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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154871
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ハブユニット軸受
(51)【国際特許分類】
   B60B 35/02 20060101AFI20221005BHJP
   B60B 27/06 20060101ALI20221005BHJP
   B60B 7/06 20060101ALN20221005BHJP
【FI】
B60B35/02 L
B60B27/06
B60B7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058129
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高梨 晴美
(72)【発明者】
【氏名】若林 達男
(57)【要約】
【課題】回転輪のパイロット部に外嵌したパイロットアダプタに車輪を構成するホイールおよび制動用回転体を外嵌する際に、回転輪に対する制動用回転体の芯出しを高精度に行えるハブユニット軸受を提供する。
【解決手段】回転輪であるハブ3のパイロット部9の外周面に外嵌されるパイロットアダプタ17は、軸方向外側部分に、外周面に車輪のホイール27が外嵌されるホイール用筒部18、および、軸方向内側部分に、外周面に制動用回転体28が外嵌される制動用筒部19を有する。ホイール用筒部18は、パイロット部9の軸方向外側部分の外周面に備えられたホイール用嵌合面部11に締り嵌めで外嵌され、制動用筒部19は、パイロット部9の軸方向内側部分の外周面に備えられた制動用嵌合面部12に隙間嵌めで外嵌される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面または外周面に、複列の静止軌道を有する静止輪と、
内周面と外周面とのうち前記複列の静止軌道に対向する周面に複列の回転軌道、軸方向外側部に径方向外側に向けて突出した回転フランジ、および、前記回転フランジの径方向内側の端部から軸方向外側に向けて伸長した円筒状のパイロット部を有する回転輪と、
前記複列の静止軌道と前記複列の回転軌道との間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ配置された転動体と、
前記パイロット部の外周面に外嵌されるパイロットアダプタと、を備え、
前記パイロットアダプタは、軸方向外側部分に、外周面に車輪のホイールが外嵌されるホイール用筒部、および、軸方向内側部分に、外周面に制動用回転体が外嵌される制動用筒部を有し、
前記ホイール用筒部は、前記パイロット部の軸方向外側部分の外周面に備えられたホイール用嵌合面部に締り嵌めで外嵌され、
前記制動用筒部は、前記パイロット部の軸方向内側部分の外周面に備えられた制動用嵌合面部に隙間嵌めで外嵌される、
ハブユニット軸受。
【請求項2】
前記ホイール用嵌合面部が、前記制動用嵌合面部よりも小径であり、
前記パイロット部は、前記ホイール用嵌合面部と前記制動用嵌合面部との接続部に、軸方向に関して外側を向いた段差面を有し、
前記パイロットアダプタは、前記段差面に突き当てられている、
請求項1に記載のハブユニット軸受。
【請求項3】
前記ホイール用嵌合面部が、前記制動用嵌合面部よりも小径であり、
前記パイロットアダプタは、前記回転フランジの軸方向外側面に突き当てられている、
請求項1に記載のハブユニット軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車輪および制動用回転体を懸架装置に対して回転自在に支持するためのハブユニット軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪および制動用回転体は、ハブユニット軸受により懸架装置に対して回転自在に支持される。ハブユニット軸受は、内周面または外周面に、複列の静止軌道を有する静止輪と、内周面と外周面とのうち複列の静止軌道に対向する周面に複列の回転軌道、軸方向外側部に径方向外側に向けて突出した回転フランジ、および、回転フランジの径方向内側の端部から軸方向外側に向けて伸長した円筒状のパイロット部を有する回転輪と、複列の静止軌道と複列の回転軌道との間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ配置された転動体とを備える。静止輪は、懸架装置を構成するナックルに支持固定される。車輪を構成するホイールおよび制動用回転体は、パイロット部に外嵌され、かつ、回転フランジに対し結合固定される。なお、ハブユニット軸受に関して、軸方向外側は、車両への組付け状態で車両の幅方向外側であり、軸方向内側は、車両への組付け状態で車両の幅方向中央側である。
【0003】
より具体的には、制動用回転体は、パイロット部の軸方向内側部分に外嵌される。車輪を構成するホイールは、パイロット部の軸方向外側部分に外嵌される。そして、この状態で、ホイールおよび制動用回転体に備えられた通孔に軸方向外側から挿通されたハブボルトを、回転フランジに備えられた取付孔に螺合することにより、ホイールおよび制動用回転体を回転フランジに結合固定する。あるいは、回転フランジに備えられた取付孔に圧入されたスタッドを、ホイールおよび制動用回転体に備えられた通孔に軸方向内側から挿通した状態で、該スタッドの軸方向外端部にハブナットを螺合することにより、ホイールおよび制動用回転体を回転フランジに結合固定する。
【0004】
この際に、ホイールは、ハブボルトの頭部の軸方向内側面あるいはハブナットの軸方向内側面に備えられた雄側テーパ部と、ホイールの軸方向外側面に備えられた雌側テーパ部とを嵌合させることによって、回転輪に対して芯出しされる。このため、ホイールの取付性を考慮し、ホイールの内周面とパイロット部の軸方向外側部分の外周面との間には、若干の、たとえば直径差で0.2mm~2mm程度の隙間が設けられる。
【0005】
これに対し、制動用回転体は、パイロット部の軸方向内側部分に外嵌されることによって、回転輪に対して芯出しされる。このため、制動用回転体の内周面とパイロット部の軸方向内側部分の外周面とは、がたつきのない隙間嵌め、たとえばh7、H7の公差の隙間嵌めで嵌合される。
【0006】
特開2010-137624号公報(特許文献1)には、回転輪のパイロット部に外嵌された円筒状のパイロットアダプタ(パイロット部材)を備え、該パイロットアダプタにホイールを外嵌するハブユニット軸受が記載されている。このようなハブユニット軸受によれば、外径が異なるパイロットアダプタに取り換えるだけで、内径が異なるホイールを取り付けることができる。このため、内径が異なる複数のホイールに対し、パイロットアダプタ以外の部品を共通化できるため、ハブユニット軸受の製造コストを抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-137624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
回転輪のパイロット部に外嵌されるパイロットアダプタに、ホイールだけでなく、制動用回転体をも外嵌する場合には、以下のような問題が発生する。
【0009】
すなわち、回転輪のパイロット部にパイロットアダプタを隙間嵌めで外嵌する場合には、制動用回転体の内周面とパイロットアダプタの外周面との間に存在する隙間に、パイロットアダプタの内周面と回転輪のパイロット部の外周面との間に存在する隙間が加算される。その結果、加算された隙間が大きくなり、回転輪に対する制動用回転体の芯出しを高精度に行えなくなって、運転時にシミーが発生しやすくなる可能性がある。
【0010】
これに対して、回転輪のパイロット部にパイロットアダプタを締り嵌めで外嵌する場合には、パイロットアダプタ単体の外径の公差に、回転輪のパイロット部にパイロットアダプタを締り嵌めで外嵌することに伴うパイロットアダプタの拡径の公差が加算される。このため、加算された公差の範囲内における、パイロットアダプタの外周面と制動用回転体の内周面との間の隙間の大きさの最小値と最大値との差が大きくなる。その結果、該隙間が大きくなった場合、特に、該隙間の大きさが最大値となった場合に、回転輪に対する制動用回転体の芯出しを高精度に行えなくなって、運転時にシミーが発生しやすくなる可能性がある。
【0011】
本発明は、回転輪のパイロット部に外嵌したパイロットアダプタに車輪を構成するホイールおよび制動用回転体を外嵌する際に、回転輪に対する制動用回転体の芯出しを高精度に行えるハブユニット軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様のハブユニット軸受は、内周面または外周面に、複列の静止軌道を有する静止輪と、内周面と外周面とのうち前記複列の静止軌道に対向する周面に複列の回転軌道、軸方向外側部に径方向外側に向けて突出した回転フランジ、および、前記回転フランジの径方向内側の端部から軸方向外側に向けて伸長した円筒状のパイロット部を有する回転輪と、前記複列の静止軌道と前記複列の回転軌道との間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ配置された転動体と、前記パイロット部の外周面に外嵌されるパイロットアダプタとを備える。
前記パイロットアダプタは、軸方向外側部分に、外周面に車輪のホイールが外嵌されるホイール用筒部、および、軸方向内側部分に、外周面に制動用回転体が外嵌される制動用筒部を有する。
前記ホイール用筒部は、前記パイロット部の軸方向外側部分の外周面に備えられたホイール用嵌合面部に締り嵌めで外嵌される。
前記制動用筒部は、前記パイロット部の軸方向内側部分の外周面に備えられた制動用嵌合面部に隙間嵌めで外嵌される。
【0013】
本発明の一態様では、前記ホイール用嵌合面部が、前記制動用嵌合面部よりも小径であり、前記パイロット部は、前記ホイール用嵌合面部と前記制動用嵌合面部との接続部に、軸方向に関して外側を向いた段差面を有し、前記パイロットアダプタは、前記段差面に突き当てられている。
【0014】
本発明の一態様では、前記ホイール用嵌合面部が、前記制動用嵌合面部よりも小径であり、前記パイロットアダプタは、前記回転フランジの軸方向外側面に突き当てられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様のハブユニット軸受によれば、回転輪のパイロット部に外嵌したパイロットアダプタに車輪を構成するホイールおよび制動用回転体を外嵌する際に、回転輪に対する制動用回転体の芯出しを高精度に行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施の形態の第1例のハブユニット軸受の断面図である。
図2図2は、図1のA部拡大図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の第2例に関する、図2に相当する図である。
図4図4は、本発明の実施の形態の第3例に関する、図2に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1および図2を用いて説明する。
【0018】
本例のハブユニット軸受1は、内輪回転型かつ従動輪用であって、静止輪である外輪2と、回転輪であるハブ3と、複数個の転動体4a、4bと、パイロットアダプタ17とを備える。ただし、本発明は、内輪回転型かつ駆動輪用のハブユニット軸受、あるいは、外輪回転型のハブユニット軸受に適用することもできる。
【0019】
なお、ハブユニット軸受1に関して、軸方向外側は、車両への組付け状態で車両の幅方向外側となる図1の左側であり、軸方向内側は、車両への組付け状態で車両の幅方向中央側となる図1の右側である。
【0020】
外輪2は、内周面にそれぞれが静止軌道である複列の外輪軌道5a、5b、および、軸方向中間部に径方向外側に向けて突出した静止フランジ6を有する。静止フランジ6は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する図示しない支持孔を有する。外輪2は、静止フランジ6の支持孔を挿通したボルトにより、懸架装置に対し支持固定され、車輪が回転する際にも回転しない。
【0021】
ハブ3は、外輪2の径方向内側に、外輪2と同軸に配置される。ハブ3は、外周面に、複列の外輪軌道5a、5bに対向する、それぞれが回転軌道である複列の内輪軌道7a、7bを有する。ハブ3は、外輪2よりも軸方向外側に位置する軸方向外側部に、径方向外側に向けて突出した回転フランジ8を有する。ハブ3は、回転フランジ8の径方向内側の端部から軸方向外側に向けて伸長した円筒状のパイロット部9を有する。
【0022】
回転フランジ8は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する取付孔10を有する。
【0023】
パイロット部9は、軸方向外側部分の外周面にホイール用嵌合面部11、および、軸方向内側部分の外周面に制動用嵌合面部12を有する。本例では、ホイール用嵌合面部11および制動用嵌合面部12のそれぞれは、ハブ3の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。また、本例では、ホイール用嵌合面部11および制動用嵌合面部12は、互いに等しい外径を有し、互いに連続して形成されている。すなわち、本例では、ホイール用嵌合面部11および制動用嵌合面部12は、ハブ3の中心軸を中心とする単一の円筒面により構成されている。
【0024】
本例では、ハブ3は、ハブ輪13と内輪14とを組み合わせてなる。軸方向外側の内輪軌道7aは、ハブ輪13の軸方向中間部の外周面に備えられている。回転フランジ8およびパイロット部9は、ハブ輪13の軸方向外側部に備えられている。軸方向内側の内輪軌道7aは、内輪14の外周面に備えられている。内輪14は、ハブ輪13の軸方向内側部に外嵌され、かつ、ハブ輪13の軸方向内端部に備えられたかしめ部15により軸方向内側面を抑え付けられることで、ハブ輪13に結合固定されている。
【0025】
なお、本発明は、軸方向外側の内輪軌道が、ハブ輪に外嵌された別の内輪の外周面に備えられたハブユニット軸受にも適用することもできる。
【0026】
転動体4a、4bは、複列の外輪軌道5a、5bと複列の内輪軌道7a、7bとの間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ、円周方向に離隔して配置され、かつ、それぞれの列の保持器16a、16bにより転動自在に保持されている。これにより、ハブ3は、外輪2の径方向内側に回転自在に支持されている。本例では、転動体4a、4bとして玉を使用しているが、転動体として円すいころを使用することもできる。本例では、軸方向内側列の転動体4aのピッチ円直径と、軸方向外側列の転動体4bのピッチ円直径とを互いに同じとしている。ただし、本発明は、軸方向内側列の転動体のピッチ円直径と、軸方向外側列の転動体のピッチ円直径とが互いに異なる異径PCD型のハブユニット軸受に適用することもできる。
【0027】
パイロットアダプタ17は、鋼などの金属により全体を略円筒状に構成されており、ハブ3のパイロット部9に外嵌される。なお、パイロットアダプタ17を構成する材料として、たとえば強化繊維を混入した合成樹脂を採用することもできる。パイロットアダプタ17は、軸方向外側部分に、外周面に車輪のホイール27が外嵌されるホイール用筒部18、および、軸方向内側部分に、外周面にディスク、ドラムなどの制動用回転体28が外嵌される制動用筒部19を有する。
【0028】
ホイール用筒部18は、それぞれが円筒面により構成された内周面20および外周面21を有する。制動用筒部19は、それぞれが円筒面により構成された内周面22および外周面23を有する。ホイール用筒部18の内周面20は、制動用筒部19の内周面22より小径である。ホイール用筒部18の内周面20と、制動用筒部19の内周面22とは、軸方向に関して内側を向いた内径側段差面24により接続されている。本例では、内径側段差面24は、軸方向内側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した円すい面により構成されている。ただし、内径側段差面は、パイロットアダプタの中心軸を中心とする平面や、円弧状の断面形状を有する曲面などにより構成することもできる。ホイール用筒部18の外周面21は、制動用筒部19の外周面23より小径である。ホイール用筒部18の外周面21と、制動用筒部19の外周面23とは、軸方向に関して外側を向いた外径側段差面25により接続されている。本例では、外径側段差面25は、ホイール27および制動用回転体28の取付性を考慮し(特に、制動用回転体28を制動用筒部19に外嵌する際のガイド面として機能するように)、軸方向内側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した円すい面により構成されている。ただし、外径側段差面は、パイロットアダプタの中心軸を中心とする平面や、円弧状の断面形状を有する曲面などにより構成することもできる。
【0029】
ホイール用筒部18の内周面20は、パイロット部9のホイール用嵌合面部11に締り嵌めで外嵌され、かつ、制動用筒部19の内周面22は、パイロット部9の制動用嵌合面部12に隙間嵌めで外嵌されている。この状態で、制動用筒部19の軸方向内側面26が回転フランジ8の軸方向外側面に突き当てられている。これにより、ハブ3に対してパイロットアダプタ17が軸方向に位置決めされている。また、この状態で、制動用筒部19の内周面22とパイロット部9の制動用嵌合面部12との間には、全周にわたり径方向の隙間が存在している。
【0030】
本例では、ホイール27および制動用回転体28は、図1に示すように、それぞれの径方向中心部に備えられた中心孔29、30にパイロットアダプタ17を挿通し、かつ、それぞれの径方向中間部の円周方向複数箇所に備えられた通孔31、32を挿通したハブボルト33を、取付孔10に螺合することにより、回転フランジ8に結合固定される。
【0031】
この際に、制動用回転体28は、パイロットアダプタ17を構成する制動用筒部19に外嵌されることによって、ハブ3に対して芯出しされる。このため、制動用回転体28の中心孔30と制動用筒部19の外周面23とは、がたつきのない隙間嵌め、たとえばh7、H7の公差の隙間嵌めで嵌合される。
【0032】
これに対して、ホイール27は、ハブボルト33の頭部34の軸方向内側面に備えられた雄側テーパ部35と、ホイール27の軸方向外側面の通孔31の周囲部分に備えられた雌側テーパ部36とを嵌合させることによって、ハブ3に対して芯出しされる。このため、ホイール27の取付性を考慮し、ホイール27の中心孔29とホイール用筒部18の外周面21との間には、若干の、たとえば直径差で0.2mm~2mm程度の隙間が設けられる。
【0033】
なお、取付孔10のそれぞれに圧入したスタッドを、ホイール27および制動用回転体28のそれぞれの通孔31、32に挿通した状態で、該スタッドの先端部にハブナットを螺合することにより、ホイール27および制動用回転体28を回転フランジ8に結合固定することもできる。この場合、ホイール27は、たとえば、ハブナットの軸方向内側面に備えられた雄側テーパ部と、ホイール27の雌側テーパ部36とを嵌合させることによって、ハブ3に対して芯出しされる。
【0034】
本例のハブユニット軸受1によれば、ハブ3のパイロット部9に外嵌したパイロットアダプタ17にホイール27および制動用回転体28を外嵌する際に、ハブ3に対する制動用回転体28の芯出しを高精度に行うことができる。
【0035】
すなわち、本例では、パイロットアダプタ17がパイロット部9に外嵌された状態で、パイロットアダプタ17の軸方向外側部分を構成するホイール用筒部18の内周面20のみが、パイロット部9のホイール用嵌合面部11に締り嵌めで外嵌されており、パイロットアダプタ17の軸方向内側部分を構成する制動用筒部19の内周面22は、パイロット部9の制動用嵌合面部12に締り嵌めで外嵌されておらず、隙間嵌めで外嵌されている。
【0036】
つまり、本例では、ホイール用筒部18の内周面20がホイール用嵌合面部11に締り嵌めで外嵌されているため、パイロット部9に対する制動用筒部19の径方向変位が防止されている。また、制動用筒部19の内周面22が制動用嵌合面部12に隙間嵌めで外嵌されているため、ホイール用筒部18の内周面20をホイール用嵌合面部11に締り嵌めで外嵌することに伴う制動用筒部19の拡径を防止することができる。したがって、本例では、制動用回転体28の中心孔30と制動用筒部19の外周面23との嵌合部に設定される公差(たとえばh7、H7の公差)のみに基づいて、ハブ3に対する制動用回転体28の芯出しを高精度に行うことができる。この結果、運転時にシミーが発生しにくくなる。
【0037】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図3を用いて説明する。
【0038】
本例の構造では、従来から知られているハブユニット軸受の場合と同様、ハブ3のパイロット部9aのホイール用嵌合面部11aは、制動用嵌合面部12aよりも小径である。パイロット部9aは、ホイール用嵌合面部11aと制動用嵌合面部12aとの接続部に、軸方向に関して外側を向いた段差面37を有する。本例では、段差面37の径方向内側部38は、軸方向内側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した凹円弧状の断面形状を有する凹曲面により構成されている。段差面37の径方向外側部39は、ハブ3の中心軸に対して直交する平面により構成されている。
【0039】
本例では、パイロットアダプタ17aのホイール用筒部18aの内周面20と制動用筒部19aの内周面22との接続部に存在する内径側段差面24aの径方向内側部40は、軸方向内側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した円すい面により構成されている。内径側段差面24aの径方向外側部41は、パイロットアダプタ17aの中心軸に対して直交する平面により構成されている。
【0040】
本例では、パイロットアダプタ17aの内径側段差面24aの径方向外側部41を、パイロット部9aの段差面37の径方向外側部39に突き当てることで、ハブ3に対してパイロットアダプタ17aが軸方向に位置決めされている。
【0041】
本例では、パイロットアダプタ17aのホイール用筒部18aの外周面21と制動用筒部19aの外周面23との半径差△hを、パイロット部9aのホイール用嵌合面部11aと制動用嵌合面部12aとの半径差△Hよりも、小さくしている(△h>△H)。ただし、本発明を実施する場合には、これらの半径差△h、△Hの関係を、本例の場合と逆の関係(△h<△H)にしたり、互いに等しい関係(△h=△H)にしたりすることもできる。
【0042】
本例のハブユニット軸受では、パイロットアダプタ17a以外の部分として、従来のハブユニット軸受を用いることができるという利点がある。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0043】
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、図4を用いて説明する。
【0044】
本例では、パイロット部9bのホイール用嵌合面部11bと制動用嵌合面部12bとの接続部に存在する段差面37aは、軸方向内側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した円すい面により構成されている。本例では、段差面37aの径方向高さ、すなわち、ホイール用嵌合面部11bと制動用嵌合面部12bとの半径差△Hが、実施の形態の第2例の場合よりも大幅に小さい。このため、本例では、段差面37aをパイロットアダプタ17bの軸方向の位置決めに利用していない。本例では、パイロットアダプタ17bを構成するホイール用筒部18bおよび制動用筒部19bのうち、制動用筒部19bの軸方向内側面26を回転フランジ8の軸方向外側面に突き当てることで、ハブ3に対してパイロットアダプタ17bが軸方向に位置決めされている。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第2例の場合と同様である。
【符号の説明】
【0045】
1 ハブユニット軸受
2 外輪
3 ハブ
4a、4b 転動体
5a、5b 外輪軌道
6 静止フランジ
7a、7b 内輪軌道
8 回転フランジ
9、9a、9b パイロット部
10 取付孔
11、11a、11b ホイール用嵌合面部
12、12a、12b 制動用嵌合面部
13 ハブ輪
14 内輪
15 かしめ部
16a、16b 保持器
17、17a、17b パイロットアダプタ
18、18a、18b ホイール用筒部
19、19a、19b 制動用筒部
20 内周面
21 外周面
22 内周面
23 外周面
24、24a 内径側段差面
25 外径側段差面
26 軸方向内側面
27 ホイール
28 制動用回転体
29 中心孔
30 中心孔
31 通孔
32 通孔
33 ハブボルト
34 頭部
35 雄側テーパ部
36 雌側テーパ部
37、37a 段差面
38 径方向内側部
39 径方向外側部
40 径方向内側部
41 径方向外側部
図1
図2
図3
図4