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  • 特開-誤操作防止装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154791
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】誤操作防止装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20221005BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20221005BHJP
   H01H 31/10 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H02J3/00
H02J13/00 M
H01H31/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057997
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後川 知仁
(72)【発明者】
【氏名】庭 正樹
(72)【発明者】
【氏名】坂井 努
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC08
5G064CA10
5G064DA03
5G064DA05
5G066AA10
(57)【要約】
【課題】電源設備の作業者による誤操作を防止することが可能な誤操作防止装置を提供する。
【解決手段】商用電力系統からの電力が供給される通電状態と、商用電力系統から切り離される停電状態とを切り替える開閉器3と、開閉器3からの電力が入力される高電圧受電設備5の断路器51の一次側と開閉器3との間に設けられ、断路器51の一次側を接地する接地状態と、通常状態とを切り替える接地ブレーカー部10を備え、開閉器3は、接地ブレーカー部10が接地状態である場合には、停電状態から通電状態への切り替えが規制され、接地ブレーカー部10は、開閉器3が通電状態の場合には接地状態への切り替えが規制される誤操作防止装置1。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統からの電力が需要家の自家構内の電力設備に供給される通電状態と、前記電力設備が前記商用電力系統から切り離される停電状態とを切り替える開閉器と、
前記開閉器からの電力が入力される前記需要家の高電圧受電設備の断路器の一次側と前記開閉器との間に設けられ、前記断路器の一次側を接地する接地状態と、前記断路器の一次側が接地されていない通常状態とを切り替える接地ブレーカー部と、
を備え、
前記開閉器は、前記接地ブレーカー部が前記接地状態である場合には、前記停電状態から前記通電状態への切り替えが規制され、
前記接地ブレーカー部は、前記開閉器が前記通電状態の場合には前記通常状態から前記接地状態への切り替えが規制される、
誤操作防止装置。
【請求項2】
前記開閉器と前記接地ブレーカー部の切り替え操作を規制する規制スイッチを備え、
前記規制スイッチが第1状態の場合には、前記開閉器の切り替えが規制され、
前記規制スイッチが第2状態の場合には、前記接地ブレーカー部の切り替えが規制される、請求項1に記載の誤操作防止装置。
【請求項3】
前記接地ブレーカー部は、直列に接続された少なくとも2つのブレーカーから構成されている、請求項1又は請求項2に記載の誤操作防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、需要家の電源設備の作業等を行う際に、作業者による誤操作の発生を防止することを目的とする誤操作防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
需要家の電力設備の年次点検等を行うために、自家用構内を商用電力系統から切り離す際には、電力会社と需要家の責任分界点に設けられている柱上気中開閉器(PAS)によってその切り離しが行われる。そして、施設内の高圧受電盤の断路器(DS)を解放した後に、断路器の一次側に短絡接地金具が取り付けられて、点検等の作業が行われる。この短絡接地金具は、作業中に万が一、誤って送電が行われた場合の作業者の感電を防止する安全対策を目的とするものである。
【0003】
そして作業の終了後には、短絡接地金具を取り外して、復電作業が行われる。この際に、誤って短絡接地金具を取り付けたままの状態で復電作業を行ってしまうことを防ぐ必要がある。現状では、その対策は作業者に対する手順徹底や、作業者による目視確認などが行われているが、何れも作業者に依拠するものであり、誤操作の発生する可能性を完全になくすことは難しい。
【0004】
従来、このような復電作業時のヒューマンエラーを防止することを目的とした接地状態管理装置が知られている(特許文献1参照。)。この接地状態管理装置では、接地状態となっている短絡接地器具が存在する場合に、制御装置によって接地装置の駆動制御部の操作が無効とされるとともに、表示手段による接地表示の状態が解除されない状態となる。このため、接地装置の切り操作が行われなくなると共に、回路を復旧できる状態ではないことが視覚的に表示され、ヒューマンエラーの発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-23778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に記載された技術では、装置の構成が大掛かりで複雑であるため、需要家毎に導入することが難しいという問題があった。また、短絡接地金具を用いた従来の技術では、別途に用意した短絡接地金具を取り付けて作業を行う必要があり、作業が繁雑になってしまうという問題があった。また作業の際に、短絡接地金具が自然と外れてしまう場合があり、断路器の一次側が接地されていない状態で作業が行われることになってしまう場合が生じうるという問題があった。
【0007】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであって、電源設備の作業時における、作業者による誤操作を防止することが可能な誤操作防止装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示は、以下の手段を提供する。
本開示の誤操作防止装置は、商用電力系統からの電力が需要家の自家構内の電力設備に供給される通電状態と、前記電力設備が前記商用電力系統から切り離される停電状態とを切り替える開閉器と、前記開閉器からの電力が入力される前記需要家の高電圧受電設備の一次側と前記開閉器の間に設けられ、前記一次側を接地する接地状態と、前記一次側が接地されていない通常状態とを切り替える接地ブレーカー部とを備え、前記開閉器は、前記接地ブレーカー部が前記接地状態である場合には、前記停電状態から前記通電状態への切り替えが規制され、前記接地ブレーカー部は、前記開閉器が前記通電状態の場合には前記通常状態から前記接地状態への切り替えが規制される。
【0009】
本開示の誤操作防止装置によれば、高電圧受電設備の一次側を接地するブレーカー部を備えている。このため、電源設備等の作業を行う際に、短絡接地金具などの追加の器具を用いる必要がない。また接地ブレーカー部が接地状態である場合には、開閉器が停電状態から通電状態に切り替わることが規制される。このため、高電圧受電設備の一次側が接地された状態で、商用電力系統から電力が供給されてしまうことが防がれる。また、開閉器が通電状態である場合には、接地ブレーカー部が、通常状態から接地状態に切り替わることが規制される。このため、停電されていない状態で高電圧受電設備の一次側が接地されてしまうことが防がれる。
【0010】
上記においては、前記開閉器と前記接地ブレーカー部の切り替え操作を規制する規制スイッチを備え、前記規制スイッチが第1状態の場合には、前記開閉器の切り替えが規制され、前記規制スイッチが第2状態の場合には、前記接地ブレーカー部の切り替えが規制されることが好ましい。
【0011】
このようにすることにより、規制スイッチの切り替えによって、開閉器や接地ブレーカー部の不適切な切り替えが規制される。このため、高電圧受電設備の一次側が接地された状態で、商用電力系統から電力が供給されてしまうことが防がれる。また、停電されていない状態で高電圧受電設備の一次側が接地されてしまうことが防がれる。
【0012】
上記においては、前記接地ブレーカー部は、直列に接続された少なくとも2つのブレーカーから構成されていることが好ましい。
このようにすることにより、ブレーカー部を構成するブレーカーが経年劣化等によって絶縁劣化を起こして意図せずに接地状態となってしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の誤操作防止装置によれば、簡易な操作で高電圧受電設備の一次側を接地状態とすることができるとともに、作業者の誤操作による開閉器や接地ブレーカー部の不適切な切り替え操作を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の第1の実施形態にかかる誤操作防止装置を示す概略図である。
図2】需要家の高圧受電設備を説明する図である。
図3】本開示の第1の実施形態にかかる誤操作防止装置を説明するブロック図である。
図4】本開示の第2の実施形態にかかる誤操作防止装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕
本開示の第1の実施形態に係る誤操作防止装置1について、主に図1から図3を参照しながら説明する。
<1-1 構成の説明>
はじめに、誤操作防止装置1の構成の説明を行う。
【0016】
本実施形態の誤操作防止装置1は、需要家の電力設備の年次点検等の作業の際における、作業者による誤操作を防止する装置である。具体的には、高電圧受電設備の一次側を接地(以降において「地絡」とも記載する。)した状態のまま、誤って復電作業を行ってしまったり、あるいは通電状態で高圧受電設備の一次側を接地してしまったりすることを防止する機能を有した装置である。
【0017】
本実施形態の誤操作防止装置1は、接地ブレーカー部10と開閉器部3から主に構成されている。なお接地ブレーカー部10と開閉器部3は、信号ケーブル2によって接続されている。
【0018】
接地ブレーカー部10は、作業者による操作によって、導通状態と遮断状態が切り替わる公知のブレーカーとしての機能を有する部分である。本実施形態において接地ブレーカー部10が、需要家の高電圧受電設備5に設けられている例に適用して以降の説明を行う。ここで高電圧受電設備5は、需要家の自家用構内に設けられている公知の受電設備である。
【0019】
高電圧受電設備5には、断路器51(以降において「DS51」とも記載する。)の他、真空しゃ断器52(以降において「VCB52」とも記載する。)が主に備えられている。また高電圧受電設備5には、地絡方向継電器(DGR)53、零相変流器(ZCT)54、計器用変成器(PCT)55、避雷器(LA)56、過電流継電器(OCR)57、変流器(CT)58、高圧負荷開閉器(LBS)59、変圧器(T)60、及びコンデンサ(SC)61などが主に備えられている(図2参照)。なお高電圧受電設備5は、公知の高圧受電設備が備えるその他の機器等を備えていてもよい。
【0020】
接地ブレーカー部10は、断路器51の一次側と、図示されていない接地端子との間に接続されている。ここで接地端子とは、大地に接続された端子や、接地された導電性を有する高電圧受電設備5の部分などをいう。即ち接地ブレーカー部10は、作業者の操作によって導通状態にされた際に、断路器51の一次側の部分、換言すれば断路器51と開閉器部3の間の部分を接地するように、断路器51の一次側に接続されている。
【0021】
以降において接地ブレーカー部10が断路器51の一次側の部分を接地している状態を「接地状態」とも記載する。また、接地ブレーカー部10が遮断状態で、断路器51の一次側を接地していない状態、即ち断路器51の一次側を大地から浮かせている状態を「通常状態」とも記載する。
【0022】
接地ブレーカー部10は、ブレーカー11a,11b、及び制御回路12から主に構成されている(図3参照。)。ブレーカー11a,11bは、所定の操作によって遮断状態と導通状態、即ちOFF状態とON状態が切り替わる公知のブレーカーである。制御回路12は、詳細は後述する開閉器部3からの信号に従って、ブレーカー11a,11bの遮断状態と導通状態の切り替えを規制する機能を有した公知の制御回路である。
【0023】
具体的に制御回路12は、開閉器部3からの信号が所定の条件の場合に、ブレーカー11aとブレーカー11bが遮断状態から導通状態に切り替わることを規制する。換言すれば制御回路12は、接地ブレーカー部10が通常状態から接地状態に切り替わることを規制する。即ち接地ブレーカー部10は、開閉器部3からの信号が所定の条件の場合に、作業者による操作が行われても通常状態から接地状態に切り替わらないように、制御回路12によってその作動が規制される。
【0024】
また制御回路12は、公知の手段によって、ブレーカー11a,11bが、遮断状態と導通状態のいずれであるかを検出し、検出した状態を電気信号として出力する機能も有している。具体的に制御回路12は、ブレーカー11a,11bの何れもが導通状態の場合、即ち接地ブレーカー部10が接地状態である場合には、そのことを通知する信号を出力する。制御回路12は、ブレーカー11a,11bの何れかが遮断状態の場合、即ち接地ブレーカー部10が通常状態の場合に、そのことを通知する信号を出力する。制御回路12が出力した信号は、信号ケーブル2を介して制御回路36に入力される。
【0025】
開閉器部3は、商用電源系統と需要家の受電設備との間に設けられている公知の器具であり、需要家の自家用構内を商用電力系統から切り離す際に用いられるものである。開閉器部3は、電力会社と需要家の責任分界点に設けられ、需要家の設備に対して電力の供給が行われる通電状態と、電力の供給が停止される停電状態とを切り替える。なお図1では、説明のために開閉器部3と高電圧受電設備5の間が一つの線にて結ばれている図を示しているが、開閉器部3と高電圧受電設備5の間は、三線にて接続されている(以降においても同様である。)。
【0026】
開閉器部3は、スイッチ32が作業者によって操作されると、通電状態と停電状態とが切り替わる。具体的に説明を行うと、作業者がスイッチ32に取り付けられた操作紐31を保持し、いずれかを引っ張ることによって、通電状態と停電状態との切り替えが行われる。
【0027】
開閉器部3は、開閉器35と制御回路36を備えている。開閉器35は、スイッチ32の操作に従って、商用電源系統からの電力を遮断する状態と、商用電源系統からの電力を通電する状態とが切り替わる公知の開閉器である。以降において開閉器35が電力を通電する状態、即ち開閉器部3を介して商用電力系統からの電力が需要家の自家構内の電力設備に供給される状態を「通電状態」とも記載する。また、開閉器35が商用電源系統からの電力を遮断している状態、即ち開閉器部3が、電力設備を商用電力系統から切り離している状態を「停電状態」とも記載する。
【0028】
制御回路36は、接地ブレーカー部10からの信号に従って、開閉器35の切り替えを制御する機能を有した公知の制御回路である。制御回路36は、接地ブレーカー部10から所定の信号が入力された場合には、開閉器35の切り替えを規制するように作動する。即ち、制御回路12から所定の信号が入力されると、制御回路36は、開閉器35が停電状態から通電状態に切り替わることを規制する。換言すれば、開閉器部3は、接地ブレーカー部10から所定の信号が入力されると、作業者による操作が行われても、停電状態から通電状態に切り替わらないように制御回路36によってその作動が規制された状態となる。
【0029】
更に制御回路36は、公知の手段によって、開閉器35の状態を検出し、その状態を電気信号として出力する機能も有している。制御回路36は、開閉器35が通電状態の場合には、その状態を通知する信号を出力する。また、制御回路36は、開閉器35が停電状態の場合には、その状態を通知する信号を出力する。制御回路36が出力した信号は、信号ケーブル2を介して制御回路12に入力される。
【0030】
<1-2 作用の説明>
続いて、本実施形態の誤操作防止装置1の作用について、実際の使用方法に即して説明を行う。以降において、作業者が需要家の電力設備の点検作業を行う場合を例に適用して説明を行う。
【0031】
作業開始前において、開閉器部3は通電状態であり、接地ブレーカー部10は通常状態となっている。即ちブレーカー11aとブレーカー11bは、いずれも遮断状態となっている。この際、制御回路36は、開閉器部3が通電状態であることを通知する信号を出力している。この信号が入力された制御回路12は、ブレーカー11aとブレーカー11bが通常状態から接地状態に切り替わることを規制している。即ち接地ブレーカー部10は、作業者が所定の操作を行っても、接地状態に切り替わらない状態となっている。
【0032】
作業者は、所定の点検作業を行うために、公知の作業手順に従い需要家の施設の停電作業を行う。具体的に説明すると、作業者は、はじめに高電圧受電設備5の真空しゃ断器52を開放(OFF)し、続いて操作紐31を操作して開閉器部3を停電状態に切り替える。そして作業者は、高電圧受電設備5の断路器51を開放(OFF)にする。
【0033】
開閉器部3が停電状態に切り替わると、制御回路36がその状態を検知して、開閉器部3が停電状態であることを通知する信号を出力する。その信号が入力された制御回路12は、ブレーカー11aとブレーカー11bを通常状態から接地状態に切り替え可能な状態にする。即ち接地ブレーカー部10は、制御回路12による規制が解除された状態となり、作業者の操作によって接地状態に切り替え可能な状態となる。
【0034】
停電作業を行った作業者は、所定の操作を行って接地ブレーカー部10を接地状態にする。作業者による操作が行われると、ブレーカー11aとブレーカー11bがいずれも導通状態となり、接地ブレーカー部10は接地状態に切り替わる。
【0035】
制御回路12は、接地ブレーカー部10が通常状態から接地状態に切り替わったことを検知して、接地ブレーカー部10が接地状態であることを通知する信号を出力する。制御回路12からの信号が入力された制御回路36は、開閉器部3を、停電状態から通電状態に切り替わることが規制された状態にする。即ち開閉器部3は、作業者が操作紐31によってスイッチ32を切り替える操作を行っても、停電状態から通電状態に切り替わらない状態となる。
【0036】
接地ブレーカー部10が接地状態に切り替わると、断路器51の一次側が接地された状態となる。即ち、断路器51の一次側と開閉器部3の二次側の間の部分が接地された状態となる。作業者は、接地ブレーカー部10が接地状態に切り替わったことを確認して、所定の点検作業を開始する。
【0037】
点検作業を終えた作業者は、復電作業を行う。作業者は、所定の操作を行って、接地ブレーカー部10を接地状態から通常状態に切り替える。このようにすると、断路器51の一次側と開閉器部3の二次側の間の部分は、大地から浮いた状態となる。
【0038】
また制御回路12は、接地ブレーカー部10が通常状態であることを通知する信号を出力する。制御回路12からの信号が入力された制御回路36は、開閉器部3を、停電状態から通電状態への切り替えが可能な状態にする。即ち開閉器3は、制御回路36による規制が解除された状態となる。
【0039】
作業者は、接地ブレーカー部10を通常状態に切り替えたら、復電作業を行う。具体的に説明すると、作業者は、断路器51を投入する。続いて操作紐31を操作して、開閉器部3を通電状態に切り替える。更に作業者は、真空しゃ断器52を投入して、施設への電力の供給を再開する。
【0040】
上記の誤操作防止装置1によれば、作業者は、接地ブレーカー部10の操作を行うだけで、断路器51の一次側が接地された状態とすることができる。即ち、断路器51の一次側を接地するために短絡接地金具などの追加の器具を用いる必要なく、簡単な手順で断路器51の一次側を接地する作業を行うことができる。
【0041】
短絡接地金具など器具を用いて断路器51の一次側を接地する場合には、例えば短絡接地金具の接続が十分でないなどの理由により、短絡接地金具が自然と外れてしまい、断路器51の一次側が意図せずに浮いた状態となってしまう可能性がある。一方、本実施形態の誤操作防止装置1では、そのような追加の器具を用いる必要がなく、意図せずに断路器51の一次側が浮いた状態となってしまうことが防がれる。
【0042】
また作業者は、接地ブレーカー部10の操作を行うだけで、断路器51の一次側が接地された状態から通常の状態に戻すことも容易に行うことができる。このため、復電作業を容易に行うことができる。
【0043】
また、接地ブレーカー部10は、開閉器部3が通電状態の場合に、通常状態から接地状態への切り替えが規制される。即ち、制御回路12は、開閉器部3が通電状態である場合には、ブレーカー11a,11bが導通状態に切り替わることを規制する。このため、開閉器部3が通電状態であるにも関わらず、断路器51の一次側が接地された状態となってしまうことが防がれる。即ち、作業者の誤操作によって短絡事故が発生してしまうことが有効に防がれる。
【0044】
更に開閉器部3は、接地ブレーカー部10が接地状態の場合に、停電状態から通電状態への切り替えが規制される。即ち、制御回路36は、接地ブレーカー部10が接地状態である場合には、開閉器35が停電状態から通電状態に切り替わることを規制する。このため、断路器51の一次側が接地された状態で、開閉器部3が通電状態に切り替わることが防がれる。即ち、作業者の誤操作によって短絡事故が発生してしまうことが有効に防がれる。
【0045】
更に接地ブレーカー部10は、ブレーカー11aとブレーカー11bが直列に接続されて構成されている。このため、例えばブレーカー11aとブレーカー11bのいずれか一方の絶縁が劣化して、十分な遮断状態を維持できない状態となったとしても、意図せずに断路器51の一次側が接地されてしまうことが防がれる。即ち、ブレーカー11a,11bの経年劣化等による絶縁不良によって、短絡事故が発生してしまうことが防がれる。
【0046】
なお上記では、接地ブレーカー部10が高電圧受電設備5に設けられている例に適用して説明を行ったが、これに限定される訳ではない。接地ブレーカー部10は、断路器51の一次側と開閉器部3の間の部分を接地可能な場所であれば、上記と異なる場所に設けられていてもよい。例えば接地ブレーカー部10は、開閉器部3の近傍に設けられていてもよい。このようにすれば、信号ケーブル2の長さをより短くしたり、あるいは省略したりした構成とすることができる。
【0047】
〔第2の実施形態〕
続いて本開示の第2の実施形態について説明を行う。上記の実施形態では、接地ブレーカー部10と開閉器部3の切り替えの規制が、電気信号に従って制御される例に適用して説明を行った。一方、本実施形態では、切り替えの規制が機械的な機構によって行われる点が相違する。従って、以降において、上記の実施形態と相違する点について主に説明を行い、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
<2-1 構成の説明>
以降において、主に図4を参照して第2の実施形態について説明を行う。なお、以降において、左右、上下の方向は、特に断りのない限りそれぞれ図中に示す方向とする。
【0049】
本実施形態の誤操作防止装置100は、接地ブレーカー部110、規制スイッチ部120、及び開閉器部130から主に構成されている(図4(a),(b)参照。)。接地ブレーカー部110と開閉器部130は、左右に並んで配置され、一体として構成されている。
【0050】
接地ブレーカー部110は、作業者による操作に従って、断路器51の一次側を接地する部分である。本実施形態において接地ブレーカー部110には、高電圧(6,600V)に対応した公知の断路器が用いられている例に適用して以降の説明を行う。なお、接地ブレーカー部110は、高電圧(6,600V)に対応したものであれば、例えばヒューズ無しLBS(高圧交流負荷開閉器)など、他の公知の電力器具が用いられてもよい。
【0051】
接地ブレーカー部110の中心部分には、スイッチ111が備えられている。このスイッチ111は、一方の側に倒されると接地ブレーカー部110が導通状態となり、他方の側に倒されると接地ブレーカー部110が遮断状態となる切り替えスイッチである。本実施形態では、スイッチ111が上側に倒されると接地ブレーカー部110が接地状態(導通状態)となり、下側に倒されると接地ブレーカー部110が通常状態(遮断状態)となる例に適用して説明を行う。
【0052】
開閉器部130は、需要家の自家用構内を商用電力系統から切り離す際に用いられるものである。即ち、需要家の設備に対して電力の供給が行われる通電状態と、電力の供給が停止される停電状態とを切り替える器具である。本実施形態において開閉器部130に、高電圧(6,600V)に対応した公知のヒューズ無しLBS(高圧交流負荷開閉器)が用いられる例に適用して以降の説明を行う。なお、開閉器部13は、高電圧(6,600V)に対応したものであれば、例えば公知の断路器など、他の公知の電力器具が用いられてもよい。
【0053】
開閉器部130の中心部分にも同様に、スイッチ131が備えられている。本実施形態では、スイッチ131が上側に倒されると開閉器部130が通電状態(導通状態)となり、下側に倒されると開閉器部130が停電状態(遮断状態)となる例に適用して説明を行う。
【0054】
規制スイッチ部120は、接地ブレーカー部110と開閉器部130に跨がって配置されている。規制スイッチ部120は、その配置位置に従って、スイッチ111とスイッチ131の動きの規制を切り替えるものである。
【0055】
規制スイッチ部120は、レバー121、固定部122、及び規制板材150から主に構成されている。レバー121は、作業者によって操作が行われる部分であり、詳細は後述する規制板材150の配置位置を移動して規制スイッチ部120の規制状態を切り替える部分である。レバー121は、左右方向に移動可能に固定部122に固定されている。固定部122は、レバー121と規制板材150を、接地ブレーカー部110及び開閉器部130に固定する部分である。
【0056】
規制板材150は、下側にそれぞれ延出する延出部151Rと延出部151Lを備えた略U字形状の板材である。規制板材150は、レバー121の動きに伴って左右方向に移動可能に固定部122に固定されている。
【0057】
規制板材150は、延出部151Rの右側の辺である外側辺152Rと、延出部151Lの左側の辺である外側辺152Lとの間の距離d1が、スイッチ111とスイッチ131との間の距離d0と略同一となるように形成されている(図4(a)参照。)。
【0058】
延出部151Rは、その下側の辺である下側辺153Rが、規制板材150を最も右側に移動させた際に、下側に倒されたスイッチ131の上側の部分と略同じ位置となるように形成されている(図4(a)参照。)。即ち延出部151Rは、規制板材150を最も右側に移動させた際に、下側辺153Rが、スイッチ131の部分と当接して、スイッチ131が上側に倒されることを規制する位置に配置されるように形成されている。
【0059】
また延出部151Lは、規制板材150を最も左側に移動させた際に、その下側の辺である下側辺153Lが、下側に倒されたスイッチ111の上側の部分と略同じ位置となるように形成されている(図4(b)参照。)。即ち延出部151Lは、規制板材150を最も左側に移動させた際に、下側辺153Lが、スイッチ111の部分と当接して、スイッチ111が上側に倒されることを規制する位置に配置されるように形成されている。
【0060】
規制スイッチ部120は、レバー121によって設定された状態に応じてスイッチ111とスイッチ131の動きを規制する。即ち規制スイッチ部120は、レバー121によって設定された規制板材150の位置に応じて、スイッチ111とスイッチ131の動きを規制する。即ち、規制板材150が右側に移動された状態では、下側辺153Rが下側に倒されたスイッチ131の上側に配置されるため、スイッチ131は上側に倒されることが規制される(図4(a)参照。)。本実施形態の規制板材150が右側に移動された状態が、第1状態の一例である。
【0061】
また、規制板材150が左側に移動された状態では、下側辺153Lが下側に倒されたスイッチ111の上側に配置されるため、スイッチ111は、上側に倒されることが規制される(図4(b)参照。)。本実施形態の規制板材150が左側に移動された状態が、第2状態の一例である。
【0062】
また、規制スイッチ部120の状態も同様に、スイッチ111とスイッチ131の状態に応じて規制される。即ち規制板材150の動きは、スイッチ111とスイッチ131の状態によって規制される。
【0063】
具体的に説明を行うと、例えばスイッチ111とスイッチ131が下側に倒された状態、即ち接地ブレーカー部110が通常状態で、開閉器部130が停電状態の場合には、作業者はレバー121を操作して、規制板材150を左右に移動させることができる。即ち、規制スイッチ部120を任意の状態に切り替えることができる。
【0064】
一方、スイッチ111とスイッチ131のいずれかが上側に倒された状態では、規制板材150の左右の動きは規制される。例えば、スイッチ131が上側に倒された状態では、外側辺152Rがスイッチ131と当接するため、規制板材150の右方向への移動は規制される(図4(b)参照。)。即ち、作業者は操作してもレバー121を右側に動かすことができない。同様にスイッチ111が上側に倒された状態では、外側辺152Lがスイッチ111と当接するため、規制板材150の左方向への移動は規制される。
【0065】
<2-2 作用の説明>
続いて、本実施形態の誤操作防止装置100について、実際の使用に従って説明を行う。
【0066】
作業開始前において、開閉器部130は通電状態であり、接地ブレーカー部110は通常状態である。即ち、スイッチ131は上側に倒された状態であり、スイッチ111は下側に倒された状態である。この際、規制スイッチ部120は、レバー121が左側に位置する状態であり、規制板材150が左側に配置された状態となっている(図4(b)参照。)。
【0067】
作業者は、点検作業を行うために、所定の手順に従って停電作業を行う。具体的には、作業者は、はじめに高電圧受電設備5の真空しゃ断器52を開放(OFF)し、続いてスイッチ131を下側に倒して開閉器部130を停電状態にする。開閉器部130を停電状態にしたら、作業者は、レバー121を右側に移動させて規制板材150が右側に配置された状態にする(図4(a)参照。)。
【0068】
規制板材150が右側に移動した状態となると、下側辺153Lによる規制が外れ、上側に倒すことができるようになる。即ち作業者は、接地ブレーカー部110を、通常状態から接地状態に切り替えることができるようになる。
【0069】
続けて作業者は、断路器51の一次側を接地する作業を行う。具体的には、スイッチ111を上側に倒して接地ブレーカー部110を接地状態とする。この際、スイッチ131は、下側辺153Rによって上側に倒されることが規制された状態となっている。即ち、作業者が誤ってスイッチ131を操作しても、開閉器部130が通電状態となることがない状態となっている。また、スイッチ111が上側に倒されているため、規制板材150の左側への移動も規制されている。即ち、作業者が誤ってレバー121を操作しても、規制板材150が左側に移動することはなく、スイッチ131の下側辺153Rによる規制が解除された状態となることはない。
【0070】
点検作業が終了したら、作業者は、所定の手順に従って復電作業を行う。はじめに作業者は、断路器51の一次側が接地された状態を解除する作業を行う。具体的には、スイッチ111を下側に倒して、接地ブレーカー部110を通常状態にする。スイッチ111が下側に倒されると、規制板材150は左側に移動可能な状態となる。作業者は、レバー121を左側に移動させ、規制板材150が左側に配置された状態にする。
【0071】
この際、スイッチ131は下側辺153Rによる規制が外れた状態となる。即ち、作業者はスイッチ131を操作して上側に倒すことができるようになる。また、スイッチ111は下側辺153Lによって規制され、作業者が操作を行っても上側に倒すことができない状態となる。
【0072】
作業者は、接地ブレーカー部110を通常状態にしたら、断路器51を投入し、続いてスイッチ131を上側に倒して開閉器部130を通電状態に切り替える。更に作業者は、真空しゃ断器52を投入して、施設への電力の供給を再開する。
【0073】
上記の誤操作防止装置100によれば、作業者による規制スイッチ部120の操作によって、スイッチ111とスイッチ131の動きが規制される。言い換えると、規制スイッチ部120の操作に伴って移動する規制板材150の配置位置によって、開閉器部130の切り替えと、接地ブレーカー部110の切り替えが規制される。更に、スイッチ111とスイッチ131の状態によって、規制板材150の配置位置も規制される。
【0074】
このため、誤操作防止装置100は、作業者による誤った操作を有効に防ぐことができる。更に、誤操作防止装置100は、電気信号を用いることなく、規制スイッチ部120による機械的な作動によって規制を行う。このため、簡易な構成の誤操作防止装置を提供することができる。
【0075】
なお、本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば第1の実施形態において、接地ブレーカー部10と開閉器部3が信号ケーブル2によって接続されている例に適用して説明を行ったが、これに限定される訳ではない。例えば、接地ブレーカー部10と開閉器部3が、それぞれ無線通信インターフェースを備え、無線通信を行う構成としてもよい。あるいは、接地ブレーカー部10と開閉器部3が、それぞれネットワーク通信インターフェースを備え、ネットワークを介して通信を行う構成としてもよい。
【0076】
また、第2の実施形態において、接地ブレーカー部110と開閉器部130の切り替えの規制が、機械的な機構によって実現されている例について説明を行ったが、その機械的な機構は、図4に例示したものに限定される訳ではない。スイッチ111とスイッチ131のそれぞれの作動を連携して制御可能な機構であれば、他の公知の機構が用いられてもよい。
【0077】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,100…誤操作防止装置 2…信号ケーブル 3,130…開閉器部
5…高圧受電設備 10,110…接地ブレーカー部
11a,11b…ブレーカー 12,36…制御回路 31…操作紐
32,111,131…スイッチ 35…開閉器
51…断路器 52…真空しゃ断器
120…規制スイッチ部 121…レバー 122…固定部
150…規制板材 151L,151R…延出部
152L,152R…外側辺 153L,153R…下側辺
図1
図2
図3
図4