(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154905
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】洗濯キット及び洗剤
(51)【国際特許分類】
D06F 1/00 20060101AFI20221005BHJP
D06F 17/00 20060101ALI20221005BHJP
D06F 33/30 20200101ALI20221005BHJP
【FI】
D06F1/00
D06F17/00
D06F33/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058173
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】521135050
【氏名又は名称】有限会社泉屋
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】吉本 和正
(72)【発明者】
【氏名】吉本 三厳
【テーマコード(参考)】
3B167
3B168
【Fターム(参考)】
3B167AA40
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3B168JM01
(57)【要約】
【課題】タンパク質分解酵素の特性を活かし、洗濯物のタンパク質汚れを手軽かつ十分に落とすことができる洗濯キット及び洗剤を提供すること。
【解決手段】洗濯物を内部に収容して漬け置き振り洗いするための洗濯ボトルと、タンパク質分解酵素を含む、漬け置き振り洗い用洗剤とを備えた洗濯キットである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を内部に収容して漬け置き振り洗いするための洗濯ボトルと、
タンパク質分解酵素を含む、漬け置き振り洗い用洗剤と、
を備えたことを特徴とする洗濯キット。
【請求項2】
前記漬け置き振り洗い用洗剤が、さらに、界面活性剤と、安定化剤、柔軟化剤、香料、及び抗菌剤から選ばれる少なくとも1つの助剤とを含むことを特徴とする請求項1記載の洗濯キット。
【請求項3】
前記漬け置き振り洗い用洗剤中、タンパク質分解酵素が5~8質量%含まれていることを特徴とする請求項1又は2記載の洗濯キット。
【請求項4】
前記洗濯ボトルの容量が、300~800mlであることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の洗濯キット。
【請求項5】
前記洗濯物が、マスクであることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の洗濯キット。
【請求項6】
タンパク質分解酵素を含み、漬け置き振り洗いに用いられること特徴とする漬け置き振り洗い用洗剤。
【請求項7】
さらに、界面活性剤と、安定化剤、柔軟化剤、香料、及び抗菌剤から選ばれる少なくとも1つの助剤とを含むことを特徴とする請求項6記載の漬け置き振り洗い用洗剤。
【請求項8】
前記タンパク質分解酵素が5~8質量%含まれていることを特徴とする請求項6又は7記載の漬け置き振り洗い用洗剤。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか記載の洗濯キットを用いる洗濯方法であって、
洗濯ボトルに、洗濯物、漬け置き振り洗い用洗剤、及びお湯を収容する洗剤収容工程と、
前記洗剤収容工程の後に、前記洗濯ボトルをお湯の中に投入し、前記洗濯ボトルを所定時間保持する漬け置き保温工程と、
前記漬け置き保温工程の後に、前記洗濯ボトルを振って振り洗いする振り洗い工程と、
を有することを特徴とする洗濯方法。
【請求項10】
前記洗濯ボトルに収容するお湯の温度、及び洗濯ボトルを投入するお湯の温度が、30~60℃であることを特徴とする請求項9記載の洗濯方法。
【請求項11】
前記浸け置き保温工程における保持時間が、10~180分であることを特徴とする請求項9又は10記載の洗濯方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯キット及び洗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
布製品などに付着するタンパク質汚れには、皮膚からでる老廃物や血液などの人間に起因するものや、食べ物や飲み物に起因するものの主に2種類がある。これらのタンパク質汚れが付着しやすいものには、マスク、下着類、ベビー用品、靴下、台所用品などの衛生面に関わるものが多い。これらタンパク質汚れは、雑菌の繁殖や悪臭の発生の原因であり、これらを防ぐためにも、タンパク質汚れを十分に取り除くことが望まれていた。
【0003】
また、従来より、タンパク質などの特定の物質を分解する酵素の特性を活かしたシミ抜きなどの洗濯方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらの酵素を用いた洗濯方法は、クリーニング店などの専門店において特殊染み抜きとして、専用の装置を用いて、特定の温度や濃度の条件下で行う必要があるため、容易に行えるものではなかった。
【0004】
一方、一般的な洗濯洗剤は、界面活性剤や石鹸の効果で汚れを浮かして洗浄するものであるため、これらが主力の有効成分である。また、製品によってはタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)等の酵素類を含む洗剤もあるが、これらはあくまで助剤という位置付けであり、タンパク質分解酵素の特性に適した温度や濃度等の条件を考慮すると、一般的な家庭で行う洗濯方法では、タンパク質分解という点において目を見張るような作用や効果が得られるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、タンパク質分解酵素の特性を活かし、洗濯物のタンパク質汚れを手軽かつ十分に落とすことができる洗濯キット及び洗剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、タンパク質汚れを手軽かつ十分に落とすべく、タンパク質分解酵素の特性を活かした洗濯を行う方法について検討する中で、例えば、お湯を張ったバケツの中に洗剤と洗濯物を入れて漬け込むという従来の方法で漬け置き洗いをする場合、お湯の量を増やせば温度が安定して効果は安定しやすいが、洗剤濃度を保つために洗剤を多く消費するため、日常の洗濯に使用するにはコスト面で現実的ではなくなる。一方、お湯の量を減らせば洗剤を減らすことがでるが、すぐに温度が下がってしまい、効果が薄れてしまう、というジレンマに直面した。
【0008】
本発明者は、さらに検討を進めた結果、タンパク質分解酵素を含む洗剤と、この洗剤を入れて漬け置き振り洗いする比較的小型の洗濯ボトルとを備える洗濯キットとし、この洗濯キットを用いて洗濯することにより、上記ジレンマを解消することができ、タンパク質分解酵素の特性を活かしてタンパク質汚れを手軽かつ十分に落とすことができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]洗濯物を内部に収容して漬け置き振り洗いするための洗濯ボトルと、
タンパク質分解酵素を含む、漬け置き振り洗い用洗剤と、
を備えたことを特徴とする洗濯キット。
[2]前記漬け置き振り洗い用洗剤が、さらに、界面活性剤と、安定化剤、柔軟化剤、香料、及び抗菌剤から選ばれる少なくとも1つの助剤とを含むことを特徴とする上記[1]記載の洗濯キット。
[3]前記漬け置き振り洗い用洗剤中、タンパク質分解酵素が5~8質量%含まれていることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の洗濯キット。
[4]前記洗濯ボトルの容量が、300~800mlであることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか記載の洗濯キット。
[5]前記洗濯物が、マスクであることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか記載の洗濯キット。
【0010】
[6]タンパク質分解酵素を含み、漬け置き振り洗いに用いられること特徴とする漬け置き振り洗い用洗剤。
[7]さらに、界面活性剤と、安定化剤、柔軟化剤、香料、及び抗菌剤から選ばれる少なくとも1つの助剤とを含むことを特徴とする上記[6]記載の漬け置き振り洗い用洗剤。
[8]前記タンパク質分解酵素が5~8質量%含まれていることを特徴とする上記[6]又は[7]記載の漬け置き振り洗い用洗剤。
【0011】
[9]上記[1]~[5]のいずれか記載の洗濯キットを用いる洗濯方法であって、
洗濯ボトルに、洗濯物、漬け置き振り洗い用洗剤、及びお湯を収容する洗剤収容工程と、
前記洗剤収容工程の後に、前記洗濯ボトルをお湯の中に投入し、前記洗濯ボトルを所定時間保持する漬け置き保温工程と、
前記漬け置き保温工程の後に、前記洗濯ボトルを振って振り洗いする振り洗い工程と、
を有することを特徴とする洗濯方法。
[10]前記洗濯ボトルに収容するお湯の温度、及び洗濯ボトルを投入するお湯の温度が、30~60℃であることを特徴とする上記[9]記載の洗濯方法。
[11]前記浸け置き保温工程における保持時間が、10~180分であることを特徴とする上記[9]又は[10]記載の洗濯方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗濯キットによれば、タンパク質分解酵素の特性を活かして、洗濯物のタンパク質汚れを手軽かつ十分に落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における洗濯キットの洗濯ボトルの説明図である。
【
図2】実施例における漬け置き保温工程の概要を示す写真である。
【
図3】実施例に用いた洗濯する前の汚染布を示した写真であり、写真の左側(A)が実施例1で用いた汚染布を示し、写真の右側(B)が比較例1で用いた汚染布を示す。
【
図4】実施例に用いた洗濯した後の汚染布を示した写真であり、写真の左側(A)が実施例1で用いた汚染布を示し、写真の右側(B)が比較例1で用いた汚染布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の洗濯キットは、洗濯物を内部に収容して漬け置き振り洗いするための洗濯ボトルと、タンパク質分解酵素を含む、漬け置き振り洗い用洗剤とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の洗濯キットは、洗濯物に付着したタンパク質汚れを手軽かつ十分に落とすことができる。また、本発明の洗濯キットを用いた洗濯は、複雑な機械や高度な技術を必要としないことから、クリーニング店などの専門店だけでなく、家庭でも容易に用いることができる。例えば、入浴の初期に、洗濯ボトルに、洗濯物、洗剤及びお湯を入れて、風呂の中に投入しておき、所定時間経過した入浴後期に、洗濯ボトルを振って振り洗いすることにより、効果的にタンパク質汚れを落とすことができる。
【0016】
本発明の洗濯キットを用いて洗濯する洗濯物としては、例えば、マスク、下着類、乳幼児用よだれかけ、布おむつ等の布製ベビー用品、靴下、布巾等の布製台所用品、ハンカチ等の洗濯ボトルに収容できる大きさのものを挙げることができる。
【0017】
[洗剤]
本発明の洗剤は、上記のようにタンパク質分解酵素を含み、漬け置き振り洗いに用いられる洗剤であり、液状であることが好ましい。ここで、漬け置き振り洗いとは、洗濯ボトルに、衣類などの洗濯物と、洗剤と、お湯とを収容し、所定時間漬け込んだ後に、洗濯ボトルを振る(振動を与える)ことで洗濯物を洗う方法である。
【0018】
洗剤に含まれる酵素は、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)である。これにより、衣類等の洗濯物に付着して通常の家庭用洗濯機では汚れが落ちにくいタンパク質の汚れを落とすことができる。洗剤中のタンパク質分解酵素の量としては、2~15質量%であることが好ましく、3~12質量%であることがより好ましく、4~10質量%であることがさらに好ましく、5~8質量%であることが特に好ましい。また、洗剤には、タンパク質分解酵素に加えて、セルラーゼ、リパーゼ、アミラーゼ等のその他の酵素が含まれていてもよい。
【0019】
洗剤は、上記タンパク質分解酵素に加えて、さらに、他の補助成分を含んでいることが好ましく、例えば、界面活性剤と、安定化剤、柔軟化剤、香料、抗菌剤から選ばれる少なくとも1つの助剤とを含むものが好ましい。
【0020】
界面活性剤は、一般的な洗濯洗剤に含まれる汚れを浮かして洗浄する洗浄成分としてではなく、衣類などの繊維やその繊維にタンパク質分解酵素をなじませる補助成分として含まれるものである。界面活性剤としては、特に制限されるものではなく、例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等を挙げることができ、発泡を抑える性質を有する点から非イオン界面活性剤が好ましい。具体的に、イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミンが好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが特に好ましい。
【0021】
安定化剤としては、一般的に酵素入り洗剤に用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ホウ素化合物、カルシウムイオン供給化合物、ヒドロキシ化合物、ギ酸等の公知の安定化剤を挙げることができる。
【0022】
柔軟化剤としては、一般的に洗剤に用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤を柔軟基剤とする公知の柔軟化剤を用いることができる。
【0023】
香料としては、一般的に洗剤に用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然香料、合成香料等の公知の香料を挙げることができる。
【0024】
抗菌剤としては、一般的に洗剤に用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、有機窒素硫黄系化合物、第4級アンモニウム系化合物、リン酸エステル系化合物等の有機系抗菌剤や、金属イオンを含有する無機系化合物等の無機系抗菌剤などの公知の抗菌剤を挙げることができる。これにより、雑菌の繁殖を抑えることができる。
【0025】
本発明の洗剤の液性としては、中性又は弱アルカリ性であることが好ましい。洗剤は、中性に近いほど、洗浄力が低く、肌への刺激が低くなり、アルカリ性に近いほど、洗浄力が高く、肌への刺激が高いものであるが、本発明の洗剤は、洗濯ボトルに入れて漬け置き振り洗いするものであることから、弱アルカリ性であることがより好ましい。
【0026】
また、本発明の洗剤は、ガスが発生しない成分配合であることが好ましい。これにより、洗濯ボトルからの液漏れや破裂を防止することができる。
【0027】
[洗濯ボトル]
洗濯ボトルは、洗濯物を内部に収容して漬け置き振り洗いするための容器である。洗濯ボトルの大きさとしては、振ることができる大きさであれば特に制限されるものではないが、手に持って振ることが可能な大きさであることが好ましく、さらに携帯可能な大きさであることが好ましい。洗濯ボトルの容量としては、例えば、200~1200ml程度が好ましく、250~1000ml程度がより好ましく、300~800ml程度がさらに好ましい。この範囲であれば、例えば、マスク、下着、靴下、乳幼児用よだれかけ、布おむつ、布巾、ハンカチ等の洗濯物を洗濯ボトルに1又は複数収容して洗濯することができる。また、洗濯ボトルは、透明であることが好ましい。これにより、収納した洗濯物を目視しながら洗うことができ、タンパク質汚れの落ち具合を確認することができる。
【0028】
次に、上述した洗濯キットを用いた洗濯方法について説明する。
本発明の洗濯方法は、洗濯ボトルに、洗濯物、漬け置き振り洗い用洗剤、及びお湯を収容する洗剤収容工程と、洗剤収容工程の後に、洗濯ボトルをお湯の中に投入し、洗濯ボトルを所定時間保持する漬け置き保温工程と、漬け置き保温工程の後に、洗濯ボトルを振って振り洗いする振り洗い工程と、を有することを特徴とする。各工程は、連続式又はバッチ式の機械で行ってもよいし、人の手により行われてもよい。
【0029】
本発明の洗濯方法は、上記工程以外の工程を有していてもよい。例えば、振り洗い工程の後に、洗濯ボトルから取り出した洗濯物を洗濯する後洗い工程を有することが好ましい。この後洗い工程における処理としては、例えば、通常の洗濯機を用いた洗濯を挙げることができる。また、振り洗い工程の後に、洗濯ボトルから取り出した洗濯物を水で濯ぐすすぎ洗い工程を有することが好ましい。
【0030】
本発明の洗濯方法によれば、タンパク質分解酵素の働きを十分に発揮させることができることから、洗濯物に付着したタンパク質等の汚れを十分に落とすことができる。また、タンパク質の汚れに起因する雑菌の繁殖や悪臭の発生を抑制することができる。また、バケツ等にお湯を入れて、洗剤と衣類を漬け込む従来の漬け置き洗いと比較して、お湯に対する洗剤の量が少なく、コストを抑えることができる。
【0031】
以下、本発明の洗濯方法について詳しく説明する。
<洗剤収容工程>
洗剤収容工程は、洗濯ボトルに、洗濯物、漬け置き振り洗い用洗剤、及びお湯を収容する工程である。洗濯物は、洗濯ボトルに収容できるものであれば特に制限されるものでなく、例えば、タンパク質の汚れが付着した布製品等を挙げることができる。洗濯ボトルに収容するお湯の温度としては、タンパク質分解酵素の至適温度を考慮して適宜設定することができ、30~60℃程度が好ましく、32~55℃程度がより好ましく、35~50℃程度がさらに好ましい。これにより、タンパク質分解酵素の特性をより発揮させることができる。なお、本工程を家庭で行う場合、風呂の湯を用いることができる。
【0032】
本工程をクリーニング工場などにおいて行う場合、複数の洗濯ボトルにそれぞれ、洗濯物、洗剤及びお湯を、手動又は機械を用いて投入することができる。また、本工程を家庭で行う場合、入浴初期に行うことができる。
【0033】
<漬け置き保温工程>
漬け置き保温工程は、洗剤収容工程の後に、洗濯ボトルをお湯の中に投入し、洗濯ボトルを所定時間保持する工程である。これにより、タンパク質分解酵素を活性化させて、洗濯物に付着したタンパク質を十分に分解することが可能となる。洗濯ボトルを投入するお湯の温度としては、温度や湿度など洗濯場所の環境に応じて適宜設定することができ、例えば、30~60℃程度が好ましく、32~55℃程度がより好ましく、35~50℃程度がさらに好ましい。保持時間としては、お湯の温度にもよるが、例えば、10~180分であり、15~90分が好ましく、20~60分がより好ましい。20~60分は、おおよそ入浴時間に相当することから、入浴初期に、洗濯ボトルをお湯の中に投入しておくことにより、入浴後期に本工程を終了して後述する振り洗い工程に移行することができる。
【0034】
<振り洗い工程>
振り洗い工程は、漬け置き保温工程の後に、洗濯ボトルを振って振り洗いする工程である。すなわち、洗濯ボトルを振る(振動を与える)ことにより、洗濯ボトルの内部で洗濯物が物理的に押されたり揉まれたりしてタンパク質汚れが除去される。この振り洗いは、手動で行うものであってもよいし、機械を用いて行うものであってもよい。機械を用いて行うものとしては、洗濯ボトルに振動を与える振動機などを挙げることができる。なお、この振り洗いは、洗濯ボトルをお湯の中から取り出して行ってもよいし、お湯の中で行ってもよい。
【0035】
<後洗い工程>
後洗い工程は、振り洗い工程の後に、洗濯ボトルから取り出した洗濯物を洗う工程である。本工程は、例えば、振り洗い工程の後に、洗濯物の汚れが残っている場合などに必要に応じて行う工程である。洗う方法としては、もみ洗い、押し洗い、つまみ洗い、たたき洗い等の公知の洗濯手法を用いることができる。また、洗濯機を利用した通常の洗濯を行ってもよい。
【0036】
<すすぎ洗い工程>
すすぎ洗い工程は、振り洗い工程の後に(後洗い工程を有する場合は後洗い工程の後に)、洗濯物を水ですすぐ工程である。すなわち、本工程は、振り洗い工程の後に、洗剤等を洗い流す工程である。
【実施例0037】
(実施例1)
[漂白性能の評価]
続いて、上記洗濯キットを用いて、シミの除去効果を明らかにするために、白地のガーゼ(木綿生地)をタンパク質である血液で汚した汚染布の漂白性能の評価を行った。
【0038】
具体的に、洗濯ボトルは、
図1に示すように、底部直径85mm、高さ160mmの透明なプラスチック製の容量500mlの蓋付容器を用いた。また、洗剤は、主剤としてタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)7質量%を含み、補助成分として、界面活性剤(25%ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)、安定化剤、柔軟化剤、ティーツリー精油、抗菌剤を含んだ液体洗剤を用いた。
【0039】
漂白実験に使用した汚染布は、以下の方法で作製した。綿100%の白色の2重ガーゼを縦5cm、横3cmの大きさに裁断し、血液を滴下して直径0.5cm程度の円形汚れを付着させた後、乾燥させた。
【0040】
具体的には、以下の手順で行った。
1.まず、洗濯ボトルに、汚染布と、1mlの洗剤と、40℃のお湯400mlとを収容した(洗剤収容工程)。
2.続いて、40℃のお湯を溜めたバケツに洗濯ボトルを投入し、洗濯ボトルを30分間保持した(
図2、漬け置き保温工程)。
3.続いて、バケツから洗濯ボトルを取り出し、洗濯ボトルを10~20秒間振って、振り洗いした(振り洗い工程)。
4.続いて、洗濯ボトルから汚染布を取り出し、軽く揉み洗いし(後洗い工程)、水で2回すすいだ(すすぎ洗い工程)。
【0041】
(比較例1)
比較例として、酵素を含まない家庭用洗濯洗剤を用いた以外は実施例1と同様にして、洗濯を行った。比較例1の家庭用洗濯洗剤は、界面活性剤(ノニオン、脂肪酸石鹸)、移染防止剤、抗菌剤、金属封鎖剤が含まれた洗剤である。
【0042】
得られた汚染布の漂白性能を確認した。
図3は、実施例に用いた洗濯する前の汚染布を示した写真であり、
図4は、実施例に用いた洗濯した後の汚染布を示した写真である。
図3及び
図4は、写真の左側(A)が実施例1で用いた汚染布を示し、写真の右側(B)が比較例1で用いた汚染布を示す。
【0043】
図4に示すように、本発明の洗濯キットを用いて洗濯した汚染布(実施例1)は、目視できない程度までシミを落とすことができ、臭いなどもしなかった。また、洗濯時に、洗濯ボトル内部で泡が少量しか発生することなく、洗濯ボトルからの洗浄液の液漏れや蓋を開ける際に洗浄液の噴出も見られなかった。
一方、酵素を含まない家庭用洗濯洗剤を用いて洗濯した汚染布(比較例1)は、血液のシミが残っており、かすかに臭いも残っていた。また、洗濯時に、洗濯ボトル内部で多くの泡が発生し、洗浄液の液漏れし、蓋を開ける際に洗浄液が勢いよく噴出した。