(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015477
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】全固体電池および該全固体電池に用いる樹脂層形成用材料
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20220114BHJP
H01M 50/183 20210101ALI20220114BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M2/08 K
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118340
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和仁
(72)【発明者】
【氏名】南 圭一
(72)【発明者】
【氏名】小田木 克明
(72)【発明者】
【氏名】稲田 和正
(72)【発明者】
【氏名】小出 洋輔
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011FF02
5H011GG01
5H011HH02
5H011KK00
5H011KK02
5H011KK05
5H029AJ07
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM12
5H029BJ04
5H029CJ05
5H029DJ03
5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ10
5H029HJ11
(57)【要約】
【課題】硫化物系固体電解質との反応性が低く、硫化物系全固体電池における積層電極体に設けられる樹脂層の形成用途に適した樹脂材料を提供する。
【解決手段】全固体電池における積層電極体面の表面の一部に樹脂層を形成するための樹脂層形成用材料である光硬化型組成物であって、必須成分である2個の(メタ)アクリロイル基を有しウレタン結合を有さない化合物および光ラジカル重合開始剤、並びに任意成分である1個の(メタ)アクリロイル基を有しウレタン結合を有さない化合物、(メタ)アクリロイル基とウレタン結合とを有する化合物、およびその他のエチレン性不飽和基を有する化合物を特定割合で含み、粘度が25℃で1Pa・s以上100Pa・s以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極が硫黄材料を含む固体電解質層を介して複数積層された積層電極体を備える全固体電池における、
該積層電極体面の表面の一部に樹脂硬化物からなる樹脂層を形成するための樹脂層形成用材料である光硬化型組成物であって、
以下の成分(A),(B),(C),(D),(E):
成分(A):1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さない化合物
成分(B):1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さない化合物
成分(C):1分子中にそれぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する化合物
成分(D):成分(A)、(B)、および(C)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物
成分(E):光ラジカル重合開始剤
のうち、
成分(A)および成分(E)を、必須成分として含んでおり、
成分(B)、成分(C)および成分(D)を任意成分として含み、
硬化性成分である成分(A),(B),(C)および(D)の合計量を100重量%としたときに、
成分(A)および成分(B)の合計含有割合が60重量%以上100重量%以下であり、
成分(C)の含有割合が0重量%以上40重量%未満であり、
成分(D)の含有割合が0重量%以上40重量%未満であり、
成分(E)の含有割合が、前記硬化性成分の合計量を100重量部としたときに、0.01重量部以上10重量部以下であり、
前記光硬化型組成物の粘度が25℃で1Pa・s以上100Pa・s以下である、
樹脂層形成用光硬化型組成物。
【請求項2】
前記成分(A)が、数平均分子量1000以上の化合物を含む、請求項1に記載の樹脂層形成用光硬化型組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が、ポリエステル骨格を有する化合物を含む、請求項1または2に記載の樹脂層形成用光硬化型組成物。
【請求項4】
正極および負極が、硫黄材料を含む固体電解質層を介して複数積層された積層電極体と、
前記積層電極体における正負極積層方向両端の2つの幅広面を上面および下面としたときの該上下二つの面の間にある側面の少なくとも一部に形成された樹脂層と、
を備える全固体電池であって、
前記樹脂層が請求項1~3のいずれかに記載の樹脂層形成用光硬化型組成物の硬化物で構成されている、全固体電池。
【請求項5】
温度60℃、充電条件2C、放電条件2Cにて、充放電を300サイクル行う耐久性試験実施後に、電池容量維持率が90%以上である、
請求項4に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層電極体を備えた全固体電池に関する。詳しくは、硫化物系全固体電池の積層電極体の側面に樹脂層を形成するための光硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の比較的高い出力と高い容量が実現できる二次電池は、電気を駆動源とする車両搭載用電源、あるいはパソコンおよび携帯端末等の電気製品等に搭載される電源として重要である。特に、軽量で高いエネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)等の車両の駆動用高出力電源として好ましく、今後ますます需要が拡大することが予想される。
【0003】
かかる高出力の二次電池の一形態として、液状の電解質(電解液)に代えて粉末状の固体電解質を使用する形態の電池、いわゆる全固体電池とも呼称される形態の二次電池が挙げられる。
全固体電池は、液状の電解質を使用しないため、非水電解液等の有機溶媒を取り扱う場合の煩雑な処理を行うことなく、正負極ならびにセパレータ層(固体電解質層ともいう)からなる積層構造の積層電極体を容易に構築することができる。また、電解液を使用しないことから電極体の構造がシンプルとなり、電池の単位体積あたりの電池容量の向上にも寄与し得る。このため、全固体電池はさらなる高容量が求められる車両の駆動用高出力電源として期待されている。
【0004】
全固体電池に用いられる固体電解質としては、例えば、硫黄化合物を含有した硫化物系固体電解質、酸化物を含有した酸化物系固体電解質等が挙げられるが、中でも、リチウムイオンの電導度の高い硫化物系固体電解質を用いた、いわゆる硫化物系全固体電池が注目されている。
【0005】
ところで、全固体電池に大きな圧力がかかった場合に、固体電解質や電極体の端部に割れや変形が生じることがある。割れた電極体が電池内部を移動して反対極側に接触すると、電池が短絡する恐れがある。このような短絡のリスクを低減するため、例えば特許文献1~3に記載されているような樹脂材料を、積層電極体の側面を固定、封止する用途に使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-61952号公報
【特許文献2】特開2012-38425号公報
【特許文献3】国際公開第2016/152565号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、全固体電池を使用するにあたって、積層電極体の側面を固定する樹脂材料には様々な性質が求められる。特許文献1ではアクリル系樹脂を全固体電池の封止に使用しているが、例えばアクリル系樹脂を硫化物系全固体電池の封止に用いた場合、樹脂と硫化物系固体電解質とが酸化反応を起こし、充放電を繰り返すことによって電池性能の劣化が進む可能性がある。また、積層電極体と反応しない低反応性以外にも、樹脂材料には様々な性質が求められる。例えば、広い電位環境に耐えられる耐電位性;電池の急速な充放電に伴う膨張収縮に追従できる柔軟性;樹脂材料が積層体間へ浸み込みにくく、塗布しやすいといった生産性;等の性質を有する必要があり、樹脂層形成用途に適する材料の開発が望まれている。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、硫化物系固体電解質との反応性が低く、樹脂層形成用途に適した樹脂材料を提供することを目的とする。併せて、ここで開示される材料を積層電極体の側面に形成される樹脂層に用いた全固体電池を提供することを、他の1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、正極および負極が硫黄材料を含む固体電解質層を介して複数積層された積層電極体を備える全固体電池における、該積層電極体の表面の一部に樹脂硬化物からなる樹脂層を形成するための樹脂層形成用材料である光硬化型組成物が提供される。前記樹脂層形成用光硬化型組成物は、以下の成分(A),(B),(C),(D),(E):
成分(A):1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さない化合物
成分(B):1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さない化合物
成分(C):1分子中にそれぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する化合物
成分(D):成分(A)、(B)、および(C)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物
成分(E):光ラジカル重合開始剤
のうち、成分(A)および成分(E)を、必須成分として含んでおり、且つ、成分(B)、成分(C)および成分(D)を任意成分として含むことを特徴とする。
また、好ましくは、上記成分のうち硬化性成分である成分(A),(B),(C)および(D)の含有割合は、合計量を100重量%としたときに、成分(A)および成分(B)の合計含有割合が60重量%以上100重量%以下であり、成分(C)の含有割合が0重量%以上40重量%未満であり、成分(D)の含有割合が0重量%以上40重量%未満であり、成分(E)の含有割合は、前記硬化性成分の合計量を100重量部としたときに、0.01重量部以上10重量部以下である。また、前記光硬化型組成物(樹脂層形成用材料)の粘度は25℃で1Pa・s以上100Pa・s以下である。
【0010】
上記樹脂層形成用光硬化型組成物(樹脂材料)では、硬化性成分の構成、即ち、(メタ)アクリロイル基の含有量およびウレタン結合比率等を規定している。かかる構成により、樹脂層と硫化物固体電解質とが反応することを防止し、硫化物系全固体電池の積層電極体を好適に封止することができる。
【0011】
好適な一態様において、上記樹脂層形成用光硬化型組成物は、成分(A)が、数平均分子量1000以上の化合物を含んでいる。これにより、樹脂材料の柔軟性等をより良く高めることができ、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮することができる。
【0012】
好適な一態様において、上記樹脂層形成用光硬化型組成物は、成分(A)が、ポリエステル骨格を有する化合物を含んでいる。これにより、樹脂材料の柔軟性等をより良く高めることができ、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮することができる。
【0013】
上記目的を実現するために、ここに開示された樹脂層形成用光硬化型組成物を積層電極体の側面に形成される樹脂層に用いた全固体電池が提供される。
即ち、ここに開示される全固体電池は、正極および負極が、硫黄材料を含む固体電解質層を介して複数積層された積層電極体と、前記積層電極体における正負極積層方向両端の2つの幅広面を上面および下面としたときの該上下二つの面の間にある側面の少なくとも一部に樹脂層と、を備える全固体電池であって、前記樹脂層が、ここに開示されるいずれかの樹脂層形成用光硬化型組成物の硬化物で構成されている。
かかる樹脂層を前記積層電極体の側面に備えることによって、硫黄材料と樹脂層の反応性が低く、より信頼性の高い全固体電池が提供される。
【0014】
ここに開示される全固体電池の好ましい一実施形態では、温度60℃、充電条件2C、放電条件2Cにて、充放電を300サイクル行う耐久性試験実施後に、電池容量維持率が90%以上である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態にかかる全固体電池を模式的に表す平面図である。
【
図2】
図1におけるII-II線断面図であり、全固体電池の積層電極体の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しながら、ここで開示される樹脂層形成用材料である樹脂層形成用光硬化型組成物と、該光硬化型組成物を用いた全固体電池の好適な一実施形態とを説明する。以下の実施形態は、当然ながらここに開示される技術を特に限定することを意図したものではない。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であってここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される樹脂層形成用材料は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識に基づいて調製し、使用することができる。
また、本明細書において数値範囲をA~B(ここで、A,Bは任意の数値)と記載している場合は、A以上B以下を意味するものとする。
【0017】
以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面中の符号Zは、積層電極体の積層方向を意味するものとする。図面中の符号Xは、積層方向Zに直交する方向であって、全固体電池および積層電極体の長辺方向を意味するものとする。図面中の符号Yは、積層方向Zに直交する方向であって全固体電池および積層電極体の短辺方向を意味するものとする。図面中の符号L、Rは、それぞれ短辺方向の左、右を意味するものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向であり、全固体電池の設置態様を何ら限定するものではない。
【0018】
図1は、一実施形態にかかる全固体電池を模式的に表す平面図である。
図2は、
図1のII-II線断面図である。以下、各構成要素について順に説明する。
本実施形態の全固体電池1は、矩形状の正極および負極が固体電解質層を介して複数積層された6面体形状の積層電極体10と、該積層電極体10における正負極積層方向両端の2つの矩形状幅広面を上面および下面としたときの少なくとも長辺側の2つの側面(以下「積層端部10e」ともいう。)にそれぞれ形成された光硬化型樹脂の硬化物からなる樹脂層20と、を備えている。そして、全固体電池1は、積層電極体10と樹脂層20とが、対応する幅広面が矩形状の電池ケース1cに収容され、封止されることによって密閉構造に形成されている。
図1に示す正極端子13は、電池ケース1cの内部から外部へと引き出された接続端子であり、正極タブ部12tを介して正極12の短辺側と電気的に接続されている。また、負極端子15は、電池ケース1cの内部から外部へと引き出された接続端子であり、負極タブ部14tを介して負極14の短辺側と電気的に接続されている。図示されるように、本実施形態では、正極端子13と負極端子15は全固体電池の長辺方向Xの同じ側に設けられているが、正極端子13と負極端子15が、全固体電池の長辺方向Xのそれぞれ異なる側に設けられてもよい。
【0019】
積層電極体10は、正極12と負極14とが固体電解質層16を介して積層方向Zに積層され、物理的に一体化された構造部分を含んで構成されている。正極12は、正極集電体12aと、正極集電体12aの両面に固着された正極合材層12bと、を備えている。負極14は、負極集電体14aと、負極集電体14aの両面に固着された負極合材層14bと、を備えている。積層方向Zにおいて、固体電解質層16は、正極合材層12bと負極合材層14bとの間に配置され、正極12と負極14とを絶縁している。
【0020】
正極12は、シート状正極であり、平面視において矩形状である。正極12の長辺方向Xの一方の端には、正極集電体12aと正極端子13とを電気的に接続する正極タブ部12tが設けられている。本実施形態において、正極12は、正極集電体12aと、正極集電体12aの両方の表面にそれぞれ固着された正極合材層12bとを備えている。正極集電体12aは、導電性部材であり、特に限定されないが、例えば、Al、Ni、Ti、SUS、Cr、Pt、Fe、Zn等の導電性の良好な金属からなる箔状体が用いられる。正極集電体の表面には、例えば固体電解質層16との界面抵抗を低減する等の目的で、カーボン等のコート層を有していてもよい。
【0021】
正極合材層12bは、典型的には正極活物質と固体電解質とを含んでいる。正極活物質は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な材料であり、この種の電池で用いられている種々の化合物を使用することができる。特に限定されないが、正極活物質として、例えば、リチウムコバルト含有複合酸化物、リチウムニッケル含有複合酸化物、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物、リチウムマンガン含有複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン含有複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物等が用いられる。
正極合材層12bの厚みは特に限定されないが、例えば、0.1~1000μmであり得る。
【0022】
正極合材層12bに含まれる固体電解質として、硫化物系全固体電池で用いられている、硫黄材料を含む固体電解質、いわゆる硫化物系固体電解質を使用することができる。特に限定されないが、固体電解質として、例えば、Li2S-P2S5系材料;Li2S-SiS2系材料;Li2S-P2S3系材料;Li2S-GeS2系材料;Li2S-B2S3系材料;Li3PO4-P2S5系;等の硫黄材料が用いられる。
【0023】
正極合材層12bには、正極活物質や固体電解質の他に、バインダや導電材等の成分を含んでいてもよい。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系バインダやブタジエンゴム(BR)等のゴム系バインダが含まれ得る。導電材としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の炭素材料が含まれ得る。
【0024】
上記材料を酪酸ブチル、ヘプタン、N-メチルピロリドン等の非水溶媒に混合することによって、ペースト状の正極合材を調製することができる。
正極合材層12bは公知の方法で正極集電体12a上や後述する固体電解質層16上に形成することができる。例えば、上記正極合材を100±50MPa程度の圧力で転写し、600±100MPa程度の圧力でプレスし、乾燥する等の方法が挙げられる。プレスは公知の方法によって行うことができ、例えば、ボールネジや油圧等を介して加圧する機械加圧、ガスを介して加圧するガス加圧等が挙げられる。
【0025】
負極14は、シート状であり、平面視において矩形状である。負極14の長辺方向Xの一方の端には、負極集電体14aと負極端子15とを電気的に接続する負極タブ部14tが設けられている。本実施形態において、負極14は、負極集電体14aと、負極集電体14aの両方の表面にそれぞれ固着された負極集電体14aとを備えている。負極集電体14aは、導電性部材であり、特に限定されないが、例えば、Cu、Ti、Ni、SUS、Fe、Co、Zn等の導電性の良好な金属からなる箔状体を用いられる。
負極合材層14bの厚みは特に限定されないが、例えば、0.1~1000μmであり得る。
【0026】
負極合材層14bは、典型的には負極活物質と固体電解質とを含んでいる。負極活物質は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な材料であり、この種の電池で用いられている種々の化合物を使用することができる。特に限定されないが、負極活物質として、例えば、グラファイト、カーボンブラック等の炭素材料が用いられる。
負極合材層14bに含まれる固体電解質として、例えば、正極合材層12bに用いられる硫化物系固体電解質として例示した硫黄材料等を用いることができる。
【0027】
また、負極合材層14bには、負極活物質や固体電解質の他に、バインダや導電材等の成分を含んでいてもよい。バインダや導電材としては、例えば、正極合材層12bに用いられ得る材料として例示したものの中から、適宜使用してもよい。
【0028】
上記材料を酪酸ブチル、ヘプタン、N-メチルピロリドン等の非水溶媒に混合することによって、ペースト状の負極合材を調製することができる。
負極合材層14bは公知の方法で負極集電体14a上に形成することができる。例えば、上記負極合材を100±50MPa程度の圧力で転写し、600±100MPa程度の圧力でプレスし、乾燥する等の方法が挙げられる。プレスは公知の方法によって行うことができ、例えば、ボールネジや油圧等を介して加圧する機械加圧、ガスを介して加圧するガス加圧等が挙げられる。
【0029】
固体電解質層16は、イオン電導性を有する固体電解質材料を主成分として含む。固体電解質層16に用いられる固体電解質として、例えば、正極合材層12bに用いられる硫化物系固体電解質として例示した硫黄材料等を用いることができる。
固体電解質層16には固体電解質以外の成分として、例えばバインダ等の成分を含んでいてもよい。バインダとしては、例えば、正極合材層12bに用いられ得る材料として例示したものを、適宜使用してもよい。
固体電解質層16の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1~1000μmであり、好ましくは0.1~300μmである。
【0030】
上記材料を酪酸ブチル、ヘプタン、N-メチルピロリドン等の非水溶媒に混合することによって、ペースト状の固体電解質層合材を調製することができる。
固体電解質層16は公知の方法で正負極の合材層上に形成することができる。例えば、上記正極合材を100±50MPa程度の圧力で転写し、600±100MPa程度の圧力でプレスし、乾燥する等の方法が挙げられる。プレスは公知の方法によって行うことができ、例えば、ボールネジや油圧等を介して加圧する機械加圧、ガスを介して加圧するガス加圧等が挙げられる。
【0031】
かかる積層電極体10は、上述した正極12および負極14が固体電解質16を介して複数積層された構成をしている。積層電極体10は、プレスや接着等、公知の方法によって該積層電極体を準備することができる。一実施形態において、
図2に示すように、負極集電体14aの両面に負極合材層14b、固体電解質層16、正極合材層12bをこの順に形成し、片方の面に正極集電体12aを形成することで単位電極体を準備することができる。正極集電体12aは、例えば、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)系、ポリオレフィン系、LDPE(低密度ポリエチレン)系等の熱可塑性樹脂を140℃において1MPaの圧力で箔接着することで形成することができる。
かかる単位電極体を複数積層することによって、積層電極体10を準備することができる。
【0032】
しかして、
図1および
図2に示すように、樹脂層20は、正極合材層12b、負極合材層14bの側面の少なくとも一部を封止しており、積層電極体10と一体性を有している。樹脂層20の積層方向Zの長さは、積層電極体10の積層方向Zの長さと同じか、それよりも長く、断面視において、積層電極体10の積層端部10e(例えば、正極合材層12b、負極合材層14bの周縁部)は、露出していない。これによって、樹脂層20は、正極合材層12b、負極合材層14bの周縁部が崩れたり、活物質が滑落したりすることを抑制することができる。
【0033】
樹脂層20は、光硬化型組成物の硬化物であり、以下の成分(A),(B),(C),(D),(E):
成分(A):1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さない化合物
成分(B):1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さない化合物
成分(C):1分子中にそれぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する化合物
成分(D):成分(A)、(B)、および(C)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物
成分(E):光ラジカル重合開始剤
のうち、成分(A)および成分(E)を、必須成分として含んでおり、成分(B)、成分(C)および成分(D)を任意成分として含む。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又メタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基のことをいう。
【0034】
樹脂層20を形成するための樹脂層形成用材料である光硬化型組成物における、成分(A),(B),(C),(D)および(E)の含有割合は、硬化性成分である成分(A),(B),(C)および(D)の合計量を100重量%としたときに、成分(A)および成分(B)の合計含有割合が60重量%以上100重量%以下であり、成分(C)の含有割合が0重量%以上40重量%未満であり、成分(D)の含有割合が0重量%以上40重量%未満である。成分(E)の含有割合は、前記硬化性成分の合計量を100重量部としたときに、0.01重量部以上10重量部以下である。
【0035】
本実施形態において、硬化性成分である成分(A)は、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さない化合物である。成分(A)として、例えば、後述するアクリル系のモノマー、オリゴマー、およびポリマーを用いることができる。成分(A)を含むことにより、固体電解質層16に含まれる硫黄材料と樹脂層20との反応を抑制することができる。
【0036】
本実施形態において、成分(A)は必須成分として含まれている。その含有割合は、硬化性成分である成分(A),(B),(C)および(D)の合計含有量を100重量%としたときに、10重量%以上であることが適当であり、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは実質的に100重量%である。また、成分(A)と後述する成分(B)との合計含有割合は、60重量%以上であることが適当であり、好ましくは70重量%であり、より好ましくは実質的に100重量%である。
【0037】
上記光硬化型組成物の粘度が高すぎる場合は操作性に優れず、低すぎる場合は光硬化型組成物が積層電極体の層間にしみ込み電池性能の低下を招く恐れがある。上記光硬化型組成物の粘度は、25℃において1Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましく、1Pa・s以上50Pa・s以下であることがより好ましい。
【0038】
また、樹脂層20の柔軟性や、硬化前材料の積層電極体へのしみ込み性等の観点から、成分(A)の平均数分子量は500以上であることが適当であり、1000以上であることが好ましく、より好ましくは3000以上である。さらに、成分(A)は、ポリエステル骨格を有することによって、より好適に上記性能を向上させることができる。
【0039】
成分(A)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、および2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族骨格を有するジ(メタ)アクリレート;
シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、および水素添加ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート等の脂環式骨格を有するジ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の低分子量アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;並びに、
ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、およびビスフェノールSアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール系化合物アルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート
等を用いることができる。
【0040】
成分(A)としては、上記以外にも、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびポリエーテル(メタ)アクリレート等の分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーが挙げられる。
【0041】
ポリエステル(メタ)アクリレートは、ポリエステル骨格を有するジ(メタ)アクリレートである。
ポリエステル(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリエステルジオールと(メタ)アクリル酸との脱水エステル化反応物、ジオールと二塩基酸と(メタ)アクリル酸との脱水エステル化反応物およびポリエステルジオールと1個の(メタ)アクリル基を有する化合物とのエステル交換反応物等が挙げられる。
ポリエステルジオールは、ジオールと二塩基酸との反応によって得られる。
ジオールとしては、例えばネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、イソノナンジオール、トリシクロデカンジメチロール、およびビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
二塩基酸としては、例えばコハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、およびテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
ジオールと二塩基酸と(メタ)アクリル酸との脱水エステル化反応物におけるジオールおよび二塩基酸としては、前記と同様の化合物が挙げられる。
1個の(メタ)アクリル基を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、およびブチル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、並びに2-メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させた化合物である。エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂および脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0043】
芳香族エポキシ樹脂としては、具体的には、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;o-フタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
【0044】
脂肪族エポキシ樹脂としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコールおよびそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;水素添加ビスフェノールAおよびそのアルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
上記において、アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が好ましい。
【0045】
ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリアルキレングリコール(メタ)ジアクリレートがあり、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
成分(A)の好ましい化合物であるポリエステル骨格を有するジ(メタ)アクリレートとしては、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられ、その具体例は前記で詳述した通りである。
【0047】
本実施形態において、硬化性成分である成分(B)は、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さない化合物である。成分(B)として、例えば、後述するアクリル系のモノマー、オリゴマー、およびポリマーを用いることができる。上記成分(A)と同様、光硬化型組成物が成分(B)を含むことにより、固体電解質層16に含まれる硫黄材料と樹脂層20との反応を抑制することができる。
本実施形態において、成分(B)は任意成分であり、上記成分(A)との合計含有割合が60重量%以上100重量%以下である限りにおいて、含まれてもよく、また、含まれていなくてもよい。
【0048】
成分(B)としては、例えば、以下に挙げる1分子中に1個(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」ともいう〕が挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、およびステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、および2-エチルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等の脂肪族モノオールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、および2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、およびジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式基を有する単官能(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、およびノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等の芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート;
ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、およびポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート等のジオールのモノ(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基および芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-2-イル)メチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、および(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基を有する単官能(メタ)アクリレート;
N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、およびN-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド等のマレイミド基を有する単官能(メタ)アクリレート;
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する単官能(メタ)アクリレート;
アリル(メタ)アクリレート等のアリル基を有する単官能(メタ)アクリレート;
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、およびω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有する単官能(メタ)アクリレート;
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等のリン酸基を有する単官能(メタ)アクリレート;並びに、
3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、および3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する単官能(メタ)アクリレート等
が挙げられる。
【0049】
成分(B)の好ましい化合物としては、脂肪族モノオールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート、並びに水酸基および芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレートが挙げられ、その具体例は前記で詳述した通りである。
【0050】
本実施形態において、硬化性成分である成分(C)は、1分子中にそれぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する化合物である。成分(C)は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートを用いることができ、後述するポリオール、有機ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートから調整することができる。
本実施形態において、成分(C)は任意成分であり、その含有割合は、0重量%以上40重量%未満であることが適当であり、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは実質的に0重量%である。
【0051】
成分(C)を調製するためのポリオールとしては、ジオールが好ましい。
ジオールとしては、低分子量ジオール、ポリエンおよび/又はポリオレフィン骨格を有するジオール、ポリエステル骨格を有するジオール、ポリエーテル骨格を有するジオールおよびポリカーボネート骨格を有するジオール等が挙げられる。
低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
ポリエンおよび/又はポリオレフィン骨格を有するジオールとしては、ポリブタジエン骨格を有するジオール、ポリイソプレン骨格を有するジオール、水素添加型ポリブタジエン骨格を有するジオールおよび水素添加型ポリイソプレン骨格を有するジオール等が挙げられる。
ポリエステル骨格を有するジオールとしては、前記低分子量ジオール又はポリカプロラクトンジオール等のジオール成分と、ジカルボン酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等が挙げられる。ジカルボン酸又はその無水物としては、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドルフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびテレフタル酸等、並びにこれらの無水物等が挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートジオールとしては、前記低分子量ジオール又は/およびビスフェノールA等のビスフェノールと、エチレンカーボネートおよび炭酸ジブチルエステル等の炭酸ジアルキルエステルの反応物等が挙げられる。
【0052】
成分(C)を調製するための有機ポリイソシアネートとしては、有機ジイソシアネートが好ましい。
有機ジイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルシクロヘキサンおよびダイマー酸ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、並びにトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、およびジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0053】
成分(C)を調製するための水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、並びに
トリメチロールプロパンのモノ又はジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基および1個又は2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物等が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0054】
本実施形態において、硬化性成分である成分(D)は、成分(A)、(B)、および(C)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
成分(D)は、成分(A)、(B)、および(C)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物であれば種々の化合物を用いることができ、(メタ)アクリレートが好ましい。
本実施形態において、成分(D)は任意成分であり、その含有割合は、0重量%以上40重量%未満であることが適当であり、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは実質的に0重量%である。
【0055】
成分(D)の好ましい具体例としては、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。
当該化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート;並びに
イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、およびε-カプロラクトン変性トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート骨格を有する(メタ)アクリレート
等が挙げられる。
上記アルキレンオキサイド付加物におけるアルキレンオキサイドの例としては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0056】
本実施形態にかかる硬化成分(A)、(B),(C)および(D)を硬化させるため、該硬化性成分は光ラジカル重合開始剤である成分(E)を必須成分として含んでいる。成分(E)の含有割合は、該硬化性成分の合計重量を100重量部としたときに、0.01重量部以上10重量部以下であることが適当である。
【0057】
成分(E)の具体例としては、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-1-(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチループロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)]フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オンおよび3,6-ビス(2-メチル-2-モルフォリノプロピオニル)-9-n-オクチルカルバゾール等のアセトフェノン系化合物;
ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;
ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、メチル-2-ベンゾフェノン、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルフォニル)プロパン-1-オン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、および4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、およびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物;並びに
チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、3-[3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イル-オキシ]-2-ヒドロキシプロピル-N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド、およびフルオロチオキサントン等のチオキサントン系化合物等が挙げられる。
前記以外の化合物としては、ベンジル、フェニルグリオキシ酸メチル、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート、エチルアントラキノン、フェナントレンキノンおよびカンファーキノン等が挙げられる。
これら化合物の中でも、アシルホスフィンオキサイド系化合物が、紫外線の光源として発光ダイオードを使用する場合の硬化性に優れる点で好ましい。
【0058】
上記光硬化型組成物は、本発明の効果を損なわない程度に、上記成分(A),(B),(C),(D)および(E)以外にも、非硬化性の樹脂成分や、微量成分等を含んでいてもよい。
その具体例としては、非硬化性の樹脂成分であるメチルメタクリレートとブチルアクリレートのブロックコポリマー等のポリマー等が挙げられる。
【0059】
一実施形態において、樹脂層20を形成する方法は、例えば、樹脂充填型を用いて積層電極体10を固定すること(手順a);樹脂充填型と積層電極体10とによって囲まれる空間に光硬化型組成物を充填すること(手順b);該光硬化型組成物を硬化させること(手順c)を包含し得る。
なお、本明細書において樹脂充填用型は、積層電極体10における正負極積層方向両端から積層電極体10を挟み込むことによって、積層電極体10の側面に光硬化型組成物を配置するための型である。樹脂充填用型には、例えば、フッ素樹脂のような離型性良い材料が用いられ、好ましくはテフロン(登録商標)が用いられ得る。
【0060】
手順aでは、樹脂充填型を用いて積層電極体10を固定する。積層電極体10を積層方向両端から樹脂充填用型を挟み込み、加圧することによって積層電極体10を固定する。加圧は該積層電極体に損傷を与えたり、変形したりしない圧力にて行う。
手順bでは、樹脂充填型と積層電極体10とによって囲まれる空間に、上述した組成の光硬化型組成物を充填する。充填する光硬化型組成物の量は特に限定されず、目的の樹脂層の厚みに応じて適宜調整し得る。樹脂が該樹脂充填型からあふれ出た場合は、余剰分の樹脂をスクレーパ等で除去することができる。
手順cでは、樹脂充填型中に充填された光硬化型組成物にUV光を照射することによって光硬化型組成物を硬化させ、樹脂層20を形成する。
【0061】
以上のように積層電極体の側面に形成された樹脂層20は、硫化物固体電解質との反応性が抑えられている。したがって、上記樹脂層を備えた硫化物系全固体電池は、従来から提案されている樹脂材料を用いて積層電極体の側面を封止した硫化物系全固体電池と比較して、充放電を繰り返すことによる劣化が抑制され、電池性能をより長期にわたって維持することができる。
【0062】
ここに開示される全固体電池1は、各種用途に利用可能である。例えば、車両に搭載されるモーター用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されるものではないが、典型的には自動車、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等が挙げられる。
【0063】
以下、好適な実施形態について実施例を挙げて説明するが、本発明をかかる実施例に限定することを意図したものではない。なお、特に断らない限り、以下において「部」とは「重量部」を意味し、配合割合を示す「%」は「重量%」を意味する。
【0064】
<略号>
文中の略号は、下記を意味する。
MCA:2-メトキシエチルアクリレート
MEL:2-メトキシエタノール
DABCO:トリエチレンジアミン
MEHQ:ハイドロキノンモノメチルエーテル
TEMPOL:4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル
DEHA:N,N-ジエチルヒドロキシルアミン
【0065】
<反応収率>
後述する製造例におけるエステル交換反応の反応収率は、エステル交換反応の進行に伴い副生したMEL(原料として使用したMCAに由来するMEL)を定量し、下記の式を用いて算出した。なお、MELの定量は、示差屈折率検出器を備えた高速液体クロマトグラフ(カラム:日本ウォーターズ(株)製 Atlantis(Part No.186003748、カラム内径4.6mm、カラム長さ250mm)、溶媒:純水又は10容量%イソプロパノール水溶液)を使用し、内部標準法にて実施した。
式:反応収率(モル%)=エステル交換反応の進行に伴い副生したMELのモル数/(原料として使用したアルコールのモル数×原料として使用したアルコール分子の有するアルコール性水酸基数)×100
【0066】
<数平均分子量(Mn)の測定>
日本ウォーターズ(株)製 GPCシステム:検出器=RI、ウォーターズ2414、カラム:日本ウォーターズ(株)製 STYRAGEL HR1(カラム内径7.8mm、カラム長さ300mm、THF溶媒)を使用し、ポリスチレン標準サンプルを基準として数平均分子量を算出した。
【0067】
<製造例:二官能ポリエステルアクリレートの合成>
撹拌機、温度計、ガス同入管、精留塔及び冷却管を取り付けた3Lのフラスコに、イソノナンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール〔Mn:3,699、水酸基価21.9mgKOH/g〕を240.00g(0.047mol)、MCAを659.27g(5.01mol)、触媒としてDABCOを0.093g(0.00083mol)、触媒としてアクリル酸亜鉛を0.34g(0.0017mol)、MEHQを0.15g(仕込んだ原料の総重量に対して167ppm)、TEMPOLを0.17g(仕込んだ総重量に対して189ppm)を仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)をバブリングさせた。
反応液温度125~130℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を31.2×10-3~32.1×10-3MPa(237~244mmHg)の範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生したMELとMCAの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出した。また、該抜出液と同重量のMCAを反応系に随時追加した。また、MEHQ及びTEMPOLを含むMCAを、精留塔を介して反応系に随時追加した。
反応系からの抜出液に含まれるMELを定量した結果、加熱撹拌開始から21時間後に反応収率は91%に到達したので、反応液の加熱を終了するとともに、反応系内の圧力を常圧に戻して抜出を終了した。なお、追加されたMEHQおよびTEMPOLの量は、反応液の合計100gに対して、それぞれ0.55mgおよび0.61mgであった。
【0068】
反応液に吸着剤として珪酸アルミニウム(協和化学工業(株)製 キョーワード700)を12g投入し、内温80~105℃の範囲で常圧下1時間加熱撹拌して接触処理した後、内温20~40℃の範囲で水酸化カルシウムを0.37g投入し、常圧下1時間撹拌した。
加圧ろ過により不溶物を分離した後、ろ液に乾燥空気をバブリングさせながら、温度70~98℃、圧力0.001~100mmHgの範囲で16時間の減圧蒸留を行い、未反応のMCAを含む留出液を分離した。
【0069】
得られた釜残液を室温まで冷却してDEHAを0.16部(得られた釜液に対して700ppm)添加し、内温80℃で常圧下3時間撹拌した。その後、加圧ろ過により固形物を分離した。
1H NMRを用いて、加圧ろ過後のろ液の組成分析を行った結果、ポリエステルジアクリレートを主要成分として含むことを確認した。該ろ液を精製処理物とみなして算出した精製収率は93%であった。生成物の数平均分子量(Mn)は、3,565であった。
本製造例で得られた二官能ポリエステルアクリレートをPA-1と称する。
【0070】
<光硬化型組成物の調製>
実施例において、光硬化型組成物である試験用樹脂の調製に用いた各成分は次のとおりである。また、表1における略号は下記を意味する。
成分(A)
PA-1:製造例で得られた二官能ポリエステルアクリレート
M-211:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジアクリレート(主成分の分子量512)、東亞合成(株)製 アロニックスM-211B
成分(B)
M-111:ノニルフェノールのエチレンオキサイド付加物のアクリレート、東亞合成(株)製 アロニックスM-111
M-120:2-エチルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物のアクリレート、東亞合成(株)製 アロニックスM-120
M-5700:2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、東亞合成(株)製 アロニックスM-5700
成分(C)
M-1200:ポリエステル骨格を有する二官能ウレタンアクリレート(数平均分子量1,000以上)、東亞合成(株)製 アロニックスM-1200
UN-9200:ポリカーボネート骨格を有する二官能ウレタンアクリレート(数平均分子量1,000以上)、根上工業(株)製 アートレジンUN-9200A
成分(D)
M-309:トリメチロールプロパントリアクリレート、東亞合成(株)製 アロニックスM-309
成分(E)
TPO:IGMレジン社製 光ラジカル重合開始剤 オムニラッドTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド)
成分(F)(非硬化性成分)
LA2140:メチルメタクリレートとブチルアクリレートのブロックコポリマー、(株)クラレ製 クラリティLA2140
【0071】
各成分をそれぞれ表1に示す割合で配合し、撹拌混合して、例1~7にかかる試験用樹脂を調製した。調製の際、必要に応じて最大100℃まで加熱した。得られた表1に記載の光硬化型組成物を使用し、後述する評価を行った。それらの結果を併せて表1に示す。
なお、表1における配合割合を示す数字は、硬化性成分である成分(A),(B),(C),および(D)において、上記成分の合計量を100重量%としたときの各成分の配合割合(重量%)である。成分(E)および(F)は、上記硬化性成分の合計量を100重量部としたときの配合割合(重量部)である。
【0072】
【0073】
<硫化物固体電解質との反応性および耐電位性の評価>
試験用樹脂、SUS、硫化物系固体電解質を混合した試験片を作製し、サイクリックボルタンメトリー(Cyclic Voltammetry、以下、CVという)により酸化還元電流を測定し、樹脂材料と硫化物固体電解質との反応性を評価した。ここでは硫化物系固体電解質として、PS4オルト骨格を少なくとも有するLi2S-P2S5系に1種類以上のハロゲンを含有する硫化物系固体電解質を用いた。
グローブボックス内で、SUS粉500mg、上記硫化物系固体電解質450mgおよび配合した試験用樹脂50mgを秤量し、乾燥した乳鉢内でよく混合し、合材Aとした。該合材Aをφ10mmの円筒状に成形した。上記硫化物系固体電解質100mgを秤量し、合材A上で均し、6tでプレスすることで積層した。銅箔の上に伸ばしたリチウム箔を貼り付けた。該リチウム箔の露出している面を、合材Aに固着された固体電解質上に貼り付け、0.01tでプレスし、反応性評価用の試料を得た。上記試料を6Nで拘束し、25℃の恒温槽で1時間以上静置した後、下記条件にてCVを行った。
10サイクル行った際の電流絶対値の最大値を、還元電流(mA)の値として表1に記載した。電流値20mA以下を◎、20~40mAを〇、40~60mAを△、60mAより大きいものを×と評価した。
CVの条件:温度環境25℃
走査範囲:開回路電位(毎回設定)→5V→1Vまたは0.1V→開回路電位
走査速度:1mV/sec
サイクル数:10サイクル
【0074】
<柔軟性の評価>
硬化後の試験用樹脂の貯蔵弾性率を測定することにより、柔軟性を評価した。
具体的には、厚さ1mmのシリコンゴムに、幅5mm、長さ50mmの長方形の穴を空けて型枠とし、これをガラス板上に置いたPETフィルムの上に貼り付けた。この型枠の中に試験用樹脂を入れ、その上にPETフィルムを空気が入らないよう被覆し、その上にガラス板を置いた。上下二枚のガラス板をクリップで抑えて固定したのち、ステージ移動装置を備えたセンテック(株)製の365nmLED照射装置で表裏から各1,000mJ/cm2のUV光を照射して試験用樹脂を硬化させた(ピーク照度200mW/cm2、ステージ速度8mm/秒、1パス当たり500mJ/cm2で表裏交互に各2パス照射)。
硬化後、ガラス板を取り除き、PETフィルムを剥がし、硬化物をシリコンゴムの型枠から取り外して試験片を得た。バリがある場合、カッターナイフ等で取り除いた。得られた硬化物の動的粘弾性スペクトルを、SII社製のDMS-6100により、周波数1Hzで概ね-30℃から100℃まで測定し、25℃における貯蔵弾性率を表1に記載した。
貯蔵弾性率10MPa以下を◎、10~1000MPaを〇、1000~2000MPaを△、2000MPaより大きいものを×と評価した。
【0075】
<積層電極体の積層間へのしみ込み性の評価>
硬化前の試験用樹脂の粘度(Pa・s)を測定することにより、積層電極体の積層間へのしみ込み性を評価した。東機産業(株)製のE型粘度計(コーンプレート型粘度計)を用い、25℃における粘度の測定結果を表1に記載した。
粘度測定に加えて、実際に積層電極体の側面に試験用樹脂を塗布し、硬化させた後に該積層電極体を解体し、電極の層間のしみ込みの程度を観察した。
電極端部から平均して5mm以上硬化物がしみ込んでいたものを×、平均して3~4mm程度しみ込んでいたものを△、平均して2mm以下程度しみ込んでいたものを〇と評価した。
【0076】
<割れ性の評価>
ガラス板上に、厚さ1mm、幅20mm、長さ150mmのシリコンゴムシートを2枚、それらの間隔が15mmになるよう配置し、ガラス板に密着させた。この間隔の中に硬化前の試験用樹脂を充填し、上面に厚さ188μmのPETフィルムを被せ、この上にガラス板を載せて、365nmのLED照射装置で1,000mJ/cm2のUV光を照射して試験用樹脂を硬化させた。
硬化後、硬化物を目視観察し、割れが発生したものを×、発生しなかったものを〇と評価した。
【0077】
<総合評価>
上記の硫化物固体電解質との反応性の評価、柔軟性の評価、積層電極体の層間へのしみ込み性の評価、割れ性の評価の結果から、総合評価を行った。全ての評価が〇か◎であり、△および×を一つも含まないものを〇、×を一つも含まず一つでも△を含むものを△、×を一つでも含むものを×とした。
【0078】
<サイクル特性評価>
電極仕様NCM/LTO、電極サイズ1cm2、電極厚み0.3mm、単セル容量2mAhのセルを5層重ね、Ar雰囲気中で電極外周側面に厚さ1mmの硬化前の試験用樹脂を塗布し、365nmのLED照射装置で1,000mJ/cm2のUV光を照射して試験用樹脂を硬化させ、評価用小型セルを準備した。
本セルを用い、60℃、2C/2Cサイクルを行い、300サイクル後の電池容量維持率を評価した。
容量維持率90%以上を◎、85~89%を〇、85%より低いものを×と評価した。
【0079】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、異常に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 全固体電池
1c 電池ケース
10 積層電極体
10e 積層端部
12 正極
12a 正極集電体
12b 正極合材層
12t 正極タブ部
13 正極端子
14 負極
14a 負極集電体
14b 負極合材層
14t 負極タブ部
15 負極端子
16 固体電解質層
20 樹脂層
【手続補正書】
【提出日】2021-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
負極14は、シート状であり、平面視において矩形状である。負極14の長辺方向Xの一方の端には、負極集電体14aと負極端子15とを電気的に接続する負極タブ部14tが設けられている。本実施形態において、負極14は、負極集電体14aと、負極集電体14aの両方の表面にそれぞれ固着された負極合材層14bとを備えている。負極集電体14aは、導電性部材であり、特に限定されないが、例えば、Cu、Ti、Ni、SUS、Fe、Co、Zn等の導電性の良好な金属からなる箔状体を用いられる。
負極合材層14bの厚みは特に限定されないが、例えば、0.1~1000μmであり得る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
上記材料を酪酸ブチル、ヘプタン、N-メチルピロリドン等の非水溶媒に混合することによって、ペースト状の固体電解質合材を調製することができる。
固体電解質層16は公知の方法で正負極の合材層上に形成することができる。例えば、上記固体電解質合材を100±50MPa程度の圧力で転写し、600±100MPa程度の圧力でプレスし、乾燥する等の方法が挙げられる。プレスは公知の方法によって行うことができ、例えば、ボールネジや油圧等を介して加圧する機械加圧、ガスを介して加圧するガス加圧等が挙げられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
かかる積層電極体10は、上述した正極12および負極14が固体電解質
層16を介して複数積層された構成をしている。積層電極体10は、プレスや接着等、公知の方法によって該積層電極体を準備することができる。一実施形態において、
図2に示すように、負極集電体14aの両面に負極合材層14b、固体電解質層16、正極合材層12bをこの順に形成し、片方の面に正極集電体12aを形成することで単位電極体を準備することができる。正極集電体12aは、例えば、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)系、ポリオレフィン系、LDPE(低密度ポリエチレン)系等の熱可塑性樹脂を140℃において1MPaの圧力で箔接着することで形成することができる。
かかる単位電極体を複数積層することによって、積層電極体10を準備することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
樹脂層20は、光硬化型組成物の硬化物であり、以下の成分(A),(B),(C),(D),(E):
成分(A):1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さない化合物
成分(B):1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有し、ウレタン結合を有さない化合物
成分(C):1分子中にそれぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する化合物
成分(D):成分(A)、(B)、および(C)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物
成分(E):光ラジカル重合開始剤
のうち、成分(A)および成分(E)を、必須成分として含んでおり、成分(B)、成分(C)および成分(D)を任意成分として含む。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基のことをいう。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
脂肪族エポキシ樹脂としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコールおよびそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;水素添加ビスフェノールAおよびそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
上記において、アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が好ましい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
本実施形態において、硬化性成分である成分(C)は、1分子中にそれぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する化合物である。成分(C)は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートを用いることができ、後述するポリオール、有機ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートから調製することができる。
本実施形態において、成分(C)は任意成分であり、その含有割合は、0重量%以上40重量%未満であることが適当であり、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは実質的に0重量%である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
成分(C)を調製するためのポリオールとしては、ジオールが好ましい。
ジオールとしては、低分子量ジオール、ポリエンおよび/又はポリオレフィン骨格を有するジオール、ポリエステル骨格を有するジオール、ポリエーテル骨格を有するジオールおよびポリカーボネート骨格を有するジオール等が挙げられる。
低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
ポリエンおよび/又はポリオレフィン骨格を有するジオールとしては、ポリブタジエン骨格を有するジオール、ポリイソプレン骨格を有するジオール、水素添加型ポリブタジエン骨格を有するジオールおよび水素添加型ポリイソプレン骨格を有するジオール等が挙げられる。
ポリエステル骨格を有するジオールとしては、前記低分子量ジオール又はポリカプロラクトンジオール等のジオール成分と、ジカルボン酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等が挙げられる。ジカルボン酸又はその無水物としては、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびテレフタル酸等、並びにこれらの無水物等が挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートジオールとしては、前記低分子量ジオール又は/およびビスフェノールA等のビスフェノールと、エチレンカーボネートおよび炭酸ジブチルエステル等の炭酸ジアルキルエステルの反応物等が挙げられる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
<製造例:二官能ポリエステルアクリレートの合成>
撹拌機、温度計、ガス導入管、精留塔及び冷却管を取り付けた3Lのフラスコに、イソノナンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール〔Mn:3,699、水酸基価21.9mgKOH/g〕を240.00g(0.047mol)、MCAを659.27g(5.01mol)、触媒としてDABCOを0.093g(0.00083mol)、触媒としてアクリル酸亜鉛を0.34g(0.0017mol)、MEHQを0.15g(仕込んだ原料の総重量に対して167ppm)、TEMPOLを0.17g(仕込んだ総重量に対して189ppm)を仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)をバブリングさせた。
反応液温度125~130℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を31.2×10-3~32.1×10-3MPa(237~244mmHg)の範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生したMELとMCAの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出した。また、該抜出液と同重量のMCAを反応系に随時追加した。また、MEHQ及びTEMPOLを含むMCAを、精留塔を介して反応系に随時追加した。
反応系からの抜出液に含まれるMELを定量した結果、加熱撹拌開始から21時間後に反応収率は91%に到達したので、反応液の加熱を終了するとともに、反応系内の圧力を常圧に戻して抜出を終了した。なお、追加されたMEHQおよびTEMPOLの量は、反応液の合計100gに対して、それぞれ0.55mgおよび0.61mgであった。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。