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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015479
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】管状杭
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/56 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
E02D5/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118343
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】518444831
【氏名又は名称】株式会社刃
(74)【代理人】
【識別番号】100081352
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一
(74)【代理人】
【識別番号】100182383
【弁理士】
【氏名又は名称】戸原 健太
(72)【発明者】
【氏名】西野 康宏
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA33
2D041BA44
2D041CA05
2D041CB01
2D041CB06
2D041FA14
(57)【要約】
【課題】地中に埋設される管状杭としてのコストを低減させる。
【解決手段】一端から他端に向けて延びる円筒形状の本体部と、前記本体部の外周面に沿って該本体部の一端側から他端側に向けて螺旋状に取り付けられた板状の部材であり、該部材が前記本体部の延びる方向と交差する平面視で前記本体部を扇状に取り囲んでなる羽根部と、前記本体部における一端を、該本体部の延びる方向と交差する面に沿って閉鎖する板状の部材であり、前記本体部よりも大径の円形をなすことによって、前記本体部の一端にフランジを形成する蓋部と、前記本体部の内側に収められて該本体部と同じ方向に延びる板状の部材であり、該部材の一端が前記蓋部に固定される一方、他端側が前記本体部の他端から突出してなる掘削刃と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端から他端に向けて延びる円筒形状の本体部と、
前記本体部の外周面に沿って該本体部の一端側から他端側に向けて螺旋状に取り付けられた板状の部材であり、該部材が前記本体部の延びる方向と交差する平面視で前記本体部を扇状に取り囲んでなる羽根部と、
前記本体部における一端を、該本体部の延びる方向と交差する面に沿って閉鎖する板状の部材であり、前記本体部よりも大径の円形をなすことによって、前記本体部の一端にフランジを形成する蓋部と、
前記本体部の内側に収められて該本体部と同じ方向に延びる板状の部材であり、該部材の一端が前記蓋部に固定される一方、他端側が前記本体部の他端から突出してなる掘削刃と、
前記蓋部における前記本体部と反対側の面に連結される管状部材と、を備え、
前記羽根部は、前記本体部の一端から他端側に向けて所定距離だけ離間した位置と、前記本体部の他端側と、の間にわたって設けられており、
前記本体部は、該本体部の延びる方向に沿った前記羽根部の一端と他端との間に挟まれた範囲の長さが、該方向に沿って前記本体部の一端から前記羽根部の一端に到達するまでの距離の1.7倍以上となる位置関係で前記羽根部が取り付けられており、
前記蓋部は、前記本体部の延びる方向と交差する平面視で、前記本体部を扇状に取り囲む前記羽根部の外径よりも小径の円形をなし、かつ、部材としての円形の外径が前記本体部のなす円筒の外径よりも10%以上大きくなるように形成されており、
前記掘削刃は、前記本体部の延びる方向と交差する平面視で、前記本体部における円筒形状の中心軸と重なる中心領域と、該中心領域からそれぞれ反対方向に延びて前記本体部の内周面に到達する端部領域と、を有している、
管状杭。
【請求項2】
前記本体部は、該本体部のなす円筒の外径(D1)と、当該本体部の延びる方向に沿った一端から他端までの長さ(L1)と、の比(D1/L1)が、0.9以上となっている、
請求項1に記載の管状杭。
【請求項3】
前記羽根部は、前記本体部の延びる方向と交差する平面視で、前記本体部を取り囲む扇状の領域における外径が、前記本体部のなす円筒の外径の2倍以上である、
請求項1または請求項2に記載の管状杭。
【請求項4】
前記掘削刃は、前記本体部の延びる方向と交差する平面視で、前記中心領域から前記端部領域が延びる方向に沿った直線が前記羽根部の他端と重なる位置関係で固定されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の管状杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設される管状杭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、円筒形状の杭本体に螺旋状の羽根部を設けた管状杭を用い、この管状杭を回転させつつ地面を掘削させることで地中に埋設することが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5260459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただ、上記のような管状杭では、その断面の径に応じて材料としてのコストが高くなるところ、管状杭が全体として同じ径で構成されていることから、杭として長くなるほど、つまり地中における埋設位置が深くなるほど、材料のコストを含めて掘削に要するコストが上昇してしまう。つまり、現状では、必要な掘削能力に応じて、掘削に要するコストの高い手段を選択せざるを得ず、掘削の手段についての選択の余地が狭いという点が課題となっている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、管状杭による掘削の手段についての選択の余地を拡げるための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明の第1局面は、一端から他端に向けて延びる円筒形状の本体部と、前記本体部の外周面に沿って該本体部の一端側から他端側に向けて螺旋状に取り付けられた板状の部材であり、該部材が前記本体部の延びる方向と交差する平面視で前記本体部を扇状に取り囲んでなる羽根部と、前記本体部における一端を、該本体部の延びる方向と交差する面に沿って閉鎖する板状の部材であり、前記本体部よりも大径の円形をなすことによって、前記本体部の一端にフランジを形成する蓋部と、前記本体部の内側に収められて該本体部と同じ方向に延びる板状の部材であり、該部材の一端が前記蓋部に固定される一方、他端側が前記本体部の他端から突出してなる掘削刃と、前記蓋部における前記本体部と反対側の面に連結される管状部材と、を備え、前記羽根部は、前記本体部の一端から他端側に向けて所定距離だけ離間した位置と、前記本体部の他端側と、の間にわたって設けられており、前記本体部は、該本体部の延びる方向に沿った前記羽根部の一端と他端との間に挟まれた範囲の長さが、該方向に沿って前記本体部の一端から前記羽根部の一端に到達するまでの距離の2倍以上となる位置関係で前記羽根部が取り付けられており、前記蓋部は、前記本体部の延びる方向と交差する平面視で、前記本体部を扇状に取り囲む前記羽根部の外径よりも小径の円形をなし、かつ、部材としての円形の外径が前記本体部のなす円筒の外径よりも10%以上大きくなるように形成されており、前記掘削刃は、前記本体部の延びる方向と交差する平面視で、前記本体部における円筒形状の中心軸と重なる中心領域と、該中心領域からそれぞれ反対方向に延びて前記本体部の内周面に到達する端部領域と、を有している、管状杭である。
【0007】
また、上記局面の管状杭は、第2局面のようにしてもよい。
第2局面において、前記本体部は、該本体部のなす円筒の外径(D1)と、当該本体部の延びる方向に沿った一端から他端までの長さ(L1)と、の比(D1/L1)が、0.9以上となっている。
【0008】
また、上記各局面の管状杭は、第3局面のようにしてもよい。
第3局面において、前記羽根部は、前記本体部の延びる方向と交差する平面視で、前記本体部を取り囲む扇状の領域における外径が、前記本体部のなす円筒の外径の2倍以上である。
【0009】
上記各局面の管状杭では、地表および地中の掘削に際し、地中における杭としての埋設位置に応じた長さの管状部材を蓋部に連結したうえで、この管状部材を介して回転させることになるが、このとき、必要な掘削能力に応じた径の管状部材を任意に採用できるなどその選択の余地が広い。
【0010】
このとき、本体部より小径の管状部材を採用すれば、全体として同じ径の部材で杭を構成したものと比較すると、杭として長くなる、つまり地中における埋設位置が深くなるほど、そのコストを低減させることができる。
【0011】
また、管状杭では、本体部における円筒形状の中心軸で回転させると、掘削刃を含む先端側が地表および地中を掘削し、それに伴い土などの掘削物を発生させるところ、この掘削物が本体部の一端側まで到達することがある。このとき、蓋部によるフランジと羽根部とが本体部の延びる方向に離間した位置関係となっているため、本体部の一端側にまで到達した掘削物がフランジと羽根部との間に滞留してしまうことを防止することができる。
【0012】
これは、掘削物が本体部の延びる方向に沿って羽根部が設けられている範囲を通過する際に、この範囲を通過できるよう圧縮された塊になる可能性があるところ、上記管状杭では、この範囲より狭い領域に掘削物を通過させる状況を創り出すことができるため、塊となっている掘削物であってもフランジとの接触圧を高めてほぐしたり破砕することができるためである。
【0013】
このように、上記各局面の管状杭であれば、コスト低減に加えて、掘削効率(同じ条件下における掘削時間、必要なエネルギーの効率)を高めることができる。
【0014】
また、上記各局面は、以下に示す第4局面のようにしてもよい。
第4局面において、前記掘削刃は、前記本体部の延びる方向と交差する平面視で、前記中心領域から前記端部領域が延びる方向に沿った直線が前記羽根部の他端と重なる位置関係で固定されている。
【0015】
この局面の管状杭であれば、本体部において掘削時に応力の集中しうる領域が、掘削刃における端部領域により補強された状態となっているため、管状杭としての強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の管状杭を示す正面図、平面図、底面図、右側面図
図2】本実施形態における管状杭の使用状態を示す斜視図
図3】本実施形態における管状杭の正面図
図4】本実施形態における管状杭の正面図および底面図
図5】本実施形態における管状杭の要部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
【0018】
管状杭1は、図1に示すように、一端(同図正面図および左側面図の上端、以下同様)から他端(同図下端、以下同様)に向けて延びる円筒形状の本体部10と、本体部10の外周面に沿って本体部10端側から他端側に向けて螺旋状に取り付けられた板状の羽根部20と、本体部10における一端を閉鎖する板状の蓋部30と、本体部10の内側に収められて本体部10と同じ方向に延びる板状の掘削刃40と、を備える。
【0019】
この管状杭1は、蓋部30において本体部10と反対側の面が管状部材2を固定するための取付面となっており、ここに管状部材2を固定することにより、地表および地中を掘削するための杭体を構成する(図2参照)。こうして蓋部30の取付面に管状部材2を固定した状態にて管状部材2経由で回転力を管状杭1へと伝達させることにより、地表および地中の掘削が実現される。
【0020】
本体部10は、その一端から他端側に向けて所定距離だけ離間した位置と、他端から一端側に向けて所定距離だけ離間した位置との間にわたって、羽根部20が取り付けられている。これ以降の説明では、本体部10の一端から他端までの長さを「L1」、円筒の外径を「D1」、部材としての板厚を「t1」と表記する(図3参照)。
【0021】
この本体部10は、本体部10の延びる方向に沿った羽根部20における一端と他端との間に挟まれた範囲の長さ(L11)が、同じ方向に沿って本体部10の一端から羽根部20の一端に到達するまでの距離(L12)の1.7倍以上となる位置関係で羽根部20が取り付けられている。ここで、羽根部20における他端は、本体部10の一端から他端側に向けて所定距離(L13)だけ離間した位置にまで到達している。
【0022】
さらに、本体部10は、本体部10のなす円筒の外径(D1)と、本体部10の一端から他端までの長さ(L1)と、の比(D1/L1)が、0.9以上となっている。
【0023】
羽根部20は、本体部10の外周面に沿って本体部10の一端側から他端側に向けて螺旋状に取り付けられた板状の部材が、本体部10の延びる方向と交差する平面視で、本体部10を全周にわたって扇状に取り囲むように取り付けられている。これ以降の説明では、本体部10の延びる方向に沿った羽根部20における一端から他端に至る長さを「L2」、本体部10を扇状に取り囲む羽根部20の外径を「D2」、部材としての板厚を「t2」と表記する(図3参照)。
【0024】
この羽根部20は、本体部10の延びる方向と交差する平面視で、本体部10のなす扇状の領域における外径(D2)が、本体部10のなす円筒の外径(D1)の2倍以上となるように形成されている(D2≧2×D1)。
【0025】
蓋部30は、本体部10における一端を本体部10の延びる方向と交差する面に沿って閉鎖する板状の部材であり、本体部10よりも大径の円形をなすことによって、本体部10の一端にフランジ31を形成している。これ以降の説明では、蓋部30のなす円形の外径を「D3」、部材としての板厚を「t3」と表記する(図3参照)。
【0026】
この蓋部30は、本体部10の延びる方向と交差する平面視で、本体部10を扇状に取り囲む羽根部20の外径よりも小径の円形をなし、かつ、部材としての円形の外径が本体部10のなす円筒の外径よりも10%以上大きくなるように形成されている。
【0027】
本実施形態において、蓋部30は、円形の板状部材を本体部10と平面視で同心円状に配置することによって、本体部10の一端に全周にわたって同じ長さのフランジ31が形成されている。
【0028】
なお、本実施形態において、蓋部30は、本体部10の一端との接触部分に工具を近づけて溶接することにより本体部10の一端に固定される。ここでは、溶接材料による溶接部が、フランジ31と本体部10の表面とで形成される断面L字状の領域を埋めるように、かつ、管状杭1として要求される強度に応じたサイズおよび脚長を有するように形成されている。ただし、この溶接部においてフランジ31に沿って延びる脚長は、蓋部30の半径(=外径D3/2)と本体部10の半径(=外径D1/2)との差を上限として設定されている。
【0029】
掘削刃40は、本体部10の内側に収められて本体部10と同じ方向に延びる板状の部材であり、この部材の一端が蓋部30に固定される一方、他端側が本体部10の他端から突出する。これ以降の説明では、掘削刃40における板としての長手方向の長さを「L4」、板としての短手方向の長さを「D4」、部材としての板厚を「t4」と表記する(図3図4参照)。
【0030】
この掘削刃40は、図4に示すように、本体部10の延びる方向と交差する平面視で、本体部10における円筒形状の中心軸と重なる中心領域41と、中心領域41からそれぞれ反対方向に延びて本体部10の内周面に到達する端部領域43と、を有している。そして、本体部10の延びる方向と交差する平面視で、中心領域41から端部領域43が延びる方向に沿った直線45が羽根部20の他端と重なる位置関係で固定されている。
【0031】
また、この掘削刃40は、その他端が本体部10の他端から突出する3つの突起47、49で形成され、これら突起47、49が、中心領域41および端部領域43に形成されている。そして、中心領域41に形成された突起47の突出量が最も大きく、端部領域43に形成された2つの突起49が同じ突出量となっている。
【0032】
また、この掘削刃40において、端部領域43に形成された突起49は、本体部10の内周面に到達する位置において最も突出量が大きい。本実施形態において、端部領域43に形成された突起49は、掘削刃40の板状に拡がる平面視(正面図参照)で、本体部10の内周面に到達する位置を突出量の頂点とし、この位置から離れるほど突出量が減少する三角形状に形成されている。
【0033】
さらに、中心領域41に形成された突起47は、本体部10の延びる方向と交差する平面視で、本体部10における円筒形状の中心軸と重なる位置を突出量の頂点とし、この位置から離れるほど突出量が減少する三角形状に形成されている。
【0034】
なお、この掘削刃40は、図5に示すように、掘削刃40の表裏面それぞれと本体部10の内周面との間に板状の補強部材50が設けられている。この補強部材50は、蓋部30、本体部10の内周面および掘削刃40それぞれに固定されている。
【0035】
このような構成の管状杭1においては、蓋部30の部材としての厚さ(t3)が、羽根部20の部材としての厚さ(t2)以下となっている(t3≦t2)。また、羽根部20の部材としての厚さ(t2)が、本体部10における部材の厚さ(t1)より大きくなっている(t1<t2)。
【0036】
(2)管状杭の掘削試験
本出願人は、管状杭としてのコストを低減可能な管状杭として、上述したとおりに各構成要素のパラメータが異なるものを複数種類製造して掘削試験を実施している。ここで製造した管状杭は、(A)~(G)の7種類であり、それぞれの具体的なパラメータは下記のとおりである。
【0037】
【表1】
【0038】
この掘削試験では、掘削効率(同じ条件下における掘削時間、必要なエネルギーの効率)までもが良好であることが確認された。
【0039】
管状杭では、本体部における円筒形状の中心軸で回転させると、掘削刃を含む先端側が地表および地中を掘削し、それに伴い土などの掘削物を発生させるところ、この掘削物が本体部の一端側まで到達することがある。このとき、上記管状杭では、蓋部によるフランジと羽根部とが本体部の延びる方向に離間した位置関係となっていることから、本体部の一端側にまで到達した掘削物がフランジと羽根部との間に滞留してしまうことを防止できる。このことが良好な掘削効率の要因であると考えられる。
【0040】
これは、掘削物が本体部の延びる方向に沿って羽根部が設けられている範囲を通過する際に、この範囲を通過できるよう圧縮された塊になる可能性があるところ、上記管状杭では、この範囲より狭い領域に掘削物を通過させる状況を創り出すことができるため、塊となっている掘削物であってもフランジとの接触圧を高めてほぐしたり破砕することができるためである。
【0041】
このようなことから、本願出願人は、以下に示すように、これら管状杭におけるパラメータの関係を分析した結果、掘削効率を良好とする構成として上記(1)で示した構成に想到した。
【0042】
【表2】
【0043】
・本体部10の延びる方向に沿った羽根部20の一端と他端との間に挟まれた範囲L11の長さが、同じ方向に沿って本体部10の一端から羽根部20の一端に到達するまでの距離L12の1.7倍以上となっている。
【0044】
・蓋部30の外径(D3)が本体部10の外径(D1)より10%以上大きい(D3≧1.1×D1)。より具体的には、蓋部30の外径(D3)が本体部10の外径(D1)より10%~20%大きい。
【0045】
・本体部10の外径(D1)と、一端から他端までの長さ(L1)と、の比(D1/L1)が、0.9以上(D1/L1≧0.9)。より具体的には、本体部10の外径(D1)と、一端から他端までの長さ(L1)と、の比(D1/L1)が、0.9~1.6となっている。
【0046】
・蓋部の厚さ(t3)が、羽根部20の厚さ(t2)以下(t3≦t2)。
【0047】
・羽根部20の厚さ(t2)が、本体部10の厚さ(t1)より大きい。
【0048】
・羽根部20の外径D2が、本体部10の外径D1の2倍以上(D2/D1≧2)。より具体的には、羽根部20の外径D2と本体部10の外径D1との比が2.3~2.8となっている。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0050】
(3)作用,効果
上記実施形態に係る管状杭1であれば、地表および地中の掘削に際し、地中における杭としての埋設位置に応じた長さの管状部材2を蓋部に連結したうえで、この管状部材2を介して回転させることになるが、このとき、必要な掘削能力に応じた径の管状部材2を任意に採用できるなどその選択の余地が広い。
【0051】
そして、本体部10より小径の管状部材2を採用すれば、全体として同じ径の部材で杭を構成したものと比較すると、杭として長くなる、つまり地中における埋設位置が深くなるほど、そのコストを低減させることができるようになる。
【0052】
また、管状杭1では、本体部10における円筒形状の中心軸で回転させると、掘削刃40を含む先端側が地表および地中を掘削し、それに伴い土などの掘削物を発生させるところ、この掘削物が本体部10の一端側まで到達することがある。このとき、蓋部30によるフランジ31と羽根部20とが本体部10の延びる方向に離間した位置関係となっているため、本体部10の一端側にまで到達した掘削物がフランジ31と羽根部20との間に滞留してしまうことを防止することができる。これにより、上記実施形態の管状杭1であれば、上述したとおり、コスト低減に加えて、掘削効率(同じ条件下における掘削時間、必要なエネルギーの効率)を高めることができる。
【0053】
また、上記実施形態であれば、本体部10の他端と羽根部20とが本体部10の延びる方向に離間した位置関係となっていることにより、掘削刃など先端領域により地表を掘削していく過程で羽根部20より先に本体部10の他端面を地表に接触させることができる。これによって、螺旋状に設けられた羽根部20が地表に接触して掘削時の安定性を損ねてしまうようなことを防止できる。
【0054】
また、上記実施形態の管状杭1では、本体部10における円筒形状の中心軸で回転させることで、掘削刃40を含む先端側が地表および地中を掘削することになるため、その作業に際しては、回転中心となる部位を最初に接地させる必要があるが、中心軸と重なる中心領域41の突起47が最も突出量が大きく形成されているため、この突起47を接地させるだけで、地表および地中の掘削を開始できる状態とすることができる。
【0055】
また、上記実施形態であれば、本体部10において掘削時に最も応力の集中しうる領域が、掘削刃40における端部領域43により補強された状態となっているため、管状杭1としての強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…管状杭、2…管状部材、10…本体部、20…羽根部、30…蓋部、31…フランジ、40…掘削刃、41…中心領域、43…端部領域、45…直線、47…突起、49…突起、50…補強部材。
図1
図2
図3
図4
図5