挙げることができる。これらのうち、ブタジエンやブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましく用いられる。
【0008】
また、ガラス転移温度が前記温度となる範囲であれば、これらと共重合可能な単量体、例えばスチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート等を共重合させることもできる。
ガラス転移温度(Tg)は単量体ホモポリマーのTgと組成比から下記FOX式を用いて算出することができ、単量体の選定とその組成比率によりコントロールすることができる。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)/100
(Wnは単量体nの質量%、Tgnは単量体nのホモポリマーのTg(K:絶対温度))
【0009】
コア部を形成する単量体として不飽和基を二以上有する単量体を用いることが好ましい。不飽和基を二以上有する単量体を用いることにより、粉体塗料に添加した際の塗膜の外観や、粉体塗料の粉砕性、耐ブロッキング性を向上塗膜の外観や、粉体塗料の粉砕性、耐ブロッキング性が低下しできる。
不飽和基を二以上有する単量体としては、同種の不飽和基を有する単量体および反応性の異なる不飽和基を有する単量体が挙げられる。前者はコア内部の架橋に寄与すると考えられ、後者はコア部とシェル部の架橋に寄与すると考えられる。
【0010】
同種の不飽和基を有する単量体としては、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアルカンポリオールポリアクリレートまたはアルカンポリオールポリメタクリレート等が挙げられ、特にブチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましく用いられる。
【0011】
反応性の異なる不飽和基を有する単量体としては、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート等の不飽和カルボン酸アリルエステル等を挙げることができる。これらの内、特に、アリルメタクリレートが好ましく用いられる。
不飽和基を二以上有する単量体は、コア部を形成する単量体全量に対して、0.1~5重量%用いることが好ましい。
【0012】
コア部の重合方法としては、前記単量体、分散安定剤、油溶性重合開始剤およびイオン交換水を重合容器に仕込んで、攪拌下懸濁重合を行う。油溶性重合開始剤は、予め重合性モノマーに溶解させておくことが好ましい。
前記分散安定剤としては、例えば、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール部分ケン化物等の水溶性高分子、リン酸三カルシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素等の無機物などが例示できる。これらの分散安定剤のうち、特にポリビニルアルコール部分ケン化物、ヒドロキシプロピルセルロース、リン酸三カルシウムが好ましく用いられる。またこれらの分散安定剤は一種類又は二種類以上使用できる。
分散安定剤の使用量は、コア部を形成する単量体100重量部に対して0.1~30重量部、好ましくは0.5~10重量部程度である。
【0013】
油溶性重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、o-メトキシベンゾイルパーオキサイド、o-クロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ系化合物等が例示される。これらのラジカル重合開始剤のうち、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル等が好ましく用いられる。またこれらのラジカル重合開始剤は一種類又は二種類以上使用できる。
【0014】
油溶性重合開始剤の使用量は、例えば一段目反応の重合性モノマー(I)100重量部に対して0.1~5重量部、好ましくは0.1~2重量部程度である。必要に応じてモノマーの液滴の分散安定化のため界面活性剤、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤やポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルなどのノニオン界面活性剤等を添加しても良い。またこれらの界面活性剤は一種類又は二種類以上使用できる。
界面活性剤の使用量は、例えばコア部を形成する単量体100重量部に対して0.01~2重量部程度である。
【0015】
また、必要に応じて水相重合の禁止剤、例えば亜硝酸ナトリウム等を添加しても良い。反応開始に先立って、単量体、分散安定剤、油溶性のラジカル重合開始剤およびイオン交換水の混合物を攪拌による剪断力により、単量体滴を所望の大きさに調整するのが好ましい。微小なモノマー滴を形成するためには、ホモミキサー、ホモディスパー、ホモジナイザー、ラインミキサー等の各種の分散手段を使用するのが好ましい。モノマー滴の大きさは、分散手段の回転速度などによる剪断力の調整により、制御することが可能である。
【0016】
このようにして調製された重合性モノマー分散液を、通常ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度まで昇温し重合反応を行うことにより、コア部粒子の懸濁液が得られる。例えば、ラウロイルパーオキサイドを用いる場合は55℃以上に、2,2'-アゾビスイソブチロニトリルを用いる場合は65℃以上に昇温しラジカル重合を行うことにより、コア部粒子の懸濁液が得られる。
【0017】
シェル部はガラス転移温度が80~120℃であり、少なくとも水酸基またはカルボキシル基を有する単量体を乳化し、水溶性開始剤を用いて重合される。シェル部を形成する単量体の内、ガラス転移温度を前期範囲とするために用いる単量体としては、メチルメタクリレートやエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートの様なアルキルメタクリレート、スチレン等の芳香族ビニルを用いることができる。これらの内、メチルメタクリレートとスチレンが好ましく用いられる。ガラス転移温度が前記温度となる範囲であれば、これらと共重合可能な単量体、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、等を共重合させることができる。
【0018】
シェル部を形成する単量体として、水酸基またはカルボキシル基を有する単量体を含む必要がある。これらの単量体を用いることにより、粉体塗料の結着樹脂もしくは硬化剤との反応を有し、加工性や耐衝撃性を更に向上させることができる。
カルボキシル基を有する単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。また、水産基を有する単量体としては2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体の使用量は、シェル部を形成する単量体全量に対して、0.5~35重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~25重量%である。
【0019】
これらのシェル部を形成する単量体を、界面活性剤、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤やポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルなどのノニオン界面活性剤等を用いて乳化し、水溶性開始剤とともに加熱下でコア部粒子の懸濁液に添加することにより、シェル部を合成できる。
水溶性開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩系重合開始剤、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]等のアゾ系重合開始剤等を用いることができる。
【0020】
このようにして得られたコア部およびシェル部を有する有機微粒子は、スプレー・ドライヤーによる噴霧乾燥により微粉状の粉体として取り出すことができる。また、遠心脱水、乾燥を行い、粒状フレーク状又は粉体として取り出すこともできる。
得られた有機微粒子の一次粒子径が2~20μmであることが好ましく、この範囲であれば粉体塗料に用いた際の塗膜外観が優れる。
【0021】
本発明の製造方法により得られた有機微粒子は、粉体塗料の改質剤として有用である。粉体塗料は結着樹脂、硬化剤、有機微粒子、顔料、及び各種添加剤からなるものであり、有機微粒子の使用量は、それ以外の組成の合計量100重量部に対し通常1~30重量部、好ましくは2~20重量部、より好ましくは2~15重量部である。有機微粒子の使用量がこれらの値より少ない場合、加工性の改良効果が得られないことがあり、逆にこれらの値より多い場合、溶融粘度が上昇するため、平滑な塗膜が得られず、外観性が低下することがある。本発明において用いられる粉体塗料は、結着樹脂としてポリエステル樹脂を基本成分とするポリエステル系粉体塗料、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂からなるエポキシ-ポリエステルハイブリッド系粉体塗料、アクリル樹脂を基本成分とするアクリル系粉体塗料、エポキシ樹脂を基本成分とするエポキシ系粉体塗料、更に、フェノール樹脂やユリア樹脂、メラミン樹脂を結着樹脂とする粉体塗料等が挙げられる。これらの内、ポリエステル系粉体塗料、エポキシ-ポリエステルハイブリッド系粉体塗料、アクリル系粉体塗料、エポキシ系粉体塗料が好適に用いられ、ポリエステル系粉体塗料が特に好ましく用いられる。
【0022】
以下に本発明を参考例、実施例および比較例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【実施例0023】
実施例1
5L容量の重合容器に脱イオン水1816g、分散安定剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロ-ス5.625gおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.15gを加え、ホモミキサーを用いて、7000rpmで攪拌しながら、油溶性重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイド7.5gを予め溶解させたブチルアクリレート(BA)735g 、1,4-ブタンジオールジアクリレート(BGA)7.5g、アリルメタクリレート(ALMA)7.5gからなる単量体混合液を一括して加え、15分間分散処理して、単量体分散液を得た。
この重合容器に撹拌機と還流冷却器を取り付け、窒素気流下、攪拌しながら55℃ に昇温した。重合が始まって、発熱が観測された時点で80℃まで昇温し、3時間熟成反応を行うことによりコア部粒子の懸濁液を得た。
【0024】
メチルメタクリレート(MMA)207.5g、エチルアクリレート(EA)25g、1,4-ブタンジオールジアクリレート(BGA)5g、メタクリル酸(MAA)12.5g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム2g、脱イオン水112.5gを混合、撹拌することにより、シェル部用の単量体乳化液を調製した。
先の5L重合容器中のコア部粒子の懸濁液を75℃に冷却し、水溶性重合開始剤として2重量%過硫酸ナトリウム水溶液125gを添加して5分撹拌後、単量体乳化液を75℃で90分間かけて連続滴下し、滴下終了後80℃で90分間熟成反応を行い、懸濁液を得た。
得られた懸濁液を室温まで冷却し、スプレードライヤーにて粉体化した後、330Mesh(目開き45μm)で篩過し、粒子径7.8μmの実施例1の有機微粒子を得た。
【0025】
実施例2の有機微粒子の製造
実施例1のコア部の合成において単量体の組成をブチルアクリレート(BA)705g 、1,4-ブタンジオールジアクリレート(BGA)15g、アリルメタクリレート(ALMA)30gに変更した他は、実施例1の有機微粒子の製造と同様に行い、粒子径8.1μmの実施例2の有機微粒子を得た。
【0026】
実施例3の有機微粒子の製造
実施例2のシェル部の合成において、2重量%過硫酸ナトリウム水溶液の量を15gに変更し、シェル部合成後のスプレードライヤーによる粉体化を遠心脱水、乾燥による粉体化に代えた他は実施例2の有機微粒子の製造と同様に行い、粒子径8.0μmの実施例3の有機微粒子を得た。
【0027】
比較例1の有機微粒子の製造
予めブチルアクリレート(BA)695.41g 、1,4-ブタンジオールジアクリレート(BGA)14.8g、アリルメタクリレート(ALMA)29.59g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム5.11g、重炭酸ナトリウム0.75g、脱イオン水614.24gを混合、撹拌することにより、コア部用の単量体乳化液を調製した。
5L容量の撹拌機と還流冷却器を取り付けた重合容器に脱イオン水144.59gとジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.03g、重炭酸ナトリウム0.20gを加え、窒素気流下、攪拌しながら72℃に昇温した。エチルアクリレート(EA)10.2gを重合容器に添加し、10分撹拌後、水溶性重合開始剤として2重量%過硫酸ナトリウム水溶液5.1gを加えて発熱を確認した後、希釈のため脱イオン水561gを加えた。
先の5L重合容器に2%過硫酸ナトリウム水溶液56.31gを添加し5分撹拌後、コア部用の単量体乳化液を72℃で4時間かけて連続滴下し、滴下終了後72℃で90分間熟成反応を行うことにより、コア部粒子の懸濁液をえた。
【0028】
メチルメタクリレート(MMA)207.5g、エチルアクリレート(EA)25g、1,4-ブタンジオールジアクリレート(BGA)5g、メタクリル酸(MAA)12.5g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム1.25g、重炭酸ナトリウム0.25g、脱イオン水267.68gを混合、撹拌することにより、シェル部用の単量体乳化液を調製した。
先の5L重合容器中のコア部粒子の懸濁液を75℃に調整し、水溶性重合開始剤として2重量%過硫酸ナトリウム水溶液15gを添加して5分撹拌後、単量体乳化液を75℃で90分間かけて連続滴下し、滴下終了後80℃で90分間熟成反応を行い、一次粒子径0.51μmの懸濁液を得た。
得られた懸濁液を室温まで冷却し、スプレードライヤーにて粉体化した後、60Mesh(目開き250μm)で篩過し、二次粒子径38μmの比較例1の有機微粒子を得た。
【0029】
ポリエステル樹脂であるCRYCOAT4642-3(ALLNEX社製、商品名)を95重量部、硬化剤であるPrimid XL522(EMS-Chemie社製、商品名)を5重量部、流動助剤であるResiflowP-67(Estron Chemical社製、商品名)を1.6重量部、ピンホール防止剤としてベンゾインを0.6重量部、顔料として酸化チタンR-21(堺化学工業社製、商品名)を59重量部、改質剤として実施例1の有機微粒子を5重量部配合し、高速ミキサー内に投入して1分間混合した。そして、110℃ に温度調整した2 軸練合機を用いて混練を行い、吐出された混練物を冷却ロールで冷延後、ハンマーミルを用いて粉砕し、200Meshの網で分級し、粉体塗料組成物を得た。
また、実施例1の有機微粒子を各実施例、比較例の有機微粒子に置き換えた粉体塗料組成物を同様に調製した。
【0030】
作製した粉体塗料において、鋼板を垂直方向に吊り下げ、コロナ帯電式静電粉体塗装機を用いて膜厚60μmとなるように各粉体塗料組成物を静電塗装し、電気炉にて150℃、20分の条件で焼き付けを行い、そのまま室温になるまで放冷して試験板を作製し、外観を観察した。
実施例の各有機微粒子を用いた粉体塗料組成物では、良好な塗膜外観が得られた。一方、比較例1の有機微粒子を用いた粉体塗料組成物では、ゆず肌状の外観となっており、好ましい外観ではなかった。