(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154832
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】既設管更生方法及び更生管用の製管装置
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20221005BHJP
F16L 1/00 20060101ALN20221005BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058068
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】石田 敬一
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 涼
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA05
4F211SC03
4F211SD06
4F211SJ11
(57)【要約】
【課題】 自走式製管装置を用いて更生管を製管する際に、帯状部材の搬送作業の負担を軽減することができる既設管更生方法を提供する。
【解決手段】
既設管1内で、自走式の主製管装置5が、帯状部材10から更生管4を製管し延伸させる。主製管装置5は更生管4の先端で螺旋を描きながら前進する。既設管1の到達側端部には、元押し式の副製管装置7が設置されている。この副製管装置7では、帯状部材10から更生管4より小径の螺旋管8を製管する。製管された螺旋管8は、製管途中の更生管4内に搬送される。主製管装置5は螺旋管8の帯状部材10から、更生管4を製管する。主製管装置5で更生管4を製管する際の帯状部材10の螺旋の向きと、副製管装置7で螺旋管8を製管する際の帯状部材10の螺旋の向きは逆である。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管内で、自走式の主製管装置が、帯状部材を螺旋状に巻回するとともに一周違いの帯状部材の縁部どうしを嵌合することにより、更生管を前記既設管の発進側端部から到達側端部に向かって製管し延伸させるとともに、前記主製管装置が前記更生管の先端で螺旋を描きながら前記到達側端部に向かって自走する既設管更生方法において、
前記既設管の前記到達側端部または前記発進側端部において、固定位置に設置された元押し式の副製管装置により、帯状部材を螺旋状に巻回するとともに一周違いの帯状部材の縁部どうしを嵌合することにより、前記更生管より小径の螺旋管を製管する工程と、
製管された前記螺旋管を製管途中の前記更生管内に搬送する工程と、
製管途中の前記更生管内に配置された前記螺旋管の帯状部材から、前記主製管装置により前記更生管を製管する工程と、
を備え、前記主製管装置で前記更生管を製管する際の帯状部材の螺旋の向きと、前記副製管装置で前記螺旋管を製管する際の帯状部材の螺旋の向きを、逆にすることを特徴とする既設管更生方法。
【請求項2】
前記既設管にはケーブルが通っており、前記副製管装置は前記ケーブルを前記螺旋管の内側に通すようにして前記螺旋管を製管し、前記主製管装置は前記ケーブルを前記更生管の内側に通すようにして前記更生管を製管することを特徴とする請求項1に記載の既設管更生方法。
【請求項3】
前記主製管装置は、嵌合外し部材を有し、前記嵌合外し部材により前記螺旋管の帯状部材の嵌合を外しながら、前記更生管を製管することを特徴とする請求項1に記載の既設管更生方法。
【請求項4】
前記既設管にはケーブルが通っており、前記副製管装置は前記ケーブルを前記螺旋管の内側に通すようにして前記螺旋管を製管し、前記主製管装置は前記ケーブルを前記更生管の内側に通すようにして前記更生管を製管し、
前記主製管装置は、帯状部材を嵌合させる嵌合製管部と、前記嵌合製管部に連結される環状の内周規制体とを有し、前記嵌合外し部材が直線状をなしてその両端が前記内周規制体に着脱可能に連結され、前記嵌合外し部材により前記内周規制体の内側の空間が、前記嵌合製管部側の第1領域と、前記嵌合製缶部の反対側の第2領域に区分けされ、
前記主製管装置は、前記ケーブルを前記第2領域に通した状態で前記更生管を製管することを特徴とする請求項3に記載の既設管更生方法。
【請求項5】
前記既設管に水が流れており、前記螺旋管を前記更生管内へと搬送する工程では、搬送対象の螺旋管の上流側において水量調節手段により前記搬送対象の螺旋管を流れる水量を減じることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の既設管更生方法。
【請求項6】
前記水量調節手段が、前記搬送対象の螺旋管の上流端にあてがわれる水量調節板であることを特徴とする請求項5に記載の既設管更生方法。
【請求項7】
帯状部材を螺旋状に巻回するとともに一周違いの帯状部材の縁部どうしを嵌合することにより更生管を製管する嵌合製管部を備え、前記更生管を既設管内で製管し延伸させるとともに、前記更生管の先端で螺旋を描きながら前記更生管の延伸方向に前進する自走式の製管装置において、
さらに嵌合外し部材を備え、前記嵌合外し部材は、前記更生管より小径に製管されて前記更生管内に配置された螺旋管の帯状部材の嵌合を外し、当該帯状部材を前記嵌合製管部へと供給することを特徴とする更生管用の製管装置。
【請求項8】
さらに前記嵌合製管部に連結された環状の内周規制体を備え、
前記嵌合外し部材は、直線状に延びてその両端が前記内周規制体に着脱可能に連結されていることを特徴とする請求項7に記載の更生管用の製管装置。
【請求項9】
前記嵌合外し部材が、その軸線方向に伸縮可能であることを特徴とする請求項8に記載の更生管用の製管装置。
【請求項10】
前記嵌合外し部材が、同軸をなして配置されるとともに軸線方向に相対移動可能に連結された複数の剛性ロッドを有していることを特徴とする請求項9に記載の更生管用の製管装置。
【請求項11】
前記複数の剛性ロッドには、樹脂製のカバーが被されていることを特徴とする請求項10に記載の更生管用の製管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管を更生する方法及びこの更生方法に用いられる更生管用の製管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管の内壁に沿って帯状部材からなる螺旋管状の更生管を構築することによって、前記既設管を更生する方法は公知である。帯状部材の帯幅方向の両縁部には雌雄の嵌合部が形成されている。該帯状部材を製管装置によって螺旋状に巻回し、一周違いの帯状部材の雌雄の嵌合部どうしを嵌合させることによって、更生管が製管される。
【0003】
製管装置として、例えば特許文献1に開示された自走式の製管装置が知られている。自走式製管装置は、帯状部材を螺旋状に巻回するとともに一周違いの帯状部材の縁部どうしを嵌合することにより、更生管を製管し延伸させるとともに、更生管の先端で螺旋を描きながら更生管の延伸方向に自走する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記自走式の製管装置を用いる場合、地上のドラムに巻かれた帯状部材を、発信側マンホールに通し、製管途中の更生管の先端に位置する製管装置まで供給することになるが、既設管が長い場合には、帯状部材の搬送の負担が大きい。また、既設管に光ファイバーケーブル等のケーブルが通っている場合には、このケーブルに帯状部材が絡みやすく、搬送作業の負担がさらに増大する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、既設管内で、自走式の主製管装置が、帯状部材を螺旋状に巻回するとともに一周違いの帯状部材の縁部どうしを嵌合することにより、更生管を前記既設管の発進側端部から到達側端部に向かって製管し延伸させるとともに、前記主製管装置が前記更生管の先端で螺旋を描きながら前記到達側端部に向かって自走する既設管更生方法において、
前記既設管の前記到達側端部または前記発進側端部において、固定位置に設置された元押し式の副製管装置により、帯状部材を螺旋状に巻回するとともに一周違いの帯状部材の縁部どうしを嵌合することにより、前記更生管より小径の螺旋管を製管する工程と、製管された前記螺旋管を製管途中の前記更生管内に搬送する工程と、製管途中の前記更生管内に配置された前記螺旋管の帯状部材から、前記主製管装置により前記更生管を製管する工程と、を備え、前記主製管装置で前記更生管を製管する際の帯状部材の螺旋の向きと、前記副製管装置で前記螺旋管を製管する際の帯状部材の螺旋の向きを、逆にすることを特徴とする。
この方法によれば、元押し式の副製管装置で製管した小径の螺旋管を、製管途中の更生管内に搬送し、この螺旋管の帯状部材から主製管装置が更生管を製管するので、帯状部材を主製管装置に搬送する作業の負担を軽減することができる。また、主製管装置で更生管を製管する際の帯状部材の螺旋の向きと、副製管装置で螺旋管を製管する際の帯状部材の螺旋の向きを、逆にすることにより、螺旋管からの帯状部材を主製管装置に円滑に供給することができる。
【0007】
前記既設管にケーブルが通っている場合、前記副製管装置は前記ケーブルを前記螺旋管の内側に通すようにして前記螺旋管を製管し、前記主製管装置は前記ケーブルを前記更生管の内側に通すようにして前記更生管を製管する。
この方法によれば、ケーブルがあっても帯状部材のケーブルへの絡まりを抑制することができる。
【0008】
好ましくは、前記主製管装置は、嵌合外し部材を有し、前記嵌合外し部材により前記螺旋管の帯状部材の嵌合を外しながら、前記更生管を製管する。
この方法によれば、人手を要さずに螺旋管の帯状部材の嵌合を外すことができ、より一層円滑に帯状部材を主製管装置に供給することができる。
【0009】
好ましくは、前記既設管にはケーブルが通っており、前記副製管装置は前記ケーブルを前記螺旋管の内側に通すようにして前記螺旋管を製管し、前記主製管装置は前記ケーブルを前記更生管の内側に通すようにして前記更生管を製管し、前記主製管装置は、帯状部材を嵌合させる嵌合製管部と、前記嵌合製管部に連結される環状の内周規制体とを有し、前記嵌合外し部材が直線状をなしてその両端が前記内周規制体に着脱可能に連結され、前記嵌合外し部材により前記内周規制体の内側の空間が、前記嵌合製管部側の第1領域と、前記嵌合製缶部の反対側の第2領域に区分けされ、前記主製管装置は、前記ケーブルを前記第2領域に通した状態で前記更生管を製管する。
この方法によれば、ケーブルと嵌合製管部の干渉を確実に回避することができる。
【0010】
前記既設管に水が流れている場合、前記螺旋管を前記更生管内へと搬送する工程では、搬送対象の螺旋管の上流側において水量調節手段により前記搬送対象の螺旋管を流れる水量を減じる。
この方法によれば、螺旋管の重量を減じることにより、搬送の負担を軽減できる。
【0011】
好ましくは、前記水量調節手段が、前記搬送対象の螺旋管の上流端にあてがわれる水量調節板である。
この方法によれば、簡易な手段で水量を調節することができる。
【0012】
本発明の他の態様は、帯状部材を螺旋状に巻回するとともに一周違いの帯状部材の縁部どうしを嵌合することにより更生管を製管する嵌合製管部を備え、前記更生管を既設管内で製管し延伸させるとともに、前記更生管の先端で螺旋を描きながら前記更生管の延伸方向に前進する自走式の製管装置において、
さらに嵌合外し部材を備え、前記嵌合外し部材は、前記更生管より小径に製管されて前記更生管内に配置された螺旋管の帯状部材の嵌合を外し、当該帯状部材を前記嵌合製管部へと供給する。
この構成によれば、螺旋管の帯状部材の嵌合を製管装置の嵌合外し部材により外すことにより、円滑に帯状部材を製管装置に供給することができる。
【0013】
好ましくは、さらに前記嵌合製管部に連結された環状の内周規制体を備え、
前記嵌合外し部材は、直線状に延びてその両端が前記内周規制体に着脱可能に連結されている。
この構成によれば、嵌合外し部材を安定して保持することができる。
【0014】
好ましくは、前記嵌合外し部材が、その軸線方向に伸縮可能である。
この構成によれば、更生管の製管中に内周規制体が回る過程で内径が変動しても、嵌合外し部材が抵抗として働かず、内周規制体への負担を軽減することができる。
【0015】
好ましくは、前記嵌合外し部材が、同軸をなして配置されるとともに軸線方向に相対移動可能に連結された複数の剛性ロッドを有している。
この構成によれば、比較的簡易な構造で伸縮性を確保できる。
【0016】
好ましくは、前記複数の剛性ロッドには、樹脂製のカバーが被されている。
この構成によれば、帯状部材を傷つけない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、自走式製管装置を用いて更生管を製管する際に、帯状部材の搬送作業の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る既設管のライニング工程において、ドラムからの帯状部材により更生管を所定距離まで製管する第1段階を示す概略縦断面図である。
【
図1B】同ライニング工程において、小径の螺旋管を製管して更生管内に搬送する第2段階を実行している状態を示す
図1A相当図である。
【
図1C】同ライニング工程において、第2段階が完了した状態を示す
図1A相当図である。
【
図2】更生管の製管に用いられる自走式の主製管装置の正面図であり、小径の螺旋管の帯状部材から更生管を製管している状態を示す。
【
図3】同主製管装置に組付けられる嵌合外し棒の縦断面図である。
【
図5】小径の螺旋管の製管に用いられる元押し式の副製管装置の概略構成を示す正面図である。
【
図6】小径の螺旋管の帯状部材から自走式製管装置を用いて更生管を製管している際に、嵌合外し棒により帯状部材の嵌合を外している状態を示す側面図である。
【
図7】小径の螺旋管の搬送時において水量調節板により水量を調節している状態を、上流側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、更生対象の老朽化した既設管1は、例えば地中の老朽化した下水道管である。既設管1の両端はマンホール2A,2Bに繋がっている。本実施形態では、既設管1には光ファイバーケーブル3(ケーブル)が通っている。
【0020】
既設管1は、その内側に更生管4をライニングすることで更生される。更生管4は、既設管1内において自走式の主製管装置5により帯状部材10(プロファイル)から製管される。ここで、後述する更生管4の製管方向(延伸方向)の上流側を発進側と称し、下流側を到達側と称することにする。
【0021】
帯状部材10は、例えばポリ塩化ビニルなどの合成樹脂からなり、同一断面を有して帯状に長く延びている。帯状部材10の幅方向一側縁部には雌型嵌合部(図示しない)が形成され、他側縁部には雄型嵌合部(図示しない)が形成されている。雄型嵌合部と雌型嵌合部は相補形状をなしている。
【0022】
<主製管装置の構造>
図2に示すように、主製管装置5は、嵌合製管部20と、この嵌合製管部20に連結された内周規制体30と、径方向に延びてその両端が内周規制体30の後側(製管方向の反対側)に着脱可能に連結された嵌合外し棒40(嵌合外し部材)と、を備えている。
【0023】
製管部20は、アウターローラ21とインナーローラ22と、油圧モータ23とを有している。これらローラ21,22が、油圧モータ23により互いに逆方向に回転駆動しながら、製管途中の更生管4の先端に位置する帯状部材10と新規に供給される帯状部材10とに跨って、挟圧することにより、一周違いの帯状部材10の雌型嵌合部と雄型嵌合部が嵌合するようになっている。
【0024】
内周規制体30は、多数のセグメント31を回転可能に連結することにより、環状に組まれている。各セグメント31にはローラ32が回転可能に支持されている。内周規制体20のローラ32に、嵌合したばかりの帯状部材10の内周が規制されることにより、更生管4が一定の内径の円形断面となる。
【0025】
ローラ21,22が螺旋に巻かれて嵌合された帯状部材10に沿って走行することにより、主製管装置5全体が、更生管4の先端に位置しながら螺旋を描いて回転するとともに到達側マンホール2Bに向かって進む(自走する)。
【0026】
図3に示すように、嵌合外し棒40は、更生管4および内周規制体20の中心軸線を通り、径方向に延びており、その両端が内周規制体20に着脱可能に連結されている。
図4、
図5に示すように、嵌合外し棒40は、断面正方形の鉄パイプからなる長尺の主ロッド41(剛性ロッド)と、この主ロッド41の両端部に軸方向移動可能に挿入された断面円形の鉄パイプからなる短尺の副ロッド42(剛性ロッド)と、主ロッド41と副ロッド42を被覆する樹脂製のカバー43と、副ロッド42に連結された連結金具44と、を有している。
【0027】
嵌合外し棒40は、主ロッド41と副ロッド42が軸線方向に相対移動可能であるので、軸線方向すなわち内周規制体30の径方向に伸縮可能である。連結金具44は、自在継手を含み、前記セグメント31に着脱可能に連結されている。
【0028】
<副製管装置について>
本発明では元押し式の副製管装置7も用いられる。この副製管装置7は、到達側マンホール2Bにおいて既設管1の端部近傍に設置され、後述するように更生管4より小径の螺旋管8を製管する。
元押し式の副製管装置7の構造は公知であるので詳述しないが、半割体を着脱可能に連結してなる環状のフレーム7aと、このフレーム7aの頂部に設けられた嵌合製管部7bとを備えている。嵌合製管部7bは、自走式の主製管装置5の嵌合製管部20と同様の構造を有している。副製管装置7は、既設管1の管口に設置され、マンホール2Bや既設管1に固定される。副製管装置7は、供給された帯状部材10をらせん状に巻きつつ嵌合することで、後述する螺旋管8を既設管や更生管内に向けて伸ばしていく。
副製管装置7による螺旋管8の帯状部材10の螺旋巻き方向と、主製管装置5による更生管4の帯状部材10の螺旋巻き方向は、逆である。
【0029】
<ライニング工程>
以下、既設管1のライニング工程、すなわち更生管4の製管工程を詳しく説明する。なお、本実施形態では、ライニング工程を、既設管1に水が流れている状態で実行する。
【0030】
ライニング工程の第1段階
ライニング工程の第1段階では、
図1(A)に示すように、帯状部材10は、発進側マンホール2Aの近傍の地上に設置されたドラム6から、マンホール2A内に引き出され、既設管1内の発進側端部に設けられた自走式主製管装置5(主製管装置)に供給される。なお、この第1段階では、主製管装置5の嵌合外し棒40は、内周規制体30に取り付けられていない。
【0031】
主製管装置5は、光ファイバーケーブル3を内周規制体30の内側に通した状態で、帯状部材10を所定径に巻回しながら、嵌合製管部20のローラ21,22間で一周違いの帯状部材の縁部同士を厚み方向に挟圧することにより、雌雄嵌合部を嵌合させ、更生管4を製管する。製管される前において、帯状部材10は、ドラム6に巻き付けられていたことにより巻き癖が付いている。
【0032】
上述したように主製管装置5により、更生管4の先端に位置する帯状部材10の巻き部分に帯状部材10の新たな巻き部分が連なり、更生管4が到達側マンホール2Bに向かって延伸していく。帯状部材10は、マンホール2Aから製管途中の更生管4を通って更生管4の先端の主製管装置5に供給される。主製管装置5は、更生管4が延伸するに伴い螺旋を描きながらマンホール2Bに向かって前進する(自走する)。
【0033】
1ドラム分の帯状部材10の供給が終了したら、新たなドラム4の帯状部材10を供給し、更生管4の先端に位置する帯状部材10の終端と新規の帯状部材10の始端とを接続して更生管4の製管を続ける。製管途中の更生管4の長さが所定長さ(例えば30m)を超えてから(すなわち更生管4の先端に位置する主製管装置5が、発進側の既設管1の端部から所定距離を超えてから)、最後の1ドラム分の帯状部材10の供給が完了した時に、主製管装置5の稼働を停止し、第1段階を終了する。
【0034】
ライニング工程の第2段階
第1段階の後に実行される第2段階では、ドラム6からの帯状部材10を、発進側マンホール2A、製管途中の更生管4、既設管1を経て、到達側マンホール2Bに設置された元押し式の副製管装置7に供給する。この副製管装置7では、更生管4より小径の螺旋管8を製管する。この螺旋管8は副製管装置7で新たに巻かれる帯状部材10により発進側に向かって押されるようにして延伸される。
【0035】
副製管装置7による螺旋管8の製管に際して、最初にフレーム7aの半割体の連結を外してフレーム7aの内側に光ファイバーケーブル3を通し、その後で半割体を連結する。この状態で、フレーム7の頂部に位置する嵌合製管部7bにより帯状部材10を螺旋状に巻回するとともに一周違いの帯状部材を雌雄嵌合する。この際、供給される帯状部材10は光ファイバーケーブル3に絡まず、嵌合製管部7bとも干渉しないので、円滑に螺旋管8を製管することができる。
【0036】
1ドラム分の帯状部材10による螺旋管8の製管が終了したら、この螺旋管8を製管途中の更生管4内へと搬送する。このような螺旋管8の製管と搬送を繰り返すことにより、製管途中の更生管4に複数の螺旋管8を配置するのが好ましい。
【0037】
<ライニング工程の第3段階>
第2段階が終了したのち、第3段階に移行する。詳述すると、製管途中の更生管4の先端に位置する帯状部材10の終端と、主製管装置5の近傍に位置する螺旋管8の帯状部材10の始端とを接続する。また、嵌合外し棒40を内周規制体20に連結する。この後、主製管装置5を稼働させて、螺旋管8の帯状部材10から更生管4を製管する。帯状部材10が製管された螺旋管8から主製管装置6の近傍で供給されるので、主製管装置6が既設管1の発進側の端部から離れていても帯状部材10の搬送作業の負担を軽減することができる。また、帯状部材10の供給の際に光ファイバーケーブル3と絡むことはない。
【0038】
前述したように、自走式の主製管装置5は製管に伴い螺旋を描いて回転しかつ前進する。この際、
図2および
図6に示すように、嵌合外し棒40が螺旋管8の先端部において一周違いの帯状部材10の間に入り込んでその嵌合を外す。しかも、副製管装置7による螺旋管8の巻き方向と主製管装置5による更生管4の巻き方向が逆であるため、螺旋管8からの帯状部材10を円滑に主製管装置5の嵌合製管部20に供給することができる。
【0039】
上記嵌合外し棒40は、内周規制体30の内側の空間を第1領域35aと第2領域35bに仕切っている。この第1領域35aが前記嵌合製管部20側に配置されており、第2領域35bには光ファイバーケーブル3が通っている。そのため、光ファイバーケーブル3が嵌合製管部20と干渉することがない。
【0040】
嵌合外し棒40は、その軸線方向に伸縮可能であるため、更生管4の製管中に内周規制体30の内径が変動しても、嵌合外し棒40が抵抗として働かず、内周規制体30への負担を軽減することができる。また、樹脂製のカバー43により、帯状部材10を傷つけない。
【0041】
1つの螺旋管8の帯状部材10による更生管4の製管が完了したら、次の螺旋管8を主製管装置5に近づけ、上記と同様に帯状部材10の接続後に更生管4の製管を続ける。更生管4内の螺旋管8が無くなったら、主製管装置5の稼働を停止する。
【0042】
上記の第2段階と第3段階を繰り返すことにより、更生管4が延伸されて既設管1の到達側の端部に達した時に、更生管4の製管、すなわち既設管1のライニングが完了する。
【0043】
既設管1内を水が流れている場合、水量が多いと螺旋管8の搬送に労力を要することがある。その場合には、
図7に示すように、搬送対象の螺旋管8の上流端に水量調節板50(水量調節手段)をあてがった状態で搬送する。これにより螺旋管8内の水量を減じて螺旋管8の重量を軽減できるので、搬送が楽になる。水が発進側から到達側に向かって流れている場合には、水流による抵抗を減じることもできる。
【0044】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
上述した実施形態のライニング工程の第1段階を省くこともできる。この場合、ライニング工程の開始時には、副製管装置で小径の螺旋管を製管し、この螺旋管を発信側マンホールまで搬送し、既設管の発進側端部に配置された主製管装置がこの螺旋管の帯状部材から更生管の製管を開始する。
副製管装置を発進側マンホールに設置し、更生管内に螺旋管を送り出してもよい。
既設管を水が流れる場合、更生管の延伸方向(主製管装置の自走方向)と逆方向に流れていてもよい。
既設管は、下水道管に限られず、既設管は、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管、トンネル等であってもよい。
既設管内を通るケーブルは、光ファイバーケーブル以外に、他の通信ケーブルや電力ケーブルであってもよい。
主製管装置は、内周規制体を備えないものであってもよく、帯状部材にて更生管を製管しつつ既設管内を移動するようになっていればよい。副製管装置は、自走式製管装置をマンホールや既設管に固定したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、老朽化した下水道管等の更生に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 既設管
3 光ファイバーケーブル(ケーブル)
4 更生管
5 自走式の主製管装置
7 元押し式の副製管装置
8 小径の螺旋管
10 帯状部材
20 嵌合製管部
30 内周規制体
40 嵌合外し棒(嵌合外し部材)
41 主ロッド(剛性ロッド)
42 副ロッド(剛性ロッド)
43 カバー
50 水量調節板(水量調節手段)