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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154829
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】防食塗料組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20221005BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221005BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/08
C09D7/63
C09D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058060
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 翔輝
(72)【発明者】
【氏名】片岡 義朗
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB001
4J038JB02
4J038JC32
4J038KA03
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA03
4J038PB05
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】防食性に優れる防食塗膜を形成することができる、ハイソリッドでありながら塗装作業性に優れる防食塗料組成物を製造する方法および該防食塗料組成物用のキットを提供すること。
【解決手段】本発明に係る不揮発分含量が70体積%以上である防食塗料組成物の製造方法は、非水性エポキシ化合物(A)を用いて第1剤を調製する工程1を含み、下記工程2および3、または、下記工程2a、2bおよび3'を含む。
工程2:アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)、および、アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いて第2剤を調製する工程
工程3:前記第1剤および第2剤を混合する工程
工程2a:アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)を用いて第2a剤を調製する工程
工程2b:アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いて第2b剤を調製する工程
工程3':前記第1剤、第2a剤および第2b剤を混合する工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水性エポキシ化合物(A)を用いて第1剤を調製する工程1と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)、および、アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いて第2剤を調製する工程2と、
前記第1剤および第2剤を混合する工程3と
を含む、不揮発分含量が70体積%以上である防食塗料組成物の製造方法。
【請求項2】
非水性エポキシ化合物(A)を用いて第1剤を調製する工程1と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)を用いて第2a剤を調製する工程2aと、
アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いて第2b剤を調製する工程2bと、
前記第1剤、第2a剤および第2b剤を混合する工程3'と
を含む、不揮発分含量が70体積%以上である防食塗料組成物の製造方法。
【請求項3】
前記防食塗料組成物の23℃で測定した粘度が7,000mPa・s以下である、請求項1または2に記載の防食塗料組成物の製造方法。
【請求項4】
前記防食塗料組成物がさらに顔料を含有し、該防食塗料組成物中の顔料体積濃度(PVC)が25~45%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の防食塗料組成物の製造方法。
【請求項5】
前記非水性成分(C)に含まれるアミン化合物が、分子量が3,000以下の環状構造を有するアミン化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の防食塗料組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第1剤がさらにシランカップリング剤を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の防食塗料組成物の製造方法。
【請求項7】
非水性エポキシ化合物(A)を含む第1剤と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)、および、アミン化合物を含有する非水性成分(C)を含む第2剤と
を含有する、不揮発分含量が70体積%以上である防食塗料組成物用キット。
【請求項8】
非水性エポキシ化合物(A)を含む第1剤と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)を含む第2a剤と、
アミン化合物を含有する非水性成分(C)を含む第2b剤と
を含有する、不揮発分含量が70体積%以上である防食塗料組成物用キット。
【請求項9】
請求項7または8に記載の防食塗料組成物用キットから形成された防食塗膜。
【請求項10】
基材と請求項9に記載の防食塗膜とを含む防食塗膜付き基材。
【請求項11】
下記工程[1]および[2]を含む、防食塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法により製造した防食塗料組成物、または、請求項7もしくは8に記載の防食塗料組成物用キットより得られた防食塗料組成物を塗装する工程
[2]基材上に塗装された防食塗料組成物を乾燥させて防食塗膜を形成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食塗料組成物の製造方法、防食塗料組成物用キット、防食塗膜、防食塗膜付き基材、および、防食塗膜付き基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等の基材には、これらを長期に亘り使用することなどを目的として、溶剤系エポキシ樹脂防食塗料が塗装されている。
【0003】
近年、自然環境、塗装作業環境等への配慮を目的とする有機溶剤排出規制の強化に伴い、前記のような溶剤系塗料の低VOC(揮発性有機化合物)化が進んでいる。この低VOC化の方法の一つとして、塗料の水系化が挙げられる。水系防食塗料は、溶媒および分散媒として主に水を使用するため、塗料粘度を適正に保ちながら、従来の溶剤系塗料に比べて大幅なVOCの削減が可能である。
【0004】
前記のような水系防食塗料として、例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂エマルションと水溶性アミン硬化剤とを含む水性エポキシ樹脂組成物が開示され、特許文献2には、水溶性アミン樹脂および疎水性液状エポキシ樹脂を含む水系エポキシ樹脂塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-247958号公報
【特許文献2】特開2009-221256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1や2などに記載の従来の防食塗料から形成される防食塗膜は、防食性能が十分ではなく、この点で改良の余地があった。
【0007】
また、所定膜厚の防食塗膜を形成するための塗装回数の削減等、塗装作業の効率化の方法として、塗料のハイソリッド化が有効であるが、前記従来の防食塗料ではハイソリッド化に伴う高粘度化により、塗装作業性が低下していた。つまり、従来の防食塗料では、ハイソリッド化と塗装作業性とはトレードオフの関係にあり、これらの両立は困難であった。
【0008】
本発明は以上のことに鑑みてなされたものであり、防食性に優れる防食塗膜を形成することができる、ハイソリッドでありながら塗装作業性に優れる防食塗料組成物を製造する方法および該防食塗料組成物用のキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が、前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、以下の構成例によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0010】
<1> 非水性エポキシ化合物(A)を用いて第1剤を調製する工程1と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)、および、アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いて第2剤を調製する工程2と、
前記第1剤および第2剤を混合する工程3と
を含む、不揮発分含量が70体積%以上である防食塗料組成物の製造方法。
【0011】
<2> 非水性エポキシ化合物(A)を用いて第1剤を調製する工程1と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)を用いて第2a剤を調製する工程2aと、
アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いて第2b剤を調製する工程2bと、
前記第1剤、第2a剤および第2b剤を混合する工程3'と
を含む、不揮発分含量が70体積%以上である防食塗料組成物の製造方法。
【0012】
<3> 前記防食塗料組成物の23℃で測定した粘度が7,000mPa・s以下である、<1>または<2>に記載の防食塗料組成物の製造方法。
【0013】
<4> 前記防食塗料組成物がさらに顔料を含有し、該防食塗料組成物中の顔料体積濃度(PVC)が25~45%である、<1>~<3>のいずれかに記載の防食塗料組成物の製造方法。
【0014】
<5> 前記非水性成分(C)に含まれるアミン化合物が、分子量が3,000以下の環状構造を有するアミン化合物である、<1>~<4>のいずれかに記載の防食塗料組成物の製造方法。
【0015】
<6> 前記第1剤がさらにシランカップリング剤を含有する、<1>~<5>のいずれかに記載の防食塗料組成物の製造方法。
【0016】
<7> 非水性エポキシ化合物(A)を含む第1剤と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)、および、アミン化合物を含有する非水性成分(C)を含む第2剤と
を含有する、不揮発分含量が70体積%以上である防食塗料組成物用キット。
【0017】
<8> 非水性エポキシ化合物(A)を含む第1剤と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)を含む第2a剤と、
アミン化合物を含有する非水性成分(C)を含む第2b剤と
を含有する、不揮発分含量が70体積%以上である防食塗料組成物用キット。
【0018】
<9> <7>または<8>に記載の防食塗料組成物用キットから形成された防食塗膜。
<10> 基材と<9>に記載の防食塗膜とを含む防食塗膜付き基材。
【0019】
<11> 下記工程[1]および[2]を含む、防食塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、<1>~<6>のいずれかに記載の製造方法により製造した防食塗料組成物、または、<7>もしくは<8>に記載の防食塗料組成物用キットより得られた防食塗料組成物を塗装する工程
[2]基材上に塗装された防食塗料組成物を乾燥させて防食塗膜を形成する工程
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、防食性に優れる防食塗膜を形成することができる、ハイソリッドでありながら塗装作業性に優れる防食塗料組成物を得ることができる。
特に本発明によれば、乾燥性に優れ、塗装の際にタレが生じ難く、1回の塗装で厚膜を形成することができ、自然環境や塗装作業者への悪影響が少ない防食塗料組成物でありながら、防食性に優れる防食塗膜を形成することができる防食塗料組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
≪防食塗料組成物用キット≫
本発明に係る防食塗料組成物用キット(以下「本キット」ともいう。)は、不揮発分含量が70体積%以上である防食塗料組成物(以下「本組成物」ともいう。)用のキットであり、
非水性エポキシ化合物(A)を含む第1剤と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)、および、アミン化合物を含有する非水性成分(C)を含む第2剤と
を含有するキット(以下「本キット1」ともいう。)、または、
非水性エポキシ化合物(A)を含む第1剤と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)を含む第2a剤と、
アミン化合物を含有する非水性成分(C)を含む第2b剤と
を含有するキット(以下「本キット2」ともいう。)である。
【0022】
本キット1は、第1剤と、第2剤とを混合することで、本キット2は、第1剤と、第2a剤と、第2b剤とを混合することで、本組成物を得ることができる。
本キット1の場合、本組成物を得る際には、必要により、第1剤および第2剤以外の第n剤(nは3以上)を用いてもよく、本キット2の場合、本組成物を得る際には、必要により、第1剤、第2a剤および第2b剤以外の第n剤(nは3以上)を用いてもよいが、該第n剤を用いないことが好ましい。つまり、本キット1は、2成分型の本組成物用のキットであることが好ましく、本キット2は、3成分型の本組成物用のキットであることが好ましい。
【0023】
本キットを構成する、第1剤、第2剤、第2a剤および第2b剤等は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、本組成物の使用直前に混合して用いられる。
【0024】
前記第1剤は、好ましくは下記工程1で調製される。なお、本キット1における第1剤と本キット2における第1剤とは、異なる剤であってもよいが、同様の剤であることが好ましい。
前記第2剤は、好ましくは下記工程2で調製され、前記第2a剤は、好ましくは下記工程2aで調製され、前記第2b剤は、好ましくは下記工程2bで調製される。前記第2a剤と前記第2b剤とを混合したものが、前記第2剤であることが好ましい。
【0025】
≪防食塗料組成物の製造方法≫
本発明に係る製造方法(以下「本方法」ともいう。)は、本組成物の製造方法であって、
非水性エポキシ化合物(A)を用いて第1剤を調製する工程1と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)、および、アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いて第2剤を調製する工程2と、
前記第1剤および第2剤を混合する工程3と
を含む製造方法(以下「本方法1」ともいう。)、または、
非水性エポキシ化合物(A)を用いて第1剤を調製する工程1と、
アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)を用いて第2a剤を調製する工程2aと、
アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いて第2b剤を調製する工程2bと、
前記第1剤、第2a剤および第2b剤を混合する工程3'と
を含む製造方法(以下「本方法2」ともいう。)である。
【0026】
また、本方法は、第n剤(nは3以上)を調製する工程を含んでいてもよく、この場合、前記工程3は、第1剤、第2剤および第n剤を混合する工程であってもよく、前記工程3'は、第1剤、第2a剤、第2b剤および第n剤を混合する工程であってもよい。
【0027】
<工程1>
前記工程1は、非水性エポキシ化合物(A)を用いて第1剤を調製する工程である。
工程1は、非水性エポキシ化合物(A)を用いれば特に制限されず、非水性エポキシ化合物(A)自体を第1剤としてもよく(この場合、工程1は、非水性エポキシ化合物(A)を用いる工程である)、非水性エポキシ化合物(A)と下記その他の成分とを混合する工程でもよいが、後者であることが好ましい。
【0028】
工程1は、具体的には、第1剤に配合する各成分を混合(混練)する工程であり、この混合(混練)の際には、各成分を一度に添加・混合してもよく、複数回に分けて添加・混合してもよい。
前記混合(混練)の際には、従来公知の混合機、分散機、攪拌機等の装置を使用でき、該装置としては、例えば、ディスパー、混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザーが挙げられる。なお、前記混合(混練)の際には、季節、環境等に応じて加温、冷却等しながら行ってもよい。
【0029】
工程1では、水を用いてもよく、水を用いなくてもよい。つまり、第1剤は、水を含んでいてもよく、水を含んでいなくてもよい。
第1剤が水を含む場合、該水の含有量は、第1剤が非水性エポキシ化合物(A)のエマルションとなり得る量未満の量であることが好ましく、具体的には、第1剤中の非水性エポキシ化合物(A)100質量%に対し、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0030】
[非水性エポキシ化合物(A)]
本方法は、第1剤として、非水性エポキシ化合物(A)を用いることを1つの特徴とする。
第1剤に含まれる非水性エポキシ化合物(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0031】
非水性エポキシ化合物(A)における「非水性」とは、水と自由に混和しない状態をいい、実質的に水に溶けない状態のことをいう。
具体的には、23℃において、エポキシ化合物が3質量%になるように、エポキシ化合物と水とを混合し、十分に撹拌し、23℃にて1時間静置して得られる混合液が均一な状態になく、水と混合したエポキシ化合物の90質量%以上が、分離、沈殿、浮遊している場合、該エポキシ化合物を非水性エポキシ化合物(A)とする。
【0032】
なお、前記混合液において、水と混合したエポキシ化合物の10質量%超が水中に安定的に存在しており、かつ、前記混合液がエマルションの状態で保たれている場合は、該エポキシ化合物を水希釈性エポキシ化合物とする。また、前記混合液において、水と混合したエポキシ化合物の10質量%超が水中に安定的に存在しており、かつ、レーザ回折式粒子径分布測定装置(例:マスターサイザー3000(スペクトリス(株)製))で測定した平均粒子径が10nm未満の状態で水と混合したエポキシ化合物が存在している場合は、該エポキシ化合物を水溶性エポキシ化合物とする。
【0033】
非水性エポキシ化合物(A)は、常温(例:15~25℃)において液状である液状エポキシ化合物であることが好ましい。このような液状エポキシ化合物は、第1剤を比較的溶剤量の少ない剤とし、かつ、非水性エポキシ化合物(A)以外の成分を含む剤としても、該第1剤中に均一に分散させることが容易であり、後述する水希釈性成分(B)および非水性成分(C)との反応性も良好であるため好ましい。
【0034】
非水性エポキシ化合物(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂、アルキルモノグリシジルエーテル、アルキルモノグリシジルエステル、アルキルジグリシジルエーテル、アルキルジグリシジルエステル、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、ポリグリコールモノグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。
前記アルキル基の好適例としては、炭素数3~15のアルキル基が挙げられ、具体的には、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基などのアルキル基が挙げられる。
【0035】
非水性エポキシ化合物(A)としては、防食性および基材への密着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型のエポキシ樹脂が好ましい。
【0036】
非水性エポキシ化合物(A)の数平均分子量は、ハイソリッドでありながら塗装作業性に優れる防食塗料組成物を容易に得ることができる等の点から、好ましくは500以下、より好ましくは400以下である。
【0037】
非水性エポキシ化合物(A)は、従来公知の方法で合成した化合物を用いてもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、常温(例:15~25℃)で液状のものとして、例えば、「E-028」(大竹明新化学(株)製)、「jER 828」(三菱ケミカル(株)製)、「カージュラ E10P」(Hexion社製)、「アデカレジン EP-4901」((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0038】
工程1における非水性エポキシ化合物(A)の使用量は、その固形分の含有量が、以下の範囲となるような量であることが好ましい。
非水性エポキシ化合物(A)の固形分の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは15~35質量%、より好ましくは20~30質量%である。
また、非水性エポキシ化合物(A)の固形分の含有量は、第1剤の固形分100質量%に対し、好ましくは20~40質量%、より好ましくは25~30質量%である。
非水性エポキシ化合物(A)の含有量が前記範囲にあると、防食性および基材への密着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる。
【0039】
[その他の成分]
工程1では、所望により、本発明の効果を損なわない範囲で、シランカップリング剤、顔料、顔料分散剤、タレ止め剤(沈降防止剤、揺変剤)、フラッシュラスト抑制剤、可塑剤、消泡剤、脱水剤、造膜助剤、有機溶剤等のその他の成分を用いてもよい。
これらその他の成分は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0040】
前記その他の成分としては、市販品を用いてもよく、この場合、該市販品には、溶剤系用と水系用とが市販されている場合があるが、溶剤系用の市販品を用いる場合は、第1剤または第2b剤に配合することが好ましく、水系用の市販品を用いる場合は、第2剤や、第2a剤に配合することが好ましい。
【0041】
〈シランカップリング剤〉
シランカップリング剤を用いることで、得られる防食塗膜の基材への付着性をさらに向上させることができるのみならず、得られる防食塗膜の耐水性、耐塩水性等の防食性および耐熱性をも向上させることができる。
【0042】
シランカップリング剤としては特に制限されず、従来公知の化合物を用いることができるが、同一分子内に少なくとも2つの官能基を有し、基材に対する付着性の向上、防食塗料組成物の粘度の低下等に寄与できる化合物であることが好ましい。
【0043】
シランカップリング剤は、例えば、式:「X-SiMen3-n」[nは0または1、Xは有機質との反応が可能な官能基(例:アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲノ基、炭化水素基の一部がこれらの基で置換された基、または、炭化水素基の一部がエーテル結合等で置換された基の一部がこれらの基で置換された基)を示し、Meはメチル基であり、Yは加水分解性基(例:メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基)を示す。]で表される化合物であることが好ましい。
【0044】
これらの中でも、前記Xがエポキシ基、炭化水素基の一部がエポキシ基で置換された基、または、炭化水素基の一部がエーテル結合等で置換された基の一部がエポキシ基で置換された基である、エポキシ基含有シランカップリング剤であることが好ましい。
エポキシ基含有シランカップリング剤を含有する本組成物を製造する場合、該シランカップリング剤は、第1剤に配合することが好ましい。
【0045】
シランカップリング剤としては市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランである「KBM-403」(信越化学工業(株)製)、「サイラエースS-510」(JNC(株)製)が挙げられる。
【0046】
シランカップリング剤を含有する本組成物を製造する場合、該シランカップリング剤の含有量が、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.3~5質量%となるようにシランカップリング剤を用いることが好ましい。
シランカップリング剤の含有量が前記範囲にあると、本組成物の粘度を低減できるため、塗装作業性が向上するだけでなく、得られる防食塗膜の基材に対する付着性、防食性および耐熱性が向上する。
【0047】
〈顔料〉
本組成物は、顔料を含有していてもよく、顔料を含有していることが好ましい。
該顔料としては、例えば、体質顔料、着色顔料、防錆顔料が挙げられ、有機系、無機系のいずれであってもよい。
【0048】
前記体質顔料としては、例えば、タルク、マイカ、(沈降性)硫酸バリウム、(カリ)長石、カオリン、アルミナホワイト、ベントナイト、ウォラストナイト、クレー、ガラスフレーク、アルミフレーク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、シリカが挙げられる。特に、タルク、マイカ、シリカ、(沈降性)硫酸バリウム、(カリ)長石が好ましい。
【0049】
体質顔料を含有する本組成物を製造する場合、該体質顔料の含有量が、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは5~80質量%、より好ましくは10~70質量%となるように体質顔料を用いることが好ましい。
【0050】
前記着色顔料としては、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン(チタン白)、酸化鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、鱗片状酸化鉄、群青等の無機顔料、シアニンブルー、シアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。特に、チタン白、カーボンブラック、弁柄が好ましい。
【0051】
着色顔料を含有する本組成物を製造する場合、該着色顔料の含有量が、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは1~20質量%となるように着色顔料を用いることが好ましい。
【0052】
前記防錆顔料としては、例えば、亜鉛粉末、亜鉛合金粉末、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸アルミニウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸アルミニウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、トリポリリン酸アルミニウム系化合物、モリブデン酸塩系化合物、シアナミド亜鉛系化合物、ホウ酸塩化合物、ニトロ化合物、複合酸化物が挙げられる。
【0053】
防錆顔料を含有する本組成物を製造する場合、該防錆顔料の含有量が、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~10質量%となるように防錆顔料を用いることが好ましい。
【0054】
顔料を含有する本組成物を製造する場合、本組成物中の顔料体積濃度(PVC)が、好ましくは25~45%、より好ましくは30~40%となるように顔料を用いることが好ましい。
PVCが前記範囲にあると、塗装作業性に優れる防食塗料組成物を容易に得ることができ、応力緩和による基材との付着性および防食性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる。
【0055】
前記PVCは、本組成物の不揮発分の体積に対する、顔料の合計の体積濃度のことをいう。PVCは、具体的には下記式より求めることができる。
PVC[%]=本組成物中の全ての顔料の体積合計×100/本組成物の不揮発分の体積
【0056】
前記本組成物の不揮発分の体積は、本組成物の不揮発分の質量および真密度から算出することができる。前記不揮発分の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。
前記顔料の体積は、用いた顔料の質量および真密度から算出することができる。前記顔料の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。例えば、本組成物の不揮発分より顔料と他の成分とを分離し、分離された顔料の質量および真密度を測定することで算出することができる。
【0057】
〈タレ止め剤〉
前記タレ止め剤としては特に制限されないが、本組成物中の顔料等の沈降を抑制し、その貯蔵安定性を向上させることができる材料、または、塗装時や塗装後の本組成物のタレ止め性を向上させることができる材料であることが好ましい。
【0058】
前記タレ止め剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系ワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、水添ヒマシ油ワックスおよびアマイドワックスの混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等、従来公知のものを使用できるが、中でも、アマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスおよび有機粘土系ワックスが好ましい。
【0059】
このようなタレ止め剤としては市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、楠本化成(株)製の「Disparlon 305」、「Disparlon 4200-20」、「Disparlon 6650」、「Disparlon AQ600」、伊藤精油(株)製の「A-S-A T-250F」、共栄社化学(株)製の「フローノン RCM-300」、ビックケミー・ジャパン(株)製の「RHEOBYK 420」、Elementis Specialties, Inc社製の「ベントン SD-2」、日本アエロジル(株)製の「Aerosil R972」、Arkema Coating Resins Co., Ltd.製の「Crayvallc Optima」が挙げられる。
【0060】
タレ止め剤を含有する本組成物を製造する場合、該タレ止め剤の固形分の含有量が、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1~10質量%となるようにタレ止め剤を用いることが好ましい。
【0061】
〈フラッシュラスト抑制剤〉
前記フラッシュラスト抑制剤としては特に制限されないが、本組成物を活性な鋼材表面等に塗装する際に、塗装直後から乾燥過程において、該鋼材表面等から鉄イオンが溶出することなどに起因する発錆、および、その錆などが塗膜表面に浮き出てくるフラッシュラストを抑制できる材料であることが好ましい。
【0062】
前記フラッシュラスト抑制剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸アンモニウムなどの亜硝酸塩;安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アンモニウムなどの安息香酸塩;フィチン酸ナトリウム、フィチン酸カリウムなどのフィチン酸塩;セバシン酸、ドデカン酸などの脂肪酸塩;アルキルリン酸、ポリリン酸などのリン酸誘導体;タンニン酸塩;スルホン酸金属塩;N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、プロピレンジアミン四酢酸(PDTA)、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、これらのアルカリ金属塩などのアミン系キレート剤;4-メチル-γ-オキソ-ベンゼンブタン酸とN-エチルモルホリンの付加反応物;モノアルキルアミンやポリアミン、第四級アンモニウムイオンなどをトリポリリン酸二水素アルミニウムなどの層状リン酸塩にインターカレートしてなる層間化合物;ヒドラジド化合物、セミカルバジド化合物、ヒドラゾン化合物などのヒドラジン誘導体が挙げられる。
【0063】
前記フラッシュラスト抑制剤としては市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、「キレスライト W-410」、「キレスライト W-16B」(以上、キレスト(株)製/有機酸塩系)、「HALOX FLASH-X 150」(ICL Advanced Additives-Hammond社製/亜硝酸塩、安息香酸塩系)が挙げられる。
【0064】
フラッシュラスト抑制剤を含有する本組成物を製造する場合、該フラッシュラスト抑制剤の固形分の含有量が、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~3質量%となるようにフラッシュラスト抑制剤を用いることが好ましい。
【0065】
〈可塑剤〉
本組成物は、得られる防食塗膜の柔軟性を向上させる等の点から、可塑剤を含んでいてもよい。
前記可塑剤としては、従来公知のものを広く使用でき、ナフサを熱分解して得られる低沸点留分等の液状炭化水素樹脂、常温で固形の石油樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂等が挙げられる。具体的には、特開2006-342360号公報に記載の液状炭化水素樹脂および可撓性付与樹脂等が挙げられる。
【0066】
これらの中でも、前記非水性エポキシ化合物(A)との相溶性がよい等の点から、液状炭化水素樹脂が好ましく、フェノール変性炭化水素樹脂がより好ましい。
前記フェノール変性炭化水素樹脂としては、例えば、特開平9-268209号公報、特開平7-196793号公報等にも記載されているように、石油や石炭の分解油留分に含まれるジオレフィン、モノオレフィン類やα-メチルスチレンと、フェノール類(フェノール化合物)とを共重合した樹脂が挙げられる。
【0067】
前記フェノール変性炭化水素樹脂としては、さらに詳しくは、C5留分を原料にしたC5系(脂肪族系)石油樹脂;C9留分を原料にしたC9系(芳香族系)石油樹脂;C5・C9共重合石油樹脂;C5留分に含まれるシクロペンタジエンを熱二量化して得られるジシクロペンタジエンを原料にしたジシクロペンタジエン樹脂;α-メチルスチレン;などと、フェノール類とを反応させた樹脂が挙げられる。これらの中でも、石油や石炭の分解油留分に含まれるスチレン、ビニルトルエン、クマロン、インデンやα-メチルスチレンなどを、フェノール類と付加重合させた樹脂が好ましい。
【0068】
前記フェノール変性炭化水素樹脂の平均分子量は、通常200~1000であり、粘度は、通常30~10,000mPa・s/25℃である。
【0069】
前記液状炭化水素樹脂としては市販品を用いてもよく、該市販品としては、「ネシレス EPX-L」、「ネシレス EPX-L2」(以上、NEVCIN社製/フェノール変性炭化水素樹脂)、「Hirenol PL-1000S」(Kolon Industries, Inc.製/フェノール変性炭化水素樹脂)等が挙げられる。
【0070】
可塑剤を含有する本組成物を製造する場合、該可塑剤の固形分の含有量が、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~15質量%、より好ましくは3~10質量%となるように可塑剤を用いることが好ましい。
可塑剤の含有量が前記範囲にあると、耐クラック性等により優れる防食塗膜を容易に形成することができる。
【0071】
〈消泡剤〉
本組成物は、該組成物の製造時や塗装時に泡の発生を抑えることができ、または、本組成物中に発生した泡を破泡することができ、所望の物性の防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、消泡剤を含有することが好ましい。
【0072】
前記消泡剤としては市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、「BYK-392」、「BYK-066N」、「BYK-1790」(いずれもビックケミー・ジャパン(株)製)、「TEGO Airex 902W」(Evonik社製)、「Spectrasyn 40」(Exxonmobil Chemical Company製)が挙げられる。
【0073】
消泡剤を含有する本組成物を製造する場合、該消泡剤の固形分の含有量が、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%となるように消泡剤を用いることが好ましい。
消泡剤の含有量が前記範囲にあると、泡の発生を十分に抑えることができ、所望の物性の防食塗膜を容易に形成できる。
【0074】
〈造膜助剤〉
本組成物は、水を含有することに起因し、冬季に本組成物が凍結することがあるため、また、低温下における成膜性や得られる防食塗膜の仕上がり外観を向上させる等の点から、造膜助剤を含むことが好ましい。
【0075】
前記造膜助剤としては、常圧下での沸点が180℃以上の有機化合物等の、水系塗料組成物に通常使用されるものを用いることができ、例えば、炭素数5~15の直鎖状または分岐状の脂肪族アルコール類;ベンジルアルコール等の芳香環を有するアルコール類;(ポリ)エチレングリコールまたは(ポリ)プロピレングリコール等のモノエーテル類;(ポリ)エチレングリコールエーテルエステル類;(ポリ)プロピレングリコールエーテルエステル類;が挙げられる。
【0076】
造膜助剤を含有する本組成物を製造する場合、該造膜助剤の含有量が、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~8質量%となるように造膜助剤を用いることが好ましい。
造膜助剤の含有量が前記範囲にあると、低温下における成膜性や外観に優れる防食塗膜を容易に形成できる。
【0077】
〈有機溶剤〉
前記有機溶剤としては、常圧下での沸点が180℃未満の有機溶剤であれば特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン系溶剤、ブチルセロソルブ等のエーテル系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、イソプロパノール、イソブチルアルコール、n-ブタノール、メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤、n-ヘキサン、n-オクタン、2,2,2-トリメチルペンタン、イソオクタン、n-ノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0078】
有機溶剤を含有する本組成物を製造する場合、本組成物中のVOCの含有量が下記範囲となるように有機溶剤を用いることが好ましい。
有機溶剤を含有する第1剤を調製する場合、該有機溶剤の含有量が、第1剤100質量%に対し、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下となるように有機溶剤を用いることが好ましい。
【0079】
<工程2、工程2aおよび工程2b>
工程2は、アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)、および、アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いて第2剤を調製する工程である。
工程2aは、アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)を用いて第2a剤を調製する工程である。工程2aは、アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)を用いれば特に制限されず、アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)自体を第2a剤としてもよく、この場合、工程2aは、アミン化合物を含有する水希釈性成分(B)を用いる工程である。
工程2bは、アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いて第2b剤を調製する工程である。工程2bは、アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いれば特に制限されず、アミン化合物を含有する非水性成分(C)自体を第2b剤としてもよく、この場合、工程2bは、アミン化合物を含有する非水性成分(C)を用いる工程である。
工程2、工程2aおよび工程2bでは、さらに、下記その他の成分を用いてもよい。
【0080】
工程2、工程2aおよび工程2bは、具体的には、各剤に配合する各成分を混合(混練)する工程であり、この混合(混練)の際には、各成分を一度に添加・混合してもよく、複数回に分けて添加・混合してもよい。
前記混合(混練)の際には、従来公知の混合機、分散機、攪拌機等の装置を使用でき、該装置としては、例えば、ディスパー、混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザーが挙げられる。なお、前記混合(混練)の際には、季節、環境等に応じて加温、冷却等しながら行ってもよい。
【0081】
本発明におけるアミン化合物を含有する水希釈性成分(B)とは、水を含む分散媒(以下「水性媒体」ともいう)に、比較的多量に乳化分散するエポキシ硬化性のアミン化合物を含む成分のことをいう。具体的には、23℃において、固形分が50質量%になるように、アミン化合物を含む成分と水とを混合し、または、溶媒・分散媒を揮発させた後、十分に撹拌し、23℃にて1時間静置して得られる混合液において、水と混合した成分の固形分の80質量%以上が水中に安定的に存在しており、かつ、前記混合液がエマルションの状態で保たれている場合、該成分を水希釈性成分(B)とする。なお、固形分が50質量%未満のアミン化合物を含む成分は、エバポレーター等を用いて、固形分が50質量%となるように調整する。
【0082】
また、アミン化合物を含有する非水性成分(C)とは、水と自由に混和しないエポキシ硬化性のアミン化合物を含む成分のことをいい、実質的に水に溶けないエポキシ硬化性のアミン化合物を含む成分のことをいう。具体的には、23℃において、固形分が3質量%になるように、アミン化合物を含む成分と水とを混合し、十分に撹拌し、23℃にて1時間静置して得られる混合液が均一な状態になく、水と混合した成分の固形分の50質量%以上が、分離、沈殿、浮遊している場合、該成分を非水性成分(C)とする。
なお、前記混合液において、水と混合した成分の固形分の90質量%以上が水中に安定的に存在しており、かつ、レーザ回折式粒子径分布測定装置(例:マスターサイザー3000(スペクトリス(株)製))で測定した平均粒子径が10nm未満の状態で水と混合した成分の固形分が存在している場合、本明細書では、該成分を水溶性成分とする。
また、前記水希釈性成分(B)、非水性成分(C)、および、水溶性成分以外のアミン化合物を含有する成分を、本明細書では、その他のアミン成分とする。
【0083】
防食性、塗膜強度および乾燥性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、水希釈性成分(B)および非水性成分(C)は、下記式(2)で算出される反応比が、好ましくは0.3~1.5、より好ましくは0.4~1.2となるような量で用いることが望ましい。
【0084】
反応比={(水希釈性成分(B)の固形分の配合量/水希釈性成分(B)の固形分の活性水素当量)+(非水性成分(C)の固形分の配合量/非水性成分(C)の固形分の活性水素当量)+(非水性エポキシ化合物(A)に対して反応性を有する成分の固形分の配合量/非水性エポキシ化合物(A)に対して反応性を有する成分の固形分の官能基当量)}/{(非水性エポキシ化合物(A)の固形分の配合量/非水性エポキシ化合物(A)の固形分のエポキシ当量)+(水希釈性成分(B)または非水性成分(C)に対して反応性を有する成分の固形分の配合量/水希釈性成分(B)または非水性成分(C)に対して反応性を有する成分の固形分の官能基当量)} ・・・(2)
【0085】
ここで、前記式(2)における「水希釈性成分(B)または非水性成分(C)に対して反応性を有する成分」および「非水性エポキシ化合物(A)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、前記シランカップリング剤が挙げられる。
前記シランカップリング剤としては、反応性基としてアミノ基やエポキシ基を有するシランカップリング剤を使用することができるため、該反応性基の種類によって、該シランカップリング剤が水希釈性成分(B)または非水性成分(C)に対して反応性を有するのか、非水性エポキシ化合物(A)に対して反応性を有するのかを判断し、反応比を算出する必要がある。
【0086】
前記各成分の「官能基当量」とは、これらの成分1molの質量からその中に含まれる官能基のmol数を除して得られた1mol官能基あたりの質量(g)を意味する。
【0087】
[水希釈性成分(B)]
水希釈性成分(B)は、前記定義を満たす成分であり、かつ、アミン化合物を含む成分であれば特に制限されない。
工程2や工程2aで用いる水希釈性成分(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0088】
水希釈性成分(B)の固形分の活性水素当量は、硬化性および防食性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは50~200、より好ましくは60~190である。
【0089】
工程2や工程2aにおける水希釈性成分(B)の使用量は、その固形分の含有量が、前記式(2)を満たすような量であることが好ましく、以下の範囲となるような量であることがより好ましい。
水希釈性成分(B)の固形分の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは4~20質量%、より好ましくは5~15質量%である。
水希釈性成分(B)の固形分の含有量は、第2剤の固形分100質量%に対し、好ましくは45~85質量%、より好ましくは50~80質量%である。
また、水希釈性成分(B)の固形分の含有量は、第2a剤の固形分100質量%に対し、好ましくは85~100質量%、より好ましくは90~100質量%である。
水希釈性成分(B)の含有量が前記範囲にあると、防食性および乾燥性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる。
【0090】
水希釈性成分(B)の具体例としては、エポキシ化合物の硬化剤として用いられる従来公知のアミン化合物と、ポリアルキレングリコールのグリシジルエーテルや、ポリオキシアルキレンアミン等とを反応させるなどして得られた親水性を有するアミン化合物を含む成分、脂肪酸と脂肪族系アミン化合物とを用いて得られたアミド構造を有するアミン化合物を含む成分、または、エポキシ化合物の硬化剤として用いられる従来公知のアミン化合物を、酸で中和することや乳化剤と混合することにより乳化する能力を付与したアミン化合物を、強制的に水に分散させた成分が挙げられる。
【0091】
前記エポキシ化合物の硬化剤として用いられるアミン化合物としては、三級アミン(3級アミノ基のみを有するアミン化合物)以外のアミン化合物であれば特に制限されないが、1分子中に2個以上のアミノ基を含有するアミン化合物が挙げられ、脂肪族系、脂環族系、芳香族系、複素環系などのアミン化合物が好ましい。
【0092】
前記脂肪族系アミン化合物としては、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルキルアミノアルキルアミンが挙げられる。
【0093】
前記アルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-R1-NH2」(R1は、炭素数1~12の二価の炭化水素基である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、トリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0094】
前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-(Cm2mNH)nH」(mは1~10の整数である。nは2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミンが挙げられる。
【0095】
前記アルキルアミノアルキルアミンとしては、例えば、式:「R2 2N-(CH2p-NH2」(R2は独立して、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり(但し、少なくとも1つのR2は炭素数1~8のアルキル基である。)、pは1~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノブチルアミンが挙げられる。
【0096】
これら以外の脂肪族系アミン硬化剤としては、例えば、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2'-アミノエチルアミノ)プロパン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン(特に、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン(IPDA)、メンセンジアミン(MDA)、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1-(2'-アミノエチルピペラジン)、1-[2'-(2''-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジンが挙げられる。
【0097】
前記脂環族系アミン硬化剤の具体例としては、シクロヘキサンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(特に、4,4'-メチレンビスシクロヘキシルアミン)、4,4'-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナンジアミン、2,4-ジ(4-アミノシクロヘキシルメチル)アニリンが挙げられる。
【0098】
前記芳香族系アミン硬化剤としては、例えば、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物が挙げられる。
この芳香族系アミン硬化剤の具体例としては、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,4'-ジアミノビフェニル、2,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、ジエチルメチルベンゼンジアミンが挙げられる。
【0099】
前記複素環系アミン硬化剤の具体例としては、1,4-ジアザシクロヘプタン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1-[2’-(2’’-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、1,11-ジアザシクロエイコサン、1,15-ジアザシクロオクタコサンが挙げられる。
【0100】
前記エポキシ化合物の硬化剤として用いられるアミン化合物としては、さらに、前述したアミン化合物の変性物、例えば、ポリアミドアミン等の脂肪酸変性物、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ変性アミン(例:フェノール由来骨格を有するマンニッヒ変性アミン(フェナルカミン、フェナルカマイド等))、マイケル付加物、ケチミン、アルジミンが挙げられる。これらの中では、ポリアミドアミン、エポキシ化合物とのアミンアダクト、フェノール由来骨格を有するマンニッヒ変性アミンが好ましい。
【0101】
水希釈性成分(B)としては、ポリアミドアミンb1を含有する成分(B1)と、エポキシ化合物とのアミンアダクトおよびフェノール由来骨格を有するマンニッヒ変性アミンから選ばれる少なくとも1種のアミンb2を含有する成分(B2)とを併用することが、防食性により優れる防食塗膜を容易に形成できる等の点で好ましい。但し、この場合、該効果がより発揮される等の点から、ポリアミドアミンb1とアミンb2とを含有する成分(B3)を2つ以上使用することは好ましくない。つまり、成分(B1)と(B2)のうち、少なくとも一方は、成分(B3)ではないことが好ましく、両方とも成分(B3)ではないことがより好ましい。
【0102】
水希釈性成分(B)としては、従来公知の方法で製造して得たものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0103】
前記成分(B2)の固形分の活性水素当量は、硬化性および防食性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは140~200、より好ましくは150~190である。
【0104】
工程2や工程2aにおいて前記成分(B2)を用いる場合、工程2や工程2aにおける該成分(B2)の使用量は、その固形分の含有量が、前記式(2)を満たすような量であることが好ましく、以下の範囲となるような量であることがより好ましい。
成分(B2)の固形分の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは2~20質量%、より好ましくは3~15質量%である。
成分(B2)の固形分の含有量は、第2剤の固形分100質量%に対し、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%である。
また、成分(B2)の固形分の含有量は、第2a剤の固形分100質量%に対し、好ましくは50~80質量%、より好ましくは55~75質量%である。
成分(B2)の含有量が前記範囲にあると、防食性および乾燥性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる。
【0105】
前記エポキシ化合物とのアミンアダクトとしては、例えば、前記エポキシ化合物の硬化剤として用いられるアミン化合物と、前記非水性エポキシ化合物(A)の欄で挙げられたエポキシ化合物との付加反応生成物が挙げられる。
前記フェノール由来骨格を有するマンニッヒ変性アミンとしては、例えば、カルダノールなどのフェノール類と、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類と、前記エポキシ化合物の硬化剤として用いられるアミン化合物とのマンニッヒ縮合反応で形成されるマンニッヒ変性アミン化合物が挙げられる。
【0106】
前記成分(B2)としては、従来公知の方法で製造して得たものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、例えば、「Epilink 701」(Evonik社製)、「Cardolite NX-8401」(Cardolite社製)が挙げられる。
【0107】
前記成分(B1)の固形分の活性水素当量は、水希釈性成分(B)と非水性成分(C)との混合性が向上する等の点から、前記成分(B2)の固形分の活性水素当量より小さいことが好ましく、好ましくは50~130、より好ましくは60~120である。
【0108】
工程2や工程2aにおいて前記成分(B1)を用いる場合、工程2や工程2aにおける該成分(B1)の使用量は、その固形分の含有量が、前記式(2)を満たすような量であることが好ましく、以下の範囲となるような量であることがより好ましい。
成分(B1)の固形分の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~5質量%である。
成分(B1)の固形分の含有量は、第2剤の固形分100質量%に対し、好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~35質量%である。
また、成分(B1)の固形分の含有量は、第2a剤の固形分100質量%に対し、好ましくは15~45質量%、より好ましくは20~40質量%である。
成分(B1)の含有量が前記範囲にあると、防食性および乾燥性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる。
【0109】
前記成分(B1)としては、例えば、前記エポキシ化合物の硬化剤として用いられるアミン化合物と、ダイマー酸などの脂肪酸との縮合反応で形成される化合物が挙げられる。
【0110】
前記成分(B1)としては、従来公知の方法で製造して得たものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、例えば、「Jointmide 3506」(Yun Teh Industral Co., Ltd.製)が挙げられる。
【0111】
水希釈性成分(B)としては、水性媒体にアミン化合物が分散された分散体(アミンエマルション)であってもよく、アミン化合物自体(アミン化合物100%)であってもよい。
【0112】
前記水性媒体には、水が含まれていればよく、水以外の常圧下での沸点が180℃未満の媒体が含まれていてもよい。
該水以外の常圧下での沸点180℃未満の媒体としては、例えば、アセトン、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルが挙げられる。これらは、1種または2種以上を用いることができる。
【0113】
前記アミンエマルションは、アミン化合物を、1種または2種以上の界面活性剤を用いて乳化し、エマルションとすることにより調製することができる。
【0114】
[非水性成分(C)]
非水性成分(C)は、前記定義を満たす成分であり、かつ、アミン化合物を含む成分であれば特に制限されず、具体的には、前記エポキシ化合物の硬化剤として用いられるアミン化合物のうち、前記定義を満たすアミン化合物等が挙げられる。
工程2で用いる非水性成分(C)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0115】
非水性成分(C)は、防食性に優れる防食塗膜を容易に形成することができることや、低粘度の防食塗料組成物を容易に得ることができる等の点から、分子量が、好ましくは3,000以下、より好ましくは2,500以下であり、かつ、環状構造を有するアミン化合物を含むことが望ましく、該アミン化合物であることがより望ましい。
【0116】
非水性成分(C)の固形分の活性水素当量は、硬化性および防食性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは30~200、より好ましくは40~150である。
【0117】
工程2における非水性成分(C)の使用量は、その固形分の含有量が、前記式(2)を満たすような量であることが好ましく、以下の範囲となるような量であることがより好ましい。
非水性成分(C)の固形分の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~7質量%である。
また、非水性成分(C)の固形分の含有量は、第2剤の固形分100質量%に対し、好ましくは15~55質量%、より好ましくは20~50質量%である。
また、非水性成分(C)の固形分の含有量は、第2b剤の固形分100質量%に対し、好ましくは85~100質量%、より好ましくは90~100質量%である。
非水性成分(C)の含有量が前記範囲にあると、防食性および乾燥性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる。
【0118】
非水性成分(C)としては、従来公知の方法で製造して得たものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、例えば、「Ancamine 2280」(Evonik社製)、「ETHACURE 100plus」(Albemarle社製)が挙げられる。
【0119】
[その他の成分]
第2剤は、水希釈性成分(B)および非水性成分(C)を含有すれば特に制限されず、第2a剤は、水希釈性成分(B)を含有すれば特に制限されず、第2b剤は、非水性成分(C)を含有すれば特に制限されず、所望により、本発明の効果を損なわない範囲で、水(D)、アミン化合物を含有する水溶性成分、その他のアミン成分、顔料、顔料分散剤、タレ止め剤(沈降防止剤、揺変剤)、フラッシュラスト抑制剤、可塑剤、消泡剤、硬化促進剤、硬化触媒、有機溶剤等のその他の成分を含んでいてもよい。
これらその他の成分は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記その他の成分は、従来公知の成分を用いることができ、顔料、タレ止め剤(沈降防止剤、揺変剤)、フラッシュラスト抑制剤、可塑剤、消泡剤、有機溶剤としては、前記第1剤の欄に記載の成分と同様の成分等が挙げられる。
【0120】
〈水(D)〉
水希釈性成分(B)には水が含まれている場合がある。この場合には、水希釈性成分(B)に含まれている水以外の水(D)を用いてもよいが、本組成物の調製をより容易にし、貯蔵安定性および塗装作業性により優れる防食塗料組成物を容易に得ることができる等の点から、第2剤および第2a剤には、水希釈性成分(B)に含まれ得る水の他に、さらに水(D)を配合することが好ましい。
水(D)としては特に制限されず、水道水等を用いてもよいが、イオン交換水等を用いることが好ましい。
【0121】
第2剤中の水の含有量(水希釈性成分(B)等に含まれ得る水を含む)は、特に制限されないが、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%である。
第2a剤中の水の含有量(水希釈性成分(B)等に含まれ得る水を含む)は、特に制限されないが、好ましくは25~80質量%、より好ましくは30~75質量%である。
第2b剤は、水を含んでいても、水を含んでいなくてもよいが、水を含んでいない方が好ましい。第2b剤が水を含む場合、該水の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~2質量%である。
また、第2剤および第2a剤中の水の含有量は、所望の防食塗料組成物を容易に得ることができる等の点から、第2剤および第2a剤中の分散媒および溶媒の合計量100質量%に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70~100質量%、特に好ましくは80~100質量%である。
【0122】
<工程3および工程3'>
前記工程3は、工程1および2でそれぞれ調製した第1剤および第2剤を混合する工程であり、前記工程3'は、工程1、2aおよび2bでそれぞれ調製した前記第1剤、第2a剤および第2b剤を混合する工程である。
これら第1剤、第2剤および必要に応じて用いられる第n剤を混合(混練)することで、また、これら第1剤、第2a剤、第2b剤および必要に応じて用いられる第n剤を混合(混練)することで、本組成物を製造することができる。
前記混合(混練)の際には、従来公知の混合機、分散機、攪拌機等の装置を使用でき、該装置としては、例えば、ディスパー、混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザーが挙げられる。なお、前記混合(混練)の際には、季節、環境等に応じて加温、冷却等しながら行ってもよい。
【0123】
<本組成物>
本組成物の不揮発分含量は70体積%以上であり、好ましくは72体積%以上、より好ましくは74体積%以上であり、上限は特に制限されないが、例えば85体積%である。
なお、本組成物の不揮発分含量(体積%)は、ISO3233:1998に準拠し、算出することができる。
不揮発分含量が前記範囲にある組成物は、ハイソリッド組成物であるといえる。本組成物の不揮発分含量が前記範囲にあると、乾燥性に優れ、塗装の際にタレが生じ難く、1回の塗装で厚膜を形成することができ、塗装作業性に優れる防食塗料組成物を容易に得ることができる。
【0124】
本組成物の、23℃で測定した粘度は、好ましくは7000mPa・s以下、より好ましくは5500mPa・s以下、さらに好ましくは5000mPa・s以下であり、下限は特に制限されないが、好ましくは1500mPa・s以上、より好ましくは2000mPa・s以上、さらに好ましくは2500mPa・s以上である。
本方法によれば、粘度がこれらの範囲にありながら、不揮発分含量が前記範囲にある防食塗料組成物を容易に得ることができる。粘度が前記範囲にあると、取扱い性およびタレ止め性に優れ、塗装方法が制限されず、所望の様々な塗装方法で塗装できる、塗装作業性により優れる防食塗料組成物を容易に得ることができる。
なお、本組成物は、塗装方法等に応じて、溶媒や分散媒(例:水)で希釈して用いられる場合があるが、本発明によれば、溶媒や分散媒で希釈しなくても粘度が前記範囲にあるため、溶媒や分散媒で希釈しなくても塗装可能である。本明細書の各説明は、溶媒や分散媒で希釈される前についての説明である。
【0125】
本組成物のVOCの含有量は、自然環境や塗装作業環境への影響が少ない防食塗料組成物となる等の点から、好ましくは100g/L以下、より好ましくは80g/L以下、さらに好ましくは60g/L以下である。
【0126】
本組成物中のVOC含有量は、組成物比重、加熱残分率(不揮発分の質量比率)および水分率の値を用い、下記式(1)から算出することができる。なお、組成物比重、加熱残分率および水分率は、以下のような測定値でも、用いる原材料から算出した値でも構わない。
VOC含有量(g/L)=組成物比重×1000×(100-加熱残分率-水分率)/100 ・・・(1)
【0127】
塗料比重(g/cm3):23℃の温度条件下で、本組成物(第1剤と第2剤と(第n剤を含む場合は第n剤と)を、または、第1剤と第2a剤と第2b剤と(第n剤を含む場合は第n剤と)を混合した直後の組成物)を内容積100mlの比重カップに充満し、該組成物の質量を計量することで算出される値
【0128】
加熱残分率(質量%):本組成物(第1剤と第2剤と(第n剤を含む場合は第n剤と)を、または、第1剤と第2a剤と第2b剤と(第n剤を含む場合は第n剤と)を混合した直後の組成物)1±0.1gを平底皿に量り採り、質量既知の針金を使って均一に広げ、23℃で24時間乾燥させた後、加熱温度125℃で1時間(常圧下)加熱した時の、加熱残分(不揮発分)および該針金の質量を測定することで算出される質量百分率の値
なお、第1剤や第2剤等を構成する原料となる各成分(例:非水性エポキシ化合物(A))中、第1剤、第2剤、第2a剤、第2b剤中の常圧下での沸点が180℃未満の溶媒および分散媒(例:水)以外の成分を「固形分」という。
【0129】
水分率(質量%):カールフィッシャー法により測定される、本組成物100質量%に含まれる水の質量百分率の値
【0130】
≪防食塗膜、防食塗膜付き基材≫
本発明に係る防食塗膜(以下「本塗膜」ともいう。)は、本キットから形成され、具体的には、本キットより得られた本組成物や本方法により製造された本組成物から形成される。
該本塗膜は、好ましくは、基材と該本塗膜とを含む防食塗膜付き基材(以下「本塗膜付き基材」ともいう。)として使用される。該本塗膜付き基材は、本塗膜と基材とを有する積層体である。
【0131】
前記基材の材質としては特に制限されず、例えば、鉄鋼(鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、マイルドスチール、合金鋼等)、非鉄金属(亜鉛、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛メッキ、亜鉛溶射等)、ステンレス(SUS304、SUS410等)が挙げられる。
また、前記基材として、例えば、マイルドスチール(SS400等)を用いる場合、必要により、グリットブラスト等で基材表面を研磨するなど、素地調整(例:算術平均粗さ(Ra)が30~75μm程度になるよう調整)しておくことが望ましい。
前記基材としては、さらに、基材に付着した錆、汚れ、塗料(旧塗膜)等を落とす洗浄処理やブラスト処理等の前処理を行った基材であってもよい。
【0132】
前記基材としては特に制限されず、防食性が求められる基材に対し、制限なく使用することができるが、本組成物を用いる効果がより発揮される等の点から、好ましくは、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、タンク、コンテナなどの(鉄鋼)構造物等が挙げられる。
【0133】
本塗膜の乾燥膜厚は特に限定されないが、十分な防食性を有する塗膜が得られる等の点から、通常は10~400μm、好ましくは15~300μmである。
【0134】
本塗膜付き基材は、本塗膜と基材とを含む積層体であって、基材への密着性や防食性の向上を目的とした下塗り塗膜(プライマー塗膜)、防食性の向上を目的とした中塗り塗膜、耐候性や美観等に優れる上塗り塗膜を形成してもよい。
具体的には、本組成物をジンクプライマーの代替として用いる場合には、本塗膜上に、中塗り塗膜や上塗り塗膜を形成してもよい。
前記下塗り塗膜としては、エポキシ樹脂系等の各種プライマー組成物より形成される塗膜等が挙げられる。前記中塗り塗膜としては、(メタ)アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系等の各種中塗り塗料組成物より形成される塗膜等が挙げられる。また、前記上塗り塗膜としては、(メタ)アクリル樹脂系、(メタ)アクリルシリコン樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系等の各種上塗り塗料組成物より形成される塗膜等が挙げられる。また、本組成物の組成等を変え、本組成物で下塗り塗膜、中塗り塗膜および上塗り塗膜を形成してもよい。
【0135】
≪防食塗膜付き基材の製造方法≫
本発明に係る防食塗膜付き基材の製造方法は、下記工程[1]および[2]を含む。
工程[1]:本キットより得られた本組成物や本方法により製造された本組成物を基材に塗装する工程
工程[2]:基材上に塗装された本組成物を乾燥させて本塗膜を形成する工程
【0136】
<工程[1]>
前記工程[1]における塗装方法としては特に制限されず、例えば、エアレススプレー塗装、エアースプレー塗装等のスプレー塗装、はけ塗り、ローラー塗りなどの従来公知の方法が挙げられる。これらの中でも、前記構造物などの大面積の基材を容易に塗装できる等の点から、スプレー塗装が好ましい。
このような塗装の際には、得られる塗膜の乾燥膜厚が前記範囲となるように塗装することが好ましい。
【0137】
前記スプレー塗装の条件は、形成したい乾燥膜厚に応じて適宜調整すればよいが、例えば、エアレススプレー塗装の場合、1次(空気)圧:0.3~0.6MPa程度、2次(塗料)圧:10~15MPa程度、ガン移動速度50~120cm/秒程度が好ましい。
【0138】
前記塗装は、工程[2]において形成される本塗膜の乾燥膜厚が前記範囲となるように塗装することが好ましい。この場合、1回の塗装で所望膜厚の本塗膜を形成(1回塗り)してもよく、2回以上の塗装(2回以上塗り)で所望膜厚の本塗膜を形成してもよい。
なお、2回塗りとは、工程[1]および[2]を行った後、工程[2]で得られた本塗膜上に工程[1]を行うことをいう。
【0139】
本組成物を基材上に塗装するに際し、基材上の錆、油脂、水分、塵埃、塩分等を除去するため、また、得られる塗膜の基材との付着性を向上させるために、必要により前記基材表面を処理(例えば、ブラスト処理(ISO8501-1 Sa2 1/2)、脱脂による油分、粉塵を除去する処理)等を行うことが好ましい。また、前記基材には、1次防錆を目的として、ショッププライマー等を塗装してもよい。
【0140】
<工程[2]>
前記工程[2]における乾燥条件としては特に制限されず、塗膜の形成方法、基材の種類、用途、塗装環境等に応じて適宜設定すればよいが、乾燥温度は、常温乾燥の場合、通常5~35℃であり、熱風乾燥機等で強制乾燥する場合、通常30℃以上100℃未満、より好ましくは40~80℃である。本組成物によれば、このような常温乾燥でも該組成物を乾燥・硬化させることができる。
乾燥時間は、塗膜の乾燥方法によって異なり、常温乾燥の場合、例えば1日~7日程度であり、強制乾燥する場合、例えば5分~60分程度である。
【実施例0141】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって制限されない。
【0142】
[実施例1]
容器に、表1に示すように、非水性エポキシ化合物(注1)28質量部と、メトキシプロパノール4質量部と、ベンジルアルコール4質量部と、赤色酸化鉄(注4)3質量部と、カリ長石(注5)36.8質量部と、タルク(注6)10質量部と、硫酸バリウム(注7)12質量部と、シランカップリング剤(注8)1質量部と、タレ止め剤(注9)0.9質量部と、消泡剤(注10)0.3質量部とを入れ、ハイスピードディスパーを用いて室温(23℃)で均一になるまで攪拌し、次いで、55~60℃で30分間分散させた。その後、30℃以下まで冷却することで、第1剤を調製した。
【0143】
また、別の容器に、アミン化合物を含有する水希釈性成分(注11)55質量部と、アミン化合物を含有する非水性成分(注15)15質量部と、イオン交換水30質量部とを入れ、ハイスピードディスパーを用いて均一になるまで攪拌することで、第2剤を調製した。
【0144】
調製した第1剤と第2剤とを、塗装前に表1に記載した混合比(質量比)で混合することで防食塗料組成物を調製した。
表1に記載の各成分の説明を表2に示す。
【0145】
[実施例2~9および比較例1~8]
表1に記載の各成分を、表1に記載の量(質量部)で用いた以外は実施例1と同様にして、防食塗料組成物を調製した。
【0146】
実施例および比較例で調製した直後の各防食塗料組成物の23℃における粘度を(リオン粘度計:VT-04F、リオン(株)製)で測定した。結果を表1に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
[防食塗膜付き基材(試験板)の作製]
寸法が150mm×70mm×2.3mm(厚)のSS400のサンドブラスト鋼板(算術平均粗さ(Ra):30~75μm)を用意した。この鋼板表面に、前述のようにして調製した防食塗料組成物を、エアースプレーを用いて、乾燥膜厚が70μmになるように塗装した。次いで、鋼板上に塗装された防食塗料組成物を、60℃で40分間乾燥させた後、水性アクリル樹脂系上塗り塗料(EKOMATE FINISH(中国塗料(株)製))を、エアースプレーを用いて、乾燥膜厚が40μmになるように塗装した。その後、塗装された水性アクリル樹脂系上塗り塗料を60℃で30分間乾燥させ、次いで、23℃で7日間乾燥させることで、試験板1を作製した。
【0150】
また、試験板1で用いた鋼板と同様の鋼板表面に、前述のようにして調製した防食塗料組成物を、エアースプレーを用いて、乾燥膜厚が80μmになるように塗装した。次いで、鋼板上に塗装された防食塗料組成物を、60℃で30分間乾燥させた後、23℃で7日間乾燥させることで、試験板2を作製した。
【0151】
<塩水噴霧試験>
JIS K 5600-7-1:1999に基づいて、塩水濃度5質量%、温度35℃、相対湿度98%の塩水噴霧条件の塩水噴霧試験機中に、前記試験板1および試験板2を400時間保持することで、塩水噴霧試験を実施し、後述の評価基準に従って、防食性を評価した。結果を表3に示す。
なお、防食性は、この塩水噴霧試験における評価が3以上であれば実用上問題ないといえる。
(評価基準)
5:サビ、フクレともに発生していない
4:フクレは発生していないが、塗膜下の基材表面のサビの発生面積が塗膜下の基材の全面に対し、0.03%未満である
3:小さなフクレが極少量発生し、塗膜下の基材表面のサビの発生面積が塗膜下の基材の全面に対し、0.03%以上0.1%未満である
2:フクレが発生し、塗膜下の基材表面のサビの発生面積が塗膜下の基材の全面に対し、0.1%以上0.3%未満である
1:フクレが発生し、塗膜下の基材表面のサビの発生面積が塗膜下の基材の全面に対し、0.3%以上である
【0152】
<複合サイクル試験>
ASTM D2803に準拠し、前記試験板1および試験板2を用いて、25サイクル試験を行った。試験後の試験板の外観を、前記塩水噴霧試験と同様の評価基準に従って評価した。結果を表3に示す。
なお、防食性は、この複合サイクル試験における評価が3以上であれば実用上問題ないといえる。
【0153】
【表3】