(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154828
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ペット用吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A01K 23/00 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
A01K23/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058059
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507033185
【氏名又は名称】シーズイシハラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒須 一博
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 基成
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 玲子
(57)【要約】
【課題】様々なサイズの胴周りや脚周りを有するペットにも対応することができるペット用吸収性物品を提供する。
【解決手段】液透過性のトップシート、高吸収性ポリマーを含む吸収体を有する吸収性パッド、液不透過性のバックシート、及び外装体をこの順に備え、背側部、股下部、及び腹側部を有するペット用吸収性物品であって、背側部における幅方向中央部には、尻尾用孔が備えられ、腹側部における幅方向の両端には、一対のファスニングテープが備えられ、背側部における、非肌当接面側の幅方向中央部には、ファスニングテープを係止して、胴開口部を形成するための止着領域が備えられ、腹側部における、脚開口部を形成するための一対の略円弧状の領域のそれぞれに、円弧部分に接する直線と直交するミシン目を備える、ペット用吸収性物品を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシート、高吸収性ポリマーを含む吸収体を有する吸収性パッド、液不透過性のバックシート、及び外装体をこの順に備え、背側部、股下部、及び腹側部を有するペット用吸収性物品であって、
前記背側部における幅方向中央部には、尻尾用孔が備えられ、
前記腹側部における幅方向の両端には、一対のファスニングテープが備えられ、
前記背側部における、非肌当接面側の幅方向中央部には、前記ファスニングテープを係止して、胴開口部を形成するための止着領域が備えられ、
前記腹側部における、脚開口部を形成するための一対の略円弧状の領域のそれぞれに、前記領域の円弧部分に接する直線と直交するミシン目を備えることを特徴とする、ペット用吸収性物品。
【請求項2】
前記ミシン目のボンド率が15%以上60%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペット用吸収性物品。
【請求項3】
前記ミシン目の両端を延長した直線と、ペット用吸収性物品の幅方向に平行な直線とがなす角度が、15°以上75°以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のペット用吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン目を備えたペット用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫等のペット(愛玩動物)が排泄した尿等の排泄物を処理するための物品として、ペットの後ろ脚から履かせるおむつ型のペット用吸収性物品や、ペットの胴周りに巻き付けて装着される帯状のペット用吸収性物品が知られている。
【0003】
しかしながら、ペットは様々な品種が存在し、かつ、個々の体格の違いもあることから、単一のサイズの吸収性物品では胴周りや脚周りにフィットしない場合があり、排尿の漏れや装着したペットの快適性を損なうこと、見た目の良し悪しに影響を及ぼす等の問題がある。
品種や個々の体格の違いに対応するために、市場には様々なサイズの吸収性物品が出回っているが、それらのサイズが消費者の飼っているペットに必ずしもフィットするとは限らない。
【0004】
このような課題を解決するための吸収性物品の先行技術として、例えば、特許文献1には背側胴周り域と、腹側胴周り域と、股下域と、前記腹側胴周り域に設けられるとともに前記背側方向に端部を有するフラップ部と、おむつ長手方向中心線と、おむつ中心点と、尻尾挿通開口と、吸収性コアと、前記フラップ部に配置される止着部と、止着部中間点と、前記止着部を受ける止着領域と、前記止着部中間点から前記おむつ長手方向中心線までの直線距離において、前記フラップ部の背側端部を経由した最短の直線距離における前記おむつ長手方向中心線上の点である最短直線点とからなり、該最短直線点が前記おむつ中心点よりも腹側胴周り域側にあることを特徴とするペット用使い捨ておむつが開示されている。当該発明は、ペットの脚周りに対し良好にフィットするペット用使い捨ておむつを提供することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような吸収性物品であっても、様々なペットの品種の脚周り全てに対応することはできず、根本的な解決にはなっていなかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、様々なサイズの胴周りや脚周りを有するペットにも対応することができるペット用吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行い、腹側部における、脚開口部を形成するための一対の略円弧状の領域のそれぞれに、前記領域の円弧部分に接する直線と直交するミシン目を設けることで、様々なサイズの胴周りや脚周りを有するペットにも対応することができるペット用吸収性物品とすることができ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシート、高吸収性ポリマーを含む吸収体を有する吸収性パッド、液不透過性のバックシート、及び外装体をこの順に備え、背側部、股下部、及び腹側部を有するペット用吸収性物品であって、上記背側部における幅方向中央部には、尻尾用孔が備えられ、上記腹側部における幅方向の両端には、一対のファスニングテープが備えられ、上記背側部における、非肌当接面側の幅方向中央部には、上記ファスニングテープを係止して、胴開口部を形成するための止着領域が備えられ、上記腹側部における、脚開口部を形成するための一対の略円弧状の領域のそれぞれに、上記領域の円弧部分に接する直線と直交するミシン目を備えることを特徴とする、ペット用吸収性物品である。
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のペット用吸収性物品であって、上記ミシン目のボンド率が15%以上60%以下であることを特徴とするものである。
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のペット用吸収性物品であって、上記ミシン目の両端を延長した直線と、ペット用吸収性物品の幅方向に平行な直線とがなす角度が、15°以上75°以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、様々なサイズの胴周りや脚周りを有するペットにも対応することができるペット用吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のペット用吸収性物品の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。
【0013】
また、本明細書の説明において、ペット用吸収性物品1の長手方向とは、ペット用吸収性物品1が着用されたときに着用したペットの前後にわたる方向であり、図中、符号Xで示す方向である。また、ペット用吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Yで示す方向である。さらに、肌当接面とは、ペット用吸収性物品1の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用したペットの肌側に配される面であり、非肌当接面とは、ペット用吸収性物品1の各部材の表裏両面のうち、着用時にペットの肌側とは反対側に向けられる面である。なお、ペット用吸収性物品1としては、特にペット用使い捨ておむつが例示される。
また、本発明におけるペットとはいわゆる愛玩動物のことを指し、ペットとしては犬や猫が好ましく、犬がより好ましい。また、ペットの品種は特に限定されず、そのサイズ(体の大きさ)も特に限定されない。
【0014】
<ペット用吸収性物品>
図1は、本発明の実施形態に係るペット用吸収性物品1をトップシート10側から見た平面図である。また、
図3及び
図4は、それぞれ
図1のX-X’線、Y-Y’線における断面図である。本発明のペット用吸収性物品1は、液透過性のトップシート10、高吸収性ポリマーを含む吸収体21を有する吸収性パッド20、液不透過性のバックシート30、及び外装体40をこの順に備え、背側部1a、股下部1b、及び腹側部1cを有する。
【0015】
<トップシート>
トップシート10は、尿が吸収性パッド20へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布など公知の親水性不織布等を使用できる。また、トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、ペットの肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤、消臭剤、香料等を含有させてもよい。
強度、加工性及び液戻り量の点から、トップシート10の坪量は、5g/m2以上50g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以上30g/m2以下であることがより好ましい。トップシート10の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収性パッド20へと誘導するために必要とされる、吸収性パッド20を覆う形状であればよい。
【0016】
<吸収性パッド>
本発明のペット用吸収性物品1において、吸収性パッド20の大きさは、ペット用吸収性物品1が様々なペットのサイズに対応するため、特に限定されないが、長手方向の寸法は、250mm以上600mm以下であることが好ましく、300mm以上500mm以下であることがより好ましい。また、吸収性パッド20の幅方向の寸法は、長手方向の寸法の20%以上40%以下であることが好ましい。
【0017】
(吸収性繊維)
吸収性パッド20が有する吸収体21は、高吸収性ポリマー(SAP)を含むが、更に基材としての吸収性繊維を含むことが好ましい。
吸収性繊維は、一般にペット用吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体21に、基材としての吸収性繊維にフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、特に限定されないが、300g/m2以上1500g/m2以下であることが好ましく、450g/m2以上1200g/m2以下であることがより好ましい。これにより、ペットへの肌触りを損なわずに、より多くの体液(尿や糞)を吸収させることができる。
【0018】
(高吸収性ポリマー)
吸収体21の高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。
また、吸収体21において、吸収体21全体の重量に対する、高吸収性ポリマーの重量の比率である、高吸収性ポリマーの重量/吸収体21全体の重量×100(%)が、15%以上であることが好ましく、20%以上50%以下であることがより好ましい。
【0019】
吸収体21において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートでもよい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体21の形状の安定化の目的から、
図3及び
図4に示すように、吸収体21を包むような、キャリアシート22を設けてもよい。キャリアシート22の基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュー、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。また、
図3及び
図4に示すように、キャリアシート22を複数備える場合は、複数のキャリアシート22の基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0020】
<バックシート>
バックシート30は、吸収性パッド20が保持している体液がペットの肌や毛を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、通気性又は非通気性である、不透液性のポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムを使用できる。
【0021】
バックシート30の坪量は、特に限定されないが、強度及び加工性の点から、10g/m2以上30g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以上20g/m2以下であることがより好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0022】
<外装体>
本発明のペット用吸収性物品1における外装体40は、
図3及び
図4に示すように、液不透過性のバックシート30の下(非肌当接面側)に配置される。
また、背側部1aにおける幅方向中央部には、ペットの尻尾を通すための尻尾用孔70が備えられる。尻尾用孔70の直径は特に限定されないが、20mm以上40mm以下であることが好ましい。なお、尻尾用孔70はトップシート10、バックシート30及び外装体40を略円形に完全に切り取ることで設けてもよいが、外装体40の一部分を切り取らずに残して、ペットの尻尾を通すときに開き、尻尾を抜くと閉じる、いわゆるフラップ構造にしてもよい。
【0023】
<ファスニングテープ及び止着領域>
腹側部1cにおける幅方向の両端には、一対のファスニングテープ50が備えられる。ファスニングテープ50の肌当接面側には、背側部1aと腹側部1cとを締結するための面ファスナーを構成するフック部材からなる締結手段が設けられると共に、締結手段の自由端側の各ファスニングテープ50の先端部には、つまみしろが設けられていることが好ましい(図示しない)。
一方で、背側部1aにおける、非肌当接面側の幅方向中央部には、ファスニングテープ50を係止して、胴開口部を形成するための止着領域60が備えられる。止着領域60には、面ファスナーを構成するループ部材で形成されたターゲットテープが設けられており、ペット用吸収性物品1をペットに装着した状態では、締結手段がループ部材であるターゲットテープに固定されることが好ましい。
なお、フック部材とは、面ファスナーを構成する部材のうち、フック状突起からなる部材を指し、ループ部材とは、フック部材と対を成す部材であって、ループ状に密集して起毛された部材を指す。面ファスナーは、このフック部材とループ部材とが対となって構成されている。ペット用吸収性物品1を着用する場合、尻尾用孔70からペットの尻尾を通し、背側部1aをペットの背部にあてた状態で、腹側部1cをペットの腹部側に持っていき、ファスニングテープ50を止着領域60(ターゲットテープ)に締結することで、ペットに装着させることができる。また、止着領域60の幅方向の寸法は30mm以上60mm以下であることが好ましい。
【0024】
<ミシン目>
ミシン目80は、拡大図である
図2に示すように、腹側部1cにおける、脚開口部を形成するための一対の略円弧状の領域のそれぞれに、領域の円弧部分に接する直線Lと直交するように備えられる。この領域にミシン目80を設けることで、脚開口部の大きさを調節することができ、胴周りの細いペットや、脚周りの太いペットにも良好にフィットするペット用吸収性物品1とすることができる。また、ミシン目80はスリットではなくミシン目になっているため、ペットのサイズや体形に応じてミシン目80をカットする長さを調節でき、更に、排尿の漏れにくさ、ペット用吸収性物品1の脱げにくさが向上し、ペットの快適性や見た目の良さにも優れるペット用吸収性物品1を得ることができる。
【0025】
なお、ミシン目80のボンド率((ミシン目80の繋ぎ部の長さ/(ミシン目80の繋ぎ部の長さ+ミシン目80の切込部の長さ))×100(%))は15%以上60%以下であることが好ましく、20%以上50%以下であることがより好ましい。ボンド率が15%未満であると、ミシン目80が意図せず切れてしまうことが多く、60%を超えると、ミシン目80が切れにくくなる。
また、ミシン目80の両端を延長した直線と、ペット用吸収性物品1の幅方向に平行な直線(すなわち、Y軸に平行な直線)とがなす角度が、15°以上75°以下であることが好ましく、30°以上60°以下であることがより好ましい。角度が15°未満であるか、75°を超えると、ミシン目80をカットしても脚開口部の大きさが広がらず、胴周りの細いペットや、脚周りの太いペットに対応することができない。
さらに、ミシン目80のそれぞれの長さは、外装体40の幅(Y軸に平行な長さ)と吸収性パッド20の幅(Y軸に平行な長さ)の差の、10%以上30%以下であることが好ましく、15%以上25%以下であることがより好ましい。なお、ミシン目80は
図1及び
図2に示すように直線であることが好ましいが、曲線であってもよく、また、略円弧状の領域に複数設けられてもよい。
【0026】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが、当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0027】
1 ペット用吸収性物品
10 トップシート
20 吸収性パッド
21 吸収体
22 キャリアシート
30 バックシート
40 外装体
50 ファスニングテープ
60 止着領域
70 尻尾用孔
80 ミシン目