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  • 特開-過冷却水供給システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154894
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】過冷却水供給システム
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/36 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
A23L3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058157
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】林 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀川 伸二
【テーマコード(参考)】
4B022
【Fターム(参考)】
4B022LF05
4B022LP05
4B022LT06
(57)【要約】
【課題】過冷却水を供給可能な過冷却水供給システムを提供する。
【解決手段】本発明によれば、過冷却水を供給する過冷却水供給システムであって、予め設定した温度の冷水を供給する冷水供給手段と、冷媒を冷却する冷凍機と、熱交換器とを備え、前記熱交換器において前記冷水と前記冷媒の間で熱交換させて前記冷水をさらに冷却し、過冷却水を生成して供給する、過冷却水供給システムが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過冷却水を供給する過冷却水供給システムであって、
予め設定した温度の冷水を供給する冷水供給手段と、冷媒を冷却する冷凍機と、熱交換器とを備え、
前記熱交換器において前記冷水と前記冷媒の間で熱交換させて前記冷水をさらに冷却し、過冷却水を生成して供給する、過冷却水供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の過冷却水供給システムであって、
前記冷水供給手段は、給水手段と、チラーとを備え、
前記給水手段は、常温水を供給可能に構成され、
前記チラーは、チラー水を供給可能に構成され、
前記冷水供給手段は、前記チラー水と前記常温水を混合し、前記冷水として前記熱交換器へ供給する、過冷却水供給システム。
【請求項3】
請求項2に記載の過冷却水供給システムであって、
前記冷水供給手段及び前記冷凍機を制御する制御手段を備え、
前記冷水供給手段は、送水ポンプと、温度センサとを備え、
前記送水ポンプは、前記チラー水と前記常温水が混合される混合位置よりも下流側に配置されるとともに、一定流量の水を送水可能に構成され、
前記温度センサは、前記冷水の水温を検出するよう構成されており、
前記給水手段は、前記常温水が供給される給水ラインと、当該給水ラインに配置されるとともに流量調整の可能な給水流量調整弁とを備えており、
前記制御手段は、前記温度センサの検出する前記冷水の水温が前記予め設定した温度となるよう、前記給水流量調整弁をフィードバック制御する、過冷却水供給システム。
【請求項4】
請求項3に記載の過冷却水供給システムであって、
前記送水ポンプよりも下流側に配置されて前記冷水の圧力を検出するよう構成される第1圧力センサと、前記冷凍機と前記熱交換器の間で前記冷媒を循環させる冷媒循環ラインにおける前記熱交換器の下流側に配置されて前記冷媒の圧力を検出するよう構成される第2圧力センサの少なくとも一方を備えており、
前記制御手段は、前記第1圧力センサの検出する前記冷水の圧力及び/又は前記第2圧力センサの検出する前記冷媒の圧力により、前記熱交換器内における前記冷水の凍結を検出する、過冷却水供給システム。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかに記載の過冷却水供給システムであって、
前記過冷却水を冷却槽に供給するよう構成されており、
前記熱交換器と前記冷却槽とを接続する過冷却水供給ラインを備え、
当該過冷却水供給ラインは、曲げ配管によって構成される、過冷却水供給システム。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れかに記載の過冷却水供給システムであって、
前記過冷却水を冷却槽に供給するよう構成されており、
前記熱交換器を、前記冷却槽と隣接する位置に配置した、過冷却水供給システム。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れかに記載の過冷却水供給システムであって、
前記過冷却水を冷却槽に供給するよう構成されており、
前記熱交換器をバイパスするバイパスラインを備え、
前記冷水供給手段の供給する前記冷水を前記バイパスラインを介して前記冷却槽に供給可能に構成される、過冷却水供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過冷却水を供給する過冷却水供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の冷却のため、冷水を供給する冷却水供給システムがある。例えば、特許文献1には、熱交換器と冷凍機との間で冷媒を循環させるとともに当該熱交換器と蓄氷タンクとの間で冷水を循環させることで蓄氷タンクに氷水を生成し、必要に応じて蓄氷タンクから冷却槽に冷却水を供給する蓄氷型冷水装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3412371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被冷却物を冷却するための冷却槽にて被冷却物を冷却する際には、通常、被冷却物の熱量と冷却可能時間に応じて冷却槽の設定温度が定められ、当該設定温度が維持されるよう冷却水が連続的に供給される。そして、このような場合、供給される冷却水は、供給する水温が低いほど少なく済むことになる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるような冷却水供給システムにより冷却槽に供給可能な冷却水(解氷水)の水温は、低くても0℃以上であり、0℃未満の過冷却水を供給することは不可能であった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、過冷却水を供給可能な過冷却水供給システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、過冷却水を供給する過冷却水供給システムであって、予め設定した温度の冷水を供給する冷水供給手段と、冷媒を冷却する冷凍機と、熱交換器とを備え、前記熱交換器において前記冷水と前記冷媒の間で熱交換させて前記冷水をさらに冷却し、過冷却水を生成して供給する、過冷却水供給システムが提供される。
【0008】
本発明によれば、冷水供給手段によって供給された冷水を熱交換器によりさらに冷却することで、過冷却水を生成して供給することが可能となっている。また、冷水供給手段が供給する冷水を予め設定した温度とすることで、熱交換器内における冷水の凍結を避けることができる。さらに、熱交換器の上流側の温度が一定であれば、熱交換器の下流側の水の温度を推定することが可能である。したがって、熱交換器の下流側の温度センサの設置を省略し、生成した過冷却水が温度センサに触れて過冷却状態が解消されてしまうことを防止可能となっている。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0010】
好ましくは、前記冷水供給手段は、給水手段と、チラーとを備え、前記給水手段は、常温水を供給可能に構成され、前記チラーは、チラー水を供給可能に構成され、前記冷水供給手段は、前記チラー水と前記常温水を混合し、前記冷水として前記熱交換器へ供給する。
【0011】
好ましくは、前記冷水供給手段及び前記冷凍機を制御する制御手段を備え、前記冷水供給手段は、送水ポンプと、温度センサとを備え、前記送水ポンプは、前記チラー水と前記常温水が混合される混合位置よりも下流側に配置されるとともに、一定流量の水を送水可能に構成され、前記温度センサは、前記冷水の水温を検出するよう構成されており、前記給水手段は、前記常温水が供給される給水ラインと、当該給水ラインに配置されるとともに流量調整の可能な給水流量調整弁とを備えており、前記制御手段は、前記温度センサの検出する前記冷水の水温が前記予め設定した温度となるよう、前記給水流量調整弁をフィードバック制御する。
【0012】
好ましくは、前記送水ポンプよりも下流側に配置されて前記冷水の圧力を検出するよう構成される第1圧力センサと、前記冷凍機と前記熱交換器の間で冷媒を循環させる冷媒循環ラインにおける前記熱交換器の下流側に配置されて前記冷媒の圧力を検出するよう構成される第2圧力センサの少なくとも一方を備えており、前記制御手段は、前記第1圧力センサの検出する前記冷水の圧力及び/又は前記第2圧力センサの検出する前記冷媒の圧力により、前記熱交換器内における前記冷水の凍結を検出する。
【0013】
好ましくは、前記過冷却水を冷却槽に供給するよう構成されており、前記熱交換器と前記冷却槽とを接続する過冷却水供給ラインを備え、当該過冷却水供給ラインは、曲げ配管によって構成される。
【0014】
好ましくは、前記過冷却水を冷却槽に供給するよう構成されており、前記熱交換器を、前記冷却槽と隣接する位置に配置した。
【0015】
好ましくは、前記過冷却水を冷却槽に供給するよう構成されており、前記熱交換器をバイパスするバイパスラインを備え、前記冷水供給手段の供給する前記冷水を前記バイパスラインを介して前記冷却槽に供給可能に構成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る過冷却水供給システム1を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0018】
1.過冷却水供給システム1の構成
まず、本発明の一実施形態に係る過冷却水供給システム1の構成について説明する。過冷却水供給システム1は、食品等の被処理物を冷却する目的で、冷却槽100に冷水を供給するために用いられる。本実施形態の過冷却水供給システム1は、図1に示すように、冷水供給手段2と、冷凍機3と、熱交換器4とを備える。また、過冷却水供給システム1は、これらを接続するラインとして、冷水供給手段2と熱交換器4とを接続する冷水ライン5と、熱交換器4をバイパスして冷水供給手段2と冷却槽100とを接続するバイパスライン6と、冷凍機3と熱交換器4とを接続する冷媒循環ライン7と、後述する冷凍機3の圧縮機30と熱交換器4とを接続する冷媒バイパスライン8と、熱交換器4と冷却槽100とを接続する過冷却水供給ライン9と、を備える。さらに、過冷却水供給システム1は、各要素の動作を制御する制御手段10を備える。以下、各構成を具体的に説明する。
【0019】
冷水供給手段2は、予め設定した温度の冷水を供給するものであり、給水手段20と、チラー21と、送水ポンプ22と温度センサ23とを備える。
【0020】
給水手段20は、常温水を供給する給水源(図示せず)と送水ポンプ22とを接続する給水ライン20aと、給水ライン20aに配置され、流量調整の可能な給水流量調整弁20bと、給水流量調整弁20bよりも下流側に配置される給水弁20cとを備える。給水流量調整弁20bには、応答性の高い電動弁が用いられる。給水手段20は、送水ポンプ22へ常温水(例えば、18℃程度の水)を供給可能に構成される。なお、常温水は、例えば上水道から供給される水とされるが、食品等の被処理物の冷却に使用可能な水であれば、特に限定されるものではない。
【0021】
チラー21は、給水ライン(図示せず)から供給された常温水を冷却し、0℃付近(通常0.5℃~1.5℃程度)のチラー水を生成するものである。本実施形態のチラー21は、生成したチラー水を循環させない流水仕様のウォーターチラーとされ、生成されたチラー水はチラー水ライン21aを介して送水ポンプ22へと送られる。ここで、チラー水ライン21aには、チラー水弁21bが設けられている。
【0022】
なお、チラー21は、具体的には、図示しない圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を備え、冷媒の圧縮、凝縮、膨張および蒸発の冷凍サイクルを実行し、蒸発器(熱交換器)において冷媒との間で熱交換を行うことで、常温水を冷却するものである。チラー21の構成については、従来既知であるため、その詳細な説明を省略する。
【0023】
送水ポンプ22は、給水ライン20aとチラー水ライン21aが合流する位置、すなわち、常温水とチラー水とが混合される混合位置24よりも下流側に配置される。送水ポンプ22は、常温水とチラー水とを均一に混合し、混合水を一定流量の冷水として送水するよう構成される。なお、給水手段20において、混合位置24よりも下流側のラインを混合水ライン25と呼ぶ。
【0024】
温度センサ23は、混合水ライン25の送水ポンプ22よりも下流側に配置され、常温水とチラー水の混合水である冷水の水温を検出するよう構成される。送水ポンプ22よりも下流側に配置することで、送水ポンプ22によって混合され温度が均一になり、温度ムラの少ない冷水の温度を検出することができる。また、送水ポンプ22からの入熱が考慮された水温を検出できるため、実際に熱交換器4に入る温度に近い温度を検出することが可能となっている。
【0025】
以上のような構成の冷水供給手段2によって供給される冷水は、送水ポンプ22の駆動により、混合水ライン25に接続された冷水ライン5を介して熱交換器4へと送水される。ここで、冷水ライン5には、フィルタ50と、第1圧力センサ51と、冷水弁52とが設けられる。
【0026】
フィルタ50は、熱交換器4での冷水の凍結を防止するために設けられるものであり、凍結の核となる異物を除去するよう構成される。
【0027】
第1圧力センサ51は、フィルタ50の下流側に配置され、熱交換器4に入る冷水の圧力を検出する。熱交換器4において冷水が凍結すると熱交換器4の上流側において冷水の圧力が上昇するので、第1圧力センサ51により圧力上昇を検出することで、凍結を検出することができる。なお、第1圧力センサ51は、例えば、冷水が凍結したことを検出する凍結用スイッチと冷水が解凍したことを検出する解凍用スイッチの2つの圧力スイッチから構成することができる。また、第1圧力センサ51をフィルタ50の下流側に配置することで、フィルタ50の詰まりによる凍結誤検出を抑制することが可能となる。
【0028】
冷水弁52は、冷水ライン5を流通する冷水、すなわち、熱交換器4に入る冷水の流通と流通の停止を切り替える。冷水弁52としては、例えば、電動弁が用いられる。
【0029】
また、本実施形態の過冷却水供給システム1は、冷水ライン5から分岐して熱交換器4をバイパスし、冷水供給手段2が供給する冷水を冷却槽100に直接供給するバイパスライン6も備えている。バイパスライン6には、バイパス弁60が設けられている。バイパス弁60としては、例えば、電動弁が用いられる。
【0030】
冷凍機3は、圧縮機30と、凝縮器31とを備え、冷媒を冷却するものである。冷凍機3は、冷媒循環ライン7によって熱交換器4と接続されており、冷媒循環ライン7には、循環弁70と、膨張弁71と、第2圧力センサ72と、冷媒温度センサ73が設置されている。冷媒循環ライン7は、冷媒を圧縮機30、凝縮器31、膨張弁71及び熱交換器4(蒸発器)の順に循環させるよう接続されており、冷媒が冷媒循環ライン7を循環することで、冷媒の圧縮、凝縮、膨張及び蒸発の冷凍サイクルが実行されるようになっている。なお、循環弁70には、電磁弁を用いることが好ましい。
【0031】
圧縮機30は、低温低圧の冷媒ガスを断熱圧縮して高温高圧のガスにする。圧縮機30において高温高圧のガス状態となった冷媒は、好ましくは油分離器(図示せず)を介して凝縮器31へ送られる。圧縮機30には、例えばスクロール圧縮機が用いられる。
【0032】
凝縮器31は、圧縮機30からの高温高圧のガスを凝縮液化して、低温高圧の冷媒液の状態にする。本実施形態の凝縮器31は、ファン31aを備える空冷式の熱交換器である。ただし、水冷式の凝縮器31を用いることも可能である。凝縮器31で低温高圧の冷媒液の状態となった冷媒は、冷媒循環ライン7を通って膨張弁71へ送られる。
【0033】
膨張弁71は、凝縮器31で低温高圧の冷媒液の状態となった冷媒を減圧して、低温低圧の冷媒液の状態にする。膨張弁71は、その開度を制御可能な弁であり、開度は制御手段10によって制御される。制御手段10によって膨張弁71の開度を調整することにより、減圧の度合いを調整することができる。膨張弁71で低温低圧の冷媒液の状態となった冷媒は、蒸発器としての熱交換器4へ送られる。なお、膨張弁71は、電子膨張弁であっても機械式膨張弁であっても良い。
【0034】
なお、本実施形態の過冷却水供給システム1は、凝縮器31及び膨張弁71をバイパスして冷凍機3の圧縮機30と熱交換器4とを接続する冷媒バイパスライン8も備えており、冷媒バイパスライン8には、冷媒バイパス弁80が設置されている。冷媒バイパス弁80にも、電磁弁が用いられる。
【0035】
熱交換器4は、冷凍サイクルにおける蒸発器として機能する。熱交換器4は、冷媒流路と冷水流路とを備え、冷媒と冷水とを混合することなく、これらの間で間接的に熱交換させるものである。熱交換器4は、膨張弁71を通過して低温低圧となった冷媒液が圧力一定のまま冷水から吸熱して蒸発することにより、冷水から熱を奪って冷水を冷却する。熱交換器4には、例えば、二重管熱交換器が用いられる。なお、膨張弁71の開度調整により、冷媒は熱交換器4において完全に蒸発するようになっている。
【0036】
なお、冷凍機3の運転条件としては、熱交換器4において冷媒が蒸発するときの温度(蒸発温度)が-5℃以上となるよう設定することが好ましい。蒸発温度が低い場合、熱交換器4において冷水が凍結する可能性が高まるが、蒸発温度が0℃よりも小さく且つ0℃に近い温度であれば、熱交換器4において冷水を冷却しつつ、冷水の凍結を抑制することが可能となる。
【0037】
熱交換器4において冷水から吸熱して蒸発した冷媒は、冷媒循環ライン7を通って低温低圧のガスの状態で圧縮機30へ送られる。
【0038】
冷媒循環ライン7における熱交換器4の下流側の位置、すなわち、熱交換器4と圧縮機30の間の位置には、第2圧力センサ72と冷媒温度センサ73が配置される。第2圧力センサ72は、熱交換器4における冷媒の圧力を検出するよう構成される。冷媒温度センサ73は、圧縮機30に吸入される、熱交換器4により蒸発した冷媒の温度を検出するよう構成される。
【0039】
また、本実施形態の過冷却水供給システム1は、熱交換器4と冷却槽100とを接続する過冷却水供給ライン9を備えており、熱交換器4の冷水流路は、熱交換器4と冷却槽100とを接続する過冷却水供給ライン9に接続される。熱交換器4を通過した冷水は、冷媒との熱交換により冷却され、過冷却水となって過冷却水供給ライン9を流通する。
【0040】
ここで、本実施形態の過冷却水供給ライン9は、曲げ配管によって構成されており、継ぎ手のない構成となっている。このような構成となっていることで、過冷却水供給ライン9を流れる過冷却水が継ぎ手による段差等に触れて凍結しないようになっている。また、本実施形態の過冷却水供給システム1は、過冷却水供給ライン9の配管距離ができるだけ短くなるよう構成される。具体的には、本実施形態の過冷却水供給システム1では、熱交換器4が冷却槽100と隣接する位置に配置される。ここで、「隣接する位置」とは、例えば、過冷却水供給ライン9の配管距離が10m以内となる位置と規定することできる。また、「隣接する位置」は、熱交換器4と冷却槽100とが同じフロア内に設置される位置関係と規定することも可能である。熱交換器4と冷却槽100とを隣接させ、過冷却水供給ライン9の配管距離を短くすることでも、過冷却水供給ライン9における過冷却水の凍結を抑制することができる。
【0041】
また、過冷却水供給ライン9には、三方弁90が設けられており、三方弁90には、熱交換器4からの水を冷却槽100へと流さずに排水する排水ライン91が接続されている。なお、三方弁90にも、極力段差のないものを用いることが好ましい。
【0042】
制御手段10は、温度センサ23、第1圧力センサ51及び第2圧力センサ72の検出信号や経過時間などに基づき、上述した各構成を制御する。制御手段10は、具体的には、冷水供給手段2の給水流量調整弁20b、給水弁20c、チラー21、チラー水弁21b及び送水ポンプ22と、冷凍機3(圧縮機30及び凝縮器31)と、循環弁70と、膨張弁71と、冷水弁52と、バイパス弁60と、冷媒バイパス弁80と、三方弁90とを制御する。また、制御手段10には、温度センサ23、第1圧力センサ51及び第2圧力センサ72、冷媒温度センサ73などが接続されている。制御手段10は、後述するように、所定の手順(プログラム)に従い、過冷却水の生成及び供給のための制御を行う。
【0043】
なお、上記構成の制御手段10は、具体的には例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段10の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段10の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0044】
2.過冷却水供給システム1の動作
次に、本実施形態の過冷却水供給システム1の動作について説明する。本実施形態の過冷却水供給システム1は、制御手段10の制御により、まず、冷水供給手段2によって予め設定した温度の冷水を生成し、生成した冷水を熱交換器4に供給する。そして、当該冷水を、冷凍機3によって冷却された冷媒との間で熱交換することにより更に冷却し、過冷却水を生成して冷却槽100に供給する。以下、これらの各動作について詳細に説明する。
【0045】
<冷水供給手段2による冷水生成動作>
冷水供給手段2によって予め設定した温度の冷水を生成するには、制御手段10は、まず、給水ライン20aの給水流量調整弁20b、給水弁20cを開くとともに、送水ポンプ22を駆動させる。同時に、制御手段10は、チラー21の運転を開始させるとともに、チラー水ライン21aのチラー水弁21bを開く。これにより、給水ライン20aからの常温水とチラー水ライン21aからのチラー水が混合し、混合水である冷水が混合水ライン25を流通する。ここで、混合水ライン25を流通する冷水の流量、すなわち、熱交換器4に供給される冷水の流量は、送水ポンプ22が混合位置24よりも下流側に配置されていることにより、送水ポンプ22の能力に応じた一定の流量に維持される。
【0046】
次に、制御手段10は、混合水ライン25を流通する冷水の水温を温度センサ23から取得し、冷水の水温が予め設定した温度(一定の温度)に維持されるよう、給水流量調整弁20bの開度をフィードバック制御(PID制御)する。具体的には、制御手段10は、温度センサ23の検出する冷水の水温が設定温度(例えば、3℃)よりも高ければ、給水流量調整弁20bの開度を小さくする。これにより、混合水における常温水の割合が低下し、チラー水の割合が増加して、混合水の水温は低下する。一方、制御手段10は、温度センサ23の検出する冷水の水温が設定温度よりも低ければ、給水流量調整弁20bの開度を大きくする。これにより、混合水における常温水の割合が増加し、チラー水の割合が低下して、混合水の水温は上昇することになる。
【0047】
本実施形態の冷水供給手段2は、制御手段10による上記制御により、予め設定した温度の混合水を生成し、送水ポンプ22により一定流量の混合水を冷水として供給するようになっている。なお、フィードバック制御する冷水の設定温度は、冷凍機3の冷却能力(外気温度等に依存)に応じて変動させることが好ましい。具体的には、例えば、外気温が高く冷凍機3の冷却能力が低い場合はフィードバック制御する設定温度を低くし、外気温が低く冷凍機3の冷却能力が高い場合は同設定温度を高くすることが好適である。
【0048】
<冷凍機3による冷却動作>
冷凍機3によって冷媒を冷却し、熱交換器4にて冷水を冷却するには、冷媒を冷媒循環ライン7を介して冷凍機3と熱交換器4との間で循環させる。具体的には、制御手段10は、冷凍機3(圧縮機30)を駆動するとともに、循環弁70を開き、冷媒バイパス弁80を閉じることで、冷媒を圧縮機30、凝縮器31、膨張弁71及び熱交換器4(蒸発器)の順に循環させ、冷媒の圧縮、凝縮、膨張及び蒸発の冷凍サイクルを実行する。冷媒が熱交換器4を流通する際、同じく熱交換器4を流通する冷水との間で熱交換が行われることで、冷水が冷却される。
【0049】
ここで、本実施形態の制御手段10は、上述したように、熱交換器4に流入する冷水が予め設定した水温に維持されるよう冷水供給手段2を制御している。また、制御手段10は、第2圧力センサ72が検出する冷媒圧力から換算される冷媒の蒸発温度(飽和温度)と、冷媒温度センサ73により検出される冷媒の温度から、圧縮機30に吸入される冷媒の吸入過熱度(冷媒の蒸発温度からの上昇温度)を算出し、吸入過熱度が上記予め設定する冷水の水温に応じた目標温度(例えば、5K~15K)となるよう、膨張弁71の開度を調整する。これにより、熱交換器4に流入する冷水は一定の熱量が奪われることになり、冷水は一定温度の過冷却水となって過冷却水供給ライン9を流通し、冷却槽100に供給されることになる。なお、供給する過冷却水の温度は、約-1.0℃~-0.6℃程度とすることが好ましい。この範囲の温度であれば、熱交換器4等での過冷却水の凍結を好適に抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の過冷却水供給システム1では、冷水ライン5に設けられ冷水の圧力を検出する第1圧力センサ51と、冷媒循環ライン7に設けられ冷媒の圧力を検出する第2圧力センサ72とにより、熱交換器4において何らかの原因で冷水の凍結が発生した場合に、当該凍結を検出するようになっている。
【0051】
具体的には、制御手段10は、熱交換器4内で冷水の凍結が生じると、冷水ライン5における冷水の圧力が上昇することに鑑みて、第1圧力センサ51の検出する冷水の圧力が冷水上限圧力以上となった場合に凍結を検出する。また、制御手段10は、熱交換器4内で冷水の凍結が生じると、冷水と冷媒との間で交換する熱量が減少して冷媒の圧力が通常より増加しないことに鑑みて、第2圧力センサ72の検出する冷媒の圧力が冷媒下限圧力以下となった場合にも凍結を検出する。
【0052】
なお、冷水上限圧力及び冷媒下限圧力は、冷水供給手段2が供給する冷水の設定温度ごとに予め確認しておき、制御手段10が備えるメモリに予め記憶しておくことが好ましい。また、制御手段10は、第1圧力センサ51の検出する冷水の圧力と第2圧力センサ72の検出する冷媒の圧力の一方のみの圧力により、冷水の凍結を検出するようにしても良い。そして、熱交換器4における冷水の凍結を検出した場合には、制御手段10は、次に説明するデフロスト動作を実行する。
【0053】
<デフロスト動作>
デフロスト動作(解氷動作)は、熱交換器4における冷水の凍結を検出した場合に、熱交換器4にホットガスを供給し、ホットガスの温熱によってこれを解凍するための運転動作である。以下、デフロスト動作について具体的に説明する。
【0054】
デフロスト動作を行う場合、制御手段10は、冷媒循環ライン7に設けられた循環弁70を閉じるとともに、冷媒バイパスライン8に設けられた冷媒バイパス弁80を開く。すると、冷凍機3の圧縮機30により高温高圧のガスとなった冷媒(ホットガス)が、凝縮器31及び膨張弁71をバイパスして循環する。これにより、ホットガスが直接熱交換器4に供給され、熱交換器4内で凍結した冷水が解凍されることになる。なお、この際、制御手段10は、過冷却水供給ライン9の三方弁90を制御することで、熱交換器4において解凍されて生じた水を、冷却槽100へと流さずに排水ライン91から排水するようにする。これにより、ホットガスによって温められた水(解凍水)が冷却槽100へ供給されることを防止することができる。
【0055】
また、冷凍機3によるデフロスト動作を行っている間、制御手段10は、冷水供給手段2の給水ライン20aに設けられた給水弁20cを閉じ、チラー水ライン21aに設けられたチラー水弁21bを開くことで、冷水供給手段2がチラー水のみを供給するよう制御する。同時に、制御手段10は、冷水ライン5の冷水弁52を閉じ、バイパスライン6のバイパス弁60を開いて、チラー水が熱交換器4を介さず直接冷却槽100に供給されるようにする。これにより、デフロスト動作時にも、0℃に近い水温の冷水(チラー水)を冷却槽100に供給し続けることが可能となっている。
【0056】
そして、制御手段10は、第1圧力センサ51の検出する冷水の圧力が冷水正常圧力となり、且つ/又は第2圧力センサ72の検出する冷媒の圧力が冷媒正常圧力となった場合には、冷水が解凍されたとしてデフロスト動作を終了する。デフロスト動作を終了するには、制御手段10は、冷媒循環ライン7の循環弁70を開くとともに、冷媒バイパスライン8の冷媒バイパス弁80を閉じる。また、制御手段10は、冷水供給手段2の給水ライン20aの給水弁20c及び冷水ライン5の冷水弁52を開き、バイパスライン6のバイパス弁60を閉じる。これにより、過冷却水供給システム1は過冷却水の供給を再開する。
【0057】
3.作用効果
以上のように、本実施形態の過冷却水供給システム1は、冷水供給手段2が予め設定した温度の冷水を供給し、熱交換器4において冷凍機3によって冷却された冷媒との間で熱交換して冷水をさらに冷却することで、過冷却水を生成して供給することが可能となっている。また、熱交換器4の上流側の温度(冷水ライン5を流れる冷水の温度)が一定であれば、熱交換器4の下流側の冷却後の水の温度を推定することが可能である。したがって、熱交換器4の下流側の温度センサの設置を省略でき、生成された過冷却水が温度センサに触れて過冷却状態が解消されてしまうことを防止可能となっている。
【0058】
加えて、冷水供給手段2は、給水手段20による常温水とチラー21によるチラー水とを混合させるとともに、温度センサ23の検出した混合水の温度に基づいた給水流量調整弁20bのフィードバック制御によりチラー水と常温水の供給量の割合を調整することで、予め設定した一定温度の冷水を応答性良く生成することが可能となっている。
【0059】
なお、冷水供給手段2においては、チラー21自体も、ほぼ一定の水温の冷水を供給することは可能である。しかしながら、チラー21が供給する水温は室温(外気温)等による変動が存在し、応答性が良くないため、チラー水そのものを熱交換器4に供給した場合、凍結が生じるおそれがある。この点、本実施形態の過冷却水供給システム1では、冷水供給手段2がチラー水と常温水を混合し、水温を応答性の高い給水流量調整弁20bの開度によって調整している。これにより、一定温度の冷水を確実に熱交換器4に供給でき、熱交換器4における冷水の凍結を抑制することが可能となっている。
【0060】
4.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0061】
上記実施形態では、冷水供給手段2において温度センサ23は混合水ライン25における送水ポンプ22よりも下流側に設けられていた。しかしながら、温度センサ23を送水ポンプ22よりも上流側に設けることもできる。温度センサ23を流量、流速の高くない送水ポンプ22の上流側に配置することで、振動による温度センサ23の故障を抑制することが可能となる。ただし、温度センサ23を送水ポンプ22の上流側に配置する場合は、検出する混合水の温度が均一になりにくいので、この場合には、配置する送水ポンプ22の上流配管の口径を大きくすることが好ましい。
【0062】
上記実施形態において、冷水供給手段2は、給水手段20とチラー21とを備え、常温水とチラー水を混合させて冷水を生成する構成であった。しかしながら、一定温度の冷水を供給可能であれば、冷水供給手段2をチラー21のみで構成しても良く、その他の手段によって冷水を供給する構成としても良い。
【0063】
上記実施形態において、過冷却水供給システム1は過冷却水を冷却槽100に供給する構成であった。しかしながら、本発明に係る過冷却水供給システム1は、過冷却水を冷却槽100以外の任意の場所・対象に供給することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 :過冷却水供給システム
2 :冷水供給手段
3 :冷凍機
4 :熱交換器
5 :冷水ライン
6 :バイパスライン
7 :冷媒循環ライン
8 :冷媒バイパスライン
9 :過冷却水供給ライン
10 :制御手段
20 :給水手段
20a :給水ライン
20b :給水流量調整弁
20c :給水弁
21 :チラー
21a :チラー水ライン
21b :チラー水弁
22 :送水ポンプ
23 :温度センサ
24 :混合位置
25 :混合水ライン
30 :圧縮機
31 :凝縮器
31a :ファン
50 :フィルタ
51 :第1圧力センサ
52 :冷水弁
60 :バイパス弁
70 :循環弁
71 :膨張弁
72 :第2圧力センサ
73 :冷媒温度センサ
80 :冷媒バイパス弁
90 :三方弁
91 :排水ライン
100 :冷却槽
図1