(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154804
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】光学駆動装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20221005BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20221005BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20221005BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/00 B
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058016
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菊地 純平
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 蒼生
(72)【発明者】
【氏名】堀井 拓人
(72)【発明者】
【氏名】滝 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 公輔
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊樹
【テーマコード(参考)】
2H043
2H044
【Fターム(参考)】
2H043AA06
2H043AA25
2H043AB02
2H043AB10
2H043AB14
2H044AJ04
2H044BE04
2H044BE10
2H044BE20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高精度な駆動を可能とする光学駆動装置を提供する。
【解決手段】光学駆動装置は、光学素子を取付可能な可動部と、可動部を運動可能に保持する駆動部と、第1固定部10と第2固定部と第3固定部を有し、これらにより駆動部を保持する。駆動部の一端が接合部材を介して固定面171に固定される第1固定部10と、を有し、固定面171の少なくとも一部には溶融部173が形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を取付可能な可動部と、
前記可動部を運動可能に保持する駆動部と、
前記駆動部の一端が接合部材を介して固定面に固定される固定部と、を有し、
前記固定面の少なくとも一部には溶融部が形成されている光学駆動装置。
【請求項2】
前記溶融部の位置において、前記固定面には、複数のクレータ状の照射痕が形成されている請求項1に記載の光学駆動装置。
【請求項3】
前記溶融部が形成された位置において、前記固定面には、前記固定部の底面に対して近づくように傾斜する傾斜部が形成されている請求項1または2に記載の光学駆動装置。
【請求項4】
前記駆動部の一端は、前記固定部の底面に対して傾斜しており、
前記駆動部の一端を前記固定面に固定したときに、前記傾斜部の傾斜方向と、前記駆動部の一端の傾斜方向とは略一致している請求項3に記載の光学駆動装置。
【請求項5】
前記運動方向に沿って見たとき、前記固定面は、少なくとも4辺を有する多角形状からなる外観形状を有し、
前記溶融部は、前記固定面の2辺以上3辺以下の領域に跨るように形成されている請求項1~4のいずれかに記載の光学駆動装置。
【請求項6】
前記溶融部は、前記固定面に離散的に形成されている請求項1または2に記載の光学駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電素子を用いた駆動機構として、スムーズインパクト駆動機構(SIDM:Smooth Impact Drive Mechanism(登録商標))が注目されている。SIDMは、小型で高精度な駆動を可能とし、光学駆動装置の駆動機構として使用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、SIDMを備えた光学駆動装置として、レンズを取付可能なレンズ枠体と、レンズ枠体を運動可能に保持するアクチュエータと、アクチュエータを保持するベース部材とを有するレンズ駆動装置が記載されている。アクチュエータは、圧電素子と、その一方側の端部に接続された駆動シャフトと、他方側の端部に接続された錘部とからなる。特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、ベース部材の開口部(固定面)に錘部を固定することにより、アクチュエータをベース部材で保持することが可能となっている。
【0004】
ところで、この種の光学駆動装置において、高精度な駆動を可能とするためには、高い組立精度で各部品の組み立てを行う必要があり、そのためには、各部品を加工段階において高い加工精度で加工しておくことが好ましい。しかしながら、各部品の加工精度には一定のばらつきが生じることが避けられず、例えば錘部材の表面には、加工精度のばらつきにより、傾斜や凹凸(ゆがみ)等が形成される場合がある。このような錘部材をベース部材の開口部に固定すると、ベース部材の底面を基準面としたときのアクチュエータの垂直度が低下し、高精度な駆動を行うことができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、高精度な駆動を可能とする光学駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る光学駆動装置は、
光学素子を取付可能な可動部と、
前記可動部を運動可能に保持する駆動部と、
前記駆動部の一端が接合部材を介して固定面に固定される固定部と、を有し、
前記固定面の少なくとも一部には溶融部が形成されている。
【0008】
本発明に係る光学駆動装置では、駆動部の一端が接合部材を介して固定面に固定され、固定面の少なくとも一部には溶融部が形成されている。そのため、溶融部が形成された位置では固定面がえぐられた状態となり、固定面に固定される駆動部の表面に加工精度のばらつきが生じたとしても、溶融部においてこれを吸収することが可能となる。これにより、駆動部を固定部に対して高い組立精度で組み立てることが可能となり、固定部の底面を基準面としたときの駆動部の垂直度を十分に確保し、高精度な駆動を可能とする光学駆動装置を実現することができる。
【0009】
また、加工精度のばらつきにより、固定面自体に凹凸や傾斜等が形成された場合には、凹凸や傾斜等が形成された位置に溶融部を形成することにより、固定面を平坦にすることが可能となる。したがって、この場合も、加工精度のばらつきを解消し、固定部の底面を基準面としたときの駆動部の垂直度を十分に確保することができる。
【0010】
好ましくは、前記溶融部の位置において、前記固定面には、複数のクレータ状の照射痕が形成されている。溶融部は、例えば、固定面に対してレーザ等の高エネルギービームを照射することによって形成され、この場合、固定面にクレータ状の照射痕が形成される。このような照射痕を固定面に複数形成することにより、溶融部の範囲や大きさ等を精度良く調整することができる。
【0011】
前記溶融部が形成された位置において、前記固定面には、前記固定部の底面に対して近づくように傾斜する傾斜部が形成されていてもよい。このような構成とすることにより、加工精度のばらつきにより、固定面に固定される駆動部の表面が固定部の底面に向かって張り出すようなことがあったとしても、この張り出し部分を固定面の傾斜部に配置させることにより、傾斜部において、駆動部の表面の加工精度のばらつき(張り出し部分)を吸収することができる。
【0012】
前記駆動部の一端は傾斜しており、前記駆動部の一端を前記固定面に固定したときに、前記傾斜部の傾斜方向と、前記駆動部の一端の傾斜方向とは略一致していてもよい。固定面に固定される駆動部の表面には加工精度のばらつきにより傾斜が形成される場合がある。このような場合であっても、駆動部の表面の傾斜を、固定部の傾斜部に嵌合させるように配置させることにより、傾斜部において、駆動部の表面の加工精度のばらつき(傾斜)を吸収することができる。
【0013】
好ましくは、前記運動方向に沿って見たとき、前記固定面は、少なくとも4辺を有する多角形状からなる外観形状を有し、前記溶融部は、前記固定面の2辺以上3辺以下の領域に跨るように形成されている。このような構成とすることにより、例えば、加工精度のばらつきにより、固定面に固定される駆動部の表面に2辺以上3辺以下の領域に跨るように傾斜等が生じたとしても、駆動部の表面の傾斜等の範囲が溶融部の範囲と一致するように、駆動部の一端を固定面に固定することにより、固定面に固定される駆動部の表面の加工精度のばらつきを溶融部で吸収することができる。
【0014】
前記溶融部は、前記固定面に離散的に形成されていてもよい。このような構成とすることにより、例えば、固定面に固定される駆動部の表面に凹凸が離散的に形成されている場合に、駆動部の表面の凹凸を固定面の溶融部に嵌合するように配置させることが可能となり、駆動部の一端を固定面に固定したときに、固定部の底面を基準面としたときの駆動部の垂直度を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る光学駆動装置を示す概略斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、
図3Aに示す光学素子保持部をZ軸を回転軸として180度回転させたときの斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す光学駆動装置からカバーと第3固定部とを外したときの平面図である。
【
図8A】
図8Aは、
図1に示す光学駆動装置からカバーを外したときの斜視図である。
【
図8C】
図8Cは、
図8Bに示す光学駆動装置をZ軸を回転軸として180度回転させたときの一部透明斜視図である。
【
図9】
図9は、
図4に示す固定用凹部の詳細構成を駆動部の一部とともに示す断面図である。
【
図15】
図13は、本発明の第2実施形態に係る光学駆動装置の第1固定部における固定用凹部の詳細構成を駆動部の一部とともに示す断面図である。
【
図17】
図17は、
図15に示す固定用凹部の変形例の詳細構成を駆動部の一部とともに示す断面図である。
【
図19】
図19は、
図15に示す固定用凹部の他の変形例の詳細構成を駆動部の一部とともに示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る光学駆動装置1は、携帯電話等の端末装置に搭載され、SIDM(Smooth Impact Drive Mechanism(登録商標))アクチュエータによる駆動を可能とする。光学駆動装置1は、略四角柱状からなる外形を有し、
図2に示すように、可動部2と駆動部3と固定部4とを有する。固定部4は、第1固定部10と第2固定部30と第3固定部50とに分割されており、その詳細構造については後述する。
【0018】
駆動部3は、圧電アクチュエータからなり、可動部2(光学素子保持部60)を運動可能に保持する。駆動部3は、圧電素子80と第1シャフト81と慣性部材82とを有する。
【0019】
駆動部3は、圧電素子80の伸縮を第1シャフト81に伝え、第1シャフト81に所定の摩擦力で係合している可動部2を、圧電素子80の伸張時と縮小時との速度差を利用して移動させるものである。なお、可動部2の運動方向(移動方向)は、Z軸方向であり、第1シャフト81の軸方向に対応する。光学素子保持部60に光学素子としてレンズが設けられる場合には、可動部2の運動方向はレンズの光軸方向となる。
【0020】
圧電素子80は角柱状からなり、その内部では複数の誘電体層と内部電極層とがZ軸方向に交互に積層されている。圧電素子80は、第2固定部30に配置される。圧電素子80の対向する各側面には外部電極(図示略)がそれぞれ形成されており、各外部電極には内部電極層が電気的に接続されている。各外部電極には一対のリードフレーム101a,101bの各々の一端が固定されており、一対のリードフレーム101a,101bの各々の他端は回路基板100に接続される(
図8A)。リードフレーム101a,101bを介して、回路基板100から圧電素子80に電気信号(矩形波)が与えられ、これにより圧電素子80をZ軸方向に伸縮させることが可能となっている。なお、回路基板100は、FPC(Flexible printed circuits)からなる。
【0021】
圧電素子80の上端部には、第1シャフト81が接続されている。第1シャフト81と圧電素子80との固定方法は特に限定されないが、例えば樹脂により両者を接着することが可能である。第1シャフト81の材質は特に限定されないが、例えば金属やカーボン、あるいは樹脂等を採用することができる。この点は、後述する第2シャフト85についても同様である。第1シャフト81は、柱状からなり、圧電素子80の伸縮により往復移動する。第1シャフト81は、可動部2を摺動可能に保持し、その下端部は第2固定部30に固定され、その上端部は第3固定部50に固定される。第1シャフト81の径(直径)は、第2シャフト85の径(直径)よりも大きくなっている。また、第1シャフト81の長手方向に垂直な方向に切った面の断面積は、第2シャフト85の同方向に切った面の断面積よりも大きくなっている。
【0022】
第1シャフト81の外周面には、可動部2を構成する光学素子保持部60が摩擦係合されている。第1シャフト81の径(直径)は圧電素子80の径(一辺の長さあるいは長辺の長さ)よりも大きくなっており、第1シャフト81の端面の表面積は圧電素子80の端面の表面積よりも大きくなっている。図示の例では、第1シャフト81の形状は円柱状となっているが、その形状は特に限定されず、多角柱状であってもよい。
【0023】
慣性部材82は、角柱状からなり、圧電素子80の下端部に接続されている。慣性部材82は、駆動部3の一端を構成している。慣性部材82は第1固定部10に配置され、圧電素子80と慣性部材82との接続部の位置は第1固定部10と第2固定部30との境界部分の位置に略一致する。慣性部材82は、第1シャフト81に慣性力を与えるための慣性体としての機能を有し、圧電素子80の伸縮による変位を第1シャフト81側のみに発生させるためのものである。慣性部材82は、例えば錘(錘部材)からなり、圧電素子80および第1シャフト81よりも比重の大きい材料で構成される。慣性部材82の材質は特に限定されないが、例えばタングステン等の比重の大きい金属あるいはそのような金属を含む合金等を採用することができる。慣性部材82と圧電素子80との固定方法は特に限定されないが、例えば樹脂により両者を接着することが可能である。
【0024】
第2シャフト85は、柱状からなり、可動部2を摺動可能に支持する。第2シャフト85の下端部は第1固定部10に固定され、第2シャフト85の上端部は第3固定部50に固定される。なお、本実施形態における光学駆動装置1には、第1シャフト81と第2シャフト85とが具備されているが、第2シャフト85は駆動部3とは別に構成されており、主として固定部4としての機能を発揮する。また、第2シャフト85は、後述するように可動部3(光学素子保持部60)の回転を規制する役割を果たす。
【0025】
可動部2は、光学素子保持部60からなり、光学レンズ、光学プリズムあるいは反射鏡等の光学素子(図示略)を取付可能に構成されている。
図3Aに示すように、光学素子保持部60は、本体部61を有する。本体部61は筒状からなり、その中央部には素子設置用開口部62が形成されている。素子設置用開口部62の内面には、光学素子を設けることが可能となっている。以下において、説明の便宜のため、本体部61に具備される4つの角部をそれぞれ第1角部61a~第4角部61dと呼ぶ。
【0026】
本体部61の第1角部61aには、磁性体設置用段差部63が形成されている。磁性体設置用段差部63は、本体部61の上面からZ軸方向に沿って所定の長さで形成されている。磁性体設置用段差部63の段差面には、
図2に示すセンサ用磁石103を
図7に示すような態様で設置することが可能となっている。センサ用磁石103は、例えば接着剤等によって磁性体設置用段差部63に接着固定される。磁性体設置用段差部63のX軸方向幅およびY軸方向幅は、それぞれセンサ用磁石103のX軸方向幅およびY軸方向幅と略等しくなっており、磁性体設置用段差部63の段差高さはセンサ用磁石103の高さよりも高くなっている。
【0027】
ここで、センサ用磁石103について説明する。
図7に示すように、センサ用磁石103は、回路基板100に固定された位置センサ102に対してX軸方向に対向して配置されている。位置センサ102は、センサ用磁石103から発せられる磁界を検出するために設置されたものである。
【0028】
光学素子保持部60がZ軸方向に沿って往復移動すると、それに伴って、センサ用磁石103のZ軸方向の位置が変位する。このとき、センサ用磁石103のZ軸方向の位置に応じて、位置センサ102が検出する磁界の強さが変化する。そこで、このセンサ用磁石103から発せられる磁界の強さの変化を解析することにより、センサ用磁石103のZ軸方向の位置、すなわち光学素子保持部60のZ軸方向の位置を検出することが可能となっている。なお、回路基板100には、位置センサ102に隣接する位置に、ノイズキャンセル用のコンデンサ104が設けられている。
【0029】
図3Aに示すように、本体部61の第1角部61aには、基板対向段差面71が形成されている。基板対向段差面71は、段差形状からなり、本体部61の第1角部61aと第2角部61bとの間に位置する側部と、第1角部61aと第4角部61dとの間に位置する側部とに跨るように形成されている。基板対向段差面71は、本体部61の上記各側部と回路基板100との接触を防止するために形成されたものであり、
図7に示すように回路基板100に対向して配置される。
【0030】
図3Aに示すように、本体部61の第2角部61bには、ストッパー70a,70bが形成されている。ストッパー70aは、本体部61の第1角部61aと第2角部61bとの間に位置する側部と、第2角部61bと第3角部61cとの間に位置する側部とに跨るように形成されている。ストッパー70aは、本体部61の上面から上方に突出しており、その周囲に対して段差を形成している。ストッパー70aは光学素子保持部60の上方への移動を制限するためのものであり、ストッパー70aが第3固定部50の下面に当接するまで(あるいは、その手前の位置まで)光学素子保持部60の上方への移動が可能となっている(
図8A参照)。
【0031】
同様に、突出部70bは、本体部61の第1角部61aと第2角部61bとの間に位置する側部と、第2角部61bと第3角部61cとの間に位置する側部とに跨るように形成されている。突出部70bは、本体部61の下面から下方に突出しており、その周囲に対して段差を形成している。ストッパー70bは光学素子保持部60の下方への移動を制限するためのものであり、ストッパー70bが第2固定部30の上面に当接するまで(あるいは、その手前の位置まで)光学素子保持部60の下方への移動が可能となっている(
図8A参照)。
【0032】
本体部61の第2角部61bには、シャフト摺動用溝部64が形成されている。シャフト摺動用溝部64は、本体部61の上面から下面にかけて形成されており、本体部61の中心部に向かって凹んでいる。
図7に示すように、シャフト摺動用溝部64は、上方から見たとき、略垂直に屈曲した形状を有する。シャフト摺動用溝部64の内部には、係合部106を配置することが可能となっている。なお、係合部106の詳細については後述する。
【0033】
図3Aに示すように、シャフト摺動用溝部64の下端部には台座65が形成されている。台座65は、Z軸方向に所定の長さを有し、その下面は本体部61の下面と面一になっている。台座65には、係合部106を載置することが可能となっている。
【0034】
係合部106は、弾性を有する部材で構成され、Z軸方向に所定の長さを有する。
図7に示すように、係合部106は、上方から見て略L字状に屈曲している。係合部106は、平板形状からなる金属板材を機械加工により略90度に折り曲げることにより形成される。係合部106の形状は、シャフト摺動用溝部64の溝形状に対応しており、シャフト摺動用溝部64の内部に係合部106を係合させることが可能となっている。係合部106とシャフト摺動用溝部64との固定方法は特に限定されないが、例えば樹脂等により両者を接着固定することが可能である。係合部106は、第1シャフト81の外周面に当接し、その屈曲部分よりも一方側の部分と他方側の部分とにより第1シャフト81を挟み込む。
【0035】
図2および
図7に示すように、押圧部材105は、弾性を有する部材で構成され、例えば板バネからなる。押圧部材105の一端部は後述する押圧部材設置用孔66に例えばエポキシ系の樹脂で固定され、他端部は第1シャフト81の外周面に当接している。押圧部材105の一部は屈曲しており、これにより押圧部材105を本体部61の第2角部61bから第3角部61cにかけて本体部61の側部に沿って配置させることが可能となっている。押圧部材105は、弾性力によって、その他端部で第1シャフト81の外周面を押圧する。
【0036】
上方から見たときに、第1シャフト81の外周面には係合部106と押圧部材105とが3か所で当接し、これら各部材によって挟み込まれる。このとき、第1シャフト81と、押圧部材105および係合部106の各々との接点には、押圧部材105による押圧力に応じた摩擦力が働く。これにより、係合部106と押圧部材105とを介して、光学素子保持部60を第1シャフト81に摩擦係合させることが可能となり、駆動部3(第1シャフト81)によって可動部2(光学素子保持部60)を保持する構成が得られる。このように、第1シャフト81は、押圧部材105と係合部106とによる挟み込みの位置において、光学素子保持部60を保持(支持)する。
【0037】
図3Aおよび
図7に示すように、本体部61の第3角部61cには、押圧部材設置用孔66が形成されている。押圧部材設置用孔66は、本体部61の第2角部61bと第3角部61cとの間に位置する側部と、第3角部61cと第4角部61dとの間に位置する側部とを貫通するように形成されている。押圧部材設置用孔66のZ軸方向幅は押圧部材105のZ軸方向幅と略等しいか、これよりも大きくなっており、その内部には押圧部材105の他端部が挿入される。これにより、押圧部材105を光学素子保持部60に固定することが可能となっている。
【0038】
本体部61の第3角部61cには、T字状切り欠き67が形成されている。T字状切り欠き67は、上方から見てT字形状を有し、本体部61の上面から下方に向かって延在している。T字状切り欠き67は、その内部において押圧部材設置用孔66と接続されている。押圧部材105を押圧部材設置用孔66に固定する際には、T字状切り欠き67から樹脂を注入し、押圧部材105を押圧部材設置用孔66に樹脂で接着固定することが可能となっている。
【0039】
図3Bおよび
図7に示すように、本体部61の第4角部61dには、シャフト固定面68が形成されている。シャフト固定面68は、本体部61の上面から底面にかけて形成されており、そのZ軸方向の略中央部には一対のシャフト固定用突起69,69が形成されている。シャフト固定用突起69,69は、第2シャフト85に固定され、可動部2の回転を規制する役割を果たす。シャフト固定用突起69,69は、シャフト固定面68に対して略垂直方向に所定の長さで突出している。シャフト固定用突起69,69の突出長は、第2シャフト85の径(直径)と略等しくなっている。
【0040】
シャフト固定用突起69,69の各々の対向面には、一対の接触凸部69a,69aがそれぞれ形成されている。接触凸部69a,69aは互いに近づく方向に突出している。接触凸部69a,69aは、シャフト固定面68に対して略垂直方向に所定の長さで延在している。接触凸部69a,69aの各々の間隔は、第2シャフト85の直径と略等しくなっている。接触凸部69a,69aの各々の間に第2シャフト85を配置することにより、所定の摩擦力で接触凸部69a,69aに第2シャフト85を係合させることが可能となり、第2シャフト85に光学素子保持部60を摺動可能に固定させることが可能となっている。第2シャフト85は、シャフト固定用突起69,69(接触凸部69a,69a)の位置において、光学素子保持部60の回転を規制する。
【0041】
図8Bおよび
図8Cに示すように、第1シャフト81によって保持される可動部2の保持領域111の長さ(換言すれば、押圧部材105のZ軸方向の長さ)L1と、第2シャフト85によって支持される可動部2の支持領域112の長さ(換言すれば、シャフト固定用突起69,69のZ軸方向の長さ)L2とを対比すると、長さL1は長さL2よりも大きくなっている。
【0042】
光学駆動装置1を側方から見たときに、支持領域112は、保持領域111の両端よりも内側に配置される。すなわち、支持領域112の上端は保持領域111の上端よりも下方に配置され、支持領域112の下端は保持領域111の下端よりも上方に配置される。
【0043】
図2に示すように、本実施形態における固定部4は、第1固定部10と第2固定部30と第3固定部50とを有し、これらにより駆動部3を保持する。固定部4は、例えばLCP(液晶ポリマー)等の樹脂で構成される。第1固定部10および第2固定部30は固定部4の下部(従来技術におけるベース部材に対応)を構成し、第3固定部50は主として固定部4の上部を構成する。本実施形態における固定部4は、その下部が第1固定部10と第2固定部30の2つの部分に分割されている。
【0044】
図4に示すように、第1固定部10は、第1ベース部11を有する。第1ベース部11は略平板形状を有し、その略中央部には第1開口部12が形成されている。第1開口部12は、前述の光学素子保持部60に形成された素子設置用開口部62に対応する位置に形成されている。以下において、説明の便宜のため、第1ベース部11に具備される4つの角部をそれぞれ第1角部11a~第4角部11dと呼ぶ。
【0045】
第1ベース部11の第1角部11aと第2角部11bとの間に位置する側部には、第1側方凹部15が形成されている。第1側方凹部15は、第1ベース部11のX軸方向の一端部から他端部にかけて形成されており、Y軸方向に所定の深さを有する。第1側方凹部15のY軸方向の深さは
図2に示す回路基板100の厚みと略等しくなっており、第1側方凹部15には回路基板100の一部が配置される。
【0046】
第2角部11bには、段差角部16が形成されている。段差角部16は、第1ベース部11の第1角部11aと第2角部11bとの間に位置する側部と、第2角部11bと第3角部11cとの間に位置する側部とに跨るように形成されている。段差角部16の段差面は、上方から見て略三角形状を有し、第1ベース部11の上面よりも所定の深さだけ下方に形成されている。
【0047】
段差角部16には、固定用凹部17が形成されている。固定用凹部17は上方から見て略四角形状を有し、その形状は
図2に示す慣性部材82の底面形状に対応した形状となっている。ただし、固定用凹部17の形状は、図示の形状に限定されるものではなく、慣性部材82の底面形状に応じて適宜変更してもよい。
【0048】
図8Bに示すように、固定用凹部17は所定の深さを有し、その内部には慣性部材82を配置することが可能となっている。固定用凹部17の内部に慣性部材82を収容することにより、慣性部材82を固定用凹部17の内部に保持(固定)することが可能となっている。すなわち、固定用凹部17は、慣性部材82を保持するための第1保持部21として機能する。
【0049】
図4に示すように、固定用凹部17は、固定面171と、外壁部172とを有する。固定面171は、慣性部材82(
図2)の底面が固定される面である。外壁部172は、固定面171の外縁部を取り囲むように形成されており、固定面171に対して略直角を為すように上方に向かって延在している。外壁部172の高さは、例えば、慣性部材82の高さと略等しくてもよい。
【0050】
以下の説明において、固定面171とはZ軸方向の反対側に位置する第1ベース部11の底面(第1固定部10の底面)を基準面110と呼ぶ。基準面110は、XY平面に平行な理想的な面であり、Z軸に平行となるように理想的に配置された駆動部3(第1シャフト81)の軸芯C(
図9)に対して直交する。
【0051】
図9に示すように、本実施形態では、固定面171の一部には、溶融部173が形成されている。溶融部173は、例えばレーザ等の高エネルギービームを固定面171に照射することにより形成される。溶融部173は、三次元的な溶融範囲を有する溶融痕からなり、外観観察やその断面を観察することによって、その痕跡を知ることができる。
【0052】
溶融部173が形成された位置では、固定面171は溶融しており、固定面171の表面形状あるいは表面状態が変化している。以下に示すように、本実施形態では、慣性部材82の底面820(固定面171に固定あるいは載置される慣性部材82の表面)の表面形状に即した形で、固定面171の表面形状を変化させることにより、慣性部材82を固定用凹部17に配置したときに、基準面110に対する駆動部3(圧電素子80と第1シャフト81と慣性部材82の結合体)の垂直度を十分に確保することが可能となっている。
【0053】
図11Aに示すように、溶融部173は、レーザの照射により固定面171に形成された複数の照射痕174の集合体からなる。溶融部173の範囲は、固定面171に対してレーザを照射する範囲によって画定される。レーザのビーム径が0.2~0.4mmの場合、照射痕174の深さは、好ましくは20~50μm、さらに好ましくは30~40μmとなる。なお、溶融部173は、単一の照射痕174で形成されていてもよい。
【0054】
図13に示すように、固定面171にレーザを一回だけ照射した場合において、照射痕174にはクレータ状の形状が具備される。照射痕174は、例えば、Z軸方向から見て略円形状を有し、中央突出部174aと、外周突出部174bと、溝部174cとを有する。ただし、照射痕174の形状は図示の形状に限定されるものではなく、種々の形状を具備していてもよい。
【0055】
中央突出部174aは、凸形状を有し、照射痕174の略中央部に形成される。中央突出部174aは、裾野を有するようにテーパ状に形成されている。
【0056】
外周突出部174bは、略リング形状からなる凸形状を有し、照射痕174の外周部(外縁部)に形成される。外周突出部174bの高さは、平均して、中央突出部174aの高さよりも高くなっている。外周突出部174bは、裾野を有するようにテーパ状に形成されている。
【0057】
溝部174cは、中央突出部174aと、外周突出部174bとの間に形成されている。溝部174cは、リング形状を有し、中央突出部174aの周囲を囲むように周方向に延在している。溝部174cは、所定の深さを有し、溝部174cの底面の位置は、固定面171の表面のうち照射痕174aが形成されていない部分の位置よりも低くなっている。
【0058】
このように、溶融部173(照射痕174)が形成された位置では、固定面171は溶融しており、えぐられた状態(凹みあるいは窪みが形成された状態)となっている。
図11Aに示すように、溶融部173が複数の照射痕174で形成される場合、複数の照射痕174は互いに隣接した位置に形成される。
【0059】
図示の例では、複数の照射痕174の各々は整列して形成されており、複数の照射痕174の各々の間には隙間が形成されている。ただし、隣接する照射痕174は互いに接していてもよく、あるいは
図11Bに示すように隣接する照射痕174の一部が互いに重複していてもよい。すなわち、隣接する照射痕174の各々において、一方の照射痕174の外周突出部174b(
図13)が、他方の照射痕174の外周突出部174bと重複していてもよく、この場合、各照射痕174が連結し(融合し)、照射痕174の大きさを増大させる方向に調整することができる。また、固定面171の表面形状(例えば平坦度)の調整が容易になるだけでなく、その精度を高めることができる。なお、隣接する照射痕174の各々において、重複の範囲は
図11Bに示す範囲に限定されるものではなく、例えば、一方の照射痕174の中央突出部174a(
図13)が他方の照射痕174の中央突出部174aと重複していてもよく、あるいは一方の照射痕174の溝部174c(
図13)が他方の照射痕174の溝部174cと重複していてもよい。
【0060】
溶融部173の形成段階において、固定面171の同一位置に、レーザを複数回にわたって照射する場合がある。この場合、固定面171の任意の位置に、レーザを1回だけ照射する場合に比べて、照射痕174の深さが深くなり、固定面171に深いえぐり(溝あるいは凹部)を形成することが可能となる。
【0061】
溶融部173が形成された位置では、溶融部173が形成されていない位置に比べて、基準面110を基準とした固定面171の高さ位置が低くなる。つまり、溶融部173を形成することにより、固定面171の基準面110からの高さを調整することが可能となっている。
【0062】
図9に示す例では、固定面171のある位置において、固定面171にY軸方向に沿ってレーザが照射され、溶融部173が固定面171にY軸方向に沿って形成されている。また、固定面171において、レーザ照射は、Y軸正方向側に向かうにしたがって、同一箇所に照射する照射回数が多くなるよう行われている。そのため、固定面171は、Y軸正方向側に向かうにしたがって、基準面110からの高さが低くなる(溶融部173の深さが深くなる)ように調整され、固定面171には、Y軸正方向側に向かうにしたがって基準面110に対して近づくように傾斜する傾斜部175が形成されている。なお、図面には、レーザ照射を施す前の状態の固定面171を二点鎖線で示している。レーザ照射を施す前の状態では、固定面171は、基準面110に対して略平行となっている。
【0063】
溶融部173の大きさあるいは形状等は、慣性部材82の底面820の表面形状あるいは表面状態に依存する。例えば、
図9に示す例では、慣性部材82の底面820は、加工精度のばらつきにより、第1ベース部材11の基準面110に向かって張り出しており、Y軸正方向側に向かうにしたがって、基準面110に対して近づくにように傾斜している。そのため、図示するように、底面820には、底面傾斜部821が形成されている。なお、図面には、理想的な底面820を二点鎖線で示している。この理想面は、基準面110に対して略平行となっている。また、底面820の加工精度のばらつきは、例えば50μm前後であり、固定面171の加工精度のばらつきよりも大きい。
【0064】
固定面171の表面形状は、この慣性部材82の底面820の張り出し形状に対応しており、底面820を固定面171に固定したときに、底面820の張り出し部分を吸収する(収容する)ことができるような形状に調整されている。すなわち、固定面171の表面形状は、底面820の張り出し部分に対して嵌合可能な形状となっており、具体的には、固定面171は、底面820の底面傾斜部821に対応した傾斜部175を有している。
【0065】
慣性部材82の底面820を固定面171に固定したときに、固定面171における傾斜部175の傾斜方向と、底面820における底面傾斜部821の傾斜方向とは略一致するようになっている。慣性部材82の底面820を固定面171に固定するときに、底面820の底面傾斜部821を、固定面171の傾斜部175に嵌合させるように配置することにより、傾斜部175において、底面820の加工精度のばらつき(底面傾斜部821)を吸収することができる。これにより、駆動部3の軸芯Cが第1ベース部材11の基準面110と略直交し、基準面110に対する駆動部3(慣性部材82および第1シャフト81等)の垂直度を十分に確保することができる。
【0066】
このように、本実施形態では、慣性部材82の底面820にZ軸負方向側へ-εのゆがみが生じた場合には、この-εのゆがみと同様の分布で、固定面171のZ軸負方向側へ-εのゆがみが生じるよう、固定面171に溶融部173を形成することにより、底面820のゆがみを相殺することが可能となっている。
【0067】
図11Aに示すように、固定面171は、Z軸方向に沿って見たとき、4辺を有する多角形状からなる外観形状を有するが、この場合、溶融部173は、好ましくは固定面171の2辺以上3辺以下の領域に跨るように形成される。すなわち、本実施形態では、溶融部173は、固定面171の全体にわたって一様に形成されてはおらず、固定面171のコーナー部に偏在するように形成されている。
【0068】
より詳細には、溶融部173は、固定面171において、隣接する辺171aおよび辺171bを2辺とする略三角形状の領域(コーナー部)に複数の照射痕174を形成することにより、固定面171の2辺の領域に跨るように形成されている。溶融部173の範囲(大きさ)は、図示の範囲に限定されず、固定面171の2辺に跨るように形成されていれば、これよりも広くてもよく、あるいは狭くてもよい。なお、
図11Aに示す溶融部173の範囲は、
図9に示す溶融部173の範囲と一致している訳ではないが、
図11Aに示す溶融部173は、
図9に示す溶融部173と同様に、Y軸正方向側およびX軸正方向側に向かうにしたがって、基準面110に近づくように傾斜している。
【0069】
溶融部173をこのような範囲に形成した場合、固定面171は、主として、図中の二点鎖線で示す仮想線よりも一方側(辺171aおよび辺171bが配置されている側)で傾斜する。より詳細には、固定面171は、上記仮想線で示す位置から、辺171aと辺171bとが交差する角部に向かって傾斜する。
【0070】
図9に示す慣性部材82の底面820には、経験則から、加工精度のばらつきにより、例えばいずれか2辺以上3辺以下の領域に跨るように傾斜や凹凸(ゆがみ)等が形成される場合がある。慣性部材82の底面820の2辺に跨る領域に傾斜等が形成された場合(底面820のいずれか1つの角部に向かって傾斜等が形成された場合)には、
図11Aに示すように、固定面171に、2辺の領域に跨るように溶融部173を形成しておくことにより、溶融部173の範囲と、慣性部材82の底面820の傾斜等の範囲とを略一致させた状態で、底面820を固定面171に固定することが可能となり、底面820の加工精度のばらつき(傾斜等)を溶融部173で吸収することができる。
【0071】
図12に示すように、溶融部173は、固定面171において、隣接する辺171a、辺171bおよび辺171dを3辺とする略四角形状の領域に複数の照射痕174を形成することにより、固定面171の3辺の領域に跨るように形成されていてもよい。この場合、溶融部173は、固定面171のY軸正方向側に偏在するように形成される。溶融部173の範囲(大きさ)は、図示の範囲に限定されず、固定面171の3辺に跨るように形成されていれば、これよりも広くてもよく、あるいは狭くてもよい。なお、
図11Aに示す溶融部173の範囲は、
図9に示す溶融部173の範囲と一致している訳ではないが、
図11Aに示す溶融部173は、
図12に示す溶融部173と同様に、Y軸正方向側に向かうにしたがって、基準面110に近づくように傾斜している。
【0072】
溶融部173をこのような範囲に形成した場合、固定面171は、主として、図中の二点鎖線で示す仮想線よりも一方側(辺171aが配置されている側)で傾斜する。より詳細には、固定面171は、上記仮想線で示す位置から、辺171aに向かってY軸方向に沿って傾斜する。
【0073】
慣性部材82の底面820の3辺に跨る領域に傾斜等が形成された場合(底面820のいずれか1つの辺に向かってX軸方向あるいはY軸方向に沿って傾斜等が形成された場合)には、
図12に示すように、固定面171に、3辺以上の領域に跨るように溶融部173を形成しておくことにより、溶融部173の範囲と、慣性部材82の底面820の傾斜等の範囲とを略一致させた状態で、底面820を固定面171に固定することが可能となり、底面820の加工精度のばらつき(傾斜等)を溶融部173で吸収することができる。
【0074】
なお、溶融部173は、必ずしも傾斜部175を具備している必要はない。
図10に示すように、加工精度のばらつきにより、慣性部材82の底面820に凸部822が局所的に形成されている場合には、これと嵌合する凹部176が固定面171に局所的に形成されていてもよい。凹部176は、固定面171において、凸部822と対応する位置に形成されており、当該位置にレーザを照射し複数の照射痕174を形成することにより得られる。
【0075】
凹部176をZ軸方向から見たときの形状は、凸部822をZ軸方向から見たときの形状と同様であり、円形、楕円形、四角形、その他の多角形等、種々の形状をとることができる。凹部176の深さは、凸部176の高さと同様となっている。凹部176の大きさ(X軸方向幅およびY軸方向幅)は、凸部822の大きさと同様となっている。ただし、凹部822の大きさは、凸部176の大きさよりも大きくてもよい。この場合も、凸部822を凹部176に嵌合させることができるからである。
【0076】
図10に示す例異においても、凸部822を凹部176に嵌合させた状態で、慣性部材82の底面820を固定面171に固定することが可能となり、凹部176において、底面820の加工精度のばらつき(凸部822)を吸収することが可能となる。これにより、慣性部材82の底面820を固定面171に固定したときに、駆動部3の軸芯Cが第1ベース部材11の基準面110と略直交し、基準面110に対する駆動部3(慣性部材82および第1シャフト81等)の垂直度を十分に確保することができる。
【0077】
なお、慣性部材82の底面820に複数の凸部822が局所的(離散的あるいはスポット状)に形成されている場合には、底面820の表面形状に対応するように、固定面171には、複数の凹部176が局所的(離散的あるいはスポット状)に形成されていてもよい。また、固定面171には、
図9に示す傾斜部175と、
図10に示す凹部176とが混在していてもよい。
【0078】
慣性部材82は、樹脂(
図14Cに示す樹脂200)によって固定用凹部17に接着される。接着用の樹脂としては、好ましくは紫外線硬化樹脂が用いられる。樹脂が固定用凹部17の内部に充填されることによって、その接着力により、慣性部材82を固定用凹部17の内部に強固に保持させることが可能となっている。
【0079】
このように慣性部材82を固定用凹部17の内部に配置し、さらにこれを樹脂で接着固定することにより、第1保持部21によって、駆動部3の下端部に位置する慣性部材82を強固に保持することが可能となっている。慣性部材82を第1保持部21に固定するための樹脂は、好ましくはシリコーン系の樹脂である。シリコーン系の樹脂を用いることにより、駆動部3の振動や外部からの衝撃を樹脂で吸収することが可能となり、第1保持部21によって駆動部3の一部を安定した状態で保持することができる。
【0080】
図4に示すように、第1ベース部11の第3角部11cには、段差幅狭部14が形成されている。段差幅狭部14は、第1ベース部11の上面と側面(第2角部11bと第3角部11cとの間に位置する側面)とが交差する角部に形成されている。段差幅狭部14には、後述する第3固定部50の幅狭固定片54a(
図6)が接着により固定される。
【0081】
段差幅狭部14に近接する位置には、制限凸部19が形成されている。制限凸部19は、略円柱形状からなり、第1ベース部11の上面から上方に向かって突出している。制限凸部19の端部にはテーパ面が形成されている。制限凸部19は、後述する第2固定部30の底面に形成された制限凹部44(
図5)に係合可能に構成されており、制限凸部19と制限凹部44とを係合させることにより、第1固定部10と第2固定部30との間の相対移動や回転を防止することが可能なっている。
図8Bに示すように、制限凸部19は、第1固定部10(固定用凹部17)が慣性部材82を保持する位置(第1保持部21)よりも上方に離間した位置に位置する。
【0082】
図4に示すように、第1ベース部11の上面には、制限凸部19の周囲を取り囲むように、リング状溝部20が形成されている。リング状溝部20は、第1固定部10と第2固定部30とを組み合わせるときに、第1固定部10の上面が第2固定部30の底面に対して干渉することを防止するためのものである。すなわち、制限凸部19の周囲にリング状溝部20を形成することにより、制限凸部19の周囲のバリによって第1ベース部11の上面と第2ベース部31の底面との接合部におけるがたつきを防止することが可能となっている。
【0083】
第1ベース部11の第4角部11dには、第1小径孔18が形成されている。第1小径孔18は、貫通孔からなり、その内部に
図2に示す第2シャフト85を挿通させることが可能となっている。第1小径孔18は上方から見て円形状を有しており、第1小径孔18の径(直径)は第2シャフト85の径(直径)と略等しいか、それよりも大きくなっている。第1小径孔18の内部に第2シャフト85の下端部を挿通させることにより、第2シャフト85の下端部は第1小径孔18に保持(支持)される。すなわち、
図8Bに示すように、第1小径孔18は、第2シャフト85の下端部を保持するための第4保持部22として機能する。第2シャフト85の下端部は、樹脂によって第1小径孔18に接着される。
【0084】
このように第2シャフト85の下端部を第1小径孔18の内部に配置し、さらにこれを樹脂で接着固定することにより、第4保持部22によって、第2シャフト85の下端部を強固に保持することが可能となっている。
【0085】
第2シャフト85の下端部を第4保持部22に固定するための樹脂は、好ましくはエポキシ系の樹脂である。第2シャフト85は第1固定部10と第3固定部50との間を接続する柱としての機能を有するため、エポキシ系の樹脂を用いて第2シャフト85の下端部を第1固定部10に固定することにより、第2シャフト85の下端部が第1固定部10に十分な接着力で固定され、固定部4の構造強度を十分に確保することが可能となる。また、第1固定部10に対して第2シャフト85が安定した状態で保持されるため、第2シャフト85により光学素子保持部60を安定した状態で支持することが可能となる。
【0086】
図4に示すように、第1角部11aと第4角部11dとの間には、段差幅広部13が形成されている。段差幅広部13は、第1ベース部11の上面と側面(第1角部11aと第4角部11dとの間に位置する側面)とが交差する角部に形成されている。段差幅広部13のY軸方向幅は、段差幅狭部14のY軸方向幅よりも広くなっている。段差幅広部13には、第3固定部50の幅広固定片53a(
図6)が接着により固定される。
【0087】
図8Aに示すように、第2固定部30は第1固定部10に支持され、第1固定部10の上方に配置(載置)される。
図5に示すように、第2固定部30は、第2ベース部31を有する。第2ベース部31は略平板形状を有し、その略中央部には第2開口部32が形成されている。第2開口部32は、第1固定部10の第1開口部12に対応する位置に形成されている。以下において、説明の便宜のため、第2ベース部31に具備される4つの角部をそれぞれ第1角部31a~第4角部31dと呼ぶ。
【0088】
第2ベース部31の第1角部31aには、第2側方凹部35が形成されている。第2側方凹部35は、第2ベース部31の第1角部31aと第2角部31bとの間に位置する側部に形成されており、Y軸方向に所定の深さを有する。第2側方凹部35の凹部底面は、
図4に示す第1固定部10の第1側方凹部15の凹部底面と略面一となっており、第1側方凹部15と第2側方凹部35とに跨るように
図2に示す回路基板100の一部を配置することが可能となっている。
【0089】
第2ベース部31の第2角部32aには、長尺突出部36と短尺突出部37とが形成されている。長尺突出部36と短尺突出部37とは直交するように配置されており、
図8Aに示すように第1固定部10の段差角部16の内側に配置される。
図5に示すように、長尺突出部36は第2ベース部31の第2角部31bと第3角部31cとの間に位置する側部に形成され、短尺突出部37は第2ベース部31の第1角部31aと第2角部31bとの間に位置する側部に形成されている。長尺突出部36はY軸方向に沿って延在しており、X軸方向に所定の厚みを有する。短尺突出部37はX軸方向に沿って延在しており、Y軸方向に所定の厚みを有する。長尺突出部36の下方への突出長は、短尺突出部37の下方への突出長よりも大きくなっており、長尺突出部36の底面と短尺突出部37の底面との間には段差が形成されている。
【0090】
短尺突出部37の底面には、突出柱状部38が形成されている。突出柱状部38は、長尺突出部36に対して所定距離だけ離間した位置に形成されており、下方に向かって突出している。突出柱状部38の下方への突出長は、長尺突出部36の底面と短尺突出部37の底面との段差幅に等しくなっている。
【0091】
突出柱状部38のX軸方向の一方側には、フレーム挿通路39aが形成されている。フレーム挿通路39aは突出柱状部38と長尺突出部36との間に形成された空間からなり、フレーム挿通路39aを通じて
図2に示すリードフレーム101aを突出柱状部38の周囲に沿うように回路基板100に向けて引き出すことが可能となっている(
図8A)。
【0092】
突出柱状部38を挟んでフレーム挿通路39aとは反対側には、フレーム挿通路39bが形成されている。フレーム挿通路39bはフレーム挿通路39aと同様に空間からなり、フレーム挿通路39bを通じて
図2に示すリードフレーム101bを突出柱状部38の周囲に沿うように回路基板100に向けて引き出すことが可能となっている(
図8A)。突出柱状部38を挟んで一方側からリードフレーム101aを引き出すとともに、他方側からリードフレーム101bを引き出すことにより、リードフレーム101a,101bの各々の間の絶縁を良好に図ることが可能となっている。
【0093】
第2ベース部31の第2角部31bには、第2大径孔42が形成されている。第2大径孔42は、貫通孔からなり、第2ベース部31をZ軸方向に貫いている。第2大径孔42には、第1シャフト81を挿通させることが可能となっている。
【0094】
第2大径孔42は上方から見て円形状を有しており、第2大径孔42の径(直径)は第1シャフト81の径(直径)よりも略等しいか、それよりも大きくなっている。
図8Bに示すように、第2大径孔42の内部には第1シャフト81の下端部が配置(挿通)され、第1シャフト81の下端部は第2大径孔42の内部に保持(固定)される。すなわち、第2大径孔42は、第1シャフト81の下端部を保持するための第2保持部45として機能する。このように、本実施形態では、第2固定部30が駆動部3の一部を保持する構成が具備されている。
【0095】
第1シャフト81の下端部は、樹脂によって第2大径孔42に接着される。樹脂が第2大径孔42の内部に充填されることによって、その接着力により、第1シャフト81の下端部を第2大径孔42の内部に強固に保持させることが可能となっている。
【0096】
このように第1シャフト81を第2大径孔42の内部に配置し、さらにこれを樹脂で接着固定することにより、第2保持部45によって、駆動部3の下方に位置する第1シャフト81の下端部を強固に保持することが可能となっている。第1シャフト81の下端部を第2保持部45に固定するための樹脂は、好ましくはシリコーン系の樹脂である。シリコーン系の樹脂を用いることにより、駆動部3の振動や外部からの衝撃を樹脂で吸収することが可能となるため、第2保持部45によって駆動部3の一部を安定した状態で保持することが可能となる。以上のように、本実施形態では、第1固定部10では第1保持部21(固定用凹部17)により駆動部3が保持され、第2固定部30では第2保持部45(第2大径孔42)により駆動部3が保持される。
【0097】
図5に示すように、第2ベース部31の第2角部31bと第3角部31cとの間には、接触固定部41が形成されている。
図8Aに示すように、接触固定部41は、第2ベース部31の底面の一部を構成しており、第1固定部10の第1ベース部11の上面に当接し、これに固定(支持)される。なお、第2ベース部31の底面は、接触固定部41以外の部分においても、第1ベース部11の上面との当接面を構成するが、本実施形態では、長尺突出部36に対してY軸方向に隣接して形成された当接面を特に接触固定部41と呼んでいる。
【0098】
接触固定部41と第1ベース部11の上面とが当接した状態において、第1固定部10の上面と第2固定部30の底面との間には隙間が一部形成されている。特に、長尺突出部36の底面と第1ベース部11の上面との間には、上記隙間として、樹脂充填空間40が形成されている。樹脂充填空間40には例えばエポキシ系の樹脂が充填され、樹脂を介して、第1ベース部11の上面と長尺突出部36の底面とを強固に固定することが可能となっている。なお、突出柱状部38の底面と第1ベース部11の上面との間にも同様の隙間が形成されている。
【0099】
図5に示すように、第2ベース部31の第3角部31cには、凹状幅狭部34が形成されている。凹状幅狭部34は、第2角部31bと第3角部31cとの間に位置する側部に形成されており、X軸方向に所定の深さを有する。凹状幅狭部34の凹部底面は、
図4に示す第1固定部10の段差幅狭部14の凹部底面と略面一に配置され、凹状幅狭部34と段差幅狭部14とに跨るように、第3固定部50の幅狭固定片54a(
図6)が接着により固定される。なお、凹状幅狭部34の底面には、そのY軸方向の両側に湾曲状の窪みが形成されているが、このような窪みを形成することにより、その内部に樹脂が充填され、凹状幅狭部34および段差幅狭部14と幅狭固定片54aとの接着性を高めることが可能となっている。
【0100】
凹状幅狭部34に隣接する位置には、制限凹部44が形成されている。制限凹部44は、第2ベース部31の底面に形成されており、第1固定部10の制限凸部19に対応する位置に形成されている。制限凹部44は、制限凸部19に対応した形状を有し、制限凸部19に係合可能に形成されている。
【0101】
第2ベース部31の第4角部31dには、第2小径孔43が形成されている。第2小径孔43は、貫通孔からなり、第2ベース部31をZ軸方向に貫いている。第2小径孔43は、第2開口部32を挟んで、第2大径孔42に対して対角線上に配置されている。第2小径孔43は上方から見て円形状を有しており、
図8Bおよび
図8Cに示すように、第2小径孔43の内部には第2シャフト85を挿通させることが可能となっている。第2小径孔43の径(直径)は第2シャフト85の径と略等しいか、それよりも大きくなっており、また第2大径孔42の径よりも小さくなっている。
【0102】
第2小径孔43では、第2シャフト85はその内部を挿通するのみであり、その挿通部分は第2小径孔43の内部に樹脂等で固定されていない。第2小径孔43の径は第2シャフト85の径と略等しくなっているため、第2シャフト85を第2小径孔43の内部に挿通させたとき、第2小径孔43によって、その挿通部分が保持される。
【0103】
図5に示すように、第2ベース部31の第1角部31aと第4角部31dとの間に位置する側部には、凹状幅広部33が形成されている。
図8Cに示すように、凹状幅広部33のY軸方向幅は第1固定部10の段差幅広部13のY軸方向幅と略等しくなっており、凹状幅広部33の凹部底面と段差幅広部13の凹部底面とは略面一となっている。第1固定部10と第2固定部30とを組み合わせたとき、凹状幅広部33と段差幅広部13とに跨るように、第3固定部50の幅広固定片53a(
図6)が接着により固定される。
【0104】
図6に示すように、第3固定部50は、天板部51を有する。天板部51は略平板形状を有し、その略中央部には第3開口部52が形成されている。第3開口部52は、第1固定部10の第1開口部12および第2固定部30の第2開口部32に対応する位置に形成されている。以下において、説明の便宜のため、天板部51に具備される4つの角部をそれぞれ第1角部51a~第4角部51dと呼ぶ。
【0105】
天板部51の第2角部51bには、第3大径孔55が形成されている。第3大径孔55は、貫通孔からなり、天板部51をZ軸方向に貫いている。第3大径孔55には、第1シャフト81を挿通させることが可能となっている。
【0106】
第3大径孔55は上方から見て円形状を有しており、第3大径孔55の径(直径)は第1シャフト81の径と略等しいか、それよりも大きくなっている。
図8Bに示すように、第3大径孔55の内部には第1シャフト81の上端部が配置(挿通)され、第1シャフト81の上端部は第3大径孔55の内部に保持(固定)される。すなわち、第3大径孔55は、第1シャフト81の上端部を保持するための第3保持部58として機能する。このように、本実施形態では、第3固定部30が駆動部3の一部を保持する構成が得られ、さらに第3固定部50が第1シャフト81を介して第1固定部10および第2固定部30に支持される構成が得られる。
【0107】
第1シャフト81の上端部は、樹脂によって第3大径孔55に接着される。樹脂が第3大径孔55の内部に充填されることによって、その接着力により、第1シャフト81の上端部を第3大径孔55の内部に強固に保持させることが可能となっている。
【0108】
このように第1シャフト81を第3大径孔55の内部に配置し、さらにこれを樹脂で接着固定することにより、第3保持部58によって、駆動部3の上方に位置する第1シャフト81の上端部を強固に保持することが可能となっている。第1シャフト81の上端部を第3保持部58に固定するための樹脂は、好ましくはシリコーン系の樹脂である。シリコーン系の樹脂を用いることにより、駆動部3の振動や外部からの衝撃を樹脂で吸収させることが可能となるため、第3保持部58によって駆動部3の一部を安定した状態で保持することが可能となっている。また、第1シャフト81の熱収縮(線膨張)に起因して生じ得る第1シャフト81の上端部と第3大径孔55との接合部の不具合を防止することが可能となる。
【0109】
ここで、第1シャフト81の上端部が第3固定部50の第3大径孔55の内部に固定される位置と、第1シャフト81の下端部が第2固定部30の第2大径孔42の内部に固定される位置との間の距離(第1シャフト81の上端部および下端部が固定される固定部4の各固定位置間の距離、あるいは第2保持部45と第3保持部58との間の距離)をL3とする。また、第2シャフト85の上端部が第3固定部50の第3小径孔56の内部に固定される位置と、第2シャフト85の下端部が第1固定部10の第1小径孔18の内部に固定される位置との間の距離(第2シャフト85の各端部が固定される固定部4の各固定位置間の距離、あるいは第4保持部22と第5保持部59との間の距離)をL4とする。本実施形態では、距離L3は距離L4よりも小さくなっている。
【0110】
図6に示すように、天板部51の第3角部51cには、幅狭突出部54が形成されている。幅狭突出部54は、天板部51の第2角部51bと第3角部51cとの間に位置する側部に形成されている。幅狭突出部54は、YZ平面に平行な面を有し、下方に突出している。
図8Aに示すように、第3固定部50を第1固定部10および第2固定部30に組み合わせたときに、幅狭突出部54は天板部51と第2固定部30との間を接続する。
【0111】
幅狭突出部54の下端部には、幅狭固定片54aが形成されている。幅狭固定片54aのY軸方向幅は、幅狭突出部54のY軸方向幅よりも小さくなっており、
図8Aに示すように、第1固定部10の段差幅狭部14および第2固定部30の凹状幅狭部34の各々のY軸方向幅と略等しくなっている。幅狭固定片54aは、Z軸方向に接続された段差幅狭部14および凹状幅狭部34に跨るように配置され、これらに対して樹脂で接着固定される。
【0112】
図6に示すように、天板部51の第4角部51dには、第3小径孔56が形成されている。第3小径孔56は、貫通孔からなり、天板部51をZ軸方向に貫いている。第3小径孔56は、第3開口部52を挟んで、第3大径孔55に対して対角線上に配置されている。第3小径孔56は上方から見て円形状を有しており、
図8Bおよび
図8Cに示すように、第3小径孔56の内部には第2シャフト85を挿通させることが可能となっている。第3小径孔56の径(直径)は第2シャフト85の径と略等しいか、それよりも大きくなっており、また第3大径孔55の径よりも小さくなっている。
【0113】
第3小径孔56の内部には第2シャフト85の上端部が配置(挿通)され、第2シャフト85の上端部は第3小径孔56の内部に保持(固定)される。すなわち、第3小径孔56は、第2シャフト85の上端部を保持するための第5保持部59として機能する。
【0114】
第2シャフト85の上端部は、樹脂によって第3小径孔56に接着される。樹脂が第3小径孔56の内部に充填されることによって、その接着力により、第2シャフト85の上端部を第3小径孔56の内部に強固に保持させることが可能となっている。第2シャフト85の上端部を第5保持部59に固定するための樹脂は、好ましくはシリコーン系の樹脂である。シリコーン系の樹脂を用いることにより、駆動部3の振動や外部からの衝撃を樹脂で吸収させることが可能となる。また、第2シャフト85の熱収縮(線膨張)に起因して生じ得る第2シャフト85の上端部と第3小径孔56との接合部の不具合を防止することが可能となる。
【0115】
第2シャフト85の上端部には、その表面積が大きくなるよう、テーパ面85aが形成されている。そのため、第2シャフト85の上端部では、第3小径孔56の内部に充填された樹脂との接着面積を十分に確保することが可能となっており、樹脂を介して、第2シャフト85を第3小径孔56の内部に強固に固定することができる。また、テーパ面85aが形成されることにより、第3小径孔56の内部にその外側(上方)から樹脂を流し込みやすくなるといった効果も得られる。なお、第2シャフト85の下端部にも同様のテーパ面が形成されており、第1固定部10の第1小径孔18の内部に充填された樹脂との接着面積を十分に確保することが可能となっている。
【0116】
図6および
図8Cに示すように、天板部51の第1角部51aと第4角部51dとの間に位置する側部には、幅広突出部53が形成されている。幅広突出部53は、YZ平面に平行な面を有し、下方に突出している。第3固定部50を第1固定部10および第2固定部30に組み合わせたときに、幅広突出部53は天板部51と第2固定部30との間を接続する。
【0117】
図6および
図8Cに示すように、幅広突出部53の下端部には、幅広固定片53aが形成されている。幅広固定片53aのY軸方向幅は、幅広突出部53のY軸方向幅よりも小さくなっており、第1固定部10の段差幅広部13および第2固定部30の凹状幅広部33の各々のY軸方向幅と略等しくなっている。幅広固定片53aは、Z軸方向に接続された段差幅広部13および凹状幅広部33に跨るように配置され、これらに対して樹脂で接着固定される。
【0118】
図6および
図8Aに示すように、幅広突出部53の内面には段差が形成されており、その段差により低くなった部分には段差状側面57が形成されている。段差状側面57には、回路基板100の一部が配置される。段差状側面57に回路基板100の一部を配置したとき、回路基板の表面と幅広突出部53の内面(段差状側面57に隣接する部分)とが略面一となる。
【0119】
図2に示すように、カバー90は、SUS等の金属で構成され、カバー天板部91を有する。カバー天板部91は略平板形状を有し、その略中央部にはカバー開口部92が形成されている。カバー開口部92は、第3固定部50の第3開口部52に対応する位置に形成されている。
【0120】
カバー天板部91の側方には4つの下方延在部93が一体的に形成されており、カバー天板部91の側方は各下方延在部93によって取り囲まれている。各下方延在部93は、下方に向かって延在しており、隣接する下方延在部93,93の各々の間には、溝部94が形成されている。
図1に示すように、下方延在部93は光学駆動装置1の周囲を取り囲むように配置される。
【0121】
次に、
図2および
図14A~
図14D等を参照しつつ、光学駆動装置1の製造方法について説明する。まず、
図2に示す各部材を準備する。なお、駆動部3を構成する圧電素子80と第1シャフト81と慣性部材82とについては、予めこれらの部材を組み合わせた状態で準備しておく。これらの部材の組立体は、圧電素子80の上端部に樹脂を用いて第1シャフト81の下端部を接着するとともに、圧電素子80の下端部に樹脂を用いて慣性部材82の上端部を接着することにより形成される。
【0122】
第3固定部50については、その段差状側面57に予め回路基板100の一部を固定した状態で準備しておいてもよい。回路基板100は直角に屈曲した屈曲部を有しているが、この屈曲部については回路基板100を第3固定部100に固定した後に行うことが好ましい。光学素子保持部60については、
図7に示すように、その押圧部材設置用孔66に押圧部材105の端部を挿入しておき、またシャフト摺動用溝部64に係合部106を係合させておき、また磁性体設置用段差部63にセンサ用磁石103を載置しておいてもよい。
【0123】
次いで、
図2に示す第3固定部50に第2固定部30を組み合わせる。このとき、第3固定部50の幅広固定片53aを第2固定部30の凹状幅広部33に係合させることにより、第3固定部50の幅広突出部53の下端部が第2固定部30の第2ベース部31の上面に固定される。また、第3固定部50の幅狭固定片54aを第2固定部30の凹状幅狭部34に係合させることにより、第3固定部50の幅狭突出部54の下端部が第2固定部30の第2ベース部31の上面に固定される。これにより、第3固定部50に第2固定部30が仮固定される。なお、第3固定部50に第2固定部30を組み合わせるときには、第2固定部30と第3固定部50との間に光学素子保持部60を配置した状態で行う。
【0124】
次いで、前述の圧電素子80と第1シャフト81と慣性部材82との組立体を、第2固定部30と第3固定部50との組立体に組み合わせる。より詳細には、第1シャフト81を第2固定部30の第2大径孔42および第3固定部50の第3大径孔55の順に各々の内部に挿通させる。これにより、第1シャフト81の下端部が、第2固定部30の第2大径孔42の内部に配置され、第2固定部30(
図8Bに示す第2保持部45)で保持される。また、第1シャフト81の上端部が、第3固定部50の第3大径孔55の内部に配置され、第3固定部50(
図8Bに示す第3保持部58)で保持される。このとき、光学素子保持部60に固定された押圧部材105と係合部106とで第1シャフト81を挟み込み、第1シャフト81を所定の摩擦力で上記各部材に係合させることにより、第1シャフト81に光学素子保持部60を保持させてもよい。
【0125】
次いで、第1固定部10を第2固定部30と第3固定部50との組立体に組み合わせる。第1固定部10の第1小径孔18の内部には、予め第2シャフト85の下端部を樹脂で接着固定しておき、第2シャフト85の下端部を第1固定部10で強固に保持しておく。このとき用いる樹脂としては、エポキシ系の樹脂が好ましい。
【0126】
第1固定部10を第2固定部30と第3固定部50との組立体に組み合わせるときには、第1固定部10の制限凸部19に第2固定部30の制限凹部44(
図5)を嵌合させつつ、第2固定部30の第2ベース部31の下面に第1固定部10の第1ベース部11の上面を当接させる。
【0127】
また、第1固定部10の固定用凹部17の内部に慣性部材82を配置し、第1固定部10(
図8Bに示す第1保持部21)に慣性部材82を保持させる。固定用凹部17の固定面171(
図4参照)には、予め、慣性部材82の底面820の表面形状に即した形で、表面形状の較正を行っておく。固定面171の表面形状の較正方法の詳細については後述する。
【0128】
また、第2シャフト85を第2固定部30の第2小径孔43および第3固定部50の第3小径孔56の順に各々の内部に挿通させる。このとき、
図7に示すように、光学素子保持部60の一対のシャフト固定用突起69,69に形成された一対の接触凸部69a,69a(
図3B)で第2シャフト85を挟み込む。これにより、第2シャフト85に固定用突起69,69が所定の摩擦力で摩擦係合し、第2シャフト85で光学素子保持部60をZ軸方向に移動可能に固定することが可能となる。
【0129】
次いで、
図2に示す慣性部材82を固定用凹部17の内部に樹脂で接着固定し、慣性部材82を第1固定部10で強固に保持する。また、第1シャフト81の下端部を第2大径孔42の内部に樹脂で接着固定し、第1シャフト81の下端部を第2固定部30で強固に保持する。また、第1シャフト81の上端部を第3大径孔55の内部に樹脂で接着固定し、第1シャフト81の上端部を第3固定部50で強固に保持する。接着固定を行う際には、シリコーン系の樹脂を用いることが好ましいが、エポキシ系の樹脂を用いてもよい。なお、上記接着固定を行うタイミングは、特に限定されるものではなく、例えば圧電素子80と第1シャフト81と慣性部材82との組立体を、第2固定部30と第3固定部50との組立体に組み合わせるときに行ってもよい。
【0130】
さらに、第2シャフト85の上端部を第3小径孔56の内部に樹脂で接着固定し、第2シャフト85の上端部を第3固定部50で強固に保持する。このとき用いる樹脂としては、シリコーン系の樹脂が好ましい。
【0131】
次に、
図14A~
図14Dを参照しつつ、固定用凹部17の固定面171(
図4参照)の表面形状を較正する方法について説明する。まず、測定装置を用いて、慣性部材82の底面820の表面形状(三次元形状)を測定し、その測定値に基づいて、底面820の表面形状に関する情報(三次元データ)を取得する。この三次元データは、例えば、底面820上の任意に選んだn(nは自然数)個の位置L1~Lnにおける三次元位置座標として取得される。ただし、位置L1、L2・・・Lnは、好ましくは底面820の全体をカバーできるように選択される。
【0132】
次に、底面820の表面形状の製造誤差(加工精度のばらつき)に関する情報(三次元データ)を取得する。ここでは、図中の二点鎖線で示す理想面に対して底面820がどの程度ずれているのかを特定するために、底面820の傾斜や凹凸(ゆがみ)等の大きさや範囲等を示す情報(三次元データ)を取得する。この三次元データは、例えば、上述した位置L1~Lnにおいて、底面820のZ軸座標と二点鎖線で示す理想面のZ軸座標との差分Δ1~Δnを算出することにより取得される。
図14Aに示す例では、底面820には底面傾斜部821が形成されており、底面820は、その一部の領域あるいは全領域において、二点鎖線で示す理想面よりもZ軸負方向側(基準面110が位置する側)に張り出している。この場合、位置L1~Lnにおいて、底面820の製造誤差Δ1~Δnは例えば正の値をとるものとする。
【0133】
次に、測定装置を用いて、固定用凹部17の固定面171の表面形状(三次元形状)を測定し、その測定値に基づいて、固定面171の表面形状に関する情報(三次元データ)を取得する。この三次元データは、例えば、上述した位置L1~Lnにおける三次元位置座標として取得される。なお、慣性部材82の底面820における測定位置L1~Lnと、固定面171における測定位置L1~Lnは対応している。
【0134】
次に、固定面171の表面形状の製造誤差(加工精度のばらつき)に関する情報(三次元データ)を取得する。ここでは、理想面に対して固定面171がどの程度ずれているのかを特定するために、固定面171の傾斜や凹凸(ゆがみ)等の大きさや範囲等を示す情報(三次元データ)を取得する。この三次元データは、例えば、上述した位置L1~Lnにおいて、固定面171のZ軸座標と理想面のZ軸座標との差分Δ1’~Δn’を算出することにより取得される。
【0135】
固定面171に製造誤差(加工精度のばらつき)が発生しておらず、固定面171が理想面となっている場合には、固定面171の製造誤差Δ1’~Δn’は0となる。固定面171に製造誤差(加工精度のばらつき)が発生し、位置L1~Lnにおいて、固定面171がZ軸正方向側(駆動部3が位置する側)に張り出すように傾斜している(あるいは、突出している)場合には、固定面171の表面形状の製造誤差Δ1’~Δn’は例えば正の値をとるものとする。また、位置L1~Lnにおいて、固定面171がZ軸負方向側(基準面110が位置する側)に張り出すように傾斜している(あるいは凹んでいる)場合には、固定面171の表面形状の製造誤差Δ1’~Δn’は例えば負の値をとるものとする。
【0136】
次に、慣性部材82の底面820の製造誤差Δ1~Δnと、固定面171の製造誤差Δ1’~Δn’とに基づいて、固定面171に対する加工量(レーザ照射量)を算出する。加工量は補正値Pに基づいて決定される。補正値Pは、底面820の製造誤差Δ1~Δnと固定面171の製造誤差Δ1’~Δn’との和として算出される。以下では、簡単のため、固定面171は理想面であり、固定面171の製造誤差Δ1’~Δn’は0であるものとする。この場合、補正値PはΔ1~Δnに等しくなる。
【0137】
次に、
図14Bに示すように、レーザ照射装置90を用いて、固定面171の位置L1~Lnに、順次レーザを照射していき、補正値Pの値に応じた深さの照射痕174を形成する(固定面171に対して面出し加工を行う)。図示の例では、固定面171に対するレーザ照射により、固定面171には傾斜部175を有する溶融部173が形成されている。なお、
図14Bには、溶融部173が形成される前の固定面171を一点鎖線で示している。
【0138】
次に、
図14Cに示すように、固定用凹部17の内部に樹脂200(例えば、紫外線硬化樹脂)を所定量だけ充填する。次に、
図14Dに示すように、慣性部材82を固定用凹部17の内部に収容し、底面820を固定面171に固定する。このとき、底面820の底面傾斜部821の傾斜方向と、固定面171の傾斜部175の傾斜方向とが略一致するように、慣性部材82を固定用凹部17の内部に固定する。最後に、樹脂200を硬化させることにより、慣性部材82の底面820を固定面171に固定する。
【0139】
以上、本実施形態に係る光学駆動装置1では、
図14Dに示すように、駆動部3の一端に位置する慣性部材82の底面820が樹脂200を介して固定面171に固定され、
図9に示すように、固定面171には溶融部173が形成されている。そのため、溶融部173が形成された位置では固定面171がえぐられた状態となり(
図13参照)、固定面171に固定される慣性部材82の底面820に加工精度のばらつきが生じたとしても、溶融部173においてこれを吸収することが可能となる。これにより、駆動部3を固定部171に対して高い組立精度で組み立てることが可能となり、固定部3の底面を基準面としたときの駆動部3の垂直度を十分に確保し、高精度な駆動を可能とする光学駆動装置1を実現することができる。
【0140】
また、本実施形態では、固定部3の底面を基準面としたときの駆動部3の垂直度を十分に確保することができるため、駆動部3に対する各方向からの外部衝撃や、駆動部3の駆動時の動作において生じ得る衝撃に対して、均一な耐衝撃性を得ることができる。
【0141】
第2実施形態
図15および
図16に示す本発明の第2実施形態に係る光学駆動装置は、以下に示す点を除いて、第1実施形態に係る光学駆動装置1と同様な構成を有し、同様な作用効果を奏する。図面において、第1実施形態の光学駆動装置1における各部材と共通する部材には、共通の符号を付し、その説明については省略する。
【0142】
上記第1実施形態では、
図9に示すように、加工精度のばらつきにより、慣性部材82の底面820に傾斜や凹凸(ゆがみ)等が形成されている場合に、固定用凹部17の底面171に溶融部173を形成し、底面171の表面形状を慣性部材82の底面820の表面形状に即した形状へ較正する手段について説明した。これに対して、本実施形態では、慣性部材82の底面820には加工精度のばらつきが生じておらず、理想的な面となっている一方で、固定用凹部17の底面171に傾斜や凹凸(ゆがみ)等が形成されている場合において、底面171の表面形状を慣性部材82の底面820の表面形状に即した形状へ較正する手段について説明する。
【0143】
図15に示すように、固定用凹部17Aは、固定面171Aを有する。固定面171Aには、レーザの照射により、複数の照射痕174からなる溶融部173が形成されている。レーザを照射する前の固定面171は、図中の二点鎖線で示すように傾斜面となっており、この傾斜面にレーザを照射することにより、固定面171Aには図中の実線で示すような平坦面が具備される。すなわち、本実施形態では、固定面171Aのうち、傾斜や凹凸(ゆがみ)等が形成されている部分に対して、溶融部173を形成することにより、固定面171Aを平坦にし、固定面171Aの加工精度のばらつきを解消する。
【0144】
図16に示すように、溶融部173は、固定面171Aにおいて、隣接する辺171a、辺171bおよび辺171cを3辺とする略台形状の領域に複数の照射痕174を形成することにより、これら3辺の領域に跨るように形成されている。この場合、溶融部173は、固定面171AのX軸正方向側およびY軸負方向側に偏在するように形成される。溶融部173の範囲(大きさ)は、図示の範囲に限定されず、固定面171Aの3辺に跨るように形成されていれば、これよりも広くてもよく、あるいは狭くてもよい。
【0145】
本実施形態では、溶融部173が形成された領域と、溶融部173が形成されていない領域とで、基準面110(
図15)からの固定面171Aの高さは同様(一様)となっている。
【0146】
このように、慣性部材82の底面820が平坦面である場合には、固定面171Aの傾斜や凹凸(ゆがみ)等が形成された位置に溶融部173を形成し、固定面171Aを平坦にしておくことにより、慣性部材82の底面820と固定用凹部17の固定面171Aとを略平行にし、両者を面接触(密着)した状態で固定することが可能となる。
【0147】
なお、
図17および
図18に示すように、固定面171Aの全体にわたって傾斜や凹凸(ゆがみ)等が形成されている場合には、
図18に示すように、固定面171Aの全面(ただし、固定面171Aのうち、慣性部材82の底面820が配置される部分)に複数の照射痕174からなる溶融部173を形成してもよい。図示の例では、固定面171Aには、複数の照射痕174が、X軸方向およびY軸方向に沿って密に配列される。また、これら複数の照射痕174により、溶融部173は、固定面171の4辺(辺171a~辺171d)の領域に跨るように形成されている。これにより、
図17に示すように、二点鎖線で示す固定面171Aの傾斜や凹凸(ゆがみ)等を解消し、固定面171Aの表面形状を全体にわたって平坦にする(均一にする、あるいは滑らかにする)ことができる。
【0148】
また、
図19および
図20に示すように、固定面171Aに傾斜や凹凸(ゆがみ)等が離散的(スポット状)に形成されている場合には、
図20に示すように、固定面171Aに、複数の照射痕174を離散的(スポット状)に形成してもよい。これにより、
図19に示すように、二点鎖線で示す固定面171Aの傾斜や凹凸(ゆがみ)等を解消させ、固定面171Aの表面形状を全体にわたって平坦にすることができる。
【0149】
本実施形態では、加工精度のばらつきにより、固定面171A自体に凹凸や傾斜(ゆがみ)等が形成された場合には、凹凸や傾斜(ゆがみ)等が形成された位置に溶融部173を形成することにより、固定面171Aを平坦にすることが可能となる。したがって、固定面171Aの加工精度のばらつきを解消し、基準面110に対する駆動部3の垂直度を十分に確保することができる。
【0150】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0151】
上記第1実施形態では、
図11Aおよび
図12に示すように、固定面171の一部に溶融部173が形成されていたが、固定面171の全部に溶融部173が形成されていてもよい。
【0152】
上記第1実施形態において、
図10に示す例では、固定面171に凹部176が形成されるようにレーザ照射を行った。仮に、慣性部材82の底面820に凹部が形成されている場合には、その凹部と嵌合する凸部が固定面171に形成されるようにレーザ照射を行ってもよい。
【0153】
上記第1実施形態では、慣性部材82の底面820はZ軸方向から見て4辺を有する四角形状を有する外観形状を有していたが、3辺を有する三角形状、あるいは5辺以上を有する多角形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0154】
1…光学駆動装置
2…可動部
3…駆動部
4…固定部
10…第1固定部
11…第1ベース部材
110…基準面
17,17A…固定用凹部
171,171A…固定面
172…外壁部
173…溶融部
174…照射痕
175…傾斜部
176…凹部
60…光学素子保持部
80…圧電素子
81…第1シャフト
82…慣性部材
820…底面
90…レーザ照射装置
200…樹脂