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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154847
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】乗物用内装部品
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/00 20060101AFI20221005BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60N3/00 C
B68G7/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058097
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】竹沢 良一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】井伊 高誉
(72)【発明者】
【氏名】荻原 佑太
【テーマコード(参考)】
3B088
【Fターム(参考)】
3B088BA01
(57)【要約】
【課題】表皮を基材に被覆する際の作業性を改善・容易にし、作業工程又は工数が削減された乗物用内装部品を提供する。
【解決手段】本発明の乗物用内装部品1は、意匠面2を有する乗物用内装部品1であって、基材10と、基材10を被覆する表皮材20とを備え、表皮材20は、表皮材20の端部21、22に線状係止部材5を有し、線状係止部材5は、基材10において意匠面側から見えない位置に取り付けられる。表皮材20の端部21、22に線状係止部材5を有することで、表皮材20は線で引っ張られるため、基材10に被覆したとき弛み皺を抑制することができる。また、線状係止部材5を意匠面側から見えない位置に取り付けることで、接着剤を用いず表皮材20を固定することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠面を有する乗物用内装部品であって、
基材と、該基材を被覆する表皮材とを備え、
前記表皮材は、該表皮材の端部に線状係止部材を有し、
前記線状係止部材は、前記基材において前記意匠面側から見えない位置に取り付けられることを特徴とする乗物用内装部品。
【請求項2】
前記線状係止部材は、棒状又は細長い板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用内装部品。
【請求項3】
前記線状係止部材は複数設けられ、前記線状係止部材は、前記基材の第一端末部に取り付けられる第一線状係止部材と、前記基材において前記第一端末部の反対側に位置する第二端末部に取り付けられる第二線状係止部材と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用内装部品。
【請求項4】
前記第一線状係止部材及び前記第二線状係止部材は、前記基材の端部から中央に向かうに従って離れるように配置されることを特徴とする請求項3に記載の乗物用内装部品。
【請求項5】
前記第一線状係止部材は、前記基材の上側にある第一端末部に取り付けられ、前記第二線状係止部材は、前記基材の下側にある第二端末部に取り付けられ、前記第二線状係止部材は、前記第一線状係止部材よりも長いことを特徴とする請求項3又は4に記載の乗物用内装部品。
【請求項6】
前記第一線状係止部材は、前記基材の上側にある第一端末部に取り付けられ、前記第二線状係止部材は、前記基材の下側にある第二端末部に取り付けられ、
前記表皮材は、前記第一線状係止部材と前記第二線状係止部材との間に意匠線を有することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の乗物用内装部品。
【請求項7】
前記基材は、端末部の裏側に前記線状係止部材と係合する係合部を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の乗物用内装部品。
【請求項8】
前記基材は、前記係合部とは別に端末部の裏側に前記表皮材を係止する点状の係止部を有することを特徴とする請求項7に記載の乗物用内装部品。
【請求項9】
該表皮材の端末部近傍には貫通孔が形成されており、
前記係合部は前記線状係止部材に引っ掛かる引掛け部を含み、
前記線状係止部材は、前記貫通孔に挿通された前記引掛け部に掛けられることにより、前記基材に取り付けられることを特徴とする請求項7又は8に記載の乗物用内装部品。
【請求項10】
前記係合部は、前記線状係止部材を係止する係止爪を含み、
前記線状係止部材は、細長い板状に形成されており、
前記線状係止部材は、前記基材の裏面側に配されて前記係止爪に係合することにより、前記基材に取り付けられることを特徴とする請求項7又は8に記載の乗物用内装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物用内装部品に係り、特に、表皮により被覆される乗物用内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアアームレスト等の車両用内装部品は、基材と、その表面を被覆する表皮材とにより構成されている。表皮材は例えばシート状軟質材から形成される。表皮材の取付けは、基材の外周端末に表皮材を巻き込んで接着剤を塗布することで行われている。
特許文献1には、芯材の内側に複数の係止片を設け、表皮材の周辺端部を芯材の端部において折り返し、表皮材の端部に形成された係合孔を係止片に係合することで表皮材を芯材に保持させる構造が開示されている。
【0003】
しかしながら、射出成形ではないシート状軟質材を表皮として、内装部材の基材に被覆する場合、弛み皺が発生したり、表皮材の端部が係止片から外れる虞があった、そのため、シート状軟質材の表皮材を基材に固定する場合、依然として接着剤を使用したり、タッカー等により多点位置固定をし、表皮端末を巻き込んで固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-312346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤を使用して巻き込む方法で固定すると、作業者による難作業が多く工数もかかる。また、接着剤を塗布する工程も加わるため、工数を削減することが困難であった。そのため、接着剤を廃止するか、あるいは、タッカー等による表皮端末の巻き込みをやめ、手作業の難易度を下げ、容易に表皮材で被覆することで、作業工程又は工数を改善する構造が求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、表皮を基材に被覆する際の作業性を改善・容易にし、作業工程又は工数が削減された乗物用内装部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明の乗物用内装部品によれば、意匠面を有する乗物用内装部品であって、基材と、該基材を被覆する表皮材とを備え、前記表皮材は、該表皮材の端部に線状係止部材を有し、前記線状係止部材は、前記基材において前記意匠面側から見えない位置に取り付けられることにより解決される。
【0008】
表皮材が端部に線状係止部材を有することで、表皮材は線で引っ張られるため、基材に被覆したとき弛み皺を抑制することができる。また、線状係止部材を意匠面側から見えない位置、例えば基材の裏側に取り付けることで、接着剤を用いず表皮材を固定することができる。接着剤を使用しないため、表皮材を基材に被覆する際の作業性が改善・容易になり、作業工程又は工数が削減された乗物用内装部品を提供することができる。弛み皺が抑制されるため、作業者による製品の出来栄えのバラツキが軽減され、外観品質の向上、安定化が図られる。表皮材に設けられたステッチ等の意匠線のうねりも抑制される。
【0009】
また、上記の乗物用内装部品において、前記線状係止部材は、棒状又は細長い板状に形成されているとよい。
線状係止部材を簡素な構造とすることで、容易に基材と係合することができる。また、簡素な構造であることから表皮材の弛み皺を抑制できる。
【0010】
また、上記の乗物用内装部品において、前記線状係止部材は、前記基材の第一端末部に取り付けられる第一線状係止部材と、前記基材において前記第一端末部の反対側に位置する第二端末部に取り付けられる第二線状係止部材と、を含むとよい。
互いに反対側に位置する線状係止部材を取り付けることで、表皮材を線で反対方向に引っ張るため、より表皮材の弛み皺を抑制できる。
【0011】
また、上記の構成において、前記第一線状係止部材及び前記第二線状係止部材は、前記基材の端部から中央に向かうに従って離れるように配置されるとよい。
乗物用内装部品の形状に応じて、被覆した表皮材をバランスよく係止し、弛み皺を抑制できる。
【0012】
また、上記の乗物用内装部品において、前記第一線状係止部材は、前記基材の上側にある第一端末部に取り付けられ、前記第二線状係止部材は、前記基材の下側にある第二端末部に取り付けられ、前記第二線状係止部材は、前記第一線状係止部材よりも長いとよい。
下側にある第二線状係止部材を、第一線状係止部材より長くすることで、被覆した表皮材をバランスよく係止し、表皮材の弛み皺を抑制できる。
【0013】
また、上記の乗物用内装部品において、前記第一線状係止部材は、前記基材の上側にある第一端末部に取り付けられ、前記第二線状係止部材は、前記基材の下側にある第二端末部に取り付けられ、前記表皮材は、前記第一線状係止部材と前記第二線状係止部材との間に意匠線を有するとよい。
意匠線の上下に第一線状係止部材と第二線状係止部材とを取り付けることで、意匠線のうねり・歪みが抑制され外観商品性が向上する。
【0014】
また、上記の乗物用内装部品において、前記基材は、端末部の裏側に前記線状係止部材と係合する係合部を有するとよい。
線状係止部材と係合する係合部を有することで、基材を被覆する表皮材の弛み皺を抑制できる。
【0015】
また、上記の乗物用内装部品において、前記基材は、前記係合部とは別に、前記表皮材を係止する点状の点状係止部を有するとよい。
係合部とは別に点状係止部を有することで、基材を被覆する表皮材の弛み皺を更に抑制できる。
【0016】
また、上記の乗物用内装部品において、該表皮材の端部近傍には貫通孔が形成されており、前記係合部は前記線状係止部材に引っ掛かる引掛け部を有し、前記線状係止部材は、前記貫通孔に挿通された前記引掛け部に掛けられることにより、前記基材に取り付けられるとよい。
貫通孔に挿通された引掛け部により線状係止部材を基材に取り付けることで、基材を被覆する表皮材の弛み皺を更に抑制できる。
【0017】
また、上記の乗物用内装部品において、前記係合部は、前記線状係止部材を係止する係止爪を含み、前記線状係止部材は、細長い板状に形成されており、前記線状係止部材は、前記基材の裏面側に配されて前記係止爪に係合することにより、前記基材に取り付けられるとよい。
板状の線状係止部材を係止爪に係合することで、簡素な構造で容易に係止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、表皮材が端部に線状係止部材を有することで、表皮材は線で引っ張られるため、基材に被覆したとき弛み皺を抑制することができる。また、線状係止部材を用いて表皮端末を意匠面側から見えない位置、例えば基材の裏側に取り付けることで、接着剤を用いず表皮材を固定することができる。接着剤を使用しないため、表皮材を基材に被覆する際の作業性が改善・容易になり、作業工程又は工数が削減された乗物用内装部品を提供することができる。弛み皺が抑制されるため、作業者による製品の出来栄えのバラツキが軽減され、外観品質の向上、安定化が図られる。表皮材に設けられたステッチ等の意匠線のうねりも抑制される。
また、線状係止部材を簡素な構造とすることで、容易に基材と係合することができる。また、簡素な構造であることから表皮材の弛み皺を抑制できる。
また、互いに反対側に位置する線状係止部材を取り付けることで、表皮材を線で互いに反対方向に引っ張るため、より表皮材の弛み皺を抑制できる。
また、互いに反対側に位置する線状係止部材を取り付けることで、表皮材を線で互いに反対方向に引っ張るため、より表皮材の弛み皺を抑制できる。
また、下側にある第二線状係止部材を、第一線状係止部材より長くすることで、表皮材の弛み皺を抑制できる。
また、意匠線の上下に第一線状係止部材と第二線状係止部材とを取り付けることで、意匠線のうねり・歪みが抑制され外観商品性が向上する。
また、係合部を有することで、基材を被覆する表皮材の弛み皺を抑制できる。
また、点状の係止部を有することで、基材を被覆する表皮材の弛み皺を更に抑制できる。
また、貫通孔に挿通された引掛け部により線状係止部材を基材に取り付けることで、基材を被覆する表皮材の弛み皺を更に抑制できる。
また、板状の線状係止部材を係止爪に係合することで、簡素な構造で容易に係止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用内装部品を有する車両用ドアを示す側面図である。
図2】車両用ドアに設けられたアームレストを示す側面図である。
図3図2のIII-III線に沿ったアームレストの断面図である。
図4図3の部分Aを拡大して示す拡大図である。
図5図3の部分Bを拡大して示す拡大図である。
図6】線状係止部材の別例を示す断面図である。
図7A】線状係止部材の別例を示す断面図である。
図7B】線状係止部材の別例を示す正面図である。
図8】線状係止部材を取り付ける手順を示す説明図である。
図9】線状係止部材の別例を示す断面図である。
図10】線状係止部材の別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用内装部品の構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、乗物用内装部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0021】
なお、以下では、乗物用内装部品の一例として車両用ドアDに設けられるドアライニング50、特にアームレスト1を挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載されるドアライニング50に限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載される内装部品にも適用され得る。
【0022】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用ドアDの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。すなわち、図1に示すよう車両の走行方向が前方側となり、その反対側を後方側とする。また、「上下方向」とは、車両用ドアDの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。また、単に「外側」という場合は、車両用ドアDが設けられた車室の中心から外側に向かう方向を指し、「内側」という場合は車両の外側から車室の中心に向かう方向を意味するものとする。「ドアの幅方向」とは、車両の幅方向と同じであり、車両用ドアDの内側から外側の方向を意味する。
【0023】
なお、以下に説明する車両用ドアD、ドアライニング50の各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用ドアが閉じられた状態を想定して説明することとする。
【0024】
<車両用ドア>
本実施形態に係るドアライニング50を備える車両用ドアDの基本構成について、図1参照しながら説明する。図1は、車両用ドアDに設けられたドアライニング50を示す側面図である。
車両用ドアDは、ドアパネルPと、ドアパネルPの上部に形成された窓Wと、ドアパネルPにおいて窓Wの下方に設けられたドアライニング50とを備える。ドアライニング50は、アッパー部材51、センター部材52、ロア部材53、センター部材52とロア部材53と間において車室内に向けて突設されるアームレスト1と、から構成される。また、センター部材52の前方にはドアハンドル54が設けられ、ロア部材53の前方にはドアポケット56が設けられている。
【0025】
<アームレスト>
次に、ドアライニング50のアームレスト1について説明する。アームレスト1は、乗物用内装部品の一例である。図2は、アームレスト1の車内側からみた側面図であり、図3はアームレスト1の断面図である。アームレスト1は、図2及び図3に示すように室内側に向けて突設される部材であり、車両用シートに着座した乗員の手又は腕がかけられる部分である。アームレスト1は、車両用ドアDの前後方向に延びる形状を有し、アームレスト1の上面にはパワーウインドウの開閉を操作するための開閉スイッチ55が設けられている(図1参照)。
【0026】
アームレスト1は、センター部材52とロア部材53とに取り付けられており、外観上、乗員から視認可能な意匠面2を有する。具体的には、室内側に向けて突設される表面が意匠面2である。意匠面側から見えないアームレスト1の裏面には複数のボス3が設けられていてセンター部材52及びロア部材53と連結することが可能となっている。
【0027】
アームレスト1は、その突設した形状を維持するために基材10を有する。また、アームレスト1は、図3に示すように基材10の意匠面2側の表面10aを被覆する表皮材20を有する。基材10は樹脂製であり、基材10を被覆する表皮材20は、例えば布地、合成皮革又は本革等により構成される。表皮材は、不織布、フィルム等により構成されてもよい。また、基材10と表皮材20との間にパッドPaが配置される場合がある。
【0028】
<意匠線>
アームレスト1は、乗員の手又は腕がかけられる上面1aと側面1bとを有し、上面1aと側面1bとの境界部分には、表皮材20に意匠線として縫製によるステッチ15が形成されている。アームレスト1の上面1aと側面1bとが交差する位置には、前後方向に延びる交差部1eが形成されており、図2に示すように、ステッチ15は交差部1eに沿って直線状に、アームレスト1の前端1cから後端1dにかけて配置される。
【0029】
また、交差部1eは、図3に示すように平坦に形成された斜面として形成されている。しかしながら、これは一例であり、ステッチ15の作成方法によっては、表皮材20の裏側に縫合された部分が突出する場合がある。その場合、交差部1eに沿って延びる凹部が形成され、ステッチ15の突出部をその凹部に挿入してもよい。また、ステッチ15は意匠を目的としたものであるから、表皮材20に設けなくてもよい。
なお、本実施形態の意匠線は、アクセントラインとして縫製によるステッチ15を設けているが、これは一例であり、表皮材20の表面に模様を印刷したり、転写により凹凸模様を作成したりしたものであってもよい。
【0030】
<線状係止部材>
図3から図4に示すように、表皮材20の上側端部21には、基材10の上側端末部11a、11bの形状に応じて、線状に形成された線状係止部材5が設けられている。
本実施形態において、表皮材20の上側端部21には、不織布33を介して線状係止部材5として棒状に形成されたサスペンダーコード30(第一線状係止部材)が設けられている。また、2本のサスペンダーコード30が表皮材20の上側端部21に沿って配置される。
【0031】
図3及び図4に示す、サスペンダーコード30は、その断面形状が、四角形と半円とを組み合わせた形状であるが、サスペンダーコード30の断面形状はこの形状に限定されず、四角形又は円形でもよい。
【0032】
また、表皮材20の下側端部22にも、図3及び図5に示すように、表皮材20の下側端部22に、基材10の下側端末部12a、12bの形状に応じて、線状に形成された線状係止部材5が設けられている。
本実施形地において、表皮材20の下側端部22には、縫製により線状係止部材5として細長い板状に形成されたトリムコード40(第二線状係止部材)が設けられている。トリムコード40は、どの部分においても同一断面形状で形成されている。トリムコード40は、表皮材20の下側端部22に沿って延びるよう配置される。トリムコード40は、図2及び図3に示すように、サスペンダーコード30の対向位置、言い換えれば、サスペンダーコード30とは反対側の端部(下側端部22)に設けられている。
なお、下側端末部12a、12bに取り付ける線状係止部材5としてサスペンダーコード30を用いてもよい。
【0033】
表皮材20に設けられた線状係止部材5であるサスペンダーコード30及びトリムコード40は、基材10の意匠面側から見えない位置に取り付けられる。なお、図2において、サスペンダーコード30とトリムコード40とはその位置を示すために便宜上、実線で表示されているが、図3に示すようにサスペンダーコード30とトリムコード40とは意匠面側からは見えない位置である基材10の裏面10b側に配置される。
【0034】
<係合部>
以下に、線状係止部材5を基材10に取り付けるために基材10に設けられた、線状係止部材5と係合する係合部6について説明する。本実施形態において、係合部6は二種類あり、上側端末部11a、11bに設けられる係合部6を係合部6A、下側端末部12a、12bに設けられる係合部6を係合部6Bとする。
【0035】
図2に示すように、基材10の意匠面側から見えない位置、例えば基材10の裏面側の上側端末部11a、11bには、線状係止部材5であるサスペンダーコード30と係合する係合部6Aが複数個、並んで設けられている。
【0036】
サスペンダーコード30と係合する係合部6Aは、図3及び図4に示すように、ドアの外側方向に向かって突出し、先端に返し部31aを有する引掛け部31として設けられる。
サスペンダーコード30の根元部分(不織布33)には、引掛け部31を通す貫通孔34が形成されている。貫通孔34に引掛け部31を通し、サスペンダーコード30に引掛け部31の返し部31aを掛けることにより、表皮材20の上側端部21が、基材10の意匠面側から見えない位置(裏面側の端末部)に取付けられる。
なお、引掛け部31及び貫通孔34を配置する間隔は、適切に任意で調整して設定することができる。
【0037】
基材10の下側端末部12a、12bには、線状係止部材5であるトリムコード40と係合する係合部6Bが複数個並んで配置されている。
係合部6Bは、図3及び図5に示すように、ボス3に支持される係止爪41として設けられてもよい。係止爪41には返し部41aが設けられている。トリムコード40は、基材10の下側端末部12a、12bにおいて、巻き込まれ、リブ46と返し部41aとの隙間に挿入される。トリムコード40は、その側部を返し部41aに掛けることにより固定される。そのため、トリムコード40は、係止爪41から外れ難くなる。また、リブ46と係止爪41の返し部41aとの隙間は、表皮材20の仕様により適切に任意の大きさで設定することができる。
【0038】
このように、サスペンダーコード30及びトリムコード40を、基材10に設けられた複数の係合部6A、6Bに係合して互いに対向する位置に配置することで、表皮材20を反対方向に線で引っ張りつつ取り付けることができる。
【0039】
本実施形態では、上下合わせて4本の線状係止部材5により、表皮材20を基材10に被覆して取り付けているが、線状係止部材5の本数は、基材10の形状によって変更される。基材10が単純な四角形である場合は、表皮材20の上下にそれぞれ一本ずつ線状係止部材5を設けて取り付けてもよい。より複雑な形状の場合は、基材10の辺の数に合わせて線状係止部材5を取り付ける。上下で同じ本数の線状係止部材5を設ける必要はなく、異なる本数の線状係止部材5で表皮材を取り付けてもよい。
【0040】
このように、表皮材20の端部に棒状又は細長い板状の線状係止部材5を設け、基材10に取り付けることで、表皮材20を線で引っ張ることができ、弛み皺が抑制される。そのため、接着剤を使用することなく表皮材20を基材10に取り付けることができる。接着剤を使用しないため、表皮材を基材に被覆する際の作業性が改善・容易になる。それにより、作業工程又は工数が削減される。
【0041】
接着剤を使用することなく表皮材20を基材10に取り付けられるため、接着剤を使用するための従来の設備が不用になる。例えば、接着剤の塗布に使用していた塗布ブース、接着剤を乾燥させる乾燥炉、圧着型、プレス型、治具等が不用とり、設備・作業空間を縮小することができる。作業工程が簡素化され、表皮材20の巻き込み作業が容易となり、作業工数の削減ができる。修正作業も抑制される。意匠線であるステッチ15の位置ズレ、うねりも抑制され、製品外観の出来栄えが向上し安定化もできる。表皮材の局部的な伸びが抑制されるため、表皮材展開率もほぼ均一となり、革絞等の流れも抑制され外観商品性も向上できる。
【0042】
<線状係止部材の配置及び長さ>
図2に示すように、アームレスト1の前方側に配置されたサスペンダーコード30とトリムコード40とは、アームレスト1の形状に対応して、アームレスト1の前端1cから中央に向かうに従って、サスペンダーコード30とトリムコード40との間の距離が広がるように配置されている。すなわち、サスペンダーコード30とトリムコード40はハの字状に配置される。
また、アームレスト1の前後に配置されるトリムコード40は、前方側のトリムコード40から延びる延長架空線EL1と、後方側のトリムコード40から延びる延長架空線EL2とが、アームレスト1の中央で交差するように配置されている。
【0043】
また、後方側に配置されたサスペンダーコード30及びトリムコード40は、アームレスト1の後端1dから中央に向かうに従って、サスペンダーコード30とトリムコード40との間の距離が広がるように、ハの字状に配置されている。
このように、サスペンダーコード30と、トリムコード40を配置することで、被覆した表皮材20をバランスよく係止し、弛み皺を抑制できる。
【0044】
なお、前端1c又は後端1dから中央に向かって、サスペンダーコード30とトリムコード40との間の距離が狭くなるように配置してもよい。この場合、サスペンダーコード30とトリムコード40とは、アームレスト1の中央部分で交差するような配置となる。
【0045】
また、基材10の上側にある上側端末部11a、11b(第一端末部)に取り付けられるサスペンダーコード30の長さL1a、L1bよりも、下側端末部12a、12b(第二端末部)に取り付けられるトリムコード40の長さL2a、L2bの方が長くなるように形成されている。
サスペンダーコード30及びトリムコード40をアームレスト1の形状に応じて、バランスよく係止することにより、弛み皺を抑制することができる。
【0046】
<意匠線と表皮材との関係>
上述したように、表皮材20の表面には、意匠線としてステッチ15が形成されている。ステッチ15は、サスペンダーコード30とトリムコード40との間に設けられている。
線状係止部材5であるサスペンダーコード30とトリムコード40との間にステッチ15を設けることで、ステッチ15のうねり・歪みが抑制され外観商品性が向上する。
【0047】
また、表皮材20を基材10に被覆する際、基材10の上側端末部11a、11b又は下側端末部12a、12bを基準に被覆することにより、ステッチ15の位置決めをするとよい。具体的には、下側端末部12a、12bの係合部6Bに、トリムコード40を取付け、中間部にあるステッチ15を基材10に押し当てて、上側端末部11a、11bの係合部6A(引掛け部31)にサスペンダーコード30を固定する。上側端末部11a、11bの係合部6Aにサスペンダーコード30を取付け、中間部にあるステッチ15を基材10に押し当てて、下側端末部12a、12bの係合部6Bに、トリムコード40を固定してもよい。このように取り付けることで、ステッチ15のうねり・歪みを抑制しつつ取り付けることができる。
【0048】
<点状係止部材>
アームレスト1には、サスペンダーコード30及びトリムコード40による線状係止部材5を係合する係合部6とは別に表皮材20を係止する点状係止部4が設けられている。図2に示すように、点状係止部4は、線状係止部材5を係止する係合部6の間に設けられ、線状係止部材5では留めることができない表皮材20の部分を係止する。例えば、アームレスト1の前端1cにおいては、表皮材20はハギ被せにより取り付けられ、それを固定するために点状係止部4を用いる。また、表皮材20の末端部を引掛けることで留めてもよい。
【0049】
<線状係止部材の別例1>
次に、基材10の上側端末部11a、11bに設けられる線状係止部材5の別例について図6を用いて説明する。図6に記載のサスペンダーコード30Aは線状係止部材5であり、断面形状が台形に形成され、表皮材20の上側端部21と、不織布33を介して接続されている。不織布33と表皮材20の上側端部21とは縫製部23により接合されている。
【0050】
基材10の上側端末部11a、11bには、図6に示すように、上側に開口を有する凹部35が形成された保持部32が係合部6Aとして設けられている。凹部35に、サスペンダーコード30Aを下方(矢印C方向)に挿入することで、保持部32とサスペンダーコード30Aとが係合し、表皮材20の上側端部21を基材10に取り付けることができる。
【0051】
<線状係止部材の別例2>
上側端末部11a、11bに設けられる線状係止部材5の別の例について、図7Aから図8を用いて説明する。表皮材20の上側端部21には、線状係止部材5として、細長い平板状のトリムコード30Bが取り付けられている。
【0052】
係合部6Aとして引掛け部31が、基材10の上側端末部11a、11bから外側に向けて延びるよう設けられている。一方、図7Bに示すように、表皮材20の上側端部21の近傍には、引掛け部31を通す貫通孔34が形成されている。貫通孔34は、図7Bに示すように一部が、トリムコード30Bと重なる位置に配置される。重なる部分があることで、図7Aに示すように、トリムコード30Bを取り付けた後、トリムコード30Bの上側側部30Bbが回転移動し、返し部31aと当接することで若干傾斜した状態となる。
【0053】
取付手順について図8を用いて説明すると、図8の上段に示すように、引掛け部31の先端を、表皮材20の貫通孔34に挿入する。内側に向けて矢印E方向に、上側端部21を移動させると、図8の中段に示すように、引掛け部31の先端が、トリムコード30Bの上側側部30Bbに当接して、トリムコード30Bが、矢印F方向に回転移動する。トリムコード30Bは回転するものの、トリムコード30Bは伸びるため作業性に影響はない。
【0054】
図8の下段に示すように、トリムコード30Bを矢印E方向に移動させると、引掛け部31がトリムコード30Bを越えて、トリムコード30Bの上側側部30Bbが、返し部31aに当接する。それにより、トリムコード30Bが、引掛け部31から抜け難くなり、基材10の上側端末部11bに取り付けられる。
【0055】
<線状係止部材の別例3>
図8に示すトリムコード30B(線状係止部材5)は、表皮材20の上側端部21において外側に配置されているが、図9に示すようにトリムコード30Cを上側端部21の内側に配置してもよい。この場合、トリムコード30Cと上側端部21とを縫製部23で接合すると共に、トリムコード30Cと上側端部21の両方を貫通する貫通孔34Aを設ける。取り付ける際、基材10の上側端末部11a、11bから延びる引掛け部31を通すことにより取り付ける。トリムコード30Cと表皮材20の両方を貫通する貫通孔34Aに、引掛け部31を通すことで、より強固に表皮材20の上側端部21を取り付けることができる。
なお、図10に示すように、貫通孔34は、トリムコード30Cのみに形成してもよい。これにより、両方形成した場合よりも歩留まりが向上する。
【0056】
<内装部材の製造方法>
本実施形態である車両用ドアDの内装部材であるアームレスト1の製造方法について以下に示す。
意匠面2を有するアームレスト1の基材10と、基材10を被覆する表皮材20とを準備する(ステップS1)。このとき、表皮材20の端部(上側端部21及び下側端部22)に線状係止部材5(サスペンダーコード30又はトリムコード40)を設けておく。
次に、線状係止部材5を、基材10において意匠面側から見えない位置に取り付ける(ステップS2)。より具体的には、線状係止部材5を、基材10の裏面10bに設けられた係合部6に係合する。これにより、表皮材20により被覆されたアームレスト1が完成する。
表皮材20を基材10に被覆する場合、一方の端部にある線状係止部材5を係合部6に係合してから、中間部にある意匠線のステッチ15を基材10に押し当てて、他方の端部にある線状係止部材5を係合部6に固定するとよい。このように固定することで、弛み皺が抑制されると共に、ステッチ15のうねり又は歪みも抑制され、外観商品性を向上させることができる。
【0057】
以上、図を用いて本実施形態の乗物用内装部品として、車両用のドアライニングに設けられるアームレストについて説明した。しかしながら、乗物用内装部品は、これに限らずさまざまな内装部品に応用することが可能である。例えば、表皮材が取り付けられる、アッパー部材、センター部材、ロア部材、ピラー、フロントのインパネ、シートバック等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
D 車両用ドア
P ドアパネル
Pa パッド
1 アームレスト(乗物用内装部品)
1a 上面
1b 側面
1c 前端
1d 後端
1e 交差部
2 意匠面
3 ボス
4 点状係止部
5 線状係止部材
6、6A、6B 係合部
10 基材
10a 表面
10b 裏面
11a、11b 上側端末部(第一端末部)
12a、12b 下側端末部(第二端末部)
15 ステッチ(意匠線)
20 表皮材
21 上側端部
22 下側端部
23 縫製部
30、30A サスペンダーコード(第一線状係止部材)
30B、30C トリムコード(第一線状係止部材)
31 引掛け部(係合部)
31a 返し部
32 保持部
33 不織布
34、34A 貫通孔
35 凹部
40 トリムコード(第二線状係止部材)
41 係止爪(係合部)
46 リブ
50 ドアライニング
51 アッパー部材
52 センター部材
53 ロア部材
54 ドアハンドル
55 開閉スイッチ
56 ドアポケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10