(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154851
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】燃料噴射制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 19/08 20060101AFI20221005BHJP
F02D 41/32 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F02D19/08 C
F02D41/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058102
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】横山 眞二
(72)【発明者】
【氏名】村野 渉
(72)【発明者】
【氏名】古川 英臣
【テーマコード(参考)】
3G092
3G301
【Fターム(参考)】
3G092AB01
3G092AB06
3G092DE10S
3G092EA01
3G092EA02
3G092EA22
3G092FA06
3G092GA14
3G092HB03Z
3G092HB05Z
3G092HE01Z
3G092HF08Z
3G301HA22
3G301HA24
3G301JA28
3G301MA11
3G301MA25
3G301NE03
3G301NE08
3G301PB08Z
3G301PE01Z
3G301PF03Z
(57)【要約】
【課題】フューエルカットからの自然復帰時に、燃料がオーバーリッチになることを防止することができる燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】パルス信号生成部54は、第2モードが設定され、且つ、自然復帰を行うと判断された場合は、第2パルス信号のうち、最初のパルスからn番目のパルスまでは、気体燃料噴射弁(ガスインジェクタ42)の通電時間を規定するパルス幅が短くなるように補正した第2パルス信号を生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に燃料を噴射するための液体燃料噴射弁及び気体燃料噴射弁を制御する燃料噴射制御装置であって、
前記液体燃料噴射弁を駆動する第1パルス信号から、前記気体燃料噴射弁を駆動する第2パルス信号を生成するパルス信号生成部と、
液体燃料で前記内燃機関を運転する第1モードと、気体燃料で前記内燃機関を運転する第2モードとのいずれかを設定するモード設定部と、
フューエルカット中の前記内燃機関の回転数に基づいて、自然復帰を行うか否かを判断する自然復帰判断部と、を備え、
前記パルス信号生成部は、前記第2モードが設定され、且つ、自然復帰を行うと判断された場合は、前記第2パルス信号のうち、最初のパルスからn番目のパルスまでは、前記気体燃料噴射弁の通電時間を規定するパルス幅が短くなるように補正した前記第2パルス信号を生成する、燃料噴射制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射制御装置であって、
前記パルス信号生成部は、前記自然復帰の直後からn番目のパルスまでの補正量を段階的に減らす、燃料噴射制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料噴射制御装置であって、
前記パルス信号生成部は、前記通電時間に1未満の補正係数をかけることで各々のパルスの前記パルス幅を短くし、前記自然復帰の直後からn番目のパルスまでの前記補正係数を段階的に増やすことによって前記補正量を段階的に減らす、燃料噴射制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に対して液体燃料と気体燃料のいずれかを選択的に供給する燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガソリン等の液体燃料と圧縮天然ガス等の気体燃料とを選択的に切り替えてエンジンに供給するバイフューエルシステムが示される。バイフューエルシステムは、コストを削減するために、既存の液体燃料噴射システムに気体燃料噴射システムを追加して構築されることがある。
【0003】
このように既存のシステムを利用したバイフューエルシステムは、気体燃料噴射システムで使用されている既存のECU(第1ECUという)と、新たに追加されるECU(第2ECUという)と、を備える。第1ECUは、液体燃料噴射弁を駆動する制御信号(第1パルス信号という)を生成して第2ECUに出力する。第2ECUは、内燃機関に液体燃料を供給する場合に、第1パルス信号を液体燃料噴射弁に出力する。また、第2ECUは、内燃機関に気体燃料を供給する場合に、第1パルス信号から気体燃料噴射弁を駆動する制御信号(第2パルス信号という)を生成して気体燃料噴射弁に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイフューエルシステムにおいては、第1ECUと第2ECUの製造者が異なることがある。この場合、第2ECUの製造者にとって第1ECUの制御仕様が不明であることが多い。また、第2ECUの製造者は、第1ECUの制御内容を変更できないことが多い。このため、第1ECUと第2ECUとを協調制御させることは困難である。更に、第2ECUが得られる情報も限られる。
【0006】
液体燃料噴射システムは、フューエルカットからの自然復帰時に、液体燃料を増量させる場合がある。このような液体燃料噴射システムをベースにしてバイフューエルシステムを構築した場合、気体燃料での運転中に燃料がオーバーリッチとなる。その結果、エンジンの運転性が悪化する。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、フューエルカットからの自然復帰時に、燃料がオーバーリッチになることを防止することができる燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、内燃機関に燃料を噴射するための液体燃料噴射弁及び気体燃料噴射弁を制御する燃料噴射制御装置であって、前記液体燃料噴射弁を駆動する第1パルス信号から、前記気体燃料噴射弁を駆動する第2パルス信号を生成するパルス信号生成部と、液体燃料で前記内燃機関を運転する第1モードと、気体燃料で前記内燃機関を運転する第2モードとのいずれかを設定するモード設定部と、フューエルカット中の前記内燃機関の回転数に基づいて、自然復帰を行うか否かを判断する自然復帰判断部と、を備え、前記パルス信号生成部は、前記第2モードが設定され、且つ、自然復帰を行うと判断された場合は、前記第2パルス信号のうち、最初のパルスからn番目のパルスまでは、前記気体燃料噴射弁の通電時間を規定するパルス幅が短くなるように補正した前記第2パルス信号を生成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フューエルカットからの自然復帰時に、燃料がオーバーリッチになることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本実施形態に係る燃料噴射システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は本実施形態に係る燃料噴射制御装置の機能ブロックを示す図である。
【
図3】
図3は本実施形態に係る燃料噴射制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4Aはフューエルカット中か否かを示すタイムチャートである。
図4Bは自然復帰後の第1パルス信号を示すタイムチャートである。
図4Cは第2補正係数を示すタイムチャートである。
図4Dは自然復帰後の第2パルス信号を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る燃料噴射制御装置について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[1 燃料噴射システム10の構成]
図1は、本実施形態に係る燃料噴射システム10の構成を示す図である。燃料噴射システム10は、液体燃料供給系12、気体燃料供給系14、回転数センサ16、アクセルペダルセンサ(APセンサ)18、燃料切替スイッチ20、第1ECU22、及び第2ECU24を備える。第2ECU24は、本実施形態に係る燃料噴射制御装置に相当する。
【0013】
燃料噴射システム10は、例えば内燃機関(不図示)を備える車両に設けられる。本実施形態の内燃機関は、1又は複数の気筒(シリンダ)を有するエンジンである。燃料噴射システム10は、液体燃料と気体燃料とを選択的に切り替えてエンジンに供給するバイフューエルシステムである。液体燃料はガソリンであり、気体燃料は圧縮天然ガスである。例えば、燃料噴射システム10は、エンジンにガソリンを供給していたシステムに、ガス燃料を供給することができるように変更したバイフューエルシステムである。
【0014】
液体燃料供給系12は、ガソリンタンク26、ガソリン供給パイプ28、及びガソリンインジェクタ(液体燃料噴射弁)30を備える。ガソリンインジェクタ30は、第2ECU24から出力される第1パルス信号S1に基づいて、エンジンにガソリンを供給する。
【0015】
ガソリンタンク26は、ガソリンを貯蔵する耐腐食性容器である。ガソリンタンク26は、ポンプ及びレギュレータ(いずれも不図示)等を内蔵する。ポンプは、ガソリンを吸い上げる。レギュレータは、ポンプから吐出されたガソリンの燃料圧力を調整してガソリン供給パイプ28へ送る。ガソリン供給パイプ28は、ガソリンタンク26からガソリンインジェクタ30へガソリンを配送するための配管である。
【0016】
ガソリンインジェクタ30は、例えばエンジンの吸気ポートに向けて噴射口が露出するように吸気管に装着された電磁弁である。ガソリンインジェクタ30は、エンジンの各々の気筒に対応して設けられる。ガソリンインジェクタ30は、第2ECU24から出力される第1パルス信号S1がオンであるときにガソリンを噴射する。
【0017】
気体燃料供給系14は、ガスタンク32、高圧ガス供給パイプ34、遮断弁36、レギュレータ38、低圧ガス供給パイプ40、ガスインジェクタ(気体燃料噴射弁)42、ガス燃料圧力センサ44、及びガス燃料温度センサ46を備える。ガスインジェクタ42は、第2ECU24から出力される第2パルス信号S2に基づいて、エンジンにガス燃料を供給する。
【0018】
ガスタンク32は、ガス燃料が充填された高耐圧容器である。高圧ガス供給パイプ34は、ガスタンク32からレギュレータ38へ高圧のガス燃料を配送するための高耐圧配管である。遮断弁36は、高圧ガス供給パイプ34に設けられる電磁弁である。遮断弁36は、第2ECU24から出力される遮断弁駆動信号Sdに応じて開弁或いは閉弁する。
【0019】
レギュレータ38は、遮断弁36の下流側に配置された減圧弁である。レギュレータ38は、遮断弁36の開弁時にガスタンク32から供給される高圧のガス燃料を所望の圧力まで減圧して低圧ガス供給パイプ40へ送る。低圧ガス供給パイプ40は、レギュレータ38からガスインジェクタ42へ低圧のガス燃料を送るための低耐圧配管である。
【0020】
ガスインジェクタ42は、例えばエンジンの吸気ポートに向けて噴射口が露出するように吸気管に装着された電磁弁である。ガスインジェクタ42は、エンジンの各々の気筒に対応して設けられる。ガスインジェクタ42は、第2ECU24から出力される第2パルス信号S2がオンであるときにガス燃料を噴射する。
【0021】
ガス燃料圧力センサ44は、低圧ガス供給パイプ40の内部圧力(低圧側のガス燃料圧力)を検出し、その検出結果を示すガス燃料圧力信号を第2ECU24へ出力する。ガス燃料温度センサ46は、低圧ガス供給パイプ40の内部温度(低圧側のガス燃料温度)を検出し、その検出結果を示すガス燃料温度信号を第2ECU24へ出力する。
【0022】
回転数センサ16は、単位時間当たりのエンジン回転数(回転速度)を検出するセンサである。回転数センサ16は、クランクプーリー、フライホイール、カムシャフト、又は中間軸等の回転数を検出し、その検出結果を示す回転数信号を第1ECU22及び第2ECU24へ出力する。なお、回転数センサ16は、クランクシャフトの上死点からの回転角度を検出するセンサであっても良い。
【0023】
APセンサ18は、アクセルペダルの位置(操作量)を検出するセンサであり、スロットル開度センサともいう。APセンサ18は、アクセルペダルの位置を検出し、その検出結果を示すAP信号を第1ECU22及び第2ECU24へ出力する。
【0024】
燃料切替スイッチ20は、ユーザの手動操作によってエンジンの運転に使用する燃料の切り替えを可能とするスイッチである。この燃料切替スイッチ20は、スイッチの状態、つまりエンジンの運転に使用する燃料としてガソリンが選択されているのか、ガス燃料が選択されているのか、を示す燃料切替信号を第2ECU24へ出力する。
【0025】
第1ECU22及び第2ECU24は、プロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェース等を有する電子制御ユニットである。プロセッサは、例えばCPUである。プロセッサは、メモリに記憶されるプログラムを実行することによって、様々な機能を実現する。なお、プロセッサの代わりに、ASIC、FPGA等の集積回路が設けられても良いし、ディスクリートデバイスを含む電子回路が設けられても良い。メモリは、RAM等の揮発性メモリ及びROM等の不揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、各種プログラム、各種テーブル、及び各種数値(閾値、所定値等)を予め記憶する。
【0026】
第1ECU22は、エンジンの運転状態を検出する各種センサから出力される各種センサ信号に基づいて、ガソリンインジェクタ30が噴射すべきガソリンの噴射量を算出する。第1ECU22は、ガソリンの噴射量の算出結果に基づいて、第1パルス信号S1を生成して第2ECU24へ出力する。第1パルス信号S1に含まれるパルスのパルス幅は、ガソリンインジェクタ30の通電時間に相当する。エンジンの運転状態を検出する各種センサとしては、回転数センサ16、APセンサ18の他に、図示しない吸気圧センサ、吸気温センサ、冷却水温センサ等が挙げられる。
【0027】
第2ECU24は、第1ECU22から出力される第1パルス信号S1を使用して、ガソリンインジェクタ30の通電制御、又は、遮断弁36及びガスインジェクタ42の通電制御を行う。
【0028】
[2 第2ECU24の機能ブロック]
図2に示されるように、第2ECU24は、例えばプロセッサがメモリに記憶されるプログラムを実行することによって、モード設定部50、自然復帰判断部52、及びパルス信号生成部54として機能する。
【0029】
モード設定部50は、燃料切替スイッチ20から出力される燃料切替信号に応じて、ガソリンでエンジンを運転する第1モードと、ガス燃料でエンジンを運転する第2モードと、のいずれかを設定する。自然復帰判断部52は、フューエルカット中に、回転数センサ16から出力される回転数信号が示すエンジン回転数に基づいて、自然復帰を行うか否かを判断する。
【0030】
パルス信号生成部54は、第1モードが設定されているときに、第1ECU22から出力される第1パルス信号S1を、そのままガソリンインジェクタ30を駆動する第1パルス信号S1とする。また、パルス信号生成部54は、第2モードが設定されているときに、第1ECU22から出力される第1パルス信号S1に基づいてガスインジェクタ42を駆動する第2パルス信号S2を生成する。第2パルス信号S2に含まれるパルスのパルス幅は、ガスインジェクタ42の通電時間に相当する。また、パルス信号生成部54は、第2モードが設定され、且つ、自然復帰を行うと判断された場合に、第2パルス信号S2のうち、最初のパルスからn番目のパルスまでのパルス幅を短くなるようにする。また、パルス信号生成部54は、遮断弁36を開閉する遮断弁駆動信号Sdを生成する。
【0031】
[3 燃料噴射システム10の動作]
第1ECU22は、エンジンの運転状態を検出する各種センサから出力される各種センサ信号に基づいて、エンジンに燃料を供給する必要があるか否かを判断する。第1ECU22は、エンジンに燃料を供給する必要がある場合に、エンジンの運転モードが第1モードであるか第2モードであるかにかかわらず、第1パルス信号S1を生成して第2ECU24へ出力する。
【0032】
例えば、第1ECU22は、フューエルカット中に、回転数信号が示すエンジン回転数を監視し、エンジン回転数が所定の下限値を下回るか否かを判断する。第1ECU22は、エンジン回転数が下限値を下回る場合に、フューエルカットからの自然復帰を行うための第1パルス信号S1を生成する。自然復帰は、エンジン回転数の低下によるエンジンストールを防止するための公知の制御である。
【0033】
第1ECU22は、自然復帰を行う際に、通常よりもガソリンの噴射量を増量させるための制御(増量制御という)を行う。例えば、第1ECU22は、自然復帰直後から所定時間が経過するまで、ガソリンインジェクタ30のトータルの通電時間を長くする。具体的には、第1ECU22は、第1パルス信号S1に含まれるパルス数を多くするか、又は、1パルス分のパルス幅を長くする。
【0034】
エンジンの運転モードが第1モードである場合、第2ECU24は、第1ECU22から出力された第1パルス信号S1をそのままガソリンインジェクタ30に出力する。ガソリンの噴射量が通常よりも増量されると、エンジン回転数の上昇率が高くなる。
【0035】
一方、エンジンの運転モードが第2モードである場合、仮に第2ECU24が通常通りに第1パルス信号S1に基づいて第2パルス信号S2を生成してガスインジェクタ42に出力すると、燃料がオーバーリッチとなる。すると、エンジンの運転性が悪化する。燃料のオーバーリッチを防止するために、第2ECU24は、自然復帰の際に、通常の制御よりもガスインジェクタ42の通電時間を短くしてガス燃料の噴射量を減量させる補正制御(減量補正制御という)を行う。
【0036】
第2ECU24が行う処理を
図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態に係る燃料噴射制御装置、すなわち第2ECU24の動作を示すフローチャートである。
【0037】
自然復帰判断部52は、フューエルカット中に、自然復帰を行うか否かを判断する。自然復帰判断部52は、回転数信号が示すエンジン回転数とAP信号が示すアクセルペダルの位置に基づいて、第1パルスが自然復帰を行うためのものか否かを判断する。具体的には、自然復帰判断部52は、エンジン回転数が下限値を下回っている状態であり、且つ、アクセルペダルが操作されていない場合に、自然復帰を行うと判断する。この場合に
図3で示される処理が開始される。
【0038】
第2ECU24は、自然復帰直後から所定時間が経過するまで、
図3で示される処理を行う。また、第2ECU24は、第1ECU22から出力された第1パルス信号S1に含まれる各々のパルス(第1パルスという)を取得する度に、
図3で示される処理を行う。
【0039】
ステップS11において、パルス信号生成部54は、その時点でモード設定部50によって設定されている運転モードを判断する。第1モードが設定されている場合(ステップS11:第1モード)、処理はステップS12に移行する。一方、第2モードが設定されている場合(ステップS11:第2モード)、処理はステップS13に移行する。
【0040】
ステップS12において、パルス信号生成部54は、第1パルスを生成する。ここでは、パルス信号生成部54は、第1ECU22から取得した第1パルス信号S1の第1パルスをそのまま第1パルスとする。ステップS12が終了すると、処理はステップS18に移行する。
【0041】
ステップS13において、パルス信号生成部54は、第1パルスに基づいて通常のガスインジェクタ42の通電時間を算出する。例えば、パルス信号生成部54は、各種センサ信号及び通常の補正係数(第1補正係数という)を使用して、第1パルスで規定される通電時間を、ガスインジェクタ42の通電時間に補正する。ここで算出される通電時間を第1補正時間という。ステップS13が終了すると、処理はステップS14に移行する。
【0042】
ステップS14において、パルス信号生成部54は、カウンタCに1を加算する。例えば、パルス信号生成部54は、フューエルカット時にカウンタCをゼロにする。従って、第2ECU24が自然復帰直後の最初の第1パルスを取得した時点で、カウンタCはゼロである。パルス信号生成部54は、第2ECU24が第1パルスを取得する度に、カウンタCに1を加算する。つまり、カウンタCは、自然復帰後に第2ECU24が取得した第1パルス信号S1のパルス数を示す。
【0043】
ステップS15において、パルス信号生成部54は、減量補正制御を行う回数の上限値nとカウンタCとを比較する。カウンタCが上限値n以下である場合(ステップS15:YES)、処理はステップS16に移行する。一方、カウンタCが上限値nを超えている場合(ステップS15:NO)、処理はステップS17に移行する。
【0044】
ステップS16において、パルス信号生成部54は、自然復帰時のガスインジェクタ42の通電時間を算出する。例えば、パルス信号生成部54は、第1補正時間に1未満の補正係数(第2補正係数という)をかけて第2補正時間とする。このとき、パルス信号生成部54は、カウンタCに基づいて第2補正係数を決定する。例えば、第2ECU24のメモリは、カウンタC(自然復帰直後の第1パルスの順番)と第2補正係数とを対応付けた補正係数テーブルを記憶する。パルス信号生成部54は、カウンタCとこの補正係数テーブルを使用して第2補正係数を決定する。又は、パルス信号生成部54は、所定の演算式によって第2補正係数を決定しても良い。第2補正係数は、自然復帰直後の第1パルスの順番が後ろに進むにつれて段階的に大きくなるように設定されている(
図4C参照)。このため、カウンタCが増えるにつれて、第1補正時間に対する第2補正時間の補正量は少なくなる。
【0045】
処理がステップS15、又はステップS16からステップS17に移行すると、パルス信号生成部54は、各々の補正時間で示される通電時間を規定するパルス幅の第2パルスを生成する。
【0046】
処理がステップS12からステップS18に移行すると、第2ECU24は、ガソリンインジェクタ30に第1パルスを出力する。一方、処理がステップS17からステップS18に移行すると、第2ECU24は、ガスインジェクタ42に第2パルスを出力する。
【0047】
以上の処理を繰り返し行い、第2ECU24は、第1モードが設定されているときに、ガソリンインジェクタ30に複数の第1パルスからなる第1パルス信号S1を出力する。また、第2ECU24は、第2モードが設定されているときに、ガスインジェクタ42に複数の第2パルスからなる第2パルス信号S2を出力する。
【0048】
[4 変形例]
上記実施形態では、
図3で示されるステップS16において、パルス信号生成部54が、第1補正時間に1未満の第2補正係数をかけて第2補正時間とする。これに代わり、パルス信号生成部54は、第1パルス信号S1に含まれるパルスのパルス幅で規定される通電時間に第2補正係数とは異なる補正係数をかけて第2補正時間としても良い。
【0049】
上記実施形態では、パルス信号生成部54は、パルス数が上限値nを超えるまで減量補正制御を行う。これに代わり、ガスインジェクタ42の通電時間に上限値が設定されていても良い。この場合、パルス信号生成部54は、自然復帰後のトータルの通電時間が上限値を超えるまで減量補正制御を行っても良い。
【0050】
[5 パルス信号の具体例]
図4Aはフューエルカット中か否かを示すタイムチャートである。
図4Bは自然復帰後の第1パルス信号S1を示すタイムチャートである。この
図4Bは気筒A~Dのガソリンインジェクタ30に出力されるパルス信号を示す。
図4Cは第2補正係数を示すタイムチャートである。
図4Dは自然復帰後の第2パルス信号S2を示すタイムチャートである。この
図4Dは気筒A~Dのガスインジェクタ42に出力されるパルス信号を示す。
図4Bと
図4Dは上側がオフ信号を示し、下側がオン信号を示す。以下の説明において、第2ECU24には、減量補正制御を行う回数の上限値n=9が設定されている。
【0051】
図4Aで示されるように、時点T1でフューエルカットからの自然復帰が行われる。時点T1から所定時間の間、第1ECU22は、自然復帰を行うための第1パルス信号S1を出力する。フューエルカットからの自然復帰時には、第1パルス信号S1は、燃料噴射量を増加させるために、パルス数及びパルス幅の少なくとも一方が増加している。その一方で、第1パルス信号S1のうちn+1番目以降のパルスは、増加されたパルスを含まない。これは燃料の増量が不要であるためである。
【0052】
第2ECU24は、第1モードが設定されている場合に、
図4Bで示される第1パルス信号S1を、各々の気筒のガソリンインジェクタ30に出力する。この第1パルス信号S1に含まれるパルス数及びパルス幅は、第1ECU22から取得した第1パルス信号S1のパルス数及びパルス幅と同じである。
図4Bで示されるNo3のパルスは、第1ECU22が行う増量制御によってNo1のパルスに付加された増量分のパルスである。同様に、No5のパルスは、No4のパルスに付加された増量分のパルスである。同様に、No7のパルスは、No6のパルスに付加された増量分のパルスである。同様に、No9のパルスは、No8のパルスに付加された増量分のパルスである。No10以降のパルスには、増量分のパルスは付加されていない。つまり、増量制御は終了し、通常制御が行われている。
【0053】
第2ECU24は、第2モードが設定されている場合に、
図4Dで示される第2パルス信号S2を、各々の気筒のガスインジェクタ42に出力する。パルス信号生成部54は、
図4Bで示されるNo1~No9のパルス幅で示される通電時間をガスインジェクタ42の通電時間(第1補正時間)に補正する。更に、パルス信号生成部54は、第1補正時間に、
図4Cで示される1未満の補正係数をかけて、第2補正時間を算出する。すると、第2補正時間は第1補正時間よりも短くなる。結果として、
図4Dの各矢印で示されるように、No1~No9のパルス幅は短くなる。
【0054】
なお、
図4Cで示されるように、No1~No5のパルスに対する補正係数は0.5である。その後、補正係数は、1パルス毎に0.1ずつ増加し、No10のパルスで1に戻っている。
【0055】
[6 実施形態から得られる技術的思想]
上記実施形態及び変形例から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0056】
本発明の態様は、内燃機関に燃料を噴射するための液体燃料噴射弁(ガソリンインジェクタ30)及び気体燃料噴射弁(ガスインジェクタ42)を制御する燃料噴射制御装置(第2ECU24)であって、前記液体燃料噴射弁を駆動する第1パルス信号S1から、前記気体燃料噴射弁を駆動する第2パルス信号S2を生成するパルス信号生成部54と、液体燃料で前記内燃機関を運転する第1モードと、気体燃料で前記内燃機関を運転する第2モードとのいずれかを設定するモード設定部50と、フューエルカット中の前記内燃機関の回転数に基づいて、自然復帰を行うか否かを判断する自然復帰判断部52と、を備え、前記パルス信号生成部54は、前記第2モードが設定され、且つ、自然復帰を行うと判断された場合は、前記第2パルス信号S2のうち、最初のパルスからn番目のパルスまでは、前記気体燃料噴射弁の通電時間を規定するパルス幅が短くなるように補正した前記第2パルス信号S2を生成する。
【0057】
上記構成によれば、フューエルカットからの自然復帰時に、最初のパルスからn番目のパルスまでは、気体燃料噴射弁(ガスインジェクタ42)の通電時間を通常時よりも短くする。このため、上記構成によれば、フューエルカットからの自然復帰時に、燃料がオーバーリッチになることを防止することができる。
【0058】
本発明の態様において、前記パルス信号生成部54は、前記自然復帰の直後からn番目のパルスまでの補正量を段階的に減らしても良い。
【0059】
上記構成によれば、補正量が段階的に減らされるため、内燃機関の運転状態を円滑に通常の状態に戻すことができる。仮に、補正量を急激に変化させると車体に振動等が発生する。上記構成によれば、補正量の変化による振動等を抑制することができる。
【0060】
本発明の態様において、前記パルス信号生成部54は、前記通電時間に1未満の補正係数をかけることで各々のパルスの前記パルス幅を短くし、前記自然復帰の直後からn番目のパルスまでの前記補正係数を段階的に増やすことによって前記補正量を段階的に減らしても良い。
【0061】
なお、本発明に係る燃料噴射制御装置は、上記実施形態及び変形例に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
24…第2ECU(燃料噴射制御装置)
30…ガソリンインジェクタ(液体燃料噴射弁)
42…ガスインジェクタ(気体燃料噴射弁) 50…モード設定部
52…自然復帰判断部 54…パルス信号生成部
【手続補正書】
【提出日】2021-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
なお、
図4Cで示されるように、No1~No5のパルスに対する補正係数は0.5である。その後、補正係数は、1パルス
に応じて0.1ずつ増加し、No10のパルス
の時点では1に戻っている。