(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154781
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】配向膜材料、及び、液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20221005BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20221005BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20221005BHJP
G02F 1/137 20060101ALI20221005BHJP
C08G 73/12 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
G02F1/1334
G02F1/13357
G02F1/137
C08G73/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057983
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】奥山 健太郎
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2H290
2H391
4J043
【Fターム(参考)】
2H088GA02
2H088GA10
2H088JA04
2H088KA26
2H088KA27
2H189AA04
2H189CA08
2H189HA03
2H189HA15
2H189JA04
2H189LA01
2H189LA10
2H189LA20
2H189LA22
2H290AA03
2H290AA33
2H290AA85
2H290BD01
2H290BE03
2H290BE04
2H290BF13
2H290BF24
2H290BF52
2H391AA25
2H391AB14
2H391CB03
2H391CB12
2H391EA26
4J043PA04
4J043PC085
4J043PC086
4J043PC175
4J043PC176
4J043QC03
4J043RA34
4J043SA06
4J043TA22
4J043UA022
4J043UA131
4J043UB121
4J043UB261
4J043ZB23
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性を向上できる配向膜材料及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、アレイ基板10と、対向基板20と、アレイ基板10と対向基板20との間に封入される液晶層50と、アレイ基板10及び対向基板20にそれぞれ設けられ、液晶層50に接する第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2と、を備え、液晶層50は、網目状に形成されたポリマーネットワーク51と、ポリマーネットワーク51の隙間に分散保持された液晶分子52と含む高分子分散型液晶LCであり、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2は、ポリマーネットワーク51と連結する光架橋基を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子分散型液晶に用いられる配向膜材料であって、
前記高分子分散型液晶に含まれる光架橋性モノマーと連結される光架橋基を含む、配向膜材料。
【請求項2】
前記配向膜材料は、テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物からなるポリアミド酸を含み、
前記ジアミン化合物が前記光架橋基を有する、請求項1に記載の配向膜材料。
【請求項3】
前記光架橋基は、メタクリレート基、アクリレート基、桂皮酸基、マレイミド基、フェニルジアジリン、フェニルアジドのうち少なくとも1つを含む請求項1または2に記載の配向膜材料。
【請求項4】
前記配向膜材料は、テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物からなるポリアミド酸を含み、
前記テトラカルボン酸化合物が前記光架橋基を有する、請求項1に記載の配向膜材料。
【請求項5】
前記光架橋基は、ジアゾ基またはベンゾフェノン基を含む請求項1または4に記載の配向膜材料。
【請求項6】
第1透光性基板と、前記第1透光性基板と対向して配置される第2透光性基板と、前記第1透光性基板と前記第2透光性基板との間に封入される液晶層と、前記第1透光性基板及び前記第2透光性基板に設けられ前記液晶層と接する配向膜と、前記第1透光性基板及び前記第2透光性基板の少なくとも1つの側面に対向して配置される少なくとも1つの発光部と、を備え、
前記液晶層は、網目状に形成されたポリマーネットワークと、前記ポリマーネットワークの隙間に分散保持された液晶分子と含む高分子分散型液晶であり、
前記配向膜は、前記ポリマーネットワークと連結する光架橋基を有する、液晶表示装置。
【請求項7】
前記配向膜は、ポリアミド酸からなるポリイミド、ポリアミドイミド、可溶性ポリイミドのうち少なくとも一つを含む、請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記配向膜は、前記液晶層と接する面において、ラビング配向処理が施されている、請求項6または7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記配向膜は、前記液晶層と接する面において、光配向処理が施されている、請求項6または7に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記配向膜は、メタクリレート基、アクリレート基、桂皮酸基、マレイミド基、フェニルジアジリン、フェニルアジドのうち少なくとも1つの前記光架橋基を側鎖に有しているポリイミドである、請求項6~9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記配向膜は、前記光架橋基としてジアゾ基またはベンゾフェノン基を主鎖に有しているポリイミドである、請求項6~9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記液晶分子及び前記ポリマーネットワークは、前記第1透光性基板及び前記第2透光性基板の間でホモジニアス配向、またはポメオトロピック配向している請求項6~11のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記高分子分散型液晶が散乱状態にあるとき、表示領域において画像を表示し、
前記高分子分散型液晶が非散乱状態にあるとき、前記表示領域において、前記第1透光性基板から前記第2透光性基板の背景が視認され、前記第2透光性基板から前記第1透光性基板の背景が視認される請求項6~12のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配向膜材料、及び、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1透光性基板と、第1透光性基板と対向して配置される第2透光性基板と、第1透光性基板と第2透光性基板との間に封入される液晶層と、第1透光性基板及び第2透光性基板の少なくとも1つの側面に対向して配置される少なくとも1つの発光部とを備える表示装置が記載されている。また、第1透光性基板、第2透光性基板及び液晶層からなる表示パネルには、該第1透光性基板及び第2透光性基板の少なくとも1つの内面に配向膜(液晶配向膜)が設けられている。
【0003】
この種の表示装置では、液晶層は、網目状に形成されたポリマーネットワークの隙間に分散保持された液晶分子を含み、例えば非通電時に配向膜が液晶分子を配向させることにより、液晶層の液晶分子が発光部の光を散乱しない非散乱状態となる。このため、表示装置は、表示パネルの一方の面から、反対側の他方の面側の背景を視認可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の表示装置では、例えば、表示パネルの画面の点押しや落下衝撃などを繰り返すことで、液晶層のポリマーネットワークが不可逆的に移動するため、液晶分子の配向が乱れる。このため、表示パネルの画面中央付近に、むらが発生してコントラストが低下する事態が生じ、表示装置の耐衝撃性の向上が要望されていた。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたもので、耐衝撃性を向上できる配向膜材料及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る配向膜材料は、高分子分散型液晶に用いられ、高分子分散型液晶に含まれる光架橋性モノマーと連結される光架橋基を含む。
【0008】
他の態様に係る表示装置は、第1透光性基板と、第1透光性基板と対向して配置される第2透光性基板と、第1透光性基板と第2透光性基板との間に封入される液晶層と、第1透光性基板及び第2透光性基板に設けられ液晶層と接する配向膜と、第1透光性基板及び第2透光性基板の少なくとも1つの側面に対向して配置される少なくとも1つの発光部と、を備え、液晶層は、網目状に形成されたポリマーネットワークと、ポリマーネットワークの隙間に分散保持された液晶分子と含む高分子分散型液晶であり、配向膜は、ポリマーネットワークと連結する光架橋基を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の表示装置を表すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1のフィールドシーケンシャル方式において、光源が発光するタイミングを説明するタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、画素電極への印加電圧と画素の散乱状態との関係を示す説明図である。
【
図5】
図5は、
図1の表示装置の断面の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図5の液晶層部分を拡大した拡大断面図である。
【
図8】
図8は、液晶層においてモノマーが重合前の状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、液晶層において散乱状態を説明するための断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態2の液晶層においてモノマーが重合前の状態を示す断面図である。
【
図11】
図11は、液晶層において非散乱状態を説明するための断面図である。
【
図12】
図12は、液晶層において散乱状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、開示の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す斜視図である。
図2は、
図1の表示装置を表すブロック図である。
図3は、フィールドシーケンシャル方式において、光源が発光するタイミングを説明するタイミングチャートである。
【0012】
図1に示すように、表示装置(液晶表示装置)1は、表示パネル2と、光源3と、駆動回路4とを有する。ここで、表示パネル2の平面の一方向がPX方向とされ、PX方向と直交する方向がPY方向とされ、PX-PY平面に直交する方向がPZ方向とされている。
【0013】
表示パネル2は、アレイ基板(第1透光性基板)10と、対向基板(第2透光性基板)20と、液晶層50(
図5参照)とを備えている。対向基板20は、アレイ基板10の表面に垂直な方向(
図1に示すPZ方向)に対向する。液晶層50は、アレイ基板10と対向基板20との間に配置される。液晶層50は、後述する高分子分散型液晶(PDLC;Polymer Dispersed Liquid Crystal)LCを含み、この高分子分散型液晶LCは、アレイ基板10と対向基板20と封止部18とで封止されている。
【0014】
図1に示すように、表示パネル2において、封止部18の内側が画像を表示可能な表示領域AAとなる。表示領域AAには、複数の画素Pixがマトリクス状に配置されている。なお、本開示において、行とは、一方向に配列されるm個の画素Pixを有する画素行をいう。また、列とは、行が配列される方向と直交する方向に配列されるn個の画素Pixを有する画素列をいう。そして、mとnとの値は、垂直方向の表示解像度と水平方向の表示解像度に応じて定まる。また、複数の走査線GLが行毎に配線され、複数の信号線SLが列毎に配線されている。
【0015】
光源3は、表示パネル2と光学接続された複数の発光部31を備えている。表示パネル2と発光部31の隙間には光学接着層21(
図5参照)が充填されている。
図2に示すように、光源制御回路32は、駆動回路4に含まれる。なお、光源制御回路32は、駆動回路4の回路とは別の回路にしてもよい。発光部31と、光源制御回路32とは、アレイ基板10内の配線で電気的に接続されている。
【0016】
図1に示すように、駆動回路4は、アレイ基板10の表面に設けられている。
図2に示すように、駆動回路4は、信号処理回路41、画素制御回路42、ゲート駆動回路43、ソース駆動回路44及び共通電位駆動回路45を備えている。アレイ基板10は、対向基板20よりもPX-PY平面の面積が大きく、対向基板20から露出したアレイ基板10の張り出し部分に、駆動回路4が設けられる。
【0017】
信号処理回路41には、外部制御部9の画像出力部91から、フレキシブル基板92を介して、入力信号(RGB信号など)VSが入力される。
【0018】
信号処理回路41は、入力信号解析部411と、記憶部412と、信号調整部413とを備える。入力信号解析部411は、外部から入力された第1入力信号VSに基づいて第2入力信号VCSを生成する。
【0019】
第2入力信号VCSは、第1入力信号VSに基づいて、表示パネル2の各画素Pixにどのような階調値を与えるかを定める信号である。言い換えると、第2入力信号VCSは、各画素Pixの階調値に関する階調情報を含む信号である。
【0020】
信号調整部413は、第2入力信号VCSから第3入力信号VCSAを生成する。信号調整部413は、第3入力信号VCSAを画素制御回路42へ送出し、光源制御信号LCSAを光源制御回路32へ送出する。光源制御信号LCSAは、例えば、画素Pixへの入力階調値に応じて設定される発光部31の光量の情報を含む信号である。例えば、暗い画像が表示される場合、発光部31の光量は小さく設定される。明るい画像が表示される場合、発光部31の光量は大きく設定される。
【0021】
そして、画素制御回路42は、第3入力信号VCSAに基づいて水平駆動信号HDSと垂直駆動信号VDSとを生成する。本実施形態では、フィールドシーケンシャル方式で駆動されるので、水平駆動信号HDSと垂直駆動信号VDSとが発光部31が発光可能な色毎に生成される。
【0022】
ゲート駆動回路43は水平駆動信号HDSに基づいて1垂直走査期間内に表示パネル2の走査線GLを順次選択する。走査線GLの選択の順番は任意である。
【0023】
ソース駆動回路44は垂直駆動信号VDSに基づいて1水平走査期間内に表示パネル2の各信号線SLに各画素Pixの出力階調値に応じた階調信号を供給する。
【0024】
本実施形態において、表示パネル2はアクティブマトリクス型パネルである。このため、平面視でPY方向に延在する信号(ソース)線SL及びPX方向に延在する走査(ゲート)線GLを有し、信号線SLと走査線GLとの交差部にスイッチング素子Trを有する。
【0025】
スイッチング素子Trとして薄膜トランジスタが用いられる。薄膜トランジスタの例としては、ボトムゲート型トランジスタ又はトップゲート型トランジスタを用いてもよい。スイッチング素子Trとして、シングルゲート薄膜トランジスタを例示するが、ダブルゲートトランジスタでもよい。スイッチング素子Trのソース電極及びドレイン電極のうち一方は信号線SLに接続され、ゲート電極は走査線GLに接続され、ソース電極及びドレイン電極のうち他方は、後述する高分子分散型液晶LCの容量の一端に接続されている。高分子分散型液晶LCの容量は、一端がスイッチング素子Trに画素電極PEを介して接続され、他端が共通電極CEを介してコモン電位配線COMLに接続されている。また、画素電極PEと、コモン電位配線COMLに電気的に接続されている保持容量電極IOとの間には、保持容量HCが生じる。なお、コモン電位配線COMLは、共通電位駆動回路45より供給される。
【0026】
発光部31は、第1色(例えば、赤色)の発光体33Rと、第2色(例えば、緑色)の発光体33Gと、第3色(例えば、青色)の発光体33Bを備えている。光源制御回路32は、光源制御信号LCSAに基づいて、第1色の発光体33R、第2色の発光体33G及び第3色の発光体33Bのそれぞれを時分割で発光するように制御する。このように、第1色の発光体33R、第2色の発光体33G及び第3色の発光体33Bは、フィールドシーケンシャル方式で駆動される。
【0027】
図3に示すように、第1サブフレーム(第1所定時間)RFにおいて、第1色の発光期間RONで第1色の発光体33Rが発光するとともに、1垂直走査期間GateScan内に選択された画素Pixが光を散乱させて表示する。表示パネル2全体では、1垂直走査期間GateScan内に選択された画素Pixに、上述した各信号線SLに各画素Pixの出力階調値に応じた階調信号が供給されていれば、第1色の発光期間RONにおいて第1色のみ点灯している。
【0028】
次に、第2サブフレーム(第2所定時間)GFにおいて、第2色の発光期間GONで第2色の発光体33Gが発光するとともに、1垂直走査期間GateScan内に選択された画素Pixが光を散乱させて表示する。表示パネル2全体では、1垂直走査期間GateScan内に選択された画素Pixに、上述した各信号線SLに各画素Pixの出力階調値に応じた階調信号が供給されていれば、第2色の発光期間GONにおいて第2色のみ点灯している。
【0029】
さらに、第3サブフレーム(第3所定時間)BFにおいて、第3色の発光期間BONで第3色の発光体33Bが発光するとともに、1垂直走査期間GateScan内に選択された画素Pixが光を散乱させて表示する。表示パネル2全体では、1垂直走査期間GateScan内に選択された画素Pixに、上述した各信号線SLに各画素Pixの出力階調値に応じた階調信号が供給されていれば、第3色の発光期間BONにおいて第3色のみ点灯している。
【0030】
人間の眼には、時間的な分解能の制限があり、残像が発生するので、1フレーム(1F)の期間に3色の合成された画像が認識される。フィールドシーケンシャル方式では、カラーフィルタを不要とすることができ、カラーフィルタでの吸収ロスが低減するので、高い透過率が実現できる。カラーフィルタ方式では、第1色、第2色、第3色毎に画素Pixを分割したサブピクセルで一画素を作るのに対し、フィールドシーケンシャル方式では、このようなサブピクセル分割をしなくてもよい。なお、第4サブフレームをさらに有し、第1色、第2色及び第3色とは異なる第4色を発光するようにしてもよい。
【0031】
図4は、画素電極への印加電圧と画素の散乱状態との関係を示す説明図である。
図5は、
図1の表示装置の断面の一例を示す断面図である。
図6は、
図1の表示装置の平面を示す平面図である。
図5は、
図6のV-V’断面である。
【0032】
1垂直走査期間GateScan内に選択された画素Pixに、上述した各信号線SLに各画素Pixの出力階調値に応じた階調信号が供給されていれば、階調信号に応じて画素電極PEへの印加電圧が変わる。画素電極PEへの印加電圧が変わると、画素電極PEと、共通電極CEとの間の電圧が変化する。そして、
図4に示すように、画素電極PEへの印加電圧に応じて、画素Pix毎の液晶層50の散乱状態が制御され、画素Pix内の散乱割合が変化する。
【0033】
図4に示すように、画素電極PEへの印加電圧が飽和電圧Vsat以上となると、画素Pix内の散乱割合の変化が小さくなる。そこで、駆動回路4は、飽和電圧Vsatよりも低い電圧範囲Vdrにおいて、垂直駆動信号VDSに応じた画素電極PEへの印加電圧を変化させる。
【0034】
図5及び
図6に示すように、アレイ基板10は、第1主面10A、第2主面10B、第1側面10C、第2側面10D、第3側面10E及び第4側面10Fを備える。第1主面10Aと第2主面10Bとは、平行な平面である。また、第1側面10Cと第2側面10Dとは、平行な平面である。第3側面10Eと第4側面10Fとは、平行な平面である。
【0035】
図5及び
図6に示すように、対向基板20は、第1主面20A、第2主面20B、第1側面20C、第2側面20D、第3側面20E及び第4側面20Fを備える。第1主面20Aと第2主面20Bとは、平行な平面である。第1側面20Cと第2側面20Dとは、平行な平面である。第3側面20Eと第4側面20Fとは、平行な平面である。
【0036】
図5及び
図6に示すように、光源3は、対向基板20の第2側面20Dに対向する。光源3は、サイド光源と呼ばれることもある。
図5に示すように、光源3は、対向基板20の第2側面20Dへ光源光Lを照射する。光源3と対向する対向基板20の第2側面20Dは、光入射面となる。
【0037】
図5に示すように、光源3から照射された光源光Lは、アレイ基板10の第1主面10A及び対向基板20の第1主面20Aで反射しながら、第2側面20Dから遠ざかる方向(PY方向)に伝播する。アレイ基板10の第1主面10A又は対向基板20の第1主面20Aから外部へ光源光Lが向かうと、屈折率の大きな媒質から屈折率の小さな媒質へ進むことになるので、光源光Lがアレイ基板10の第1主面10A又は対向基板20の第1主面20Aへ入射する入射角が臨界角よりも大きければ、光源光Lがアレイ基板10の第1主面10A又は対向基板20の第1主面20Aで全反射する。
【0038】
図5に示すように、アレイ基板10及び対向基板20の内部を伝播した光源光Lは、散乱状態となっている液晶分子がある画素Pixで散乱され、散乱光の入射角が臨界角よりも小さな角度となって、放射光68、68Aがそれぞれ対向基板20の第1主面20A、アレイ基板10の第1主面10Aから外部に放射される。対向基板20の第1主面20A、アレイ基板10の第1主面10Aからそれぞれ外部に放射された放射光68、68Aは、観察者に観察される。
【0039】
次に、表示パネル2を構成するアレイ基板10、対向基板20及び液晶層50について説明する。
図7は、
図5の液晶層部分を拡大した拡大断面図である。この
図7では、モノマーが重合した後の状態の液晶層を示す。また、
図7では、非散乱状態の液晶層を示している。
図8は、液晶層においてモノマーが重合前の状態を示す断面図である。
図9は、液晶層において散乱状態を説明するための断面図である。
【0040】
図7に示すように、アレイ基板10は、第1透光性基材19と画素電極PEと第1配向膜(配向膜)AL1とを有している。対向基板20は、第2透光性基材29と共通電極CEと第2配向膜(配向膜)AL2とを有している。液晶層50は、第1配向膜AL1と第2配向膜AL2との間に封止されている。
【0041】
第1透光性基材19及び第2透光性基材29は、例えばガラスやポリエチレンテレフタレートなどの透光性を有する材料で形成されている。画素電極PEと共通電極CEは、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透光性を有する導電材料によって形成されている。第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2は、液晶層50中の液晶分子52(後述する)を所定の方向に配向させるものであり、ポリイミドなどの透光性を有する配向膜材料によって形成されている。本実施形態では、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2は、表面(液晶層50と接する面)に、例えばラビング処理(ラビング配向処理)が施されることにより水平配向膜となっている。ラビング処理とは、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の各表面を布等で一方向に沿って擦ることで該表面に異方性を生じさせ、液晶配向性を付与することをいう。第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の具体的構成については後述する。
【0042】
図8に示すように、第1配向膜AL1と第2配向膜AL2との間には、光架橋性のモノマー51Aと、液晶分子52と、光重合開始剤53とを複数含む溶液LC´が注入されている。これらモノマー51A及び液晶分子52は、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の各ラビング処理により、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2(アレイ基板10及び対向基板20)の間で一様に概ね水平方向にホモジニアス配向されている。ここで、溶液LC´を注入後のODF用の光照射時には、アレイ基板10と対向基板20とをシールするシール部(不図示)以外に光が照射されないようにマスク露光をすることが好ましい。
【0043】
次に、モノマー51A及び液晶分子52がホモジニアス配向された状態で、水銀ランプの輝線やLED光源を用いて、光重合開始剤53の吸収波長の光(例えば、i線、g線、h線などの紫外線)を照射する。この場合、アレイ基板10は、比較的凹凸などの段差が大きいため、この段差への対応を要するアレイ基板10側からよりも、平坦な対向基板20側から紫外線を照射することが好ましい。これにより、光透過性が低いブラックマトリックス(BM)や、アレイ基板10の配線上の光架橋反応も問題なく進めることが可能となる。
【0044】
本実施形態では、モノマー51Aとして、式(1)に示す光架橋性を有するアクリレート系の材料を用いることができる。式(1)のモノマーは、左右端部にそれぞれ光架橋基としての機能を有するアクリレート基を有している。
【0045】
【0046】
上記した紫外線照射により、溶液LC´中の光重合開始剤53が光を吸収し、ラジカルを生成するため、溶液LC´中のモノマー51A同士が架橋反応して重合する。なお、モノマー51Aとしては、上記した式(1)に示すものに限らず、式(2-1)~式(2-4)に示すアクリレート基や、式(2-5)~式(2-8)に示すマレイミド基のような光架橋性を有する各材料を用いることができる。
【0047】
【0048】
液晶分子52は、誘電率異方性Δεがポジ型に形成されたネマチック液晶材料が用いられる。液晶材料として、誘電率異方性Δεがポジ型の場合には、屈折率異方性Δnが大きな液晶組成物(液晶分子52)が望ましく、液晶分子52に加えて、光架橋性のモノマー51Aと光重合開始剤53とが含まれている。
【0049】
光重合開始剤53は、所定波長の紫外線照射により、ラジカルを発生してモノマー51Aの重合を開始させるものである。この光重合開始剤53は、使用する紫外線波長に適したものを選択して使用することができ、例えば、以下の中から1つを使用することができる。
【0050】
(±)-カンファーキノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、4-ベンゾイル安息香酸、2-ベンゾイル安息香酸、2-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4´-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´-ジクロロベンゾフェノン、1,4-ジベンゾイルベンゼン、ベンジル、p-アニシル、2-ベンゾイル-2-プロパノール、2-ヒドロキシ-4´-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、1-ベンジルシクロヘキサノール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、o-トシルベンゾイン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-4´-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4´-モノホリノブチロフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、2,2´-ビス(2-クロロフェニル)-4,4,5,5´-テトラフェニル-1,2´-ビイミダゾール、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム。
【0051】
上記したモノマー51Aの光架橋(重合)反応により、
図7に示すように、3次元の網目状のポリマーネットワーク51が形成される。これにより、ポリマーネットワーク51の隙間に液晶分子52が分散されたリバースモードの高分子分散型液晶LCを有する液晶層50が形成される。
【0052】
ところで、通常、モノマーを重合させてポリマーネットワークを形成した場合、このポリマーネットワークは、何ら固定されておらず液晶層中を浮遊している。このため、例えば、表示パネルの画面の点押しや落下衝撃などを繰り返すことで、液晶層のポリマーネットワークが不可逆的に移動することにより液晶分子の配向に乱れが生じる。このため、表示パネルの画面中央付近に、むらが発生してコントラストが低下する事態が生じ、表示装置(表示パネル)の耐衝撃性の向上が要望されていた。
【0053】
本実施形態では、ポリマーネットワーク51の末端(一部)が、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2に連結されている。このため、ポリマーネットワーク51は、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2を介して、アレイ基板10及び対向基板20に固定される。これにより、液晶層50を含む表示パネル2の耐衝撃性が向上し、信頼性が向上する。なお、ポリマーネットワーク51の末端(一部)は、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2のいずれか一方に連結する構成としてもよい。
【0054】
次に、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の構成について説明する。本実施形態では、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2は、可視領域で透明な配向膜が望ましくポリイミドによって形成されている。ポリイミドは、ポリアミド酸(ポリアミド酸化合物を含む)を加熱してイミド化することにより得ることができる。このため、液状のポリアミド酸を画素電極PE及び共通電極CEの表面にそれぞれスピンコートなどによって塗布し、これをイミド化することにより第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2が形成される。ポリアミド酸は、テトラカルボン酸化合物(テトラカルボン酸二無水物)とジアミン化合物とを反応させることによって合成することができる。このため、ポリイミドは、式(3)で示すように、テトラカルボン酸二無水物由来の骨格とジアミン化合物由来の骨格とを有して形成される。
【0055】
【0056】
この式(3)において、テトラカルボン酸二無水物由来の骨格が有するR1は、例えば、シクロブタン骨格、シクロブタン骨格以外の脂環式骨格、または鎖式骨格とすることができる。また、ジアミン化合物由来の骨格が有するR2は、例えば、シクロブタン骨格以外の脂環式骨格、または鎖式骨格とすることができる。ここで、シクロブタン骨格以外の脂環式骨格としては、例えばシクロへプタン骨格やシクロヘキサン骨格などが例示される。一方、脂環式骨格として、芳香族化合物も使用可能であるが、ポリイミドの着色が少ないものが望ましい。
【0057】
本実施形態では、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の材料(配向膜材料)であるポリイミドは、光架橋基Xを該ポリイミドの側鎖に有する。具体的には、ジアミン化合物由来の骨格を形成する上記したR2にエーテル結合を介して、光架橋基Xが設けられている。また、エーテル結合の代わりにエステル結合を介して光架橋基Xを設けてもよい。すなわち、ポリイミドを構成するジアミン化合物が光架橋基Xを有する。この光架橋基Xは、上記したモノマー51Aの光架橋(重合)反応の際に、モノマー51Aと反応し、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2とポリマーネットワーク51(ポリマー繊維)とをそれぞれ連結する。これにより、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2とポリマーネットワーク51とが強固に連結されるため、液晶層50を含む表示パネル2の耐衝撃性が向上し、信頼性が向上する。
【0058】
光架橋基Xは、式(4)に示すように、例えば、アクリレート基を設けることができる。この場合、式(4)に示すRは、光架橋基が連結される基を意味しているが、上記したエーテル結合またはエステル結合を含むものとする。
【0059】
【0060】
この構成では、ジアミン化合物由来の骨格が有するR2にエーテル結合またはエステル結合を介して光架橋基Xを設けておくことにより、該光架橋基Xを含むポリイミドからなる第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2を容易に形成することができ、これら第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2とポリマーネットワーク51との連結を容易に実行することができる。また、光架橋基Xは、ポリイミドの側鎖に設けられているため、ポリマー主鎖に設けられている場合に比べて配向の自由度が高く、ポリマーネットワーク51の形成時に、光架橋基Xと光架橋性のモノマー51Aとの光架橋(重合)反応の効率を高めることができる。
【0061】
また、光架橋基Xは、アクリレート基に限るものではなく、式(5-1)~式(5-5)に示すような、メタクリレート基、桂皮酸基、マレイミド基、フェニルジアジリン、フェニルアジドのうち少なくとも1種をポリイミドの側鎖に設けてもよい。なお、これらの光架橋基Xは、ポリイミドの主鎖に設けても良いし、側鎖または主鎖の末端に設けてもよい。
【0062】
【0063】
次に、別の構成を有するポリイミドについて説明する。上記には、側鎖に光架橋基Xを有するポリイミドの構成を説明したが、ポリイミドの主鎖に光架橋基を有する構成を採用することもできる。具体的には、式(3)における、テトラカルボン酸二無水物由来の骨格が有するR1に光架橋基として、式(6-1)に示すジアゾ基を有するポリイミドや、式(6-2)に示すベンゾフェノン基を有するポリイミドを採用することができる。この式(6-1)、(6-2)において、Etはエチル基を示す。また、式(6-1)、(6-2)に示す構造式は例示であり、ジアゾ基またはベンゾフェノン基を有するポリイミドであれば、他の構成としてもよい。
【0064】
【0065】
この構成では、ポリイミドがそもそも光架橋基として機能する官能基を有するため、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2とポリマーネットワーク51との連結を容易に実行することができる。また、光架橋基はポリイミドの主鎖に設けられているため、ポリマーネットワーク51と連結されると該ポリマーネットワーク51が動きにくくなり、固定化することができる。
【0066】
上記した構成において、ポリマーネットワーク51及び液晶分子52は、それぞれ光学異方性を有している。液晶分子52の配向は、画素電極PEと共通電極CEとの間の電圧差によって制御される。画素電極PEへの印加電圧により、液晶分子52の配向が変化する。液晶分子52の配向が変化することにより、画素Pix(画素電極PE上の領域)を通過する光の散乱の度合いが変化する。
【0067】
例えば、
図7に示すように、画素電極PEと共通電極CEとの間に電圧が印加されていない状態では、ポリマーネットワーク51の光軸Ax1と液晶分子52の光軸Ax2の向きは互いに概ね等しい。液晶分子52の光軸Ax2は、液晶層50のPY方向(
図5)と平行である。またポリマーネットワーク51の光軸Ax1は、電圧の有無に関わらず、液晶層50のPY方向と平行である。
【0068】
ポリマーネットワーク51と液晶分子52の常光屈折率は互いに等しい。画素電極PEと共通電極CEとの間に電圧が印加されていない状態では、あらゆる方向においてポリマーネットワーク51と液晶分子52との間の屈折率差がほぼゼロになる。液晶層50は、光源光L(
図5)を散乱しない非散乱状態となる。光源光Lは、
図5に示すように、アレイ基板10の第1主面10A及び対向基板20の第1主面20Aで反射しながら、光源3(発光部31)から遠ざかる方向に伝播する。液晶層50が光源光Lを散乱しない非散乱状態であると、アレイ基板10の第1主面10Aから対向基板20の第1主面20A側の背景が視認され、対向基板20の第1主面20Aからアレイ基板10の第1主面10A側の背景が視認される。
【0069】
図9に示すように、電圧が印加された画素電極PEと共通電極CEとの間では、液晶分子52の光軸Ax2は、画素電極PEと共通電極CEとの間に発生する電界によって傾くことになる。ポリマーネットワーク51の光軸Ax1は、電界によって変化しないため、ポリマーネットワーク51の光軸Ax1と液晶分子52の光軸Ax2の向きは互いに異なる。電圧が印加された画素電極PEがある画素Pixにおいて、光源光Lが散乱される。上述したように散乱された光源光Lの一部がアレイ基板10の第1主面10A又は対向基板20の第1主面20Aから外部に放射された光は、観察者に観察される。
【0070】
電圧が印加されていない画素電極PEがある画素Pixでは、アレイ基板10の第1主面10Aから対向基板20の第1主面20A側の背景が視認され、対向基板20の第1主面20Aからアレイ基板10の第1主面10A側の背景が視認される。そして、本実施形態の表示装置1は、画像出力部91から第1入力信号VSが入力されると、画像が表示される画素Pixの画素電極PEに電圧が印加され、第3入力信号VCSAに基づく画像が背景とともに視認される。このように、高分子分散型液晶LCが散乱状態にあるとき、表示領域において画像が表示される。
【0071】
電圧が印加された画素電極PEがある画素Pixにおいて光源光Lが散乱されて外部に放射された光によって表示された画像は、背景に重なり、表示されることになる。換言すると、本実施形態の表示装置1は、放射光68又は放射光68Aと、背景との組み合わせにより、画像を背景に重ね合わせて表示することができる。
【0072】
本実施形態の効果を確認するために、上記した光架橋基Xを有するポリイミドからなる第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2をそれぞれ設けた表示パネルと、光架橋基を有しないポリイミドからなる第1配向膜及び第2配向膜をそれぞれ設けた表示パネルとを作成した。光架橋基の有無以外は同一の構成とした。
【0073】
作成した各表示パネルに対して耐衝撃試験を行った。耐衝撃試験は、表示パネルの一辺の下に棒状の支持具を挿入して表示パネルを浮かせた状態を作り、上面側から表示パネルの略中央部を所定の力(例えば10kPa)で所定回数(例えば5~10回)、繰り返し点押しする。この結果、光架橋基Xを有しない第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2を設けた表示パネルでは、画面中央付近に、表示パネルのコントラストが低下する、むら不良(例えば白むら)が発生したのに対し、光架橋基Xを有する第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2を設けた表示パネルでは、このようなコントラストの低下がほとんど無く、表示パネル(透明ディスプレイ)の耐衝撃性の向上が認められた。
【0074】
(実施形態2)
図10は、実施形態2の液晶層においてモノマーが重合前の状態を示す断面図である。
図11は、液晶層において非散乱状態を説明するための断面図である。
図12は、液晶層において散乱状態を説明するための断面図である。
図11、12では、モノマーが重合した後の状態の液晶層を示している。上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0075】
本実施形態では、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2は、表面(液晶層50と接する面)に、例えばラビング処理(ラビング配向処理)が施されることにより垂直配向膜となっている。また、
図10に示すように、第1配向膜AL1と第2配向膜AL2との間には、光架橋性のモノマー51Aと、液晶分子52と、光重合開始剤53とを複数含む溶液LC´が注入されている。この液晶分子52は、誘電率異方性Δεがネガ型に形成されたネマチック液晶材料が用いられる。また、モノマー51A、光重合開始剤53には、実施形態1と同一な材料を使用することができる。これらモノマー51A及び液晶分子52は、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の各ラビング処理により、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2(アレイ基板10及び対向基板20)の間で、一様に概ね垂直方向にホメオトロピック配向されている。また、電界印加時の液晶分子52の傾き方向を面内で規定するために、ラビング処理によりプレチルト角85度~88度を付与している。その際のラビング方向は、高い散乱強度が得られることから、光源光Lの伝搬方向に直交方向が好ましい。この状態で上記した実施形態1と同様に、所定波長の紫外線を照射すると、上記したモノマー51Aの光架橋(重合)反応により、
図11に示すように、3次元の網目状のポリマーネットワーク51が形成される。これにより、ポリマーネットワーク51の隙間に液晶分子52が分散されたリバースモードの高分子分散型液晶LCを有する液晶層50が形成される。
【0076】
また、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2にも、上記実施形態1と同一の配向膜材料(ポリイミド)を使用することができる。さらに、本実施形態では、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2が垂直配向膜であることを考慮して、式(7)に示すポリイミドを用いることが好ましい。式(7)のポリイミドは、側鎖の末端に光架橋基Xであるアクリレート基が設けられているが、このアクリレート基は、エーテル基に鎖式骨格であるR3を介して接続されている。このR3は、長鎖アルキル基((CH2)n;n=1~12)であり、特にn=6~12とし、さらに長鎖アルキル基の密度が高まるほど、液晶分子52のプレチルト角が大きくなり易くなるため、垂直配向膜とする場合に有効である。
【0077】
【0078】
本実施形態においても、液晶分子52の配向は、画素電極PEと共通電極CEとの間の電圧差によって制御される。例えば、
図11に示すように、画素電極PEと共通電極CEとの間に電圧が印加されていない状態では、ポリマーネットワーク51の光軸Ax1と液晶分子52の光軸Ax2の向きは互いに概ね等しい。液晶分子52の光軸Ax2は、液晶層50のPZ方向(
図5)と平行である。またポリマーネットワーク51の光軸Ax1は、電圧の有無に関わらず、液晶層50のPZ方向と平行である。
【0079】
画素電極PEと共通電極CEとの間に電圧が印加されていない状態では、あらゆる方向においてポリマーネットワーク51と液晶分子52との間の屈折率差がゼロになる。このため、液晶層50は、光源光L(
図5)を散乱しない非散乱状態となる。液晶層50が光源光Lを散乱しない非散乱状態であると、アレイ基板10の第1主面10Aから対向基板20の第1主面20A側の背景が視認され、対向基板20の第1主面20Aからアレイ基板10の第1主面10A側の背景が視認される。
【0080】
図12に示すように、電圧が印加された画素電極PEと共通電極CEとの間では、液晶分子52の光軸Ax2は、画素電極PEと共通電極CEとの間に発生する電界によって傾くことになる。ポリマーネットワーク51の光軸Ax1は、電界によって変化しないため、ポリマーネットワーク51の光軸Ax1と液晶分子52の光軸Ax2の向きは互いに異なる。電圧が印加された画素電極PEがある画素Pixにおいて、光源光Lが散乱される。上述したように散乱された光源光Lの一部がアレイ基板10の第1主面10A又は対向基板20の第1主面20Aから外部に放射された光は、観察者に観察される。
【0081】
電圧が印加されていない画素電極PEがある画素Pixでは、アレイ基板10の第1主面10Aから対向基板20の第1主面20A側の背景が視認され、対向基板20の第1主面20Aからアレイ基板10の第1主面10A側の背景が視認される。そして、本実施形態の表示装置1は、画像出力部91から第1入力信号VSが入力されると、画像が表示される画素Pixの画素電極PEに電圧が印加され、第3入力信号VCSAに基づく画像が背景とともに視認される。このように、高分子分散型液晶LCが散乱状態にあるとき、表示領域において画像が表示される。
【0082】
電圧が印加された画素電極PEがある画素Pixにおいて光源光Lが散乱されて外部に放射された光によって表示された画像は、背景に重なり、表示されることになる。換言すると、本実施形態の表示装置1は、放射光68又は放射光68Aと、背景との組み合わせにより、画像を背景に重ね合わせて表示することができる。
【0083】
本実施形態においても、上記した耐衝撃試験を行った結果、光架橋基Xを有しない第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2を設けた表示パネルでは、画面中央付近に、表示パネルのコントラストが低下する、むら不良が発生したのに対し、光架橋基Xを有する第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2を設けた表示パネルでは、このようなコントラストの低下がほとんど無く、表示パネル(透明ディスプレイ)の耐衝撃性の向上が認められた。
【0084】
(実施形態3)
この実施形態3では、上記した実施形態1と構成は概ね同一である。このため、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。この実施形態3においても、ポリマーネットワーク51を構成するモノマー51A、液晶分子52、光重合開始剤53、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2には、上記した実施形態と同一の材料を用いることができる。
【0085】
本実施形態においても、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2は水平配向膜であり、液晶分子52はポジ型のネマチック液晶である。実施形態1との違いは、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の表面にラビング処理が施されるのではなく光配向処理が施されている。光配向処理とは、直線偏光紫外線を第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の各表面に照射することによって、偏光方向の高分子鎖を選択的に反応させ、これによって異方性を発生させて液晶配向性を付与することをいう。
【0086】
この場合、光配向処理に用いる直線偏向紫外線は、溶液LC´に含まれる光重合開始剤53による光重合反応に用いる紫外線とは異なる波長を用いることが望ましい。一方で、主にラジカル反応を用いる上記した光架橋基とは異なる光反応である、例えば光分解型や光異性化型に基づく光配向膜の場合には、ほぼ同じ波長の光(紫外線)を用いても構わない。例えば、光分解型の光配向膜の材料として、式(8)に示す繰り返し骨格を含むポリイミド(配向膜材料)が挙げられる。このポリイミドの表面に直線偏光紫外線を照射すると、該直線偏光紫外線の偏光方向に沿って配向した分子が優先的に分解する。液晶分子52は、分解されずに残存したポリイミド分子とその界面で相互作用する結果、液晶分子52及びモノマー51Aは、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2(アレイ基板10及び対向基板20)の間で一様に概ね水平方向にホモジニアス配向される。
【0087】
【0088】
また、例えば、光異性化型の光配向膜の材料として、式(9)に示すアゾベンゼン骨格のような光によるシス-トランス異性化が可能な骨格を、ポリイミドの構成要素であるジアミン化合物の一部に含むポリイミド(配向膜材料)が挙げられる。なお、光異性化型の光配向膜の材料は、スチルベン骨格をジアミン化合物の一部に含むポリイミドであってもよい。
【0089】
【0090】
本実施形態においても、上記した耐衝撃試験を行った結果、光架橋基Xを有しない第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2を設けた表示パネルでは、画面中央付近に、表示パネルのコントラストが低下する、むら不良が発生したのに対し、光架橋基Xを有する第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2を設けた表示パネルでは、このようなコントラストの低下がほとんど無く、表示パネル(透明ディスプレイ)の耐衝撃性の向上が認められた。
【0091】
以上、好適な実施の形態を説明したが、本開示はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0092】
例えば、上記実施形態では、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の配向膜材料としてポリアミド酸のイミド化からなるポリイミドを採用した構成を説明したが、これに限るものではなく、式(10)に示すポリアミドイミドを採用してもよい。
【0093】
【0094】
式(10)において、R4は、例えば芳香族化合物を示す。この芳香族化合物にエーテル基を介して光架橋基Xが設けられている。このため、ポリアミドイミドを用いた第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2であっても、光重合反応時にポリマーネットワーク51と第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2とが強固に連結されるため、液晶層50を含む表示パネル2の耐衝撃性が向上し、信頼性が向上する。
【0095】
また、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の配向膜材料として、可溶性ポリイミドを採用することもできる。可溶性ポリイミドは溶剤に溶かして使用することができるため、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の生成が容易となる。この可溶性ポリイミドにも、上記した式(3)のジアミン化合物由来の骨格が有するR2にエーテル結合またはエステル結合を介して光架橋基Xを設けられている。このため、光架橋基Xを含むポリイミドからなる第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2を容易に形成することができ、これら第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2とポリマーネットワーク51との連結を容易に実行することができる。
【0096】
また上記実施形態では、表示パネル2厚み方向に縦電界を印加する場合を説明したが、これに限らず一方の基板(例えばアレイ基板10)上に、櫛歯状に形成された櫛歯電極を形成して横電界を印加する構成としてもよい。この構成によっても、縦電界を印加する場合と同等の作用効果を得ることができる。
【0097】
以上、好適な実施の形態を説明したが、本開示はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0098】
1 表示装置(液晶表示装置)
2 表示パネル
3 光源
10 アレイ基板(第1透光性基板)
20 対向基板(第2透光性基板)
31 発光部
50 液晶層
51 ポリマーネットワーク
51A モノマー
52 液晶分子
53 光重合開始剤
AL1 第1配向膜(配向膜)
AL2 第2配向膜(配向膜)
CE 共通電極
PE 画素電極
LC 高分子分散型液晶
LC´ 溶液