(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154902
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】緊急事態検出システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20221005BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058170
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仙谷 幸法
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086BA04
5C086CA06
5C086CA25
5C086DA15
5C086FA06
5C086FA11
5C086GA13
5C087AA02
5C087AA11
5C087AA37
5C087DD24
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG80
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】利用者のプライバシーを保護しながら、利用者の体調不良による緊急事態の発生を検出すること。
【解決手段】緊急事態検出システム(1)は、複数人により利用されるサウナ室の内部空間を指向するように取り付けられたミリ波センサ(3)と、ミリ波センサの検知信号に基づいて、サウナ室内の利用者が複数人か一人かを判定する人数判定手段(61)と、人数判定手段によりサウナ室内の利用者が一人になったことを判定された場合に、ミリ波センサの検知信号に基づいて、利用者のバイタル情報および姿勢を測定する測定手段(62)と、測定手段により測定されたバイタル情報および姿勢の少なくとも一方が正常範囲外となった場合に、利用者が体調不良と推定する推定手段(63)と、推定手段により体調不良が推定されたことに応じて、緊急事態の発生を報知する報知手段(64)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数人により利用されるサウナ室を有する入浴施設における緊急事態検出システムであって、
前記サウナ室の内部空間を指向するように取り付けられたミリ波センサと、
前記ミリ波センサの検知信号に基づいて、前記サウナ室内の利用者が複数人か一人かを判定する人数判定手段と、
前記人数判定手段により前記サウナ室内の利用者が一人になったことを判定された場合に、前記ミリ波センサの検知信号に基づいて、利用者のバイタル情報および姿勢を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定されたバイタル情報および姿勢の少なくとも一方が正常範囲外となった場合に、利用者が体調不良と推定する推定手段と、
前記推定手段により体調不良が推定されたことに応じて、緊急事態の発生を報知する報知手段とを備える、緊急事態検出システム。
【請求項2】
前記報知手段は、前記人数判定手段により前記サウナ室内の利用者が一人になったことが判定された場合に、緊急事態発生のリスクがあることを報知する、請求項1に記載の緊急事態検出システム。
【請求項3】
前記測定手段は、前記人数判定手段により前記サウナ室内の利用者が一人になったことが判定されてから所定時間経過した場合に、バイタル情報および姿勢の測定を開始する、請求項1または2に記載の緊急事態検出システム。
【請求項4】
前記推定手段により利用者の体調不良が推定された場合に、前記サウナ室の空気環境の調整制御を行う調整制御手段をさらに備える、請求項1~3のいずれかに記載の緊急事態検出システム。
【請求項5】
前記バイタル情報は、心拍および呼吸の少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれかに記載の緊急事態検出システム。
【請求項6】
前記サウナ室を取り囲む壁の少なくとも一部が透光性を有する透光部材により構成されており、
前記ミリ波センサは、前記透光部材の裏面に取り付けられている、請求項1~5のいずれかに記載の緊急事態検出システム。
【請求項7】
複数人により利用されるサウナ室を有する入浴施設において適用される緊急事態検出プログラムであって、
前記サウナ室の内部空間を指向するように取り付けられたミリ波センサからの検知信号に基づいて、前記サウナ室内の利用者が複数人か一人かを判定するステップと、
前記サウナ室内の利用者が一人になったことを判定された場合に、前記ミリ波センサの検知信号に基づいて、利用者のバイタル情報および姿勢を測定するステップと、
測定されたバイタル情報および姿勢の少なくとも一方が正常範囲外となった場合に、利用者が体調不良と推定するステップと、
体調不良が推定されたことに応じて、緊急事態の発生を報知するステップとをコンピュータに実行させる、緊急事態検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急事態検出システムおよびプログラムに関し、特に、複数人により利用されるサウナ室を有する入浴施設における緊急事態検出システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所「日本のサウナ実態調査2020」によると、月4回以上のサウナ浴をする層が推計324万人、月1回以上が推計651.2万人、年1回以上が約1,768.1万人、累計約2,761万人と報告されている。サウナは、健康、美肌・美容、ダイエット、リラックスなど様々な効果が期待されるため、多くの愛好者が存在するが、既往症・飲酒等の原因で体調不良となるケースがある。また、最悪な場合には、意識不明となり病院へ運ばれ、死亡するケースもある。
【0003】
家庭用の浴室などでは、高齢者の見守り等を目的として、入浴者の異常(体調不良)を検出する技術が従来から提案されている。たとえば特開2019-174092号公報(特許文献1)では、浴室に赤外線カメラ等を設置して、撮影画像により入浴者の異常を判定することが開示されている。
【0004】
また、特開2020-123447号公報(特許文献2)および実用新案登録第3181084号公報(特許文献3)等に示されるように、非接触でバイタル情報を取得する技術が従来から提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-174092号公報
【特許文献2】特開2020-123447号公報
【特許文献3】実用新案登録第3181084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サウナ室には、通常、非常用ボタンが設置されている。しかし、一人でサウナを利用している場合に体調不良となり、発作で倒れた場合などにおいては、非常用ボタンを押すことができない可能性がある。そのような場合には、スタッフや他の利用者により発見されるまでに時間が掛かり、利用者が重症化してしまうリスクが高まる。そのため、体調不良であっても非常用ボタンを押すことができないような状況、すなわち緊急事態の発生を自動的に検出できる技術が望まれている。
【0007】
また、上述のように、家庭用の浴室では、監視カメラにより入浴者を監視することが可能であるが、入浴設備のサウナ室は不特定多数の人が利用するため、プライバシー保護の観点から監視カメラを設置することはできない。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、利用者のプライバシーを保護しながら、利用者の体調不良による緊急事態の発生を検出することのできる緊急事態検出システムおよびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に従う緊急事態検出システムは、複数人により利用されるサウナ室を有する入浴施設における緊急事態検出システムであって、サウナ室の内部空間を指向するように取り付けられたミリ波センサと、ミリ波センサの検知信号に基づいて、サウナ室内の利用者が複数人か一人かを判定する人数判定手段と、人数判定手段によりサウナ室内の利用者が一人になったことを判定された場合に、ミリ波センサの検知信号に基づいて、利用者のバイタル情報および姿勢を測定する測定手段と、測定手段により測定されたバイタル情報および姿勢の少なくとも一方が正常範囲外となった場合に、利用者が体調不良と推定する推定手段と、推定手段により体調不良が推定されたことに応じて、緊急事態の発生を報知する報知手段とを備える。
【0010】
好ましくは、報知手段は、人数判定手段によりサウナ室内の利用者が一人になったことが判定された場合に、緊急事態発生のリスクがあることを報知する。
【0011】
測定手段は、人数判定手段によりサウナ室内の利用者が一人になったことが判定されてから所定時間経過した場合に、バイタル情報および姿勢の測定を開始してもよい。
【0012】
緊急事態検出システムは、推定手段により利用者の体調不良が推定された場合に、サウナ室の空気環境の調整制御を行う調整制御手段をさらに備えることが望ましい。
【0013】
好ましくは、バイタル情報は、心拍および呼吸の少なくとも一方を含む。
【0014】
好ましくは、サウナ室を取り囲む壁の少なくとも一部が透光性を有する透光部材により構成されており、ミリ波センサは、透光部材の裏面に取り付けられている。
【0015】
この発明の他の局面に従う緊急事態検出プログラムは、複数人により利用されるサウナ室を有する入浴施設において適用される緊急事態検出プログラムであって、サウナ室の内部空間を指向するように取り付けられたミリ波センサからの検知信号に基づいて、サウナ室内の利用者が複数人か一人かを判定するステップと、サウナ室内の利用者が一人になったことを判定された場合に、ミリ波センサの検知信号に基づいて、利用者のバイタル情報および姿勢を測定するステップと、測定されたバイタル情報および姿勢の少なくとも一方が正常範囲外となった場合に、利用者が体調不良と推定するステップと、体調不良が推定されたことに応じて、緊急事態の発生を報知するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ミリ波センサによって、サウナ室内で一人になった利用者の体調不良を推定するため、利用者のプライバシーを保護しながら、緊急事態の発生を検出することができる。また、緊急事態の発生を報知する報知手段を備えているため、体調不良となった利用者の発見の遅れによる重症化のリスクを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る緊急事態検出システムの概要を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る緊急事態検出システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態における緊急事態検出処理を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態における緊急事態検出システムの一連の動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
<緊急事態検出システムの概要>
図1は、本実施の形態に係る緊急事態検出システム1の概要を示す模式図である。
図1を参照して、緊急事態検出システム1は、複数人により利用されるサウナ室100を有する入浴施設に適用され、サウナ室100の利用者の体調不良による緊急事態の発生を検出する。
【0020】
サウナ室100は、周囲が壁110で取り囲まれており、内部にサウナ設備101が設けられている。壁110は、典型的には木質材料により構成されている。壁110の一部は、網入りガラスなどの透光性を有する透光部材120により構成されている。透光部材120は、テレビ130設置用の窓であってもよい。なお、壁110には、通常のサウナ室と同様に、非常用ボタン140が設置されていてもよい。
【0021】
本実施の形態では、サウナ室100内部空間を指向するようにミリ波センサ3が取り付けられている。「ミリ波」とは周波数帯が30GHz~300GHzの電磁波である。ミリ波センサ3は、直線(直進)性が強いため耐環境性に優れていること、短波長(1~10mm)であるため高精度で動きを検出できること、アンテナの小型化が可能であること、を主な特徴としている。
【0022】
ミリ波センサ3の電波は、木材、ガラス、プラスチックなど、金属以外の部材であれば、センシング部が遮蔽されていても、遮蔽物を透過できる。そのため、本実施の形態では、ミリ波センサ3が、サウナ室100の内部ではなく、サウナ室100の壁110の裏側(壁110の外部)に、サウナ室100内部空間を指向するように取り付けられている。具体的には、ミリ波センサ3が、テレビ130が設置された透光部材120の裏側に取り付けられている。これにより、ミリ波センサ3が直接高温に晒されることがないので、サウナ室100の内部を適切にセンシングすることができる。なお、ミリ波センサ3は、サウナ室100の天井の裏側に取り付けられてもよい。
【0023】
本実施の形態に係る緊急事態検出システム1は、このようなミリ波センサ3を1つ備えることにより、ミリ波センサ3の検知信号を解析し、サウナ室100の利用者の人数、および、(一人の)利用者のバイタル情報および姿勢を測定することができる。バイタル情報および姿勢はそれぞれ、利用者の体調を特定するための指標である。また、このように、利用者のバイタル情報および姿勢を測定することにより、利用者が体調不良か否かを検出(推定)することができる。これにより、利用者のプライバシーを保護しながら、緊急事態の発生を検出することができる。
【0024】
また、緊急事態検出システム1は、利用者の体調不良が検出された場合には、アラートを発報して、スタッフルームや出勤しているスタッフに、緊急事態の発生を報知する。これにより、スタッフは、サウナ室100内の状況を常時監視しなくても、緊急事態が発生したこと(またはその可能性が高いこと)を把握することができる。したがって、体調不良となった利用者の発見の遅れによる重症化のリスクを軽減することができる。
【0025】
また、緊急事態検出システム1は、利用者の体調不良が検出された場合には、サウナ設備101の電源をオフにすることで、サウナ室100の空気環境の調整制御を行う。これにより、スタッフが到着するまでの短時間に、重症化が進行するリスクを低減することができる。
【0026】
上述したミリ波センサ3の検知信号の解析、アラートの発報処理、および、サウナ室100の空気環境の調整制御は、制御装置2によって実行される。
【0027】
<緊急事態検出システムの機能構成>
図2は、本実施の形態に係る緊急事態検出システム1の機能構成を示すブロック図である。緊急事態検出システム1は、その機能として、人数判定部61と、測定部62と、推定部63と、報知処理部64と、調整制御部65とを含む。これらの機能ブロックは、制御装置2に含まれる。
【0028】
図2には、制御装置2のハードウェア構成も示されている。制御装置2は、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部22と、計時動作を行う計時部23と、ネットワークを介して端末4,5等の通信機器と通信する通信部24とを備えている。なお、図示はしていないが、制御装置2は、ミリ波センサ3からの信号を入力するとともに、サウナ設備101に制御信号を出力する入出力I/F(インターフェイス)を備えているものとする。制御装置2は、たとえば汎用コンピュータにより実現される。
【0029】
人数判定部61は、ミリ波センサ3の検知信号に基づいてサウナ室100内の利用者の人数を測定し、利用者が複数人か一人かを判定する。ミリ波センサ3を用いた人数の測定は、公知の解析技術により実行可能である。このような解析技術はAIを利用したものであってもよい。
【0030】
測定部62は、人数判定部61によりサウナ室100内の利用者が一人になったことを判定された場合に、ミリ波センサ3の検知信号に基づいて、バイタル情報および姿勢を測定する。バイタル情報は、心拍および呼吸の少なくとも一方を含み、両方を含むことが望ましい。つまり、測定部62は、心拍、呼吸、および姿勢を測定することが望ましい。ミリ波センサ3を用いたこれらの指標の測定もまた、たとえばAIを利用した公知の解析技術により実行可能である。なお、バイタル情報には、心拍および呼吸以外の指標が含まれてもよい。
【0031】
なお、一般的にサウナ室100を長時間利用することにより、体調が悪化する傾向にあるため、測定部62は、人数判定部61によりサウナ室100内の利用者が一人になったことが判定されてから所定時間経過した場合に、測定処理を開始してもよい。所定時間は、たとえば3分~15分であり、本実施の形態では一例として10分である。このようにすることで、CPUの処理負荷を軽減することができる。
【0032】
推定部63は、測定部62により測定されたバイタル情報および姿勢のそれぞれが予め定められた正常範囲内か否かを判定し、正常範囲内であれば体調は正常であると推定する。つまり、推定部63は、心拍、呼吸、および姿勢の全てが正常範囲内であれば、体調は正常と推定する。これに対し、バイタル情報および姿勢の少なくとも一方が正常範囲外となった場合に、利用者が体調不良と推定する。つまり、心拍、呼吸、および姿勢の少なくとも1つが正常範囲外であれば、体調不良(体調悪化)と推定する。なお、バイタル情報の正常範囲は、上限として予め定めた閾値および下限として予め定めた閾値により特定される。姿勢の正常範囲は、たとえば事前に測定した多数の姿勢データを学習させることにより設定可能である。
【0033】
報知処理部64は、人数判定部61によりサウナ室100の利用者が一人になったことが判定された場合に「一人利用開始」を通知し、緊急事態発生のリスクがあることを報知する。また、一人利用開始後に、推定部63により利用者の体調不良が推定されたことに応じてアラートを発報して、緊急事態の発生を報知する。
【0034】
報知処理部64は、具体的には、通信部24を介して、スタッフルームの端末(以下「スタッフルーム端末」という)4、および、出勤しているスタッフの端末(以下「スタッフ端末」という)5の少なくとも一方に、各状況を表わす信号を送信する。すなわち、報知処理部64および通信部24は、緊急事態の発生、および、そのリスクを報知するための報知手段として機能する。
【0035】
なお、報知処理部64が実行する報知方法は、端末4,5に各状況を表わす信号を送信する形態に限定されず、たとえば、スタッフルームにある非常用ランプを点灯させたり、スタッフルームのスピーカーから音声を出力するようにしてもよい。また、報知処理部64は、一人利用開始となった時点で緊急事態発生のリスクを報知することが望ましいものの、このようなリスクの報知処理は省略してもよい。
【0036】
調整制御部65は、推定部63により利用者の体調不良が推定された場合に、サウナ室100の空気環境の調整制御を行う。具体的には、上述のように、サウナ設備101の電源をオフにして、サウナ室100の温度を低下させることが望ましい。
【0037】
なお、スタッフルーム端末4は、たとえばタブレットにより実現される。スタッフ端末5は、たとえばスマートフォンにより実現される。スタッフルーム端末4およびスタッフ端末5は、ハードウェア構成として、典型的には、各種演算処理を実行するCPUなどのプロセッサと、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部と、各種情報を表示する表示部と、振動を発生させる振動発生部と、音を発生させる音発生部と、ネットワークを介して他の通信機器と通信する通信部とを備えている。また、光を発生させる光発生部をさらに備えていてもよい。
【0038】
<緊急事態検出システムの動作>
図3は、本実施の形態における緊急事態検出処理を示すフローチャートである。緊急事態検出処理は、制御装置2のCPU21が、記憶部22に予め記憶されたプログラム(緊急事態検出プログラム)を読み出して実行することにより実現される。なお、この処理は、サウナ室100を利用可能な時間帯に実行される。
【0039】
図3を参照して、はじめに、人数判定部61が、ミリ波センサ3の検知信号に基づいて、サウナ室100内の利用者が複数人か一人かを判定する(ステップS2)。サウナ室100内に複数人が居ると判定された場合には(ステップS4にてYES)、仮に利用者のうちの一人が体調不良となったとしても、他の利用者がたとえば非常用ボタン140を押下することによりスタッフに異常を知らせることができるため、次のステップに進むことなく、人数判定を継続する。
【0040】
一方、サウナ室100内の利用者が一人になったこと(一人であること)を判定された場合に、報知処理部64は、通信部24を介して、スタッフルーム端末4およびスタッフ端末5に、「一人利用開始」を通知し、緊急事態の発生リスクがあることを報知する(ステップS6)。具体的には、たとえばスタッフルーム端末4およびスタッフ端末5の表示部に「一人利用開始」を示すポップアップ画面を表示させる。あるいは、これらの端末4,5に、振動または音を発生させてもよい。これにより、各スタッフは、サウナ室100の状況が要注意の状況であることを把握できる。
【0041】
その後、人数判定部61による判定人数が一人である状態が10分経過した場合に(ステップS8にてYES)、ステップS12に進み、測定部62による測定処理が開始される。一方、一人利用開始と判定されてから10分以内に利用人数が変化した場合、すなわち利用人数が0人または複数人となった場合には(ステップS8にてNO、ステップS10にてYES)、ステップS12に進むことなく、本処理を終了する。なお、本処理は、サウナ室100を利用可能な時間帯であれば、繰り返し実行されるものとする。
【0042】
ステップS12では、測定部62が、ミリ波センサ3の検知信号に基づいて、利用者の心拍、呼吸、および姿勢を測定し、測定結果を推定部63に出力する。推定部63は、(1)心拍が正常範囲内か、(2)呼吸が正常範囲内か、(3)姿勢が正常範囲内か、を判定する(ステップS14)。これら(1)~(3)の条件の全てが正常範囲内である場合、サウナ室100の利用人数が変化するまでの間、この判定処理が繰り返し実行される(ステップS14にてYES、ステップS16にてNO)。
【0043】
推定部63は、上記の判定処理において、(1)~(3)の条件のうち少なくとも1つが正常範囲外であると判定した場合に(ステップS14にてNO)、ステップS18に進む。具体的には、(1)心拍が1分間に60回未満または100回以上であれば、心拍が正常範囲外と判定する。(2)呼吸が1分間に10回以下または20回以上であれば、呼吸が正常範囲外と判定する。(3)姿勢が一定ではなくバタツキがあるか、うずくまった状態である場合に、姿勢が異常(正常範囲外)と判別する。
【0044】
ステップS18では、報知処理部64が、通信部24を介して、スタッフルーム端末4およびスタッフ端末5にアラートを発報し、緊急事態の発生を報知する。具体的には、たとえばスタッフルーム端末4およびスタッフ端末5の表示部に「緊急事態発生」を示すポップアップ画面を表示させる。あるいは、これらの端末4,5に、振動または音を発生させてもよい。これにより、各スタッフは、サウナ室100にいる利用者が体調不良となった可能性が高く、緊急事態が発生していることを把握できるので、現場へ急行し、利用者の状態を即座に確認することができる。したがって、発見の遅れによる利用者の重症化リスクを軽減することができる。
【0045】
また、サウナ室100の壁110の外側(たとえば出入口付近)に非常用ランプやブザーを設け、サウナ室100の近くにいる人に対して「アラートライト」や「緊急アラート音」で緊急事態の発生を報知してもよい。これにより、サウナ室100内部の利用者を早期に救助できる可能性が高まるので、重症化を防止することができる。
【0046】
なお、推定部63は、正常範囲外となった指標の種類(条件)に応じて、緊急度合を異ならせてもよい。たとえば、正常範囲外となった指標が心拍である場合を「レベル1」とし、正常範囲外となった指標が呼吸または姿勢である場合を、レベル1よりも緊急度合が高い「レベル2」としてもよい。この場合、報知処理部64は、レベル1であれば「警告アラート」を発報し、レベル2であれば「緊急アラート」を発報する。これにより、スタッフは緊急度合を知ることができるので、緊急度合に応じて適切な対応をとることができる。たとえば、「緊急アラート」を受けた場合には、現場確認の前に救急車を要請することも可能である。
【0047】
上記のような報知処理部64による報知処理と並行して、調整制御部65は、サウナ設備101の電源をオフにする(ステップS20)。これにより、サウナ室100の温度が低下するので、70度以上の高温状態が維持される場合に比べて利用者の重症化が進行するリスクを低減することができる。
【0048】
なお、調整制御部65は、さらに、サウナ室100に備えられた換気装置(図示せず)による換気を促進してもよい。また、上記した緊急度合が「レベル2」であるような場合には、サウナ室100の出入口の扉(図示せず)を自動的に開放する制御を行ってもよい。これにより、より確実に利用者の重症化リスクを軽減できる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態によれば、サウナ室100に1つのミリ波センサ3を設けるだけで、利用者の心拍、呼吸、および姿勢を測定することができるので、利用者のプライバシーを保護することができる。また、心拍、呼吸、および姿勢のうちの少なくとも一つが正常範囲外と判定された場合にアラートを発報するので、利用者が体調不良で身動きがとれない場合や意識を失った場合など、非常用ボタン140を押下できない状況であったとしても、スタッフに緊急事態の発生を知らせることができる。したがって、発見の遅れによる利用者の重症化リスクを軽減することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、サウナ室100の利用者が一人になった時点で、緊急事態の発生リスクを報知するので、スタッフは、緊急事態が発生する可能性があることを早めに知ることができる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、心拍、呼吸、および姿勢のうちの少なくとも一つが正常範囲外と判定された場合に、サウナ室100の空気環境が調整されるので、利用者の重症化が進行するリスクを低減することができる。
【0052】
上記した緊急事態検出システム1の一連の動作が、
図4に模式的に示されている。なお、
図4では、制御装置2を「AIサーバー」と記載している。
【0053】
なお、本実施の形態では、サウナ室100に一つのミリ波センサ3が設けられる例について説明したが、サウナ室100の形状等に応じて、複数のミリ波センサ3が設けられてもよい。
【0054】
また、制御装置2により実行される緊急事態検出処理を、プログラムとして提供してもよい。このようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0055】
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0056】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 緊急事態検出システム、2 制御装置、3 ミリ波センサ、4 スタッフルーム端末、5 スタッフ端末、61 人数判定部、62 測定部、63 推定部、64 報知処理部、65 調整制御部、100 サウナ室、101 サウナ設備、110 壁、120 透光部材、140 非常用ボタン。