(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154895
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】セラミック電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 512
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058159
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】龍 穣
(72)【発明者】
【氏名】内田 守
(72)【発明者】
【氏名】坂手 大輔
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH06
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC40
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG03
5E082FG26
5E082FG46
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG28
5E082MM32
5E082PP03
5E082PP08
(57)【要約】
【課題】 セラミック電子部品の特性変化を抑制しつつ、積層始めと積層終わりを判別することができること。
【解決手段】 セラミック電子部品は、セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層された積層構造と、前記積層構造の積層方向の一方端の面上に設けられ、セラミックを主成分とする第1カバー層と、前記積層構造の積層方向の他方端の面上に設けられ、セラミックを主成分とする第2カバー層と、を備え、前記第1カバー層および前記第2カバー層に、主成分セラミックに対する濃度が1モル%以下の同一の添加元素が添加されているか、前記第1カバー層および前記第2カバー層のいずれか一方のみに主成分セラミックに対する濃度が1モル%以下の前記添加元素が添加されており、前記第1カバー層と前記第2カバー層との間の前記添加元素の濃度差は、表面微小部・微量分析装置で5回以上測定した場合の標準偏差の2倍以上であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層された積層構造と、
前記積層構造の積層方向の一方端の面上に設けられ、セラミックを主成分とする第1カバー層と、
前記積層構造の積層方向の他方端の面上に設けられ、セラミックを主成分とする第2カバー層と、を備え、
前記第1カバー層および前記第2カバー層に、主成分セラミックに対する濃度が1モル%以下の同一の添加元素が添加されているか、前記第1カバー層および前記第2カバー層のいずれか一方のみに主成分セラミックに対する濃度が1モル%以下の前記添加元素が添加されており、
前記第1カバー層と前記第2カバー層との間の前記添加元素の濃度差は、表面微小部・微量分析装置で5回以上測定した場合の標準偏差の2倍以上であることを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1カバー層の前記添加元素の濃度および前記第2カバー層の前記添加元素の濃度のうち大きい方の前記添加元素の濃度は、0.001mol%以上であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記第1カバー層の前記添加元素の濃度および前記第2カバー層の前記添加元素の濃度のうち大きい方の前記添加元素の濃度に対する前記添加元素の濃度差の比率は、5%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層の主成分セラミックは、ペロブスカイト構造を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記添加元素は、金属元素であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
主成分セラミック粉末を含む誘電体グリーンシートと金属導電ペーストのパターンとが積層された積層部分と、主成分セラミック粉末を含み前記積層部分の積層方向の一方端の面上に配置された第1カバーシートと、主成分セラミック粉末を含み前記積層部分の積層方向の他方端の面上に配置された第2カバーシートとを含むセラミック積層体を準備する工程と、
前記セラミック積層体を焼成する工程と、を含み、
焼成前の前記第1カバーシートおよび前記第2カバーシートに、同一の添加元素を添加するか、前記第1カバーシートおよび前記第2カバーシートのいずれか一方のみに前記添加元素を添加しておき、
前記第1カバーシートの焼成によって得られる第1カバー層および前記第2カバーシートの焼成によって得られる第2カバー層における前記添加元素の濃度が主成分セラミックに対して1モル%以下であって、前記第1カバー層と前記第2カバー層との間の前記添加元素の濃度差が、表面微小部・微量分析装置で5回以上測定した場合の標準偏差の2倍以上となるように、前記セラミック積層体を焼成することを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やタブレット端末などのデジタル電子機器に使用される電子回路の高密度化に伴う電子部品の小型化に対する要求は高く、当該回路を構成する積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品の小型化および大容量化が急速に進んでいる(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-022722号公報
【特許文献2】特開2016-162868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
誘電体層の薄いセラミック電子部品について、積層プロセスに起因する欠陥が生じることがある。生じる欠陥は、積層と圧着を用いるプロセスの関係上、積層の始まる付近と、積層の終わる付近で異なる確率で発生する。誘電体層が薄い場合には、問題となる欠陥のサイズもまた小さくなるため、欠陥の発見には時間がかかるが、上記の異なる欠陥の発生率を考慮し、セラミック電子部品のある面が積層始め側か、積層終わり側かを判断できれば、解析の手間と時間を大幅に短縮することができる。
【0005】
そこで、積層始めと積層終わりを簡単に判別できる構造を持つセラミック電子部品を作製することで、不良解析の必要が生じた際に製造中の欠陥を容易に特定でき、結果として工程改善の効率、ひいては歩留まりを向上させることが出来るようになる。
【0006】
例えば、特許文献1では、上下のカバー層の厚さを異ならせる技術を開示している。しかしながら、この方法では、片方のカバー層が厚くせざるを得なくなり、限られた寸法の中で出来るだけ高い容量を求められるセラミック電子部品の容量を低下させるというデメリットが生じる。
【0007】
そこで、特許文献2の技術を用いて、色素成分を片方のカバー層に添加することが考えられる。しかしながら、色素成分が誘電体層に多量に拡散し、絶縁抵抗を悪化させる懸念がある。例えば、誘電体層に用いられるTi酸化物もしくはZr酸化物を着色させる添加物は、ペロブスカイト酸化物中でドナーとして働き、電気伝導に寄与するキャリア濃度を高めるためである。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、セラミック電子部品の特性変化を抑制しつつ、積層始めと積層終わりを判別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るセラミック電子部品は、セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層された積層構造と、前記積層構造の積層方向の一方端の面上に設けられ、セラミックを主成分とする第1カバー層と、前記積層構造の積層方向の他方端の面上に設けられ、セラミックを主成分とする第2カバー層と、を備え、前記第1カバー層および前記第2カバー層に、主成分セラミックに対する濃度が1モル%以下の同一の添加元素が添加されているか、前記第1カバー層および前記第2カバー層のいずれか一方のみに主成分セラミックに対する濃度が1モル%以下の前記添加元素が添加されており、前記第1カバー層と前記第2カバー層との間の前記添加元素の濃度差は、表面微小部・微量分析装置で5回以上測定した場合の標準偏差の2倍以上であることを特徴とする。
【0010】
上記セラミック電子部品において、前記第1カバー層の前記添加元素の濃度および前記第2カバー層の前記添加元素の濃度のうち大きい方の前記添加元素の濃度は、0.001mol%以上であってもよい。
【0011】
上記セラミック電子部品において、前記第1カバー層の前記添加元素の濃度および前記第2カバー層の前記添加元素の濃度のうち大きい方の前記添加元素の濃度に対する前記添加元素の濃度差の比率は、5%以上であってもよい。
【0012】
上記セラミック電子部品において、前記誘電体層の主成分セラミックは、ペロブスカイト構造を有していてもよい。
【0013】
上記セラミック電子部品において、前記添加元素は、金属元素であってもよい。
【0014】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、主成分セラミック粉末を含む誘電体グリーンシートと金属導電ペーストのパターンとが積層された積層部分と、主成分セラミック粉末を含み前記積層部分の積層方向の一方端の面上に配置された第1カバーシートと、主成分セラミック粉末を含み前記積層部分の積層方向の他方端の面上に配置された第2カバーシートとを含むセラミック積層体を準備する工程と、前記セラミック積層体を焼成する工程と、を含み、焼成前の前記第1カバーシートおよび前記第2カバーシートに、同一の添加元素を添加するか、前記第1カバーシートおよび前記第2カバーシートのいずれか一方のみに前記添加元素を添加しておき、前記第1カバーシートの焼成によって得られる第1カバー層および前記第2カバーシートの焼成によって得られる第2カバー層における前記添加元素の濃度が主成分セラミックに対して1モル%以下であって、前記第1カバー層と前記第2カバー層との間の前記添加元素の濃度差が、表面微小部・微量分析装置で5回以上測定した場合の標準偏差の2倍以上となるように、前記セラミック積層体を焼成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、セラミック電子部品の特性変化を抑制しつつ、積層始めと積層終わりを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図4】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
【
図5】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0018】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。
図1~
図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
【0019】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の下面は、第1カバー層13aによって覆われている。当該積層体の上面は、第2カバー層13bによって覆われている。第1カバー層13aおよび第2カバー層13bは、セラミック材料を主成分とする。例えば、第1カバー層13aおよび第2カバー層13bの材料は、誘電体層11とセラミック材料の主成分が同じである。
【0020】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0021】
内部電極層12は、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。誘電体層11は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO3(チタン酸バリウム)、BaZrO3(ジルコン酸バリウム)、CaZrO3(ジルコン酸カルシウム)、CaTiO3(チタン酸カルシウム)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等を用いることができる。
【0022】
内部電極層12の1層当たりの平均厚みは、例えば、1.5μm以下であり、1.0μm以下であり、0.7μm以下である。誘電体層11の1層当たりの平均厚みは、例えば、5.0μm以下であり、3.0μm以下であり、1.0μm以下である。
【0023】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該電気容量を生じる領域を、容量領域14と称する。すなわち、容量領域14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層12同士が対向する領域である。
【0024】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージン15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、電気容量を生じない領域である。
【0025】
図3で例示するように、積層チップ10において、積層チップ10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン16と称する。すなわち、サイドマージン16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。サイドマージン16も、電気容量を生じない領域である。
【0026】
積層セラミックコンデンサ100は、各層に対応する粉末状のシートを積層して圧着した後に、焼成することによって得られる。例えば、第1カバー層13a用のカバーシート上に、内部電極層12用の電極パターンが印刷された誘電体層11用の誘電体グリーンシートを複数積層し、その上に第2カバー層13b用のカバーシートを積層し、圧着した後に焼成する。
【0027】
積層過程または圧着過程において、積層プロセスに起因する欠陥が生じることがある。生じる欠陥は、積層と圧着を用いるプロセスの関係上、積層の始まる付近と、積層の終わる付近で異なる確率で発生する。誘電体層11が薄層化されていると、問題となる欠陥のサイズもまた小さくなるため、欠陥の発見には時間がかかる。しかしながら、上記の異なる欠陥発生率を考慮して、積層セラミックコンデンサの2層のカバー層が、積層始めの第1カバー層13aであるか積層終わりの第2カバー層13bであるかを判別できれば、解析の手間と時間を大幅に短縮することができる。そこで、2層のカバー層を簡単に判別できる構造を持つ積層セラミックコンデンサを作製することで、不良解析の必要が生じた際に製造中の欠陥を容易に特定でき、結果として工程改善の効率、ひいては歩留まりを向上させることができるようになる。
【0028】
そこで、例えば、第1カバー層13aの厚さと第2カバー層13bの厚さとを異ならせ、厚みの違いを確認できるようにすることで、第1カバー層13aおよび第2カバー層13bを判別することが考えられる。しかしながら、この手法では、いずれか一方のカバー層を厚くせざるを得なくなり、限られた寸法の中でできるだけ高い容量が求められる積層セラミックコンデンサの容量を低下させるというデメリットが生じる。
【0029】
そこで、第1カバー層13aおよび第2カバー層13bの片方に色素成分を添加することが考えられる。しかしながら、色素成分が誘電体層11に多量に拡散すると、絶縁抵抗を悪化させる懸念がある。例えば、誘電体層11に用いられるTi酸化物もしくはZr酸化物を着色させる添加物は、ペロブスカイト酸化物中でドナーとして働き、電気伝導に寄与するキャリア濃度を高めるおそれがある。
【0030】
そこで、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、特性変化を抑制しつつ、積層始めの第1カバー層13aと、積層終わりの第2カバー層13bとを判別することができる構成を有している。
【0031】
具体的には、第1カバー層13aおよび第2カバー層13bに、積層セラミックコンデンサ100の特性変化が抑制される程度の微量の共通添加元素が添加されている。例えば、良好な絶縁性が維持されるように、共通添加元素の添加量が規定されている。次に、第1カバー層13aと第2カバー層13bとの間で、測定誤差ではない程度に濃度差が検出されるように、第1カバー層13aと第2カバー層13bとの間で共通添加元素に濃度差が設けられている。予め、積層始まりと積層終わりのカバーシートのいずれの共通添加元素濃度を大きくするか定めておき、測定によって2層のカバー層のうち濃度の大きい方が特定されれば、第1カバー層13aと第2カバー層13bとを判別できるようになる。
【0032】
さらに具体的には、第1カバー層13aおよび第2カバー層13bのうち、いずれか一方のカバー層の共通添加元素濃度を、主成分セラミックを100mol%とした場合に1モル%以下とする。他方のカバー層には、当該共通添加元素を添加しないか、当該一方のカバー層よりも低濃度となるように当該共通添加元素を添加する。それにより、第1カバー層13aおよび第2カバー層13bにおいて、共通添加元素濃度が主成分セラミックを100mol%とした場合に1mol%以下となる。したがって、誘電体層11に共通添加元素が拡散して誘電体層11の主成分セラミックのドナー、アクセプタまたは添加剤として作用したとしても、誘電体層11の特性への影響は限定的となる。したがって、積層セラミックコンデンサ100の特性変化を抑制することができる。
【0033】
次に、第1カバー層13aと第2カバー層13bとの間での当該共通添加元素濃度差が、LA-ICP-MS(レーザアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法)、μ-XRF(微小領域蛍光X線分析法)、SIMS(二次イオン質量分析法)、EPMA(電子線マイクロアナライザ)等の表面微小部・微量分析装置で5回以上測定した場合の標準偏差の2倍以上となるようにしておく。それにより、測定誤差の影響を抑制しつつ、第1カバー層13aの当該共通添加元素の濃度および第2カバー層13bの当該共通添加元素の濃度のうちどちらが高濃度であるかを検出できるようになる。したがって、積層始めの第1カバー層13aと積層終わりの第2カバー層13bとを判別できるようになる。
【0034】
なお、共通添加元素の濃度差測定については、1つのサンプルについて、第1カバー層13aにおける共通添加元素濃度を5回測定し、続いて第2カバー層13bにおける共通添加元素濃度を5回測定し、それぞれの平均値を差し引くことで共通添加元素の濃度差を得ることができる。この濃度差の標準偏差は、5回測定した表裏それぞれの共通添加元素濃度の標準偏差を二乗して和をとり、平方根をとることで得ることができる。このようにして測定された濃度差の標準偏差を測定した場合に、各測定された濃度差が当該標準偏差の2倍以上となっている。
【0035】
従来は、数時間をかけて積層セラミックコンデンサを研磨し、内部構造を観察・判別することで、各カバー層を判別していた。これに対して、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100では、上述したLA-ICP-MSなどの表面微小部・微量分析装置を用いることで、10msec程度の高速で測定を行なうことが可能である。これにより、不良解析の効率が向上し、製品の歩留まりを効率的に高めることができるようになる。また、誘電体層11が薄くなると、研磨ではより研磨痕の小さく少ない研磨が必要となるが、LA-ICP-MSなどの表面微小部・微量分析装置で分析することで、誘電体層11の厚さに関係なく、第1カバー層13aと第2カバー層13bとを判別することができるようになる。
【0036】
なお、第1カバー層13aおよび第2カバー層13bに添加する共通添加元素は、LA-ICP-MSなどの表面微小部・微量分析装置で測定可能であって、適用しようとする積層セラミックコンデンサの主要元素(ここでの主要元素とは、1mol%以上の濃度で添加される元素)として用いられていない元素であれば、何を用いてもよい。例えば、金属元素などを用いることができる。焼成の過程で蒸発を抑えられれば、ハロゲン元素などを用いることもできる。
【0037】
また、第1カバー層13aおよび第2カバー層13bに添加する共通添加元素を2種類以上としてもよい。各共通添加元素について濃度差を設けておいて、各共通添加元素の濃度差を測定することで、第1カバー層13aと第2カバー層13bとを判別することができる。2種類以上の添加元素濃度差の測定結果を用いることができるため、測定精度が向上する。
【0038】
なお、第1カバー層13aおよび第2カバー層13bの主成分セラミックがペロブスカイト構造を有していれば、添加元素濃度は、当該主成分セラミックのBサイト元素を100mol%とした場合のmol%のことである。例えば、当該主成分セラミックがチタン酸バリウムであれば、添加元素濃度は、チタンを100mol%とした場合のmol%のことである。
【0039】
第1カバー層13aおよび第2カバー層13bにおける共通添加元素濃度が大きいと、積層セラミックコンデンサ100の特性変化が大きくなるおそれがある。本実施形態においては、第1カバー層13aおよび第2カバー層13bにおける共通添加元素濃度は、0.1mol%以下であることが好ましく、0.05mol%以下であることがより好ましい。
【0040】
一方、第1カバー層13aの共通添加元素濃度および第2カバー層13bの共通添加元素濃度のうち大きい方の共通添加元素濃度が小さ過ぎると、当該共通添加元素濃度について高い測定精度が得られないおそれがある。そこで、当該大きい方の共通添加元素濃度に下限を設けることが好ましい。本実施形態においては、当該大きい方の共通添加元素濃度0.001mol%以上であることが好ましく、0.01mol%以上であることがより好ましい。
【0041】
第1カバー層13aと第2カバー層13bとの間の共通添加元素濃度差が小さいと、高い測定精度が得られないおそれがある。そこで、共通添加元素濃度差に下限を設けることが好ましい。例えば、共通添加元素濃度差は、標準偏差の3倍以上であることが好ましく、6倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましい。
【0042】
また、第1カバー層13aの共通添加元素濃度および第2カバー層13bの共通添加元素濃度のうち大きい方の共通添加元素濃度に対して、共通添加元素濃度差が小さいと、濃度差が検出できないおそれがある。そこで、当該大きい方の共通添加元素濃度に対する共通添加元素濃度差の比率に下限を設けることが好ましい。例えば、当該比率は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。
【0043】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図4は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0044】
(原料粉末作製工程)
誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABO3の粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiO3は、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiO3は、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0045】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Mg(マグネシウム),Mn(マンガン),V(バナジウム),Cr(クロム),希土類元素(Y(イットリウム),Sm(サマリウム),Eu(ユウロピウム),Gd(ガドリニウム),Tb(テルビウム),Dy(ジスプロシウム),Ho(ホルミウム),Er(エルビウム),Tm(ツリウム)およびYb(イッテルビウム))の酸化物、並びに、Co(コバルト),Ni(ニッケル),Li(リチウム),B(ホウ素),Na(ナトリウム),K(カリウム)およびSi(ケイ素)の酸化物もしくはガラスが挙げられる。
【0046】
例えば、セラミック原料粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料を調製する。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体材料が得られる。
【0047】
次に、第1カバー層13aおよび第2カバー層13bを形成するためのカバー材料を用意する。カバー材料の主成分セラミックとして、上記誘電体材料と同様のものを用いることができる。ただし、第1カバー層13a用のカバー材料と、第2カバー層13b用のカバー材料との間で、共通添加元素に濃度差を設けておく。
【0048】
(積層工程)
次に、誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に誘電体グリーンシート51を塗工して乾燥させる。また、第1カバー層13a用のカバー材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に第1カバーシート54aを塗工して乾燥させる。また、第2カバー層13b用のカバー材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に第2カバーシート54bを塗工して乾燥させる。
【0049】
次に、
図5(a)で例示するように、誘電体グリーンシート51の表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、内部電極層用の第1パターン52を配置する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。次に、誘電体グリーンシート51上において、第1パターン52が印刷されていない周辺領域に逆パターンペーストを印刷することで第2パターン53を配置し、第1パターン52との段差を埋める。逆パターンペーストは、誘電体グリーンシート51と同じ成分であってもよく、添加化合物が異なっていてもよい。
【0050】
次に、
図6で例示するように、第1カバーシート54aを所定数(例えば1~10層)だけ積層する。次に、
図5(b)で例示するように、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、誘電体グリーンシート51、第1パターン52および第2パターン53を積層していく。例えば、誘電体グリーンシート51の積層数を100~500層とする。
【0051】
次に、
図6で例示するように、積層された誘電体グリーンシート51の上に第2カバーシート54bを所定数(例えば1~10層)だけ積層して熱圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットする。その後に、外部電極20a,20bとなる金属導電ペーストを、カットした積層体の両側面にディップ法等で塗布して乾燥させる。これにより、セラミック積層体が得られる。
【0052】
(焼成工程)
このようにして得られたセラミック積層体を、N2雰囲気で脱バインダ処理した後に外部電極20a,20bの下地層となる金属ペーストをディップ法で塗布し、酸素分圧10-12~10-9atmの還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、積層セラミックコンデンサ100が得られる。
【0053】
(再酸化処理工程)
その後、N2ガス雰囲気中で600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0054】
(めっき処理工程)
その後、外部電極20a,20bの下地層上に、めっき処理により、Cu,Ni,Sn等の金属コーティングを行う。以上の工程により、積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0055】
本実施形態に係る製造方法においては、焼成前の第1カバーシート54aおよび第2カバーシート54bに、共通添加元素を添加するか、第1カバーシート54aおよび第2カバーシート54bのいずれか一方のみに当該添加元素を添加しておく。また、第1カバーシート54aの焼成によって得られる第1カバー層13aおよび第2カバーシート54bの焼成によって得られる第2カバー層13bにおける共通添加元素の濃度が主成分セラミックに対して1モル%以下であって、焼成後の第1カバー層13aと第2カバー層13bとの間の当該共通添加元素濃度差が、表面微小部・微量分析装置で5回以上測定した場合の標準偏差の2倍以上となるように、焼成工程を行なう。この手法によれば、積層セラミックコンデンサ100の特性変化を抑制しつつ、積層始めの第1カバー層13aと積層終わりの第2カバー層13bとを判別することができるようになる。
【0056】
なお、上記各実施形態においては、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、バリスタやサーミスタなどの、他の電子部品を用いてもよい。
【実施例0057】
以下、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0058】
(実施例1)
チタン酸バリウム粉末に対して添加物を添加し、ボールミルで十分に湿式混合粉砕して誘電体材料を得た。チタン酸バリウム粉末に対して添加物を添加し、ボールミルで十分に湿式混合粉砕してカバー材料を得た。
【0059】
カバー材料に、添加元素としてナトリウムを添加し、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合した。得られたスラリを使用して、基材上に第1カバーシートを塗工して乾燥させた。第1カバーシートにおいては、Tiを100mol%とした場合に、Naを0.006mol%とした。
【0060】
カバー材料に、添加元素としてNaを添加し、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合した。得られたスラリを使用して、基材上に第2カバーシートを塗工して乾燥させた。第2カバーシートにおいては、Tiを100mol%とした場合に、Naを0.009mol%とした。
【0061】
誘電体材料に、Naを添加せず、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合した。得られたスラリを使用して、基材上に誘電体グリーンシートを塗工して乾燥させた。得られた誘電体グリーンシートに、Niを主成分金属とする金属導電ペーストの電極パターンを印刷した。
【0062】
第1カバーシートを基材から剥離させて40層積層し、電極パターンが印刷された誘電体グリーンシートを基材から剥離させて電極パターンが交互にシフトするように500層積層し、第2カバーシートを基材から剥離させて40層積層し、圧着し、所定形状にカットし、電極パターンが露出する2端面にNiを主成分とする金属導電ペーストを塗布し、還元雰囲気中で焼成して焼結体を得た。これらのプロセスにおいて、外部から侵入するNaを十分除去した製造プロセスを用いた。
【0063】
(比較例1)
比較例1では、第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Naを0.007mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Naを0.008mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0064】
(比較例2)
比較例2では、第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Naを0.006mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Naを1.1mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0065】
実施例1、比較例1、および比較例2のそれぞれについて、第1カバーシートから得られた第1カバー層と、第2カバーシートから得られた第2カバー層との判別が可能であるか、LA-ICP-MSによる組成定量分析結果の差異から調べた。LA-ICP-MS装置として、Agilent社製のICP-MS装置Agilent7900にNWR/ESI社製のレーザーアブレーションシステムNWR213を接続した装置を用いた。第1カバー層と第2カバー層との間の共通添加元素の濃度差が、5回以上測定した場合の標準偏差の2倍以上になっていれば、判別可能「OK」であると判定し、そうでなければ判別不可「NG」と判定した。また、積層セラミックコンデンサとしての特性の良否を、絶縁抵抗を測定することによって調べた。絶縁抵抗が1GΩとなっていれば絶縁性が良好「OK」であると判定し、そうでなければ絶縁性が不良「NG」であると判定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0066】
比較例1では、絶縁性が良好「OK」と判定された。これは、いずれのカバーシートにおいても添加元素濃度が1mol%以下であったからであると考えられる。しかしながら、比較例1では、第1カバー層と第2カバー層との判別が不可「NG」と判定された。これは、LA-ICP-MSを用いた測定において測定誤差以上の濃度差が設けられていなかったからであると考えられる。
【0067】
比較例2では、第1カバー層と第2カバー層との判別が可能「OK」と判定された。これは、LA-ICP-MSを用いた測定において測定誤差以上の濃度差が設けられていたからであると考えられる。しかしながら、比較例2では、絶縁性が不良「NG」と判定された。これは、第2カバーシートにおける添加元素濃度が1mol%を超えたからであると考えられる。
【0068】
これらと比較して、実施例1では、第1カバー層と第2カバー層との判別が可能「OK」であると判定された。これは、LA-ICP-MSを用いた測定において測定誤差以上の濃度差が設けられていたからであると考えられる。次に、実施例1では、絶縁性が良好「OK」であると判定された。これは、いずれのカバーシートにおいても添加元素濃度が1mol%以下であったからであると考えられる。
【0069】
(実施例2)
実施例2では、添加元素としてNaを用いずに、Snを用いた。第1カバーシートには、Snを添加しなかった。すなわち、第1カバーシートにおいては、Tiを100mol%とした場合に、Snを0.000mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Snを0.017mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0070】
(実施例3)
実施例3では、添加元素としてNaを用いずに、Re(レニウム)を用いた。第1カバーシートには、Reを添加しなかった。すなわち、第1カバーシートにおいては、Tiを100mol%とした場合に、Reを0.00000mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Reを0.33284mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0071】
(実施例4)
実施例4では、添加元素としてNaを用いずにAgを用いた。第1カバーシートには、Agを添加しなかった。すなわち、第1カバーシートにおいては、Tiを100mol%とした場合に、Agを0.0000mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Agを0.0030mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0072】
(実施例5)
実施例5では、添加元素としてNaを用いずに、Bi(ビスマス)を用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Biを0.00006mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Biを0.00017mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0073】
(実施例6)
実施例6では、添加元素としてNaを用いずに、Auを用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Auを0.00001mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Auを0.00879mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0074】
(実施例7)
実施例7では、添加元素としてNaを用いずに、Zn(亜鉛)を用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Znを0.0185mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Znを0.0599mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0075】
(実施例8)
実施例8では、添加元素としてNaを用いずに、Ptを用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Ptを0.0017mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Ptを0.0072mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0076】
実施例2~8のそれぞれについても、実施例1および比較例1,2と同様の試験および同様の基準を用いて、第1カバー層と第2カバー層との判別が可能であるか否か、絶縁性が良好であるか否かを判定した。結果を表2に示す。実施例2~8でも、第1カバー層と第2カバー層との判別が可能「OK」であると判定された。これは、LA-ICP-MSを用いた測定において測定誤差以上の濃度差が設けられていたからであると考えられる。また、絶縁性が良好「OK」であると判定された。これは、いずれのカバーシートにおいても添加元素濃度が1mol%以下であったからであると考えられる。
【表2】
【0077】
(実施例9)
実施例9では、第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Naを0.006mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Naを0.025mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0078】
(実施例10)
実施例10では、添加元素としてNaを用いずに、Dyを用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Dyを0.53mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Dyを0.76mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0079】
(実施例11)
実施例11では、添加元素としてNaを用いずに、W(タングステン)を用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Wを0.0010mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Wを0.0044mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0080】
(実施例12)
実施例12では、添加元素としてNaを用いずに、Mnを用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Mnを0.13mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Mnを0.17mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0081】
(実施例13)
実施例13では、添加元素としてNaを用いずに、Vを用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Vを0.07mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Vを0.11mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0082】
(実施例14)
実施例14では、添加元素としてNaを用いずに、Mgを用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Mgを0.05mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Mgを0.07mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0083】
(実施例15)
実施例15では、添加元素としてNaを用いずに、Mo(モリブデン)を用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Moを0.02mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Moを0.13mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0084】
(実施例16)
実施例16では、添加元素としてNaを用いずに、Siを用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Siを0.14mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Siを0.22mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0085】
(実施例17)
実施例17では、添加元素としてNaを用いずに、Bを用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Bを0.018mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Bを0.025mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0086】
(実施例18)
実施例18では、添加元素としてNaを用いずに、Niを用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Niを0.25mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Niを0.54mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0087】
(実施例19)
実施例19では、添加元素としてNaを用いずに、Zr(ジルコニウム)を用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Zrを0.23mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Zrを0.44mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0088】
(実施例20)
実施例20では、添加元素としてNaを用いずに、Al(アルミニウム)を用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Alを0.010mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Alを0.133mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0089】
(実施例21)
実施例21では、添加元素としてNaを用いずに、Yを用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Yを0.012mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Yを0.030mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0090】
(実施例22)
実施例22では、添加元素としてNaを用いずに、Sr(ストロンチウム)を用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Srを0.011mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Srを0.015mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0091】
(実施例23)
実施例23では、添加元素としてNaを用いずに、Hf(ハフニウム)を用いた。第1カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Hfを0.0029mol%とした。第2カバーシートにおいて、Tiを100mol%とした場合に、Hfを0.0056mol%とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0092】
実施例9~23のそれぞれについても、実施例1および比較例1,2と同様の試験および同様の基準を用いて、第1カバー層と第2カバー層との判別が可能であるか否か、絶縁性が良好であるか否かを判定した。結果を表3に示す。実施例9~23でも、第1カバー層と第2カバー層との判別が可能「OK」であると判定された。これは、LA-ICP-MSを用いた測定において測定誤差以上の濃度差が設けられていたからであると考えられる。また、絶縁性が良好「OK」であると判定された。これは、いずれのカバーシートにおいても添加元素濃度が1mol%以下であったからであると考えられる。
【表3】
【0093】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。