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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154920
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】量子演算装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 39/04 20060101AFI20221005BHJP
   H01L 39/22 20060101ALI20221005BHJP
   G06N 10/00 20220101ALI20221005BHJP
【FI】
H01L39/04
H01L39/22 K
G06N10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058191
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】細田 雅之
【テーマコード(参考)】
4M113
4M114
【Fターム(参考)】
4M113AC45
4M113AD51
4M113AD61
4M114AA02
4M114BB05
4M114CC09
4M114DA02
4M114DA03
4M114DA15
4M114DA32
4M114DB09
(57)【要約】
【課題】冷却源の冷却能力を向上せずとも量子ビットの数を増加できる量子演算装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】量子演算装置は、第1基板と、第2基板と、前記第1基板に設けられ、それぞれが量子ビットとして機能する複数の量子ビット部を含む量子チップと、前記第2基板に設けられ、前記複数の量子ビット部を制御するマイクロ波の制御信号を、空間を介して前記複数の量子ビットに向けて送出する送出部と、前記第1基板を冷却する第1冷却源と、前記第2基板を冷却する第2冷却源と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
第2基板と、
前記第1基板に設けられ、それぞれが量子ビットとして機能する複数の量子ビット部を含む量子チップと、
前記第2基板に設けられ、前記複数の量子ビット部を制御するマイクロ波の制御信号を、空間を介して前記複数の量子ビットに向けて送出する送出部と、
前記第1基板を冷却する第1冷却源と、
前記第2基板を冷却する第2冷却源と、
を有することを特徴とする量子演算装置。
【請求項2】
前記第1冷却源は前記第1基板を第1温度に冷却し、
前記第2冷却源は前記第2基板を前記第1温度よりも高い第2温度に冷却することを特徴とする請求項1に記載の量子演算装置。
【請求項3】
前記第1基板と前記第2基板とが互いに対向し、
前記量子チップは、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられ、
前記送出部は、前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の量子演算装置。
【請求項4】
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたスペーサを有することを特徴とする請求項3に記載の量子演算装置。
【請求項5】
前記第2基板の前記量子チップに対向する部分に開口が形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の量子演算装置。
【請求項6】
前記送出部は、それぞれが前記量子ビット部に対応する複数の送出パタンを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の量子演算装置。
【請求項7】
前記第1基板に設けられ、それぞれが前記量子ビット部に接続された複数の受信パタンを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の量子演算装置。
【請求項8】
前記第2冷却源は、前記第1冷却源の一方側に配置され、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記第1冷却源の他方側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の量子演算装置。
【請求項9】
それぞれが量子ビットとして機能する複数の量子ビット部を含む量子チップが設けられた第1基板を準備する工程と、
前記複数の量子ビット部を制御するマイクロ波の制御信号を、空間を介して前記複数の量子ビットに向けて送出する送出部が設けられた第2基板を準備する工程と、
前記第1基板と前記第2基板とを互いに位置合わせする工程と、
前記第1基板を冷却する第1冷却源及び前記第2基板を冷却する第2冷却源を設ける工程と、
を有することを特徴とする量子演算装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、量子演算装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導量子ビットを用いた量子演算装置について検討が行われている。超伝導の実現のために、また熱に起因するノイズを低減するために、希釈冷凍機等の冷却能力が極めて高い冷却源が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-61554号公報
【特許文献2】特開2020-61447号公報
【特許文献3】国際公開第2020/075150号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
量子演算装置の高機能化には、内蔵する量子ビットの数を増やすことが有効である。しかしながら、量子ビットの数の増加に伴って量子ビットを制御する制御線の数も増加し、制御線を通じて量子ビットを含む量子チップに熱が流入しやすくなる。このため、従来の技術では、冷却能力を更に向上しなければ量子ビットの数を増やすことが困難である。
【0005】
本開示の目的は、冷却源の冷却能力を向上せずとも量子ビットの数を増加できる量子演算装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、第1基板と、第2基板と、前記第1基板に設けられ、それぞれが量子ビットとして機能する複数の量子ビット部を含む量子チップと、前記第2基板に設けられ、前記複数の量子ビット部を制御するマイクロ波の制御信号を、空間を介して前記複数の量子ビットに向けて送出する送出部と、前記第1基板を冷却する第1冷却源と、前記第2基板を冷却する第2冷却源と、を有する量子演算装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、冷却源の冷却能力を向上せずとも量子ビットの数を増加できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る量子演算装置を示す図である。
図2】第2実施形態に係る量子演算装置を示す図である。
図3】第3実施形態に係る量子演算装置を示す図である。
図4】第4実施形態に係る量子演算装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0010】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態は、量子演算装置に関する。図1は、第1実施形態に係る量子演算装置を示す図である。
【0011】
図1に示すように、第1実施形態に係る量子演算装置100は、量子回路基板110と、制御波形送出基板120と、制御部130とを有する。
【0012】
量子回路基板110には、量子チップ111が設けられている。量子回路基板110は、量子チップ111が接続された回路を含んでいる。量子チップ111は、それぞれが量子ビットとして機能する複数の量子ビット部112と、それぞれが量子ビット部112に接続された複数の受信パタン113とを含む。受信パタン113は受信アンテナとして機能する。量子ビット部112の数と受信パタン113の数とは等しい。量子ビット部112及び受信パタン113は、例えばコプレーナ線路(CPW)114を介して互いに接続されている。量子ビット部112及び受信パタン113の組の数は限定されず、例えば16個又は64個であってもよい。量子回路基板110は第1基板の一例である。
【0013】
制御波形送出基板120には、送出部121が設けられている。送出部121は、それぞれが量子ビット部112に対応する複数の送出パタン123を含む。送出パタン123は送出アンテナとして機能する。送出パタン123の数は、量子ビット部112の数と等しい。制御波形送出基板120は、送出パタン123と同数の同軸コネクタ124を有する。制御波形送出基板120は第2基板の一例である。
【0014】
量子回路基板110と制御波形送出基板120とは互いから離れて配置されており、量子回路基板110と制御波形送出基板120とは互いに対向する。量子回路基板110と制御波形送出基板120との間の距離は、例えば100μm~1mm程度である。量子回路基板110と制御波形送出基板120との間には空間が存在する。この空間は、通常真空となっている。
【0015】
制御部130は、量子ビット部112と同数の波形発生器131を含む。各波形発生器131には同軸ケーブル141の一端が接続されており、同軸ケーブル141の他端に減衰器151の入力が接続されている。減衰器151の出力には同軸ケーブル142の一端が接続されており、同軸ケーブル142の他端に減衰器・フィルタ152の入力が接続されている。減衰器・フィルタ152の出力に同軸ケーブル143の一端が接続されており、同軸ケーブル143の他端は制御波形送出基板120の同軸コネクタ124に接続されている。
【0016】
量子演算装置100は、更に、第1冷却源161と、第2冷却源162と、第3冷却源163とを有する。第1冷却源161は量子回路基板110を冷却する。第1冷却源161は、例えば希釈冷凍機であり、量子回路基板110を10mK程度の温度まで冷却する。第2冷却源162は、主に、制御波形送出基板120及び減衰器・フィルタ152を冷却する。第2冷却源162は、制御波形送出基板120及び減衰器・フィルタ152を100mK程度の温度まで冷却する。第3冷却源163は、主に、減衰器151を冷却する。第3冷却源は、減衰器151を数K程度の温度まで冷却する。波形発生器131を含む制御部130の温度は、例えば室温である。
【0017】
このように、第1冷却源161は量子回路基板110を第1温度(例えば10mK程度)に冷却し、第2冷却源162は制御波形送出基板120を第1温度よりも高い第2温度(例えば100mK程度)に冷却する。第2冷却源162は制御波形送出基板120に結合されて制御波形送出基板120を直接的に冷却してもよく、同軸ケーブル143の接地導体を介して制御波形送出基板120を間接的に冷却してもよい。
【0018】
量子演算装置100では、波形発生器131が量子ビット部112を制御するマイクロ波の制御信号を生成し、出力する。制御信号の周波数は、例えば約5GHzである。波形発生器131から出力された制御信号は、同軸ケーブル141、減衰器151、同軸ケーブル142、減衰器・フィルタ152、同軸ケーブル143及び同軸コネクタ124を介して送出部121に入力される。送出部121は、入力された制御信号を送出パタン123から送出する。送出パタン123から送出された制御信号は、制御波形送出基板120と量子回路基板110との間の空間を介して量子チップ111に到達する。量子チップ111に到達した制御信号は、受信パタン113を介して量子ビット部112に入力され、量子ビット部112が制御される。
【0019】
量子演算装置100では、制御波形送出基板120と量子回路基板110とが空間を介して隔てられ、空間を介して制御信号が伝送される。従って、量子回路基板110に同軸ケーブルを接続する必要はなく、量子ビット部112の数が増加したとしても、制御波形送出基板120の熱は量子回路基板110に流入しにくい。このため、冷却能力を強化せずとも、量子回路基板110に設ける量子ビット部112の数を増加させることができる。
【0020】
また、量子回路基板110に同軸ケーブルを接続する必要はないため、同軸ケーブルを介して伝送されるノイズを抑制することもできる。
【0021】
なお、送出パタン123から送出された制御信号を受信する機能を量子ビット部112が備えていれば、受信パタン113が設けられていなくてもよい。
【0022】
このような構成の量子演算装置100を製造する場合、まず、量子チップ111が設けられた量子回路基板110と、送出部121を備えた制御波形送出基板120とを準備し、これらの位置決めを行う。また、量子回路基板110を冷却できるように第1冷却源161を設け、制御波形送出基板120を冷却できるように第2冷却源162を設ける。同軸ケーブル143の制御波形送出基板120への接続等は、上記工程の前に行ってもよく、上記工程の後に行ってもよい。
【0023】
また、送出パタン123の数と量子ビット部112の数とが一致している必要はない。例えば、1つの送出パタン123から複数の量子ビット部112に対して多重化した制御信号を送出できる場合には、送出パタン123の数が量子ビット部112の数より少なくてもよい。また、ある量子ビット部の制御を、結合する他の量子ビット部を介して行う場合にも、送出パタン123の数が量子ビット部112の数より少なくてもよい。
【0024】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。図2は、第2実施形態に係る量子演算装置を示す図である。
【0025】
図2に示すように、第2実施形態に係る量子演算装置200では、量子回路基板110の制御波形送出基板120に対向する面110Aと、制御波形送出基板120の量子回路基板110に対向する面120Aとの間に複数のスペーサ201が設けられている。スペーサ201は、例えば3個以上設けられている。制御波形送出基板120の形状が、面120Aに垂直な方向からの平面視で、四角形である場合、合計で4個のスペーサ201がその四隅に設けられていてもよい。また、合計で5個のスペーサ201が、四隅に加えて、中心部に設けられていてもよい。スペーサ201の配置は任意である。
【0026】
スペーサ201は、熱伝導性が低い材料から構成されることが好ましい。スペーサ201の材料として、例えば第2冷却源162により冷却される温度(100mK程度)以上の温度で超伝導となるニオブチタン(NbTi)合金、はんだ等が挙げられる。スペーサ201の材料として有機樹脂が用いられてもよい。スペーサ201の形状は、例えば球状であってもよく、柱状であってもよい。スペーサ201の径は、例えば100μm~1mm程度である。
【0027】
例えば、スペーサ201を制御波形送出基板120の面120Aに予め融着しておき、位置合わせしながら量子回路基板110に貼り合わせ、押圧することでスペーサ201を量子回路基板110に固定することができる。
【0028】
量子回路基板110の面110Aとは反対側の面110Bにヒートブロック210が取り付けられている。ヒートブロック210は、例えば銅(Cu)材である。Cu材の表面に金(Au)めっき膜が設けられていてもよい。ヒートブロック210及び量子回路基板110が第1冷却源161に接触している。第1冷却源161は板状の形状を有しており、第1冷却源161に貫通孔261が形成されている。
【0029】
減衰器・フィルタ152が第2冷却源162に接触している。また、同軸ケーブル143の接地導体が第2冷却源162に接触している。同軸ケーブル143は第1冷却源161の貫通孔261を貫通し、第1冷却源161からみて第2冷却源162とは反対側まで延び、制御波形送出基板120の同軸コネクタ124(図1参照)に接続されている。貫通孔261内には、同軸ケーブル143を支持する断熱支持部材262が設けられている。断熱支持部材262は、熱伝導性が低い材料から構成されることが好ましい。断熱支持部材262の材料として、例えばポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)等の有機樹脂が挙げられる。
【0030】
他の構成は第1実施形態と同様である。例えば、図2には、同軸ケーブル142、減衰器・フィルタ152、同軸ケーブル143、貫通孔261及び断熱支持部材262を一組のみ図示しているが、これらは量子ビット部112と同じ数だけ設けられている。
【0031】
第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、スペーサ201が設けられているため、送出パタン123と受信パタン113との間の距離を高精度で調整しやすく、信号の損失及び複数の量子ビット部間の制御波形の漏話を低減しやすい。
【0032】
更に、第1冷却源161からみて量子回路基板110が第2冷却源162とは反対側に配置されている。このため、量子回路基板110は第2冷却源162の影響を受けにくい。更に、同軸ケーブル143の貫通孔261内の部分が断熱支持部材262により第1冷却源161から熱的に離されている。このため、第1冷却源161は同軸ケーブル143の熱の影響を受けにくい。
【0033】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。図3は、第3実施形態に係る量子演算装置を示す図である。
【0034】
図3に示すように、第3実施形態に係る量子演算装置300では、受信パタン113に代えて受信パタン313が、量子チップ111の外部に設けられている。この例では、量子チップ111に含まれる量子ビット部112の数は16個であり、16個の受信パタン313が量子回路基板110の面110Aに設けられている。各受信パタン313はコプレーナ線路314を介して量子チップ111内の量子ビット部112に接続されている。面110Aに垂直な方向からの平面視で、16個の受信パタン313は、量子チップ111を包囲するように配置されている。
【0035】
制御波形送出基板120には、送出パタン123が受信パタン313に対向するように面120Aに配置されている。面120Aに垂直な方向からの平面視で、16個の送出パタン123により包囲されるようにして制御波形送出基板120に開口325が形成されている。開口325は、例えば、量子回路基板110の面110Aに垂直な方向からの平面視で、量子チップ111よりも大きく、開口325を通じて量子チップ111の全体がみえる。
【0036】
他の構成は第2実施形態と同様である。例えば、図示を省略しているが、スペーサ201等が設けられている。
【0037】
第3実施形態によっても第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、制御波形送出基板120に開口325が形成されているため、量子チップ111が制御波形送出基板120内を伝送される信号の影響を受けにくくすることができる。
【0038】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。図4は、第4実施形態に係る量子演算装置を示す図である。
【0039】
図4に示すように、第4実施形態に係る量子演算装置400では、量子回路基板110に複数、例えば9個の量子チップ111が設けられている。9個の量子チップ111のうち、5個の量子チップ111が面110Aに設けられ、4個の量子チップ111が面110Bに設けられている。量子回路基板110を透視したとき、9個の量子チップ111は格子状に配置されている。図示を省略するが、第3実施形態と同様に、複数の受信パタン313(図3参照)が各量子チップ111の周囲に設けられ、当該量子チップ111内の量子ビット部112に接続されている。
【0040】
量子回路基板110は、例えばSiを用いて構成されており、例えば3層の配線層を含む。3層の配線層のうちの1層が面110Aに設けられ、他の1層が面110Bに設けられ、他の1層が面110Aと面110Bとの間に設けられている。厚さ方向で隣り合う配線層同士は、スルーホールビアを介して互いに接続されている。スルーホールビアは、第1冷却源161により冷却される温度(10mK程度)で超伝導となる材料から構成されることが好ましい。このような多層配線を介して、複数の量子チップ111同士が接続されている。
【0041】
制御波形送出基板120には、それぞれが量子回路基板110の面110Aに設けられた5個の量子チップ111に対応するようにして、第3実施形態と同様に、5個の開口325が形成されている。図示を省略するが、制御波形送出基板120の量子回路基板110に対向する面120Aに、開口325毎に、当該開口325を包囲するようにして複数の送出パタン123(図3参照)が設けられている。例えば、面120Aに設けられた送出パタン123は、それぞれ面110Aに設けられた受信パタン313に対向する。
【0042】
量子演算装置400は、更に、制御波形送出基板420を有する。制御波形送出基板420は、開口の配置を除き、制御波形送出基板120と同様の構成を備える。制御波形送出基板420には、それぞれが量子回路基板110の面110Bに設けられた4個の量子チップ111に対応するようにして、第3実施形態と同様に、4個の開口325が形成されている。図示を省略するが、制御波形送出基板420の量子回路基板110に対向する面420Aに、開口325毎に、当該開口325を包囲するようにして複数の送出パタン123(図3参照)が設けられている。例えば、面420Aに設けられた送出パタン123は、それぞれ面110Bに設けられた受信パタン313に対向する。
【0043】
また、ヒートブロック210に代えて伝熱フレーム410が設けられている。伝熱フレーム410は、量子回路基板110の外周部の一部に接触するとともに、第1冷却源161(図2参照)に接触している。伝熱フレーム410は、例えば銅(Cu)材である。Cu材の表面に金(Au)めっき膜が設けられていてもよい。
【0044】
他の構成は第3実施形態と同様である。
【0045】
第4実施形態によっても第3実施形態と同様の効果を得ることができる。また、量子回路基板110に複数の量子チップ111が設けられているため、量子ビット部112をより高密度で集積することができる。
【0046】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0047】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0048】
(付記1)
第1基板と、
第2基板と、
前記第1基板に設けられ、それぞれが量子ビットとして機能する複数の量子ビット部を含む量子チップと、
前記第2基板に設けられ、前記複数の量子ビット部を制御するマイクロ波の制御信号を、空間を介して前記複数の量子ビットに向けて送出する送出部と、
前記第1基板を冷却する第1冷却源と、
前記第2基板を冷却する第2冷却源と、
を有することを特徴とする量子演算装置。
(付記2)
前記第1冷却源は前記第1基板を第1温度に冷却し、
前記第2冷却源は前記第2基板を前記第1温度よりも高い第2温度に冷却することを特徴とする請求項1に記載の量子演算装置。
(付記3)
前記第1基板と前記第2基板とが互いに対向し、
前記量子チップは、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられ、
前記送出部は、前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられていることを特徴とする付記1又は2に記載の量子演算装置。
(付記4)
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたスペーサを有することを特徴とする付記3に記載の量子演算装置。
(付記5)
前記第2基板の前記量子チップに対向する部分に開口が形成されていることを特徴とする付記3又は4に記載の量子演算装置。
(付記6)
前記送出部は、それぞれが前記量子ビット部に対応する複数の送出パタンを有することを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の量子演算装置。
(付記7)
前記第1基板に設けられ、それぞれが前記量子ビット部に接続された複数の受信パタンを有することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の量子演算装置。
(付記8)
前記第2冷却源は、前記第1冷却源の一方側に配置され、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記第1冷却源の他方側に配置されていることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の量子演算装置。
(付記9)
前記第1基板に、前記量子チップが複数設けられ、
前記送出部は、複数の前記量子チップに含まれる複数の前記量子ビット部の各々に前記制御信号を送出することを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の量子演算装置。
(付記10)
それぞれが量子ビットとして機能する複数の量子ビット部を含む量子チップが設けられた第1基板を準備する工程と、
前記複数の量子ビット部を制御するマイクロ波の制御信号を、空間を介して前記複数の量子ビットに向けて送出する送出部が設けられた第2基板を準備する工程と、
前記第1基板と前記第2基板とを互いに位置合わせする工程と、
前記第1基板を冷却する第1冷却源及び前記第2基板を冷却する第2冷却源を設ける工程と、
を有することを特徴とする量子演算装置の製造方法。
【符号の説明】
【0049】
100、200、300、400:量子演算装置
110:量子回路基板
110A、110B:面
111:量子チップ
112:量子ビット部
113、313:受信パタン
120、420:制御波形送出基板
120A、420A:面
121:送出部
123:送出パタン
130:制御部
161:第1冷却源
162:第2冷却源
201:スペーサ
325:開口
図1
図2
図3
図4