IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精工株式会社の特許一覧

特開2022-154795動トルク測定装置及び動トルク測定方法
<>
  • 特開-動トルク測定装置及び動トルク測定方法 図1
  • 特開-動トルク測定装置及び動トルク測定方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154795
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】動トルク測定装置及び動トルク測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/14 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
G01L3/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058001
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 達男
(57)【要約】
【課題】固定側部材に発生する動トルクを、回転側部材の回転速度(車速)が刻々と変化する条件で精度良く測定可能な動トルク測定装置及び動トルク測定方法を提供する。
【解決手段】固定側部材22と回転側部材21とを有する被測定物20の動トルクを測定する動トルク測定装置10であって、回転側部材21を支持する第1の支持機構30と、固定側部材22を連れ回り可能に支持する第2の支持機構40と、を備える。第2の支持機構40は、連れ回り部42と、連れ回り部42を回転可能に支持する静圧軸受41と、固定側部材22の回転速度を検出する回転センサ50と、を備える。動トルクは、回転センサ50により検出された回転速度V1から算出される固定側部材22の角加速度αに基づいて与えられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材と、前記固定側部材に対して相対回転可能な回転側部材とを有する被測定物において、前記回転側部材を回転駆動させ、前記固定側部材に発生する動トルクを測定する動トルク測定装置であって、
前記回転側部材を回転駆動する駆動機構を備え、前記回転側部材を支持する第1の支持機構と、
前記回転側部材の回転軸と同軸上に配設され、前記回転側部材の回転によって、前記固定側部材を連れ回り可能に支持する第2の支持機構と、
前記固定側部材の回転速度を検出する回転センサと、
を備え、
前記第2の支持機構は、前記固定側部材を保持して前記固定側部材とともに連れ回る連れ回り部と、前記連れ回り部を相対回転可能に支持する静圧軸受と、を備え、
前記動トルクは、前記回転センサにより検出された回転速度から算出される前記固定側部材の角加速度に基づいて与えられる、動トルク測定装置。
【請求項2】
前記被測定物に荷重を負荷する負荷機構を備える、請求項1に記載の動トルク測定装置。
【請求項3】
前記回転側部材が回転した時、連れ回り力による前記固定側部材の回転を抑制する制動力を前記固定側部材に付与する電磁ブレーキをさらに備える、請求項1又は2に記載の動トルク測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の動トルク測定装置を用いた動トルク測定方法であって、
前記回転側部材を回転駆動させ、前記回転センサにより検出された回転速度から算出される前記固定側部材の角加速度を算出することで、前記固定側部材に発生する動トルクを測定する、動トルク測定方法。
【請求項5】
電磁ブレーキによる前記固定側部材の制動力を用いて、前記角加速度に基づいて取得される前記動トルクを補正する、請求項4に記載の動トルク測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動トルク測定装置及び動トルク測定方法に関し、特に、互いに接触関係(転がり接触を含む)にある回転側部材と固定側部材を有する被測定物において、回転側部材が回転したときに固定側部材に発生する連れ回りによる動トルクを測定可能な動トルク測定装置及び動トルク測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定側部材に発生する連れ回りによる動トルクを測定する被測定物としては、転がり軸受、軸受用シール部材、ハブユニット軸受などが知られている。近年、車両などにおいても省エネルギの要求が高まり、僅かなトルク損失も問題になってきている。その為、より実車走行に近いJC08モードやWLTCモードなどの燃費測定モードでの動トルク測定が採用されている。このため、被測定物としてハブユニット軸受においても、これらの燃費測定モードでの動トルク測定が要求され、回転側部材の回転速度(車速)が刻々と変化する状態で、被測定物における動トルクを精度よく測定することが要求される。連れ回りによる動トルクは、本来必要とされるトルクに上乗せされるトルクであり、この動トルクの値が低いほど省燃費に貢献する。
【0003】
特許文献1,2には、測定しようとする摩擦トルクに対して十分に摩擦抵抗が低い軸受(静圧軸受や自重負荷程度の荷重が負荷された転がり軸受)で被測定物の一方(固定側部材)を支承し、被測定物の他方(回転側部材)を回転駆動して、被測定物の一方の連れ回りトルクを接線力として測定する動トルク検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-64134号公報
【特許文献2】特開2014-224546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載のトルク検出装置は、いずれも、被測定物の他方を所定の速度及び所定の方向に回転させたとき、被測定物の一方に発生する引き摺りトルク、或いは接線力(回転トルク)をロードセルで測定するものである。ロードセルによる接線力の測定によると、被測定物の一方と共に連れ回る連れ回り部(トルク測定用部材や外ハウジング)の持つ慣性モーメントの影響により、連れ回り部の加速時においては測定値が低く現れ、減速時においては測定値が逆に高く現れ、精度良く動トルクを測定し難い問題があり、回転側部材の回転速度(車速)が刻々と変化する条件での測定には不向きであった。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、固定側部材に発生する動トルクを、回転側部材の回転速度(車速)が刻々と変化する条件で精度良く測定可能な動トルク測定装置及び動トルク測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
[1] 固定側部材と、前記固定側部材に対して相対回転可能な回転側部材とを有する被測定物において、前記回転側部材を回転駆動させ、前記固定側部材に発生する動トルクを測定する動トルク測定装置であって、
前記回転側部材を回転駆動する駆動機構を備え、前記回転側部材を支持する第1の支持機構と、
前記回転側部材の回転軸と同軸上に配設され、前記回転側部材の回転によって、前記固定側部材を連れ回り可能に支持する第2の支持機構と、
前記固定側部材の回転速度を検出する回転センサと、
を備え、
前記第2の支持機構は、前記固定側部材を保持して前記固定側部材とともに連れ回る連れ回り部と、前記連れ回り部を相対回転可能に支持する静圧軸受と、を備え、
前記動トルクは、前記回転センサにより検出された回転速度から算出される前記固定側部材の角加速度に基づいて与えられる、動トルク測定装置。
【0008】
[2] [1]に記載の動トルク測定装置を用いた動トルク測定方法であって、
前記回転側部材を回転駆動させ、前記回転センサにより検出された回転速度から算出される前記固定側部材の角加速度を算出することで、前記固定側部材に発生する動トルクを測定する、動トルク測定方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の動トルク測定装置及び動トルク測定方法によれば、回転側部材の回転速度(車速)が刻々と変化する条件で精度良く動トルクを測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る動トルク測定装置の構成を示す模式図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る動トルク測定装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る動トルク測定装置の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態では、被測定物として、軸受の内外輪間を封止するための組合せシールリング20の連れ回りによる動トルクを測定する。組合せシールリング20は、断面略L字形円環状のスリンガ21と、スリンガ21に摺接するシールリップ23を有するシールリング22とを備え、互いに軸方向に対向配置されて組み付けられている。即ち、被測定物の回転側部材は、組合せシールリング20のうちの後述する回転軸33と一体に回転するスリンガ21であり、被測定物の固定側部材は、組合せシールリング20のシールリング22である。そして、本実施形態の動トルク測定装置10は、スリンガ21を回転させたとき、シールリング22に発生する連れ回りによる動トルクを測定する。
【0013】
動トルク測定装置10は、回転不能に回り止めされた略円筒状の中間ハウジング25と、該中間ハウジング25の内側で、スリンガ21を回転自在に支持する第1の支持機構30と、中間ハウジング25の外側で、シールリング22を連れ回り可能に支持する第2の支持機構40と、回転センサ50と、電磁ブレーキ60と、を備える。
【0014】
第1の支持機構30は、該中間ハウジング25の内側に1対のサポート軸受32を介して回転自在に支持された回転軸33と、回転軸33を回転駆動するためのキャップ部材36と、回転軸33とキャップ部材36との間に設けられ、スリンガ21とシールリング22の軸方向位置(シールリップ23の軸方向締め代)を調整する間座34及び内側環状治具35と、を備える。
【0015】
回転軸33の一端には小径部33aが設けられている。小径部33aには、組合せシールリング20の締め代を調整するための間座34を介して内側環状治具35が外嵌固定される。内側環状治具35には、組合せシールリング20のスリンガ21が外嵌固定される。
【0016】
さらに、小径部33aには、キャップ部材36が止めねじ37により、軸方向移動可能に周方向固定されている。キャップ部材36は、不図示の駆動装置により回転駆動される。内側環状治具35は、キャップ部材36と間座34とで軸方向に挟持される。上記構成の第1の支持機構30は、組合せシールリング20にスラスト荷重が作用していない状態における動トルクを測定するために用いられる。
【0017】
なお、図中のスラスト荷重Faは、シールリップ23を変形させ、間座34で調整した締め代を維持する為、また、キャップ部材36とキャップ受け部38の間、及び、回転軸33と回転座39の間等、軸方向当接面のすべりを防止する為に付与されている。また、第1の支持機構30では、キャップ受け部38が回転自在にキャップ部材36を支持する機構とし、回転軸33の回転座39側に駆動装置を設けることもできる。
【0018】
第2の支持機構40は、中間ハウジング25の外周面に設けられた静圧軸受41と、該静圧軸受41により抵抗なく回転可能に支持される円筒状の連れ回り部42と、連れ回り部42に固定される、組合せシールリング20のシールリング22を取り付けるための外側環状治具43と、を備える。外側環状治具43と内側環状治具35とは、径方向で対向し、内側環状治具35と外側環状治具43との間に、被測定物である組合せシールリング20が設置される。具体的には、内側環状治具35にスリンガ21が取り付けられ、外側環状治具43にシールリング22が取り付けられ、間座34の厚さを変えることで、シールリップ23の軸方向締め代が調整される。
連れ回り部42は、第1の支持機構30の回転軸33と同軸上、即ち、回転軸33の中心軸L上に同心に配置されている。
に配置されている。
【0019】
なお、連れ回り部42は、適度の大きさの慣性モーメントJを有しており、スリンガ21を回転させたとき、連れ回りトルクにより連れ回り部42の急速な回転上昇が起きないようになっている。これにより、シールリング22が回転している時間を長くすることができ、回転センサ50によるトルクの測定可能時間を確保している。ここで、連れ回り部42及び外側環状治具43の合計慣性モーメントJは、予め計算または測定することで既知である。
【0020】
回転センサ50は、連れ回り部42の外周面に設けられたエンコーダ51と、検出面がエンコーダ51に対向して配置されたセンサ部52と、を備える。そして、センサ部52により検出された連れ回り部42の回転速度V1は、不図示の演算装置により1回微分処理されて連れ回り部42の角加速度αに変換される。
【0021】
電磁ブレーキ60は、連れ回り部42に制動力を付与して、連れ回り部42の回転速度が急激に上昇することを防止し、シールリング22が回転している時間をさらに長くすることが出来る。また、電磁ブレーキ60は、そのときの制動力の大きさを検出可能な装置であり、例えば、アラゴの円板や電磁式リターダなどで構成されている。電磁ブレーキ60により制動力を連続的或いは間欠的に付与することで、連れ回り部42、即ち、シールリング22に角加速度が作用している時間(シールリング22が回転している時間)を長くしてトルクの測定時間を確保している。
【0022】
このような構成を有する動トルク測定装置10での動トルク測定は、内側環状治具35と外側環状治具43との間に組合せシールリング20を取り付けた状態で、回転軸33を刻々と変化する回転速度Vで回転させて、連れ回り部42の回転速度V1を回転センサ50で検出する。そして、検出された回転速度V1を1回微分処理して連れ回り部42の角加速度αに変換する。
【0023】
ここで、回転軸33は、被測定物に作用する測定回転速度V0に、連れ回り部42の回転速度V1を加算した回転速度(V=V0+V1)で回転させることで、測定回転速度V0が維持される。なお、連れ回り部42の回転速度V1は、時間とともに変化するので、回転センサ50で検出される回転速度V1を、回転軸33の回転速度Vにフィードバックして、回転軸33の回転速度Vを上式に基づいて補正しながら駆動すれば、回転軸33と連れ回り部42との相対回転速度は、常に測定回転速度V0に維持できる。
【0024】
さらに、回転センサ50が検出した連れ回り部42の回転速度V1から得られる角加速度αを、以下の式(1)に代入することにより、連れ回りによる動トルクが得られる。
【0025】
T=J×α・・・(1)
但し、Tはトルク、Jは連れ回り部42及び外側環状治具43の合計慣性モーメント、αは回転センサ50で検出される連れ回り部42の回転速度V1から得られる連れ回り部42の角加速度である。
【0026】
また、連れ回り部42の加速時間(動トルクの測定可能時間)が十分に確保できない場合には、電磁ブレーキ60により連れ回り部42に制動力を付与して、連れ回り部42の加速時間を長くすることもできる。この場合、連れ回りによる動トルクは、回転センサ50で検出される回転速度V1から、式(1)に基づいて得られる動トルクに対して、電磁ブレーキ60の制動トルクで補正する。これにより、長時間にわたる測定も可能となる。
【0027】
本実施形態の動トルク測定装置10によれば、上記したように、連れ回り部42の加速中において、連れ回り部42の角加速度αから動トルクを算出するので、回転速度が刻々と変化する条件で動トルクを測定することができる。さらに、従来のロードセルによる動トルク測定と比較して、連れ回り部42の慣性モーメントJの影響を受けずに、精度よく動トルクを測定できる。
【0028】
また、連れ回り部42に、適度の大きさの慣性モーメントJを持たせてシールリング22の急速な回転上昇を防止することで、回転センサ50による動トルクの測定可能時間を長く確保できる。さらに、電磁ブレーキ60により連れ回り部42に制動力を付与し、回転センサ50で検出される回転速度V1から得られる動トルクを、電磁ブレーキ60の制動トルクで補正することで、さらに長時間の測定を行うことができる。
【0029】
(第2実施形態)
図2に示すように、本実施形態の動トルク測定装置100では、被測定物としてハブユニット軸受111が用いられる。即ち、被測定物の回転側部材は、ハブユニット軸受111のハブ輪112であり、被測定物の固定側部材は、ハブユニット軸受111のフランジ付き外輪113である。そして、動トルク測定装置100は、ハブ輪112を回転させたとき、フランジ付き外輪113に発生する連れ回りによる動トルクを測定する。
【0030】
動トルク測定装置100は、ハブ輪112とフランジ付き外輪113を備えるハブユニット軸受111において、ハブ輪112を支持する第1の支持機構120と、フランジ付き外輪113を連れ回り可能に支持する第2の支持機構130と、を備える。
【0031】
第1の支持機構120は、後述する負荷部151の軸受部156に嵌合し、背面組合せされた複数のアンギュラ玉軸受121により回転自在に支承された回転軸123を備える。回転軸123の一端123aは、取付治具124を介してハブ輪112の回転フランジ112aに連結されている。回転軸123の他端123bは、一対の等速自在継手125を介して中間軸153及び駆動モータ126の回転軸126aに連結されている。
【0032】
負荷部151は、軸受部156と、軸受部156の円周方向の一部から径方向に延び、ハブユニット軸受111に荷重を付加する略L字形の負荷棒157と、によって形成される。負荷棒157には、車両の走行時に車輪に作用する直進荷重に相当するラジアル荷重P1及びスラスト荷重P2が、油圧シリンダ138、139により、タイヤの幅方向中心に相当する位置、及びタイヤの半径に相当する位置にそれぞれ負荷されている。ラジアル荷重P1は軸重の半分の荷重であり、スラスト荷重P2は車両の走行時に車輪に作用するキャンバスラスト荷重に相当する荷重である。したがって、油圧シリンダ138、139に供給する作動油の油圧を制御することで、車両が実際に走行する際の負荷が再現可能である。
【0033】
第2の支持機構130は、フランジ付き外輪113の外輪フランジ113aに取付治具155を介して固定された連れ回り部154と、連れ回り部154を回転抵抗がない状態でハウジング133に対して相対回転可能に支持する静圧軸受132と、を備える。なお、本実施形態では、静圧軸受132として、油圧式のものが使用されている。
【0034】
本実施形態では、回転軸123、駆動モータ126の回転軸126a、取付治具124、155、及び静圧軸受132は、同軸上、即ち、ハブユニット軸受111の中心軸L上に同心に配置されている。
【0035】
さらに、ハブユニット軸受111及び負荷部151を収容するように、温度を一定に管理可能な恒温槽150が設けられている。ハブユニット軸受111の動トルクは、ハブユニット軸受111の潤滑剤の粘度に影響され、潤滑剤の粘度は温度依存性が高い。このため、ハブユニット軸受111の動トルク測定時には、恒温槽150の温度を所定の温度に管理することで、環境温度による動トルクへの影響を抑制する。これにより、精度のよい動トルク測定が可能となる。さらに、恒温槽150を設けることで、低温や高温の任意の環境温度での動トルク測定も可能となる。
【0036】
また、連れ回り部154には、回転センサ50と、電磁ブレーキ60とが設けられている。回転センサ50は、連れ回り部154から軸方向に延出する軸部154aに固定されたエンコーダ51と、ハウジング133に取付けられ、検出面がエンコーダ51に対向して配置されたセンサ部52と、を備える。
【0037】
そして、センサ部52により検出された連れ回り部154の回転速度V1は、不図示の演算装置により1回微分処理されて連れ回り部154の角加速度αに変換される。そして、該角加速度αを第1実施形態で述べた式(1)に代入することにより、連れ回りによる動トルクが得られる。その際、回転軸123の回転速度Vは、測定すべき所定の測定回転速度V0に、連れ回り部154の回転速度V1を加算した回転速度とすることで(V=V0+V1)、回転軸123と連れ回り部154との相対回転速度、換言すれば、ハブ輪112とフランジ付き外輪113との相対回転速度を、常に所定の測定回転速度V0に維持できる。
【0038】
電磁ブレーキ60は、軸部154aの後端部に設けられ、連れ回り部154に制動力を付与して、連れ回り部154の回転速度が急激に上昇することを防止する。したがって、第1実施形態と同様に、電磁ブレーキ60により制動力を付与することで、連れ回り部154、即ち、フランジ付き外輪113に角加速度が作用している時間(ハブ輪112が回転している時間)を長くしてトルクの測定時間を確保できる。
【0039】
この動トルク測定装置100では、ハブユニット軸受111の荷重を支承するためのサポート軸受でもある静圧軸受132、測定部となる連れ回り部154が、荷重入力位置から遠くなるため、ハブユニット軸受111の荷重を支承するためのサポート軸が必要となるので、連れ回り部154は適度な慣性モーメントJを有する。なお、連れ回り部154の慣性モーメントJは、予め計算または測定することで既知である。これにより、ハブ輪112を回転させたとき、連れ回りトルクによりフランジ付き外輪113の急速な回転上昇が起きず、フランジ付き外輪113が加速している時間を長くすることができ、回転センサ50によるトルクの測定可能時間を確保できる。
【0040】
また、電磁ブレーキ60により連れ回り部154に制動力を付与し、回転センサ50で検出される回転速度V1から得られる動トルクを、電磁ブレーキ60から得られた制動トルクで補正することで、さらに長時間でのトルク測定が可能となる。
【0041】
加えて、ハブユニット軸受111を収容する恒温槽150を備えることで、ハブユニット軸受111の環境温度の影響(温度による潤滑剤の粘度変化が動トルクの測定値に与える影響)を抑制できる。
その他の効果は、第1実施形態の動トルク測定装置10と同様である。
【0042】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0043】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 固定側部材と、前記固定側部材に対して相対回転可能な回転側部材とを有する被測定物において、前記回転側部材を回転駆動させ、前記固定側部材に発生する動トルクを測定する動トルク測定装置であって、
前記回転側部材を回転駆動する駆動機構を備え、前記回転側部材を支持する第1の支持機構と、
前記回転側部材の回転軸と同軸上に配設され、前記回転側部材の回転によって、前記固定側部材を連れ回り可能に支持する第2の支持機構と、
前記固定側部材の回転速度を検出する回転センサと、
を備え、
前記第2の支持機構は、前記固定側部材を保持して前記固定側部材とともに連れ回る連れ回り部と、前記連れ回り部を相対回転可能に支持する静圧軸受と、を備え、
前記動トルクは、前記回転センサにより検出された回転速度から算出される前記固定側部材の角加速度に基づいて与えられる、動トルク測定装置。
この構成によれば、連れ回り部の慣性モーメントの影響を受けずに回転速度が刻々と変化する条件で精度良く動トルクを測定できる。
【0044】
(2) 前記被測定物に荷重を負荷する負荷機構を備える、(1)に記載の動トルク測定装置。
この構成によれば、被測定物に荷重を負荷した状態(実車を再現した状態)で、連れ回りによる動トルクを測定できる。
【0045】
(3) 前記回転側部材が回転した時、連れ回り力による前記固定側部材の回転を抑制する制動力を前記固定側部材に付与する電磁ブレーキをさらに備える、(1)又は(2)に記載の動トルク測定装置。
この構成によれば、電磁ブレーキにより固定側部材の回転を抑制する制動力を付与することで、さらに長時間の測定を行うことができる。
【0046】
(4) (1)~(3)のいずれかに記載の動トルク測定装置を用いた動トルク測定方法であって、
前記回転側部材を回転駆動させ、前記回転センサにより検出された回転速度から算出される前記固定側部材の角加速度を算出することで、前記固定側部材に発生する動トルクを測定する、動トルク測定方法。
この構成によれば、連れ回り部の慣性モーメントの影響を受けずに回転速度が刻々と変化する条件で精度良く動トルクを測定できる。
【0047】
(5) 電磁ブレーキによる前記固定側部材の制動力を用いて、前記角加速度に基づいて取得される前記動トルクを補正する、(4)に記載の動トルク測定方法。
この構成によれば、電磁ブレーキにより固定側部材の回転を抑制する制動力を付与することで、さらに長時間の測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
10,100 動トルク測定装置
20 組合せシールリング(被測定物)
21 スリンガ(回転側部材)
22 シールリング(固定側部材)
30,120 第1の支持機構
33,123 回転軸
40,130 第2の支持機構
41,132 静圧軸受
42,154 連れ回り部
50 回転センサ
60 電磁ブレーキ
111 ハブユニット軸受(被測定物)
112 ハブ輪(回転側部材)
113 フランジ付き外輪(固定側部材)
126 駆動モータ(駆動機構)
151 負荷部(負荷機構)
J 慣性モーメント
V 回転軸の回転速度
V0 測定回転速度
V1 連れ回り部の回転速度(回転センサにより検出された回転速度)
α 固定側部材の角加速度
図1
図2