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特開2022-154866運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154866
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/06 20120101AFI20221005BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60W40/06
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058123
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】増谷 友
(72)【発明者】
【氏名】相村 誠
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 直也
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BA49
3D241BB48
3D241BC01
3D241CC08
3D241CD07
3D241CD12
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC33Z
3D241DC35Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC27
5H181LL01
(57)【要約】
【課題】車両が上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行する際の物体の誤認識に基づく運転支援の作動を低減すること。
【解決手段】車両に搭載されたレーダ装置と撮像装置の少なくとも一つによる検出結果に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援部と、前記車両が、上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行しているか否かを判定するアンダーパス判定部と、前記運転支援部は、前記アンダーパス判定部によって前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定された場合に、前記運転支援の作動を抑制する、運転支援装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたレーダ装置と撮像装置の少なくとも一つによる検出結果に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援部と、
前記車両が、上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行しているか否かを判定するアンダーパス判定部と、
前記運転支援部は、前記アンダーパス判定部によって前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定された場合に、前記運転支援の作動を抑制する、
運転支援装置。
【請求項2】
前記アンダーパス判定部は、前記レーダ装置と前記撮像装置の少なくとも一つによる検出結果に基づいて、前記車両が前記アンダーパスを走行しているか否かを判定する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記アンダーパス判定部は、前記レーダ装置と前記撮像装置の少なくとも一つによって前記車両の進行方向の左右に壁を検出したことを含む条件が満たされる場合に、前記車両が前記アンダーパスを走行していると判定する、
請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記アンダーパス判定部は、前記レーダ装置と前記撮像装置の少なくとも一つによって前記車両の進行方向に上り坂を検出したことを含む条件が満たされる場合に、前記車両が前記アンダーパスを走行していると判定する、
請求項2又は3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記アンダーパス判定部は、地図情報と前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が前記アンダーパスを走行しているか否かを判定する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記運転支援部は、前記アンダーパス判定部によって前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定され、かつ前記撮像装置が物体を検出した場合には、前記レーダ装置による検出結果に基づいて前記物体の大きさを推定し、前記大きさが所定値以下であった場合に、前記運転支援を作動させない、
請求項1から5のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記運転支援部は、前記アンダーパス判定部によって前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定され、かつ前記撮像装置が検出した物体が車両でない場合に、前記運転支援を作動させない、
請求項1から6のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項8】
車両に搭載されたコンピュータが、
車両に搭載されたレーダ装置と撮像装置の少なくとも一つによる検出結果に基づいて前記車両の運転支援を行い、
前記車両が、上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行しているか否かを判定し、
前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定された場合に、前記運転支援の作動を抑制する、
運転支援方法。
【請求項9】
車両に搭載されたコンピュータに、
車両に搭載されたレーダ装置と撮像装置の少なくとも一つによる検出結果に基づいて前記車両の運転支援を行わせ、
前記車両が、上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行しているか否かを判定させ、
前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定された場合に、前記運転支援の作動を抑制させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された外界認識装置による誤認識を低減させるための技術が知られている。例えば、特許文献1には、ミリ波レーダで検出した物体が静止物体であり、かつ車速センサで検出した車速が閾値未満である場合にのみ、先行車認識ECUが当該物体を先行車候補として設定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-007062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、車両が追従走行する対象を選択する際に、物体の誤認識を低減させるためのものである。しかしながら、従来の技術では、例えば、車両が、上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行する際の物体の誤認識に基づく運転支援の作動を低減することができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、車両が、上方の構造物に対して通過可能に構成されたアンダーパスを走行する際の物体の誤認識に基づく運転支援の作動を低減することができる、運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る運転支援装置は、車両に搭載されたレーダ装置と撮像装置の少なくとも一つによる検出結果に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援部と、前記車両が、上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行しているか否かを判定するアンダーパス判定部と、前記運転支援部は、前記アンダーパス判定部によって前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定された場合に、前記運転支援の作動を抑制するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記アンダーパス判定部は、前記レーダ装置と前記撮像装置の少なくとも一つによる検出結果に基づいて、前記車両が前記アンダーパスを走行しているか否かを判定するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記アンダーパス判定部は、前記レーダ装置と前記撮像装置の少なくとも一つによって前記車両の進行方向の左右に壁を検出したことを含む条件が満たされる場合に、前記車両が前記アンダーパスを走行していると判定するものである。
【0009】
(4):上記(2)又は(3)の態様において、前記アンダーパス判定部は、前記レーダ装置と前記撮像装置の少なくとも一つによって前記車両の進行方向に上り坂を検出したことを含む条件が満たされる場合に、前記車両が前記アンダーパスを走行していると判定するものである。
【0010】
(5):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記アンダーパス判定部は、地図情報と前記車両の位置情報に基づいて、前記車両が前記アンダーパスを走行しているか否かを判定するものである。
【0011】
(6):上記(1)から(5)のいずれかの態様において、前記運転支援部は、前記アンダーパス判定部によって前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定され、かつ前記撮像装置が物体を検出した場合には、前記レーダ装置による検出結果に基づいて前記物体の大きさを推定し、前記大きさが所定値以下であった場合に、前記運転支援を作動させないものである。
【0012】
(7):上記(1)から(6)のいずれかの態様において、前記運転支援部は、前記アンダーパス判定部によって前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定され、かつ前記撮像装置が検出した物体が車両でない場合に、前記運転支援を作動させないものである。
【0013】
(8):この発明の他の態様に係る運転支援方法は、車両に搭載されたコンピュータが、車両に搭載されたレーダ装置と撮像装置の少なくとも一つによる検出結果に基づいて前記車両の運転支援を行い、前記車両が、上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行しているか否かを判定し、前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定された場合に、前記運転支援の作動を抑制するものである。
【0014】
(9):この発明の別の態様に係るプログラムは、車両に搭載されたコンピュータに、車両に搭載されたレーダ装置と撮像装置の少なくとも一つによる検出結果に基づいて前記車両の運転支援を行わせ、前記車両が、上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行しているか否かを判定させ、前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定された場合に、前記運転支援の作動を抑制するものである。
【発明の効果】
【0015】
(1)~(9)によれば、車両が、上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行する際の物体の誤認識に基づく運転支援の作動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】自車両Mに搭載される運転支援装置100の構成の一例を示す図である。
図2】運転支援装置100の動作が実行される場面の一例を示す図である。
図3】カメラ10を用いて自車両Mの進行方向の上り坂を検出する方法を説明するための図である。
図4】レーダ装置12を用いて自車両Mの進行方向の上り坂を検出する方法を説明するための図である。
図5】アンダーパス判定部120によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】運転支援部110によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0018】
[構成]
図1は、自車両Mに搭載される運転支援装置100の構成の一例を示す図である。自車両Mは、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、物体認識装置14と、車両センサ16と、運転操作子20と、ステアリングホイール22と、走行駆動力出力装置30と、ブレーキ装置32と、ステアリング装置34と、運転支援装置100と、を備える。
【0019】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。カメラ10は、撮像した画像を物体認識装置14に送信する。カメラ10は、「撮像装置」の一例である。
【0020】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。レーダ装置12は、検出結果を物体認識装置14に送信する。
【0021】
物体認識装置14は、カメラ10およびレーダ装置12のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置14は、カメラ10から受信した画像に画像処理を施すことによって、当該画像に映される歩行者、他車両、道路構造物(道路区画線や壁など)などを検出する。また、物体認識装置14は、レーダ装置12から受信した検出結果に基づいて、自車両Mの周辺に存在する歩行者、他車両、道路構造物(道路区画線や壁など)などを検出する。物体認識装置14は、検出結果を運転支援装置100に送信する。なお、物体認識装置14は、カメラ10のみで構成されてもよく、カメラ10から受信した画像に画像処理を施すことによって、物体の位置、種類、速度などを認識してもよい。
【0022】
車両センサ16は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0023】
運転操作子20は、例えば、ステアリングホイール22の他、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子20には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、運転支援装置100、もしくは、走行駆動力出力装置30、ブレーキ装置32、およびステアリング装置34のうち一部または全部に出力される。操作子は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。
【0024】
走行駆動力出力装置30は、自車両Mが走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置30は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、運転支援装置100から入力される情報、或いは運転操作子20から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0025】
ブレーキ装置32は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、運転支援装置100から入力される情報、或いは運転操作子20から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置32は、運転操作子20に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置32は、上記説明した構成に限らず、運転支援装置100から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0026】
ステアリング装置34は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、運転支援装置100から入力される情報、或いは運転操作子20から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0027】
運転支援装置100は、例えば、運転支援部110と、アンダーパス判定部120と、記憶部130と、を備える。運転支援部110とアンダーパス判定部120とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。記憶部130は、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SDカード、RAM(Random Access Memory)、レジスタ等によって実現される。
【0028】
運転支援部110は、カメラ10とレーダ装置12の少なくとも一つによる検出結果に基づいて自車両Mの運転支援を行う。本実施形態において、「運転支援」とは、自車両Mが進行方向上に存在する障害物との衝突を回避するため、または衝突速度を下げるために、自動的にブレーキ装置32を動作させる衝突被害軽減ブレーキ(AEB:Autonomous Emergency Braking)を指すものとする。より具体的には、運転支援部110は、カメラ10とレーダ装置12の少なくとも一つによる検出結果に基づいて、自車両Mの進行方向上に歩行者や他車両などの障害物が存在するか否かを判定し、自車両Mの進行方向上に障害物が存在すると判定された場合には、カメラ10と、レーダ装置12と、車両センサ16とから取得された情報(例えば、障害物までの相対距離と相対速度)に基づいて、自車両Mが当該障害物に衝突するまでの時間である衝突余裕時間(TTC:Time To Collision)を計算し、当該衝突余裕時間が閾値未満である場合には、運転支援を作動させる。
【0029】
アンダーパス判定部120は、自車両Mが、上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行しているか否かを判定する。この場合の交通経路とは、自動車が走行する車線や電車が走行する線路など、一般的に、移動体が走行する経路を示す。運転支援部110は、アンダーパス判定部120によって自車両Mがアンダーパスを走行していることが判定された場合、運転支援の作動を抑制する。なお、この場合の「抑制する」とは、運転支援の作動にあたって、通常よりも制約の多い条件を課すことを意味する。アンダーパスの具体的な判定方法およびアンダーパスを走行している場合の運転支援の作動条件については、後述する。
【0030】
記憶部130は、地図情報130Aを格納する。地図情報130Aは、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報であり、その付属情報として、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などを含む。運転支援部110は、自車両Mに搭載された不図示のGNSS受信機によって特定された自車両Mの位置に基づいて、地図情報130Aを参照し、自車両Mの位置に関する上記の情報を取得することができる。
【0031】
[運転支援装置100の動作]
次に、図2から図4を参照して、本実施形態に係る運転支援装置100の動作について説明する。図2は、運転支援装置100の動作が実行される場面の一例を示す図である。図2は、自車両Mが車線L1を走行し、自車両Mの乗員がフロントウインドシールドFを通じて外界を認識している様子を表している。図2において、車線L1と車線L2は交差しており、車線L1が交差する二つの交通経路のうちの下側の交通経路、すなわち、アンダーパスであり、車線L2が上側の交通経路である。W1は、車線L2を支える構造物における左側の壁を示し、W2は、車線L2を支える構造物における右側の壁を示す。RM1は、車線L1の左側の道路区画線を示し、RM2は、車線L1の右側の道路区画線を示す(以下、左側の道路区画線RM1と右側の道路区画線RM2とを区別しない場合、「道路区画線RM」と総称する場合がある)。SHは、車線L2が車線L1の上側に存在することによって形成される影を示す。車線L1は交通経路である必要はなく交通経路以外の構造物でも良い。
【0032】
比較例として、一般的に、AEB機能を有する車両がアンダーパスを走行する場合、カメラ又はレーダ装置が、図2の影SHを他車両や歩行者として誤検出し、AEBが作動する場合がある。その結果、実際には、車両の進行方向に他車両や歩行者が存在しないにも関わらず、当該車両はブレーキをかけられ、乗員が違和感を持つことがある。
【0033】
そこで、アンダーパス判定部120は、カメラ10とレーダ装置12の少なくとも一つによる検出結果に基づいて、自車両Mがアンダーパスを走行しているか否かを判定し、自車両Mがアンダーパスを走行していることが判定された場合には、運転支援部110は運転支援の作動を抑制する。具体的には、アンダーパス判定部120は以下の方法によって、自車両Mがアンダーパスを走行しているか否かを判定する。
【0034】
[アンダーパスの第1判定方法]
アンダーパスの第1判定方法として、アンダーパス判定部120は、カメラ10とレーダ装置12の少なくとも一つによって自車両Mの進行方向の左右に壁を検出した場合、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定する。具体的には、例えば、物体認識装置14が、カメラ10から取得した画像に画像処理を施し、自車両Mの進行方向の左右に壁を検出した場合、アンダーパス判定部120は、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定する。また、例えば、物体認識装置14が、レーダ装置12から取得した電波の反射強度に基づいて反射強度分布を生成し、当該反射強度分布における点群の形状が壁を示している場合、アンダーパス判定部120は、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定する。
【0035】
[アンダーパスの第2判定方法]
アンダーパスの第2判定方法として、アンダーパス判定部120は、カメラ10とレーダ装置12の少なくとも一つによって自車両Mの進行方向に上り坂を検出した場合に、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定する。具体的には、例えば、カメラ10のカメラによって撮像された左右の道路区画線RM1およびRM2が上り坂を示している場合に、アンダーパス判定部120は、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定する。
【0036】
図3は、カメラ10を用いて自車両Mの進行方向の上り坂を検出する方法を説明するための図である。図3の上部は、自車両Mが平坦な車線L3を走行している場合にカメラ10によって検出される左右の道路区画線RM1およびRM2を示し、図3の下部は、自車両Mがアンダーパスである車線L1を走行している場合にカメラ10によって検出される左右の道路区画線RM1およびRM2を示す。また、点線lは、検出された道路区画線RMの始点Pを通り、かつ道路区画線RMに接する直線を示す。
【0037】
図3の上部に示す通り、自車両Mが平坦な車線L3を走行している場合、道路区画線RMと点線lとの成す角度はゼロ、すなわち、道路区画線RMと点線lとは一致する。一方、自車両Mがアンダーパスである車線L1を走行している場合、点線lを基準線とした道路区画線RMの角度θは正の角度となる。そのため、アンダーパス判定部120は、カメラ10のカメラによって撮像された左右の道路区画線RM1およびRM2のうちの一方と、基準線lとのなす角度が閾値以上である場合に、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定することができる。
【0038】
なお、カメラ10によって撮像された道路区画線RMの形状に基づいてアンダーパスを判定する方法は上記に限られず、一般的に、道路区画線RMの形状が内側に凸であることを示す場合に、アンダーパス判定部120は、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定してもよい。
【0039】
また、アンダーパス判定部120は、レーダ装置12の検出結果が上り坂を示している場合に、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定する。図4は、レーダ装置12を用いて自車両Mの進行方向の上り坂を検出する方法を説明するための図である。図4の上部は、自車両Mが平坦な車線L3を走行している際にレーダ装置12が電波RWを放射している様子を示し、図4の下部は、自車両Mがアンダーパスである車線L1を走行している際にレーダ装置12が電波RW1を放射している様子を示す。
【0040】
図4の上部に示す通り、自車両Mが平坦な車線L3を走行している場合、自車両Mの水平方向には障害物が存在しないため、レーダ装置12によって測定される反射強度は小さなものとなる。一方、図4の下部に示す通り、自車両Mがアンダーパスである車線L1を走行している場合には、自車両Mの水平方向には車線L1そのものが障害物として存在するため、レーダ装置12によって測定される反射波RW2の反射強度は大きなものとなる。その結果、レーダ装置12によって生成される反射強度分布は、アンダーパスに特有な形状を示し、アンダーパス判定部120は、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定することができる。
【0041】
[アンダーパスの第3判定方法]
アンダーパスの第3判定方法として、アンダーパス判定部120は、地図情報130Aと自車両Mの位置情報とに基づいて、自車両Mがアンダーパスを走行しているか否かを判定する。具体的には、例えば、アンダーパス判定部120は、GNSS受信機によって特定された自車両Mの位置に基づいて、地図情報130Aを参照し、自車両Mの位置がアンダーパスを示している場合に、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定する。
【0042】
[アンダーパス判定部120の動作の流れ]
次に、図5を参照して、アンダーパス判定部120によって実行される処理の流れについて説明する。図5は、アンダーパス判定部120によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、自車両Mが走行中、所定の制御サイクルで実行されるものである。
【0043】
まず、アンダーパス判定部120は、カメラ10とレーダ装置12の少なくとも一つによって自車両Mの進行方向の左右に壁を検出したか否かを判定する(ステップS100)。自車両Mの進行方向の左右に壁を検出していないと判定された場合には、アンダーパス判定部120は、再度、ステップS100の処理を実行する。一方、自車両Mの進行方向の左右に壁を検出したと判定された場合には、アンダーパス判定部120は、次に、カメラ10とレーダ装置12の少なくとも一つによって自車両Mの進行方向に上り坂を検出したか否かを判定する(ステップS101)。自車両Mの進行方向に上り坂を検出していないと判定された場合には、アンダーパス判定部120は、再度、ステップS100の処理を実行する。一方、自車両Mの進行方向に上り坂を検出したと判定された場合には、アンダーパス判定部120は、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定し、運転支援部110の作動を抑制する(ステップS102)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0044】
なお、上記のフローチャートにおいては、ステップS100の判定が実行された後に、ステップS101の判定が実行されているが、この順序は逆であってもよい。また、上記のフローチャートにおいては、ステップS100の判定とステップS101の判定とがともに肯定的である場合に、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定されているが、代替的に、いずれかの判定のみが肯定的である場合に、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定されてもよい。さらに、上記のフローチャートにおいては、地図情報130Aを用いたアンダーパスの判定が実行されていないが、地図情報130Aを用いたアンダーパスの判定が、ステップS100の判定とステップS101の判定の前後いずれかのタイミングで実行されてもよい。
【0045】
アンダーパス判定部120によって自車両Mがアンダーパスを走行していることが判定されると、運転支援部110は、運転支援の動作を抑制する。より具体的には、運転支援部110は、運転支援の動作の抑制中、カメラ10が物体を検出した場合に、レーダ装置12による検出結果に基づいて当該物体の大きさを推定し、当該大きさが所定値以下であった場合に、運転支援を作動させない。この場合の所定値は、例えば、一般的な車両の大きさに設定される。すなわち、運転支援部110は、推定した物体の大きさに基づいて、当該物体が車両であると想定される場合に、運転支援を作動させる。上述した比較例の場合、運転支援機能を有する車両は、認識した物体の大きさを推定しないため、図2の影SHを他車両と誤認し、運転支援を作動させてしまうが、一方、本実施形態の運転支援部110は、物体の大きさを推定した上で運転支援の作動を判定するため、誤認識に基づく運転支援の作動を低減することができる。
【0046】
運転支援部110は、さらに、運転支援の動作の抑制中、カメラ10が検出した物体が車両でない場合に、運転支援を作動させない。これは、一般的に、アンダーパスに存在する物体は車両であることが想定されるためである。これにより、自車両Mがアンダーパスを走行中における認識に基づく運転支援の作動をさらに正確に低減することができる。
【0047】
次に、図6を参照して、運転支援部110によって実行される処理の流れについて説明する。図6は、運転支援部110によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、アンダーパス判定部120によって自車両Mがアンダーパスを走行していることが判定された場合に実行されるものである。
【0048】
まず、運転支援部110は、カメラ10が物体を検出したか否かを判定する(ステップS200)。カメラ10が物体を検出していないと判定された場合には、運転支援部110は、運転支援を動作させず(ステップS201)、本フローチャートの処理を終了する。
【0049】
一方、カメラ10が物体を検出したと判定された場合には、運転支援部110は、次に、レーダ装置12による検出結果に基づいて他車両の大きさを推定する(ステップS202)。次に、運転支援部110は、推定した他車両の大きさが所定値以下であるか否かを判定する(ステップS203)。推定した物体の大きさが所定値以下であると判定された場合、運転支援部110は、運転支援を作動させない。一方、推定した物体の大きさが所定値より大きいと判定された場合、運転支援部110は、運転支援を作動させる(ステップS204)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0050】
以上の通り説明した本実施形態によれば、アンダーパス判定部120が、自車両Mがアンダーパスを走行しているか否かを判定し、自車両Mがアンダーパスを走行していると判定された場合には、運転支援部110が、運転支援の作動を抑制する。これにより、車両が上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行する際の物体の誤認識に基づく運転支援の作動を低減することができる。
【0051】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
車両に搭載されたレーダ装置と撮像装置の少なくとも一つによる検出結果に基づいて前記車両の運転支援を行い、
前記車両が、上方の構造物に対して通過可能に構成された交通経路であるアンダーパスを走行しているか否かを判定し、
前記車両が前記アンダーパスを走行していることが判定された場合に、前記運転支援の作動を抑制する、
ように構成されている、運転支援装置。
【0052】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 カメラ
12 レーダ装置
14 物体認識装置
16 車両センサ
20 運転操作子
22 ステアリングホイール
30 走行駆動力出力装置
32 ブレーキ装置
34 ステアリング装置
100 運転支援装置
110 運転支援部
120 アンダーパス判定部
130 記憶部
130A 地図情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6