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特開2022-154907センサ装置、電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154907
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】センサ装置、電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
G01D5/245 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058175
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 直希
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA42
2F077NN02
2F077NN19
2F077PP14
2F077VV02
2F077VV21
2F077VV33
(57)【要約】
【課題】従動歯車の傾きを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】センサ装置は、主動歯車35と、複数の歯が形成された円盤状の第1歯部511と、第1歯部511における軸方向の両側に設けられた一対の第1軸部512とを有する第1従動歯車51と、第1従動歯車51の歯数と異なる複数の歯が形成された第2歯部521と、第2歯部521における軸方向の両側に設けられた一対の第2軸部522とを有する第2従動歯車52と、第1従動歯車51に対応して設けられた第1センサ55と、第2従動歯車52に対応して設けられた第2センサ56と、一対の第1軸部512それぞれに対応して設けられて第1従動歯車51に対して主動歯車35に近づく向きの力を付与する一対の第1腕部62と、一対の第2軸部522それぞれに対応して設けられて第2従動歯車52に対して主動歯車35に近づく向きの力を付与する一対の第2腕部63とを有する弾性体60と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に一体的に回転可能に設けられている主動歯車と、
外周部に前記主動歯車の歯と噛み合う複数の歯が形成された円盤状の第1歯部と、前記第1歯部における前記回転軸の軸方向の両側に設けられた一対の第1軸部とを有する第1従動歯車と、
外周部に前記主動歯車の歯と噛み合う、前記第1従動歯車の歯数と異なる複数の歯が形成された第2歯部と、前記第2歯部における前記軸方向の両側に設けられた一対の第2軸部とを有する第2従動歯車と、
前記第1従動歯車に対応して設けられた第1回転角センサと、
前記第2従動歯車に対応して設けられた第2回転角センサと、
前記一対の第1軸部それぞれに対応して設けられて前記第1従動歯車に対して前記主動歯車に近づく向きの力を付与する一対の第1腕部と、前記一対の第2軸部それぞれに対応して設けられて前記第2従動歯車に対して前記主動歯車に近づく向きの力を付与する一対の第2腕部と、を有する弾性体と、
を備えるセンサ装置。
【請求項2】
前記一対の第1腕部と連結された一対の第1連結部の形状と、前記一対の第2腕部と連結された一対の第2連結部の形状とが異なる、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記弾性体は、板ばねであり、板面が前記第1軸部及び前記第2軸部の外周面に接触する
請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を保持する保持部材をさらに備え、
前記弾性体は、前記一対の第1連結部及び前記一対の第2連結部にそれぞれ連結されている胴部を有し、
前記胴部は、前記保持部材に保持されている
請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記第1連結部の形状と、前記第2連結部の形状とが異なる、
請求項4に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記弾性体に対して、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車とは反対側に、前記弾性体を支持可能な支持部を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
少なくとも前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を保持する保持部材と、
前記保持部材が前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車の側から嵌め込まれるハウジングと、
をさらに備え、
前記弾性体が、前記ハウジングに備えられている、
請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項8】
ステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールの回転角度を検出する、請求項1~7のいずれか1項に記載のセンサ装置と、
を備える電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のステアリング装置には、ステアリングホイールの操舵角を検出するセンサ装置が設けられている。
例えば、特許文献1に記載されたセンサ装置は、以下のように構成されている。すなわち、センサ装置は、検出対象である回転軸に対して一体回転可能に設けられている主動歯車と、主動歯車の歯と噛み合う歯車部と、歯車部の側面から突出している軸部とを有するとともに、軸部に永久磁石が設けられている従動歯車とを備える。また、センサ装置は、従動歯車を主動歯車へ向けて付勢する付勢部材と、従動歯車及び付勢部材を支持する支持部材と、従動歯車の回転に基づき電気信号を生成する回転角センサと、軸部を回転可能に取り囲んでいる磁気シールドとを備える。
【0003】
付勢部材は、全体として略V字形状をなしている。付勢部材は、その中央部に複数回巻かれてなるコイル部が設けられているとともに、その両端部にはそれぞれ直線状に延びる腕部が設けられている。腕部は、磁気シールドにおける主動歯車と反対側の部位に当接している。そして、磁気シールドは、付勢部材の弾性力によって、主動歯車に近接する方向へ向けて常に付勢されている。これにより、磁気シールド内に摺動回転可能に支持されている軸部は、主動歯車に近接する方向へ向けて常に付勢されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-165870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたセンサ装置においては、従動歯車の軸部は、軸方向の1点が付勢部材の腕部により付勢されているのみであるため、主動歯車の回転軸心に対して、従動歯車の回転軸心が傾いてしまうおそれがある。
本発明は、従動歯車の傾きを抑制できるセンサ装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本開示について説明する。
本開示の1つの態様は、回転軸に一体的に回転可能に設けられている主動歯車と、外周部に前記主動歯車の歯と噛み合う複数の歯が形成された円盤状の第1歯部と、前記第1歯部における前記回転軸の軸方向の両側に設けられた一対の第1軸部とを有する第1従動歯車と、外周部に前記主動歯車の歯と噛み合う、前記第1従動歯車の歯数と異なる複数の歯が形成された第2歯部と、前記第2歯部における前記軸方向の両側に設けられた一対の第2軸部とを有する第2従動歯車と、前記第1従動歯車に対応して設けられた第1回転角センサと、前記第2従動歯車に対応して設けられた第2回転角センサと、前記一対の第1軸部それぞれに対応して設けられて前記第1従動歯車に対して前記主動歯車に近づく向きの力を付与する一対の第1腕部と、前記一対の第2軸部それぞれに対応して設けられて前記第2従動歯車に対して前記主動歯車に近づく向きの力を付与する一対の第2腕部と、を有する弾性体と、を備えるセンサ装置である。
ここで、前記一対の第1腕部と連結された一対の第1連結部の形状と、前記一対の第2腕部と連結された一対の第2連結部の形状とが異なっていても良い。
また、前記弾性体は、板ばねであり、板面が前記第1軸部及び前記第2軸部の外周面に接触しても良い。
また、少なくとも前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を保持する保持部材をさらに備え、前記弾性体は、前記一対の第1連結部及び前記一対の第2連結部にそれぞれ連結されている胴部を有し、前記胴部は、前記保持部材に保持されていても良い。
また、前記第1連結部の形状と、前記第2連結部の形状とが異なっていても良い。
また、前記弾性体に対して、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車とは反対側に、前記弾性体を支持可能な支持部を有していても良い。
また、少なくとも前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を保持する保持部材と、前記保持部材が前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車の側から嵌め込まれるハウジングと、をさらに備え、前記弾性体が、前記ハウジングに備えられていても良い。
本開示の他の態様は、ステアリングホイールと、前記ステアリングホイールの回転角度を検出する、上記した態様に係るセンサ装置と、を備える電動パワーステアリング装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従動歯車の傾きを抑制できるセンサ装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成の一例を示す図である。
図2】センサ装置1を構成する部品の一部を分解した斜視図の一例である。
図3】センサ装置1の断面の一例を示す図である。
図4】組み付けられる前のサブユニット50とハウジング90とを、半径方向外側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図5】組み付けられる前のセンサユニット40を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図6】第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45、第1従動歯車51、第2従動歯車52、基板58の概略構成を、半径方向内側から半径方向に見た図の一例である。
図7】サブユニット50を、半径方向外側の第2側から回転中心Cに向かう方向に見た図の一例である。
図8】端子部材59の概略構成を、示す断面の一例を示す図である。
図9】第1従動歯車51、第2従動歯車52及び弾性体60を、第1側から軸方向に見た図の一例である。
図10】保持部材70の概略構成を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図11】ハウジング90を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図12】第2の実施形態に係るセンサ装置2のセンサユニット240の概略構成の一例を示す図である。
図13】第3の実施形態に係るセンサ装置3のセンサユニット340の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に示す形態は本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、以下に示す形態に限定されない。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成の一例を示す図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、乗り物の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施形態においては自動車に適用した構成を例示している。
【0010】
ステアリング装置100は、ドライバが操作するステアリングホイール101と、ステアリングホイール101に一体的に設けられたステアリングシャフト102とを備える。ステアリングシャフト102と上部シャフト103とが自在継手103aを介して連結されており、上部シャフト103と下部シャフト108とが自在継手103bを介して連結されている。
【0011】
また、ステアリング装置100は、転動輪としての左右の前輪150のそれぞれに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備える。また、ステアリング装置100は、ラック軸105に形成されたラック歯105aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン106aを備える。ピニオン106aは、ピニオンシャフト106の下端部に形成されている。
【0012】
また、ステアリング装置100は、ピニオンシャフト106を収納するステアリングギアボックス107を有する。ピニオンシャフト106は、ステアリングギアボックス107にてトーションバー112を介して下部シャフト108と同軸に連結されていて、トーションバー112のねじれに応じて、ピニオンシャフト106と下部シャフト108とは相対的に回転する。トーションバー112のねじれは、ステアリングホイール101に加えられた操舵トルクに対応する。
【0013】
ステアリングギアボックス107の内部には、下部シャフト108とピニオンシャフト106との相対的な回転角度に基づいて、ステアリングホイール101に加えられた操舵トルクを検出する、センサ装置1が設けられている。センサ装置1は、ステアリングホイール101の回転角度(以下、「操舵角」と称する場合がある。)をも検出する。
【0014】
また、ステアリング装置100は、ステアリングギアボックス107に支持された電動モータ110と、電動モータ110の駆動力を減速してピニオンシャフト106に伝達する減速機構111とを有する。さらに、ステアリング装置100は、電動モータ110の作動を制御する制御装置120を備える。制御装置120には、上述したセンサ装置1の出力値が入力される。
【0015】
<センサ装置1の構成>
図2は、センサ装置1を構成する部品の一部を分解した斜視図の一例である。
図3は、センサ装置1の断面の一例を示す図である。
図4は、組み付けられる前のサブユニット50とハウジング90とを、半径方向外側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図5は、組み付けられる前のセンサユニット40を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図6は、第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45、第1従動歯車51、第2従動歯車52、基板58の概略構成を、半径方向内側から半径方向に見た図の一例である。
図7は、サブユニット50を、半径方向外側の第2側から回転中心Cに向かう方向に見た図の一例である。
図8は、端子部材59の概略構成を、示す断面の一例を示す図である。
図9は、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び弾性体60を、第1側から軸方向に見た図の一例である。
図10は、保持部材70の概略構成を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図11は、ハウジング90を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
【0016】
センサ装置1は、下部シャフト108に固定されるマグネットカラー21及び永久磁石22と、ピニオンシャフト106に固定される第1ステータ31、第2ステータ32、ステータホルダ33、カラー34及び主動歯車35とを備える。また、センサ装置1は、第1ステータ31及び第2ステータ32で導かれた磁束を集めて、下部シャフト108とピニオンシャフト106との間の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサユニット40を備える。センサユニット40は、操舵角に応じた電気信号をも出力する。
【0017】
以下の説明において、同心で配置されている下部シャフト108及びピニオンシャフト106の軸方向を、単に「軸方向」と称する場合がある。また、軸方向において、下部シャフト108が配置されている側(図2おいては上側)を「第1側」、ピニオンシャフト106が配置されている側(図2おいては下側)を「第2側」と称する場合がある。また、軸方向に直交する方向(図2の左右方向)を、「半径方向」と称する場合がある。そして、半径方向において、下部シャフト108及びピニオンシャフト106の回転中心C側は、「半径方向内側」と称し、回転中心Cから離れる側は、「半径方向外側」と称する場合がある。
【0018】
永久磁石22は、N極とS極とが周方向に交互に並んでリング状に形成され、周方向に着磁されている。永久磁石22は、8個ずつのN極、S極が等角度間隔で配置されていることを例示することができる。
マグネットカラー21は、鉄材によって円筒状に形成されていて、外周面21aに永久磁石22が嵌め合わされ、例えば接着によって永久磁石22はマグネットカラー21に固定される。また、マグネットカラー21の内周面21bに下部シャフト108が挿入されて、圧入、溶接、カシメ等により、マグネットカラー21は下部シャフト108に固定される。これにより、永久磁石22は、下部シャフト108とともに回転する。
【0019】
第1ステータ31及び第2ステータ32は、例えばパーマロイ等の軟磁性材料で形成されている。第1ステータ31は、円環状に形成された円環部31bを有する。また、第1ステータ31は、円環部31bの内周縁から下部シャフト108の軸方向に突出して延び、周方向に並んで形成された複数(例えば8個)のステータ爪31aを有する。これら複数のステータ爪31aは、周方向に等角度間隔(例えば45[度]間隔)で形成されている。
【0020】
また、第1ステータ31は、円環部31bの外周縁から軸方向に突出して延びた複数(例えば3個)の突片31cを有する。これら複数の突片31cは周方向に等角度間隔(例えば120[度]間隔)で形成されている。各突片31cは、工具等によって半径方向内方に押されて塑性変形し、ステータホルダ33の位置決め部33jにカシメられ、第1ステータ31はステータホルダ33に結合される。
【0021】
第2ステータ32は、第1ステータ31を図示の上下を逆にして配置したものと同じであり、円環部32b、ステータ爪32a及び突片32cは、それぞれ第1ステータ31の円環部31b、ステータ爪31a及び突片31cに相当する。
第2ステータ32も第1ステータ31と同様に、ステータホルダ33の位置決め部33jに位置決めされてカシメられ、第2ステータ32はステータホルダ33に結合される。
【0022】
ステータホルダ33は、非磁性材料(例えば樹脂)によって円筒状に形成されている。
カラー34は、例えば鉄材によって円筒状に形成されている。カラー34は、インサート成形により、ステータホルダ33と一体化されている。
主動歯車35は、平歯車であり、インサート成形により、ステータホルダ33と一体化されている。
【0023】
上述したようにして、第1ステータ31、第2ステータ32、ステータホルダ33、カラー34及び主動歯車35は、一体化されて、ステータユニット36を構成する。
図3に示すように、カラー34の内周面34bに、ピニオンシャフト106が挿入されて、圧入、溶接、カシメ等により、ステータユニット36はピニオンシャフト106に固定される。
【0024】
ここで、トーションバー112に操舵トルクが作用していない状態で、ピニオンシャフト106に固定されたステータユニット36の各ステータ爪31a、32aの周方向の中心線が、下部シャフト108に固定された永久磁石22の、N極とS極との境界線に一致するように、ステータユニット36はピニオンシャフト106に固定される。
なお、入力軸側のマグネットカラー21及び永久磁石22と、出力軸側のステータユニット36とは、図3に示すように、ステアリングギアボックス107によって覆われている。
【0025】
(センサユニット40の構成)
以下に、主に図3図8を用いてセンサユニット40について詳述する。
センサユニット40は、第1ステータ31で導かれた磁束を集める第1コレクタ41と、第2ステータ32で導かれた磁束を集める第2コレクタ42と、トルク検出用の第1センサ43及び第2センサ44とを備える。また、センサユニット40は、第1センサ43と第2センサ44との間に配置された磁性体45を備える。
【0026】
また、センサユニット40は、主動歯車35に噛み合う第1従動歯車51と、主動歯車35に噛み合うとともに第1従動歯車51と歯数が異なる第2従動歯車52とを備える。また、センサユニット40は、第1従動歯車51とともに回転する第1永久磁石53と、第2従動歯車52と共に回転する第2永久磁石54とを備える。また、センサユニット40は、操舵角に応じた回転角度検出用の第1センサ55及び第2センサ56を備える。
【0027】
また、センサユニット40は、第1センサ43、第2センサ44、第1センサ55及び第2センサ56が実装された基板58と、基板58に接続された端子部材59とを備える。基板58は、直方体状であり、軸方向に直交するように配置されている。以下の説明において、基板58の長手方向を、「幅方向」と称する場合がある。また、幅方向において、第1従動歯車51が配置されている側(図7おいては左側)を「第3側」、第2従動歯車52が配置されている側(図7おいては右側)を「第4側」と称する場合がある。
【0028】
また、センサユニット40は、第1従動歯車51及び第2従動歯車52に対し、主動歯車35に近づく向きの力を付与する弾性体60を備える。
また、センサユニット40は、第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45、第1従動歯車51、第2従動歯車52、基板58、弾性体60等を保持する保持部材70を備える。
これら第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45、第1従動歯車51、第2従動歯車52、基板58、弾性体60、及び、保持部材70でサブユニット50を構成する。
【0029】
また、センサユニット40は、サブユニット50が嵌め込まれるとともに、第1センサ43、第2センサ44、第1センサ55及び第2センサ56に電力を供給するコネクタ130が接続されるハウジング90を備える。
以下、各部品について詳述する。
【0030】
{第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45}
第1コレクタ41は、図5に示すように、平板の円弧状に形成された円弧部410と、円弧部410における周方向の中央部から半径方向及び軸方向に突出した第1突出部411と、第1突出部411の周方向の両側に設けられて半径方向に突出した第2突出部412とを備える。
第1突出部411は、直方体状の先端部415を有する。先端部415は、円弧部410と平行な平板状である。
【0031】
第2コレクタ42は、図5に示すように、平板の円弧状に形成された円弧部420と、円弧部420における周方向の中央部から半径方向及び軸方向に突出した第1突出部421と、第1突出部421の周方向の両側に設けられて半径方向に突出した第2突出部422とを備える。
第1突出部421は、直方体状の先端部425を有する。先端部425は、円弧部420と平行な平板状である。
【0032】
第1コレクタ41の先端部415と、第2コレクタ42の先端部425とは、軸方向に対向するように配置されており、先端部415と先端部425との間に、直方体状の磁性体45が設けられている。磁性体45は、例えばパーマロイ等の軟磁性材料で成形されている。
【0033】
{第1センサ43、第2センサ44、基板58}
第1センサ43及び第2センサ44は、磁界によって抵抗値が変化することを利用した磁気センサであることを例示することができる。第1センサ43及び第2センサ44は、第1コレクタ41で導かれた磁束と第2コレクタ42で導かれた磁束との量に応じた電気信号、すなわち下部シャフト108とピニオンシャフト106との間の相対的な回転角度に対応した電気信号を出力する。
【0034】
第1センサ43は、基板58における第1側の面である第1面581に実装されている。第1センサ43は、第1コレクタ41の先端部415と、磁性体45との間に配置されている。
第2センサ44は、基板58における第2側の面である第2面582に実装されている。第2センサ44は、第2コレクタ42の先端部425と、磁性体45との間に配置されている。
【0035】
{第1従動歯車51、第2従動歯車52}
第1従動歯車51は、外周部に主動歯車35の歯と噛み合う複数の歯が形成された円盤状の第1歯部511と、第1歯部511における軸方向の両側に設けられた一対の第1軸部512とを有する。
第2従動歯車52は、外周部に主動歯車35の歯と噛み合う複数の歯が形成された円盤状の第2歯部521と、第2歯部521における軸方向の両側に設けられた一対の第2軸部522とを有する。
【0036】
第1歯部511と第2歯部521とは、歯の形状は同じであるが、歯数が異なる。例えば、第1歯部511の歯数は28、第2歯部521の歯数は26であることを例示することができる。また、歯の形状が同じで、歯数が異なることに起因して、第1歯部511のピッチ円直径は、第2歯部521のピッチ円直径よりも大きい。それゆえ、ピニオンシャフト106の回転中心Cから第1従動歯車51の回転中心C1(図9参照)までの距離は、ピニオンシャフト106の回転中心Cから第2従動歯車52の回転中心C2(図9参照)までの距離よりも大きい。言い換えれば、第1従動歯車51の回転中心C1は、第2従動歯車52の回転中心C2よりも半径方向外側にある。
一対の第1軸部512と、一対の第2軸部522の外径は全て同一である。
【0037】
第1従動歯車51は、幅方向の第3側に設けられ、第2従動歯車52は、幅方向の第4側に設けられている。
第1従動歯車51及び第2従動歯車52は、樹脂にて成形されていることを例示することができる。
【0038】
{第1永久磁石53、第2永久磁石54、第1センサ55、第2センサ56}
第1永久磁石53及び第2永久磁石54は、それぞれ、N極及びS極を有する円盤状の永久磁石である。
図9に示すように、第1永久磁石53は、第1従動歯車51の一対の第1軸部512における第1側の第1軸部512の端部に、N極及びS極の少なくとも一部が露出するように嵌め込まれている。また、第2永久磁石54は、第2従動歯車52の一対の第2軸部522における第1側の第2軸部522の端部に、N極及びS極の少なくとも一部が露出するように嵌め込まれている。
【0039】
第1センサ55及び第2センサ56は、磁界によって抵抗値が変化することを利用した磁気センサであることを例示することができる。
第1センサ55及び第2センサ56は、基板58の第2面582に実装されている。
そして、第1センサ55は、第1従動歯車51の第1軸部512に嵌め込まれた第1永久磁石53に対向するように設けられている。第2センサ56は、第2従動歯車52の第2軸部522に嵌め込まれた第2永久磁石54に対向するように設けられている。
【0040】
上述したように、第1永久磁石53及び第2永久磁石54は、それぞれ一対の磁極(N極及びS極)を有し、第1センサ55、第2センサ56は、第1従動歯車51、第2従動歯車52の回転角度に応じた正弦波状の信号を出力する。そして、第1従動歯車51と第2従動歯車52の歯数の違いにより、ステアリングホイール101が左右方向への最大舵角まで操舵されてピニオンシャフト106が複数回回転しても、第1センサ55、第2センサ56の出力信号の位相が同期することがない。これにより、制御装置120は、第1センサ55、第2センサ56の出力信号に基づいて、ピニオンシャフト106の回転角を検出することが可能である。
【0041】
{基板58}
基板58には、図5に示すように、半径方向内側の端部に、ステータユニット36の外周部に沿うように切り欠かれた第1部583が形成されている。また、基板58には、第1部583における周方向の中央部から半径方向外側に直方体状に切り欠かれた第2部584が形成されている。また、基板58には、幅方向における第3側の端部に、半径方向内側の端部から半径方向外側に直方体状に切り欠かれた第3部585が形成されている。また、基板58には、幅方向における第4側の端部に、半径方向内側の端部から半径方向外側に直方体状に切り欠かれた第4部586が形成されている。第3部585、第4部586により、基板58における幅方向の両端部には、それぞれ突起587が形成されている。
【0042】
基板58は、図5に示すように、第1面581における半径方向内側の端部であって幅方向の中央部に、第1センサ43を実装し、第2面582における半径方向内側の端部であって幅方向の中央部に、第2センサ44を実装している。また、基板58は、図6に示すように、第1センサ43を、第2部584の第1側に実装し、第2センサ44を、第2部584の第2側に実装する。そして、第2部584に、磁性体45が配置されている。
基板58は、処理回路によって、第1センサ43及び第2センサ44から出力された電気信号を操舵トルクに対応する電気信号に変換処理し、後述する端子591から電線を通じて制御装置120(図1参照)に出力する。
【0043】
また、基板58には、図5に示すように、第2面582における、第2部584と第3部585との間に、第1センサ55が実装され、第2部584と第4部586との間に、第2センサ56が実装されている。
基板58は、処理回路によって、第1センサ55及び第2センサ56から出力された電気信号を操舵角に対応する電気信号に変換処理し、後述する端子591から電線を通じて制御装置120に出力する。
【0044】
{端子部材59}
端子部材59は、図4に示すように、複数の端子591と、複数の端子591によって貫通されるとともに貫通している複数の端子591を固定する板状部592とを有する。
端子591は、図8に示すように、L字状であり、一方の端部が基板58に接続され(図4参照)、他方の端部が半径方向外側に配置されて、ハウジング90の後述する外側周壁93の内部に配置される。そして、端子591の他方の端部に、半径方向外側から電線のコネクタ130(図4参照)が嵌め込まれる。端子591は、基板58に実装された、第1センサ43、第2センサ44、第1センサ55及び第2センサ56に電力を供給するとともに、これらセンサの検出値に応じた電気信号を制御装置120に出力する。
【0045】
板状部592は、平板状であり、複数の端子591によって厚さ方向に貫通されている。また、板状部592は、厚さ方向(半径方向)の両端部がそれぞれ保持部材70とハウジング90とに接触し、保持部材70とハウジング90とによって挟持されている。
【0046】
{弾性体60}
弾性体60は、図5に示すように、板が折り曲げられることにより成形された、所謂板ばねであることを例示することができる。弾性体60は、幅方向の中央部に設けられた胴部61と、幅方向の第3側に設けられて第1従動歯車51に対して力を付与する第1腕部62と、幅方向の第4側に設けられて第2従動歯車52に対して力を付与する第2腕部63とを有する。また、弾性体60は、胴部61と第1腕部62とを連結する第1連結部64と、胴部61と第2腕部63とを連結する第2連結部65とを有する。
【0047】
胴部61は、図9に示すように、保持部材70の後述する直方体状の第5保持部75に嵌め込まれている。胴部61は、長方形の板が、長手方向の中央部にて曲げられて成形されている。軸方向に見た場合には、胴部61は、第5保持部75に嵌め込まれる前の形状がV字状であり、第5保持部75に嵌め込まれて、U字状となる。
【0048】
第1腕部62は、図5に示すように、第1従動歯車51の一対の第1軸部512それぞれに接触するように一対設けられている。つまり、第1腕部62は、第1従動歯車51の第1歯部511をその厚さ方向に挟むように配置される。軸方向に見た場合には、図9に示すように、第1腕部62は、第1軸部512の外周面の曲率と同じ曲率の円弧状部を有する。なお、第1腕部62は、第1軸部512の外周面の曲率よりも大きくても良い。
【0049】
第2腕部63は、図5に示すように、第2従動歯車52の一対の第2軸部522それぞれに接触するように一対設けられている。つまり、第2腕部63は、第2従動歯車52の第2歯部521をその厚さ方向に挟むように配置される。軸方向に見た場合には、図9に示すように、第2腕部63は、第2軸部522の外周面の曲率と同じ曲率の円弧状部を有する。つまり、第2腕部63は、第1腕部62と同様の形状である。なお、第2腕部63は、第2軸部522の外周面の曲率よりも大きくても良い。
【0050】
第1連結部64は、図5に示すように、一対の第1腕部62それぞれに連結するように一対設けられている。第1連結部64は、図9に示すように、胴部61から第3側に幅方向に延びる幅方向部641と、幅方向部641と第1腕部62とを幅方向に傾斜する方向に直線的に連結する傾斜部642とを有する。
【0051】
第2連結部65は、図5に示すように、一対の第2腕部63それぞれに連結するように一対設けられている。第2連結部65は、図9に示すように、第1連結部64の幅方向部641に相当する部位を有しておらず、胴部61と第2腕部63とを幅方向に傾斜する方向に直線的に連結する傾斜部652を有する。
【0052】
図9に示したように、第1連結部64の形状と、第2連結部65の形状とは異なっており、胴部61を境に非対称な形状をしている。例えば、図9に示した形態では、幅方向に対する傾斜部642の傾斜角が、幅方向に対する傾斜部652の傾斜角よりも小さいことにより、胴部61を境に非対称な形状になっている。言い換えれば、第5保持部75に嵌め込まれた状態の胴部61と傾斜部642とのなす角である第1角α1は、第5保持部75に嵌め込まれた状態の胴部61と傾斜部652とのなす角である第2角α2よりも大きいことにより、胴部61を境に非対称な形状になっている。
【0053】
{保持部材70}
保持部材70は、図4及び図10に示すように、第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45、第1従動歯車51、第2従動歯車52、基板58、弾性体60等を保持した状態で、ハウジング90内部に挿入される。図4に示すように、センサユニット40は、基板58に実装された端子部材59が半径方向外側、第1コレクタ41及び第2コレクタ42が半径方向内側となる状態で、端子部材59側から、ハウジング90における半径方向内側に形成された後述する内側周壁92に挿入される。
【0054】
保持部材70は、図5に示すように、第1コレクタ41を保持する第1保持部71と、第2コレクタ42を保持する第2保持部72とを有する。
第1保持部71は、第1コレクタ41の第2突出部412が嵌め込まれる、半径方向内側が開口した凹部を有し、図10に示すように、第1突出部411を露出した状態で第1コレクタ41を保持する。
第2保持部72は、第2コレクタ42の第2突出部422が嵌め込まれる、半径方向内側が開口した凹部を有し、図10に示すように、第1突出部421を露出した状態で第2コレクタ42を保持する。
第1コレクタ41及び第2コレクタ42は、半径方向内側から、それぞれ、第1保持部71、第2保持部72に嵌め込まれる。
【0055】
また、保持部材70は、図10に示すように、磁性体45を保持する第3保持部73を有する。第3保持部73は、半径方向外側が開口した凹部を有する。磁性体45は、半径方向外側から、第3保持部73に嵌め込まれる。なお、第1コレクタ41、第2コレクタ42及び磁性体45の少なくともいずれかはインサート成形により樹脂製の保持部材70と一体化されていても良い。
また、保持部材70は、図10に示すように、基板58を保持する第4保持部74を有する。第4保持部74は、幅方向の両端部それぞれに、基板58における幅方向の両端部それぞれを保持する凹部を有する。基板58は、半径方向外側から、第4保持部74に嵌め込まれる。
【0056】
また、保持部材70は、図10に示すように、第1従動歯車51の第1軸部512の軸受けとなる第1軸受け81を有する。第1軸受け81は、第1軸部512の外周面の曲率と同じ曲率の曲面811を有し、第1軸受け81における軸方向の中央部には切り欠き812が形成されている。第1従動歯車51は、半径方向外側から、第1歯部511が切り欠き812に挿入され、一対の第1軸部512が曲面811に接触するように装着される。
【0057】
また、保持部材70は、図10に示すように、第2従動歯車52の第2軸部522の軸受けとなる第2軸受け82を有する。第2軸受け82は、第2軸部522の外周面の曲率と同じ曲率の曲面821を有し、第2軸受け82における軸方向の中央部には切り欠き822が形成されている。第2従動歯車52は、半径方向外側から、第2歯部521が切り欠き822に挿入され、第2軸部522が曲面821に接触するように装着される。
【0058】
また、保持部材70は、弾性体60を保持する第5保持部75を有する。第5保持部75は、軸方向が長手方向、幅方向が短手方向となる直方体状であって、半径方向外側が開口した凹部である。弾性体60は、胴部61が、半径方向外側から第5保持部75に嵌め込まれることで、保持部材70に保持される。
【0059】
保持部材70は、半径方向に見た場合の四隅それぞれに、円環状部76が設けられている。
保持部材70は、第1コレクタ41の移動を制限する制限部77を有する。制限部77は、第1コレクタ41の第1突出部411を露出させる部位に対して、幅方向の両側にそれぞれ設けられた壁を有する。
また、保持部材70は、第2コレクタ42の移動を制限する制限部78を有する。制限部78は、第2コレクタ42の第1突出部421を露出させる部位に対して、幅方向の両側にそれぞれ設けられた壁を有する。
【0060】
{ハウジング90}
ハウジング90は、平板状の基部91と、基部91から半径方向内側に突出した長円筒状の内側周壁92と、基部91から半径方向外側に突出した長円筒状の外側周壁93とを有する。
内側周壁92の内部に、サブユニット50が半径方向内側から嵌め込まれる。
外側周壁93の内部に、端子部材59の複数の端子591の端部が配置される。そして、外側周壁93の内部に、半径方向外側から電線のコネクタ130(図4参照)が嵌め込まれる。
【0061】
図8及び図11に示すように、ハウジング90における、内側周壁92及び外側周壁93の内部に対応する部位は、複数の端子591それぞれを通す複数の貫通孔94が形成されている。複数の貫通孔94の周囲であって、内側周壁92の内部に対応する部位には、端子部材59の板状部592の周りを囲む壁95が形成されている。壁95は、板状部592が軸方向や幅方向に移動するのを抑制する。
【0062】
また、ハウジング90は、内側周壁92の内部に、図9に示すように、基部91から半径方向内側に直方体状に突出し、弾性体60を支持可能な支持部96を有する。支持部96は、軸方向においては、弾性体60の全域を支持する。また、支持部96は、幅方向においては、中央部に設けられ、弾性体60の第1連結部64の幅方向部641、及び、胴部61と第2連結部65との接続部とを支持する。弾性体60は、支持部96により、半径方向外側に移動することが抑制される。
【0063】
また、ハウジング90は、図5に示すように、幅方向における両端部それぞれに、ボルトを通す貫通孔971が形成された締め付け部97を有する。締め付け部97は、軸方向に平行な板状の部位であり、ハウジング90は、貫通孔971を通されたボルトにてステアリングギアボックス107に締め付けられる。
【0064】
また、ハウジング90は、図5に示すように、半径方向内側から見た場合の四隅それぞれに、軸方向に平行な面の台座98と、台座98から半径方向内側に突出した円柱状の突起99とを有する。
ハウジング90と保持部材70とは、突起99が保持部材70の円環状部76の貫通孔に通されて、円環状部76が台座98に突き当てられた状態で、突起99の先端が溶かされることによりカシメられる。つまり、ハウジング90と保持部材70とは、熱カシメが施されることにより一体化される。
【0065】
以上、説明したように、センサ装置1は、回転軸の一例としてのピニオンシャフト106に一体的に回転可能に設けられている主動歯車35と、外周部に主動歯車35の歯と噛み合う複数の歯が形成された円盤状の第1歯部511と、第1歯部511における軸方向の両側に設けられた一対の第1軸部512とを有する第1従動歯車51とを備える。また、センサ装置1は、外周部に主動歯車35の歯と噛み合う、第1従動歯車51の歯数と異なる複数の歯が形成された第2歯部521と、第2歯部521における軸方向の両側に設けられた一対の第2軸部522とを有する第2従動歯車52を備える。また、センサ装置1は、第1従動歯車51に対応して設けられた第1回転角センサの一例としての第1センサ55と、第2従動歯車52に対応して設けられた第2回転角センサの一例としての第2センサ56とを備える。また、センサ装置1は、一対の第1軸部512それぞれに対応して設けられて第1従動歯車51に対して主動歯車35に近づく向きの力を付与する一対の第1腕部62と、一対の第2軸部522それぞれに対応して設けられて第2従動歯車52に対して主動歯車35に近づく向きの力を付与する一対の第2腕部63と、を有する弾性体60を備える。
【0066】
以上のように構成されたセンサ装置1においては、弾性体60の一対の第1腕部62が、第1従動歯車51の第1歯部511における軸方向の両側に設けられた一対の第1軸部512それぞれに主動歯車35に近づく向きの力を付与するので、第1従動歯車51の傾きが抑制される。同様に、弾性体60の一対の第2腕部63が、第2従動歯車52の第2歯部521における軸方向の両側に設けられた一対の第2軸部522それぞれに主動歯車35に近づく向きの力を付与するので、第2従動歯車52の傾きが抑制される。その結果、主動歯車35と、第1従動歯車51及び第2従動歯車52との噛み合い不良による、フリクションの悪化が抑制される。
【0067】
そして、弾性体60は、一対の第1腕部62と連結された一対の第1連結部64の形状と、一対の第2腕部63と連結された一対の第2連結部65の形状とが異なる。これにより、ピニオンシャフト106の回転中心Cから第1従動歯車51の回転中心C1(図8参照)までの距離と、ピニオンシャフト106の回転中心Cから第2従動歯車52の回転中心C2(図9参照)までの距離とが異なっていても、第1従動歯車51に付与する力と第2従動歯車52に付与する力とを均等にすることが可能となる。
【0068】
例えば、弾性体60の胴部61と第1連結部64の傾斜部642とのなす角である第1角α1(図9参照)と、胴部61と第2連結部65の傾斜部652とのなす角である第2角α2(図9参照)とを異ならせることで、第1従動歯車51に付与する力と第2従動歯車52に付与する力とを均等にすることが可能となる。また、第1連結部64に、幅方向に延びる幅方向部641を設けることで、第1角α1と第2角α2とを異ならせることが可能となる。
【0069】
また、センサ装置1は、第1従動歯車51及び第2従動歯車52を保持する保持部材70をさらに備え、弾性体60の胴部61は、保持部材70に保持されている。これにより、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び弾性体60を保持部材70が保持した状態で、ハウジング90内部に挿入することが可能となるので、容易にセンサユニット40を組み立てることが可能となる。
【0070】
また、センサ装置1は、弾性体60に対して、第1従動歯車51及び第2従動歯車52とは反対側に、弾性体60を支持可能な支持部96(図9参照)を有する。支持部96により、弾性体60は、半径方向外側に移動することが抑制されるので、確度高く、第1従動歯車51及び第2従動歯車52に力を付与することが可能となる。
【0071】
ここで、弾性体60は、板ばねであり、板面が第1軸部512及び第2軸部522の外周面に接触する。つまり、弾性体60と、第1軸部512及び第2軸部522とは面接触であるため、例えば、ねじりコイルバネの端部が第1軸部512及び第2軸部522に力を付与する構成と比較して、接触面積が増える。その結果、第1従動歯車51及び第2従動歯車52の摩耗が抑制される。
【0072】
また、弾性体60の第1腕部62は、第1軸部512の外周面の曲率以上の曲率の円弧状の部位を有するので、第1軸部512の外周面に接触し易くなる。また、第1腕部62の円弧状の部位は、第1従動歯車51の第1歯部511の歯と主動歯車35の歯との噛み合いにより、第1従動歯車51が主動歯車35から受ける力により移動するのを抑制可能に形成されている。より具体的には、第1従動歯車51が主動歯車35から受ける力F1(図9参照)は、第1歯部511の歯と主動歯車35の歯の共通法線上の方向に作用する。つまり、力F1は、第1歯部511の歯の圧力角βの方向に作用する。そして、第1腕部62は、第1従動歯車51に作用する力F1を受ける位置において、第1軸部512の外周面と接触するように形成されている。
【0073】
同様に、保持部材70の第1軸受け81は、第1歯部511の歯と主動歯車35の歯との噛み合いにより、第1従動歯車51が主動歯車35から受ける力により移動するのを抑制可能に形成されている。より具体的には、第1従動歯車51には、回転中心Cと回転中心C1とを結ぶ線に対して、力F1と線対称な力が作用する。そして、第1軸受け81は、第1従動歯車51に作用する力F1と線対称な力を受ける位置において、第1軸部512の外周面と接触するように形成されている。
これらにより、第1従動歯車51は、主動歯車35から力F1及び力F1と線対称な力を受けたとしても、移動し難いので、第1センサ55は精度高く第1従動歯車51の回転角度を検出することが可能となる。
【0074】
また、弾性体60の第2腕部63は、第2軸部522の外周面の曲率以上の曲率の円弧状の部位を有するので、第2軸部522の外周面に接触し易くなる。また、第2腕部63の円弧状の部位は、第2従動歯車52の第2歯部521の歯と主動歯車35の歯との噛み合いにより、第2従動歯車52が主動歯車35から受ける力により移動するのを抑制可能に形成されている。より具体的には、第2従動歯車52が主動歯車35から受ける力F2(図9参照)は、第2歯部521の歯と主動歯車35の歯の共通法線上の方向に作用する。つまり、力F2は、第2歯部521の歯の圧力角βの方向に作用する。そして、第2腕部63は、第2従動歯車52に作用する力F2を受ける位置において、第2軸部522の外周面と接触するように形成されている。
【0075】
同様に、保持部材70の第2軸受け82は、第2歯部521の歯と主動歯車35の歯との噛み合いにより、第2従動歯車52が主動歯車35から受ける力により移動するのを抑制可能に形成されている。より具体的には、第2従動歯車52には、回転中心Cと回転中心C2とを結ぶ線に対して、力F2と線対称な力が作用する。そして、第2軸受け82は、第2従動歯車52に作用する力F2と線対称な力を受ける位置において、第2軸部522の外周面と接触するように形成されている。
これらにより、第2従動歯車52は、主動歯車35から力F2及び力F2と線対称な力を受けたとしても、移動し難いので、第2センサ56は精度高く第2従動歯車52の回転角度を検出することが可能となる。
【0076】
<第2の実施形態>
図12は、第2の実施形態に係るセンサ装置2のセンサユニット240の概略構成の一例を示す図である。
第2の実施形態に係るセンサユニット240は、第1の実施形態に係るセンサユニット40に対して、第1従動歯車51及び第2従動歯車52に対し、主動歯車35に近づく向きの力を付与する構造が異なる。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。第1の実施形態と第2の実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0077】
センサユニット240は、弾性体60を備えていない。そして、第2の実施形態に係るハウジング290が、第1従動歯車51及び第2従動歯車52に対し、主動歯車35に近づく向きの力を付与する弾性体260を備えている。ハウジング290は、第1の実施形態に係るハウジング90が有する支持部96を有していない。
【0078】
弾性体260は、幅方向の中央部に設けられた直方体状の胴部261と、幅方向の第3側に設けられて第1従動歯車51に対して力を付与する第1腕部262と、幅方向の第4側に設けられて第2従動歯車52に対して力を付与する第2腕部263とを有する。また、弾性体260は、胴部261と第1腕部262とを連結する第1連結部264と、胴部261と第2腕部263とを連結する第2連結部265とを有する。
【0079】
第1腕部262は、第1従動歯車51の一対の第1軸部512それぞれに接触するように一対設けられている。つまり、第1腕部262は、第1従動歯車51の第1歯部511をその厚さ方向に挟むように配置される。軸方向に見た場合には、第1腕部262は、第1軸部512の外周面の曲率と同じ曲率の円弧状部を有する。なお、第1腕部262は、第1軸部512の外周面の曲率よりも大きくても良い。
第2腕部263は、第2従動歯車52の一対の第2軸部522それぞれに接触するように一対設けられている。つまり、第2腕部263は、第2従動歯車52の第2歯部521をその厚さ方向に挟むように配置される。軸方向に見た場合には、第2腕部263は、第2軸部522の外周面の曲率と同じ曲率の円弧状部を有する。つまり、第2腕部263は、第1腕部262と同様の形状である。なお、第2腕部263は、第2軸部522の外周面の曲率よりも大きくても良い。
【0080】
第1連結部264は、一対の第1腕部262それぞれと胴部261とを連結するように一対設けられている。また、第1連結部264は、幅方向に傾斜する方向に直線的に延びている。
第2連結部265は、一対の第2腕部263それぞれと胴部261とを連結するように一対設けられている。また、第2連結部265は、幅方向に傾斜する方向に直線的に延びている。
そして、第1連結部264の形状と、第2連結部265の形状とは異なっており、胴部261を境に非対称な形状をしている。例えば、図12に示した形態では、幅方向に対する第1連結部264の傾斜角が、幅方向に対する第2連結部265の傾斜角よりも小さいことにより、胴部261を境に非対称な形状になっている。言い換えれば、半径方向と第1連結部264とのなす角である第1角α21は、半径方向と第2連結部265とのなす角である第2角α22よりも大きいことにより、胴部261を境に非対称な形状になっている。
【0081】
以上、説明したように、センサ装置2は、弾性体260を備える。弾性体260は、一対の第1軸部512それぞれに対応して設けられて第1従動歯車51に対して主動歯車35に近づく向きの力を付与する一対の第1腕部262と、一対の第2軸部522それぞれに対応して設けられて第2従動歯車52に対して主動歯車35に近づく向きの力を付与する一対の第2腕部263とを有する。
【0082】
センサ装置2においても、弾性体260の一対の第1腕部262が、第1従動歯車51の第1歯部511における軸方向の両側に設けられた一対の第1軸部512それぞれに主動歯車35に近づく向きの力を付与するので、第1従動歯車51の傾きが抑制される。同様に、弾性体260の一対の第2腕部263が、第2従動歯車52の第2歯部521における軸方向の両側に設けられた一対の第2軸部522それぞれに主動歯車35に近づく向きの力を付与するので、第2従動歯車52の傾きが抑制される。その結果、主動歯車35と、第1従動歯車51及び第2従動歯車52との噛み合い不良による、フリクションの悪化が抑制される。
【0083】
<第3の実施形態>
図13は、第3の実施形態に係るセンサ装置3のセンサユニット340の概略構成の一例を示す図である。
第3の実施形態に係るセンサユニット340は、第1の実施形態に係るセンサユニット40に対して、第1従動歯車51及び第2従動歯車52に対し、主動歯車35に近づく向きの力を付与する構造が異なる。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。第1の実施形態と第3の実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0084】
センサユニット340は、弾性体60を備えていない。そして、第3の実施形態に係るハウジング390が、第1従動歯車51及び第2従動歯車52に対し、主動歯車35に近づく向きの力を付与する弾性体360を備えている。ハウジング390は、第1の実施形態に係るハウジング90が有する支持部96を有していない。
【0085】
弾性体360は、幅方向の第3側に設けられて第1従動歯車51に対して力を付与する一対の第1弾性体361と、幅方向の第4側に設けられて第2従動歯車52に対して力を付与する一対の第2弾性体362とを有する。
一対の第1弾性体361は、第1従動歯車51の一対の第1軸部512それぞれに接触する。また、各第1弾性体361は、第1軸部512の外周面に2点で接触するように、半径方向及び幅方向に傾斜するとともに、なす角が90度の一対の第1腕部363を有している。幅方向における、一対の第1腕部363が交わる位置は、第1従動歯車51の回転中心C1と同じである。
一対の第2弾性体362は、第2従動歯車52の一対の第2軸部522それぞれに接触する。また、各第2弾性体362は、第2軸部522の外周面に2点で接触するように、半径方向及び幅方向に傾斜するとともに、なす角が90度の一対の第2腕部364を有している。一対の第2腕部364が交わる位置は、第2従動歯車52の回転中心C2と同じである。
【0086】
以上、説明したように、センサ装置3は、弾性体360を備える。弾性体360は、一対の第1軸部512それぞれに対応して設けられて第1従動歯車51に対して主動歯車35に近づく向きの力を付与する一対の第1腕部363と、一対の第2軸部522それぞれに対応して設けられて第2従動歯車52に対して主動歯車35に近づく向きの力を付与する一対の第2腕部364とを有する。
【0087】
センサ装置3においても、弾性体360の一対の第1腕部363が、第1従動歯車51の第1歯部511における軸方向の両側に設けられた一対の第1軸部512それぞれに主動歯車35に近づく向きの力を付与するので、第1従動歯車51の傾きが抑制される。同様に、弾性体360の一対の第2腕部364が、第2従動歯車52の第2歯部521における軸方向の両側に設けられた一対の第2軸部522それぞれに主動歯車35に近づく向きの力を付与するので、第2従動歯車52の傾きが抑制される。その結果、主動歯車35と、第1従動歯車51及び第2従動歯車52との噛み合い不良による、フリクションの悪化が抑制される。
【符号の説明】
【0088】
1,2,3…センサ装置、35…主動歯車、40,240,340…センサユニット、50…サブユニット、51…第1従動歯車、52…第2従動歯車、53…第1永久磁石、54…第2永久磁石、55…第1センサ(第1回転角センサ)、56…第2センサ(第2回転角センサ)、58…基板、60,260,360…弾性体、61,261…胴部、62,262,363…第1腕部、63,263,364…第2腕部、64,264…第1連結部、65,265…第2連結部、70…保持部材、75…第5保持部、81…第1軸受け、82…第2軸受け、90,290,390…ハウジング、96…支持部、100…電動パワーステアリング装置、106…ピニオンシャフト(回転軸)、511…第1歯部、512…第1軸部、521…第2歯部、522…第2軸部、α1…第1角、α2…第2角
図1
図2
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図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13