(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154901
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】徘徊検出システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20221005BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058169
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西口 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】西田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌太
(72)【発明者】
【氏名】片岡 夏海
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086CA09
5C086CB26
5C086DA07
5C086DA14
5C086EA41
5C086EA45
5C086FA01
5C086FA11
5C086GA01
5C086GA04
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA07
5C087AA31
5C087BB74
5C087DD03
5C087DD20
5C087EE02
5C087EE07
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG01
5C087GG08
5C087GG10
5C087GG66
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、入居者の夜間の徘徊を検出すること。
【解決手段】徘徊検出システム(1)は、介護施設の廊下(100)に設置された少なくとも1つのマイク(3)からの信号により夜間に音が検知された場合に、位置検出手段(4,5)により検出されたスタッフの位置情報に基づいて、検知音を集音したマイクの設置場所を含む確認可能エリア(121,123,124)におけるスタッフの有無を判定するスタッフ判定手段と、スタッフ判定手段により確認可能エリアにスタッフが居ないと判定された場合に、検知音から抽出される特徴量の変動パターンに基づいて、検知音の音源が人の足音か否かを判定する足音判定手段とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
介護施設の入居者の夜間の徘徊を検出する徘徊検出システムであって、
前記介護施設の廊下に設置された少なくとも1つのマイクと、
前記介護施設内におけるスタッフの位置を検出するための位置検出手段と、
前記マイクからの信号により夜間に音が検知された場合に、前記位置検出手段により検出されたスタッフの位置情報に基づいて、検知音を集音した前記マイクの設置場所を含む確認可能エリアにおけるスタッフの有無を判定するスタッフ判定手段と、
前記スタッフ判定手段により前記確認可能エリアにスタッフが居ないと判定された場合に、前記検知音から抽出される特徴量の変動パターンに基づいて、前記検知音の音源が人の足音か否かを判定する足音判定手段と、
前記足音判定手段により前記音源が人の足音と判定された場合に、入居者の徘徊の可能性を報知する報知手段とを備える、徘徊検出システム。
【請求項2】
前記マイクは、前記廊下を視認性の観点で区画した各エリアに設けられており、
前記複数のマイクそれぞれの設置場所を特定するための設置場所情報と、前記各設置場所が属するエリアを特定するためのエリア情報とを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記複数のマイクのうち前記検知音を集音した前記マイクの設置場所を音源場所として特定するとともに、特定した音源場所が含まれるエリアを前記確認可能エリアとして判別するエリア特定手段とをさらに備える、請求項1に記載の徘徊検出システム。
【請求項3】
前記足音判定手段は、前記特徴量の変動パターンが略一定の周期で連続するパターンであり、かつ、前記エリア特定手段により特定された音源場所が順次移動していることが検出された場合に、前記音源が人の足音であると判定する、請求項2に記載の徘徊検出システム。
【請求項4】
前記足音判定手段により前記音源が人の足音ではないと判定された場合に、前記エリア特定手段により特定された音源場所の分散状況に応じて、前記検知音の音源が前記介護施設の外部の音か否かを判定する外部音判定手段をさらに備え、
前記報知手段は、前記外部音判定手段により外部の音ではないと判定された場合に、異常発生の可能性を報知する、請求項2または3に記載の徘徊検出システム。
【請求項5】
前記位置検出手段は、前記介護施設に設置された電波発信機と、前記介護施設のスタッフが保持し、前記電波発信機からの電波を受信する電波受信機とを含む、請求項1~4のいずれかに記載の徘徊検出システム。
【請求項6】
前記マイクが夜間に集音した環境音のデータを予め記憶する環境音データベースと、
前記環境音データベースに記憶されたデータに基づいて、前記マイクが集音した音から環境音を除去するノイズ除去手段とをさらに備える、請求項1~5のいずれかに記載の徘徊検出システム。
【請求項7】
介護施設の入居者の夜間の徘徊を検出するための徘徊検出プログラムであって、
夜間に、前記介護施設の廊下に設置された少なくとも1つのマイクからの信号により音が検知されたか否かを判定するステップと、
夜間に音が検知された場合に、検知音を集音した前記マイクの設置場所を含む確認可能エリアにおけるスタッフの有無を判定するステップと、
前記確認可能エリアにスタッフが居ないと判定された場合に、前記検知音から抽出される特徴量の変動パターンに基づいて、前記検知音の音源が人の足音か否かを判定するステップと、
前記音源が人の足音と判定された場合に、入居者の徘徊の可能性を報知するステップとをコンピュータに実行させる、徘徊検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徘徊検出システムおよびプログラムに関し、特に、介護施設の入居者の夜間の徘徊を検出するための徘徊検出システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
老人ホーム等の介護施設において、入居者である高齢者の徘徊を検出するシステムが従来から提案されている。
【0003】
たとえば特開2018-106369号公報(特許文献1)には、入居者の着衣に識別標識を取り付けておき、識別標識からの着用者識別子を示す信号を受信することにより、着用者の徘徊を検出する徘徊検出システムが開示されている。
【0004】
また、特開2019-139340号公報(特許文献2)には、入居者が無線発信機を携帯していない状態でも徘徊を検出できるようにするために、撮影装置により顔画像認識を行って入居者の徘徊を検出する徘徊検出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-106369号公報
【特許文献2】特開2019-139340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2では、徘徊している入居者個人を特定するため、大掛かりなシステム構成となっている。そのため、既存の介護施設においてこのようなシステムを構築することは困難であり、より簡易に入居者の徘徊を検出する技術が求められていた。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構成で、入居者の夜間の徘徊を検出することのできる徘徊検出システムおよびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う徘徊検出システムは、介護施設の入居者の夜間の徘徊を検出する徘徊検出システムであって、介護施設の廊下に設置された少なくとも1つのマイクと、介護施設内におけるスタッフの位置を検出するための位置検出手段と、マイクからの信号により夜間に音が検知された場合に、位置検出手段により検出されたスタッフの位置情報に基づいて、検知音を集音したマイクの設置場所を含む確認可能エリアにおけるスタッフの有無を判定するスタッフ判定手段と、スタッフ判定手段により確認可能エリアにスタッフが居ないと判定された場合に、検知音から抽出される特徴量の変動パターンに基づいて、検知音の音源が人の足音か否かを判定する足音判定手段と、足音判定手段により音源が人の足音と判定された場合に、入居者の徘徊の可能性を報知する報知手段とを備える。
【0009】
好ましくは、マイクは、廊下を視認性の観点で区画した各エリアに設けられている。この場合、徘徊検出システムは、複数のマイクそれぞれの設置場所を特定するための設置場所情報と、各設置場所が属するエリアを特定するためのエリア情報とを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された情報に基づいて、複数のマイクのうち検知音を集音したマイクの設置場所を音源場所として特定するとともに、特定した音源場所が含まれるエリアを確認可能エリアとして判別するエリア特定手段とをさらに備える。
【0010】
好ましくは、足音判定手段は、特徴量の変動パターンが略一定の周期で連続するパターンであり、かつ、エリア特定手段により特定された音源場所が順次移動していることが検出された場合に、音源が人の足音であると判定する。
【0011】
足音判定手段により音源が人の足音ではないと判定された場合に、エリア特定手段により特定された音源場所の分散状況に応じて、検知音の音源が介護施設の外部の音か否かを判定する外部音判定手段をさらに備えてもよい。この場合、報知手段は、外部音判定手段により外部の音ではないと判定された場合に、異常発生の可能性を報知することが望ましい。
【0012】
好ましくは、位置検出手段は、介護施設に設置された電波発信機と、介護施設のスタッフが保持し、電波発信機からの電波を受信する電波受信機とを含む。
【0013】
より好ましくは、徘徊検出システムは、マイクが夜間に集音した環境音のデータを予め記憶する環境音データベースと、環境音データベースに記憶されたデータに基づいて、マイクが集音した音から環境音を除去するノイズ除去手段とをさらに備える。
【0014】
この発明の他の局面に従う徘徊検出プログラムは、介護施設の入居者の夜間の徘徊を検出するための徘徊検出プログラムであって、夜間に、介護施設の廊下に設置された少なくとも1つのマイクからの信号により音が検知されたか否かを判定するステップと、夜間に音が検知された場合に、検知音を集音したマイクの設置場所を含む確認可能エリアにおけるスタッフの有無を判定するステップと、確認可能エリアにスタッフが居ないと判定された場合に、検知音から抽出される特徴量の変動パターンに基づいて、検知音の音源が人の足音か否かを判定するステップと、音源が人の足音と判定された場合に、入居者の徘徊の可能性を報知するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構成で、入居者の夜間の徘徊を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る徘徊検出システムの概要を模式的に示す図であり、(A)は、介護施設の廊下に、入居者およびスタッフが居る状況を模式的に示す図であり、(B)は、介護施設の廊下を含むフロアの平面図である。
【
図2】(A)は、本発明の実施の形態に係る徘徊検出システムの概略構成を示すブロック図であり、(B)は、本発明の実施の形態に係る徘徊検出システムのサーバの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態における徘徊検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
<徘徊検出システムの概要>
図1および
図2(A)を参照して、本実施の形態に係る徘徊検出システム1の概要について説明する。
図1(A)は、介護施設の廊下100に、入居者およびスタッフが居る状況を模式的に示す図であり、(B)は、介護施設の廊下100を含むフロアの平面図である。
図2(A)は、徘徊検出システム1の概略構成を示すブロック図である。なお、「介護施設」とは、高齢者や認知症患者が入居する施設に限らず、スタッフが常駐する高齢者向け住宅などを含むものとする。
【0019】
図1(B)に示されるように、介護施設では、1フロアに複数の居室111が配置されている。本実施の形態では、一例として、廊下100は、居室111に面した廊下101と、廊下101に交差し、かつ、共有空間112に面した廊下102とを含む。共有空間112は、典型的には、浴室およびトイレなどの衛生室を含む。
【0020】
徘徊検出システム1は、夜間に、入居者が居室111から廊下100(101)に出て徘徊をしている可能性があることを、音により検出する。そのため、
図1(A)および(B)に模式的に示すように、廊下100には、複数のマイク3が設けられている。マイク3が検知した信号は、サーバ2に送信される。
【0021】
また、徘徊検出システム1は、介護施設内におけるスタッフの位置を検出するための位置検出手段を備えている。位置検出手段は、ビーコン発信機(電波発信機)4と、スタッフが保持し、ビーコン発信機4からの電波を受信する受信機(電波受信機)5とを含む。サーバ2は、受信機5との通信により、受信機5の電波受信状況を検出できる。
【0022】
廊下100には、複数のビーコン発信機4が設けられている。複数のビーコン発信機4は、廊下100を視認性の観点で区画したエリア121,122それぞれに設けられている。本実施の形態では、エリア121は、紙面左右方向に直線状に延びる廊下101に相当し、エリア122は、紙面上下方向に直線状に延びる廊下102に相当している。
図1(B)に示されるように、廊下101の端と廊下102の中央とがT字状に交差するような構成の場合、確実性を考慮すると、廊下102に相当するエリア122が、中央(交差点)を境としてさらに2つのエリア123,124に分けられてもよい。
【0023】
本実施の形態では、廊下101に相当する第1エリア121、廊下102を分割した第2エリア123および第3エリア124のそれぞれに、ビーコン発信機4が設置されている。つまり、各エリア121,123,124に、ビーコン発信機4が設置されている。また、各エリア121,123,124に、複数のマイク3が設けられている。なお、面積が小さいエリアには、1つのマイク3だけが設けられていてもよい。
【0024】
各エリア121,123,124に設置されるマイク3は、小型マイクであり、複数のマイク3が、廊下100の長手方向に沿ってたとえば2m間隔で配置されることが望ましい。複数のマイク3および複数のビーコン発信機4は、たとえば廊下100の天井に設置される。
【0025】
受信機5は、夜間に勤務する各スタッフが保持している。受信機5は、たとえばスマートフォンなどの携帯端末50により実現されてもよい。この場合、
図2(A)に示されるように、サーバ2は、ネットワークを介して複数の携帯端末50と接続されている。また、サーバ2は、ネットワークを介して、スタッフルームに設置されている端末(以下「スタッフルーム端末」という)6と接続されていてもよい。
【0026】
<サーバの構成>
図2(B)を参照して、徘徊検出システム1のサーバ2の構成について説明する。
図2(B)は、サーバ2の構成を示すブロック図である。
【0027】
サーバ2は、ハードウェア構成として、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部22と、計時動作を行う計時部23と、ネットワークを介して携帯端末50およびスタッフルーム端末6等の通信機器と通信する通信部24と、不揮発性の記憶装置25と、外部機器からの信号を入出力する入出力部27とを備えている。
【0028】
なお、携帯端末50およびスタッフルーム端末6は、ハードウェア構成として、典型的には、各種演算処理を実行するCPUなどのプロセッサと、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部と、各種情報を表示する表示部と、ネットワークを介して他の通信機器と通信する通信部とを備えている(図示せず)。また、振動を発生させる振動発生部、音を発生させる音発生部、光を発生させる光発生部、などをさらに備えていてもよい(図示せず)。
【0029】
サーバ2は、主な機能構成として、環境音学習部71と、徘徊検出部72と、報知処理部73と、環境音DB(データベース)25aと、エリア情報記憶部25bとを含む。
【0030】
環境音学習部71は、事前に、複数のマイク3が夜間に集音した環境音を学習し、学習した環境音のデータを環境音DB25aに記憶する。つまり、環境音DB25aには、マイク3が夜間に集音した環境音のデータが記憶される。
【0031】
エリア情報記憶部25bには、複数のマイク3それぞれの設置場所を特定するための設置場所情報と、各設置場所が属するエリア121,123,124を特定するためのエリア情報とが記憶されている。具体的には、エリア情報記憶部25bは、マイク3ごとに付与されたマイクIDに対応付けて、その設置場所を示す場所識別データ、および、その設置場所が属するエリアを示すエリア識別データ(エリアNo.)を記憶する。
【0032】
たとえば、廊下101に設置されたマイク3であれば、そのマイク3が廊下101の端から何番目に配置されているかを示す場所識別データと、その設置場所が属する第1エリア121のエリアNo.とが、そのマイク3を識別するマイクIDに対応付けて記憶される。なお、マイクIDと場所識別データとが1対1で記憶され、エリアNo.と、そのエリアに属する複数の場所識別データとが関連付けて記憶されていてもよい。
【0033】
徘徊検出部72は、夜間に、入出力部27を介して複数のマイク3からの信号を取得して、入居者の徘徊を検出する処理を実行する。具体的には、まず、マイク3からの信号により夜間に音が検知された場合に、携帯端末50の電波受信状況から得られるスタッフの位置情報と、エリア情報記憶部25bに記憶された情報とに基づいて、「確認可能エリア」におけるスタッフの有無を判定する。
【0034】
ここで、「確認可能エリア」とは、検知音を集音したマイク3の設置場所を含むエリアであり、上述のエリア121,122,124のいずれか1つである。
【0035】
徘徊検出部72は、「確認可能エリア」にスタッフが居ないと判定された場合に、検知音から抽出される特徴量の変動パターンに基づいて、検知音の音源が人の足音か否かを判定する。
【0036】
このように、徘徊検出部72は、入居者個人を特定せず、“スタッフか入居者か”、“足音か物音か”の判別だけを行う。介護施設という限られた人しか入れない施設においては、スタッフが少ない夜間に、認知症による徘徊者の有無が分かれば十分であるからである。
【0037】
徘徊検出部72は、環境音DB25aに記憶された環境音のデータに基づいて、常時、マイク3が集音した音から環境音(ノイズ)を除去することが望ましい。これにより、徘徊の誤判定を防止できる。なお、徘徊検出部72の具体的な処理については後述する。
【0038】
報知処理部73は、徘徊検出部72の検出結果に応じて、入居者の徘徊の可能性などを報知する。報知処理部73は、通信部24を介して、スタッフが保持する携帯端末50、および、スタッフルーム端末6の少なくとも一方に、アラート信号を送信する。このように、報知処理部73および通信部24は、入居者の徘徊の可能性などを報知するための報知手段として機能する。
【0039】
なお、報知処理部73が実行する報知方法は、端末50,6にアラート信号を送信する形態に限定されず、たとえば、スタッフルームにある非常用ランプを点灯させたり、スタッフルームのスピーカーから音声を出力するようにしてもよい。
【0040】
上述の環境音学習部71、徘徊検出部72、および報知処理部73の機能は、サーバ2のCPU21がソフトウェアを実行することにより実現される。環境音DB25aおよびエリア情報記憶部25bは、(共通または別個の)不揮発性の記憶装置25により実現される。なお、上記の機能部のうちの少なくとも一つはハードウェアにより実現されてもよい。
【0041】
<徘徊検出システムの動作>
図3は、本実施の形態における徘徊検出処理を示すフローチャートである。徘徊検出処理は、サーバ2のCPU21が、記憶部22に予め記憶されたプログラム(徘徊検出プログラム)を読み出して実行することにより実現される。なお、この処理は、夜間(たとえば午後9時~翌朝6時など)に実行される。
【0042】
図3を参照して、サーバ2の徘徊検出部72は、廊下100に設置された複数のマイク3からの信号(音信号)を常時入力し(ステップS2)、環境音DB25aに記憶された環境音データを用いて、環境音であるノイズを除去する(ステップS4)。
【0043】
ノイズ除去後に、少なくとも1つのマイク3により何らかの音が検知された場合、すなわち検知音ありと判断された場合に(ステップS6にてYES)、ステップS8に進む。一方、検知音なしと判定された場合には(ステップS6にてNO)、ステップS2に戻る。なお、ステップS8へ進んだ後も、音信号入力(ステップS2)およびノイズ除去(ステップS4)の処理は、並行して行われているものとする。
【0044】
ステップS8において、徘徊検出部72は、エリア情報記憶部25bに記憶された情報に基づいて、複数のマイク3のうち検知音を集音したマイク3の設置場所を音源場所として特定する。具体的には、エリア情報記憶部25bにおいて、検知音を集音したマイク3のマイクIDに対応する場所識別データを検索することにより、音源場所(たとえば、廊下101の端から何番目か、など)を特定する。
【0045】
また、エリア情報記憶部25bに記憶された情報に基づいて、特定した音源場所が含まれるエリアを、「確認可能エリア」として判別(特定)する(ステップS10)。具体的には、エリア情報記憶部25bにおいて、上記ステップS8で検索した場所識別データに関連付けられたエリアNo.を検索することにより、音源場所が含まれるエリア(たとえば、第1エリア121)を特定し、このエリアを「確認可能エリア」として判別する。
【0046】
続いて、徘徊検出部72は、各携帯端末50の位置情報に基づいて、「確認可能エリア」内にスタッフが居るか否かを判定する(ステップS12)。具体的には、「確認可能エリア」に設置されたビーコン発信機4からの電波を受信した携帯端末50があるか否かを判定する。より具体的には、「確認可能エリア」が
図1(B)に示すエリア121であると仮定すると、複数の携帯端末50のうち、エリア121に設置されたビーコン発信機4の信号を受信している携帯端末50があるか否かを判定する。
【0047】
「確認可能エリア」内にスタッフが居ると判定された場合(ステップS12にてYES)、すなわち、検知音を集音したマイク3の設置エリアと、いずれかの携帯端末50が信号を受信しているビーコン発信機4の設置エリアとが同じである場合には、次のステップに進むことなく、最初のステップS2に戻る。このような場合、仮に、検出音が入居者の徘徊音であったとしても、その入居者が徘徊しているエリアに居るスタッフによってその入居者を視認可能であり、安全性が確保できるためである。
【0048】
一方、「確認可能エリア」内にスタッフが居ないと判定された場合(ステップS12にてNO)、すなわち、検知音を集音したマイク3の設置エリアにあるビーコン発信機4からの信号を受信した携帯端末50がない場合には、スタッフが見えないエリアで音が検知されており、入居者の安全性を確保できないため、ステップS14に進む。
【0049】
ステップS14において、徘徊検出部72は、ステップS6で得られた検知音を解析し、特徴量を抽出(算出)する。検知音の解析による特徴量の算出は、FFT(高速フーリエ変換)およびスペクトログラム解析などの公知の技術を用いて実現可能である。
【0050】
続いて、検知音から抽出した特徴量の変動パターンに基づいて、検知音の音源が人の足音か否かを判定する(ステップS16)。具体的には、徘徊検出部72は、特徴量の変動パターンが略一定の周期で連続するパターンであり、かつ、ステップS8で特定された音源場所が、時間の経過に伴って順次移動していることが検出された場合に、音源が人の足音であると判定する。人が徘徊する際には、「パタパタパタ・・・」と規則的な音が、移動しなら発生するからである。このように、本実施の形態では、ルールベースで人の足音を判定する。
【0051】
音源が人の足音であると判定された場合には(ステップS16にてYES)、報知処理部73が、アラートを発報して、入居者の徘徊の可能性を報知する(ステップS18)。具体的には、たとえば携帯端末50およびスタッフルーム端末6の表示部に「徘徊可能性あり」を示すポップアップ画面を表示させる。あるいは、これらの端末50,6に、振動または音を発生させてもよい。これにより、各スタッフは、廊下100を常時監視していなくても、入居者が徘徊している可能性があることを把握できる。
【0052】
本実施の形態では、音源が人の足音ではないと判定された場合に(ステップS16にてNO)、ステップS8で特定された音源場所の分散状況に応じて、検知音の音源が介護施設の外部の音か否かを判定する(ステップS20)。具体的には、音源場所が分散している場合(集音したマイク3の設置場所が離れている場合)には、雷や救急車などの外部の音であると判定する。これに対し、音源場所が1箇所または隣り合った数台である場合には、外部の音ではないと判定する。
【0053】
判定の結果、外部音であると判定された場合には(ステップS20にてYES)、アラートを発報することなく、ステップS2に戻り、上記処理を繰り返す。判定の結果、外部音ではないと判定された場合には(ステップS20にてNO)、入居者の転倒・転落などの事故、あるいは、機器の故障などの異常が発生している可能性があるため、アラートを発報して、異常発生の可能性を報知する(ステップS22)。なお、検出音の特徴量が連続せず、瞬間的な衝撃音が検出された場合にのみ、異常音と判定してもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態に係る徘徊検出システム1によれば、介護施設の廊下100に複数のマイク3およびビーコン発信機4を設置するだけの簡易な構成で、入居者の夜間の徘徊を検出することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、入居者個人を特定しないため、入居者ごとの足音の学習を行う必要がない。また、検出音から抽出される特徴量の変動パターンに基づいて、人の足音かどうかを判定するため、履物や床材の違いによる音の学習を行う必要もない。したがって、本実施の形態によれば、足音の膨大な学習をすることなく、環境音の学習を行うだけで、入居者の徘徊を検出することができる。
【0056】
また、入居者自身が信号発信機などを持つ必要がないので、認知症による夜間の徘徊を精度良く検出できる。また、監視カメラ等を設置する必要がないので、入居者のプライバシーを保護することもできる。
【0057】
したがって、本実施の形態に係る徘徊検出システム1を、既存の介護施設に容易に適用することができる。
【0058】
<変形例>
本実施の形態では、スタッフの位置を検出するための位置検出手段が、ビーコン発信機4を含む構成としたが、このような例に限定されない。
【0059】
また、廊下100には複数のマイク3が設けられていることが望ましいものの、マイク3の個数は1個であってもよい。この場合においても、1個のマイク3が集音した検出音から抽出される特徴量の変動パターンとともに、1個のマイク3が集音した検出音の音量レベルの増減度合などを判定することにより、入居者が廊下100を徘徊していることを検出可能である。
【0060】
また、サーバ2により実行される徘徊検出処理を、プログラムとして提供してもよい。このようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0061】
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0062】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 徘徊検出システム、2 サーバ、3 マイク、4 ビーコン発信機、5 受信機、6 スタッフルーム端末、25a 環境音DB、25b エリア情報記憶部、50 携帯端末、71 環境音学習部、72 徘徊検出部、73 報知処理部、100,101,102 廊下、121,122,123,124 エリア。